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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効とする。(申立て全部成立) A01K
管理番号 1051709
審判番号 審判1998-35091  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-02-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-03-06 
確定日 2001-12-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第2112134号「魚釣用リ?ル」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成11年7月28日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成11(行ケ)年第432号平成13年2月27日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 登録第2112134号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件登録第2112134号実用新案(以下、「本件実用新案登録」という。)は、昭和62年8月29日に実願昭62-131739号として出願された実用新案登録出願の一部を、平成5年7月9日に、新たな実用新案登録出願として分割出願された実願平5-37677号の出願(以下、「本件分割出願」という。)に係り、平成7年8月16日に出願公告され、その考案について平成8年3月22日に実用新案権の設定登録がなされ、その後の平成9年12月5日に、訂正審判請求人ダイワ精工株式会社により、第2112134号実用新案登録の明細書を審判請求書に添付する訂正明細書の記載のとおりに訂正することを認める、との審決を求める訂正審判が請求され、平成10年6月10日付け審決書において前記訂正を認容する結論の審決がなされる一方で、前後して平成10年3月6日に請求人株式会社金洋レポーツ(以下、「請求人」という。)により本件実用新案登録について無効審判が請求され、請求人より平成10年5月26日付けの審判理由補充書が提出され、被請求人ダイワ精工株式会社(以下、「被請求人」という。)より平成10年11月30日付けの審判事件答弁書が提出され、請求人より平成11年5月28日付けの口頭審理陳述要領書が提出され、口頭審理(平成11年5月28日)がなされ、その後、請求人及び被請求人より平成11年6月4日付けの上申書がそれぞれ提出され、さらに被請求人より平成11年6月10日付けの上申書が提出され、平成11年7月28日付けで、請求は成り立たないとする結論の審決がなされ、その後の平成11年12月27日に、前記審決を取り消すことを求める訴えが株式会社金洋レポーツにより東京高等裁判所に提起され、平成13年2月27日付けで、特許庁が平成10年審判第35091号事件について平成11年7月28日にした審決を取り消す、との判決がなされたものである。

第2 本件実用新案登録に係る考案の要旨
本件実用新案登録の設定登録後の平成9年12月5日に請求された訂正審判事件についての審決により、願書に添付した明細書又は図面の訂正をすべき旨の平成10年6月10日付けの審決がすでに確定していることにより、本件実用新案登録に、旧実用新案法第41条において準用する特許法第128条の規定が適用されることに基づき、本件実用新案登録の請求項1に係る考案の要旨(以下、「本件考案」という。)は、前記訂正審判事件における訂正請求書に添付された訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】リールボデイに支持されたハンドル操作による回転を、リールボデイに組み込まれた回転伝達系を介して糸巻付回転体に伝達する魚釣用リールにおいて、上記ハンドル操作により回転される回転体の外周に一方向ベアリングを嵌合し、該一方向ベアリングの外輪の径方向外方に複数の係止部を周方向に有する逆転防止部を形成し、該逆転防止部の外方にリールボデイに設けた係止部材を係合又は離脱状態にそれぞれ切換え保持可能とするとともに糸巻取り回転操作時の上記一方向ベアリングがフリー状態の時に上記逆転防止部に上記係止部材を係合状態に保持したことを特徴とする魚釣用リール。」

第3 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、登録第2112134号実用新案の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、下記の証拠方法を提出し、以下の無効理由を主張する。その無効理由の要点は、次のとおりである。
なお、請求人が、平成11年5月28日における口頭審理において、下記無効理由1についての「実用新案登録請求の範囲の請求項1における『糸巻取り回転操作時の上記一方向ベアリングがフリー状態の時に上記逆転防止部に上記係止部材を係合状態に保持したこと』の構成要件を付加する平成7年1月25日付け手続補正は、明細書の要旨を変更するものではない。」との被請求人の主張を肯定したことに基づいてなされた請求人の「無効理由1を取り下げる」旨の陳述が、「第1回口頭審理調書」に記録されている。
(1)当初主張の無効理由
・無効理由1:本件実用新案についてなされた平成7年1月25日付けの手続補正は、明細書の要旨を変更するものであり、本件分割出願は、前記手続補正をした時に出願したとみなされる(旧実用新案法第9条において準用する旧特許法第40条)ことにより、本件考案は、甲第3号証に記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定に違反するものであるから、本件実用新案登録は、旧実用新案法第37条第1項第1号の規定に基づき無効とされるべきものである。
・無効理由2:本件考案は、甲第1号証に記載された考案であり、実用新案法第3条第1項第3号に該当するものであるから、本件実用新案登録は、旧実用新案法第37条第1項第1号の規定に基づき無効とされるべきものである。
・無効理由3:本件考案は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定に違反するものであるから、本件実用新案登録は、旧実用新案法第37条第1項第1号の規定に基づき無効とされるべきものである。
(2)平成11年6月4日付け上申書において追加主張された無効理由
・無効理由4:本件分割出願は、もとの実用新案登録出願(以下、これを「原出願」という。)の明細書又は図面に記載の範囲外の「該一方向ベアリングの外輪の径方向外方に複数の係止部を周方向に有する逆転防止部を形成し、」及び「該逆転防止部の外方にリールボディに設けた係止部材」の技術事項をその実用新案登録請求の範囲に記載しているから、本件分割出願は分割要件を満たしておらず、旧実用新案法第9条において準用する特許法第44条第1項の規定に違反して出願されたものであるから、本件分割出願の出願日が、実際に出願をした日の平成5年7月9日に繰り下がることにより、本件考案は、甲第4号証に記載の考案であるか、又は甲第4号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、又は実用新案法第3条第2項の規定に違反するから、本件実用新案登録は、旧実用新案法第37条第1項第1号の規定に基づき無効とされるべきものである。
・無効理由5:平成7年1月25日付け手続補正書に基づいて、明細書が補正されることにより、実用新案登録請求の範囲に新たに付加された「糸巻取り回転操作時の上記一方向ベアリングがフリー状態の時に上記逆転防止部に上記係止部材を係合状態に保持した」の構成要件は、原出願の明細書又は図面に記載されていなかった技術事項であり、この構成要件は、選択的な構成要件ではなく、原出願の考案及び本件分割出願の考案のいずれにも必須の構成要件であるので、この構成要件を欠く原出願の考案とこの構成要件が付加された本件分割出願の考案とは、この構成要件以外の構成において相互に重なる部分は実質上同一の考案である。したがって、本件分割出願は分割要件を欠如しているので、旧実用新案法第9条において準用する特許法第44条第1項の規定に違反して出願されたものであるから、本件分割出願の出願日は、実際に分割出願をした日の平成5年7月9日に繰り下がることにより、本件考案は、甲第4号証に記載の考案であるので実用新案法第3条第1項第3号に該当し、又は、甲第4号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので実用新案法第3条第2項の規定に違反するから、本件実用新案登録は、旧実用新案法第37条第1項第1号の規定に基づき無効とされるべきものである。

・甲第1号証:実公昭55-38380号公報
・甲第2号証:実公昭52-26469号公報
・甲第3号証:実願平5-37677号(実開平6-17474号公報)のCD-ROM
・甲第4号証:実開昭64-38963号公報
・疎甲第1号証(口頭審理参考資料1):『釣りの仕掛け大百科 上巻 海水魚編』の129頁及び131頁、株式会社地球丸、1999年4月30日発行
・疎甲第2号証(口頭審理参考資料2):『FlyFisher平成10年11月号』の106頁の「MARRYAT CMR」なるリールの広告記事、株式会社つり人社、平成10年11月1日発行
・疎甲第3号証(口頭審理参考資料3):「MARRYAT REEL」のMR7AなるModelに添付されていた『Marryat Reel取扱い説明書』の写し
・疎甲第4号証(口頭審理参考資料4):「Daiwa SPINNING REEL REGAL-Z2500iA」なるリールに添付されていた『スピニングリール取扱説明書』の写し
・疎甲第1号物件(口頭審理参考物件1):「MARRYAT REEL MR7A」なるModelの現物
・疎甲第2号物件(口頭審理参考物件2):「Daiwa SPINNING REEL REGAL-Z2500iA」なるリールの現物

2.被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の当初主張の前記無効理由1ないし無効理由3に対し、「本件考案には、審判請求人が主張するような無効理由は存在しない。」と主張する。
また、請求人が提出した平成11年6月4日付け上申書において追加主張された無効理由4及び無効理由5に対し、被請求人は、平成11年6月10日付け上申書を提出し「(1)本分割出願は、原出願の【0022】【0023】の記載に基づいて適法に分割出願され、厳正な審査によって登録されたものである。よって、審判請求人の上申書の理由1は成り立たない。(2)口頭審理において、審判請求人は、『平成7年1月25日付手続補正書は要旨変更であるので、その手続補正書提出日が本件実用新案登録出願日とみなされるべきである。』との主張は取下げている。よって、審判請求人の上申書の理由2は成り立たない。」と主張する。

第4 当審の判断
請求人が主張する無効理由2ないし無効理由5の無効理由のうち、無効理由4について検討する。
A.本件分割出願の適法性についての検討
1.本件分割出願の出願当初の記載事項
本件分割出願の出願当初の実用新案登録請求の範囲には、「【請求項1】リールボディに支持されたハンドル操作による回転を、リールボディに組み込まれた回転伝達系を介して糸巻付回転体に伝達する魚釣用リールにおいて、上記ハンドル操作により回転される回転体の外周に一方向ベアリングを嵌合し、該一方向ベアリングの外輪の径方向外方に複数の係止部材を周方向に有する逆転防止部を形成し、該逆転防止係止部の外方にリールボディに設けた係止部材を係合又は離脱状態にそれぞれ切換え保持可能とするとともに糸巻取り回転操作時の上記一方向ベアリングがフリー状態の時に上記逆転防止部に上記係止部材を係合状態に保持したことを特徴とする魚釣用リール。」が記載されていたものである。
しかして、実用新案権の設定登録後の平成9年12月5日に、実用新案権者ダイワ精工株式会社により、第2112134号実用新案登録の明細書を審判請求書に添付する訂正明細書の記載のとおりに訂正することを認める、との審決を求める訂正審判が請求され、平成10年6月10日付け審決書において、実用新案登録請求の範囲の「複数の係止部材」「該逆転防止係止部」をそれぞれ「複数の係止部」「該逆転防止部」と訂正することを認容する結論の審決がなされたことにより、本件分割出願の出願当初の実用新案登録請求の範囲には、次の事項が記載されてあったものとして読み換えるものとする。
「【請求項1】リールボデイに支持されたハンドル操作による回転を、リールボデイに組み込まれた回転伝達系を介して糸巻付回転体に伝達する魚釣用リールにおいて、上記ハンドル操作により回転される回転体の外周に一方向ベアリングを嵌合し、該一方向ベアリングの外輪の径方向外方に複数の係止部を周方向に有する逆転防止部を形成し、該逆転防止部の外方にリールボデイに設けた係止部材を係合又は離脱状態にそれぞれ切換え保持可能とするとともに糸巻取り回転操作時の上記一方向ベアリングがフリー状態の時に上記逆転防止部に上記係止部材を係合状態に保持したことを特徴とする魚釣用リール。」(以下、これを「本件分割出願の記載事項」という。)

2.原出願の記載事項
しかるに、原出願の実用新案登録請求の範囲(甲第4号証参照)には、「リールボデイに支持されたハンドル操作による回転を、リールボデイに組み込まれた回転伝達系を介して糸巻付回転体に伝達する魚釣用リールにおいて、上記ハンドル操作により回転される回転体の外周に一方向ベアリングを嵌合し、この一方向ベアリングの外周に爪車を回り止め嵌着すると共に、上記爪車に係止爪を係脱可能に係合したことを特徴とする魚釣用リール。」(以下、これを「原出願の記載事項」という。)が記載されていたものである。

3.対比
ここで、上記本件分割出願の記載事項と上記原出願の記載事項とを比較すると、原出願の実用新案登録請求の範囲に「この一方向ベアリングの外周に爪車を回り止め嵌着すると共に、」及び「上記爪車に係止爪を係脱可能に係合した」と記載されていた技術事項を、本件分割出願においては、それぞれ「該一方向ベアリングの外輪の径方向外方に複数の係止部を周方向に有する逆転防止部を形成し、」及び「該逆転防止部の外方にリールボデイに設けた係止部材を係合又は離脱状態にそれぞれ切換え保持可能とする」と記載することにより、原出願における「爪車」及び「係止爪」がそれぞれ「複数の係止部を周方向に有する逆転防止部」及び「係止部材」に変更されていることが明らかである。
そして、上記「複数の係止部を周方向に有する逆転防止部」及び「係止部材」の文言は、原出願の明細書及び図面に記載されていないことも明らかである。

4.当審の判断
しかして、上記「複数の係止部を周方向に有する逆転防止部」には、原出願の明細書及び図面に記載された技術事項の範囲外の、「爪」の形状を呈しない「係止部」を有する「爪車」以外の逆転防止機能を有する機構が含まれることになるのは明らかであり、また、上記「係止部材」にも、原出願の明細書及び図面に記載された技術事項の範囲外の「爪」の形状を呈しない「係止爪」以外の係止機能を有する機構が含まれることになることも明らかである。
そうしてみると、上記「複数の係止部を周方向に有する逆転防止部」及び「係止部材」の文言を含む本件分割出願は、原出願に記載されていない技術事項を含む考案を新たな実用新案登録出願として出願したものであるから、本件分割出願は、旧実用新案法第9条において準用する特許法第44条第1項に規定されている「二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。」という分割要件を満たしていないので、本件分割出願について、旧実用新案法第9条において準用する特許法第44条第2項に規定されている「前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす」ことができない。
したがって、本件分割出願の出願日は、実際に実用新案登録出願をした日である平成5年7月9日とすべきものである。

B.実用新案法第3条第1項第3号について
1.甲第4号証の記載事項
甲第4号証(実開昭64-38963号公報)は、本件分割出願の出願日である平成5年7月9日より前の昭和64年3月8日に出願公開された刊行物であり、前記甲第4号証には、考案の名称が「魚釣用リール」と題する考案に関して、次の技術事項が記載されている。
「リールボデイに支持されたハンドル操作による回転を、リールボデイに組み込まれた回転伝達系を介して糸巻付回転体に伝達する魚釣用リールにおいて、上記ハンドル操作により回転される回転体の外周に一方向ベアリングを嵌合し、この一方向ベアリングの外周に爪車を回り止め嵌着すると共に、上記爪車に係止爪を係脱可能に係合したことを特徴とする魚釣用リール。」(甲第4号証の実用新案登録請求の範囲の欄)
「第1図は本考案の逆転止め機構をスピニングリールに適用した場合の第1の実施例を示す一部切欠きの側面図、第2図は第1図のII-II線に沿う断面図、第3図は本考案の第2の実施例を示す要部の断面図、第4図は本考案の逆転止め機構を両軸受リールに適用した場合の第3の実施例を示す一部切欠きの側面図、第5図は第4図のV-V線に沿う断面図である。
1,30・・・リールボデイ、4・・・フライヤ軸(回転体)、6・・・ピニオン、7,34・・・ドライブギア、8・・・駆動軸、10・・・ハンドル、11,25,36・・・一方向ベアリング、12,26,37・・・爪車、13,27,38・・・係止爪、15,40・・・ばね、18,41・・・切換レバー。」(甲第4号証の図面の簡単な説明の欄)
そして、第1図、第2図及び第3図に記載された、逆転止め機構をスピニングリールに適用した場合の第1及び第2の実施例の記載からみて、甲第4号証の図面には、ハンドル10の回転操作により回転駆動されるフライヤ軸(回転体)4の外周に一方向ベアリング11が嵌合され、該一方向ベアリング11の外輪の径方向外方に複数の歯を周方向に有する爪車12が設けられ、該爪車12の外方にリールボデイ1に設けた係止爪13が、切換レバー18により係合又は離脱状態にそれぞれ切換え保持可能とされるとともに、ハンドル10を第1図に図示の矢印A方向に糸巻取り回転操作すると、ハンドル10の回転力が駆動軸8及びドライブギア7を介してフライヤ軸(回転体)4の外周に一体に形成されたピニオン6に伝達されることにより、フライヤ軸(回転体)4は第2図に図示の矢印B方向とは反対方向に回転し、上記一方向ベアリング11がフリー状態の時には、上記爪車12に上記係止爪13がばね15の付勢力により係合状態に保持される魚釣用リール、が記載されている。

2.本件考案と甲第4号証に記載の考案との対比
(1)甲第4号証に記載の考案
前記「1.甲第4号証の記載事項」の欄における甲第4号証の記載事項を総合すると、甲第4号証には、リールボデイ1に支持されたハンドル10操作による回転を、リールボデイ1に組み込まれた駆動軸8、ドライブギア7及びピニオン6を介して回転体4に伝達する魚釣用リールにおいて、上記ハンドル10操作により回転される回転体4の外周に一方向ベアリング11を嵌合し、該一方向ベアリング11の外輪の径方向外方に複数の歯を周方向に有する爪車12を形成し、該爪車12の外方にリールボデイ1に設けた係止爪13を係合又は離脱状態にそれぞれ切換え保持可能とするとともに糸巻取り回転操作時の上記一方向ベアリング11がフリー状態の時に上記爪車12に上記係止爪13を係合状態に保持した魚釣用リール、が記載されているということができる。
(2)対比及び一致点・相違点
ここで、本件考案と甲第4号証に記載の考案とを対比すると、甲第4号証の「リールボデイ1」「ハンドル10」「リールボデイ1に組み込まれた駆動軸8、ドライブギア7及びピニオン6」「回転体4」「一方向ベアリング11」が、それぞれ本件考案の「リールボデイ」「ハンドル」「リールボデイに組み込まれた回転伝達系」「糸巻付回転体」「一方向ベアリング」に相当することは、明らかである。
また、甲第4号証に記載の考案における「該一方向ベアリング11の外輪の径方向外方に複数の歯を周方向に有する爪車12」の内の「複数の歯」は、本件考案の「該一方向ベアリングの外輪の径方向外方に複数の係止部を周方向に有する逆転防止部」の内の「複数の係止部」に相当するから、結局、甲第4号証に記載の考案における前記「該一方向ベアリング11の外輪の径方向外方に複数の歯を周方向に有する爪車12」は、本件考案の「該一方向ベアリングの外輪の径方向外方に複数の係止部を周方向に有する逆転防止部」を具体化した下位概念の事柄であるから、甲第4号証に記載の考案の前記「該一方向ベアリング11の外輪の径方向外方に複数の歯を周方向に有する爪車12」は、本件考案の「該一方向ベアリングの外輪の径方向外方に複数の係止部を周方向に有する逆転防止部」に該当するものであるということができる。
また同様に、甲第4号証に記載の考案における「該爪車12の外方にリールボデイ1に設けた係止爪13」は、本件考案の「該逆転防止部の外方にリールボデイに設けた係止部材」を具体化した下位概念の事柄であるから、甲第4号証に記載の考案の前記「該爪車12の外方にリールボデイ1に設けた係止爪13」は、本件考案の「該逆転防止部の外方にリールボデイに設けた係止部材」に該当するものであるということができる。
そこで、本件考案と甲第4号証に記載の考案とを比較すると、両者は「リールボデイに支持されたハンドル操作による回転を、リールボデイに組み込まれた回転伝達系を介して糸巻付回転体に伝達する魚釣用リールにおいて、上記ハンドル操作により回転される回転体の外周に一方向ベアリングを嵌合し、該一方向ベアリングの外輪の径方向外方に複数の係止部を周方向に有する逆転防止部を形成し、該逆転防止部の外方にリールボデイに設けた係止部材を係合又は離脱状態にそれぞれ切換え保持可能とするとともに糸巻取り回転操作時の上記一方向ベアリングがフリー状態の時に上記逆転防止部に上記係止部材を係合状態に保持した魚釣用リール」である点で一致し、両者間に構成の異なるところが認められない。
(3)まとめ
したがって、本件考案は、本件考案の登録実用新案出願前に出願公開された刊行物である甲第4号証に記載された考案である。

C.被請求人の主張について
被請求人は、無効理由4に対して、「本分割出願は、原出願の【0022】【0023】の記載に基づいて適法に分割出願され、厳正な審査によって登録されたものである。よって、審判請求人の上申書の理由1は成り立たない。」と主張する。
しかしながら、原出願の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「原出願当初明細書」という。)の考案の詳細な説明の欄における、被請求人が主張する【0022】及び【0023】に相当する個所には「また、ハンドル10を第1図において矢印Aで示す糸巻取方向に回転操作すると、その回転はハンドル軸9から、駆動軸8-ドライブギア7-ピニオン6を通してフライヤ軸4に伝達され、フライヤ19及びベイル20を回転することで釣糸をスプール23に巻回する。この時、一方向ベアリング11はフライヤ軸4の矢印B方向への回転に対しフリー状態となり、爪車12はほとんど回転されない。」(原出願当初明細書8頁4行?12行)とのみ記載されているだけであり、本件実用新案登録における「複数の係止部を周方向に有する逆転防止部」及び「係止部材」についての記載は認められない。
また、前記【0022】及び【0023】に相当する個所のみならず、原出願当初明細書全体にも、本件考案における「複数の係止部を周方向に有する逆転防止部」及び「係止部材」についての記載のあることが認められないから、「本分割出願は、原出願の【0022】【0023】の記載に基づいて適法に分割出願され、」たものということができない。
したがって、被請求人の上記主張は、採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、本件考案は、甲第4号証に記載された考案であり、実用新案法第3条第1項第3号に該当するものであるから、本件実用新案登録は、旧実用新案法第37条第1項第1号の規定に基づき無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-07-05 
結審通知日 1999-07-23 
審決日 1999-07-28 
出願番号 実願平5-37677 
審決分類 U 1 112・ 113- Z (A01K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石井 哲  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 佐藤 昭喜
久保 竜一
鈴木 寛治
松川 直樹
登録日 1996-03-22 
登録番号 実用新案登録第2112134号(U2112134) 
考案の名称 魚釣用リ?ル  
代理人 坪井 淳  
代理人 中村 誠  
代理人 斎藤 栄一  
代理人 伊藤 晴之  
代理人 瀬谷 徹  
代理人 水野 浩司  
代理人 鈴江 武彦  
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