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審決分類 審判 全部申し立て   B65D
管理番号 1051722
異議申立番号 異議1998-75467  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2002-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-11-10 
確定日 2001-11-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第2573927号「チューブ容器」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2573927号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 【1】手続きの経緯
本件実用新案登録2573927号考案は、平成5年12月22日に実用新案登録出願され、平成10年3月27日にその実用新案登録の設定登録がなされ、その後、田川武より実用新案登録異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年9月30日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年5月8日に手続補正がなされ、再度の訂正拒絶理由通知がなされ、指定期間を過ぎても意見書が提出されなかったものである。
【2】訂正の適否についての判断
ア)訂正明細書の請求項1に係る考案
平成13年5月8日付けで提出された意見書及び手続補正書の内容から見て、上記手続補正書によって補正しようとする事項は、平成11年9月30日付けでした訂正請求により訂正した実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載を訂正するものであって、訂正請求された訂正明細書の請求項1に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】筒状の胴部の上端に上方凸に傾斜する肩部を経て口頸部が上方に突出して設けられ下端が熱溶着方法で扁平にシールされているチューブ容器において、前記胴部から肩部へ移行するかど部が前記肩部を上方凹に反転状態に保持可能な屈曲性を有し、且つ頂部に拡大頭部が形成され前記頭部の切除により注出口が開設される前記口頸部が前記肩部の前記胴部内への没入深さよりも低い高さとされ、内容物が充填された状態において前記肩部を前記胴部内へ没入させて前記かど部を底部として倒立できるとともに、前記口頸部を引張って前記胴部から前記肩部を突出できる構成としたことを特徴とするチューブ容器。」(以下、「本件訂正考案」という。)
イ)訂正事項
訂正事項1;実用新案登録請求の範囲の【請求項1】の記載を「筒状の胴部の上端に上方凸に傾斜する肩部を経て口頸部が上方に突出して設けられ下端が熱溶着方法で扁平にシールされているチューブ容器において、前記胴部から肩部へ移行するかど部が前記肩部を上方凹に反転状態に保持可能な屈曲性を有し、且つ頂部に拡大頭部が形成され前記頭部の切除により注出口が開設される前記口頸部が前記肩部の前記胴部内への没入深さよりも低い高さとされ、内容物が充填された状態において前記肩部を前記胴部内へ没入させて前記かど部を底部として倒立できるとともに、前記口頸部を引張って前記胴部から前記肩部を突出できる構成としたことを特徴とするチューブ容器。」のとおり訂正する。
訂正事項2;明細書の考案の詳細な説明の記載の段落【0005】?【0011】、【0020】?【0022】を添付した訂正明細書のとおりに訂正する。
ウ)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項1は、実用新案登録明細書に記載された事項の範囲内で口頸部の構成を減縮しようとするものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当するものである。
上記訂正事項2は、訂正した実用新案登録請求の範囲の記載に整合させるために明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当するものである。
そして、訂正事項1及び2は、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ)独立実用新案登録要件の有無について
<本件訂正考案>
訂正明細書の請求項1に係る考案は、平成13年5月8日付けで提出された手続補正書によって補正された訂正明細書の請求項1に記載されたとおりのものである(上記ア)参照)。
<引用刊行物記載の考案>
本件訂正考案に対し、当審が平成13年6月8日付けの再度の訂正拒絶理由通知において示した刊行物1(実願昭50-101793号(実開昭52-17267号)のマイクロフィルム)には、内容品の注出を容易に行う倒立支持型の中空成形のプラスチック容器に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
記載事項1-1;「胴部と内容品の充填口を突出させた肩部との間に折曲部を形成し、前記折曲部から肩部および充填口を胴部内に嵌入させ、折曲部を下方にして胸部を倒立支持可能に構成したことを特徴とする中空成形容器。」(実用新案登録請求の範囲)
記載事項1-2;「そこで以上2つの使用状態から容器を倒立させて……この実施例では、第2図に示すようにある程度内容品を使用した後の段階において、肩部3および充填口4を折曲部6,7から折曲げて胴部2内に押込み挿入させる……該折曲部6で胴部2を倒立して直立支持させ得る。」(第4頁11行?第5頁5行)、
記載事項1-3;「また第7図ないし第11図は他の実施例を示す。……11は容器本体で、胴部12,肩部13および肩部13から突出した充填口14を備え、これらが軟質の合成樹脂で一体に中空成形されている。……、第8図に示すように充填口をヒートシールする。さらに第9図に示すように肩部13および充填口14を折曲部16から折曲して胸部12内に押込み嵌入させ、第10図,第11図に示すように、前記折曲部16で容器本体1を支持して倒立させ、……、第11図の倒立状態ではヒートシール部15を有する充填口14部が肩部13と共に外部からは見えないので、……内容品の取出しは例えば凝固した豆腐の場合凹溝17部を刃物を用いて切離すことにより、……底側を除去して取出す……、胴部と肩部との間に形成した切曲部から切曲げて、肩部と充填口とを胴部内に嵌入させて胴部を倒立支持させる」(第7頁末1行?第9頁12行)
同じく、刊行物2(実願昭58-88728号(実開昭59-193107号)のマイクロフィルム)には、ブロー成形等で成形された包装用容器に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
記載事項2-1;「胴部11の上端に反転没入可能に膨出する肩部12を連設し、該肩部の中央に口頚部13を設けて、該口頚部にキャップ2を着脱自在に装着し、胴部11の下端部分に適宜折目線16…を設けて、該折目線を以て折畳み接合することにより底部15を形成するよう構成したことを特徴とする包装用容器。」(実用新案登録請求の範囲)
さらに、刊行物3(実願昭59-107642号(実開昭61-26047号)のマイクロフィルム)には、プラスチック容器の端部を熱溶着手段を用いてヒートシールするスクイズチューブ容器に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
記載事項3-1;「容器1に化粧品、……、その他の日用品を充填した後エンドシール部9をヒートシール法、……、密封し商品化する」(第10頁末行?第11頁3行)
<対比・判断>
本件訂正考案と刊行物1に記載された考案とを対比すると、
刊行物1記載の考案における「胴部」、「肩部」、「充填口」、「折曲部」は、それぞれ、本件訂正考案における「筒状の胴部」、「肩部」、「口頚部」、「肩部を上方凹に反転状態に保持可能な屈曲性を有するかど部」に相当するから、
両者は、本件訂正考案の用語を用いて表現すると「筒状の胴部の上端に上方凸に傾斜する肩部を経て口頸部が上方に突出して設けられているチューブ容器において、前記胴部から肩部へ移行するかど部が前記肩部を上方凹に反転状態に保持可能な屈曲性を有し、且つ内容物が充填された状態において前記肩部を前記胴部内へ没入させて前記かど部を底部として倒立できるとともに、前記口頸部を引張って前記胴部から前記肩部を突出できる構成としたことを特徴とするチューブ容器。」で一致し、以下の点で相違する。
本件訂正考案の容器が「下端が熱溶着方法で扁平にシールされている」とされているのに対して刊行物1記載の考案のものがそのような構成を明記していない点(以下、「相違点1」という。)、本件訂正考案の容器が「頂部に拡大頭部が形成され前記頭部の切除により注出口が開設される」としているのに対して刊行物1記載の考案のものがそのような構成を明記していない点(以下、「相違点2」という。)、及び、本件訂正考案の容器が「前記口頸部が前記肩部の前記胴部内への没入深さよりも低い高さとされ」としているのに対して刊行物1記載の考案のものがそのような構成を明記していない点(以下、「相違点3」という。)で相違する。
相違点について検討する。
相違点1について検討すると、刊行物1記載の考案のものも充填口4をヒートシールするものであって、この種の中空成形容器においては端部を熱シールすることは通常なされる技術であることが容易に類推できるところであり、かつ、下端部分や下端部を熱溶着方法でシールすることは刊行物2及び3に記載されているように当業者における周知技術であるから、この周知技術を刊行物1に適用して上記相違点1を想到することは当業者が格別の考案力を要するまでもなくきわめて容易になし得ることであると認められる。
相違点2について検討すると、刊行物1には内容品として凝固した豆腐を取出すに際して、凹溝部17を刃物で切離すことが記載されており、一般的に一度限り使用の容器において、この切離し部分を必要に応じて適宜選択的な取出し位置として選定し、本件考案のように拡大頭部位置に限定して切除注出口とすることに格別の不都合があるとも言い難いから、相違点2のように構成することは当業者がきわめて容易になし得る事項であると認められる。
相違点3について検討すると、刊行物1の第2実施例の第11図の記載を検討すれば、倒立された容器のシール部15と折曲部16とはそれぞれ本件考案の口頚部4と肩部へ移行するかど部6に相当し、該第11図においても「口頸部が前記肩部の前記胴部内への没入深さよりも低い高さとされ」ていることが図面から容易に理解できる。よって、相違点3は刊行物1の考案にも示唆されているものであって、この点を想到することに格別の困難性があるとは認めがたい。
オ)むすび
したがって、本件訂正考案は、刊行物1の考案と刊行物2及び3に記載された周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、上記訂正は、平成6年法律第116号附則第9条第2項によって準用する特許法第120条の4第3項でさらに準用する平成6年法改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

【3】異議の申立についての判断
<本件考案>
実用新案登録第2573927号の請求項1に係る考案は、その登録明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】筒状の胴部の上端に上方凸に傾斜する肩部を経て口頸部が上方に突出して設けられ下端が熱溶着方法で扁平にシールされているチューブ容器において、前記胴部から肩部へ移行するかど部が前記肩部を上方凹に反転状態に保持可能な屈曲性を有し、且つ前記口頸部が前記肩部の前記胴部内への没入深さよりも低い高さとされ、内容物が充填された状態において前記肩部を前記胴部内へ没入させて前記かど部を底部として倒立できるとともに、前記口頸部を引張って前記胴部から前記肩部を突出できる構成としたことを特徴とするチューブ容器。」(以下、「本件考案」という。)
<引用刊行物記載の考案>
当審が通知した平成11年8月19日付け取消理由に引用した刊行物1(実願昭50-101793号(実開昭52-17267号)のマイクロフィルム)、刊行物2(実願昭58-88728号(実開昭59-193107号)のマイクロフィルム)、及び、刊行物3(実願昭59-107642号(実開昭61-26047号)のマイクロフィルム)の記載事項については、上記【2】の刊行物1?3にそれぞれ相当し、上記の技術事項として記載されたとおりであって、省略する。
また、同じく引用した刊行物4(特開昭48-58981号公報)には、屈曲可能な容器に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
記載事項4-1;「チューブ本体12の熱可塑性層22は前記スカート部……中略……、且つ前記チューブ本体と肩部部分とはスカート部26に前記帯条部を接着する熱と圧力の付与によりスカート部の全周囲に亘って熱シールされる。」(第4頁上左欄7行?12行)
<対比・判断>
本件考案と刊行物1に記載された考案とを対比すると、
刊行物1記載の考案における「胴部」、「肩部」、「充填口」、「折曲部」は、それぞれ、本件考案における「筒状の胴部」、「肩部」、「口頚部」、「肩部を上方凹に反転状態に保持可能な屈曲性を有するかど部」に相当するから、
両者は、本件考案の用語を用いて表現すると「筒状の胴部の上端に上方凸に傾斜する肩部を経て口頸部が上方に突出して設けられているチューブ容器において、前記胴部から肩部へ移行するかど部が前記肩部を上方凹に反転状態に保持可能な屈曲性を有し、且つ内容物が充填された状態において前記肩部を前記胴部内へ没入させて前記かど部を底部として倒立できるとともに、前記口頸部を引張って前記胴部から前記肩部を突出できる構成としたことを特徴とするチューブ容器。」で一致し、以下の点で相違する。
本件考案の容器が「下端が熱溶着方法で扁平にシールされている」とされているのに対して刊行物1記載の考案のものがそのような構成を明記していない点(以下、「本件考案との相違点1」という。)、及び、本件考案の容器が「前記口頸部が前記肩部の前記胴部内への没入深さよりも低い高さとされ」としているのに対して刊行物1記載の考案のものがそのような構成を明記していない点(以下、「本件考案との相違点2」という。)で相違する。
相違点について検討する。
本件考案との相違点1及び2は、それぞれ上記【2】の<対比・判断>で検討した際の、相違点1及び3に相当するものであり、上記【2】で説示したように、該本件考案との相違点1については、刊行物1に記載された技術事項に刊行物2、3記載の周知技術を適用することできわめて容易に想到でき、また、本件考案との相違点2については、刊行物1の第2実施例の第11図の記載に示唆されている技術事項からもきわめて容易に想到できる事項である。
よって、本件考案は、刊行物1に記載された考案及び刊行物2?4に記載された周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められる。
<むすび>
以上のとおりであるから、本件考案は、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができない。
したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してなされたものと認める。
よって、平成6年法律第116号附則第9条第7項の規定に基づく、平成7年政令第205号第3条第2項に規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2001-09-28 
出願番号 実願平5-73451 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (B65D)
最終処分 取消    
前審関与審査官 伏見 隆夫  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 杉原 進
市野 要助
登録日 1998-03-27 
登録番号 実用新案登録第2573927号(U2573927) 
権利者 釜屋化学工業株式会社
東京都台東区浅草橋5丁目23番6号
考案の名称 チューブ容器  
代理人 橋本 克彦  

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