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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62M
管理番号 1053451
審判番号 不服2000-12301  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-08-07 
確定日 2002-01-28 
事件の表示 平成5年実用新案登録願第9787号「自転車用フロントギヤ装置」[平成6年9月22日出願公開、実開平6-67289]拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯及び本願考案
本願は、平成5年3月9日にされた実用新案登録出願であって、その請求項1?3に係る考案は、平成12年9月4日及び平成13年11月2日付の各手続補正書によって補正された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1?3に記載された、以下のとおりのものと認める。
「 【請求項1】 高速用フロントギヤ(5)と、これより小径である中速用フロントギヤ(6)と、前記中速用フロントギヤより小径である低速用フロントギヤ(7)を備えるとともに、前記フロントギヤ(5)、(6)、(7)を回動駆動するクランク(1)を備える自転車用フロントギヤ装置であって、
前記中速用フロントギヤ(6)を前記クランク(1)のギヤ取り付けアーム部(10)に連結し、
前記高速用フロントギヤ(5)の取り付け脚部(5b)を前記クランク(1)に対して非連結状態に配置するとともに前記中速用フロントギヤ(6)に連結し、
前記中速用フロントギヤ(6)と前記低速用フロントギヤ(7)とが前記ギヤ取り付けアーム部(10)に共締めによって連結し、
前記ギヤ取り付けアーム部(10)の先端面(A)を、前記取り付け脚部(5b)と前記中速用フロントギヤ(6)との連結箇所よりギヤ回動軸芯側に配置するとともに前記取り付け脚部(5b)の先端面(B)に近接配置し、
前記ギヤ取り付けアーム部(10)の先端面(A)と前記取り付け脚部(5b)の先端面(B)とが対向している箇所において、前記ギヤ取り付けアーム部(10)のギヤ回動軸芯方向視での横端面(W)と、前記取り付け脚部(5b)のギヤ回動軸芯方向視での横端面(V)とが滑らかに連続している自転車用フロントギヤ装置。
【請求項2】 前記ギヤ取り付けアーム部(10)の先端面(A)と前記取り付け脚部(5b)の先端面(B)とが対向している箇所において、前記ギヤ取り付けアーム部(10)の横外側面(X)と前記取り付け脚部(5b)の横外側面(Y)とが滑らかに連続している請求項1記載の自転車用フロントギヤ装置。
【請求項3】 前記ギヤ取り付けアーム部(10)の内側面側に、ギヤ取り付けねじ孔(11a)を有するギヤ取り付けピン(11)が突出し、前記ギヤ取り付けねじ孔(11a)が前記ギヤ取り付けアーム部(10)の内側面側にのみ開口する有底ねじ孔である請求項1又は2に記載の自転車用フロントギヤ装置。」

2.刊行物の記載事項及び刊行物記載の考案
これに対して、当審で通知した拒絶理由通知において引用した、実公昭44-16043号公報(以下、「刊行物1」という。)、実願平1-38930号(実開平2-129988号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)、実願平1-25408号(実開平2-115788号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)、実公昭39-21814号公報(以下、「刊行物4」という。)及び特開平3-217389号公報(以下、「刊行物5」という。)には、以下の事項及び考案が記載されている。

2-1.刊行物1の記載事項及び刊行物1記載の考案
刊行物1には、「自転車用多段変速ギヤ」に関して、以下の記載がある。
(ア)「クランク1のヘッド2の基部に張り出した取付鍔3の裏面にセンターギヤ6の取付脚8を固着し、この取付脚8の外面にアウターギヤ4の取付脚5を重合させると共に内面にインナーギヤ7の取付脚9を重合して、ボルト10ナット11を介して固着したものである。尚図例において・・・13,14はセンターギヤ6の取付脚8とクランク側の止着用ボルト及びナットである。」(公報第2欄第12?21行)
(イ)「センターギヤ6の取付脚8は十字形され、アウターギヤ4インナーギヤ7の取付脚5,9は何れもクランクヘッド2の取付鍔3に達しない短かいものとされ、特にアウターギヤ4の取付脚5は中央に取付鍔3及びペタルの自由に通過できる開口を存する形状のものとされる。」(公報第2欄第23?29行)
また、図1には、
(ウ)「アウターギヤ4」よりも「センターギヤ6」が小径に、「センターギヤ6」よりも「インナーギヤ7」が小径に図示されている。

以上の記載及び図示からみて、刊行物1には、
“「アウターギヤ4」と、これより小径である「センターギヤ6」と、前記「センターギヤ6」より小径である「インナーギヤ7」を備えるとともに、前記「アウターギヤ4」、「センターギヤ6」、「インナーギヤ7」を回動駆動する「クランク1」を備える自転車用ギヤ装置であって、
前記「センターギヤ6」を前記「クランク1」の「取付鍔3」に連結し、
前記「アウターギヤ4」の「取付脚5」を前記「クランク1」に対して非連結状態に配置するとともに前記「センターギヤ6」の「取付脚8」及び「インナーギヤ7」の「取付脚9」を重合して、「ボルト10ナット11を介して固着し」、
前記「取付鍔3」の先端面を、前記「取付脚5」と前記「センターギヤ6」との固着箇所よりギヤ回動軸芯側に配置した自転車用ギヤ装置”
が記載されていると認める。

2-2.刊行物2の記載事項
刊行物2には、「自転車用ギヤクランク」に関して、以下の記載がある。
(エ)「第5図に良く表れているように、上記一方のクランクアーム5には、その基端ボス部5aから半径方向外方に放射状に延出する複数のスプロケット支持アーム部5c・・・が等間隔をあけて設けられており、後述するように、このスプロケット支持アーム部5c・・・にスプロケットが取付けられる。」(明細書第13頁第18行?第14頁第4行)
(オ)「各スプロケット6,7,8は、略リング状に形成されており、これらはそれぞれ、上記各スプロケット支持アーム部5c・・・にボルト止めされることにより取付けられている。すなわち、最大径スプロケット(アウタスプロケット)6・・・は、上記スプロケット支持アーム部5c・・・に配置され、この部にボルト止めされている。また、最も内側に配置される最小径スプロケット(インナスプロケット)8は、スプロケット支持アーム部5cの内側面にボルト止めされている。」(明細書第14頁第7?18行)
また、第5図には、
(カ)「スプロケット支持アーム部5c」と「最大径スプロケット6」との接合箇所において、「スプロケット支持アーム部5c」のギヤ回動軸芯方向視での横端面と、「最大径スプロケット6」のギヤ回動軸芯方向視での横端面とが滑らかに連続して図示され、
さらに、第5図のI-I線断面図である第1図には、
(キ)「スプロケット支持アーム部5c」と「最大径スプロケット6」との接合箇所において、「スプロケット支持アーム部5c」の横外側面と「最大径スプロケット6」の横外側面とが滑らかに連続して図示され、
(ク)「スプロケット支持アーム部5c」の内側面側にのみ開口する有底ねじ孔と「ボルト」とにより、「最小径スプロケット8」を「スプロケット支持アーム部5c」の内側面にボルト止めしていることが図示されている。

2-3.刊行物3の記載事項
刊行物3には、「自転車用多段スプロケット装置」に関して、以下の記載がある。
(ケ)「第1図および第2図に示すように、本例のチェンホイールCWでは、大径スプロケット1・・・が、略リング状に形成されており、またその内部には・・・半径方向内方に延出する複数のステー1a・・・が等間隔に設けられている。一方、上記クランクアーム4には、その基端ボス部から放射状に延びる複数のスプロケット支持アーム5・・・が一体延成されている。そして、大径スプロケット1・・・を上記スプロケット支持アーム5・・・に配置し、・・・スプロケット1・・・のステー1a・・・を上記スプロケット支持アーム5・・・のステー連結部5a・・・に、ステー連結部5aのナット挿着孔5bに挿入するナット6とこれに螺締するボルト7とによって固定することにより、・・・スプロケット1・・・とクランクアーム4とを連結している。」(明細書第12頁第9?13頁第5行)
また、第1図には、
(コ)「スプロケット支持アーム5」と「ステー1a」との接合箇所において、「スプロケット支持アーム5」のギヤ回動軸芯方向視での横端面と、「ステー1a」のギヤ回動軸芯方向視での横端面とが滑らかに連続して図示され、
さらに、第1図のII-II線断面図である第2図には、
(サ)「スプロケット支持アーム5」と「ステー1a」との接合箇所において、「スプロケット支持アーム5」の横外側面と、「ステー1a」の横外側面とが滑らかに連続して図示されているものと認める。

2-4.刊行物4の記載事項
刊行物4には、「自転車の前装4段ギヤ」に関して、以下の記載がある。
(シ)「前装ギヤは第1ギヤ1,第一ぎヤ2、第三ギヤ3および第四ギヤ4とからなり、これら各ギヤを2個1組として別の結合フレーム5の結合部6,6,6で結合一体化しているのである・・・ギヤは・・・それぞれのフレーム腕7,8,9,10の部分を肉厚に形成し、このフレーム腕の適所において前記結合フレーム5の結合部6と・・・ネジ12とで締結固定している。」(公報第1頁左欄第28?37行)

2-5.刊行物5の記載事項
刊行物5には、「自転車用多段スプロケットホイール」に関して、以下の記載がある。
(ス)「右足用クランクアーム(10)のボス部(10a)から放射状に突出する腕(10b)に、大、中、小径スプロケット(12)、(13)、(14)をボルト(10c)により所定間隔を置いて固定し、前記ペダル側多段スプロケット(2)を構成してある。」(公報第3頁右下欄第9?14行)
また、第5図には、
(セ)「腕(10b)」の内側面側にのみ開口する有底ねじ孔と「ボルト(10c)」とにより、「小径スプロケット(14)」を「腕(10b)」に固定していることが図示されているものと認める。

3.対比及び判断
3-1.請求項1に係る考案について
以上の認定に基づいて、本願請求項1に係る考案と刊行物1記載の考案とを対比すると、刊行物1記載の考案の「アウターギヤ4」、「センターギヤ6」、「インナーギヤ7」、「クランク1」、「取付鍔3」及び「取付脚5」が、本願請求項1に係る考案の「高速用フロントギヤ(5)」、「中速用フロントギヤ(6)」、「低速用フロントギヤ(7)」、「クランク(1)」、「アーム部(10)」及び「取り付け脚部(5b)」に相当することは、明らかである。また、刊行物1記載の考案における、「センターギヤ6」の「取付脚8」及び「インナーギヤ7」の「取付脚9」を重合して、「ボルト10ナット11を介して固着し」という構成は、「センターギヤ6」と「インナーギヤ7」とを共通の「ボルト10ナット11」により一緒に固着するものであるから、本願請求項1に係る考案の「前記中速用フロントギヤ(6)と前記低速用フロントギヤ(7)とが」「共締めによって連結し、」という構成に相当する。
以上の対比の結果、両考案は、
“ 高速用フロントギヤと、これより小径である中速用フロントギヤと、前記中速用フロントギヤより小径である低速用フロントギヤを備えるとともに、前記フロントギヤを回動駆動するクランクを備える自転車用フロントギヤ装置であって、
前記中速用フロントギヤを前記クランクのギヤ取り付けアーム部に連結し、
前記高速用フロントギヤの取り付け脚部を前記クランクに対して非連結状態に配置するとともに前記中速用フロントギヤに連結し、
前記中速用フロントギヤと前記低速用フロントギヤとが共締めによって連結し、
前記ギヤ取り付けアーム部の先端面を、前記取り付け脚部と前記中速用フロントギヤとの連結箇所よりギヤ回動軸芯側に配置した自転車用フロントギヤ装置。”
である点で一致し、以下の〈相違点1〉及び〈相違点2〉で相違する。

〈相違点1〉本願請求項1に係る考案では、「ギヤ取り付けアーム部(10)の先端面(A)を」、「取り付け脚部(5b)の先端面(B)に近接配置し、前記ギヤ取り付けアーム部(10)の先端面(A)と前記取り付け脚部(5b)の先端面(B)とが対向している箇所において、前記ギヤ取り付けアーム部(10)のギヤ回動軸芯方向視での横端面(W)と、前記取り付け脚部(5b)のギヤ回動軸芯方向視での横端面(V)とが滑らかに連続」するように構成しているのに対して、刊行物1記載の考案では、「取付鍔3」と「取付脚5」とをそのように構成していない点。

〈相違点2〉本願請求項1に係る考案では、「前記中速用ギヤ(6)と前記低速用ギヤ(7)とが前記ギヤ取り付けアーム部(10)に共締めによって連結し」ているのに対して、刊行物1記載の考案では、「センターギヤ6」と「インナーギヤ7」とを共締めによって連結してはいるものの、「取付鍔3」に対して共締めするものでない点。

そこで、上記相違点1について検討すると、自転車用フロントギヤの外観が、ギヤ取り付けアーム部のギヤ回動軸芯方向視での横端面と、取り付け脚部のギヤ回動軸芯方向視での横端面とが滑らかに連続する外観となるように構成することは、上記(カ)及び上記(コ)に示すように、従来から周知の構成である。
そして、本件請求項1に係る考案のフロントギヤの外観を、ギヤ取り付けアーム部のギヤ回動軸芯方向視での横端面と、取り付け脚部のギヤ回動軸芯方向視での横端面とが滑らかに連続する外観となるように構成したことの意義は、明細書の段落【0009】に「図5の如くギヤ取り付けアーム部10のギヤ回動軸芯方向視での横端面Wと、取り付け脚部5bのギヤ回動軸芯方向視での横端面Vとが滑らかに連続し、見た目がよいものになる。」とあるように、「見た目」すなわち美観の向上を図ることにあるところ、同様の外観をもたらすように構成することが、上記のように周知であって、周知の外観を採用することには、何らの技術的思想の創作も存在しないから、ギヤ取り付けアーム部のギヤ回動軸芯方向視での横端面と、取り付け脚部のギヤ回動軸芯方向視での横端面とが滑らかに連続するように構成したことは、当業者がきわめて容易に想到し得た事項にすぎない。そして、ギヤ取り付けアーム部のギヤ回動軸芯方向視での横端面と、取り付け脚部のギヤ回動軸芯方向視での横端面とが滑らかに連続するように構成すれば、ギヤ取り付けアーム部の先端面が、取り付け脚部の先端面に近接配置されることは当然である。
なお、刊行物1には、上記(イ)に「アウターギヤ4インナーギヤ7の取付脚5,9は何れもクランクヘッド2の取付鍔3に達しない短かいものとされ」と記載されているが、当該記載は、同じく上記(イ)に「アウターギヤ4の取付脚5は中央に取付鍔3及びペタルの自由に通過できる開口を存する形状のものとされる」とあるように、「アウターギヤ4」の「開口」を通じて、「取付鍔3」及び「ペタル」が自由に通過できることを担保するための記載であって、刊行物1記載の考案において、ギヤ取り付けアーム部のギヤ回動軸芯方向視での横端面と、取り付け脚部のギヤ回動軸芯方向視での横端面とが滑らかに連続する外観となるように構成し、ギヤ取り付けアーム部の先端面が、取り付け脚部の先端面に近接配置したからといって、直ちに「アウターギヤ4」の「開口」を通じて、「取付鍔3」及び「ペタル」が自由に通過できなくなるというわけではない。
したがって、刊行物1の上記「アウターギヤ4インナーギヤ7の取付脚5,9は何れもクランクヘッド2の取付鍔3に達しない短かいものとされ」との記載は、刊行物1記載の考案において、上記刊行物2及び3に示す周知の構成を採用することを阻害するものではない。
また、出願人は、平成13年11月2日付の意見書の第3頁第13?20行において、自転車部品製造業界においては各部品の軽量化が課題であるところ、クランクアームを高速用フロントギヤまで延設し、重量を増大させる設計が不自然であることを理由に、上記相違点1に係る構成は、当業者がきわめて容易に想到し得たものではない旨、主張している。しかし、本願請求項1に係る考案は、美観の向上を図るために、上記相違点1に係る構成を採用し、クランクアームを高速用フロントギヤまで延設したのであって、その延設した分の重量の増大という問題は、何ら解決されているわけではない。そうすると、上記相違点1に係る構成を採用するかどうかは、部品の軽量化を優先するか、部品の美観の向上を優先するかという選択に帰着し、いずれを選択するかは、技術上の困難性を伴うことなく、当業者が決定できる事項にすぎない。
また、出願人は、上記意見書の第3頁第21?25行において、刊行物1における「本考案によればクランク1は従来規格のものもそのまま利用できるので、実施容易である」との記載を理由に、上記相違点1に係る本件請求項1記載の考案の構成とは逆の示唆が行われている旨、主張しているが、当該記載は、刊行物1における任意的な記載にすぎず、刊行物1記載の考案において上記相違点1に係る構成を採用することを阻害するものではない。
したがって、出願人の主張は、いずれも採用できない。

次に、上記相違点2について検討すると、本願請求項1に係る考案において上記相違点2に係る構成を採用した技術的な意義は、本願明細書【0008】段落に「つまり、中速用フロントギヤ6と低速用フロントギヤ7とは、ギヤ取り付けアーム部10に共締め連結し、一挙に着脱できるとか連結構造が共用できるようにしてクランク1に連結してある。」とあるように、着脱の容易さや、連結構造の簡素化にあるところ、複数のギヤを、クランクのアームに共締めによって連結することは、上記(シ)に示すように、公知の技術的手段である。そして、共締めによって連結すれば、着脱の容易さや、連結構造の簡素化は、当然に期待できる程度の効果にすぎず、複数のギヤを共締めによって連結するにあたり、どの部材に対して連結するかは、ギヤの取り付けや取り外しの作業性や、ギヤの外形の大小等を考慮して、当業者が適宜決定できる程度の技術的事項といえるから、刊行物1記載の考案において、上記相違点2に係る構成を採用したことは、当業者がきわめて容易に想到することができたものである。

以上から、本願請求項1に係る考案は、上記刊行物1?4記載の考案及び周知の構成に基づいて、当業者がきわめて容易に考案することができたものである。

3-2.請求項2に係る考案について
本願請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案をさらに限定したものであるから、刊行物1記載の考案と対比すると、上記相違点1及び2以外に、以下の〈相違点3〉で相違し、その他の点で一致している。

〈相違点3〉本願請求項2に係る考案は、「前記ギヤ取り付けアーム部(10)の先端面(A)と前記取り付け脚部(5b)の先端面(B)とが対向している箇所において、前記ギヤ取り付けアーム部(10)の横外側面(X)と前記取り付け脚部(5b)の横外側面(Y)とが滑らかに連続」するように構成しているのに対して、刊行物1記載の考案では、そのように構成していない点。

上記相違点1及び2に係る構成は、上記3-1.項で記載したとおり、当業者がきわめて容易に想到し得たものである。
また、上記相違点3について検討すると、自転車用フロントギヤの外観が、ギヤ取り付けアーム部の横外側面と取り付け脚部の横外側面とが滑らかに連続する外観となるように構成することは、上記(キ)及び上記(サ)に示すように、従来から周知の構成である。
そして、本件請求項2に係る考案のフロントギヤの外観を、ギヤ取り付けアーム部の横外側面と取り付け脚部の横外側面とが滑らかに連続する外観となるように構成したことの意義は、明細書の段落【0009】に「図6の如くギヤ取り付けアーム部10の横外側面Xと、取り付け脚部5bの横外側面Yとが滑らかに連続するとともに・・・滑らかに連続し、見た目がよいものになる。」とあるように、「見た目」すなわち美観の向上を図ることにあるところ、同様の外観をもたらすように構成することが、上記のように周知であって、周知の外観を採用することには、何らの技術的思想の創作も存在しないから、ギヤ取り付けアーム部の横外側面と取り付け脚部の横外側面とが滑らかに連続する外観となるように構成したことは、当業者がきわめて容易に想到し得た事項にすぎない。

3-3.請求項3に係る考案について
本願請求項3に係る考案は、請求項1又は2に係る考案をさらに限定したものであるから、刊行物1記載の考案と対比すると、上記相違点1?3以外に、以下の〈相違点4〉で相違し、その他の点で一致している。

〈相違点4〉本願請求項3に係る考案は、「前記ギヤ取り付けアーム部(10)の内側面側に、ギヤ取り付けねじ孔(11a)を有するギヤ取り付けピン(11)が突出し、前記ギヤ取り付けねじ孔(11a)が前記ギヤ取り付けアーム部(10)の内側面側にのみ開口する有底ねじ孔である」ように構成されているのに対して、刊行物1記載の考案は、そのように構成されていない点。

上記相違点1?3に係る構成は、上記3-1.項?3-2.項に記載したとおり、当業者がきわめて容易に想到し得たものである。
また、上記相違点4について検討すると、クランクのアーム部にギヤを取付けるにあたり、ギヤ取り付けアーム部の内側面側にのみ開口する有底ねじ孔を設け、有底ねじ孔とネジとによりギヤを取り付けることは、上記(オ)及び(ク)、並びに上記(ス)及び(セ)に示すように、従来から周知の技術的手段にすぎず、刊行物1記載の考案において、ギヤを取付けるにあたり、ギヤ取り付けアーム部の内側面側にのみ開口する有底ねじ孔を設けたことは、当業者がきわめて容易に想到し得た事項にすぎない。

4.むすび
したがって、本願請求項1?3に係る考案は、刊行物1?5記載の考案、周知の構成及び周知の技術的手段に基づいて、当業者がきわめて容易に考案することができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-11-26 
結審通知日 2001-11-29 
審決日 2001-12-11 
出願番号 実願平5-9787 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (B62M)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 小山 卓志  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 大熊 雄治
刈間 宏信
考案の名称 自転車用フロントギヤ装置  
代理人 北村 修一郎  

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