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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) E04G
管理番号 1053456
審判番号 無効2001-35178  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-04-20 
確定日 2001-12-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第2150563号の実用新案登録無効審判事件について、併合の審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 登録第2150563号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 (一)手続きの経緯
1)出願(実願平3-104733号)平成3年11月25日
2)出願公告(実公平6-48053号)平成6年12月7日
3)登録異議の申立 平成7年3月3日
4)登録異議の決定 平成9年12月9日
5)拒絶査定 平成9年12月16日
6)査定不服審判請求(査定不服10-1822号) 平成10年2月5日
7)審決 平成11年5月19日
8)実用新案登録(実用新案登録第2150563号) 平成11年6月25日
9)無効審判請求(無効2000-35634号) 平成12年11月21日(以下、「事件1」という。)
10)事件1の答弁書 平成13年2月28日
11)無効審判請求(無効2001-35178号) 平成13年4月20日(以下、「事件2」という。)
12)事件1の弁駁書 平成13年6月11日
13)事件2の答弁書 平成13年7月31日

(二)本件考案
本件登録第2150563号実用新案の請求項1に係る考案(以下「本件考案」という。)は、明細書と図面の記載から見て、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「コンクリート埋設物をコンクリート型枠内面に押圧して固定するため、手による折り曲げが可能でかつ折り曲げられた状態で埋設物を型枠内面に押圧できる突張強度を有し、埋設物に取付けられると共に型枠内に配筋された鉄筋にバインド線などの線材で結束固定されるバー材であって、前記線材を係止する周溝が外面に形成されてなることを特徴とするコンクリート埋設物の固定用バー材。」

(三)請求人の主張及び提出した証拠方法
請求人は、「登録第2150563号実用新案の明細書の請求項1に係る考案についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、という審決を求める。」という趣旨で無効審判を請求している。
そして、その理由として、事件1においては、証拠方法として、甲第1号証(特開昭60-152747号公報)、甲第2号証(実願昭61-17819号(実開昭62-132626号)のマイクロフィルム)、甲第3号証(実願昭63-48880号(実開平1-150853号)のマイクロフィルム)を提出して、本件考案は、甲第1号証及び甲第2,3号証に記載された考案に基いて、きわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、実用新案法第37条第1項第1号の規定により無効とすべきであると主張している。
また、事件2においては、証拠方法として、甲第1号証(本件 実公平6-48053号公報)、甲第2号証(仮処分申請書〔大阪地裁平成12年(ヨ)第20089号事件〕)、甲第3号証(「松下電工・総合カタログ 91’-92’ 電設資材(配線器具・情報機器・配管材編)」 平成3年4月発行)、甲第4号証(二藤レール株式会社による証明書)、甲第5号証(松下電工株式会社による証明書)、甲第6号証(松下電工株式会社作成の標準製作図)、甲第7号証(松下電工株式会社作成の標準製作図)、甲第8号証の1ないし3(請求書、設計図面)、甲第9号証の1ないし3(売上伝票)、甲第10号証(打合わせメモ)、甲第11号証(見積書)、甲第12号証(受注伝票)、甲第13号証の1、2(材料試験成績表)、甲第14号証(本件考案の出願から審決までの経過書類)を提出して、本件考案は、甲第3号証ないし甲第12号証に記載された流れをみれば明らかなとおり、甲第3号証の第749頁に記載された「4mmバー(品番DM31あるいはDM32)」と同一であり、この「4mmバー(品番DM31あるいはDM32)」は、本件考案の出願前において製造販売され公知公用となっていたものであるから、実用新案法第3条第1項第1号、第2号の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、また、本件考案は、本件考案の出願前において製造販売され公知公用となっていた前記製品「4mmバー(品番DM31あるいはDM32)」の技術を特公平3-58023号公報(異議甲第1号証)に記載されたバー材に適用したまでのことであり、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものでもあって、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。したがって、本件考案は、実用新案法第37条第1項第1号の規定により無効とされるべきであると主張している。

(四)被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」という趣旨で、概略以下のとおり主張している。
1.事件1について
無効審判請求人は、本件考案のバー材には「線材を係止する周溝が外面に形成されている」のに対し、甲第1号証のそれには該構成について記載されていないと主張し、その相違点について、「本件考案は、バー材の外面に周溝を形成することにより、その周溝に線材の一部が入り込んで係止するため、線材に対してバー材がずれにくくなると同時に、バー材の外面の周溝によって、鉄筋に対する滑り抵抗が大きくなるため、鉄筋に対してもバー材がすべりにくくなり、鉄筋に対する埋設物の固定作業が簡単になる、というものであると主張し、そして、甲第2号証の明細書及び第1?3図には、「ギザギザ(2)を付けることにより鉄線(C)の滑りを防止する引掛けとなる」構成が記載されており、また甲第3号証の明細書及び第1図(b)には、連結ボルトBの螺旋状の溝(雄ねじ溝)にワイヤを結着することによりワイヤの一部が螺旋状の溝(雄ねじ溝)に入り込んで係止する構成が実質的に示されている」と、主張している。
しかしながら、本件考案の「バー材」の「折り曲げられた状態で埋設物を型枠内面に押圧できる突張強度を有し、」という要件は、本件考案の実公平6-48053号公報の段落番号【0012】の【考案の効果】に「・・・バー材は、外面に周溝を形成して、線材によりこのバー材を鉄筋に結束する際に、その周溝に線材の一部が入り込んで係止するために、線材に対してバー材がずれにくくなると同時に、バー材の外面の周溝によって、鉄筋に対する滑り抵抗が大きくなるため、鉄筋に対してもバー材がすべりにくくなって、鉄筋に対する埋設物の固定作業が簡単になると共に、コンクリートの打設圧によっても、埋設物の位置ずれがなくなって、正規の位置に埋設物を確実に埋設できる。」と記載されているように、前記「コンクリートの打設圧によっても、埋設物の位置ずれがなくなって、正規の位置に埋設物を確実に埋設できる。」ことである。結果、本件考案における「バー材」の機械的強度の強さを意味し、それを受けて、コンクリートの打設圧によっても埋設物の位置ずれがない旨を作用効果とするものである。勿論、「手による折り曲げが可能で」は、配設する場合の機械的強度の柔らかさ(弱さ)を意味するものである。
したがって、甲第2号証の帯状の鉄板の幅面に垂直な方向にのみ変位(移動)可能な技術からは、本件考案の「バー材」のように、手による折り曲げが自在で、かつ、折り曲げられた状態で埋設物を型枠内面に押圧する突張強度を有することにより、結果、三次元空間の何れにも埋設物を配置できるように結束でき、しかも、線材に対してバー材がずれにくく、かつ、鉄筋に対してもバー材がすべりにくく、鉄筋に対する埋設物の固定作業が簡単になるという本件考案のバー材の構成、作用効果は導き出せない。当然、埋設物の配置後においても帯状の鉄板は、幅面に垂直な方向にのみ変位(移動)可能であるから、コンクリートの打設圧によって、埋設物の位置ずれがなく、正規の位置に埋設物を確実に埋設できるという作用効果を期待することができないものである。
また、無効審判請求人は、甲第3号証に「連結ボルトBの螺旋状の溝(雄ねじ溝)にワイヤを結着することによりワイヤの一部が螺旋状の溝(雄ねじ溝)に入り込んで係止する構成が実質的に示されている」と主張しているが、これは連結ボルトを使用するものであるから、本件考案の「バー材」のように、「手による折り曲げが可能でかつ折り曲げられた状態で埋設物を型枠内面に押圧できる突張強度を有し、」という要件を具備していないため、三次元空間の何れの位置にも埋設物を配設できるものではない。即ち、甲第3号証は、埋設位置の変位が不可能なものである。したがって、甲第3号証の連結ボルトの技術から、三次元空間の何れの位置にも埋設物を配設できるように結束でき、しかも、線材に対してバー材がずれにくく、かつ、鉄筋に対してもバー材がすべりにくく、鉄筋に対する埋設物の固定作業が簡単になるという構成、作用効果は導き出せない。当然、埋設物の配置後においても連結ボルトが曲げにくくなり変位(移動)が不可能であるから、正規の位置に埋設物を確実に埋設できるという作用効果を期待することができないものである。
このように、甲第1号証乃至甲第3号証には、本件考案の「バー材」の特徴である「手による折り曲げが可能でかつ折り曲げられた状態で埋設物を型枠内面に押圧できる突張強度を有し、」及び「周溝が外面に形成されている」という構成要件を開示するものではない。そして、前記本件考案の構成に基づく、外面に周溝を形成したバー材を使用することにより、バー材を鉄筋に結束する際、その周溝に線材の一部が入り込み係止され、線材に対してバー材がずれにくくなり、同時に、バー材の外面の周溝によって鉄筋に対する滑り抵抗が大きくなり、鉄筋に対してもバー材がすべりにくくなって、鉄筋に対する埋設物の固定作業が簡単になると共に、コンクリートの打設圧によっても、埋設物の位置ずれがなくなって、正規の位置に埋設物を確実に埋設できるという作用効果についても、甲第1号証乃至甲第3号証で開示するものがなく、示唆するものもないから、甲第1号証乃至甲第3号証に基づいての容易性は困難であり、無効審判請求人の主張は当を得ないことである。
2.事件2について
被請求人は、証拠方法として、乙第1号証(大阪地裁の侵害事件、平成13年(ワ)第831号(以下、「大阪地裁事件」という)で請求人が提出した乙第27号証の写)、乙第2号証(大阪地裁事件で請求人が提出した乙第19号証の写)、乙第3号証(大阪地裁事件で請求人が提出した乙第31号証の写)を提出し、概略以下のとおり主張している。
甲第3号証の第749頁には、「4mmバー(品番DM31,DM32)」の記載がある。しかし、そこには『平目ローレット』との文字の記載があっても、具体的に平目ローレットの形態を特定する図示がない。大阪地裁事件で甲第3号証の原本を確認したが、4mmバーの図示された原本には、外周面に切欠(キズ)が存在していなかった。また、請求人は、「同製品「4mmバー」は、本件考案が出願される約8か月前である平成3年3月頃から、二藤レール株式会社において製造され、住友商事株式会社を介して、松下電工株式会社に納入され、松下電工株式会社の「4mmバー(平目ローレット付)」として、既に市場において販売されていたのである(甲第3号証ないし甲第12号証)。」と主張しているが、大阪地裁事件では、乙第1号証を提示しており、それによれば、平成3年1月1日に新発売の記載があり、『DM31』及び『DM32』はそこに掲載されている。したがって、新発売の商品が代理店に報告された後の「平成3年3月頃」から製造されたとは、社会一般通念に照らして矛盾する行為であり、新発売当時に当該商品の在庫がないことは、消費者、代理店を裏切ることになり、通常ではあり得ないことである。新発売の日の平成3年1月1日には、在庫が存在するのが普通である。一方、乙第3号証によれば、
91/1月 DM31 生産210 販売 0 全国在庫210
DM32 生産 10 販売 0 全国在庫 10
となっている。してみれば、請求人主張の「同製品「4mmバー」は、本件考案が出願される約8か月前である平成3年3月頃から、二藤レール株式会社において製造され、・・・」は、乙第3号証に、91年1月の時点で松下電工株式会社には『DM31』が「210」、『DM32』が「10」の在庫があったことが示されているから、主張内容に矛盾がある。したがって、請求人主張の「4mmバー(品番DM31,DM32)」は、品番が一致していても、甲第3号証の「4mmバー(品番DM31,DM32)」と形態が一致しないことは明らかである。殊に、「平目ローレット」とは、JISにも記載されているように、円周方向に所定のピッチで長さ方向に平行する線状の凹凸を付けるものである。しかし、甲第3号証には「平目ローレット」がJISと異なった概念のものであると示すものがない。また、甲第4号証及び甲第5号証には「平目ローレット」を特定するものがない。そして、甲第6号証及び甲第7号証は大阪地裁事件でも原本の提示がなく、原本を確認するまで、その成立の認否を保留するが、いずれにも、『DM31』及び『DM32』の設計図面であるとの記載がない。また、甲第6号証の図面の制定年月日が平成2年12月25日であり、甲第7号証の図面の制定年月日が平成3年1月31日であり、平成3年1月1日新発売の商品の図面がその年末休暇直前に制定されたとしても、一般常識からして平成3年1月1日の新発売に間に合うことはあり得ないことである。即ち、甲第6号証及び甲第7号証の『DM31』、『DM32』と乙第1号証の『DM31』、『DM32』とは、喩え、品番が一致しても、その形態が一致しないことを照明するものである。更に、甲第8号証乃至甲第12号証には、「平目ローレット」の形態を特定するものがない。したがって、甲第3号証乃至甲第12号証をみても、『DM31』、『DM32』の商品の形状が特定できないものであり、甲第3号証の「平目ローレット」がJISと異なった概念のものであると示す証拠がない。即ち、甲第3号証の「平目ローレット」は、甲第14号証の用語説明・JISハンドブック等で周知の技術であり、「4mmバー」の円周方向に所定のピッチで長さ方向に平行する線状の凹凸を形成する技術である。したがって、本件登録実用新案の構成要件「前記線材を係止する周溝が外面に形成されていること、」の出願前に公知であったことを証するものがない。
甲第8号証の「ワイヤーマーク付け機」では、甲第6号証に示す外周面に切欠(キズ)を螺旋方向に断続的に付けたバー材を製作できない。即ち、4mmバーの外周面に切欠(キズ)を螺旋方向に断続的に付ける機能がない。実施できない「ワイヤーマーク付け機」で、甲第6号証に示す外周面に切欠(キズ)を螺旋方向に断続的に付けたバー材を製作したとの主張は、詭弁に過ぎない。また、甲第9号証の1で平成3年3月13日頃、製作販売を開始した主張をなしているが、甲第9号証の1乃至13号証は「寸切鈍鉄線」についての照明であり、「前記線材を係止する周溝が外面に形成されていること、」を証するものではない。特に、甲第4号証で「キズ付なまし鉄線」と「寸切鈍鉄線」とは同一品と照明しているが、納品が所定の寸法で「ぶつ切り」したことのみを意味する「寸切鈍鉄線」と「キズ付なまし鉄線」とが同一商品を意味すると仮定しても、本件登録実用新案の構成要件「前記線材を係止する周溝が外面に形成されていること、」とは全く意味が相違し、甲第4号証の照明は意味がない。また、甲第4号証の証明書には、四項で「・・・本証明書に添付している・・・」と記載されているが、当該添附の書類が付けられて折らず、根拠のない照明であり、信憑性に欠くものである。
「平成3年1月頃、4mmバー製造販売の受注をし(甲第12号証)、同年3月、住友商事株式会社を介して4mmバー納入の見積書を提出し(甲第11号証)、同年3月13日頃、製造販売を開始した(甲第9号証の1)。」と主張するが、甲第12号証に寄れば、甲第11号証の見積書を松下電工株式会社に提出する前の平成3年1月7日に受注を受けており、見積書を提出して、その見積りを検討し、受注を行うという通常の商慣行に反するものであり、信憑性に欠くものである。また、甲第11号証の見積書は、その通信記録からすると94年(平成6年)12月21日となっており、通常ではファクシミリの通信記録が人為的に操作されるものでないので、見積書を作成から3年も後に相手に提出することは、特に、見積有効期間外に提示することなど有り得ないから、平成3年3月10日に成立した文書ではない。
請求人は、「切欠(キズ)を付けた4mmバーは、本件考案の出願の約8か月前である平成3年3月頃から、二藤レール株式会社において製造され、住友商事株式会社を介して、松下電工株式会社に納入され、松下電工株式会社の「4mmバー(平目ローレット付)(品番DM31,DM32)」として市場において販売されていたのである(甲第9号証の2?13)。なお、平成3年3月、二藤レール株式会社は、甲第6号証に記載の「SWM-A」の4mmバーについて材料試験を行っている(甲第13号証の1,2材料試験成績表)。」と主張しているが、松下電工株式会社の「4mmバー(平目ローレット付)(品番DM31,DM32)」の販売と、甲第9号証の2?13では、その形態が特定できないから、両者の関係が不明である。なお、甲第13号証の1及び2の材料試験成績表は、「前記線材を係止する周溝が外面に形成されていること、」の構成とは全く関係のないものである。
さらに、請求人は、証拠を提示することなく、「本件考案の出願前において製造販売されていた製品「4mmバー(品番DM31あるいはDM32)」からも当業者がきわめて容易に考案することができたものである。」と主張しているが、証拠を確認しなければ、本件登録実用新案の出願前のものであるか否かは確認できない。また、前述したように、品番DM31、DM32が、本件登録実用新案の出願前に、「前記バインド線を係止する切欠(キズ→平目ローレット)が外面に形成された、」との形態を有して販売されたとする根拠がない。
以上のように、甲第3号証乃至甲第13号証には、本件考案の構成要件「前記線材を係止する周溝が外面に形成されていること」を、本件考案の出願前に公知であったことを証するものはなく、また、証拠を提出しているものの、何らの公知性も立証するものではないから、実用新案法第3条第1項第1号、第2号の規定または、同法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものに該当せず、無効審判請求人の主張は当を得ないことである。

(五)当審での検討
1.公知の技術的事項の認定
1)事件1の甲第1号証(特開昭60-152747号公報)(以下、「刊行物1」という。)には、第2頁右上欄第7行から同左下欄第11行の「第1図および第2図において、支持部(1)はコンクリート壁の支骨をなす鉄筋(5)に架設される部分である。支持部(1)は手で曲げることができるものであって曲げ方向を自在に設定できるものである。線状の支持部(1)の具体的な形状については、断面が円形のものや四角のもの、或いは、扁平なもの等色々考えられるが、特に支骨をなす鉄筋(5)への架設のしやすさ、さらに曲げ方向の自在性という点から断面円形のものがすぐれている。具体的には通称番線と呼ばれ、その中で8番線前後の軟鋼線が最適である。また、支持部(1)は、曲げられた状態で型枠に埋設物を押圧できる突っ張り強度を有するものであって、第1図に示すように、埋設物(4)を型枠(6)に押し当てた状態のときに、埋設物(4)に対して加わる矢印(61)方向の力に対して、支持部(1)が曲げられた状態で、これに対向するように矢印(62)方向に埋設物(4)を突っ張らせる押圧力を有している。この状態では埋設物(4)は支持部(1)によって、型枠(6)に押しつけられた状態換言すれば密接した状態に保たれている。取付部(2)は、支持部(1)を埋設物(4)に取付けるための構造を有するものである。」、第3頁右上欄第14行から同左下欄第16行の「第9図を用いて架設具を取付けたボックス(10)を壁面を構成するコンクリート壁内に埋設する場合について説明する。ボックス(10)を埋設するに際しては、まず線状の支持部(11)を手で折り曲げてコンクリート壁の支骨をなすように巡らされた鉄筋(5)に接しさせる。このときボックス(10)をコンクリート壁内に埋設する位置にくるように、支持部(11)の曲げ具合を調節する。支持部(11)は手で折り曲げることができるから調節は容易に行なえる。次いで支持部(11)と鉄筋(5)との接する部分を針金(7)等で結束して、支持部(11)を鉄筋(5)に架設する。こうして第9図に示すようにボックス(10)を所定の埋設位置に設置する。・・・次いで、第10図に示すようにボックス(10)の開口部に向かって型枠(6)を当接させる。このとき支持部(11)の突張り強度によって矢印(66)方向にボックス(10)を押圧し、ボックス(10)は型枠(6)に密接した状態に保たれている。」の記載及び第1、9、10図を参照すると、「コンクリート埋設物をコンクリート型枠内面に押圧して固定するため、手による折り曲げが可能でかつ折り曲げられた状態で埋設物を型枠内面に押圧できる突張り強度を有し、埋設物に取付けられると共に型枠内に配筋された鉄筋に針金等で結束固定されるコンクリート埋設物の線状の支持部」が記載されていると認められる。
2)事件1の甲第2号証(実願昭61-17819号(実開昭62-132626号)のマイクロフィルム)(以下、「刊行物2」という。)には、実用新案登録請求の範囲の「帯状の鉄板に設けた、ボックスの取付部分(1)ギザギザの付いた折曲加工部分(2)クギ穴(3)ボックスの取付ビス穴(4)以上のごとく構成された電気ボックスの取付金物」、第1頁第10?13行の「この考案は、・・・電気ボックスの取付を鉄筋コンクリート型枠内部へ、摩れを少なく簡単に取付て正確に型枠面へ固定して施工する。」、第2頁第1?13行の「第1図はこの考案の正面図でこの考案の形状を表わす、巾20m/m長さ400m/m前後の帯状の鉄板である第2図は、縦継面で2m/m前後の薄い鉄板である、帯状の中央部にボックスを取付る、ボックス取付部分(1)この部分の上下の左右にノコギリ状のギザギザ(2)がある。この部分は、この考案の腕のような部分で、第3図に示す鉄筋(B)へ鉄線(C)で縛り固定する、ギザギザ(2)は滑りを防止する引掛となり、鉄筋の位置又は壁厚の状態によっては、折り曲げて、その条件に合せて加工する必要がある、ギザギザ(2)の細くなった節の部分は、ペンチ等で折り曲がり加工を簡単にした、」、第3頁第5?11行の「第3図に示す最後にボックス取付部(1)の中央にボート穴(5)これはボックス(E)の取付後、両面の型枠へ挟まれたとき、その型枠へボックス(E)をボルト等によって引付型枠へ固定する又は異種金物よって引付を行う時の穴(5)第3図に表わしていない、以上の施工方法で電気ボックスの取付を行う。」の記載及び第1、3図並びに、当業者の技術常識からみて、「電気ボックスを鉄筋コンクリート型枠内部へ押圧して固定するため、折り曲げ可能でかつ折り曲げられた状態で電気ボックスを型枠内面に押圧でき、電気ボックスに取付けられると共に型枠内に配筋された鉄筋へ鉄線で縛り固定する帯状の鉄板からなる取付金物において、中央のボックス取付部分の上下の腕のような折曲加工部分の左右にノコギリ状のギザギザを付し、このギザギザは、取付金物を鉄筋へ鉄線で縛り固定する際、滑りを防止する引掛となる」ことが記載されていると認められる。

2.本件考案との対比・判断
本件考案と刊行物1に記載された考案とを対比すると、刊行物1に記載された考案の「針金等」及び「線状の支持部」は、各々その機能からみて本件考案の「バインド線などの線材」及び「固定用バー材」に相当するから、両者は、コンクリート埋設物をコンクリート型枠内面に押圧して固定するため、手による折り曲げが可能でかつ折り曲げられた状態で埋設物を型枠内面に押圧できる突張強度を有し、埋設物に取付けられると共に型枠内に配筋された鉄筋にバインド線などの線材で結束固定されるコンクリート埋設物の固定用バー材の点で一致し、下記の点で相違している。
a.固定用バー材は、本件考案では、線材を係止する周溝が外面に形成されてなるのに対し、刊行物1に記載された考案では、そのような構成を有していない点。
上記相違点aを検討するため刊行物2をみると、刊行物2には、本件考案及び刊行物1に記載された考案と同様の、コンクリート埋設物(刊行物2に記載された考案の「電気ボックス」に相当。)をコンクリート型枠内面に押圧して固定するため、折り曲げが可能でかつ折り曲げられた状態で埋設物を型枠内面に押圧でき、埋設物に取付けられると共に型枠内に配筋された鉄筋にバインド線などの線材(刊行物2に記載された考案の「鉄線」に相当。)で結束固定されるコンクリート埋設物の固定用バー材(刊行物2に記載された考案の「取付金物」に相当。)が記載されており、刊行物2に記載された考案の取付金物は、取付金物を鉄筋へ鉄線で縛り固定する際、滑りを防止する引掛となる、ノコギリ状のギザギザが左右に付されている。ここで、左右に付されたノコギリ状のギザギザが取付金物を鉄筋へ鉄線で縛り固定する際、滑りを防止する引掛となるということは、外面に形成された周溝が線材を係止することと、同様の目的及び作用効果を奏するといえるから、これを、刊行物1の線状の支持部に適用して、相違点aにおける本件考案の構成とすることは、当業者がきわめて容易に想到する程度のことにすぎない。

3.被請求人の主張に対して
被請求人は、事件1に対する平成13年2月28日付け答弁書で「甲第2号証(刊行物2)の帯状の鉄板の幅面に垂直な方向にのみ変位(移動)可能な技術からは、本件考案の「バー材」のように、手による折り曲げが自在で、かつ、折り曲げられた状態で埋設物を型枠内面に押圧する突張強度を有することにより、結果、三次元空間の何れの位置にも埋設物を配置できるように結束でき、しかも、線材に対してバー材がずれにくく、かつ、鉄筋に対してもバー材がすべりにくく、鉄筋に対する埋設物の固定作業が簡単になるという本件考案のバー材の構成、作用効果は導き出せない。当然、埋設物の配置後においても帯状の鉄板は、幅面に垂直な方向にのみ変位(移動)可能であるから、コンクリートの打設圧によって、埋設物の位置ずれがなく、正規の位置に埋設物を確実に埋設できるという作用効果を期待することができないものである。」と述べているが、刊行物2において引用したのは、線材に対してバー材がずれにくく、かつ、鉄筋に対してもバー材がすべりにくく、鉄筋に対する埋設物つまりはバー材の結束固定作業が簡単にできるという本件考案と同様な作用効果を奏する、取付金物の左右に付されたノコギリ状のギザギザの構成の点であり、この点を、を刊行物1に記載された、手による折り曲げが自在で、かつ、折り曲げられた状態で埋設物を型枠内面に押圧する突張強度を有することにより、結果、三次元空間の何れの位置にも埋設物を配置できるように結束できる線状の支持部に適用すれば、被請求人が主張する上記作用効果を奏することになる。また、(五)1.2)で指摘したように、刊行物2の第2頁第12,13行には「ギザギザ(2)の細くなった節の部分は、ペンチ等で折り曲がり加工を簡単にした、」と記載されており、刊行物2に記載された考案の「取付金物」は、手による折り曲げが自在なものとは認められず、それ自身の機能から考えても、コンクリートの打設圧によって埋設物の位置ずれを起こしにくいものと解される。

4.むすび
全体として、本件考案によってもたらされる作用効果も、上記刊行物1及び2に記載された各考案から、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本件考案は、上記刊行物1及び2に記載された各考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。

(六)結論
以上のとおりであるから、本件考案の登録は、平成6年法律第116号附則10条1項により、なお従前の例によるとされ、平成5年法律26号附則4条1項により、なおその効力を有する、旧実用新案法第37条第1項第1号の規定に該当し、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-08-27 
結審通知日 2001-08-31 
審決日 2001-09-11 
出願番号 実願平3-104733 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (E04G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 新井 夕起子  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 鈴木 憲子
中田 誠
登録日 1999-06-25 
登録番号 実用新案登録第2150563号(U2150563) 
考案の名称 コンクリ-ト埋設物の固定用バ-材  
代理人 樋口 武尚  
代理人 鈴江 正二  
代理人 樋口 武尚  
代理人 樋口 武尚  
代理人 鈴江 孝一  
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