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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1055164
審判番号 不服2000-19818  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-14 
確定日 2002-03-05 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 62167号「トラックボール」拒絶査定に対する審判事件〔平成 7年 7月 4日出願公開、実開平 7- 36239、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。   
結論 原査定を取り消す。 本願の考案は、実用新案登録すべきものとする。
理由 【1】本願考案
本願は、平成5年11月18日に実用新案登録出願されたものであって、その請求項1に係る考案は、平成14年1月8付け手続補正書によって補正された全文補正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 ケーシング(1)内に回転自在に設けられたボール(2)と、前記ケーシング内に設けられ前記ボール(2)と摺接して回転すると共に直交配置された一対の回転軸(4a,5a)と、前記各回転軸(4a,5a)に接続された回転検出器(4,5)と、前記ケーシング(1)上に回転自在に設けられ前記ボール(2)の外周位置に配設されたダイヤルリング(10)と、前記ダイヤルリング(10)の下端に形成されたパターン(10aA)と、前記ケーシング(1)内に設けられ反射型のホトインタラプタ(14)とを備え、前記ダイヤルリング(10)の回転を前記パターン(10aA)とホトインタラプタ(14)を介して検出することにより、3軸検出を行うようにしたトラックボールにおいて、前記回転軸(4a,5a)の各一端を共通に軸受けするための共通軸受部(12)と、前記ダイヤルリング(10)の内側に設けられ前記ケーシング(1)の底部(1c)から一体に立上げられた支柱(50)に固設されると共に前記ボール(2)を保持するための透明な輪状ボールカバー(3)と、前記ダイヤルリング(10)の外側に位置する前記ケーシング(1)の上部(1b)と、前記輪状ボールカバー(3)の下面(3b)に直接接合して設けられた照明体(15)とを備え、前記ダイヤルリング(10)は、その外周面に内側に向けて曲折する輪状円弧面(10A)を有し、かつ、前記輪状ボールカバー(3)と前記上部(1b)との間で回転自在に保持されていると共に、前記上部(1b)は前記輪状円弧面(10A)の下方に位置して前記輪状円弧面(10A)は外部に露出し、前記照明体(15)は前記ケーシング(1)の水平方向において前記下端(10a)と重合している構成よりなることを特徴とするトラックボール。」
【2】当審における拒絶理由通知
当審において、平成13年11月14日付けで、概要、以下のとおりの拒絶理由を通知したところ、請求人から平成14年1月8日付けで、前記手続補正書及び意見書が提出されたものである。
『<引用刊行物>
刊行物1 特開平5-233146号公報
刊行物2 特開平2-282818号公報
刊行物3 特開平4-151716号公報
刊行物4 実願平2-68861号(実開平4-28341号)のマイクロフイルム
刊行物5 実願昭60-173727号(実開昭62-81243号)のマイクロフイルム
刊行物6 実願平2-27842号(実開平3-119234号)のマイクロフイルム
本願の請求項1に係る考案は、上記刊行物1?6に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものと認められるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。』
【3】引用刊行物に記載された考案
当審における前記拒絶の理由に引用された刊行物1(特開平5-233146号公報)には、その実施例及び図面を参酌すると、以下のとおりの記載が認められる。
(i)「【0010】まず、球状のトラックボール1と、その外周に配置される大径の回転リング2と、トラックボール1の外周と回転リング2の内周との間に配置される押えリング3とを有している。そして、水平なメインシャーシ4の上部に水平なサブシャーシ5が複数のスタンド6を介して複数のネジ7によってネジ止めされている。
【0011】そして、サブシャーシ5の中央部の上部にネジ筒9が一体で垂直に形成され、このネジ筒9の下部でメインシャーシ4上に水平な3つの支持ローラ10a、10b、10cが支軸11a、11b、11cによってほぼ120°間隔で回転自在に取付けられている。そして、ネジ筒9内に挿入されたトラックボール1の下部側の3点が3つの支持ローラ10a、10b、10c上に自重によって点接触状態で載置されて、このトラックボール1がねじ筒9内に中央部で2軸方向に回転自在に支持されている。次に、サブシャーシ5の外周部の上部に垂直な3つの小径のボールベアリング等からなる小径のコロ13a、13b、13cが垂直な支軸14によって120°間隔で回転自在に取付けられている。……(中略)……。
【0012】……(中略)……。
【0017】この3次元入力装置は、オペレータが例えば右手の人差し指、中指、薬指の3本でトラックボール1を2軸方向に回転操作すると同時に、親指で回転リング2を回転操作することができる。そして、トラックボール1の自重及び支持ローラ10a、10bとの摩擦によって、トラックボール1の回転方向及び回転量に応じて、2つの支持ローラ10a、10bと一体に2つのスリット円板30a、30bが回転され、2つのエンコーダ29a、29bによって、トラックボール1の回転方向及び回転量が検出される。また、回転リング2と一体にスリット円板2cが回転されて、残りのエンコーダ32によって回転リング2の回転方向及び回転量が検出される。
【0018】この結果、3つのエンコーダ29a、29b及び32から例えば3次元座標のX軸、Y軸及びZ軸に相当する3次元方向の入力信号をリアルタイムで発生させることができ、この3次元方向の入力信号によって、画面に表示された3次元対象物をリアルタイムで3次元方向に移動或は回転させることができる。」(第2頁右欄第49行?第3頁右欄第38行、第1?5図参照)
(ii)同じく引用された刊行物2(特開平2-282818号公報)には、回転リング(2)(ダイヤルリング)の回転により3軸検出を行う3次元入力装置(トラックボール)が開示されており、このダイヤルリング(2)の回転を検出する際、「検出部(スリット部2d)をダイヤルリング(2)の下端に形成し、該検出部(2d)をフォトインタラプタ(5,6,7)により光学的に検出する」技術的事項が記載されている。(第2頁左下欄第11行?同頁右下欄第15行、第3頁左下欄第10行?右下欄第7行、第2、3図参照)
(iii)同じく引用された刊行物3(特開平4-151716号公報)には、トラックボール装置において、回転を検出する際の技術的事項として、「回転体の検出部を反射部(34)(パターン)として形成する」こと、及び回転検出用としてのホトインタラプタを「反射型光結合器(35)」とすること、さらに「ボールと摺接して回転すると共に直交配置された一対の回転軸の各一端を偏倚装置(60)(共通軸受)で軸受けする」こと、が開示されている。(第3頁右下欄第13行?第4頁左上欄第10行、第4頁左上欄第20行?同頁左下欄第14行、第4頁右下欄第14行?第5頁左上欄第9行、第5頁右上欄第20行?同頁右下欄第3行、第1?6図参照)
(iv)同じく引用された刊行物4(実願平2-68861号(実開平4-28341号)のマイクロフイルム)には、座標入力装置(トラックボール)において、「ボールと摺接して回転すると共に直交配置された一対の回転軸の各一端を軸受体(27)(共通軸受)で軸受けする」ことが開示されている。(出願公開明細書第10頁第17行?第11頁第4行、第11頁第16行?第12頁第4行、第1図(A)(B)参照)
(v)同じく引用された刊行物5(実願昭60-173727号(実開昭62-81243号)のマイクロフイルム)には、照明付トラックボールにおいて、「ボール(1)の上方をおさえるためのカバー(7)と該ボール(1)との間に、透光の材料からなる円環状透明スリーブ(8A)(透明な輪状ボールカバー)を挿入する」こと、及び円環状透明スリーブ(8A)(透明な輪状ボールカバー)の下方にボール(1)の周囲が照明されるように「照明用ランプ(9)」(照明体)を設けること、が開示されている。(出願公開明細書第3頁第17行?第4頁第18行、第1?3図参照)
(vi)同じく引用された刊行物6(実願平2-27842号(実開平3-119234号)のマイクロフイルム)には、トラックボールにおいて、球(2)(ボール)がなめらかに回転するためにケース(1)と球(2)との間に設置されるリング(3)(輪状ボールカバー)で、該リング(3)(輪状ボールカバー)を「透明なものとする」こと、及び該リング(3)(輪状ボールカバー)の下面に「高輝度LED(6)(照明体)を対向して設ける」こと、が開示されている。(出願公開明細書第3頁第20行?第4頁第15行、第5頁第5行?第6頁第12行、第1?4図参照)
【4】対比・判断
(対比)
請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)と前記刊行物1に記載された考案(以下、「引用考案」という。)とを対比すると、刊行物1における「メインシャーシ(4)とカバー(25)とスタンド(26)」「トラックボール(1)」「2つの支持ローラ(10a,10b)と支軸(11a,11b)」「エンコーダ(29a,29b)」「回転リング(2)」「3次元入力装置」「メインシャーシ(4)」「押えリング(3)」及び「カバー(25)」は、それぞれ本願考案における「ケーシング(1)」「ボール(2)」「一対の回転軸(4a,5a)」「回転検出器(4,5)」「ダイヤルリング(10)」「トラックボール」「ケーシング(1)の底部(1c)」「輪状ボールカバー(3)」及び「ケーシング(1)の上部(1b)」に相当するものと認められ、また刊行物1における「フォトカプラ(33)」及び「サブシャーシ(5)とスタンド(6)」は、本願考案における「ホトインタラプタ(14)」及び「支柱(50)」に対応させることができものであるから、両者は、以下のとおりの一致点及び相違点を有するものと認められる。
(一致点)
「ケーシング内に回転自在に設けられたボールと、前記ケーシング内に設けられ前記ボールと摺接して回転すると共に直交配置された一対の回転軸と、前記各回転軸に接続された回転検出器と、前記ケーシング上に回転自在に設けられ前記ボールの外周位置に配設されたダイヤルリングと、前記ダイヤルリングに形成された検出部と、前記ケーシング内に設けられたホトインタラプタとを備え、前記ダイヤルリングの回転を前記検出部とホトインタラプタを介して検出することにより、3軸検出を行うようにしたトラックボールにおいて、前記回転軸の各一端を軸受けするための軸受部と、前記ダイヤルリングの内側に設けられた支柱に固設されると共に前記ボールを保持するための輪状ボールカバーと、前記ダイヤルリングの外側に位置する前記ケーシングの上部とを備え、前記ダイヤルリングは、前記輪状ボールカバーと前記上部との間で回転自在に保持されているトラックボール。」
(相違点)
本願考案にあっては、
(A)ダイヤルリング(10)の検出部はダイヤルリング(10)の下端にパターン(10aA)として形成されており、
(B)ホトインタラプタ(14)は反射型のものであり、
(C)支柱(50)は前記ケーシング(1)の底部(1c)から一体に立上げられており、
(D)一対の回転軸(4a,5a)の各一端を軸受けする軸受部は共通軸受部(12)であり、
(E)輪状ボールカバー(3)は透明なものであり、
(F)照明体(15)は前記輪状ボールカバー(3)の下面(3b)に直接接合して設けられるものであり、
(G)ダイヤルリング(10)はその外周面に内側に向けて曲折する輪状円弧面(10A)を有し、かつ、上部(1b)は前記輪状円弧面(10A)の下方に位置して前記輪状円弧面(10A)は外部に露出しているものであり、
(H)前記照明体(15)はケーシング(1)の水平方向において前記ダイヤルリング(10)の下端(10a)と重合するようにしている、ものであるのに対して、
引用考案にあっては、
(a)ダイヤルリングの検出部はダイヤルリングの外端にスリットとして形成されており、
(b)ホトインタラプタは透過型のものであり、
(c)支柱はケーシングとは別体のサブシャーシから立下げられており、
(d)一対の回転軸の各一端を軸受けする軸受部は個別の軸受であり、
(e)輪状ボールカバーは不透明なものであり、
(f)前記輪状ボールカバーを照明する照明体を備えていないものであり、
(g)ダイヤルリングはその外周面に内側に向けて曲折する輪状円弧面を有する等の構成が明らかでなく、
(h)前記照明体を具備しないことによりダイヤルリングとの関連構成を具備しない、ものである点、
(判断)
上記相違点について、以下に検討する。
前記当審における拒絶の理由で引用した刊行物2乃至6には、前記したとおりの技術的事項が開示されているものであるが、これら各刊行物において、上記刊行物2には、ダイヤルリングの回転により3軸検出を行うトラックボールにおいて「ダイヤルリングの回転を検出する検出部をダイヤルリングの下端に形成する」こと、前記刊行物3には、トラックボールにおいて「回転体の検出部をパターンとして形成する」こと及び「回転検出用のホトインタラプタを反射型のものとする」こと、前記刊行物3、4には、トラックボールにおいて「ボールと摺接して回転すると共に直交配置された一対の回転軸の各一端を共通軸受で軸受けする」こと、前記刊行物5、6には、トラックボールにおいて「ボールを保持する輪状ボールカバーを透明なものとする」こと及び「輪状ボールカバーの下面に対向して設けられる照明体を備える」ことの開示にとどまるものであり、本願考案の構成である、
(1)前記(C)の、支柱(50)はケーシング(1)の底部(1c)から一体に立上げられた支柱(50)であって、その支柱(50)に輪状ボールカバー(3)を固設すること、
(2)前記(F)(H)の、照明体(15)は輪状ボールカバー(3)の下面(3b)に直接接合して設けられるものであって、その際、ケーシング(1)の水平方向においてダイヤルリング(10)の下端(10a)と重合するようにすること、
(3)前記(G)の、ダイヤルリング(10)はその外周面に内側に向けて曲折する輪状円弧面(10A)を有すること、
に係わる構成及びトラックボールにおけるこれらの関連構成は、いずれにも開示乃至示唆されているものとは認められない。
そして、このトラックボールにおけるこれらの構成乃至関連構成は、輪状ボールカバー、ダイヤルリング、照明体のそれぞれの構造、及び照明効果等を考慮し、さらに当業者の技術常識を勘案しても、当業者が適宜なし得る設計事項であるとも認められない。
したがって、刊行物1に記載された引用考案において、技術常識等を勘案し、前記刊行物2?6に記載された技術的事項を採用しても本願考案のように構成することは当業者がきわめて容易になし得るものとは認めることができない。
【5】まとめ
以上のとおりであって、本願の請求項1に係る考案は、上記刊行物1?6に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとは認められない。
また、他の本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2002-02-18 
出願番号 実願平5-62167 
審決分類 U 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立    
前審関与審査官 久保田 昌晴  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 稲葉 和生
植松 伸二
考案の名称 トラックボール  
代理人 曾我 道照  
代理人 長谷 正久  
代理人 曾我 道照  
代理人 池谷 豊  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 古川 秀利  
代理人 長谷 正久  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 古川 秀利  
代理人 池谷 豊  

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