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審決分類 審判    E02D
管理番号 1055180
審判番号 無効2001-40014  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-04-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-05-31 
確定日 2002-03-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第3075041号実用新案「耐加重用の化粧ハッチ」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3075041号の請求項1及び2に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 〔1〕手続の経緯
本件実用新案登録第3075041号の請求項1及び2に係る考案(以下、「本件考案1及び2」という。)について、平成11年6月7日に実用新案登録出願がなされ、平成12年11月15日に実用新案権の設定登録がなされ、平成13年5月31日にその実用新案登録について本件無効審判が請求され、被請求人に期間を指定して答弁の機会を与えたところ、何ら応答がなされなかった。

〔2〕本件考案
本件考案1及び2は、明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】住宅、店舗の街路側道に設置される、耐加重用の化粧点検口において、ステンレス薄鋼板材をZ型に折り曲げた四辺枠に底板とでマス状に成型し、モルタル挿入の中間には、補強線材を入れ、取手とで構成する耐加重用の化粧ハッチ。
【請求項2】請求項1ににおいて、化粧ハッチの受枠の外面モルタルと固定するアンカーの取付皿ビス穴にタップを施し、受枠の皿ビス埋没穴より皿ビスとで、ナットを使用せず、容易にアンカー固定する受枠と一体の耐加重用の化粧ハッチ。」

〔3〕審判請求人の主張
審判請求人は、「登録第3075041号実用新案明細書の請求項1及び2に係る考案についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、概ね次のとおり主張する。
1.無効理由1
本件考案1及び2は、本件実用新案登録出願前に日本国内において公然実施をされた考案又は公然知られた考案であるから、実用新案法3条1項1号又は2号に規定する考案に該当し、実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案1及び2についての実用新案登録は実用新案法37条1項2号に該当し、無効とすべきである。
2.無効理由2
本件考案1は甲第7号証に開示された考案にすぎず、また、本件考案2は甲第7号証及び甲第8号証に記載された技術を寄せ集めたものにすぎないから、本件考案1及び2は実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案1及び2についての実用新案登録は実用新案法37条1項2号に該当し、無効とすべきである。
そして、審判請求人は甲第1号証?甲第8号証を提出するとともに、以下の証人の証人尋問を申請している。
甲第1号証:請求人代理人が被請求人に送った「受任通知並びに警告書」
甲第2号証:被請求人から送られた「ご回答」
甲第3号証:請求人代理人が被請求人に送った「通知書」
甲第4号証:フロアハッチ「MS12-M」の仕様図面
甲第5号証:株式会社三重厨房住設の証明書
甲第6号証:株式会社三立商会の証明書
甲第7号証:中部工機株式会社の全製品カタログC-7 1991年版
甲第8号証:実願平4-23667号(実開平8-476号)のマイクロ フィルム
証人:加藤克己
梅山正蔵
金森貢

〔4〕当審の判断
1.無効理由2について
(1)請求人が提出した証拠について
(1-1)甲第7号証
中部工機株式会社の全製品カタログである甲第7号証は、表紙の「’91」の記載から、1991年版のカタログであることが認められ、また、裏表紙に「91.4」の記載もあることから、本件実用新案登録の出願前に国内において頒布された刊行物であると認められる。
そして、甲第7号証には、図面とともにフロアーハッチについての説明が記載されており、以下のことが認められる。
(a)フロアーハッチの「製品一覧表」(85頁)の「MS-12-M」の欄に、「枠材質」及び「底板材質」として「SUS304」と記載されている。
(b)「フロアーハッチについて」の欄(85頁)に、「床の美観を保ち、点検を容易にするCHUBUのフロアーハッチ(床点検口)はPタイル用、モルタル用ともに目地は美しい素材(ステンレス、……)を使用しています。機能美を追求した床点検口で美しく、スッキリとしたフロアー」、「屋内又は、敷地内の歩道用にご使用下さい。」と記載されている。
(c)「MS-12-M フロアーハッチ モルタル用」の頁(86頁)に、フロアーハッチの図面と写真が掲載され、「部品構成表」に、部品名として、「内枠」、「外枠」、「取手」、「補強材」、「補強配筋」、「底板」、「パッキン」「アンカー」がそれぞれ、図面に付された番号と対応させて記載されている。そして、図面には、断面Z型に折り曲げた四辺を有する外枠の内側に、四辺を有する内枠が配置され、外枠の各辺の外側にアンカーが取り付けられ、内枠には底板が設けられ、底板の上に補強配筋が設けられ、内枠の二辺の内側に取手が設けられたフロアーハッチ、が描かれている。
そして、モルタル用フロアーハッチは、内枠内にモルタルが充填されることは明らかである。
以上のことから、甲第7号証には、
「屋内又は、敷地内の歩道に設置される耐加重用のフロアーハッチ(点検口)であって、ステンレス薄鋼板材をZ型に折り曲げた四辺を有する外枠の内側に、四辺を有しステンレス薄鋼板材からなる内枠が配置され、外枠の各辺の外面に外側のモルタルと固定するアンカーが取り付けられ、内枠には底板が設けられ、底板の上に補強配筋が設けられ、内枠の二辺の内側に取手が設けられ、内枠と底板により形成される凹部にモルタルが充填されるフロアーハッチ」
が開示されているものと認めることができる。
(1-2)甲第8号証
本件実用新案登録の出願前に国内において頒布された刊行物である甲第8号証には、図面とともに以下の記載が認められる。
(a)「本考案はフロアーハッチに係り、詳しくはステンレス製の薄鋼を主とするフロアーハッチで軽量で耐食性があるため、……点検口に使用されている」(3頁3?5行)
(b)「図1は本考案によるステンレス製フロアーハッチ1,1の外枠2にアンカー5を取付けた斜視図で,図2は外枠2にアンカー5を取付けた側面の断面図である。……図1に示す如く外枠2の側面に皿ビス8が埋没する埋没受け3を押し出し,……アンカー5には外枠2の皿ビス埋没受け3が密接する凹凸部6を,6の突端にはネジ穴7を切り,……もうけてなるアンカー5を,外枠2と,アンカー5とを皿ビス8で固定してなるステンレス製フロアーハッチのアンカー取付法である。」(3頁20?27行)
(c)「本考案は単一な形状による外枠にアンカ取付法のため……アンカーの取付け固定は安易なため施工に手間がかからず」(3頁29行?4頁1行)
(d)「外枠にアンカーを取付けた側面の断面図」である図2には、ナットを使用せずに外枠にアンカーを取り付けた状態が示されている。

2.対比・判断
(1)本件考案1について
本件考案1と甲第7号証記載のものとを対比すると、両者は、
「住宅、店舗の街路側道に設置される、耐加重用の点検口において、ステンレス薄鋼板材をZ型に折り曲げた四辺枠に底板とでマス状に成型し、モルタル挿入の中間には、補強線材を入れ、取手とで構成する耐加重用のハッチ」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
本件考案1では、点検口及びハッチが化粧をしたものであるのに対し、甲第7号証記載のものでは、点検口及びハッチが化粧をしたものであるのか不明である。
そこで上記相違点1について検討する。
点検口やハッチに化粧をすることは、甲第7号証にもPタイルを施すフロアーハッチが記載されているように、本件実用新案登録の出願前に周知、慣用の技術事項であるから、甲第7号証に記載されたものにおいて点検口やハッチに化粧をし、相違点1における本件考案1の事項とすることは、当業者が必要に応じ適宜なし得たことである。
したがって、本件考案1は甲第1号証記載のもの及び周知、慣用の技術事項に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
(2)本件考案2について
本件考案2と甲第7号証記載のものとを対比すると、両者は、
「住宅、店舗の街路側道に設置される、耐加重用の点検口において、ステンレス薄鋼板材をZ型に折り曲げた四辺枠に底板とでマス状に成型し、モルタル挿入の中間には、補強線材を入れ、取手とで構成し、受枠と一体の耐加重用のハッチ」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
本件考案2では、点検口及びハッチが化粧をしたものであるのに対し、甲第7号証記載のものでは、点検口及びハッチが化粧をしたものであるのか不明である。
相違点2
本件考案2では、化粧ハッチの受枠の外面モルタルと固定するアンカーの取付皿ビス穴にタップを施し、受枠の皿ビス埋没穴より皿ビスとで、ナットを使用せず、容易にアンカー固定するのに対し、甲第7号証記載のものでは、アンカーがどのように取付けられているのか不明である。
上記相違点1は、上記「(1)本件考案1について」の相違点1と同じであり、該相違点についての検討は、先に述べたとおりである。
そこで、上記相違点2について検討する。
甲第8号証には、ステンレス製の薄鋼を用いたステンレス製フロアーハッチ1,1の外枠2(本件考案2の「受枠」に相当する。)に皿ビス8が埋没する埋没受け3(同「埋没穴」に相当する。)を押し出し、アンカー5には外枠2の皿ビス埋没受け3が密接する凹凸部6を設け、該凹凸部6の突端にネジ穴7を切り(同「取付皿ビス穴にタップを施し」に相当する。)、外枠2とアンカー5とを皿ビス8で、ナットを使用せずに、安易に固定できるステンレス製フロアーハッチのアンカー取付構造、が記載されている。
そして、甲第7号証記載のものと甲第8号証記載のものは、共に、ステンレス製の、フロアーに用いられるような耐加重用のハッチに関するものであるから、甲第7号証記載のものに甲第8号証記載のアンカー取付構造を適用し、相違点2における本件考案2の事項とすることは、当業者であればきわめて容易になし得たことである。
したがって、本件考案2は、甲第7号証及び甲第8号証記載のもの並びに周知、慣用の技術事項に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができない。

〔5〕むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する他の無効理由を検討するまでもなく、本件考案1及び2についての実用新案登録は、実用新案法3条2項の規定に違反してなされたものであり、同法37条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
審判費用は、実用新案法41条で準用し、特許法169条2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-12-27 
結審通知日 2002-01-07 
審決日 2002-01-21 
出願番号 実願平11-3998 
審決分類 U 1 111・ 121- Z (E02D)
最終処分 成立    
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 鈴木 公子
中田 誠
登録日 2000-11-15 
登録番号 実用新案登録第3075041号(U3075041) 
考案の名称 耐加重用の化粧ハッチ  
代理人 三宅 始  

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