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審決分類 審判 全部申し立て   A47B
管理番号 1055185
異議申立番号 異議2001-71865  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2002-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-06 
確定日 2002-03-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第2606776号「デスクマット」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2606776号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 1.本件考案
本件実用新案登録の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 CH_(2)=CH_(2)とCH_(2)=CR_(1)COOR_(2)<R_(1)はH又はCH_(3)であり、R_(2)はアルキル基である>を共重合してなるエチレン系コポリマー若しくはこれらの混合物を主成分としてマット本体を形成し、該マット本体の表面をコロナ放電処理してその処理面に、所望なポリマービーズを1?20重量%添加した膜厚5?30μmの紫外線硬化型塗料被膜を設けてなることを特徴とするデスクマット。」

2.引用刊行物記載の考案
先の取消理由通知において引用した、実願昭63-100099号(実開平2-22891号)のマイクロフィルム(異議申立人提出の甲第1号証)(以下、「刊行物1」という。)には、実用新案登録請求の範囲、第4頁第最下行?第5頁第2行、第6頁第14行?第7頁第2行及び第1図の記載を参照すると、柔軟であって、経時変化して硬くなったり、カールしたりすることがなく、耐擦傷性にすぐれ、印刷物等と長期間接触しても、印刷物のインク等の転写がないことを目的として、エチレン-メチルメタクリレート共重合体樹脂シートの片面または両面に、好ましい厚さとして30?50μmのアイオノマーフィルムを積層してなる積層デスクマットが記載されている。
同、特開平1-247159号公報(異議申立人提出の甲第2号証)(以下、「刊行物2」という。)には、特許請求の範囲(1)、第1頁左下欄第19行?同右下欄第2行、第2頁左下欄第17?19行、同右下欄最下行?第3頁左上欄第1行及び第1図の記載を参照すると、樹脂シート基材の表面に紫外線硬化型塗料を厚さ1?50μ(好ましくは5?20μ)塗布して、紫外線架橋樹脂層を設けたデスクマットが記載されており、表面に紫外線架橋樹脂層を設けた効果として、第4頁左上欄第12?20行に「・・・表面の耐汚染性に優れ汚れが付着し難く、・・・可塑剤が表面にブリードアウトしてくることがないため、・・・コピー類がシートに接着する等の不具合を生じることがない。」と記載されている。
同、特開平2-38028号公報(異議申立人提出の甲第5号証)(以下、「刊行物3」という。)には、特許請求の範囲(1)、第1頁右下欄第2?4行、同右下欄第8?17行、第3頁左下欄第17、18行及び第1図の記載を参照すると、コピー紙のコピーインクがマット側に転写し、付着するのを防止するため、また、マットの表面の傷付きや埃の付着を防止するために、樹脂シートの表面に紫外線硬化型塗料を硬化後の厚さ1?50μ(好ましくは5?20μ)となるように、塗布、硬化せしめたデスクマットが記載されている。
同、実願昭62-165417号(実開平1-70584号)のマイクロフィルム(異議申立人提出の甲第8号証)(以下、「刊行物4」という。)には、実用新案登録請求の範囲、第6頁第18、19行、第9頁第19行?第10頁第2行及び第1図の記載を参照すると、印刷インク、コピーインクがデスクマットに付着、移行転写しないように、軟質ポリ塩化ビニルシートの片面に平均0.5?15μmの厚さで紫外線硬化型塗料層を設けた帯電防止性デスクマットが記載されている。
同、高分子学会高分子辞典編集委員会編「新版高分子辞典」株式会社朝倉書店発行 1991年8月10日初版第3刷 p.166「コロナ処理」(異議申立人提出の甲第9号証)(以下、「刊行物5」という。)には、コロナ処理とは、「プラスチック,主としてポリオレフィンの接着,ラミネート,塗装,印刷性改良のため行われる放電処理の一つで大気中で実施でき,装置も簡単なことから広く普及している.・・・」と記載されている。
同、特開平4-82736号公報(異議申立人提出の甲第3号証)(以下、「刊行物6」という。)には、特許請求の範囲1,2,4、第1頁右下欄第12?15行、第2頁右下欄第5行?第3頁左上欄第1行、第3頁右上欄第5?10行、同右下欄第9?14行の記載を参照すると、文房具用品などの表面を艶消しとするために、プラスチックの基材シート上に、硬化性樹脂にアクリル樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂ビーズを添加した艶消し塗料を、厚さ5μm以上塗布し、硬化させて塗膜を設けること及びプラスチックの基材シートと塗膜との密着性を上げるため、基材表面をコロナ放電処理してその処理面に、合成樹脂ビーズを添加した艶消し塗料の塗膜を設けることが記載されている。
同、特開平2-164481号公報(異議申立人提出の甲第4号証)(以下、「刊行物7」という。)には、特許請求の範囲(1)、第4頁左上欄第8?10行、同第16?19行、第4頁右下欄第10行?第5頁左上欄第1行の記載を参照すると、基材表面に中空状樹脂粒子を、塗料固形分換算で好ましくは0.1?10重量%配合した紫外線硬化型塗料を塗布し、硬化させて、中空状樹脂粒子によりソフト感のある塗膜とするとともに、紫外線硬化型塗料の硬化において生じやすい硬化ひずみを吸収し、ひずみ、収縮の少ない塗膜が得られ、かつ、ソフト感があるにもかかわらず、耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性、耐薬品性、耐熱性、防音性、防露性等に優れた塗膜が得られることが記載されている。

3.対比・判断
本件考案と、刊行物1に記載された考案とを比較すると、刊行物1に記載された考案の「エチレン-メチルメタクリレート共重合体」、「樹脂シート」、「積層デスクマット」はそれぞれ、本件考案の「CH_(2)=CH_(2)とCH_(2)=CR_(1)COOR_(2)<R_(1)はH又はCH_(3)であり、R_(2)はアルキル基である>を共重合してなるエチレン系コポリマー」、「マット本体」、「デスクマット」に相当し、刊行物1に記載された考案の「アイオノマーフィルム」は、本件考案の「紫外線硬化型塗料被膜」と同様の目的のもとに設けられる表面被膜である点で共通しているから、両者は、CH_(2)=CH_(2)とCH_(2)=CR_(1)COOR_(2)<R_(1)はH又はCH_(3)であり、R_(2)はアルキル基である>を共重合してなるエチレン系コポリマーからなるマット本体の表面に表面被膜を設けたデスクマットの点で一致し、下記の点で相違している。
a.表面被膜が、本件考案では、膜厚5?30μmの紫外線硬化型塗料被膜であるのに対して、刊行物1に記載された考案では、厚さ30?50μmのアイオノマーフィルムである点。
b.表面被膜を設けるマット本体の表面を、本件考案では、コロナ放電処理しているのに対して、刊行物1に記載された考案では、そのような構成を有していない点。
c.表面被膜中に、本件考案では、所望なポリマービーズを1?20重量%添加しているのに対して、刊行物1に記載された考案では、そのような構成を有していない点。
ここで、上記相違点aについて検討するため刊行物2乃至4をみると、刊行物2乃至4のいずれにも、樹脂シート基材の表面に紫外線硬化型塗料を塗布・硬化させて被膜を設けたデスクマットが記載されており、デスクマットのマット本体の表面に紫外線硬化型塗料被膜を設けることは、周知技術といえ、かつ、刊行物3には、「デスクマットの表面側においては傷付きや埃の付着を防止するため・・・紫外線硬化型塗料層を設け・・」(第1頁右下欄第4?17行)と記載されていることをふまえると、刊行物1に記載された考案の、CH_(2)=CH_(2)とCH_(2)=CR_(1)COOR_(2)<R_(1)はH又はCH_(3)であり、R_(2)はアルキル基である>を共重合してなるエチレン系コポリマーからなるマット本体の表面に設ける表面被膜として、紫外線硬化型塗料の被膜を採用することは、当業者がきわめて容易に想到しうることにすぎない。また、刊行物2では、該塗料を1?50μ(好ましくは5?20μ)塗布、刊行物3では、該塗料の硬化後の厚さ1?50μ(好ましくは5?20μ)、刊行物4では、平均0.5?15μmの厚さで紫外線硬化型塗料層を設けるとあり、膜厚を5?30μmとすることは、設計的事項にすぎない。
次ぎに、上記相違点bについて検討するため刊行物5及び6をみると、刊行物5及び6のいずれにも、基材表面に塗料を塗布するに際し、表面をコロナ放電処理してその処理面に塗布することが記載されており、相違点bにおける本件考案の構成は、周知技術にすぎない。なお、刊行物5に記載された考案の基材は、ポリオレフィンが例示されており、ポリオレフィンは広義には、本件明細書においてエチレン系コポリマーとして例示されているエチレン-エチルアクリレート共重合体をも包含する(甲第6号証として提示された、大阪市立工業研究所プラスチック課編纂「実用プラスチック用語辞典」1989年9月10日 (株)プラスチック・エージ発行 p.655参照)。
更に、上記相違点cについて検討するため刊行物6及び7をみると、刊行物6及び7のいずれにも、艶消しやソフト感のある塗膜とするために、塗料に樹脂ビーズを添加することが記載されており、相違点cにおける本件考案の構成は、周知技術にすぎない。また、刊行物7では、塗料に中空状樹脂粒子(樹脂ビーズ)を、塗料固形分換算で好ましくは0.1?10重量%配合しており、どの程度添加するかは、設計的事項にすぎない。なお、刊行物7に記載された考案の塗料は、紫外線硬化型塗料が例示されている。

4.むすび
以上のとおり、本件考案は、上記刊行物1に記載された考案及び上記各周知技術から当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、本件考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してなされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定によって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2002-01-10 
出願番号 実願平4-60391 
審決分類 U 1 651・ 121- Z (A47B)
最終処分 取消    
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 伊波 猛
鈴木 憲子
登録日 2000-10-27 
登録番号 実用新案登録第2606776号(U2606776) 
権利者 オカモト株式会社
東京都文京区本郷3丁目27番12号
考案の名称 デスクマット  
代理人 石渡 英房  
代理人 細井 勇  
代理人 長南 満輝男  
代理人 細井 貞行  

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