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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) B65D
管理番号 1056839
審判番号 無効2001-35165  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-04-16 
確定日 2002-02-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の登録第2543492号実用新案「ティシュペーパ用包装箱」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2543492号の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 I 請求の趣旨

実用新案登録第2543492号の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。

II 被請求人の答弁の趣旨

本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。

III 手続の経緯

本件実用新案登録に係る考案(以下「本件考案」という。)についての手続の経緯は、およそ次のとおりである。
(1)実用新案登録出願(実願平3-103055号) 平成3年12月13日
(2)設定登録(実用新案登録第2543492号) 平成9年4月25日
(3)実用新案登録異議の申立て(平成10年審判第70423号) 平成10年1月29日
(4)同申立てについての決定 平成10年5月6日
(5)本件無効審判の請求 平成13年4月16日
(6)被請求人へ審判請求書副本の送付 平成13年6月1日
(7)被請求人より審判事件答弁書の提出及び訂正請求 平成13年7月31日
(8)請求人及び被請求人へ無効理由通知書の送付 平成13年9月7日
(9)請求人及び被請求人より意見書の提出 平成13年11月6日

IV 請求人の主張の概要

請求人は、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出するとともに、参考資料として参考資料1を提出し、本件実用新案登録を無効とすべき理由として、要約すると次の(1)?(3)を挙げている。
(1)本件実用新案登録は、実用新案法(平成2年12月1日施行の平成2年法。以下同じ)第5条第4項又は第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない実用新案登録出願に対してされたものである。
(2)物品の形状、構造又は組合せに係る考案を保護の対象としている実用新案法の下では、本件考案における「シートFを、箱本体Pとともに溶かしてもその紙再生に支障がなく」及び「シートFの貼着のりも溶かしても支障のない」との規定は、「物品」としての要件とはならないものであることを考慮すると、本件考案は、本件出願前に頒布された甲第3号証刊行物に記載された考案であるといえるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(3)本件考案は、甲第3号証ないし甲第6号証の各刊行物に記載された考案に基づいて、本件出願前に当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである。
【証拠方法及び参考資料】
甲第1号証:原啓志著「紙のおはなし」、財団法人日本規格協会、1992年(平成4年)6月20日発行、81頁、142?147頁、152?153頁、
甲第2号証:JIS P8116^(-1994)「紙及び板紙の引裂強さ試験方法」
甲第3号証:米国特許第3,369,699号明細書(1968年2月20日発行)及び訳文
甲第4号証:実願昭61-197271号(実開昭63-102680号)のマイクロフィルム
甲第5号証:ドイツ国実用新案登録第G9108036.3号明細書(1991年10月2日発行)及び訳文
甲第6号証:塩川二朗監修「力一ク・オスマー化学大辞典」、丸善株式会社、昭和63年9月20日発行、926?927頁
甲第7号証:村井操ほか1名著「製紙工学」、工学図書株式会社、昭和41年7月10日発行、469?473頁
参考資料1:ティシュペーパーの取出し時においてスリットに作用する力の説明書(請求人作成のもの)

V 被請求人の主張の概要

被請求人は、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証を提出し、前記の無効理由に対して、要約すると次の(1)?(3)のとおり反論している。
(1)本件明細書の考案の詳細な説明には当業者が容易に実施できる程度に考案が記載され、また、実用新案登録請求の範囲には考案の構成に欠くことのできない事項のみが記載されていることが明らかであるから、本件明細書の記載に不備はない。
(2)本件考案は甲第3号証に記載された考案ではない。
(3)甲第3号証ないし甲第6号証の各刊行物に記載された考案を組合せても本件考案に到達することはできず、本件考案はこれらの刊行物に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。
【証拠方法】
乙第1号証:「和紙の製造・板紙の抄造」、紙パルプ技術協会、昭和43年12月17日発行、1頁、4?7頁、100?111頁
乙第2号証:「包装技術便覧」、社団法人日本包装技術協会、1995年7月1日発行、250?261頁
乙第3号証:「新版 接着と接着剤」、財団法人日本規格協会、1989年3月27日発行、18?21頁
乙第4号証:「接着の科学」、株式会社岩波書店、1965年10月20日発行、52?57頁
乙第5号証:「紙パルプ技術便覧」、紙パルプ技術協会、1992年1月30日発行、4?5頁、12?15頁
乙第6号証:「コンバーテック」、第26巻第8号、株式会社加工技術研究会、1998年8月15日発行、23?25頁(表題「リサイクル可能な粘着紙」)

VI 当審の判断

1 訂正請求について
(1)訂正の内容
前記III(7)の訂正請求は、次のア?ウのとおり、明細書の記載を訂正することを求めるものである。
ア 本件無効審判の請求がされている実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載について、訂正前の
「【請求項1】ティシュペーパaを収納した紙製箱本体P上面にそのティシュベーパ取出し用開口1を形成し、その開口1を被うシートFを箱本体Pに貼着し、そのシートFにはティシュペーパ取出し用スリット2を形成したティシュペーパ用包装箱において、
上記シートFを、箱本体Pとともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある和紙などの素材から成すとともに、そのシートFの貼着のりも溶かしても支障のないものとしたことを特徴とするティシュペーパ用包装箱。」
を、訂正明細書の
「【請求項1】ティシュペーパaを収納した紙製箱本体P上面にそのティシュベーパ取出し用開口1を形成し、その開口1を被うシートFを箱本体Pに貼着し、そのシートFにはティシュペーパ取出し用スリット2を形成したティシュペーパ用包装箱において、
上記シートFを、箱本体Pとともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある和紙素材から成すとともに、そのシートFの貼着のりも紙とともに溶解させても支障のないものとしたことを特徴とするティシュベーパ用包装箱。」
と訂正する。
イ 考案の詳細な説明の段落【0007】の記載について、訂正前の「上記課題を解決するために、この考案にあっては、上述のティシュペーパ用包装箱において、そのシートを、箱本体とともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある素材によって成すとともに、そのシートの貼着のりも溶かしても支障のないものとしたのである。」を、訂正明細書の「上記課題を解決するために、この考案にあっては、上述のティシュペーパ用包装箱において、そのシートを、箱本体とともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある和紙素材によってなすとともに、そのシートの貼着のりも紙とともに溶解させても支障のないものとしたのである。」と訂正する。
ウ 考案の詳細な説明の段落【0008】の記載について、訂正前の「その素材には、和紙などの引裂きに対して抗力がある種々の紙のみならず、でんぷん樹脂などのように水可溶性のものからなる不織布などを採用し得る。」を、訂正明細書の「その素材には、和紙素材を採用し得る。」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
アの訂正は、請求項1の記載において、シートFの素材を、「箱本体Pとともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある和紙など」から、「箱本体Pとともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある和紙」に限定するとともに、シートFの貼着のりについて規定した「溶かしても支障のない」との文言が、「紙とともに溶解させても支障のない」との意味であることを明確にしたものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
イ?ウの訂正は、アの訂正に整合させて、対応する考案の詳細な説明に所要の訂正を行うものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、これらの訂正は、いずれも願書に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、訂正前の請求項1に記載された事項により特定される考案の具体的な目的の範囲を逸脱してその技術的事項を変更するもの等に該当しないから、当該訂正は、実用新案登録請求の範囲を実質上拡張するものでも変更するものでもない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、ア?ウの訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号。以下「平成5年改正法」という。)附則第4条(実用新案法の改正に伴う経過措置)第1項の規定によりなおその効力を有するものとされる平成5年改正法第3条の規定による改正前の実用新案法(以下「平成5年旧実用新案法」という。)第40条第2項の規定を、平成5年改正法附則第4条第2項の規定〔特許法等の一部を改正する法律(平成10年法律第51号)附則第13条及び特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第14条の両規定により改正されている。〕に基づいて読み替えて得られる平成5年旧実用新案法第40条第2項の規定、並びに同様に読み替えて得られる平成5年旧実用新案法第40条第5項において準用する同法第39条第2項及び読み替えて準用する同法第39条第3項の各規定に適合するので、当該訂正を認める。

2 無効理由について
(1)本件考案
本件考案は、前記1(1)アに摘記した訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1を再掲すれば次のとおりである。
「ティシュペーパaを収納した紙製箱本体P上面にそのティシュベーパ取出し用開口1を形成し、その開口1を被うシートFを箱本体Pに貼着し、そのシートFにはティシュペーパ取出し用スリット2を形成したティシュペーパ用包装箱において、
上記シートFを、箱本体Pとともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある和紙素材から成すとともに、そのシートFの貼着のりも紙とともに溶解させても支障のないものとしたことを特徴とするティシュベーパ用包装箱。」
(2)引用刊行物
前記III(8)の無効理由通知書において、本件実用新案登録が実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであるとの無効理由において引用された刊行物は次のとおりである。
刊行物1:実願昭61-197271号(実開昭63-102680号)のマイクロフィルム(本件無効審判請求人の提出した甲第4号証に相当)
刊行物2:ドイツ国実用新案出願公開第9108036.3号明細書、1991年10月2日発行(同じく甲第5号証に相当)
刊行物3:特公昭62-6595号公報(職権で探知したもの)
刊行物4:紙パルプ技術協会編「和紙の製造・板紙の抄造」、昭和43年12月27日、紙パルプ技術協会発行、6頁(本件無効審判被請求人の提出した乙第1号証参照)
(3)引用刊行物の記載内容の検討
(3-1)刊行物1には、次のa?cの事項が図面とともに記載されている。
a 「箱1のティシュー取り出し口2に、ひだ3を設け、その内側に開ロ部4を設けた透明紙5を接着したティシュー箱。」《本文1頁実用新案登録請求の範囲》
b 「この考案は、最後の一枚までスムーズにティシューが取り出せるようにしたティシュ一箱に関するものである。従来のティシュー箱では、最初のうちはティシューを取り出し口よりスムーズに取り出すことができるが、使用しているうちに、取り出し口の透明紙の開口部が大きくなって保持力が低下し、最後の一枚までスムーズに取り出すことが出来ずたいへん不便である。」《本文1頁8?17行》
c 「本案は、その欠点をなくするために考えたもので、その構造を図面について説明すれば、ティシュー箱1のティシュー取り出し口2に、とつ型のひだ3を設け、その内側に直線状の開ロ部4を設けた透明紙5を接着する。」《本文1頁18行?2頁4行》
そして、図面には、透明紙5がティシュー取り出し口2を被っているティッシュー箱の形態が記載されている。
刊行物1にいう「ティシュー箱1」が紙製であることは自明のことであり、同じく「透明紙5」はシートの1種であるから、前記a、cの記載と図面の記載とを総合すると、刊行物1には、次の考案(以下「引用考案」という。)が記載されていると認められる。
【引用考案】「ティシューを収納した紙製箱の上面にそのティシューの取り出し口を形成し、その取り出し口を被うシートを同箱に接着し、そのシートには直線状の開口部を形成したティシュー箱において、上記シートを透明紙から成したティシュー箱。」
(3-2)前記甲第5号証の一部をなす訳文を参照すると、刊行物2には、次の技術的事項Aが記載されていると認められる(原文の請求の範囲、4頁1?11行参照)。
【技術的事項A】「ティシュペーパ(Papiertuch)の堆積物(Stapel)を収納した厚紙(Pappe,Karton)製の箱(Schachtel)の上面に形成した取り出し開口(Entnahmeoeffnung)の下に、ティシュペーパを1枚ずつ取り出すために配置した紙製の保護シート(又は保護紙。Schutzfilm aus Papier,Schutzpapier)には、ティシュペーパの取り出しの際に大きな力がかかることがあり、その場合に、同保護シートは破れてしまう(einreissen)こと。」
(3-3)刊行物3には、次のd?fの事項が記載されている。
d 「本発明は、水溶性又は水分散性ホットメルト接着剤に関するものであり、さらに詳しくは製本用、包装用、紙管用、感熱及び再湿テープ、ラベル用等に適するホットメルト接着剤に関するものである。」《1欄11?15行》
e 「一方、現在ホットメルト接着剤としてはエチレンー酢酸ビニル共重合樹脂、いわゆるEVA樹脂が使用されているが、このものは疎水性で水に不溶である。このことが、EVA樹脂よりなるホットメルト接着剤で接着された紙を故紙回収する場合に大きな障害となっている。すなわち、EVA樹脂は水に不溶であるため、故紙回収する場合に故紙がばらばらにならないし、また、砕かれないまま残ったホットメルト接着剤が故紙回収の工程の各所にあるスクリーンの自塞りを起しトラブルの原因となる。さらに、細く砕かれたホットメルト接着剤が故紙中に入り、加熱乾燥特に再溶融してロールに付着したり、故紙製品の表面に斑点を作るといった問題が発生する。通産省は公害の面から、また資源再利用の観点からも故紙の回収率を現在の40%から50%以上に高める方針を打出しているが、このように、水に不溶のホットメルト接着剤を使用した場合には紙の故紙回収はきわめて複雑かつ困難となるのである。」《2欄5行?3欄3行》
f 「本発明の水溶性又は水分散性ホットメルト接着剤は、これを製本背固め、段ボールやカートンのシ-ル又は感圧テープ、ラベル、再湿テープとして用いたのち、故紙として回収する場合、回収再生工程では接着剤に起因するなんらのトラブルを生じることがない。」《8欄18?23行》
ここで、(i)刊行物3は、もともと、新規な「水溶性又は水分散性ホットメルト接着剤」自体の発明について述べたものであることを前記dの「等に適する」との文言と併せて考慮すると、前記d、fの記載からは、そこに列挙された「製本用、包装用、紙管用、感熱・感圧・再湿テープ用、ラベル用、製本背固め用、段ボール・カートンのシ-ル用」の各用途は、「水溶性又は水分散性ホットメルト接着剤」の用途の単なる例示にすぎないもので、同接着剤がこれらの用途にしか適用しえないものではないことが直ちに理解され、また、(ii)前記fにいう「トラブル」とは、前記eにいう各種の複雑かつ困難な問題のことを指すことが明らかであるから、前記d?fの記載を総合すると、刊行物3には、次の技術的事項Bが記載されていると認められる。
【技術的事項B】「紙用の接着剤として、故紙の回収に際して、回収再生工程において接着剤に起因する何らのトラブルも生じることがない接着剤を用いること。」
(3-4)刊行物4には、次の技術的事項Cが記載されていると認められる。
【技術的事項C】「和紙は、弾力があり、強靱性に富み、繊維以外に混ぜものをしないものであること。」
(4)対比・判断
(4-1)本件考案と引用考案とを対比すると、引用考案の「ティシュー」、「紙製箱」又は「箱」、「取り出し口」、「接着」、「直線状の開口部」、「ティシュー箱」は、順に、本件考案の「ティシュペーパa」、「紙製箱本体P」又は「箱本体P」、「ティシュペーパ取出し用開口1」、「貼着」、「ティシュペーパ取出し用スリット2」、「ティシュペーパ用包装箱」に相当することが明らかであり、また、引用考案にいう「透明紙」は紙素材の一つであるから、両者は次の一致点で一致し、相違点1及び2でのみ相違すると認められる。
【一致点】「ティシュペーパaを収納した紙製箱本体P上面にそのティシュぺーパ取出し用開口1を形成し、その開口1を被うシートFを箱本体Pに貼着し、そのシートFにはティシュペーパ取出し用スリット2を形成したティシュペーパ用包装箱において、上記シートFを紙素材から成したティシュペーパ用包装箱。」
【相違点1】シートFの紙素材が、本件考案では、「箱本体Pとともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある和紙素材」であるのに対し、引用考案では、透明紙である点。
【相違点2】本件考案では、シートFの貼着のりを「紙とともに溶解させても支障のないもの」としたのに対し、引用考案では、そのことに言及しない点。
(4-2)これらの相違点について検討する。
(相違点1について)
刊行物1の前記bの「使用しているうちに、取り出し口の透明紙の開口部が大きくなって保持力が低下し」との記載や刊行物2記載の技術的事項Aによれば、ティシュペーパ用包装箱のティシュぺーパ取出し用開口に貼着したシートFの紙素材は、容易に腰の強さが失われたり破れたりしてしまわないような弾力のある強靱なものとするのが好ましいことがうかがい知られ、一方、刊行物4記載の技術的事項Cによれば、和紙素材は、弾力があり強靱性に富むものであることが知られるから、引用考案においても、シートFの紙素材を、透明紙に代えて和紙素材とすることは、当業者がきわめて容易に想到しうることである。そして、本件考案が和紙素材について規定する「箱本体Pとともに溶かしてもその紙再生に支障がなく」という事項は、「和紙は繊維以外に混ぜものをしない」という技術的事項Cから当然に導き出されるものであり、同じく「かつ引裂きに対して抗力のある」という事項は、和紙についての当業者の技術常識であると認められる(これらの点は、本件無効審判被請求人も、審判事件答弁書5頁下から3行?7頁3行において、自認しているところである。)。
そして、本件考案が、シートFの紙素材を、透明紙に代えて、「箱本体Pとともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある和紙素材」としたことによって、当業者の予測しえない格別の作用効果を奏するものでもない。
してみると、相違点1をなす事項は、刊行物1、2、4の記載に基づいて当業者がきわめて容易に想到しうることであるというほかはない。
(相違点2について)
刊行物3記載の技術的事項Bによれば、紙用の接着剤として、故紙の回収に際して、回収再生工程において接着剤に起因する何らのトラブルも生じることがない接着剤を用いること、つまり紙とともに溶解させても支障とならない接着剤を用いることが知られるから、引用考案において、和紙素材としたシートFを箱本体Pに貼着するに際し、貼着のり、つまり接着剤としてこのような接着剤を用いることは、刊行物3の前記eの記載にもあるように、すでに本件出願前から重要視されている「故紙の回収、資源再利用」を考慮したとき、当業者がきわめて容易に想到しうることである。
そして、本件考案が、和紙素材たるシートFの貼着のりを、「紙とともに溶解させても支障のないもの」としたことによって、当業者の予測しえない格別の作用効果を奏するものでもない。
してみると、相違点2をなす事項は、刊行物3の記載に基づいて当業者がきわめて容易に想到しうることであるというほかはない。
(まとめ)
相違点1と2とを組み合わせた点にも格別の見るべきものはない。
したがって、本件考案は、その出願前に国内において頒布された刊行物1?4に記載された考案に基づいて、その出願前に当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

3 被請求人の主張に対して
(1)被請求人は、前記III(9)の意見書3頁22行?8頁28行において、およそ次の(i)?(iii)のような主張をしている。
(i)刊行物3記載の「ポリ酢酸ビニル共重合体を主体とした水溶性又は水分散性ホットメルト接着剤」の考案の属する技術分野と、本件考案のティシュペーパ用包装箱が属する技術分野との間には何の関連もない。刊行物3には、前記ホットメルト接着剤を用いると故紙回収の際にトラブルがないと記載されているが、これは一般的な故紙回収の技術について説明しているだけであり、本件考案のように、和紙素材から成るシートFを箱本体に貼着する際に紙とともに溶解させても支障のない貼着のりを用いる技術と直接に関連しているものではない。また、刊行物3に記載されている前記ホットメルト接着剤の用途も、本件考案とは全く異なる技術分野に関するものである。
(ii)刊行物1と刊行物2には、無効理由通知にいう「シートFの紙素材は、容易に腰の強さが失われたり破れたりしてしまわないような弾力のある強靭なものとするのが好ましいことがうかがい知られ」との内容を導くような記載は全くなく、刊行物1、2は、むしろ箱本体の開□部に紙素材を用いたときに、その紙素材の強度が低いことを前提とし、その対策を紙素材以外の構成要素で補完しようとする技術を開示しているだけである。つまり、刊行物1、2には、ティシュー取り出し口2に設けるシートの素材の強度を高くして保持力を高くしたり、紙の素材の強度を高くしてティシューに対する強度に対応させようとしたりする発想は全く記載されていない。
(iii)取り出し口に設けられる紙素材を強度の点で改善することと箱本体とシートFとの接着部にもリサイクル可能なものを用いることとによって、初めて本件考案が、リサイクルが可能で且つ実用できるティッシュベーパ用包装箱を完成できるに至ったのである。したがって、相違点1と相違点2での発明を特定するための事項は互いに機能的又は作用的に密接に関連しており、本件考案は各事項の単なる組み合わせ(単なる寄せ集め)とされるべきではなく、本件考案の効果は公知技術の単なる総和以上の格別なもの、すなわち技術水準から予測される範囲を越えた顕著なものである。
(2)しかし、これらの主張は、以下の理由により失当である。
〔前記(i)の主張に対して〕
技術分野の共通性ないし関連性を考慮することは、進歩性の判断において「動機づけ」を検討する際の一つの事例にすぎないものであって、動機づけの検討事項はこれに限られるものではなく、技術的課題や作用・機能の共通性を考慮することも動機づけの検討事項に含まれている。そして、刊行物3記載のものは、「故紙の回収、資源再利用」という技術的観点から、故紙の回収に際して、回収再生工程において接着剤に起因する何らのトラブルも生じることがない接着剤を用いるものであり、本件考案では、同様の技術的観点から、紙とともに溶解させても支障のない貼着のり(接着剤)を用いるものであり、両者は技術的課題や作用・機能に共通性があるから、前記2の(4-2)の「(相違点2について)」のように判断することができるのである。
〔前記(ii)の主張に対して〕
使用しているうちに、取り出し口の紙製シートの開口部が大きくなったり、同シートが破れたりすることが刊行物1、2に記載されているから、これから、当業者であれば、同シートを弾力のある強靱なものとすること、すなわち、「シートFの紙素材は、容易に腰の強さが失われたり破れたりしてしまわないような弾力のある強靭なものとすること」が好ましいことがうかがい知られるといえるのである。
〔前記(iii)の主張に対して〕
刊行物1、2記載のものも、取り出し口の紙製シートとして透明紙又は保護紙という紙素材を用いているからリサイクル可能であることはいうまでもなく、同シートを強靱な和紙素材にすれば、強度の点で改善されることもいうまでもない。その上、接着剤として刊行物3記載の紙のリサイクルに支障のないものを用いれば、ティッシュペーパ用包装箱全体がリサイクル可能なものとなることは当然である。このように、本件考案の作用効果には、公知技術の単なる総和以上の格別のものは何一つない。

VII むすび

以上のとおりであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、実用新案法第37条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項においてさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
ティシュペーパ用包装箱
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ティシュペーパaを収納した紙製箱本体P上面にそのティシュペーパ取出し用開口1を形成し、その開口1を被うシートFを箱本体Pに貼着し、そのシートFにはティシュペーパ取出し用スリット2を形成したティシュペーパ用包装箱において、
上記シートFを、箱本体Pとともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある和紙素材から成すとともに、そのシートFの貼着のりも紙とともに溶解させても支障のないものとしたことを特徴とするティシュペーパ用包装箱。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、ティシュペーパ用包装箱に関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
一般に市販されているティシュペーパを納めた包装箱は、図1に示す長方体状、立方体状、円柱状などの様々な形状の紙製箱本体Pの中にティシュペーパaを一枚又は2枚毎取出し可能に収納したものであり、上面の開口1からティシュペーパaを取出して使用する。
【0003】
この包装箱において、従来、前記開口1から塵埃が入るのを防止するため、その開口1を被うシートFが箱本体P内面に貼着されている。そのシートFにはスリット2が形成されており、このスリット2からティシュペーパaを取り出す。
【0004】
ところで、森林資源が枯渇しつつある今日、焼却処分を行っている紙の再生化が叫ばれており、テイシュペーパ用包装箱も同様な要請がある。その再生には、紙製包装箱を溶かして行うが、その際、再生に不用な付着物は除去する必要がある。
【0005】
このとき、上記従来のシートFは、プラスチックで形成されているため、紙再生時には剥ぎ取らねばならず、その作業が煩雑となる。
【0006】
この考案は、以上の点に留意し、使用済の包装箱によって再生紙を作る際の作業性を向上させることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この考案にあっては、上述のティシュペーパ用包装箱において、そのシートを、箱本体とともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある和紙素材によってなすとともに、そのシートの貼着のりも紙とともに溶解させても支障のないものとしたのである。
【0008】
その素材には、和紙素材を採用し得る。
【0009】
【作用】
このように構成するこの考案に係る包装箱は従来と同様にしてシートのスリツトからティシュペーパを取出して使用する。この取出し時、ティシュペーパがスリットの縁に擦れてシートに引裂き力が加わるが、シートはその抗力を有するもののため支障がない。
【0010】
収納したティシュペーパが終れば、箱本体をつぶし、偏平にして回収業者に渡す。集められた包装箱は再生紙用素材とする。このとき、シート及び貼着のりもその紙溶解に支障がないものであるため、剥す必要はない。
【0011】
【実施例】
図1に示すように、長方体状箱本体Pは、従来と同様に、所要の展開形状に打抜きされた紙製カートンを折目を介して組立てたものであり、上面に開口1が形成されている。その開口1は図1、図2のごとく和紙製のシートFで被われ、このシートFは箱本体Pの裏面に貼着されている。その貼着のりは紙とともに溶解させても支障がないものとする。
【0012】
シートFには従来と同様にスリツト2が形成されており、このスリツト2を通してティシュペーパaを取り出す。スリツト2は線状に限らず、楕円状などの周知の形状とすることができる。また、このシートFには香料を含浸させることができる。
【0013】
【考案の効果】
この考案は以上のように構成したので、再生紙として使用する際、そのまま溶解炉に送リ込むことができ、作業性がよくなる。よって、森林資源の枯渇を防ぎ、有効利用を図り得るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
一実施例の斜視図
【図2】
同実施例の要部内面斜視図
【符号の説明】
P 箱本体
F シート
a テイシュペーパ
1 開口
訂正の要旨 訂正の要旨
登録第2543492号実用新案の明細書について、次のとおり訂正する。
(1)実用新案登録請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載について、訂正前の
「【請求項1】ティシュペーパaを収納した紙製箱本体P上面にそのティシュペーパ取出し用開口1を形成し、その開口1を被うシートFを箱本体Pに貼着し、そのシートFにはティシュペーパ取出し用スリット2を形成したティシュペーパ用包装箱において、
上記シートFを、箱本体Pとともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある和紙などの素材から成すとともに、そのシートFの貼着のりも溶かしても支障のないものとしたことを特徴とするティシュペーパ用包装箱。」
を、訂正明細書の
「【請求項1】ティシュペーパaを収納した紙製箱本体P上面にそのティシュペーパ取出し用開口1を形成し、その開口1を被うシートFを箱本体Pに貼着し、そのシートFにはティシュペーパ取出し用スリット2を形成したティシュペーパ用包装箱において、
上記シートFを、箱本体Pとともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある和紙素材から成すとともに、そのシートFの貼着のりも紙とともに溶解させても支障のないものとしたことを特徴とするティシュペーパ用包装箱。」
と訂正する。
(2)明りょうでない記載の釈明を目的として、
(i)考案の詳細な説明の段落【0007】の記載について、訂正前の「上記課題を解決するために、この考案にあっては、上述のティシュペーパ用包装箱において、そのシートを、箱本体とともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある素材によって成すとともに、そのシートの貼着のりも溶かしても支障のないものとしたのである。」を、訂正明細書の「上記課題を解決するために、この考案にあっては、上述のティシュペーパ用包装箱において、そのシートを、箱本体とともに溶かしてもその紙再生に支障がなく、かつ引裂きに対して抗力のある和紙素材によってなすとともに、そのシートの貼着のりも紙とともに溶解させても支障のないものとしたのである。」と訂正する。
(ii)考案の詳細な説明の段落【0008】の記載について、訂正前の「その素材には、和紙などの引裂きに対して抗力がある種々の紙のみならず、でんぷん樹脂などのように水可溶性のものからなる不織布などを採用し得る。」を、訂正明細書の「その素材には、和紙素材を採用し得る。」と訂正する。
審理終結日 2001-12-10 
結審通知日 2001-12-13 
審決日 2001-12-26 
出願番号 実願平3-103055 
審決分類 U 1 112・ 121- ZA (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前田 幸雄佐野 遵  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 祖山 忠彦
杉原 進
登録日 1997-04-25 
登録番号 実用新案登録第2543492号(U2543492) 
考案の名称 ティシュペーパ用包装箱  
代理人 鈴木 和夫  
代理人 野▲ざき▼ 照夫  
代理人 野▲ざき▼ 照夫  
代理人 鈴木 和夫  
代理人 永井 義久  
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