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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) G07G
管理番号 1056849
審判番号 審判1998-35492  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-10-16 
確定日 2002-03-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第2552178号実用新案「レシート」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2552178号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
(1)本件実用新案登録第2552178号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)についての出願は、昭和60年5月29日に出願された特願昭60ー116248号出願(以下、「原々出願」という。)を、平成5年5月20日に実願平5-31645号出願(以下、「原出願」という。)として出願変更し、さらに、平成7年4月24日に実願平7-4828号出願(以下、「本件出願」という。)として分割出願されたものであって、平成9年5月27日にその考案について設定登録がされた。
(2)その後、本件考案に係る実用新案登録に対して、平成10年4月24日に異議の申立(平成10年異議第72190号事件)がなされ、この異議事件において、平成10年11月6日に訂正請求がなされ、この訂正請求は認められた。
(3)さらに、平成10年10月16日に、本件考案に係る実用新案登録に対して、請求人富士通株式会社より本件無効審判が請求され、平成11年1月26日に訂正請求がなされ、その訂正請求に対して、期間を指定して訂正拒絶理由が通知された。
なお、被請求人は、この訂正拒絶理由通知に対して何ら応答していない。

2.請求人の主張
請求人富士通株式会社は、上記平成11年1月26日の訂正請求は認められず、本件考案は、平成10年11月6日付けの訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりのものであり、
(a)本件考案は、同一出願人が昭和60年5月29日付けで出願した実願昭60ー80300号に係る考案(甲第1号証)と同一であり、平成5年法改正前の実用新案法(以下、「実用新案法」という。)第7条第2項の規定に違反してなされたものである、
(b)本件考案の実用新案登録請求の範囲は、原々出願の当初明細書に開示された事項の範囲外の新たな事項を含んでおり、適法に新たな出願としたものではないから、本件考案の出願は、平成7年4月24日にされたものであり、あるいは、そうでなくとも、上記新たな事項は原々出願における平成3年7月25日付け手続補正書において追加された事項であるので、本件考案は、少なくとも本件出願前である平成3年7月24日以前に頒布された甲第1証乃至甲第4号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである、
(c)本件考案は、原々出願の前に頒布された甲第3号証及び甲第5号証並びに周知技術(甲第9号証乃至甲第11号証)に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである、
旨主張し、証拠方法として下記甲第1号証乃至甲第11号証並びに参考資料1乃至参考資料8を提出している。
・甲第1号証:実公平4ー18868号公報(実願昭60ー80300号)
・甲第2号証:特開昭61ー273663号公報
・甲第3号証:特開昭55ー47560号公報
・甲第4号証:飯塚隆司監修「流通・サービス業のPOS化戦略」(誠文堂新光社、昭和63年8月5日第一版発行、第94頁?第101頁)
・甲第5号証:特開昭58ー149561号公報
・甲第6号証:「事務管理」第14巻第10号(日刊工業新聞社、昭和50年9月1日発行、第37頁?第40頁「チェーンストア」)
・甲第7号証:「月刊 ホテル旅館」1978年5月号(柴田書店、昭和53年5月1日発行、第158頁?162頁)
・甲第8号証:「月刊 ホテル旅館」1981年5月号(柴田書店、昭和56年4月1日発行、第106頁?110頁)」
・甲第9号証:特開昭55ー28176号公報
・甲第10号証:実公昭58ー50438号公報
・甲第11号証:実願昭57ー52399号(実開昭58ー153067号)のマイクロフィルム
・参考資料1:本件考案と同一日付にて、被請求人により出願された関連出願
・参考資料2:平成1年審判第8527号審決書
・参考資料3の1、2:東京高等裁判所平成6年(行ケ)第94号審決取消請求事件判決および判決確定証明書(写)
・参考資料4:昭和53年10月31日東京高等裁判所第6民事部判決・昭和49年(行ケ)第168号
・参考資料5:平成2年3月28日東京高等裁判所第13民事部判決・昭和63年(行ケ)第115号
・参考資料6:平成2年審判第14845号審決書
・参考資料7:「確認書」(合議体注:ワシントンホテル株式会社企画開発本部ワシントンカードシステム開発部 村上宏司作成 )
・参考資料8の1、2:東京高等裁判所平成7年(行ケ)第44号審決取消請求事件判決(写)および同判決確定証明書(写)
なお、甲第9号証乃至甲第11号証並びに参考資料8の1、2は、平成10年11月27日付け審尋書に対する平成11年1月22日付け回答書において、請求人が提出したものである。
また、請求人は、平成11年1月26日に訂正請求が請求された後の平成11年6月4日付け審尋書に対する平成11年8月13日付け回答書において、下記甲号12証及び甲第13号証並びに参考資料9を提出している。
・甲第12号証:特開平4ー70993号公報
・甲第13号証:実願昭58ー70432号(実開昭59ー178754号)のマイクロフィルム
・参考資料:平成10年審判第35103号審決書

3.被請求人の主張
これに対し、被請求人は、平成11年1月26日に訂正請求書を提出して下記訂正を求め、請求人の主張は理由がない旨主張している。
当該訂正の内容は、本件実用新案登録の願書に添付した明細書(平成10年12月24日訂正請求確定(平成10年異議第72190号事件における平成10年11月6日付けの訂正請求)。以下、「本件登録明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものである。すなわち、実用新案登録請求の範囲を下記のとおり訂正することを求めるものである。
「【請求項1】クレジットカードとして使用可能な規格に準拠しており、少なくとも顧客番号と累計ポイントが磁気記録された磁気カードを利用して商品の購入を行った際、POS端末装置により印字され発券されるレシートであって、レシートを発行した店名が記載された発行店名欄と、発行したレシートを特定する番号が記載されたレシート発行番号欄と、レシートが発行された発行時点が記載された発行時点欄と、今回購入した商品の商品名が記載された商品名欄と、前記商品毎の購入額が記載された購入額欄と、前記購入額を合計した合計購入額が記載された合計欄と、預り金額が記載された預り金額欄と、釣銭額が記載された釣銭額欄とを含む購入額明細欄と、前記購入合計額に応じた今回ポイントが記載された今回ポイント欄および商品の購入の際利用の磁気カードから、POS端末装置に備えられた情報読み出し機能を利用して読み出された前記前回商品購入時までの累計ポイントに前記今回ポイントを加算してなるし累計した累計ポイントが記載された累計ポイント欄を含むポイント表示欄と、POS端末装置に備えられた情報読み出し機能を利用して読み出された商品の購入の際に利用の磁気カードの顧客番号が記載されたカード番号欄とを有するレシート。」

4.訂正の適否に対する判断
まず、被請求人が、本件無効審判において、平成11年1月26日に請求した訂正請求について検討する。
4ー1 訂正明細書の請求項1に係る考案の出願日の認定
当審が平成13年9月25日付けで通知した訂正拒絶理由において指摘したように、本件訂正明細書の請求項1に記載された「クレジットカードとして使用可能な規格に準拠しており、少なくとも顧客番号と累計ポイントが磁気記録された磁気カード」は、本件出願の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「本件当初明細書」というには記載されているが、原々出願(特願昭60ー116248号)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「原々出願の当初明細書」という。)に記載されておらず、また、原々出願の当初明細書の記載からみて自明な事項ともいえない。また、上記事項は、原出願(実願平5-4828号)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「原出願の当初明細書」という。)にも何ら記載も示唆もされておらず、また原出願当初明細書の記載からみて自明な事項ともいえない。
すなわち、原々出願の当初明細書及び原出願の当初明細書には、従来技術として、「クレジット販売店などでは、自社カードを発行し、この自社カードを通して顧客の固定化あるいは非流動化を図ろうとしている。」(原々出願の当初明細書第3頁5?8行、原出願の当初明細書段落【0002】)ことは記載されているが、原々出願の当初明細書及び原出願の当初明細書には、本件考案が対象とする磁気カードがクレジットカードとして使用可能な規格に準拠していることについては、何ら記載も示唆もされておらず、しかも、この点が、原々出願の当初明細書及び原出願の当初明細書の記載からみて自明な事項であるともいえない。
また、原々出願の当初明細書には、「今回ポイントを含めた新たな累計ポイントをPOSの有する書込機能によりカードに記録する。」(同第3頁左上欄4?6行参照)こと、「また、顧客データバンクに累計ポイントが記録されているので、カード再発行時に累計ポイントを再度カードに記憶できる。」(同第3頁左上欄14?17行参照)こと、「レシート上には、・・・利用カード番号などを表示する」(同第4頁右上欄8?11行参照)ことが記載されており、磁気カードに顧客番号として機能する利用カード番号が付されていることが窺えないわけではないが、顧客番号として機能する利用カード番号と累計ポイントを磁気カードに磁気記録することは、原出願の当初明細書には記載されているものの、原々出願の当初明細書には、何ら記載も示唆もされておらず、しかも、この点が、原々出願の明細書の記載からみて自明な事項ともいえない。
したがって、本件訂正明細書の請求項1に係る考案の出願は、原々出願を適法に変更し、原出願を適法に分割したものとはいえず、実用新案法第8条及び同条第9条第1項で準用する特許法第44条第1項の規定を満たしていないから、出願日の遡及は認められず、本件訂正明細書の請求項1に係る考案の出願日は、本件出願の現実の出願日である平成7年4月24日となる。
4-2 独立登録要件について
(1)引用刊行物
訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「本件訂正明細書の考案」という。)に対して、当審が通知した訂正拒絶理由において引用した刊行物は次のとおりである。
・刊行物1:実願昭5ー31645号(実開平6ー65987号)のCDーROM
・刊行物2:特開平4ー70993号公報

(2)対比
刊行物1には、図面をも参酌すると、少なくとも顧客を特定するカード番号と累計ポイントが磁気記録された磁気カードを利用して商品の購入を行った際、POS端末装置により印字され発券されるレシートであって、レシートを発行した店名が記載された発行店名欄と、発行したレシートを特定する番号が記載されたレシート発行番号欄と、レシートが発行された発行時点が記載された発行時点欄と、今回購入した商品の商品名が記載された商品名欄と、商品毎の購入額が記載された購入額欄と、購入額を合計した合計購入額が記載された合計欄と、預り金額が記載された預り金額欄と、釣銭額が記載された釣銭額欄とを含む購入額明細欄と、購入合計額に応じた今回ポイントが記載された今回ポイント欄および商品の購入の際利用の磁気カードから、POS端末装置に備えられた情報読み出し機能を利用して読み出された前記前回商品購入時までの累計ポイントに前記今回ポイントを加算してなる累計した累計ポイントが記載された累計ポイント欄を含むポイント表示欄と、POS端末装置に備えられた情報読み出し機能を利用して読み出された商品の購入の際に利用の磁気カードの顧客を特定するカード番号欄とを有し、発行店欄、レシート発行番号欄、発行時点欄および購入額明細欄がシート上部に、カード番号欄およびポイント表示欄がレシート下部にそれぞれ分離して配置されたレシートが記載されている。
そこで、本件訂正明細書の考案と刊行物1に記載されたものを対比すると、両者は、次の点で相違し、その他は一致している。
イ.本件訂正明細書の考案における磁気カードは、クレジットカードとしても使用可能な規格に準拠しているのに対し、刊行物1に記載された磁気カードはそのようになっていない点。

(3)判断
刊行物2には、「1枚のカードに、クレジット、プリペイド、サービスポイント累計の複数の機能を持たせるとともに、現金、クレジット、プリペイドのいずれでも決済できるカードシステムを提供する」(第2頁右上欄12?17行)こと、「カードの磁気記録面に、カード番号、カード所有者の暗証番号、氏名、有効期限、生年月日等の個人情報と、クレジット枠を表すクレジット情報と、プリペイド残高を表すプリペイド情報と、サービスポイント情報を表すサービス情報との4種の情報を書き込み」(第2頁左下欄9?15行)とのこと、すなわち、顧客番号と累計ポイントが磁気記録される磁気カードをクレジットカードとしても使用可能な規格に準拠させることが記載されており、刊行物1に記載された磁気カードを刊行物2に記載されたようにクレジットカードとしても使用可能な規格に準拠させるようにして上記相違点イであげた本件訂正明細書の考案の構成のようにすることは、当業者であればきわめて容易になし得ることである。
また、本件訂正明細書の考案の効果も、刊行物1及び刊行物2に記載された事項から予測できる程度のものであって格別のものではない。

4ー3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正明細書の考案は、上記刊行物1及び刊行物2に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであり、この訂正は、実用新案法第40条第2項第5号で準用する同法第39条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認めない。

5.無効理由についての判断
5-1 本件考案
上記検討したように、本件審判請求事件における平成11年1月26日の訂正は認められないから、本件の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、本件登録明細書(平成10年異議第72190号事件において訂正が認められた平成10年11月6日付けの訂正明細書)の実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「少なくとも顧客番号と累計ポイントが磁気記録された磁気カードを利用して商品の購入を行った際、POS端末装置により印字され発券されるレシートであって、レシートを発行した店名が記載された発行店名欄と、発行したレシートを特定する番号が記載されたレシート発行番号欄と、レシートが発行された発行時点が記載された発行時点欄と、今回購入した商品の商品名が記載された商品名欄と、前記商品毎の購入額が記載された購入額欄と、前記購入額を合計した合計購入額が記載された合計欄と、預り金額が記載された預り金額欄と、釣銭額が記載された釣銭額欄とを含む購入額明細欄と、前記購入合計額に応じた今回ポイントが記載された今回ポイント欄および商品の購入の際利用の磁気カードから、POS端末装置に備えられた情報読み出し機能を利用して読み出された前記前回商品購入時までの累計ポイントに前記今回ポイントを加算してなるし累計した累計ポイントが記載された累計ポイント欄を含むポイント表示欄と、POS端末装置に備えられた情報読み出し機能を利用して読み出された商品の購入の際に利用の磁気カードの顧客番号が記載されたカード番号欄とを有し、前記発行店名欄、発行時点欄および購入額明細欄がレシート上部に、前記カード番号欄およびポイント表示欄がレシート下部にそれぞれ分離して配置されたレシート。」

5-2 本件実用新案登録に係る出願日
(1)請求人の主張
請求人は、「本件考案は、・・・磁気カードに顧客番号を磁気記録しておくこと(上記構成要件[1](合議体注:[1]は丸数字で記載されている。以下同様))、レシート上にこの磁気カードから読み出した顧客番号が表示されるカード番号欄を設けること(上記構成要件[5])を、必須の構成要件として備えるものである。しかしながら、これらの構成要件に対応する技術事項の開示は、本件考案の原原出願に相当する特願昭60ー116248号の願書に最初に添付された明細書(甲第2号証)には何らなされておらず、これらの技術事項は、その後の手続き補正書等により追加開示されたものであるから、本件考案は、その要旨が変更されたものであることを免れない。」(同第16頁5?13行)、「また、同明細書(合議体注:原々出願時明細書)添付の図面中の第2図のレシート上数値「No.012」や「0104ー0000598ー24」等の数字列が表示されているが、これらの数字列が何を示すものかについては、図面中にも発明の詳細な説明の項中にも何らの説明もない。」、「本件考案については、昭和60年5月29日付の原々出願時以後、平成3年7月25日付にて提出された手続補正書、平成5年5月20日付出願変更の際に提出された願書添付の明細書において、順次新規事項が追加開示され、更に、平成7年4月25日付分割出願の際の願書添付の明細書中において新規事項が追加開示されるとともに、これらの追加開示に基づいて実用新案登録請求の範囲が本考案の現在の実用新案登録請求の範囲へと変更されたが、これにより、実用新案登録請求の範囲が規定する内容が、昭和60年5月29日付原々出願当初の出願時明細書中に開示された事項の範囲外のものとなったことが明らかである。 よって、本件考案の要旨は、平成7年4月24日付分割出願により変更されたものであるから、出願日は平成7年4月24日まで繰り下がるものである。」(同請求書第23頁11?22行)、「なお、不言すれば、上記公知資料はいずれも原々出願時以後最初に提出された上記平成3年7月25日付手続補正書提出以前の刊行物であるから、本件考案の繰り下がり日を、平成7年4月24日以前と認定した場合にも、上記公知資料の組み合わせによる進歩性欠如を免れないものである。」(同請求書第24頁4?8行)旨主張している。

(2)被請求人の主張
これに対し、被請求人は、平成11年1月26日に本件登録明細書を訂正することを求めるとともに、「請求人は、原原出願の出願時明細書には、「レシート上に利用カード番号を印字すること」が開示されていることは認めている。 また、請求人は、本考案における磁気カードがクレジットカードである自社カードを前提としたカードであることも認めているが、自社カードに利用カード番号が記録されることは、当業者であるクレジット業界では周知のことである。」(答弁書第4頁13?17行)、「原原出願の出願時明細書の実用新案登録請求の範囲(合議体注:「特許請求の範囲」の誤記である。)の(a)の項では、
「(a)情報記録の可能な磁気カードを、カードに書込まれた情報の読取り機能および新たな情報の書込み機能を有するとともに計算機能を有するPOS」とし、磁気カードに記録される内容をポイントのみに限ることの無いように、「情報」としており、また、POSのカードに対する読取り、および書込み機能の対象たる内容も、ポイントとせずに「情報」としている。 さらに、原原出願の出願時明細書の実用新案登録請求の範囲の(e)の項では、
「(e)今回ポイントを含めた新たな累計ポイントを、POSおよびコンピュータを介して顧客データバンクに電送して記録する。」 としており、また、クレジット業界では、原原出願の出願時当時、磁気カードの利用番号を、顧客データバンクのアドレスとすることは周知のことであった。」(同第4頁18?29行)、「以上のことを総合すると、上記構成要件[1]および[5]は、原原出願の出願時明細書には、明らかな開示はなかったとしても、それを示唆する開示があったものである。」(同第5頁1?3行)、「なお、請求人によっても引用された、原原出願の出願時明細書中の「なお、レシート5上に、当日の購入明細6、7、今回ポイント8および累計ポイント9に加えて、レシート発行番号、発行日、発行時間、利用カード番号などを表示するような機能をもPOS1に備えさせることもできる。」の記載中のレシート記載事項は、原原出願の出願時明細書に添付された図面中第2図の記載事項中の参照符号が付されていないものであることが明らかであるところ、利用カード番号とあれば、「0104ー0000598ー24」であることは誰でもが、極めて容易に推定できることである。また、クレジット業界の当業者であるなら、上記第2図に示されたレシートの開示内容の内、利用カード番号はどれかといわれれば、上記「0104ー0000598ー24」を指すことは明らかである。」(同第5頁4?14行)、「以上により、請求人の要旨変更の主張は、全く当を得ないものである。」(同第5頁15?17行)旨主張している。

(3)原々出願の当初明細書に記載された磁気カード及び利用カード番号に関する事項
原々出願(特願昭60ー116248号)の当初明細書には、磁気カード及び利用カード番号について次の事項が記載されている。
[特許請求の範囲]
「下記のステップ(a)?(e)を含むことを特徴とする、レシート上に今回購入時の購入額に応じた今回ポイントおよびその今回ポイントを含めて今回購入時までにした累計購入額に応じた累計ポイントを表示するシステム:
(a)情報記録の可能な磁気カードを、カードに書込まれた情報の読取機能および新たな情報の書込み機能を有するとともに計算機能を有するPOS内に挿入し、予カードに書込まれている今回購入日の前日までの累計ポイントを読み取る。
(b)POSに今回の購入額明細を入力し、次いで合計キーを押して今回購入合計額を計算するとともに、その合計額に応じた今回ポイントを計算する。
(c)ステップ(a)で読取られた今回購入日の前日までの累計ポイントに、ステップ(b)で得られた今回ポイントを加算して、今回ポイントを含めた新たな累計ポイントをPOSにより計算して、この累計ポイントを今回購入時の各商品の購入額およびその合計額ならびに今回ポイントとともにレシート上に表示する。
(d)今回ポイントを含めた新たな累計ポイントをPOSの有する書込み機能によりカードに記録する。
(e)今回ポイントを含めた新たな累計ポイントを、POSおよびコンピュータを介して顧客データバンクに電送して記録する。」

[発明の詳細な説明]
「近年に到って商品の購入時にあるいは自動車の修理、保険の契約などの具体的商品の移動を伴わないサービスを受けた際に磁気カードを用いて支払をすることが多くなっている。そしてデパート、チェーン化小売り店、クレジット販売店などでは、自社カードを発行し、この自社カードを通して顧客の固定化あるいは非流動化を図ろうとしている。自社カードを通して顧客の固定化あるいは非流動化を図るには、もちろん、顧客がどのよう商品をいつ購入したかというような顧客情報を収集し、また顧客がどのような商品を欲しているかという顧客ニーズを的確に把握することが重要であるが、それに加えて、一定額以上の商品を購入した顧客に、値引券、サービス券あるいは景品を提供するといったサービスをすることも重要であろうと考えられる。」(原々出願の当初明細書第3頁1?16行)
「なお、レシート5上に、当日の購入明細6,7,今回ポイント8及び累計ポイント9に加えて、レシート発行番号、発行日、発行時間、利用カード番号などを表示する機能をもPOS1に備えさせることもできる。」(同第12頁8?12行)

(4)原出願の当初明細書に記載された磁気カード及び顧客を特定するカード番号に関する事項
原出願(実願平5ー31645号)の当初明細書には、磁気カード及び顧客を特定するカード番号について次の事項が記載されている。
[実用新案登録請求の範囲]
「【請求項1】少なくとも累計ポイント、および顧客を特定するカード番号である情報を書込み記録することができる顧客カードと共に使用され、この顧客カードへ前記情報を書込み、あるいは該顧客カードから前記情報を読み出す機能、通常の計算機能、販売額に応じて今回ポイントを計算する機能、前記今回ポイントを前回までの累計ポイントに加算し、新たな累計ポイントを算出する機能、およびレシートを発行した店名が記載された発行店名欄と、発行したレシートを特定する番号が記載されたレシート発行番号欄と、レシートが発行された発行時点が記載された発行時点欄と、今回購入した商品の商品名が記載された商品名欄と、前記商品毎の購入額が記載された購入額欄と、前記購入額を合計した合計購入額が記載された合計欄と、預り金額が記載された預り金額欄と、釣銭額が記載された釣銭額欄とを含む購入額明細欄と、前記購入合計額に応じた今回ポイントが記載された今回ポイント欄と、前記今回ポイントを含み今回購入時までの所定期間の購入により発生したポイントを累計した累計ポイントが記載された累計ポイント欄とを含むポイント表示欄と、商品の購入に利用したカードの番号が記載されたカード番号欄とを有するレシートを発券する機能とを持つPOS端末装置、このPOS端末装置に接続され、このPOS端末装置から今回ポイントを含めた新たな累計ポイント等の情報が伝送され、それを記憶する顧客データバンクとを備えていることを特徴とする販売管理装置。

[考案の詳細な説明]
「近年に到って商品の購入時にあるいは自動車の修理、保険の契約などの具体的商品の移動を伴わないサービスを受けた際に磁気カードを用いて支払をすることが多くなっている。そしてデパート、チェーン化小売り店、クレジット販売店などでは、自社カードを発行し、この自社カードを通して顧客の固定化あるいは非流動化を図ろうとしている。自社カードを通して顧客の固定化あるいは非流動化を図るには、もちろん、顧客がどのよう商品をいつ購入したかというような顧客情報を収集し、また顧客がどのような商品を欲しているかという顧客ニーズを的確に把握することが重要であるが、それに加えて、一定額以上の商品を購入した顧客に、値引券、サービス券あるいは景品を提供するといったサービスをすることも重要であろうと考えられる。」(原出願当初明細書段落【0002】)、
「各店舗に備えられるPOS端末装置1は、磁気カードに書込まれた情報の読取り機能および新たな情報の書込み機能を有するとともに、計算機能をも有している。」(同段落【0010】)、
「まず初めての顧客には、来店の際に、情報記録の可能な磁気カードを介して商品を購入してもらうように磁気カードを発行する。」(同段落【0013】)、
「購入額明細欄18の下にはカード番号欄20が配されている。カード番号欄20には顧客が商品購入の際に使用したカードの番号が記載される。カード番号は顧客を特定するために任意に定められる。本実施例では「0104ー0000598ー24」と記載されている。」(同段落【0027】)、
「また、レシートの各欄の記載から顧客及び購入実績の特定が可能であるためレシートを一種の金券として機能させることができ、従来のように点数件を集めて決められた台紙に貼付して保管するような大きな負担を顧客に強いることなく、サービスポイントの発行が可能である。したがって、本実施例のレシートを用いれば顧客の固定化に対して十分な効果を有するサービスを提供することができる。」(同段落【0029】)

(5)当審の判断
(a)原出願の当初明細書の実用新案登録請求の範囲には、「少なくとも累計ポイント、および顧客を特定するカード番号である情報を書込み記録することができる顧客カードと共に使用され、この顧客カードへ前記情報を書込み、あるいは該顧客カードから前記情報を読み出す機能・・・レシートを発行した店名が記載された発行店名欄と、発行したレシートを特定する番号が記載されたレシート発行番号欄と、・・・商品の購入に利用したカードの番号が記載されたカード番号欄とを有するレシートを発券する機能を持つPOS端末装置、このPOS端末装置に接続され、このPOS端末装置から今回ポイントを含めた新たな累計ポイント等の情報が伝送され、それを記憶する顧客データバンクとを備えている」こと、同明細書の段落【0010】には、「各店舗に備えられるPOS端末装置1は、磁気カードに書込まれた情報の読取り機能および新たな情報の書込み機能を有するとともに、計算機能をも有している。」こと、同明細書の段落【0013】には、「情報記録の可能な磁気カードを介して商品を購入してもらうように磁気カードを発行する。」こと、同明細書の段落【0027】には、「購入額明細欄18の下にはカード番号欄20が配されている。カード番号欄20には顧客が商品購入の際に使用したカードの番号が記載される。カード番号は顧客を特定するために任意に定められる。本実施例では「0104ー0000598ー24」と記載されている」ことが記載されており、これら記載からみて、原出願の当初明細書に記載された顧客カードは、累計ポイント及び顧客を特定するカード番号である情報を磁気記録する磁気カードであり、また、レシート上に設けられたカード番号欄には、この磁気カードから読み出した顧客番号が表示されるものであり、本件考案の構成要件である「少なくとも顧客番号と累計ポイントが磁気記録された磁気カード」(以下、本件考案の構成要件[1]」という。)は記載されているといえる。
(b)しかしながら、本件考案の構成要件[1]である「少なくとも顧客番号と累計ポイントが磁気記録された磁気カード」及び原出願の当初明細書に記載された「少なくとも累計ポイント、および顧客を特定するカード番号である情報を書込み記録することができる顧客カード」は、原々出願(特願昭60ー116248号)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「原々出願の当初明細書」という。)に記載されておらず、また、原々出願の当初明細書の記載からみて自明な事項ともいえない。
すなわち、原々出願の当初明細書には、従来技術として、「クレジット販売店などでは、自社カードを発行し、この自社カードを通して顧客の固定化あるいは非流動化を図ろうとしている。」(原々出願の公開公報である特開昭61ー273663号公報第2頁左上欄5?8行参照。以下同様)こと、「今回ポイントを含めた新たな累計ポイントをPOSの有する書込機能によりカードに記録する。」(同第3頁左上欄4?6行参照)こと、「また、顧客データバンクに累計ポイントが記録されているので、カード再発行時に累計ポイントを再度カードに記憶できる。」(同第3頁左上欄14?17行参照)こと、「レシート上には、・・・利用カード番号などを表示するような機能をもPOS1に備えさすこともできる。」(同第4頁右上欄8?12行参照)ことが記載されており、本件考案の磁気カードに、顧客番号として機能する利用カード番号が付されていることが窺えないわけではないが、原々出願の当初明細書には、累計ポイントを磁気記録する磁気カードにおいて、累計ポイント以外の情報を磁気記録すること、すなわち、顧客番号として機能する利用カード番号と累計ポイントを磁気カードに磁気記録することは、何ら記載も示唆もされていないし、また、この点が、原々出願の明細書の記載からみて自明な事項とする根拠もない。
(c)なお、被請求人は、答弁書第4頁15?17行において、「請求人は、本考案における磁気カードがクレジットカードである自社カードを前提としたカードであることも認めているが、自社カードに利用カード番号が記録されることは、当業者であるクレジット業界では周知のことである。」、同第4頁18から23行において、「原原出願の出願時明細書の特許請求の範囲の(a)の項では、(a)情報記録の可能な磁気カードを、カードに書込まれた情報の読取り機能および新たな情報の書込み機能を有するとともに計算機能を有するPOS」とし、磁気カードに記録される内容をポイントのみに限ることの無いように、「情報」としており、また、POSのカードに対する読取り、および書込み機能の対象たる内容も、ポイントとせずに「情報」としている。」、同第4頁24?29行において、「原原出願の出願時明細書の実用新案登録請求の範囲の(e)の項では、「(e)今回ポイントを含めた新たな累計ポイントを、POSおよびコンピュータを介して顧客データバンクに電送して記録する。」 としており、また、クレジット業界では、原原出願の出願時当時、磁気カードの利用番号を、顧客データバンクのアドレスとすることは周知のことであった。」と主張している。
しかしながら、請求人は、原々出願の当初明細書に記載された磁気カードが「クレジットカード」であるとは認めていない。
また、被請求人が主張するように、クレジットカードが従来周知であるとしても、原々出願の当初明細書に記載された累計ポイントを磁気記録する磁気カードが、クレジットカードである自社カードであり、累計ポイント以外の情報を磁気記録するものであることが、原々出願の当初明細書に記載されているとも、原々出願の当初明細書に記載された事項からみて自明な事項ともいえない。
したがって、被請求人の上記主張は理由がない。
(d)そうすると、本件登録明細書の請求項1に記載された「磁気カードに顧客番号を磁気記録された磁気カード」(本件考案の構成要件[1])が、原出願の当初明細書に記載されているとしても、本件考案の上記構成要件[1]及び原出願の当初明細書に記載された「少なくとも累計ポイント、および顧客を特定するカード番号である情報を書込み記録することができる顧客カード」は、原々出願の当初明細書には記載されておらず、また、原々出願の当初明細書の記載からみて自明な事項ともいえない。
したがって、本件出願は、原々出願を適法に変更・分割出願したものとはいえないから、実用新案法第8条及び同法第9条第1項で準用する特許法第44条第1項の規定により、原々出願の出願日である昭和60年5月29日に出願したものとみなすことはできない。
しかしながら、本件出願は、原出願を適法に分割したものとはいえるから、本件出願は、原出願の現実の出願日である平成5年5月20日に出願したものとみなすのが相当である。

5ー3 甲号証に記載の事項
(1)甲第2号証(特開昭61-273663号公報)
平成5年5月20日前に頒布された刊行物である甲第2号証には、レシート上への累計ポイント表示システムに関し、図面とともに、「下記のステップ(a)?(e)を含むことを特徴とする、レシート上に今回購入時の購入額に応じた今回ポイントおよびその今回ポイントを含めて今回購入時までにした累計購入額に応じた累計ポイントを表示するシステム:
(a)情報記録の可能な磁気カードを、カードに書込まれた情報の読取機能および新たな情報の書込み機能を有するとともに計算機能を有するPOS内に挿入し、予カードに書込まれている今回購入日の前日までの累計ポイントを読み取る。
(b)POSに今回の購入額明細を入力し、次いで合計キーを押して今回購入合計額を計算するとともに、その合計額に応じた今回ポイントを計算する。
(c)ステップ(a)で読取られた今回購入日の前日までの累計ポイントに、ステップ(b)で得られた今回ポイントを加算して、今回ポイントを含めた新たな累計ポイントをPOSにより計算して、この累計ポイントを今回購入時の各商品の購入額およびその合計額ならびに今回ポイントとともにレシート上に表示する。
(d)今回ポイントを含めた新たな累計ポイントをPOSの有する書込み機能によりカードに記録する。
(e)今回ポイントを含めた新たな累計ポイントを、POSおよびコンピュータを介して顧客データバンクに電送して記録する。」(特許請求の範囲)こと、「なお、レシート上5に、当日の購入明細6,7、今回ポイント8および累計ポイント9に加えて、レシート発行番号、発行日、発行時間、利用カード番号などを表示するような機能をもPOS1に備えさせることもできる。」(第4頁右上欄8?12行)ことが記載されている。
また、第2図に記載された符号「No.012」、「014ー0000598ー24」は、それぞれ、レシート発行番号、利用カード番号を意味するものと解されるから、第2図に記載されたシートは、上記指摘した事項及び第2図からみて、発行店名欄と、レシート発行番号欄と、発行日欄と、今回購入時の商品名欄、その商品の購入額欄、今回購入額欄、預かり金額欄、釣銭金額欄とを含む購入明細欄と、今回ポイント欄、累計ポイント欄とを含むポイント欄と、利用カード番号欄を有し、発行店名欄とレシート発行番号欄と発行日欄と購入明細欄がシート上部に、利用カード欄とポイント欄がシートの下部に、点線を挟んで配置されるようになっている。
(2)甲第3号証(特開昭55-47560号公報)
平成5年5月20日前に頒布された刊行物である甲第3号証には、電子式金銭登録機に関し、図面とともに、「従来・・・スタブレシートを使用することにより行われていた。すなわち、部門別売上金額、合計金額が印字されている通常のレシートにミシン目線を介して顧客のコード番号および合計売上金額が印字されているスタブレシートを一体に発行する。」(第2頁左上欄19行?同頁右上欄5行)こと、「100は・・・磁気カードであり、あらかじめ顧客に渡されている。この磁気カード100は磁気カード読取り・書込み装置200に供給されることによって、その内容が読取られる。上記読取り・書込み装置200は・・・磁気カード100から読み取った内容を金銭登録機本体300へ供給する。上記金銭登録機本体300は既知のように、キー手段によって登録情報を入力する手段と、上記登録情報を演算、集計、記憶する演算・記憶手段と、上記登録情報および演算情報を表示する表示手段と、上記登録情報および演算情報を印字発行するプリンターなどによって構成されている。」(第2頁左下欄18行?同頁右下欄10行)こと、「第2図は磁気カード100の構成図を示したものであり、この磁気カード100には、顧客のコード番号を表示する印字部101、顧客のコード番号を磁気記録する磁気記録部102、・・・同一顧客に対する累計売上金額を磁気記録する磁気記録部105、登録、累計を行った年月日を磁気記録する磁気記録部106・・・顧客氏名印刷部108、店名印刷部109を有している。」(第2頁右下欄13行?第3頁左上欄2行)こと、「顧客に対してはあらかじめ磁気カード100を持たせてあり、この磁気カード100には、その磁気記録部102に顧客を指定するコード番号が、また磁気記録部105に同一顧客に対する前回までの累計売上金額が記録されている。」(第3頁左下欄11?16行)こと、「磁気力-ド読取り・書込み装置200は磁気カード100の磁気記録部102から顧客のコード番号を読み出し、これを金銭登録機本体300に供給する。金銭登録機本体300では、顧客のコード番号をレシートおよびスタブレシートに対する印字を行う。」(第3頁左下欄19行?同頁右下欄4行)こと、「この発明は、以上詳細に説明したよう、客にあらかめ磁気カードを渡しておき、この磁気カードに書き込まれている情報、例えば顧客のコード番号が磁気カード処理手段によって読み出されるとともに印字手段に印字されるから、オペレータはキー操作によらず、磁気カードを単にカード処理手段に差し込むだけでよい。」(第4頁右上欄14?20行)ことが記載されている。
(3)甲第4号証(飯塚隆司監修「流通・サービス業のPOS化戦略」)
平成5年5月20日前に頒布された刊行物である甲第4号証には、「昭和61年9月に、丸井の顧客サービスシステムのノウハウを導入、本格的なカードシステムに取り組んだ。 二十四店舗でスタートしたが、当時、このシステムを運用するため、専用のPOSターミナル、二百二十五台と専用のコンピュータを導入、一拠に、四万七千人のホルダーに拡大させた。」(第96頁3?6行)こと、「こうしたカードの秘密はどこにあったかというと、「09ポイントカード」は、その第一に、クレジットカードと会員カードの複合カードとなっていたことである。 一括払い、分割払いのほか、現金で買い物をしても、その購買実績にもとづいてポイント加算され、これによって五百点を単位に、五百円分のサービス券が提供されるという仕組みである。 クレジットでも現金でも、百円につき一ポイントが加算され、毎回の購買額に応じてポイントが累積される。」(第97頁1?6行)こと、「0099ポイントカードをPOSターミナルのカードリーダでスキャンするだけで、カードにポイントが加算される。」(第99頁2?4行)ことが記載されている。
また、第95頁の「図2-12 丸久のレシートサンプル」の「現金払いのレシート」の図中には、レシート上に、発行店名である「09 丸久 小倉南店」が記載され、その下に順次「買い上げ日」欄、「カード現金」欄、「客のカード番号」欄、「買上げ100円毎のポイント表示」欄、「ポイントの累計表示」欄が設けられ、「カード現金」欄には、「セイカ ¥1,200」、「小計 ¥1,200」、「現計 ¥1,200」と記載され、「買上げ100円毎のポイント表示」欄には、「当日ポイント 12点」と記載され、「ポイントの累計表示」欄には、「累計 438点」と記載されている。

5ー4 対比
(1)甲第2号証には、上記指摘した事項及び図面からみて、累計ポイントが磁気記録された磁気カードを利用して商品の購入を行った際、POSにより印字発券されるシートであって、
発行店名欄と、レシート発行番号欄と、発行日欄と、今回購入時の商品名欄と、各商品の購入額欄と、今回購入時の合計額欄と、預かり金額欄と、釣銭金額欄とを含む購入明細欄と、今回購入額に応じた今回ポイントが記載された今回ポイント欄および商品の購入の際利用の磁気カードから、POSに備えられた情報読取り機能を利用して読取られた累計ポイントに今回ポイントを加算してなる累計した累計ポイントが記載された累計ポイント欄とを含むポイント欄と、利用カード番号欄とを有し、発行店名欄とレシート発行番号欄と発行日欄と購入明細欄がシート上部に、利用カード欄とポイント欄がシートの下部に、点線を挟んで配置されたレシートが記載されているいる。
(2)本件考案と甲第2号証に記載されたものを対比すると、甲第2号証に記載された「POS」、「発行店名欄」、「レシート発行番号欄」、「発行日欄」と、「今回購入時の商品名欄と、各商品の購入額欄と、今回購入時の合計額欄と、預かり金額欄と、釣銭金額欄とを含む購入明細欄」、「今回購入額に応じた今回ポイントが記載された今回ポイント欄および商品の購入の際利用の磁気カードから、POSに備えられた情報読取り機能を利用して読取られた累計ポイントに今回ポイントを加算してなる累計した累計ポイントが記載された累計ポイント欄」、「利用カード番号欄」、「発行店名欄とレシート発行番号欄と発行日欄と購入明細欄がシート上部に、利用カード欄とポイント欄がシートの下部に、点線を挟んで配置」は、それぞれ、本件考案の「レシートを発行した店名が記載された発行店名欄」、「発行したレシートを特定する番号が記載されたレシート発行番号欄」、「レシートが発行された発行時点が記載された発行時点欄」、「今回購入した商品の商品名が記載された商品名欄と、商品毎の購入額が記載された購入額欄と、購入額を合計した合計購入額が記載された合計欄と、預り金額が記載された預り金額欄と、釣銭額が記載された釣銭額欄とを含む購入額明細欄」、「購入合計額に応じた今回ポイントが記載された今回ポイント欄および商品の購入の際利用の磁気カードから、POS端末装置に備えられた情報読み出し機能を利用して読み出された前回商品購入時までの累計ポイントに今回ポイントを加算してなるし累計した累計ポイントが記載された累計ポイント欄を含むポイント表示欄」、「顧客番号が記載されたカード番号欄」、「発行店名欄、発行時点欄および購入額明細欄がレシート上部に、カード番号欄およびポイント表示欄がレシート下部にそれぞれ分離して配置」に相当するから、両者は、
累計ポイントが磁気記録された磁気カードを利用して商品の購入を行った際、POS端末装置により印字され発券されるレシートであって、レシートを発行した店名が記載された発行店名欄と、発行したレシートを特定する番号が記載されたレシート発行番号欄と、レシートが発行された発行時点が記載された発行時点欄と、今回購入した商品の商品名が記載された商品名欄と、商品毎の購入額が記載された購入額欄と、購入額を合計した合計購入額が記載された合計欄と、預り金額が記載された預り金額欄と、釣銭額が記載された釣銭額欄とを含む購入額明細欄と、購入合計額に応じた今回ポイントが記載された今回ポイント欄および商品の購入の際利用の磁気カードから、POS端末装置に備えられた情報読み出し機能を利用して読み出された前回商品購入時までの累計ポイントに今回ポイントを加算してなるし累計した累計ポイントが記載された累計ポイント欄を含むポイント表示欄と、顧客番号が記載されたカード番号欄とを有し、発行店名欄、発行時点欄および購入額明細欄がレシート上部に、前記カード番号欄およびポイント表示欄がレシート下部にそれぞれ分離して配置されたレシート
の点で一致し、次の点で相違する。
イ.本件考案における磁気カードは、少なくとも顧客番号と累計ポイントが磁気記録された磁気カードであるのに対し、甲第2号証に記載された磁気カードは、累計ポイントが磁気記録された磁気カードである点。
ロ.本件考案におけるカード番号欄には、POS端末装置に備えられた情報読み出し機能を利用して読み出された商品の購入の際に利用の磁気カードの顧客番号が記載されるのに対し、甲第2号証に記載されたものは、そのようになっていない点。

5ー5 判断
(1)相違点イについて
甲第3号証には、電子式金銭登録機に関し、その第2頁右下欄13行?第3頁左上欄2行に、「第2図は磁気カード100の構成図を示したものであり、この磁気カード100には、顧客のコード番号を表示する印字部101、顧客のコード番号を磁気記録する磁気記録部102、・・・同一顧客に対する累計売上金額を磁気記録する磁気記録部105、登録、累計を行った年月日を磁気記録する磁気記録部106・・・顧客氏名印刷部108、店名印刷部109を有している。」と記載されており、甲第3号証には、同一顧客に対する累計売上金額を磁気記録する磁気カードに顧客のコード番号、すなわち顧客番号を磁気記録することが記載されている。
そして、甲第2号証及び甲第3号証に記載されたものは、顧客が商品を購入する際、その磁気カードに顧客の累計購入額に相当するものを磁気記録するものである点で、共通の技術分野に属するから、甲第2号証に記載された磁気カードに、甲第34号証に記載されたように顧客番号を磁気記録するようにして、上記相違点イであげた本件考案の構成のようにすることは、当業者であればきわめて容易になし得たことである。
(2)相違点ロについて
甲第3号証には、電子式金銭登録機に関し、その第2頁左上欄19行?同頁右上欄5行に、「従来・・・スタブレシートを使用することにより行われていた。すなわち、部門別売上金額、合計金額が印字されている通常のレシートにミシン目線を介して顧客のコード番号および合計売上金額が印字されているスタブレシートを一体に発行する。」こと、同じく第3頁左下欄19行?同頁右下欄4行には、「磁気力-ド読取り・書込み装置200は磁気カード100の磁気記録部102から顧客のコード番号を読み出し、これを金銭登録機本体300に供給する。金銭登録機本体300では、顧客のコード番号をレシートおよびスタブレシートに対する印字を行う。」ことが記載されており、また、甲第4号証には、その第95頁の「図2-12 丸久のレシートサンプル」の「現金払いのレシート」の図中には、レシート上に、「客のカード番号」を記載することが記載されており、甲第2号証に記載されたレシート上に、甲第3号証及び甲第4号証に記載されたように顧客番号を記載するようにして上記相違点ロであげた本件考案の構成のようにすることは、当業者であればきわめて容易になし得たことである。
(3)なお、本件考案の効果は、甲第2号証乃至甲第4号証に記載された事項から予測できる程度のものであって、格別のものではない。
(4)したがって、本件考案は、甲第2号証乃至甲第4号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件考案についての実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項の規定により、これを無効とすべきものとする。
審判に関する費用については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担するものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-01-18 
結審通知日 2002-01-23 
審決日 2002-02-07 
出願番号 実願平7-4828 
審決分類 U 1 112・ 121- ZB (G07G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 祖父江 栄一加古 進粟津 憲一前田 幸雄佐野 遵  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 長浜 義憲
岡本 昌直
登録日 1997-07-04 
登録番号 実用新案登録第2552178号(U2552178) 
考案の名称 レシート  
代理人 井桁 貞一  
代理人 水谷 直樹  
代理人 川崎 仁  
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