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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01Q
管理番号 1056853
審判番号 不服2000-5558  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-04-19 
確定日 2002-03-29 
事件の表示 平成 4年実用新案登録願第 75703号「平面アンテナ装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 5月31日出願公開、実開平 6- 41217]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案
本願は、平成4年10月30日の出願であって、その請求項1に係る考案は、平成11年9月27日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。(以下、「本願考案」という。)
「平板状の受信面を有する平面アンテナ素子と、一面が接地面とされ、他面が前記平面アンテナ素子で受信した信号を処理する回路を搭載された回路面とされ、該接地面側に前記平面アンテナ素子の非受信面が突き合わされて、固定され、前記平面アンテナ素子の受信面が該接地面側から前記回路面側に貫通して接続された回路基板と、前記回路基板に固定され、前記回路基板の前記回路面をシールドするシールド部材と、装置本体を他の部材に固定するための取付部とが一体的に組み付けられた構成とされた平面アンテナ装置。」
なお、平成12年4月19日付けでした手続補正は、明細書の要旨を変更するものとして、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第159条第1項の規定により更に準用する同法第53条第1項の規定により却下された。

2.引用刊行物記載の考案
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成2年7月13日に頒布された特開平2-180404号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「本発明には、平面アンテナを用いて構成されるマイクロ波帯若しくは準マイクロ波帯の受信アンテナ装置に於いて、平面アンテナ基板とプリアンプ基板とを一体的に結合することにより、信号の減衰乃至は損失を最小化しながら小型平面化を達成可能な平面受信アンテナ装置に関する。」(1頁左下欄17行ないし右下欄2行)、「その為に、本発明に係る平面受信アンテナ装置によれば、平面アンテナを用いたマイクロ波帯若しくは準マイクロ波帯の受信アンテナ装置に於いて、平面アンテナ基板とプリアンプ基板とのアース面を共用するように該平面アンテナ及びプリアンプ基板を一体的に接合し、上記平面アンテナのアンテナパターンと上記プリアンプ基板との間に所要の導通部を備え、これらの一体的な平面アンテナ基板及びプリアンテナ基板とを外装ケースに収納すべく構成したものである。」(2頁左上欄9行ないし18行)、「図面はその一実施例を示すものであって、この平面受信アンテナ装置は、第1図の如く、マイクロ波帯若しくは準マイクロ波帯の受信に対応したアンテナパターン3を外面に形成した両面基板型平面アンテナ基板2と、その真下に配置したプリアンプ基板5とをアース層4を共用可能に一体的に接合した小型平面的な基板構造1を具備する。」(2頁右上欄2行ないし8行)、「第2図は斯かる平面受信アンテナ装置の概念的な要部断面構成図を示し、この実施例では、共用アース層4は平面アンテナ基板2の下面に被着してあり、該アース層4とアンテナパターン3とは予めスルーホール導通化手段等で導通部7を備える一方、接着層6により相互接続した平面アンテナ基板2とプリアンプ基板5との間の導通部8及びアンテナパターン3とのスルーホール導通又は導通ピン等による導通部9を適宜形成することが出来る。なお、5Aはプリアンプ基板5側の回路配線パターンを示し、この回路配線パターン5Aの形成側にはプリアンプを構成すべき図示しないチップ型電子回路素子が適宜実装される。斯かる一体型基板構造1は、適当な樹脂性部材からなる外装ケース10内に収納して蓋体11で密封封止することにより、装置全体の機械的強度並びに耐候性等を確保できる。」(2頁右上欄9行ないし左下欄6行)、「本発明に係る平面受信アンテナ装置は、以上のとおり、マイクロ波帯若しくは準マイクロ波帯の受信アンテナ装置に最適な如く平面アンテナ基板とプリアンプ基板とを一体的に結合した構造を備えるので、装置全体の小型平面化を達成し、任意の場所に設置することが容易となる。」(2頁左下欄8行ないし13行)、「本発明に係る平面受信アンテナ装置によれば、平面アンテナを用いたマイクロ波帯若しくは準マイクロ波帯の受信アンテナ装置に於いて、平面アンテナ基板とプリアンプ基板とのアース面を共用するように該平面アンテナ及びプリアンプ基板を一体的に接合し、上記平面アンテナのアンテナパターンと上記プリアンプ基板との間に所要の導通部を備え、これらの一体的な平面アンテナ基板及びプリアンテナ基板とを外装ケースに収納すべく構成したものである。」(2頁左下欄8行ないし13行)、「平面アンテナ基板とプリアンプ基板とをアース層の共用下に一体構造に構成したので、受信信号の減衰乃至は損失を最小化できる。」(2頁左下欄14行ないし16行)の記載がある。
これらの記載によれば、引用刊行物1には、「 一面が平板状の受信面を有するアンテナパターン、他面が接地面とされる平板状の平面アンテナと、一面が前記平面アンテナで受信した信号を処理するためのチップ型回路素子が搭載された回路面とされ、他面が前記平面アンテナの他面とが突き合わされて固定され、前記平面アンテナの受信面が該他面側から前記回路面側に貫通して接続されたプリアンプ基板と、前記プリアンプ基板に固定され、前記プリアンプ基板と平面アンテナを収納する密封用蓋体及び収納用外装ケースとを備えた平面受信アンテナ装置。」(以下、「引用刊行物1記載の考案」という。)が記載されているものと認められる。

(2)同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願の日前である昭和63年3月17日に頒布された特開昭63-61501号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、第1図の記載とともに、「本発明は・・・平面アンテナと周波数コンバータを一体化し、・・・コンパクトで軽量の周波数コンバータ一体型平面アンテナを提供するものである。」(2頁左下欄1行ないし5行)、「本発明の実施例を第1図に示す。第1図aで、マイクロストリップ平面アンテナの接地導体4に接合した接地導体板5にマイクロ波集積回路で構成した低雑音コンバータ回路11を装着し、・・・同図で12は周波数コンバータ11用のケースで接地導体板5と一体化されており、13は同ケース12の金属フタである。」(2頁右下欄3行ないし13行)の記載があり、これらの記載によれば、引用刊行物2には、平面アンテナと回路基板(周波数コンバータ)を一体化したアンテナ装置において、シールド部材(接地導体板5、コンバータケース12、金属のフタ13)によって回路基板の回路(マイクロ波集積回路)面をシールドする技術が開示されているものと認められる。

3.対比
(1)本願考案と引用刊行物1記載の考案とを対比すると、引用刊行物1記載の考案の「平面アンテナ」、「チップ型回路素子」、「プリアンプ基板」、「平面受信アンテナ装置」は、それぞれ、本願考案の「 平面アンテナ素子」、「回路」、「回路基板」、「平面アンテナ装置」に相当し、引用刊行物1記載の考案の「接地面」と本願考案の「接地面」とは共に「平面アンテナ素子」と「回路基板」との間に設けられた「接地層」である点で一致し、また、引用刊行物1記載の考案の「プリアンプ基板と平面アンテナを収納する密封用蓋体及び収納用外装ケース」と本願考案の「回路基板に固定され、前記回路基板の回路面をシールドするシールド部材」とは、回路基板を固定する部材である点で一致するといえるから、両者は、以下の点で一致ないし相違する。

(2)一致点
平板状の受信面を有する平面アンテナ素子と、一面が前記平面アンテナ素子で受信した信号を処理する回路が搭載された回路面とされ、他面が接地層を介して前記平面アンテナ素子の非受信面と突き合わされて、固定され、前記平面アンテナ素子の受信面がアース層側から前記回路面側に貫通して接続された回路基板と、回路基板を固定する部材とを備えた平面アンテナ装置。

(3)相違点
ア)接地層に関して、本件考案は、回路基板の他面側に設けられるのに対して、引用刊行物1記載の考案は、平面アンテナ素子の非受信面側に設けられる点、
イ)回路基板を固定する部材に関して、本願考案は、回路基板の回路面をシールドするシールド部材であるのに対して、引用刊行物1記載の考案は外装ケースである点、
ウ)本願考案は、回路基板に固定され、前記回路基板の前記回路面をシールドするシールド部材と、装置本体を他の部材に固定するための取付部とが一体的に組み付けられた構成とされるのに対して、引用刊行物記載の考案は、そのように構成されていない点、

4.当審の判断
上記相違点について検討すると、
(1)相違点ア)について
引用刊行物1には、第1図の記載とともに、「マイクロ波帯若しくは準マイクロ波帯の受信に対応したアンテナパターン3を外面に形成した両面基板型平面アンテナ基板2と、その真下に配置したプリアンプ基板5とをアース層4を共用可能に一体的に接合した小型平面的な基板構造1を具備する。」(2頁右上欄3行ないし8行)の記載があるように、引用刊行物1記載の考案は、接地層(アース層)を共用可能に一体的に接合するものであること、また、接地層を回路基板の他面側に設けるか、それとも平面アンテナ素子の非受信面側に設けるかは適宜実施し得る設計事項であると考えられることから、引用刊行物1記載の考案において、回路基板の他面側を接地面とすること、すなわち、回路基板の回路が搭載されていない面を接地面とすることに格別の困難性はなく、当業者であればきわめて容易に想到し得ることである。
(2)相違点イ)、ウ)
平面アンテナ素子と回路基板とを一体化したアンテナ装置において、シールド部材によって回路基板の回路面をシールドすることは刊行物2に開示されているように公知の技術であり、また、アンテナ装置は、通常、他の部材に装着(固定)して使用する(例えば、実願平1-34993号(実開平2-126413号)のマイクロフィルム参照)ものであって、他の部材に装着(固定)する際には、それに合わせて取付部を適宜設けると考えられることから、引用刊行物1記載の考案において、外装ケースに代えてシールド部材を採用し、該シールド部材と装置本体を他の部材に固定するための取付部とが一体的に組み付けられた構成とすることは、当業者であればきわめて容易に想到し得ることである。

5.むすび
したがって、本願考案は、引用刊行物1,2に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-01-10 
結審通知日 2002-01-22 
審決日 2002-02-04 
出願番号 実願平4-75703 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (H01Q)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 浜野 友茂羽鳥 賢一  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 武井 袈裟彦
山本 春樹
考案の名称 平面アンテナ装置  
代理人 伊東 忠彦  

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