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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B66C
管理番号 1056857
審判番号 審判1998-35211  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-05-19 
確定日 2002-04-08 
事件の表示 上記当事者間の実用新案登録第1964864号「掴み機」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成11年5月18日付けの審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成11年(行ケ)第190号、平成13年7月10日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第1964864号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 I.手続の経緯

(1)実用新案登録第1964864号に係る考案(以下、「本件考案」という。)の実用新案登録は、昭和59年7月20日に実用新案登録出願(昭和59年実用新案登録願第110707号)され、昭和63年11年11月21日及び平成4年2月7日に願書に添付した明細書及び図面が補正された後、平成4年6月4日の出願公告(平成4年実用新案登録出願公告第23897号)を経て、平成5年5月13日に実用新案権の設定の登録がされたものである。
(2)これに対し、平成10年5月19日に、株式会社松本製作所(以下、「請求人」という。)より、本件考案の実用新案登録を無効にすることについて審判が請求され、平成10年審判第35211号事件として審理された結果、平成11年5月18日に「登録第1964864号実用新案の登録を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決がされた。
(3)この審決に対し、東京高等裁判所において、「特許庁が平成10年審判第35211号事件について平成11年5月18日にした審決を取り消す。」との判決[平成11年(行ケ)第190号、平成13年7月10日判決言渡]がされた。
なお、この判決に対し、上告及び上告受理の申立てがされたが、最高裁判所において、「本件上告を棄却する。本件を上告審として受理しない。」との決定[平成13年(行ツ)第302号、平成13年(行ヒ)第286号、平成13年11月22日決定]がされた。


II.請求人の主張

請求人の主張の概要は、次の「理由I」又は「理由II」を理由として、「本件考案の実用新案登録を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求めるというものである。

1.理由I
(1)本件考案は、願書(出願公告時の)に添付した明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりのものであり、それを分説すると次のとおりである。
A.ショベル型掘削機の作業アームの先端に装着されるホルダーと、
B.このホルダーに各基端が枢着される上下一対のクランプと、
C.一端がホルダーに枢着され且つ他端が一方のクランプに連結された油圧シリンダーと、
D.両クランプを連動させる連動部材とからなる
E.掴(旧字体で記載されている。以下、同様に新字体を使用する。)み機において、
F.油圧シリンダーはその上端側がホルダーに枢着され、下端側が下方側のクランプに連結されているとともに、
G.上端が下端よりも後方側に位置する斜め状態で配設されており、
H.下方側のクランプはそのホルダーへの枢着部より後方で且つ斜め下方に突出する片を備えて、この片に油圧シリンダーが連結されていることを特徴とする掴み機。
(2)本件考案は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1号証?甲第4号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであって、本件考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものである。
(3)したがって、本件考案の実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第1号により無効とすべきものである。
<証拠方法>
甲第1号証:特開昭55-9969号公報
甲第2号証:実願昭55-52111号(実開昭56-153550号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実願昭57-174248号(実開昭59-80551号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実願昭56-121345号(実開昭58-27279号)のマイクロフィルム
なお、審判請求書の証拠方法の欄において、甲第2号証ないし甲第4号証は、いずれも公開公報と記載されているが、添付資料等を参酌すると、上記のとおりと認めることができる。

2.理由II
(1)本件考案は、甲第5号証?甲第8号証の事実により、その出願前に日本国内において公然知られた又は公然実施をされた考案若しくは該考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができた考案であって、本件考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第1項第1号若しくは第2号又は同条第2項の規定に違反して登録されたものである。
(2)したがって、本件考案の実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第1号により無効とすべきものである。
<証拠方法>
甲第5号証:実公昭59-42455号公報
甲第6号証:昭和58年10月に松本大次郎が描いた「油圧式フォークの図面」の写し
甲第7号証:甲第6号証の図面及び添付のカタログに係る油圧フォークを昭和58年2?5月頃に試験したとする野坂時夫による「証明書」
甲第8号証:株式会社松本製作所から新生解体に宛てた「総合請求書の控え」の写し
甲第9号証:株式会社松本製作所が新生解体に宛てた「領収書」の写し
甲第10号証:甲第6号証の図面及び添付のカタログに係る油圧フォークを昭和58年2?5月頃に制作し、試験した等とする西村幸男による「証明書」
甲第11号証:甲第6号証の図面及び添付のカタログに係る油圧フォークを昭和58年8月に購入し、公然と使用した等とする新生解体代用者平野敬喜による「証明書」
甲第12号証:株式会社松本製作所が山本産業に宛てた「請求書」の写し
甲第13号証:甲第6号証の図面及び添付のカタログに係る油圧フォークを昭和59年6月頃に購入し、公然と使用した等とする山本産業代用者山本正敏による「証明書」
甲第14号証:旧住所の株式会社松本製作所のカタログ
甲第15号証:山本産業に販売された油圧式フォークの写真
甲第16号証:試作品、少量品の製作説明書
甲第17号証:昭和58年頃に日立建機株式会社で開発された旋回式家屋解体機の図面
甲第18号証:昭和58年9月2日に社内PR用に配布された旋回式家屋解体機の写真が掲載されたコピー
検甲第1号証:昭和59年6月に山本産業に販売された油圧式フォーク


III.被請求人の主張

被請求人の主張の概要は、次の「理由Iに対して」及び「理由IIに対して」を理由として、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求めるというものである。

1.理由Iに対して
(1)本件考案は、願書(出願公告時の)に添付した明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりのものであり、それを分説すると請求人の主張「1.理由I(1)」のとおりである。(答弁書第2頁第19?20行参照。)
(2)甲第1号証に記載されたものは、本件考案の構成要件A、B、C、D及びEに相当する構成を備えているが、構成要件F、G及びHに相当する構成を備えていない。(答弁書第3頁第17?29行参照。)
(3)甲第1号証の「駆動シリンダ15」は、その伸張に伴って、ピストン杆17を圧砕アーム6に枢支連結しているピン18と、駆動シリンダ15を軸着している取付軸16とを結ぶ直線上に位置するように回動するものであり、この回動によって、駆動シリンダ15は圧砕アーム6のレバー10に対して常に直交する姿勢となって、駆動シリンダ15からの作用力を圧砕アーム6に効率よく伝えることで、両アーム6,7による圧砕を強力におこなうとするものである。(答弁書第4頁第1?9行参照。)
(4)本件考案は、ショベル型掘削機の作業アームの先端に装着されてクランプを油圧シリンダーによって開閉する掴み機であって、油圧シリンダーの上端側を下端側よりも後方になる斜めに傾いた状態で配置し、かつ、斜めに傾いた油圧シリンダーを下方に配置させるとともに油圧シリンダーの作用方向をクランプの回動方向とほぼ一致させることによって、「ショベル型掘削機の操縦席に座った作業者が、油圧シリンダーによって前方の視界が遮られることがなく、良好な視界を確保しながら、それでいて、油圧シリンダーの開閉を有効におこなう」という技術思想に関するものであるが、甲第1号証には、このような本件考案の技術思想が存在しないのは明白である。(答弁書第3頁第9?16行及び同第5頁第9?12行参照。)
(5)甲第4号証に記載されたものは、本件考案の構成要件A、B、C、D及びEに相当する構成を備えているが、構成要件F、G及びHに相当する構成を備えていない。(答弁書第6頁第7?17行参照。)
(6)甲第4号証の「駆動シリンダー13」は、外筐1内において直立していて、油圧シリンダー13を納めている外筐1は大きく突出して作業者の視界を遮るものである。(答弁書第6頁第13?15行参照。)

2.理由IIに対して
甲第6号証?甲第8号証の記載の事実から、本件考案は、平成5年改正前実用新案法第3条第1項第1号若しくは第2号又は同条第2項に該当するとの、請求人の主張は失当である。(答弁書第7頁第16?18行参照)。


IV.当審の判断

1.理由Iについて
(1)本件考案
本件考案は、願書(出願公告時の)に添付した明細書(以下、「登録明細書」という。)及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。
「ショベル型掘削機の作業アームの先端に装着されるホルダーと、このホルダーに各基端が枢着される上下一対のクランプと、一端がホルダーに枢着され且つ他端が一方のクランプに連結された油圧シリンダーと、両クランプを連動させる連動部材とからなる掴み機において、油圧シリンダーはその上端側がホルダーに枢着され、下端側が下方側のクランプに連結されているとともに、上端が下端よりも後方側に位置する斜め状態で配設されており、下方側のクランプはそのホルダーへの枢着部より後方で且つ斜め下方に突出する片を備えて、この片に油圧シリンダーが連結されていることを特徴とする掴み機。」
(2)甲第1号証に記載された考案
本件考案の出願前に頒布された甲第1号証には、次のような技術的事項が記載されている。
イ.「6,7は一対の圧砕アームで、このアーム6,7はその後端をフレームFの前部両端に一対のアームピン8により着脱自在に枢着する。」(第2頁左上欄第第1?3行)
ロ.「一方のアーム6の枢着部より後方に一対のレバー10を固定し、同じアーム6の枢着部において他方のアームに向く側には一対の突部11を設け、他方のアーム7の枢着部には一方のアーム6の突部11へ向く一対の突部12を設ける。13はリンクであり、このリンク13は各アーム6,7の突部11,12間に両端を嵌入させて着脱自在のリンクピン14により連結する。」(第2頁左上欄第7?14行)
ハ.「15はフレームFの側板1間に取付ける油圧などで作動する駆動シリンダでこのシリンダ15はその前部両外側の取付軸16により両側板1に回動自在に軸着してある。17はこのシリンダ15の前端から突出したピストン杆で、その先端を前記両レバー10の端部内に嵌入させてシリンダピン18により軸着する。」(第2頁左上欄第17行?同頁右上欄第3行)
ニ.「Bは取付枠で、パワーショベルなどのアームや起伏シリンダに取付けるための複数の取付孔22を有するブラケット20を取付板21に一体に設けたもの」(第2頁右上欄第9?12行)
ホ.「取付板21に対してフレームFの端板5を90°づつ回動して両者に設けた取付孔に挿通したボルトで固定することによりパワーショベルのアームなどに取付けた取付枠Bに対してフレームFを90°毎に向きを変えて固定することができる。」(第2頁右上欄第13?18行)
ヘ.「この発明の圧砕機は前記の構造であり、例えばパワーショベルのショベル取付部に取付枠Bを取付けて、パワーショベルと同様に取付枠BとともにフレームFを自由に動かして作業を行なう。」(第2頁左下欄第1?4行)
ト.「ピストン杆17を最も引込めた第1図の状態では圧砕アーム6,7間は最大に開いている。…駆動シリンダ15を作用させてピストン杆17を押出すと…第1図の鎖線のようになって両アーム6,7が被圧砕物を強力に圧砕する。」(第2頁左下欄第5?13行)
チ.第1図の表示、上記記載事項ロ、ハ及び技術常識によれば、第1図から、「駆動シリンダ15の中間部がフレームFに回動自在に軸着されていること」及び「少なくとも圧砕時において、一方の圧砕アーム6側の圧砕アーム6はそのフレームFへの軸着部より後方で且つ斜めであって一方の圧砕アーム6側外方に突出するレバー10を備えていること」が看取できる。
これらの記載事項等からみて、甲第1号証には、次のとおりの考案(以下、「引用考案1」という。)が記載されていると認めることができる。
「パワーショベルのアームに取付けられる取付枠Bと、この取付枠Bに固定されたフレームFに各後端が枢着される一対の圧砕アーム6,7と、中間部がフレームFに回動自在に軸着され且つピストン杆17の先端が一方の圧砕アーム6に固定されたレバー10に軸着された駆動シリンダ15と、両圧砕アーム6,7を同時に回動させるリンク13とからなる圧砕機において、駆動シリンダ15はその他方の圧砕アーム7側の中間部がフレームFに回動自在に軸着され、一方の圧砕アーム6側が一方の圧砕アーム6に固定されたレバー10に軸着されているとともに、少なくとも圧砕時において、一方の圧砕アーム6側の圧砕アーム6はそのフレームFへの軸着部より後方で且つ斜めであって一方の圧砕アーム6側外方に突出するレバー10を備えて、このレバー10にピストン杆17の先端が軸着されている圧砕機。」
(3)甲第4号証に記載された考案
本件考案の出願前に頒布された甲第4号証には、次のような技術的事項が記載されている。
イ.「本考案は、…掴(旧字)み機における掴み爪の基部取付装置に関する。」(明細書第1頁第20行?第2頁第4行)
ロ.「上下の掴み爪10,10が設けられ、且つ筒体4,4の外歯6,6が噛合されている。12は爪開閉用リンクで、両筒体4,4の何れか一方の筒体4(図面の実施例では、下部の掴み爪10側)の外周にその下端が一体化され、その上端は外筐1内に設けた内部油圧シリンダ13のピストンロッド14先端に枢着されている。」(明細書第6頁第4?11行)
ハ.「図中16は取付用ブラケットで、その一端(第1図,第5図において下側)に第1軸受部16aが、その他端…に第2軸受部16bが夫々形成され、その取付用ブラケット16が前記外筐1の外面に固着されている。」(明細書第6頁第15?20行)
ニ.「17はアームで、ショベルローダ等のブームの先端に油圧機構にて適宜屈伸するように設けられている。」(明細書第6頁第20行?第7頁第2行)
ホ.第5図の表示、上記記載事項ロ及び技術常識によれば、第5図から、「内部油圧シリンダ13の上端側が外筐1に枢着されていること」が看取できる。
これらの記載事項等からみて、甲第4号証には、次のとおりの考案(以下、「引用考案2」という。)が記載されていると認めることができる。
「内部油圧シリンダ13は、その上端側が、取付用ブラケット16が外面に固着された外筐1に枢着され、下端側が下部の掴み爪10に連結され、下部の掴み爪10はその外筐1への枢着部より後方に突出する爪開閉用リンク12を備えて、この爪開閉用リンク12に油圧シリンダ13のピストンロッド14先端が枢着されている掴み機。」
(4)本件考案と引用考案1との対比及び判断
本件考案と引用考案1とを対比すると、引用考案1の「パワーショベルのアームに取付けられる」は、その技術的意義において、本件考案の「ショベル型掘削機の作業アームの先端に装着される」に相当し、以下同様に、「一対の圧砕アーム6,7」は「一対のクランプ」に、「圧砕アーム6,7の後端」は「クランプの基端」に、「回動自在に軸着」は「枢着」に、「ピストン杆17の先端」は「油圧シリンダーの他端」に、「駆動シリンダ15」は「油圧シリンダー」に、「圧砕アーム6に固定されたレバー10に軸着された駆動シリンダ15」は「クランプに連結された油圧シリンダー」に、「同時に回動させる」は「連動させる」に、「リンク13」は「連動部材」に、「圧砕機」は「掴み機」に、「圧砕アーム6に固定されたレバー10に軸着」は「クランプに連結」に、「突出するレバー10」は「突出する片」に、「レバー10にピストン杆17の先端が軸着」は「片に油圧シリンダーが連結」に、それぞれ相当すると認められる。
また、本件考案の「ホルダー」と引用考案1の「取付枠B及びこの取付枠Bに固定されたフレームF」とは、その技術的意義において、「取付部及びこの取付部に繋がる枠部」の限度において一致し、本件考案の片の位置に関する事項が「クランプを閉じた状態の場合」を含むことが明らかであるので、両者は、「少なくともクランプを閉じた状態において、一方のクランプはその枠部への枢着部より後方で且つ斜めであって一方のクランプ側外方に突出する片を備えている」の限度において一致していると認められる。
してみると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
ショベル型掘削機の作業アームの先端に装着される取付部と、この取付部に繋がる枠部に各基端が枢着される一対のクランプと、一端側が枠部に枢着され且つ他端が一方のクランプに連結された油圧シリンダーと、両クランプを連動させる連動部材とからなる掴み機において、油圧シリンダーはその他方のクランプ側の所望箇所が枠部に枢着され、一方のクランプ側が一方のクランプに連結されているとともに、少なくともクランプを閉じた状態において、一方のクランプはその枠部への枢着部より後方で且つ斜めであって一方のクランプ側外方に突出する片を備えて、この片に油圧シリンダーが連結されている掴み機。
<相違点>
i)取付部と枠部の態様について、本件考案では、「ショベル型掘削機の作業アームの先端に装着されるホルダーと、このホルダーに各基端が枢着される上下一対のクランプと、一端がホルダーに枢着される油圧シリンダーと」となっているのに対し、引用考案1では、「パワーショベルのアームに取付けられる(ショベル型掘削機の作業アームの先端に装着される)取付枠Bと、この取付枠Bに固定されたフレームFに各後端(基端)が枢着される一対の圧砕アーム6,7(クランプ)と、中間部がフレームFに回動自在に軸着(枢着)され且つピストン杆17の先端(他端)が一方の圧砕アーム6に固定されたレバー10に軸着された駆動シリンダ15(クランプに連結された油圧シリンダー)と」となっていて、すなわち、本件考案では、取付部と枠部が「ホルダー」の一部材からなっているのに対し、引用考案1では、取付部と枠部が「取付枠BとフレームF」の二部材からなっている点(以下、「相違点i」という。)。
ii)枠部、油圧シリンダー、クランプの枢着点等の位置関係について、本件考案では、「油圧シリンダーはその上端側がホルダーに枢着され、下端側が下方側のクランプに連結されているとともに、上端が下端よりも後方側に位置する斜め状態で配設されており、下方側のクランプはそのホルダーへの枢着部より後方で且つ斜め下方に突出する片を備えて、この片に油圧シリンダーが連結されている」となっているのに対し、引用考案1では、「駆動シリンダ15(油圧シリンダー)はその他方の圧砕アーム7側の中間部がフレームFに軸着(枢着)され、一方の圧砕アーム6側が一方の圧砕アーム6に固定されたレバー10に軸着(クランプに連結)されているとともに、少なくとも圧砕時において、一方の圧砕アーム6側の圧砕アーム6(クランプ)はそのフレームFへの軸着部(枢着部)より後方で且つ斜めであって一方の圧砕アーム6側外方に突出するレバー10(突出する片)を備えて、このレバー10(突出する片)にピストン杆17の先端が軸着(油圧シリンダーが連結)されている」となっている点(以下、「相違点ii」という。)。
次いで、これらの相違点について検討する。
<相違点の検討>
i)相違点iについて
互いに繋がるハウジング、フレーム又はブラケット等を一部材で作製するか二部材で作製するかは、従来より、製造の容易性やメンテナンスの容易性等を考慮して、その当業者の必要に応じて適宜実施されていることにすぎず、また、掴み機の取付部と枠部を一部材とすることを妨げる特段の事情も見当たらず、現に、本件考案に係る出願より相当前に頒布された刊行物である実願昭55-176935号(実開昭57-99055号)のマイクロフィルムにおいても、「掴み機の取付部と枠部を一部材とすること」が実質的に記載されている。
してみると、相違点iに係る本件考案の構成要件は、引用考案1の採用に際し、当業者が必要に応じ適宜実施できた設計的事項というべきである。
ii)相違点iiについて
この相違点iiは、換言すれば、ii-イ)本件考案では、掴み機の上下方向が限定されているのに対し、引用考案1では、圧砕機(掴み機)の上下方向が本件考案のように限定されていない点と、ii-ロ)本件考案では、主として、油圧シリンダーが斜め状態で配置されていることが限定されているのに対し、引用考案1では、それが不明である点に大別できる。
そこで、先ず、引用考案1の圧砕機(掴み機)において、一方の圧砕アーム6側を下にし、他方の圧砕アーム7側を上にすることが可能か否かについて検討する。
一般に、掴み機は、一定の位置を常に維持するものでなく、作業アームの長さや作業の種類によって、その角度を種々の態様に変化させて使用されるものと解され、本件考案の掴み機においても、上下方向が登録図面の第1図に示されるような一態様でのみ使用されるものとも解されない。
そして、甲第1号証の上記記載事項ホ、ヘによれば、引用考案1の圧砕機(掴み機)において、想定される作業の必要性に対応するようにアームとの位置関係が適宜選択できることを強く示唆しているものと解される。
もっとも、引用考案1の実施例においては、アームとの位置関係の選択は、取付枠BとフレームFの取り付けの相対位置を調整することで達成されているが、作業アームの長さや想定される作業の種類が一定していれば、いずれかの相対位置に固定されることを排除するものではないと解される。
また、甲第4号証に記載された引用考案2は、本件考案の掴み機の上下方向の限定と実質的に同様であって、「油圧シリンダーの上端側を掴み機の本体に枢着し、下端側を下方側のクランプに連結している掴み機。」の一例と解することができる。
してみると、引用考案1に係る圧砕機(掴み機)において、一方の圧砕アーム6側を本件考案のように下方側に限定することは、当業者が必要に応じ適宜実施できる程度のことにすぎない。
なお、油圧シリンダーの使用態様として、ピストンロッドの端部を可動体に枢着し、それと反対側のシリンダーの端部を支持体に枢着することは、従来周知の使用態様であって、また、上記引用考案2もその一例と解することができるほか、甲第2号証に記載された油圧シリンダも一方の端側が枢着されていると解されるので、掴み機において、油圧シリンダーの上端側を掴み機の本体に枢着し、下端側を下方側のクランプに連結することは、当業者にとってその必要に応じ適宜実施できる設計的事項にすぎない。
そうすると、相違点iiの実質的なものは、上記ii-ロ)のように油圧シリンダーの配置態様に係るものと解することができる。
この点については、被請求人も、「本件考案の構成要件A、B、C、D及びEに相当する構成を備えているが、構成要件F、G及びHに相当する構成を備えていない。」(III.1.(2)参照)のように、認めているところである。
以下、この相違点について検討する。
被請求人の主張によれば、本件考案は、相違点iiに係る本件考案の構成要件により、「ショベル型掘削機の操縦席に座った作業者が、油圧シリンダーによって前方の視界が遮られることがなく、良好な視界を確保しながら、それでいて、油圧シリンダーの開閉を有効におこなうことができる」とするものであって(III.1.(4)参照)、登録明細書にも同旨の記載がある。
しかしながら、「ショベル型掘削機の操縦席に座った作業者が、油圧シリンダーによって前方の視界が遮られることがなく、良好な視界を確保できる」のは、操縦席に座った作業者の視点が油圧シリンダー及びクランプの上方にあるような特定の場合に限られ、例えば、高い位置の物を掴むような場合であって、操縦席に座った作業者の視点が掴み機の下方にある場合は、このような効果を期待することができない。
そもそも、物の見る方向に突出物があれば、それが視界を遮り、良好な視界を確保できなくなることは、当業者ならずともたやすく予測でき、他に支障がなければ、その突出物を排除しようとし、突出物の排除するとき、他に支障がなければ長さを縮め、長さを縮めることができなければ他に支障がないだけ傾斜させることは、自然の帰結ということができる。
そして、直立した油圧シリンダーを傾斜させ、ホルダー等をそれに応じて変形させれば、上記のような特定の場合において、それによって視界側への突出量が減った分、視界を遮られることがなく、良好な視界が確保されることは、当業者にとってたやすく予測でき、同時に、油圧シリンダーを傾斜させれば、その分掴み機の全長が長くなって掴み機の揺動に要する力が大きくなることも当業者にとってたやすく予測できることにすぎない。
しかも、掴み機の分野において、視界を良好にすることは、周知の課題にすぎない(例えば、実公昭59-7476号公報参照。)。
さらに、油圧シリンダーとその押圧力を受けて回転力に変換するレバーである突出する片の角度が直角に近い方が有利であることは、力学上自明なことである(被請求人の上記III.1.(3)の主張もこれを裏付けるものと解される。)ので、油圧シリンダーの傾斜角を変更するとき、他に支障がなければ、引用考案1の「突出するレバー10(突出する片)」の突出量を変更することは、当業者にとってきわめて容易に想到できる程度のことと認められる。
以上を総合すれば、相違点iiに係る本件考案の構成要件は、引用考案1の採用に際し、当業者が必要に応じきわめて容易に想到できたものというべきである。
また、本件考案が奏する効果は、引用考案1並びに甲第2号証及び甲第4号証等にみられる周知の技術的事項に基づいて当業者が予測できる範囲を超えるものではない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、本件考案は、本件考案の出願前に頒布された甲第1号証に記載された考案並びに甲第2号証及び甲第4号証等にみられる周知の技術的事項に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることがことができたものである。


V.まとめ
したがって、本件考案の実用新案登録は、その実用新案登録が特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)による改正前の実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであるから、実用新案法第37条第1項第1号に該当するので、理由IIについて検討するまでもなく、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-04-19 
結審通知日 1999-05-07 
審決日 1999-05-18 
出願番号 実願昭59-110707 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (B66C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊藤 元人  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 氏原 康宏
西野 健二
登録日 1993-05-13 
登録番号 実用新案登録第1964864号(U1964864) 
考案の名称 掴み機  
代理人 森 厚夫  
代理人 西川 惠清  
代理人 森 厚夫  
代理人 中前 富士男  
代理人 西川 惠清  
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