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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16F
管理番号 1058333
審判番号 不服2000-9420  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-06-22 
確定日 2002-05-28 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 39852号「免防振装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成 7年 2月14日出願公開、実開平 7- 10580、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。   
結論 原査定を取り消す。 本願の考案は、実用新案登録すべきものとする。
理由 1.手続の経緯及び本願考案
本願は、平成5年7月21日の出願であって、その請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という)は平成11年5月6日付け及び平成12年7月18日付け手続補正書によって補正がなされた明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「上下に位置する上部取付板と下部取付板との間に、これらと平行に位置する仕切板が配設されてなり、前記上部取付板と下部取付板のいずれか一方と、前記仕切板との間には、ゴムと金属板とが上下に積層された構造からなる水平振動吸収部が介装され、前記上部取付板と下部取付板のいずれか他方と、前記仕切板との間にはゴムパッドが介装されてなる免防振装置において、
前記上部取付板と下部取付板のいずれか他方には、前記仕切板の周縁部と定められた間隔を隔てた位置に突起部が突出形成されているとともに、該突起部と前記仕切板の周縁部との間にはブッシュが介装されてなり、
該ブッシュにより前記上部取付板と下部取付板のいずれか他方と前記仕切板との上下方向の相対移動が許容されかつそれらの水平方向の相対移動は拘束される構造となっていることを特徴とする免防振装置。」
であるものと認められる。

2.引用刊行物
これに対して、原審における拒絶の査定の理由には、以下の刊行物1?3が引用されている。
刊行物1:特開平3-157534号公報
刊行物2:実願昭62-191320号(実開平1-96902号)のマイ クロフィルム
刊行物3:実願昭61-160808号(実開昭63-67158号)のマ イクロフィルム

そして、これらの刊行物には、以下の技術的事項が記載されている。
刊行物1には、第1図及び第2頁右上欄第8行?第3頁左上欄第18行に、上面フランジ14と下面フランジ15との間にブロック状ゴム11からなる防振ゴム構造体10を設けた上部防振部と、上面フランジ24と下面フランジ25との間にゴム層21と補強層22からなる積層ゴム構造体20を設けた下部防振部とを上下に重ねて結合した微振動用防振装置が記載されている。
また、第3頁右上欄第13行?18行には、上部防振部と下部防振部について、「第1図について説明した微振動用防振装置によれば、防振ゴム構造体10のゴム11は主として上下方向の微振動に対する防振効果を出す部分であり、積層ゴム構造体20のゴム層21及び補強層22から成る積層部は主として水平方向の微振動に対する防振効果を出す部分であり」と記載されている。
さらに、第3頁左下欄第14?末行には、「実用的な構造体としては、上部防振部(本実施例では防振ゴム構造体)10の上面フランジ12に防振装置の側面を被うカバ-18を取付けることにより、挨や異物の侵入を防止したり、地震時など水平方向変位が過大になった時の挫屈等による損傷を防止するストッパとしての機能を持たせることができる。」と記載されている。

刊行物2には、第3図及び第4頁14行?第5頁第4行に、構造体の振動減衰装置において、支持台5に受け止め部材8を設置し、受け止め部材8の底部8aに配置された複数個のバネ部材10で支持される可動部材9を設け、該可動部材の外周には衝突面部9aを有して、この衝突面部9aと受け止め部材8の内周との間に緩衝弾性体17が取り付けられることが記載されている。
また、第6頁第14行?第7頁第2行に、この緩衝弾性体17の機能に関して「まず地震入力に対して床4を支持している弾性体6と摩擦ダンパ7のばね部材10が水平方向に変形しだし、可動部材9の衝突面9aが緩衝弾性体17を圧縮する。可動部材9の水平方向の変位が増加し緩衝弾性体17が圧縮されると徐々に緩衝弾性体17のばね力が増加し、それにつれて可動部材9の水平方向の加速度が減少し、受け止め部材8に衝突する時の衝撃を減少させる。」と記載されている。

刊行物3には、免震ビルの下部構造において、下部構造体4と上部構造体5の間に積層ゴム支承7を設け、下部構造体の擁壁2と上部構造体の犬走り8との間に弾性部材10を設けることが記載されている。

3.当審の判断
刊行物1の第1図に記載の実施例において、本願考案における仕切り板に相当する下部防振部の上面フランジ24の周縁部には、定められた間隔を隔てた位置にカバー18が設けられており、カバー18は、上面フランジ24が当接するストッパとしての機能を有するから、本願考案における突起部に対応している。
しかしながら、このカバー18は、地震時など水平方向変位が過大になった時に座屈等による損傷を防止するストッパとして機能するものであって、上面フランジ24が過大変位時にカバー18に当接するまでは水平方向の相対移動が許容されている。したがってカバー18は、本願考案のように上部防振部の上下フランジの相対移動を上下方向のみとするために、上部防振部の上面フランジ14と下部防振部の上面フランジ24との水平方向の相対移動を拘束するものではない。
また、刊行物2に記載の緩衝弾性体17も、可動部材9の水平方向変位が増加した際の受け止め部材8に衝突する時の衝撃を減少させるもので、受け止め部材8と可動部材9との水平方向の相対移動を拘束するものではない。 さらに、刊行物3に記載の弾性体10も下部構造体の擁壁2と上部構造体の犬走り8との水平方向の相対移動を拘束する機能を有しない。
してみると、刊行物1?3にはいずれにも、本願考案における「突起部と前記仕切板の周縁部との間にはブッシュが介装されてなり、該ブッシュにより前記上部取付板と下部取付板のいずれか他方と前記仕切板との上下方向の相対移動が許容されかつそれらの水平方向の相対移動は拘束される構造となっていること」が記載されてなく、示唆もされていない。
そして、本願考案は上記構成を具備することにより、「上部取付板と下部取付板のいずれか他方と仕切板とは上下方向にのみ相対移動して水平方向の相対移動は拘束され、したがって上下振動吸収部としてのゴムパッドは上下方向にのみ変形して水平方向には変形せず、それ故に、上下方向の振動をゴムパッドにより効率的に吸収することができ、かつ水平方向の振動を水平振動吸収部に確実に伝達してそこで効率的に吸収することができる。」という明細書に記載された、引用刊行物からは予測し得ない効果を奏する。

4.むすび
以上のとおり、本願考案は刊行物1?3に記載されたものとすることができないばかりでなく、刊行物1?3に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものともすることができないので、本願考案は実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないとした原審の判断は妥当でない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-02-12 
結審通知日 2002-02-19 
審決日 2002-05-14 
出願番号 実願平5-39852 
審決分類 U 1 8・ 121- WY (F16F)
最終処分 成立    
前審関与審査官 藤原 直欣  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 船越 巧子
常盤 務
考案の名称 免防振装置  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 渡邊 隆  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  
代理人 志賀 正武  

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