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審決分類 審判 一部無効 発明同一 無効とする。(申立て全部成立) G01N
管理番号 1061346
審判番号 無効2001-35387  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-08-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-08-31 
確定日 2002-06-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第2086925号実用新案「光励起表面プラズマ振動共鳴を利用したセンサヘッド」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第2086925号の請求項1から3に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 [1]手続きの経緯、本件考案
本件実用新案登録第2086925号の請求項1?3に係る考案は、平成1年3月8日に出願され、平成7年11月6日に設定登録されたものであって、実用新案登録請求の範囲の請求項1?3に記載された次のとおりのものと認める。(以下、本件考案1?3という。)
【請求項1】
気体または液体の被検物を接触させる、光により表面プラズマ振動共鳴を励起できる金属薄膜を被着した面を有する高屈折率のプリズムと、
点光源と、
この点光源からの光束を前記プリズムの前記金属薄膜被着面に臨界角以上の入射角で収束させる光束収束手段と、
前記プリズムの金属薄膜被着面で全反射した光束を受けこれの強度をフーリエ変換するレンズと、
このレンズからの光束の分布を検出する1次元光電素子アレイと、
少なくとも前記のプリズムと光束収束手段とレンズとを支持するとともに、内部を暗黒に保持できる暗箱体とからなる、
光励起表面プラズマ振動共鳴を利用したセンサヘッド。
【請求項2】
前記点光源は発光ダイオードであって、この発光ダイオードからの光束をP偏光に変える偏光子と前記1次元光電素子アレイに向う光束の偏光を検出する検光子とをさらに備えた請求項1記載の光励起表面プラズマ振動共鳴を利用したセンサヘッド。
【請求項3】
前記点光源は半導体レーザである請求項1記載の光励起表面プラズマ振動共鳴を利用したセンサヘッド。

[2]請求人の主張「本件考案1および3は、特願昭63-207977号(特開平1-138443号;甲第1号証)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、本件考案2は甲第2号証(第34回応用物理学関係連合講演会講演予稿集(1987年(昭和62年)3月28日発行)に記載された技術常識を加味した上記先願明細書又は図面に記載された発明と実質的に同一であり、本件考案1?3はいずれも実用新案法第3条の2に規定する登録要件を欠如し、無効にされるべきである。」について、被請求人に答弁書を提出する機会を与えたが、何らの応答もなかった。以下、請求人の主張について検討する。

[3]先願明細書又は図面(甲第1号証)には、次の技術的事項が記載、図示されており、それらによれば先願明細書又は図面に記載されたセンサは光励起表面プラズマ振動共鳴を利用したセンサヘッドと認められる。

ア.表面プラズモン(金属の境界に存在する自由電子のプラズマ振動)共鳴による光の屈折率の変化に基づいて抗体と抗原との相互作用を検出する生物学的センサであり、その既知の装置がプリズム8の一面に金属フイルムを設けた実験的な設備として、Fig.1,2に図示され明細書で説明されている。(甲第1号証3頁左上欄?同頁右上欄)

イ.レンズ11(半球形または半円柱形)、その戴頭面に金または銀の金属被膜19が被覆されたガラス支持プレートまたはスライド16を、屈折率調和流体29を介して密着させること。((同4頁右下欄?7頁右上欄およびFig.3,4)

ウ.レーザダイオードコリメータで構成され得る光源、ヘリウム・ネオンレーザ光又は赤外線ダイオードレーザを含む適当な電磁放射線源(同4頁右下欄7?12行、5頁左下欄5?12行)

エ.上記光源、放射線源からの光をスライド16上の反射膜19の境界上にて収束する所定角度の扇形からなる収斂光に形成する(入射側)焦点レンズ14。(同4頁右下欄12?5頁左上欄8行、5頁左下欄12?20行)

オ.ダイオード列、電荷結合素子(CCD)または同様の画像素子から構成され、金属被膜19から全反射したビーム32を横切る位置の光線の強度の変化を指示する電気信号を発生させる検出器18。(同5頁左上欄15?右上欄13行、5頁右下欄1?7行)

カ.検出器18の列における遊離反射を減少し、ビーム32が検出器18の表面に直角に当るようにする(受光側)焦点レンズ31。(同箇所)

[4]本件考案1と先願明細書又は図面(甲第1号証)に記載された発明とを比較すると、
a.本件考案1では、プリズムの断面形状を三角形に限定していないから半球形状、半円柱形状のプリズムに相当する部材も包含し、甲第1号証のFig.2には断面三角形のプリズムを使用する例も記載されているから、甲第1号証に記載されたレンズ11(半球形または半円柱形)や断面三角形のプリズムは本件考案1のプリズムに相当する。

b.甲第1号証に記載された光源、電磁放射線源は、本件考案1の点光源に相当する。

c.甲第1号証に記載された入射側焦点レンズは光源からの光をプリズム(レンズ)における金属薄膜の境界にて収束する収斂光にするものであり、本件考案1の光束収束手段に相当する。
なお、甲第1号証には、入射側焦点レンズ14に関して「金属薄膜被着面に臨界角以上の入射角」とすることについては明記されていないが、表面プラズモン共鳴が発生するには入射角が境界面に対して臨界角以上でなければならないことは、当該技術分野において技術常識である。

d.甲第1号証に記載された検出器は、本件考案1の1次元光電素子に相当する。

e.本件考案1では、「フーリエ変換するレンズ」と限定しているが、全反射して扇状に広がった光束を、1次元光電素子の受光可能幅に収束させるための部材である通常の「レンズ」の機能しか有していないので、甲第1号証に記載された受光側焦点レンズは、本件考案1のレンズに相当する。

f.甲第1号証には、センサの収容空間を暗黒に保持することが特に明記されていないが、金属被膜からの反射光の光量変化を高精度に検出するものである以上、外乱光の影響を遮断する必要から内部を暗黒にすることは当然に行う技術常識であって、この点にも甲第1号証に記載された装置と本件考案1とに相違はない。

そうすると、本件考案1は、先願明細書又は図面(甲第1号証)に記載された発明と同一である。

[5]本件考案2、3について、
甲第1号証の第2頁左下欄第8?第12行には、表面プラズモン共鳴においては金属皮膜に照射する光としてP偏光ビームを使用することが、また、甲第2号証の598頁(28p-XZF-3;光励起表面プラズマ振動を利用した化学センサ)には、レーザダイオードからの光を偏光板によりP偏光成分だけとして光励起表面プラズマ振動を利用した化学センサに使用することが記載されており、本件考案2も甲第1号証に実質的に記載されている。

本件考案3は、点光源を半導体レーザとしたもので、その点についても上記のように甲第1号証に記載されている。

[6]むすび
以上のとおり、本件考案1?3は、先願明細書又は図面(特願昭63-207977号(特開平1-138443号;甲第1号証))の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と実質的に同一であり、その発明者および出願人と本件考案1?3の発明者および出願人とは同一ではないと認められるから、本件考案1?3に係る実用新案登録は実用新案法第3条の2の規定に違反してされたものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-04-16 
結審通知日 2002-04-19 
審決日 2002-05-07 
出願番号 実願平1-26347 
審決分類 U 1 122・ 161- Z (G01N)
最終処分 成立    
前審関与審査官 梅田 幸秀平井 良憲  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 橋場 健治
後藤 千恵子
登録日 1995-11-06 
登録番号 実用新案登録第2086925号(U2086925) 
考案の名称 光励起表面プラズマ振動共鳴を利用したセンサヘッド  
代理人 伊藤 研一  

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