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審決分類 審判    E03F
管理番号 1062941
審判番号 新実用審判1998-40015  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-08-21 
確定日 2002-07-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第3031035号実用新案「側溝構造」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第3031035号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第一 手続の経緯、本件考案
本件登録実用新案第3031035号考案は、平成8年5月9日に出願され、平成8年8月28日に設定登録されたものである。
平成10年8月20日に審判請求がされ、平成11年1月18日に答弁書が提出されている。平成12年7月3日付けで無効理由が通知され、平成12年9月18日付けで意見書が提出され、ついで平成12年10月12日付けで被請求人より上申書が提出されている。さらに平成13年3月21日付けで再度の無効理由が通知され、平成13年6月1日付けで意見書が提出されている。
本件登録実用新案第3031035号の請求項1に係る考案は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「【請求項1】対向する側溝壁内面に形成された上部傾斜面部、該上部傾斜面部に連続して下方に延設された湾曲面部および該湾曲面部に連続して下方に延設された下部垂直面部を有する側溝躯体と、
上記上部傾斜面部に対し微小間隔を有して対峙される蓋上部傾斜面部、該蓋上部傾斜面部に連続して下方に延設されて、上記湾曲面部に対し線接触しながら対峙される蓋湾曲面部および該蓋湾曲面部に連続して下方に延設されて、上記下部垂直面部に微小間隔を有して対峙される蓋下部垂直面部を有する側溝蓋とを備えたことを特徴とする側溝構造。」(以下、「本件考案」と言う。)
なお、請求項2は、平成9年11月25日付け実用新案登録訂正書により、削除されている。

第二 請求人の主張
一 無効理由について
請求人は、甲第1号証から甲第92号証、そして検甲第1号証及び検甲第2号証を提出して、登録第3031035号実用新案の請求項1に係る考案についての登録を無効とする旨主張している。しかし、それらの理由すべてが必ずしも明確でなく、しかもその中には、実用新案法37条に規定されていない無効理由についての主張もされている。請求人が主張している理由のうち、実用新案法37条に規定されている無効理由に該当し、しかもその内容が明確であるものは、概略、以下のとおりとなる。

二 理由1について(同請求書2頁7行?3頁12行参照)
本件考案は、検甲第1号証、甲第6?12号証、甲第19?21号証、甲第67号証、甲第71号証、甲第81-1号証及び甲第82号証によると、実用新案法3条1項1号の規定に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

三 理由2について(同3頁12?28行参照)
本件考案は、甲第44-1号証、甲第67、68号証及び甲第46?51号証を参考にすると、甲第1号証又は甲第2号証に記載された考案であり、実用新案法3条の2の規定に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

四 理由3について(同4頁15?19行参照)
本件考案は、甲第4号証によると、実用新案法3条1項1号の規定に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

五 理由4について(同4頁20?24行参照)
本件考案は、甲第5-1号証、又は甲第22号証によると、実用新案法3条1項2号の規定に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

六 理由5について(同4頁25?29行参照)
本件考案は、甲第23号証、又は甲第33号証によると、実用新案法3条1項3号の規定に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

七 理由6について(同5頁1?12行参照)
本件考案は、甲第46、47号証、又は甲第49,50号証によると、実用新案法3条1項3号の規定に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

八 理由7について(同6頁3?12行参照)
本件考案は、甲第37号証、甲第38-1号証及び甲第72号証によると、実用新案法3条1項1号の規定に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

九 理由8について(同6頁13?20行参照)
本件考案は、甲第37号証及び甲第38-1号証によると、実用新案法3条1項2号の規定に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

十 理由9について(同8頁8行?10頁22行参照)
本件考案は、検甲第2号証、甲第13?18-1号証、甲第24?32号証及び甲第67号証等によると、その登録が考案者でない者であってその考案について実用新案登録を受ける権利を承継しないものの実用新案出願に対してなされたものであり、実用新案法3条1項5号の規定に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

十一 理由10について(同12頁21?28行参照)
本件考案は、正常な流通や市場を乱し、公の秩序を害するおそれがあり、実用新案法4条の規定に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

なお提出された証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開平6-248688号公報
甲第2号証:特許第2514918号特許証
甲第3号証:登録実用新案第3031035号公報(本件考案)
甲第4号証:登録書の写し
甲第5ー1号証:特許第2514918号施工現場写真
甲第5ー2号証:同現場説明書
甲第6号証:平成7年9月21日付け岐阜新聞1面及びテレビ番組欄の写し
甲第7号証:NHK東海「ニュースウエーブ」(平成7年9月21日)で放送された内容の一部を示す写真
甲第8号証:NHK東海「ニュースウエーブ」(平成7年9月21日)で放送された内容の説明書
甲第9号証:平成7年10月20日付け岐阜新聞1面及びテレビ番組欄の写し
甲第10号証:NHK総合「NHKニュース、おはよう日本」の「ちょっとサイエンス」のコーナー(平成7年10月20日)で放送された内容の一部を示す写真
甲第11号証:NHK総合「NHKニュース、おはよう日本」の「ちょっとサイエンス」のコーナー(平成7年10月20日)で放送された内容の説明書
甲第12号証:確認書の写し
甲第13号証:側溝説明会のお知らせ等の文書の写し
甲第14号証:平成7年11月22日に開催された側溝説明会の状況を撮影した写真
甲第15号証:検甲第2号証のビデオ映像の内容の一部を示す写真
甲第16号証:検甲第2号証のビデオ映像の説明書
甲第17号証:同説明会での契約者の名簿
甲第18ー1?18-3号証:側溝の図面の写し3種類
甲第19号証:確認書の写し
甲第20号証:岐阜市宇佐南1丁目に設置の側溝躯体及び蓋の写真
甲第21号証:特許庁ホームページの写し
甲第22号証:側溝躯体及び蓋の写真
甲第23号証:「週刊ブロック通信」第1782号の写し
甲第24号証:側溝技術提供契約書の写し
甲第25号証:同写し
甲第26号証:甲第1号証発明の製造図面と計算書の写し
甲第27号証:説明図の写し
甲第28号証:確認書の写し
甲第29号証:側溝工業界準備委員会第1回会議議事録の写し
甲第30号証:同準備委員会第1回会議出席者の名簿
甲第31号証:被請求人作成図面の写し
甲第32号証:証明書の写し
甲第33号証:平成8年4月6日付け「THE KAMO JOURNAL」の写し
甲第34-1,34-2号証:側溝の図面の写し2種類
甲第35号証:カタログの写し
甲第36号証:請求書の写し
甲第37号証:証明書の写し
甲第38-1号証:証明書の写し
甲第38-2号証:幸手市東3丁目現場写真及び説明書
甲第39号証:カタログの写し
甲第40号証:登録実用新案第3026678号公報
甲第41号証:特開平9-158302号公報
甲第42号証:登録実用新案第3026938号公報
甲第43号証:「積算資料」平成9年1月号(第881号)、前付-11の写し
甲第44-1号証:甲第2号証発明実施品と被請求人製品の各写真
甲第44-2号証:被請求人製品の現場施工写真
甲第45号証:カタログの写し
甲第46号証:「積算資料」平成8年8月号(第873号)、話題の商品の写し
甲第47号証:同拡大したものの写し
甲第48号証:「あさひ銀総研レポート」1996年12月号26頁の写し
甲第49号証:「積算資料臨時増刊」平成9年1月号(第882号)、126頁の写し
甲第50号証:「建設物価」平成9年7月号(第861号)、42頁の写し
甲第51号証:「コンクリートプレキャスト&プレハブ工法」1997年11月30日発行、Vol.5増補改定版、250,256頁の写し
甲第52号証:特開平9-158303号公報
甲第53号証:「建設物価」平成9年3月号(第856号)、中付44頁の写し
甲第54号証:カタログの写し
甲第55号証:登録第1015721号意匠登録証
甲第56号証:同意匠登録出願の控の写し
甲第57号証:商標登録第4121733号、及び商標登録第4121734号公報
甲第58号証:商標登録第4121733号の商標登録出願の控の写し
甲第59号証:商標登録第4121734号の商標登録出願の控の写し
甲第60号証:「’98建設資材データベース」平成10年1月号臨時増刊(第907号)、株式会社アマハの項の写し
甲第61号証:財団法人経済調査会からの書簡の写し
甲第62号証:株式会社アマハの登記簿謄本の写し
甲第63号証:岐阜地裁平成9年(ワ)85号不当利得返還事件訴状等の写し
甲第64号証:特許権侵害差止等請求事件の訴状の一部の写し
甲第65号証:被請求人による書簡の写し
甲第66号証:被請求人による書簡の写し
甲第67号証:証明書の写し
甲第68号証:被請求人側溝蓋の製造工程を示す説明図
甲第69号証:「最新実用鉄鋼重量便覧」発行所、産業新聞社、昭和49年1月1日発行、150,151頁の写し
甲第70号証:JIS A5345道路用鉄筋コンクリート側溝の写し
甲第71号証:「広辞苑(第3版)」1361頁「線」の項の写し
甲第72号証:山田森一著「特許・商標・著作権の法律知識」発行所、株式会社日本実業出版社、1993年2月20日発行、73頁の写し
甲第73号証:平成8年異議第70054号の異議決定
甲第74号証:株式会社宝機材のホームページの写し
甲第75号証:同社カタログの写し
甲第76号証:平成10年6月2日発行の日刊建設新聞の写し
甲第77号証:「積算資料」平成10年7月号(第920号)、前付28頁の写し
甲第78号証:「週刊ブロック通信」第1921号の写し
甲第79号証:登録実用新案第3047851号公報
甲第81-1号証:田村公總著「特許・発明のすべてがわかる本」発行所、総合法令出版株式会社、1995年11月29日新訂版発行、46?49頁の写し
甲第81-2号証:「三省堂国語辞典第4版」367頁「公序」の項の写し
甲第82号証:平成9年審判第40021号の審決
甲第83号証:実願昭60-94700号(実開昭62-3885号)のマイクロフィルム
甲第84号証:実願昭56-165763号(実開昭58-72286号)のマイクロフィルム
甲第85号証:岐阜地裁平成9年(ヨ)108号被請求人準備書面(八)の写し
甲第86号証:被請求人陳述書(四)の写し
甲第87号証:岐阜地裁平成9年(ヨ)108号被請求人準備書面(九)の写し
甲第88号証:甲第2号証発明実施品と被請求人権利実施品の各写真
甲第89号証:被請求人代理人による報告書の写し
甲第90号証:「コンクリートプレキャスト&プレハブ工法」1997年11月30日発行、Vol.5増補改定版、260,261頁の写し
甲第91-1号証:フィリピン共和国著作権登録証明書の写し
甲第91-2号証:宣誓書等の写し
甲第91-3号証:メモ等の写し
甲第91-4号証:翻訳証明書の写し
甲第92号証:実願昭61-110036号(実開昭63-18590号)のマイクロフィルム、及び実公昭48-1546号公報
検甲第1号証:NHK東海「ニュースウエーブ」(平成7年9月21日)で放送された内容、及びNHK総合「NHKニュース、おはよう日本」の「ちょっとサイエンス」のコーナー(平成7年10月20日)で放送された内容を記録したビデオテープ
検甲第2号証:甲第13号証?甲第18-1号証に示す説明会(平成7年11月22日)の内容を記録したビデオテープ

第三 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、特に、以下におけるような反論を行っている。
検甲第1号証の側溝構造は、たとえ線で当たっているとしても、2本線で接すると共に、クサビ効果が期待できない上側で主に当たっているに過ぎない。又、本放送においては、角部上で線接触させる必要性及びそれによるクサビ効果について示唆する内容すらない(答弁書7頁11?14行)。
被請求人が出願前に甲第37号証の図面を古谷建設に提示したのは、市道1108号線道路改良工事(幸手市東3丁目地内)で側溝を設置するべく、幸手市役所の承認を得るためである。又、乙第14号証の納品受領書の日付が平成8年5月17日であることから分かるように、側溝構造の製造元である被請求人から、この工事の施工業者である古谷建設へ製品が納品されたのは出願日(平成8年5月9日)より後のことである。即ち、側溝を設置して実用に供するのは出願後であるが、出願前に承認を得る必要があることから、甲第37号証の図面を古谷建設に提示したものであるが、乙第15号証及び乙第16号証に示すように、被請求人と古谷建設の両者は、極めて緊密で特殊な関係と位置づけられ、しかも、乙第15号証に示すように、その際、古谷建設は甲第37号証の図面について、内容を第三者に漏洩しない秘密保持義務を有していたのである。したがって、甲第37号証の図面を古谷建設が出願前に閲覧しても、それは守秘義務を負う者が内容を知り得たに過ぎないので、かかる守秘義務を負う者が知ったところで、その内容が公知とはならない(平成12年9月18日付け意見書2頁15行?3頁3行)。
本件考案の「線接触」とは、「角部上での線状の接触」という意味であるものと考えます(平成12年10月12日付け上申書3頁20,21行)。本件考案の「線接触」とは、「クサビ効果」という作用効果を達成するための「角部上での線状の接触」という意味である。よって、単に側溝躯体の湾曲面部の中央部付近で接している公知考案とまったく異なり、本来相違点として認定されるべきものである(平成13年6月1日付け意見書2頁13?16行)。本件考案においては、蓋湾曲面部と躯体湾曲面部の湾曲度が相違することから、側溝蓋を側溝躯体に嵌挿すると微小間隙が生じる。そして、側溝蓋に荷重がかかると、この微小間隙に側溝蓋が沈下することにより、側溝蓋の湾曲部分を側溝躯体の湾曲部分に対し接触点で食い込ませて、側溝蓋を蟹挟みのようにしてしっかりと固定する。これにより、ガタツキによる騒音を防止するものである(甲第3号証段落番号【0014】及び【0016】)。即ち、本件考案は、側溝蓋を側溝躯体の蓋受部に載置した際の両者の安定性を高める従来技術と異なり、「クサビ効果」という作用効果を発揮することによって、側溝蓋に荷重が加わった際の両者の安定性を高めることにより、騒音を防止するものである(同意見書6頁11?19行)。
再度の無効理由通知で引用された引用例記載考案に対して、引用例の作用効果である「横ずれによる離脱の防止」と、本件考案の作用効果である「跳ね上がり防止」とは、まったく異質な効果であることから、かかる作用効果を奏するための構成である引用例記載の「脚」及び「内壁部」が、本件考案の蓋下部垂直面部及び側溝躯体の下部垂直面部に該当しないことは明らかである。しかも、引用例には、単に「横ずれ」による離脱の防止の点しか記載されておらず、「跳ね上がり」が生じる原因、それを解決する必要性、及びそれを解決する手段についてはまったく触れられてもいないことも明らかである。したがって、引用例記載の考案の「脚」及び「内壁部」は、本件考案の蓋下部垂直面部及び側溝躯体の下部垂直面部に該当せず、これを該当すると判断している上記無効理由通知における上記認定判断は誤りである(同意見書10頁13?22行)。
被請求人は、答弁書及び意見書において、以下の乙号証を提出している。
乙第1号証:検甲第1号証で放送された内容を示す写真
乙第2号証:平成9年審判第40021号の審決
乙第3号証:説明図の写し
乙第4号証:本件考案の実用新案技術評価書
乙第5号証:被請求人製品図面の写し
乙第6号証:説明書の写し
乙第7号証:証明書の写し
乙第8号証:甲第18-1号証図面の拡大図
乙第9号証:甲第18-2号証図面の拡大図
乙第10号証:説明書の写し
乙第11号証:調査結果説明書の写し
乙第12号証:説明図の写し
乙第13号証:「週刊ブロック通信」第1886号の写し
乙第14号証:受領書
乙第15号証:証明書
乙第16号証:証明書
乙第17号証:「情報公開と文書管理」平成11年9月20日九版発行、発行所、株式会社ぎょうせい、116,117頁の写し
乙第18号証:見解書の写し
乙第19号証:実験説明書の写し
乙第20号証:平成9年審判第40021号の審決の11頁

第四 平成13年3月21日付け無効理由通知について
一 公知の技術的事項について
(一)甲第6号証?甲第12号証、及び検甲第1号証
請求人が提出した検甲第1号証(ビデオテープ)には、平成7年9月21日にNHK総合テレビ[東海]「ニュースウエーブ」で放送された内容、及び平成7年10月20日にNHK総合テレビ[全国]「NHKニュース おはよう日本」の「ちょっとサイエンス」のコーナーで放送された内容が記録されており、これら記録された映像及び音声は、 甲第6号証ないし甲第12号証により、本件考案の出願前に日本国内において公然知られたことが認められる。そしてそれらの映像及び音声によると、特に
1 「蓋と蓋受が接する両端の面を丸くしますと、蓋は丸い曲面のどこか一点だけで蓋受に受止められて固定されます。他の部分が接触しないため、音が出ません。」(「ニュースウエーブ」での記者のレポート)、
2 「同じようにカーボン紙をとってみますと、蓋が線で支えられていたことが分かりました。・・・・側溝の曲面が仮に正確な面でなくとも、この接している30度の部分のどこかで接していれば、この蓋が安定するということが分かりました。」(「おはよう日本列島」での記者のレポート)、
3 「曲面の場合は、作った、できた曲面が例えば少し変わったとしても、曲面のこの線で受けてますので、どこかで接することになります。」(「おはよう日本列島」での中部大学教授の説明)
が記録されており、
「対向する側溝壁内面に形成された上部傾斜面部、該上部傾斜面部に連続して下方に延設された湾曲面部および該湾曲面部に連続して下方に延設された下部垂直面部を有する側溝躯体と、上記上部傾斜面部に対し微小間隔を有して対峙される蓋上部傾斜面部、該蓋上部傾斜面部に連続して下方に延設されて、上記湾曲面部に対し線接触しながら対峙される蓋湾曲面部を有する側溝蓋とを備えた側溝構造」(以下、「公知考案」と言う。)
が開示されているものと認める。

(二)実願昭58-169075号(実開昭60-76185号)のマイクロフィルム
上記引用例の明細書によると、
1 「このゴム材の被覆体16は、一般のゴム材を用いて鋼板挿入用の溝17と脚18とを設けた断面L字型に成形されている。」(同明細書3頁9?11行)、
2 「第3図は、この考案の側溝蓋の装着状態を示し、側溝蓋10のゴム材の被覆体16を側溝20の側壁上に載せ、脚18を側溝20の内壁面側に差し込んで横ずれによる離脱を防止している。」(同4頁14?17行)、
3 第1?3図。
が記載されており、これらによると、
「対向する側溝壁上面に載置部が、内面に内壁部が形成された側溝躯体と、上記載置部に載置される両側端部と上記内壁部に差し込まれる脚部を有する側溝蓋とを備えた側溝構造」(以下、「引用例記載考案」と言う。)
が開示されているものと認める。

二 当審での検討
(一)本件考案と公知考案との対比
本件考案と公知考案とを対比すると、両者は次の点で一致する。
「対向する側溝壁内面に形成された上部傾斜面部、該上部傾斜面部に連続して下方に延設された湾曲面部および該湾曲面部に連続して下方に延設された下部垂直面部を有する側溝躯体と、上記上部傾斜面部に対し微小間隔を有して対峙される蓋上部傾斜面部、該蓋上部傾斜面部に連続して下方に延設されて、上記湾曲面部に対し線接触しながら対峙される蓋湾曲面部を有する側溝蓋とを備えた側溝構造」
そして、両者は、下記の相違点で相違している。
相違点
本件考案においては、側溝蓋が、その蓋湾曲面部に連続して下方に延設されて、側溝躯体の下部垂直面部に微小間隔を有して対峙される蓋下部垂直面部を有するのに対し、公知考案の側溝蓋においては、その蓋湾曲面部に連続して下方にこのような蓋下部垂直面部を有しない点。

(二)相違点に対する検討
上記引用例によると、「対向する側溝壁上面に載置部が、内面に内壁部が形成された側溝躯体と、上記載置部に載置される両側端部と上記内壁部に差し込まれる脚を有する側溝蓋とを備えた側溝構造」が、本件考案の出願前に公知であり、脚と内壁部により側溝蓋の横ずれによる離脱を防止しているものである。
この「側溝蓋の横ずれによる離脱を防止している」との作用の点に着目して、引用例記載考案と本件考案とを対比検討すると、引用例記載考案における側溝躯体の内壁部及び側溝蓋の脚(その側部)は、本件考案の側溝躯体の下部垂直面部及び蓋下部垂直面部に相当するものである。
してみると、公知考案におけるような、上部傾斜面部、湾曲面部及び下部垂直面部を有する側溝躯体と、蓋上部傾斜面部及び蓋湾曲面部を有する側溝蓋とを備えた側溝構造において、上記引用例記載考案におけるような脚の構成を採用して、本件考案におけるように構成するようなことは、公知考案及び引用例記載考案がいずれも側溝に関するものであり、しかも公知考案に引用例記載考案を適用することに特段の阻害する要因もないことからすると、格別の困難性を見出すことはできず、当業者が必要に応じてきわめて容易になし得た程度のことである。
さらに、全体として、本件考案によってもたらされる効果も、公知考案及び引用例記載考案のそれぞれのものから、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、格別なものとは言えない。
したがって、本件考案は、公知考案及び引用例記載考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

第五 被請求人の意見書に対して
平成13年3月21日付け無効理由通知に対する平成13年6月1日付け意見書において、被請求人は、本件考案と公知考案との相違点に関連した本件考案の技術的意義等について、さらに引用例記載考案の認定とその認定に基く進歩性の判断について、概略以下の主張を行っている。
すなわち、本件考案の「線接触」とは、「クサビ効果」という作用効果を達成するための「角部上での線状の接触」という意味である。よって、単に側溝躯体の湾曲面部の中央部付近で接している公知考案とまったく異なり、本来相違点として認定されるべきものである(同意見書2頁13?16行)。本件考案においては、蓋湾曲面部と躯体湾曲面部の湾曲度が相違することから、側溝蓋を側溝躯体に嵌挿すると微小間隙が生じる。そして、側溝蓋に荷重がかかると、この微小間隙に側溝蓋が沈下することにより、側溝蓋の湾曲部分を側溝躯体の湾曲部分に対し接触点で食い込ませて、側溝蓋を蟹挟みのようにしてしっかりと固定する。これにより、ガタツキによる騒音を防止するものである(本件考案明細書段落番号【0014】及び【0016】)。すなわち、本件考案は、側溝蓋を側溝躯体の蓋受部に載置した際の両者の安定性を高める従来技術と異なり、「クサビ効果」という作用効果を発揮することによって、側溝蓋に荷重が加わった際の両者の安定性を高めることにより、騒音を防止するものである(同意見書6頁11?19行)。
さらに、引用例記載考案に対して、引用例の作用効果である「横ずれによる離脱の防止」と、本件考案の作用効果である「跳ね上がり防止」とは、まったく異質な効果であることから、かかる作用効果を奏するための構成である引用例記載の「脚」及び「内壁部」が、本件考案の蓋下部垂直面部及び側溝躯体の下部垂直面部に該当しないことは明らかである。しかも、引用例には、単に「横ずれ」による離脱の防止の点しか記載されておらず、「跳ね上がり」が生じる原因、それを解決する必要性、及びそれを解決する手段についてはまったく触れられてもいないことも明らかである。したがって、引用例記載の考案の「脚」及び「内壁部」は、本件考案の蓋下部垂直面部及び側溝躯体の下部垂直面部に該当せず、これを該当すると判断している無効理由通知における上記認定判断は誤りである(同意見書10頁13?22行)。
まず、本件考案の技術的意義等について検討すると、本件考案はその実用新案登録請求の範囲請求項1に記載されたとおりのものであって、請求項に記載されていない技術的事項は直接的にはその考案の内容と関係のない事項である。請求項中に「線接触」の記載はされているが、その接触が「角部上での線状の接触」を意味するとの点は、請求項中に言及すらされてなく、請求項の記載に基かない事項である。請求項の記載によれば、「湾曲面部に対し線接触しながら対峙される」ものであり、請求項記載の考案としてはこの要件を充足するものでありさえすればよく、被請求人が主張する、「本件考案の『線接触』とは、『クサビ効果』という作用効果を達成するための『角部上での線状の接触』という意味である。」とか、「本件考案においては、蓋湾曲面部と躯体湾曲面部の湾曲度が相違することから、側溝蓋を側溝躯体に嵌挿すると微小間隙が生じる。そして、側溝蓋に荷重がかかると、この微小間隙に側溝蓋が沈下することにより、側溝蓋の湾曲部分を側溝躯体の湾曲部分に対し接触点で食い込ませて、側溝蓋を蟹挟みのようにしてしっかりと固定する。これにより、ガタツキによる騒音を防止するものである。本件考案は、側溝蓋を側溝躯体の蓋受部に載置した際の両者の安定性を高める従来技術と異なり、『クサビ効果』という作用効果を発揮することによって、側溝蓋に荷重が加わった際の両者の安定性を高めることにより、騒音を防止するものである。」の点は、その請求項に記載の考案とは直接何ら関係のないものであって不適切と言わざるを得ない。
引用例記載考案について検討すると、本件考案の出願前に脚と内壁部により側溝蓋の横ずれによる離脱を防止している点が公知の技術手段であり、この作用の点に着目すると、引用例記載考案における側溝躯体の内壁部及び側溝蓋の脚(その側部)は、本件考案の側溝躯体の下部垂直面部及び蓋下部垂直面部に相当するものである。してみると、公知考案におけるような、上部傾斜面部、湾曲面部及び下部垂直面部を有する側溝躯体と、蓋上部傾斜面部及び蓋湾曲面部を有する側溝蓋とを備えた側溝構造において、上記引用例記載考案におけるような脚の構成を採用して、本件考案におけるように構成するようなことは、公知考案及び引用例記載考案がいずれも側溝に関するものであり、しかも公知考案に引用例記載考案を適用することに特段の阻害する要因もないことからすると、格別の困難性を見出すことはできず、当業者が必要に応じてきわめて容易になし得た程度のことである。そして、本件考案によってもたらされる跳ね上がり防止の効果も、上記の公知考案及び引用例記載考案のそれぞれのものから、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、格別なものとは言えないものである。
以上の検討によれば、被請求人の主張は何れも採用できない。

第六 結び
以上、本件考案の登録は、実用新案法37条1項2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-07-18 
結審通知日 2001-07-25 
審決日 2001-08-15 
出願番号 実願平8-4926 
審決分類 U 1 111・ 121- Z (E03F)
最終処分 成立  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 中田 誠
鈴木 公子
登録日 1996-08-28 
登録番号 実用新案登録第3031035号(U3031035) 
考案の名称 側溝構造  
代理人 小島 清路  
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