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審決分類 審判 全部申し立て   E03D
管理番号 1062949
異議申立番号 異議1997-74744  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2002-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-10-02 
確定日 2001-06-20 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2531341号「衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2531341号の実用新案登録を取り消す。
理由 第一 手続の経緯
実用新案登録第2531341号の請求項1に係る考案は、平成5年2月25日に実用新案登録出願され、平成9年1月10日に登録がなされ、その後、斉藤和満より実用新案登録異議の申立てがなされた。そして、取消理由通知がなされ、その指定期間内である、平成10年7月21日に訂正請求がされた後、訂正拒絶理由が通知され、それに対して、平成11年1月5日に手続補正書が提出されたものである。
第二 訂正請求の内容
実用新案登録権者が求めている訂正請求の内容は、以下のとおりである。
一 実用新案登録請求の範囲
実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、実用新案登録請求の範囲を以下のとおりに訂正する(訂正1)。
「衛生洗浄装置の操作部において、
該操作部の多数の機能選択スイッチを配置した操作面を、ワイヤレスリモコン操作機の操作面と兼用して上記衛生洗浄装置の本体側と着脱自在に構成し、
該本体側に設けた受光部と、便座に着座している使用者の前方において操作する際の上記リモコン操作機の下端側に設けた発光部とを光結合し、また上記リモコン操作機を上記本体の操作部位置に嵌合した際にも上記発光部と上記受光部とを光結合し得るように構成したことを特徴とする衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置。」
二 考案の詳細な説明
明りょうでない記載の釈明を目的として、考案の詳細な説明を以下(訂正2?6)のとおりに訂正する。
1 訂正2:明細書段落番号【0006】を、
「本考案は、上記問題に鑑みて創案されたものであり、本体の操作部を廃止した衛生洗浄装置のワイヤレスリモコン操作機において、該リモコン操作機を本体の操作部の構造との兼用構造として生産コストの引き下げを図ると共に、便座に着座している使用者の体格に関係なく操作性が良好になり、またリモコン操作機の操作位置にも影響されることがなく自由に操作することができる衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置を提供することを目的とするものである。」
と訂正する。
2 訂正3:明細書段落番号【0007】を、
「【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本考案に係る衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置は、衛生洗浄装置の操作部において、該操作部の多数の機能選択スイッチを配置した操作面を、ワイヤレスリモコン操作機の操作面と兼用して上記衛生洗浄装置の本体側と着脱自在に構成し、該本体側に設けた受光部と、便座に着座している使用者の前方において操作する際の上記リモコン操作機の下端部に設けた発光部とを光結合し、また上記リモコン操作機を上記本体の操作部位置に嵌合した際にも上記発光部と上記受光部とを光結合し得るように構成したことを要旨とするものである。」と訂正する。
3 訂正4:明細書段落番号【0008】を、
「【作用】
上記構成によれば、リモコン操作機を本体側の操作部位置にセットした状態で使用することができ、また本体から取り外しても使用することができる。リモコン操作機と本体側に内蔵したコントローラは、リモコン操作機側に設けた発光部と本体側に設けた受光部間が光結合してあるため、リモコン操作機が本体側から離脱されても操作面の機能選択スイッチに従って駆動する。しかも、リモコン操作機はその下端部に発光部が設けられているため、トイレ内において使用者がこのリモコン操作機を手で持っている際、または壁面に取り付けて使用する際のいずれでも、リモコン操作機の下端部が使用者の近傍にある衛生洗浄装置の受光部へ向いているので、その発光部と受光部とを確実に光結合させることができ、衛生洗浄装置を容易に操作することができる。更に、従来のように便器の脇に設けられた操作部に比較して、便座に着座している使用者が身体を捩ることなく、また誤操作することなく、使用者の前方においてリモコン操作機を自由に操作することができ、非常に快適に衛生洗浄装置を使用することができる。」と訂正する。
4 訂正5:明細書段落番号【0012】を、
「8は、リモコン操作機3の先端、即ち便座に着座している使用者の前方において操作する際のリモコン操作機3の下端部に構成した赤外線発光部であり、操作面6から選択入力されて形成された特定の信号を発光する赤外線発光素子9を内蔵してある。また10は、本体2のリモコン嵌合段部4近傍に構成した赤外線受光部であり、上記リモコン操作機3の赤外線発光素子9からの光信号を受光する赤外線受光素子11を備え、赤外線発光素子9と赤外線受光素子11を該赤外線受光部10の受光窓12にプリズム13を固設し、衛生洗浄装置1の上方の広範囲な方向からのリモコン操作機3の光信号を確実に受光すると共に、リモコン操作機3をリモコン嵌合段部4に嵌合したときはリモコン操作機3の赤外線発光素子9からの光信号をプリズム13で屈折させて赤外線受光素子11へ確実に入力し得るように構成した、第一の赤外線信号通信系Aを構成したものである。特に、赤外線発光素子9がリモコン操作機3の下端部に設けられているため、トイレ内において使用者がこのリモコン操作機3を手で持っている際、またはこのリモコン操作機3を壁面に取り付けて使用する際のいずれであっても、リモコン操作機3の下端部が使用者の近傍にある衛生洗浄装置1の赤外線受光部10へ向くことになる。従って、リモコン操作機3の赤外線発光素子9からの光信号を赤外線受光部10へ確実に受光させることができる。
なお、赤外線受光部10は、図2に示すように、プリズム13に代えて反射鏡26を受光窓12に固設したものであってもよい。」と訂正する。
5 訂正6:明細書段落番号【0021】を
「【考案の効果】
本考案に係る衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置は、上記の如くリモコン操作機を本体側操作部位置に着脱する兼用構造にしたことにより、本体側の操作部の構造が不要になり、生産コストを引き下げることができる。特にリモコン操作機を衛生洗浄装置の本体側のみならず、便座に着座している使用者が手に持ったり、または前方の壁面に取り付けるといった所望の位置で使用することができるため、操作性が良好になる。しかも、使用者の前方においてリモコン操作機を操作することができるため、便器の脇に設けられた操作部に向かい使用者が身体を捩って操作する従来のような構成に比較して、非常に快適に衛生洗浄装置を使用することができる。」と訂正する。
第三 平成11年1月5日付け手続補正書の内容
平成11年1月5日付け手続補正書は、平成10年7月21日付け訂正請求書及び訂正明細書を、以下のとおりに補正するというものである。
一 実用新案登録請求の範囲
実用新案登録請求の範囲を以下のとおりに補正する(補正イ)。
「【請求項1】 衛生洗浄装置の操作部において、該操作部の多数の機能選択スイッチを配置した操作面を、ワイヤレスリモコン操作機の操作面と兼用して上記衛生洗浄装置の本体側と着脱自在に構成し、
便座に着座している使用者自身の近傍にある上記操作部に向けて操作し得るように、上記リモコン操作機の下端部に発光部を設け、該発光部と上記本体側に設けた受光部とを光結合し、
また、上記リモコン操作機を上記本体の操作部位置に嵌合した状態でも操作し得るように、上記発光部と上記受光部とを光結合し得るように構成したことを特徴とする衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置。」
二 考案の詳細な説明
1 補正ロ:明細書段落番号【0007】を、
「【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本考案に係る衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置は、衛生洗浄装置の操作部において、該操作部の多数の機能選択スイッチを配置した操作面を、ワイヤレスリモコン操作機の操作面と兼用して上記衛生洗浄装置の本体側と着脱自在に構成し、便座に着座している使用者自身の近傍にある上記操作部に向けて操作し得るように、上記リモコン操作機の下端部に発光部を設け、該発光部と上記本体側に設けた受光部とを光結合し、また、上記リモコン操作機を上記本体の操作部位置に嵌合した状態でも操作し得るように、上記発光部と上記受光部とを光結合し得るように構成したことを要旨とするものである。」と補正する。
2 補正ハ:明細書段落番号【0008】を、
「【作用】
上記構成によれば、リモコン操作機を衛生洗浄装置の本体側の操作部位置に嵌合した状態で使用することができ、また本体側から取り外しても使用することができる。リモコン操作機と本体側に内蔵したコントローラは、リモコン操作機側に設けた発光部と本体側に設けた受光部間が光結合してあるため、リモコン操作機が本体側から離脱されても操作面の機能選択スイッチに従って駆動する。
しかも、リモコン操作機はその下端部に発光部が設けられているため、トイレ内において使用者がこのリモコン操作機を手で持っている際、更に壁面に取り付けて使用する際のいずれでも、リモコン操作機の下端部が使用者自身の近傍にある操作部(受光部)へ向いているので、その発光部と受光部とを確実に光結合させることができ、衛生洗浄装置を容易に操作することができる。
特に、従来のように便器の脇に設けられた操作部に比較して、便座に着座している使用者が身体を捩ることなく、また誤操作することなく、使用者の前方においてリモコン操作機を自由に操作することができ、非常に快適に衛生洗浄装置を使用することができる。」と補正する。
3 補正ニ:明細書段落番号【0009】を、
「リモコン操作機を本体側操作部位置に着脱する兼用構造であるため、従来のような衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置の欠点であった体格の異なる使用者、及び小児や介護を必要とする使用者に対し、衛生洗浄装置の本体での操作、リモコン操作機の手操作又はリモコン操作機を壁に掛けた状態での操作を任意に選択使用することができ、衛生洗浄装置のように座って使用する機器の操作性が格段に向上する、又本体側操作部の構造が不要になり、構造を簡素化することができる。」と補正する。
第四 訂正請求に対する補正の適否について
実用新案権者が行った、訂正請求に対する補正イは、訂正請求書に添付した明細書又は図面を基準とし、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するものであり、又、訂正請求書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の補正であり、しかも、訂正請求書に添付した明細書における実用新案登録請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。
さらに、同補正ロは、上記の実用新案登録請求の範囲の補正に対応してなされたものであり、同補正ハ及びニは明確でない語句、記載等を訂正するものであり、何れも、訂正請求書に添付した明細書又は図面を基準とし、明りょうでない記載の釈明に該当するものであって、訂正請求書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の補正であり、しかも、訂正請求書に添付した明細書における実用新案登録請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。
以上、補正イ?ニは何れも、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則9条2項の規定により準用される、特許法120条の4第3項において準用する同法131条2項の規定に適合するものであり、これらの補正を認める。
第五 訂正の適否について
一 訂正明細書に記載された考案
補正イにより補正された訂正請求によって、訂正された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載は下記のとおりとなる。
「【請求項1】 衛生洗浄装置の操作部において、該操作部の多数の機能選択スイッチを配置した操作面を、ワイヤレスリモコン操作機の操作面と兼用して上記衛生洗浄装置の本体側と着脱自在に構成し、
便座に着座している使用者自身の近傍にある上記操作部に向けて操作し得るように、上記リモコン操作機の下端部に発光部を設け、該発光部と上記本体側に設けた受光部とを光結合し、
また、上記リモコン操作機を上記本体の操作部位置に嵌合した状態でも操作し得るように、上記発光部と上記受光部とを光結合し得るように構成したことを特徴とする衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置。」(以下、「訂正考案」と言う。)
二 引用刊行物記載の発明
当審で通知した訂正拒絶理由通知において、下記の刊行物1及び2が引用されている。
1 刊行物1:特開平2-66231号公報
刊行物1には、
▲1▼「本発明は、人体局部洗浄用の衛生洗浄装置に係り、特に光式ワイヤレスリモコン送信器(以下単に「リモコン送信器」という)により遠隔操作される衛生洗浄装置・・・に関するものである。」(同公報1頁下段右欄10?15行)
▲2▼「第1図は衛生洗浄装置の外観を示す斜視図であり、1は便器2の上端後部に固設した衛生洗浄装置本体であり、左右両側に袖部3及び4を具備する構造に成る。該衛生洗浄装置本体1の中央部には洗浄水を噴出するための洗浄水噴射ノズル5と、温風を吐出するための温風吐出口6が設けられると共に、左側袖部3の上面前端に、肛門洗浄スイッチ8,ビデ洗浄スイッチ9、揺動洗浄スイッチ10、局部乾燥スイッチ11、ノズル位置調節スイッチ12、温風温度調節及び水勢調節スイッチ13及び止スイッチ14から成る操作部7を構成し、かつ右側袖部4には後述するリモコン送信器16からの光信号を受信するための操作信号受信部15を設けてある。また、上記衛生洗浄装置本体1には便器2の上縁に載設するように起伏する便座17と、該便座17の上面を覆うように起伏する便蓋18をそれぞれヒンジを介して枢着してある。
上記リモコン送信器16は、器筺19の端部に所定キャリア周波数を持つ操作信号を光信号として発射する発光窓20を構成すると共に、操作面21上に肛門洗浄スイッチ22,ビデ洗浄スイッチ23、揺動洗浄スイッチ24,局部乾燥スイッチ25,ノズル位置調節スイッチ26、温風温度調節及び水勢調節スイッチ27及び止スイッチ28から成る前記衛生洗浄装置本体1の操作部7に対応するスイッチ群を構成してある。」(同公報3頁上段左欄11行?右欄17行)
▲3▼第1図
の記載があり、上記▲1▼?▲3▼の記載からみて、
「衛生洗浄装置の操作部において、該操作部の多数の機能選択スイッチを配置した操作面を、リモコン送信器の操作面とし、
上記リモコン送信器の端部に発光窓を設け、該発光窓と衛生洗浄装置の本体側に設けた受信部とを光結合した衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置」(以下、「刊行物1記載の考案1」と言う。)
が記載されているものと認める。
2 刊行物2:実公平4-19911号公報
刊行物2には、
▲1▼「本考案はテレビジョン受像機、扇風機等遠隔制御装置にて制御される電気機器に関する。詳しくは機器本体に収納された遠隔制御装置を使用に際し本体より取り外し易い遠隔制御装置の収納機構に関する。」(同公報1頁1欄11?15行)
▲2▼「38は透光板、39は受光部、40は表示灯、41と42は回路基板である。
一方遠隔制御装置10は制御信号送出部43の他に複数の押しボタン44を備える。
これら押しボタン44は遠隔制御装置の表面で収納部の水平支持面に対応する部位に配列されているので、遠隔制御装置を機器本体に収納した状態で各ボタンを押圧操作しても遠隔制御装置は収納部内に留まり浮動しない」(同公報2頁3欄39行?4欄8行)
▲3▼第1?5図
の記載があり、さらに、刊行物2には明示の記載はないが、この種の電気機器の遠隔制御装置において、電気機器の本体側に設けた受光部と、遠隔制御装置に設けた発光部とを光結合する点は、当然に備わっている技術的事項であることを考慮すると、上記▲1▼?▲3▼の記載等からみて、
「テレビジョン受像機、扇風機等の電気機器の操作部において、該操作部の複数の押しボタンを配列した操作面を、遠隔制御装置の操作面と兼用して上記電気機器の本体側と着脱自在に構成し、
上記遠隔制御装置の端部に送出部を設け、該送出部と上記本体側に設ける受光部とを光結合し、
また、上記遠隔制御装置を上記本体の操作部位置に収納した状態でも操作し得るように、上記送出部と上記受光部とを光結合し得るように構成した電気機器における遠隔制御の装置」(以下、「刊行物2記載の考案1」と言う。)
が記載されているものと認める。
三 対比・判断
1 本件訂正考案と刊行物1記載の考案1との対比
本件訂正考案と刊行物1記載の考案1とを対比すると、刊行物1記載の考案1における、「リモコン送信器」、「発光窓」、「受信部」は、本件訂正考案における、「ワイヤレスリモコン操作機」、「発光部」、「受光部」に相当し、両者は、「衛生洗浄装置の操作部において、該操作部の多数の機能選択スイッチを配置した操作面を、ワイヤレスリモコン操作機の操作面とし、上記リモコン操作機の端部に発光部を設け、該発光部と衛生洗浄装置の本体側に設けた受光部とを光結合した衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置」である点で一致し、下記の点で相違している。
相違点1
本件訂正考案では、そのワイヤレスリモコン操作機を、「衛生洗浄装置の本体側と着脱自在に構成し」、「またリモコン操作機を本体の操作部位置に嵌合した状態でも操作し得るように、発光部と受光部とを光結合し得るように構成し」て、衛生洗浄装置の操作面を、ワイヤレスリモコン操作機の操作面と「兼用して」いるのに対し、刊行物1記載の考案1の、リモコン送信器により遠隔操作される衛生洗浄装置では、このような構成を備えていない点。
相違点2
本件訂正考案では、「便座に着座している使用者自信の近傍にある操作部に向けて操作し得るように、リモコン操作機の下端部に発光部を設け」ているのに対し、刊行物1記載の考案では、「リモコン送信器の端部に発光窓を設け」ているものの、特に「下端部」との限定がない点。
2 相違点に対する判断
(1) 相違点1について
上記刊行物2記載の考案1によると、「テレビジョン受像機、扇風機等の電気機器の操作部において、該操作部の複数の押しボタンを配列した操作面を、遠隔制御装置の操作面と兼用して上記電気機器の本体側と着脱自在に構成し、上記遠隔制御装置の端部に送出部を設け、該送出部と上記本体側に設ける受光部とを光結合し、また、上記遠隔制御装置を上記本体の操作部位置に収納した状態でも操作し得るように、上記送出部と上記受光部とを光結合し得るように構成した電気機器における遠隔制御の装置」が開示されている。
してみると、刊行物1記載の考案1における衛生洗浄装置の「リモコン送信器(ワイヤレスリモコン操作機)」を、刊行物2記載の考案1に開示されているように、遠隔制御装置(ワイヤレスリモコン操作機)を本体の操作部位置に収納、嵌合した状態でも操作し得るように、送出部(発光部)と受光部とを光結合し得るように構成し、装置の操作面を、遠隔制御装置(ワイヤレスリモコン操作機)の操作面と兼用するように構成することに格別の困難性はなく、このようなことは当業者がきわめて容易になし得た程度のことである。
(2) 相違点2について
前記の刊行物1によると、「リモコン送信器16は、器筺19の端部に所定キャリア周波数を持つ操作信号を光信号として発射する発光窓20を構成する」との記載(同公報3頁上段右欄9?11行)があり、第1図によると、リモコン送信器の上端部に発光窓を設けることが記載され、又、刊行物2によると、明細書中に明示の記載はないが、第1?5図によると、遠隔制御装置の上端部に送出部を設けることが記載され、いずれも「リモコン送信器の端部に発光窓を設け」ているものの、特に「下端部」との限定はない。
しかしながら、リモコン送信器の発光窓なり遠隔制御装置の送出部(ワイヤレスリモコン操作機の発光部)を、リモコン送信器とか遠隔制御装置の上端部に設けるか、あるいはその下端部に設けるかは、適宜に選択し得る設計的事項に過ぎない事項であり、特に発光窓なり送出部(発光部)を下端部に設け、本件訂正考案におけるように構成するようなことは当業者がきわめて容易になし得た程度のことである。
3 まとめ
全体として、本件訂正考案によってもたらされる効果も、刊行物1記載の考案1及び刊行物2記載の考案1から、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、顕著なものとは言えない。
したがって、本件訂正考案は、刊行物1記載の考案1及び刊行物2記載の考案1に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
四 訂正の適否
以上によると、補正された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、実用新案法3条2項の規定により実用新案出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、この訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則9条2項の規定により準用される、同附則10条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第3項で準用する同法126条4項の規定に適合しないので、この訂正は認められない。
第六 実用新案登録異議申立てについて
一 本件考案
本件考案は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る、下記のとおりのものと認める。
「【請求項1】衛生洗浄装置の操作部において、該操作部の多数の機能選択スイッチを配置した操作面を、ワイヤレスリモコン操作機の操作面と兼用して本体側と着脱自在に構成すると共に、該リモコン操作機側に設けた発光部と本体側に設けた受光部間を光結合したことを特徴とする衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置。」(以下、「本件考案」と言う。)
二 引用刊行物記載の考案
当審で通知した平成10年5月7日付け取消理由通知書で引用した刊行物1には、
「衛生洗浄装置の操作部において、該操作部の多数の機能選択スイッチを配置した操作面を、リモコン送信器の操作面とし、該リモコン送信器側に設けた発光窓と本体側に設けた受信部間を光結合した衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置」(以下、「刊行物1記載の考案2」と言う。)が、
そして、刊行物2には、
「テレビジョン受像機、扇風機等の電気機器の操作部において、該操作部の複数の押しボタンを配列した操作面を、遠隔制御装置の操作面と兼用して本体側と着脱自在に構成すると共に、該遠隔制御装置に設けた送出部と本体側に設けた受光部間を光結合した電気機器における遠隔制御の装置」(以下、「刊行物2記載の考案2」と言う。)が記載されているものと認める。
三 対比・判断
1 本件考案と刊行物1記載の考案2との対比
本件考案と、刊行物1記載の考案2とを対比すると、両者は、下記の相違点を除いて、その余の点で一致している。
相違点
本件考案では、そのワイヤレスリモコン操作機を、「本体側と着脱自在に構成し」て、衛生洗浄装置の操作面を、ワイヤレスリモコン操作機の操作面と「兼用して」いるのに対し、刊行物1記載の考案2の、リモコン送信器により遠隔操作される衛生洗浄装置では、このような構成を備えていない点。
2 相違点に対する判断
上記刊行物2記載の考案2によると、「テレビジョン受像機、扇風機等の電気機器の操作部において、該操作部の複数の押しボタンを配列した操作面を、遠隔制御装置の操作面と兼用して本体側と着脱自在に構成すると共に、該遠隔制御装置に設けた送出部と本体側に設けた受光部間を光結合した電気機器における遠隔制御の装置」が記載されている。
本件考案は、上記刊行物1記載の考案2におけるリモコン送信器により遠隔操作される衛生洗浄装置において、その「リモコン送信器(ワイヤレスリモコン操作機)」として、上記刊行物2記載の考案2に開示されているような遠隔制御の装置、すなわち、機器の操作部の操作面を、遠隔制御装置(ワイヤレスリモコン操作機)の操作面と兼用して本体側と着脱自在に構成すると共に、遠隔制御装置(ワイヤレスリモコン操作機)に設けた送出部と本体側に設けた受光部間を光結合するような遠隔制御の装置を採用して、本件考案におけるように構成したものに相当するが、このようなことは、格別の困難性を伴うことなく、当業者がきわめて容易になし得た程度のことである。
3 まとめ
全体として、本件考案によってもたらされる効果も、刊行物1記載の考案2及び刊行物2記載の考案2から、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、顕著なものとは言えない。
したがって、本件考案は、刊行物1記載の考案2及び刊行物2記載の考案2に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
第七 むすび
以上のとおりであるから、本件実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則9条7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)3条1項及び2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-01-07 
出願番号 実願平5-12259 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (E03D)
最終処分 取消    
前審関与審査官 西田 秀彦  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 鈴木 公子
小野 忠悦
登録日 1997-01-10 
登録番号 実用登録第2531341号(U2531341) 
権利者 小糸工業株式会社
神奈川県横浜市戸塚区前田町100番地
考案の名称 衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置  
代理人 武政 善昭  
代理人 前田 和男  

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