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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) E03C
管理番号 1062951
判定請求番号 判定2002-60035  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2002-09-27 
種別 判定 
判定請求日 2002-03-20 
確定日 2002-07-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第2144914号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「排水栓用作動具」は、登録第2144914号実用新案の技術的範囲に属する。
理由 第1 判定請求人の請求の趣旨

判定請求人は、判定請求書に添付したイ号図面ならびにその説明書に示す丸一株式会社製の「トーキー用ワイヤー式ポップアップ式排水栓」は、実用新案登録第2144914号考案の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 本件考案

実用新案登録第2144914号の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、次のとおりのものである。
「栓蓋の下部に固定される支持軸を案内筒内に上下動自在に支持すると共に、前記案内筒内には、支持軸に固定される固定リングと、支持軸の周囲を回転可能な回転リングと、案内筒内に形成されたガイド部とからなるスラストロック機構を内蔵し、該スラストロック機構によって支持軸をその上下動経路の一端側でロックし次にこのロックを解除する交互的な連続上下動を可能とする排水栓用作動具において、上記スラストロック機構における回転リングの内周に、支持軸外側に遊嵌される金属製スリーブを一体に備えてなることを特徴とする排水栓用作動具。」
本件考案は次のとおりに分説することができる。
A 栓蓋の下部に固定される支持軸を案内筒内に上下動自在に支持すると共に、
B 前記案内筒内には、支持軸に固定される固定リングと、支持軸の周囲を回転可能な回転リングと、案内筒内に形成されたガイド部とからなるスラストロック機構を内蔵し、
C 該スラストロック機構によって支持軸をその上下動経路の一端側でロックし次にこのロックを解除する交互的な連続上下動を可能とする
D 排水栓用作動具において、
E 上記スラストロック機構における回転リングの内周に、支持軸外側に遊嵌される金属製スリーブを一体に備えてなることを特徴とする
F 排水栓用作動具。
(以下、本件考案の構成要件AないしFという。)。

第3 イ号物件の特定

1.請求人の主張
請求人は、イ号物件は、イ号図面及びその説明書に記述したとおり、次の構成を備えるものであると主張している。
A’ 栓蓋の下部に固定されるヘアーキャッチャー支軸を間接的に押上げる支持軸が案内筒内に上下動自在に支持されると共に、前記案内筒内には、その支持軸に固定される固定リングと、支持軸の周囲を回転可能な回転リングと、案内筒内に形成されたガイド部とからなるスラストロック機構を内蔵し、該スラストロック機構によって支持軸をその上下動経路の一端側でロックし次にこのロックを解除する交互的な連続上下動を可能とする排水栓用作動具において、
B’ 上記スラストロック機構における回転リングの内周に、支持軸外側に遊嵌される金属製スリーブを一体に備えてなる
C’ ことを特徴とする排水栓用作動具である。
2.被請求人の主張
被請求人は、請求人が提出したイ号図面が、被請求人の製造販売にかかる遠隔操作式の排水栓装置「トーキー用ワイヤ式ポップアップ式排水栓のバックハイチーズ530」「新W(P)530」をほぼ正確に図解したものであると認めており(平成14年6月11日付け答弁書の手続補正書(以下、「答弁書」という。)第2頁第2?4行)、イ号物件をどのように特定すべきかについては、特に意見を述べていない。
なお、被請求人は、ロ号図面とその説明書を提出し、本件考案とロ号図面に係る排水栓装置の相違について縷々主張しているが、この相違点についての主張は、イ号物件の特定とは直接関連するものではない。
3.当審によるイ号物件の特定
イ号図面及びその説明書によれば、イ号物件は、次のとおりの構成を具備するものと認められる。
a 栓蓋の下部に固定されるヘアーキャッチャー支軸を間接的に押上げる支持軸が案内筒内に上下動自在に支持されると共に、
b 前記案内筒内には、支持軸に固定される固定リングと、支持軸の周囲を回転可能な回転リングと、案内筒内に形成されたガイド部とからなるスラストロック機構を内蔵し、
c 該スラストロック機構によって支持軸をその上下動経路の一端側でロックし次にこのロックを解除する交互的な連続上下動を可能とする
d 排水栓用作動具において、
e 上記スラストロック機構における回転リングの内周に、支持軸外側に遊嵌される金属製スリーブを一体に備えてなることを特徴とする
f 排水栓用作動具。
(以下、イ号物件の構成aないしfという。)。
なお、被請求人は、「栓蓋の下部に固定される支持軸」を、イ号図面とその説明ならびに請求理由においては「ヘアキャッチャー支軸(101)」としたり、「プランジャ(7b)」とすべき部材を「支持軸」と称することは、容認できない旨主張する。また、被請求人の提出した乙第2,3号証及び乙第5ないし18号証によれば、この種の排水栓装置において「支持軸」は、「栓蓋の下部に固定される支持軸」を指す技術用語として一般化していて、しばしば用いられていることがわかる。しかしながら、被請求人の提出した乙第4号証(被請求人の出願に係る公開公報)には、イ号物件と同様の「遠隔操作式排水栓装置」に係る発明が記載されているところ、その、段落【0021】の記載及び図1?5を参照すると、本件考案の「栓蓋」に相当する「弁(1a)」の下部に固定される「(栓)弁軸(1b)」を、ケーシング部(13)内にスラストロック機構を内蔵した押上部の支持軸(6)(弁の下部に固定されていない)の、スラストロック機構の作用による上下動によって、上下動させ、弁による排水口の開閉を行うことが記載されていることが認められ、これによれば被請求人自身が、「栓蓋の下部に固定される支持軸」を、「(栓)弁軸(1b)」としたり、「プランジャ(7b)」とすべきとする部材を「支持軸」と称していることが明らかである。
したがって、被請求人の主張は、根拠あるものとすることができないから、イ号物件は、被請求人の主張にかかわらず、上記のように特定する。

第4 本件考案とイ号物件との対比・判断

1.構成要件BないしFについて
イ号物件が、本件考案の構成要件BないしFを充足することは、明らかである。
2.構成要件Aについて
イ号物件は、本件考案の構成要件Aを文言上充足していない。すなわち、イ号物件における、スラストロック機構を内蔵する案内筒内に上下動自在に支持される支持軸は、栓蓋の下部に直接固定される支持軸ではない(栓蓋の下部に固定されるヘアーキャッチャー支軸を介している)点で相違する。
なお、被請求人は、答弁書第2頁第15行?第5頁第14行において、本件考案とロ号図面との構成の相違及び本件考案とイ号物件の技術的比較を縷々主張しているが、いずれも、イ号物件の特定にあたり、支持軸を栓蓋の下部に固定されるヘアーキャッチャー支軸とした上での主張であるので、採用できない。
3.均等論について
請求人は、本件考案とイ号物件とは、栓蓋の押上げを、本件考案が栓蓋の下部に固定される支持軸で行うのに対し、イ号物件がヘアーキャッチャー支軸を介した支持軸で行う点で一応相違するが、両者は均等の関係にあるので、結局、本件考案とイ号物件とは、実質的同一であると、主張している。
そこで、本件において、上記相違する部分があるにもかかわらず、イ号物件が本件考案の構成と均等なものとして、その技術的範囲に属するということができるかどうかを、最高裁平成6年(オ)第1083号、平成10年2月24日第三小法廷判決(民集52巻1号113頁)を参照して、検討する。
〔1〕本質的部分について
本件考案は、明細書の段落【0005】「【考案が解決しようとする課題】しかし乍ら上記した従来の作動具によれば、回転リングが合成樹脂製であることからその自重が比較的軽くなる。また上記案内筒は上端開口部分に蓋体を接着一体化せしめると共に支持軸挿通部分にシール材を配設してその内部の水密性を保持するようになっているが、長期の使用に伴って内部に水かすが付着する。よって、前述した回転リングの自重落下による回転が不確かになる結果、上記支持軸のロック及びそのロック解除、即ち、栓蓋を開栓状態でロックし次にこのロックを解除する交互的な連続動作が確実になされなくなる虞れがあった。」、段落【0006】「本考案はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、回転リングの自重落下による回転が確実に行われるようにして、栓蓋の開栓状態ロック及びそのロック解除の交互的な連続動作をよりスムーズ且つ確実に行える、信頼性の高い排水栓用作動具を安価に提供することにある。」、段落【0008】「【作用】以上のような構成とした回転リングを用いた場合、合成樹脂のみからなる従来のリングに比して回転リングの自重が増し、支持軸の上下動に伴う回転リングの自重落下,回転がよりスムーズになされるようになる結果、支持軸をその上下動経路の一端側でロックし次にこのロックを解除する交互的な連続上下動がより確実且つスムーズに行われるようになる。また、回転リングの外周部は従来と同様に合成樹脂製としたので、その外周面に設ける鋸歯状歯,突部等の成形が容易でり、回転リングを金属材料で一体成形する場合に比べ成形が容易でコストも安価になる。」、段落【0019】「このように、内周部分を金属製スリーブ111 によって構成した回転リング11によれば、樹脂のみからなる従来の回転リングに比して自重が増し、支持軸3の上下動に伴う回転リング11の自重落下,回転がよりスムーズに行われる結果、支持軸3をその上下動経路の一端側でロックし次にこのロックを解除する交互的な連続上下動がより確実且つスムーズに行われるようになる。」の記載を参照すると、その本質的部分は、スラストロック機構における回転リングの内周に、支持軸外側に遊嵌される金属製スリーブを一体に備えてなるという構成部分にあるものと認められ、スラストロック機構を内蔵する案内筒内に上下動自在に支持される支持軸が、栓蓋の下部に直接固定される支持軸であるか、栓蓋の下部に固定されるヘアーキャッチャー支軸を介しているかは、本件考案の本質的部分をなす構成であるとはいえない。
〔2〕置換可能性について
本件考案の目的及び作用効果は、上記〔1〕における、本件明細書の記載のとおりである。
一方、イ号物件においては、案内筒1内で支持軸2が上昇して回転リング22を案内筒1内のガイド部32に係止させてロックさせると同時にその支持軸2でヘアーキャッチャー支軸を押上げて開栓し、また、閉栓に際しては、金属製スリーブ42で重量を増して回転リング22の回転がスムーズになされて、自重落下し、支持軸2をその上下動経路の一端側でロックし次にロックを解除する交互的な連続上下動をより確実且つスムーズに行うものであって、本件考案と同一の作用効果を奏し、同一の目的を達成している。
そうすると、上記相違する構成部分をイ号物件におけるものと置き換えても、本件考案の目的を達成することができ、これと同一の作用効果を奏するものである。
〔3〕置換容易性について
本件考案出願前に、排水栓装置の栓蓋の押上げを、栓蓋の下部に固定されるヘアーキャッチャー支軸を介して行う、スラストロック機構を内蔵した案内筒内に上下動自在に支持される支持軸は、実願平2-10877号(実開平3-103371号)のマイクロフィルム(請求人提出の甲第7号証)、実願平2-39387号(実開平4-1273号)のマイクロフィルム(請求人提出の甲第8号証)等にもあるように周知技術にすぎず、これを考慮すれば、本件考案の上記相違する構成部分をイ号物件におけるものと置き換えことは、イ号の実施の時点において当業者が、容易に想到することができたものである。
〔4〕公知技術と同一、又は同技術から容易推考性について
被請求人は、『イ号物件の排水栓装置が、回転リング9の内周に金属製スリーブ13を一体に備えている点に関して、「栓蓋の下部に固定した支持軸を案内筒内に挿通して、案内筒内の支持軸に固定リングを固定し、周囲に回転リングを備え、両リングと案内筒内のガイド部とによってスラストロック機構をを構成した」スラストロック機構付き排水栓装置において、前記「回転リングの内周にスリーブを一体に備える」ことは甲第1号証が最先ではなく、本件実用新案の出願前の公知例として乙第1号証(実開昭63-79789号公報)がある。・・・乙第1号証の水栓金具は、図面第1図、第2図に示されるように、栓蓋の下部に固定される支持軸(スピンドル(7))を案内筒(筒状の外殻体(6))内に上下動自在に支持すると共に、前記案内筒(外殻体(6))内には、支持軸に固定される固定リング12と、支持軸の周囲を回転可能な回転リング10と、案内筒内に形成されたガイド部(鋸歯状歯(15))とからなるスラストロック機構(ラチェット機構(A))を内蔵し、該スラストロック機構(A)における回転リング10の内周に、支持軸外側に遊嵌されるスリーブ(明細書中、図面中に説明、符号なし)を一体に備えている。2.上記スリーブは、明細書中では触れられていないが、第1図、第2図に図示されているように、案内筒(外殻体(6))内で支持軸(スピンドル(7))の外側に遊嵌しており、回転リング10の内周に一体に備えられている。ただ、このスリーブについては上記のように明細書中にも図面中にも符号がなく、説明もされていないので金属製であるのか否かは不明である。ただ、同上図面にある回転リング10の断面を示す右上がりのハッチングとは別角度でハッチングされていることから回転リング10とは別の素材であることが判る。また、閉栓状態と開栓状態を示す第1図と第2図のスリーブの位置を比較すると、回転リング10と一体に上下動するスリーブであることが判る。したがって、スラストロック機構を備えた排水栓作動具において、回転リングの内周に一体に、支持軸外側に遊嵌されるスリーブを備えることは本件実用新案の出願前に公知であるといえる。3.以上のように、本件実用新案(甲第1号証:実公平8-6139号公報)と乙第1号証(実開昭63-79789号公報)の水栓装置との差異は、スリーブが金属製であるか否かの1点に尽きている。ここで、乙第1号証にあるスリーブを回転リング10と異質の金属製にすることは、必要に応じて当業者に容易に想到し得る事項であると言える。』と、主張している(上記手続補正書第5頁第15行?第6頁第26行)。
しかしながら、乙第1号証をみても、その第1,2図に回転リング10の内側に回転リング10と一体に上下動する別部材が描かれているとは認められるが、明細書には何ら記載はなく、この別部材がスリーブであるか否かは不明であるし、例え、この別部材がスリーブであるとしても、乙第1号証に、本件考案のように、合成樹脂のみからなる従来のリングに比して回転リングの自重が増し、支持軸の上下動に伴う回転リングの自重落下、回転がよりスムーズになされるように、スラストロック機構における回転リングの内周に、支持軸外側に遊嵌される金属製スリーブを一体に備えてなる構成が記載されているとも、示唆されているともいえず、また、乙第1号証記載の考案から、上記の構成が容易に推考できたともいえない。
つまり、本件考案のように、合成樹脂のみからなる従来のリングに比して回転リングの自重が増し、支持軸の上下動に伴う回転リングの自重落下、回転がよりスムーズになされるように、スラストロック機構における回転リングの内周に、支持軸外側に遊嵌される金属製スリーブを一体に備えてなる構成を採用することは、本件考案の出願時において見られなかった技術である。また、本件考案の属する技術分野における当業者が、本件考案の出願時にこれを公知技術から容易に推考できたことを窺わせる証拠もない。
そうすると、上記の構成を採用するイ号物件が、本件考案の出願時における公知技術と同一又は、当業者がこれからその出願時に容易に推考できたものであるとすることはできない。
〔5〕意識的除外等の特段の事情について
本件考案の出願手続において、実用新案登録請求の範囲から意識的にイ号物件を除外するなどの、特段の事情は認められない。
〔6〕まとめ
以上によれば、イ号物件の構成aは、本件考案の構成要件Aと均等と認められる。
なお、被請求人は、本件考案は特許法第29条第2項に該当する等の無効理由がある旨主張するが、この点は、別途無効審判を請求し、その中で主張すべきものである。

第5 むすび

以上のとおりであるから、イ号物件は、本件考案の本件考案の技術的範囲に属するというべきである。
よって、結論のとおり判定する。


判定日 2002-07-09 
出願番号 実願平5-33350 
審決分類 U 1 2・ 1- YA (E03C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤田 年彦  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 中田 誠
鈴木 憲子
登録日 1996-11-28 
登録番号 実用新案登録第2144914号(U2144914) 
考案の名称 排水栓用作動具  
代理人 細井 貞行  
代理人 石渡 英房  
代理人 加藤 幸則  
代理人 長南 満輝男  
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