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審決分類 審判 全部無効 1項2号公然実施 無効とする。(申立て全部成立) B27F
審判 全部無効 1項1号公知 無効とする。(申立て全部成立) B27F
管理番号 1064503
審判番号 審判1994-21796  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-10-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1994-12-24 
確定日 2000-04-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第1972446号実用新案「面柄カツター」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第1972446号実用新案の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1手続の経緯
本件登録実用新案第1972446号に係わる考案(以下「本件考案」という。)は、昭和56年6月26日に実用新案登録出願され、平成3年4月3日に出願公告(実公平3ー15281号公報)がされた後、その登録は、平成5年6月25日に設定の登録がなされ、平成6年12月24日に、無効審判の請求がなされたものでる。
2本件考案の要旨認定
(1)明細書および図面の訂正にていて
被請求人は、平成9年10月24日付答弁書(第「6.(3)項」)において、被請求人提出に係る明細書及び図面を訂正するとしている。
しかるに、明細書または図面の訂正は、訂正の請求により行わなければならない(平成5年4月法律第26号附則第4条第2項により読み替えられる旧実用新案法第40条第2項)ところ、同答弁期間内に訂正の請求がなされなかったので、答弁書において主張された明細書及び図面の訂正はなかったとせざるを得ない。
したがって、本件考案の要旨は、願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりの「中心に軸の取付孔を設けた主体の外周に間隔的に刃体を突設し、該刃体の先端内側縁に側面平刃を、外側縁に予め組立てんとする桟材の表面に形成せんとする凹凸条に合致する形状の二枚・用の凹凸面と一枚・用の凹凸面との成形が出来る波形状の抱き縁成形刃を設け、且つこの抱き縁成形刃には側面平刃に対し平行する部分がなく、両刃の刃幅を先端から中心に及ぶに従って幅広く成形してなる面・カッター。」にあるものと認める。
3当事者の主張
(1)請求人の主張
請求人は、本件考案は、その出願前に日本国内において公然と知られると共に、公然実施をされたものであるから、実用新案法第3条第1項第1号および第2号の考案に該当し同項柱書きの規定に違反して実用新案登録を受けたものであり、同法第37条第1項第1号に該当し無効とされるべきものである、と主張し、その事実を立証するために甲第1号証?甲第35号証および資料1?3を提出すると共に、証人東城昭一及び国松厚雄の尋問を求めている。
(2)これに対し、被請求人は、答弁書並びに乙第1号証(被請求人から請求人に対する警告書)、乙第2号証(請求人の回答)、乙第3号証(被請求人から請求人に対する請求書)、乙第4号証(被請求人から請求人に対する督促状)、乙第5号証(請求人の回答)、乙第6号証?第8号証(兼房刃物工業株式会社の面・カッターのカタログ)を提出し、請求人の本件無効審判請求は何ら理由がなく、本件無効審判の請求は成り立たないと言うべきである旨主張している。
4当審の判断
(1)証人東城昭一が使用したカッターの構成
請求人が検甲第1号証として提出した、証人東城昭一が使用していたカッター(以下、「東城カッター」という。)の構成を検討する。
請求人は、東城カッターを表す図面として資料1を提出し、東城カッターを製造する際の元となった製作図面として資料2を提出している。
そして、東城カッターを検証すると、資料1に図示されたカッターは東城カッターを表した図面と認められ、資料2(兼房刃物工業株式会社、図面作成80年11月20日得意先名丸一商会と記載された特殊面・カッターの図面)は、得意先名欄に「丸一商会」と記載されており、東城証言から東城昭一は丸一商会から購入したのであるから、資料2は東城カッターの製作図面と認められる。
そして、東城カッターを資料1の図面に付された記号を用いて文言として表現すると、東城カッターは、
「中心に軸の取付孔(a)を設けた主体(b)の外周に間隔的に刃体(c)を突設し、該刃体の先端内側縁に側面平刃(d)を、外側縁に予め組立てんとする桟材の表面に形成せんとする凹凸条に合致する形状の波形状の抱き縁成形刃(e)を設け、且つこの抱き縁成形刃には側面平刃に対し平行する部分がなく、両刃の刃幅を先端から中心に及ぶに従って幅広く成形してなる面・カッタ」であるといえる。
(2)東城カッターの構成に対する被請求人の主張及びそれに対する検討
被請求人は、東城カッターの構成に対し、平成7年5月22日差出しの答弁書において、次のような主張をしている。
(イ)製作図面だけでは小さく、明瞭性を欠き、抱き縁成形刃に側面平刃に対し平行する部分がない面・カッターであるか否かの点は判然としないし、資料中には抱き縁成形刃に側面平刃に対して平行する部分がないようにすることの文言としての記載がない。
(ロ)そもそも請求人の面・カッターは、資料2記載の図面中左上部の切削使用方法を示した図面から明らかなように、抱き縁成形刃の全体を使用して(つまり深く使用して)二枚・用として使用するカッターである。これを一部使用して(つまり浅く使用して)一枚・用のカッターとして使用する方法は考えるまでもなく全くあり得ず、面・カッターの抱き縁成形刃には、切削された縦桟と横桟の嵌合を行った場合の交差部分の強度を充分保てるようにするために、刃体(カッター全体)の中心に最も近い部分に側面平刃に対して直角か又は直角に近いある程度深い角度を持たせた通常1.5mm以上の厚みを持たせた部分(平成7年5月22日差出しの答弁書添付の刃体側面図のAとBの部分参照)を設けることが必要とされているが、本件考案の構成は単一な成形面(例えば「ひょうたん面」)を二枚・用として使用し(これは上記Bの部分を具備している)、これに補助的な成形面を加えて一枚・用として使用する(この場合はAの部分を使用する)ものであり、したがって、本件カッターは一枚・、二枚・の兼用は可能だが、請求人のカッターはこのような兼用は不可能である旨主張している。(なお、抱き縁成形刃の全体を使用する場合は一枚・用として使用する場合であり、その一部を使用するのは二枚・用として使用する場合であるから、被請求人の上記主張には錯誤があると思われる。)
そこで、前記主張(イ)につき検討する。
資料2の製作図面は、大きいとはいえず、かつそれには抱き縁成形刃に側面平刃に対して平行する部分がない旨の文言としての記載はない。
しかし、製作図面である資料2には、文言としての記載はないものの、検証物たる東城カッターを見ると、抱き縁成形刃には側面平刃に対して平行する部分はなく、資料2の製作図面を見ても、抱き縁成形刃に側面平刃に対して平行する部分がないことは明らかである。
なお、東城カッターの刃先部と刃元部に側面平刃に対し平行に近い部分が存在する。
そこでこの点につきさらに検討すと、請求人の提出した検甲第2号証の1及び同2は、東城カッターを用いて加工した抱き縁を持つ桟材とかまち材の組み合わせであり、同検甲号証を見るに、刃先部と刃元部の側面平刃と平行に近い部分で削成された抱き縁とかまち材のひょうたん面との接合線には、カッターの側面平刃に対して平行する部分で切削されたため形成されたと認められる実質的な折れ線状段部が形成されているとは言えない。
してみれば、東城カッターの刃先部と刃元部に側面平刃に対し平行する部分が存在するとはいえない。
したがって、被請求人の前記主張(イ)は失当である。
次に、前記主張(ロ)につき検討する。
被請求人の主張(ロ)は、抱き縁には、「きちょう」を設けることが必須であるから、本件カッターには、二枚・用凹凸面を形成する場合にも一枚・用凹凸面を形成する場合にも「きちょう」が形成されるよう、二枚・用の凹凸面を形成する刃部と一枚・用の凹凸面を形成する刃部の境界部には側面平刃に対して直角又はそれに近い角度の段部(以下、「きちょう形成段部」という。)を設けることが前提である旨と解される。
しかし、・の抱き縁には、きちょうは必ずしも必要ではなく、面・カッターにきちょう形成用の段部が必須のものであるとも言えないことは、検甲第2号証の1および2(東城カッターによる一枚・と二枚・の加工例)、甲第18号証から明らかである。
更に、本件考案は、きちょう成形部を設けることを構成要件としていないから、本件考案はきちょう成形部を有するとはいえない。
したがって本件考案が、きちょう成形部を有する点で東城カッターとは相違するとはいえない。
以上のことから、被請求人の前記主張(ロ)も失当である。
(3)本件考案と東城カッターとの比較
東城カッターの抱き縁成形刃につき、検討するに、検甲第2号証の1および2(東城カッターを使用して製作した一枚・と二枚・の加工品)、甲第5号証No8?22、甲第6号証(一枚・と二枚・のセッティングを示した図)および証人東城昭一の証言から、証人東城昭一は東城カッターを、二枚・用の凹凸面の成形にも一枚・用の凹凸面の成形にも使用していたということができる。すなわち、東城カッターの抱き縁成形刃も、二枚・用の凹凸面と一枚・用の凹凸面との成形ができる波形状の抱き縁成形刃と認められる。
したがって、前記4.(1)で述べた東城カッターは、次の構成を有しているといえる。
「中心に軸の取付孔を設けた主体の外周に間隔的に刃体を突設し、該刃体の先端内側縁に側面平刃を、外側縁に予め組立てんとする桟材の表面に形成せんとする凹凸条に合致する形状の二枚・用の凹凸面と一枚・用の凹凸面との成形が出来る波形状の抱き縁成形刃を設け、且つこの抱き縁成形刃には側面平刃に対し平行する部分がなく、両刃の刃幅を先端から中心に及ぶに従って幅広く成形してなる面・カッタ」
そこで、本件考案に係るカッターと東城カッターとを比較すると両者は同一であると認める。
(4)東城カッターの公知性について
東城カッターが本件考案出願前に公知であることを証明するため請求人は証人東城昭一(以下、「証人」といいう。)の尋問を申請した。
そこで、当審において、同証人の証人尋問を平成8年9月18日(以下、「第1回証人尋問」という。)および平成8年11月28日(以下、「第2回証人尋問」という。)の2度にわたりおこなった。
証人は、第1回証人尋問において、昭和52年か53年に東城カッターを購入したと証言した後、昭和53年東京国際貿易センター東館において開催された全国建具展示会と住まいの表情展において、東城カッターと同様の曲線状抱き縁内側面(ひょうたん面)を持つカッターの存在を初めて知った後、有限会社丸一商会に注文したと証言した。
さらに、昭和53年に知って昭和55年に買ったという点につき、「混同していまして買った時期は定かでないんです。」と証言している。甲第3号証として提出された「ご質問書」の「昭和55年12月頃丸一商会より購入した」との記載につき、「昭和55年が記憶に正しいような気がします。」と証言している。
さらに、証人は、第2回証人尋問において、「前回調書第11項で、本件カッターを買ったのは昭和52年か53年と答えていますが、正しくは何年かということをその後調べましたか」という質問に対し「ええ」と答え、「正しくは何年だったんですか。」の質問に対し、「昭和55年12月です。」と証言し、その訂正理由として、「同業者の古林木工所が私の買った合間に買ったので、いつ頃買ったんですか聞きにいったところ昭和55年という話を聞き、私が間違えていました。」と証言している。
さらに、東京での展示会の後、検甲7号証のカッター(古林カッター)を見た上で本件カッターを買ったというのが正しいと証言している。
ところで、甲第25号証(兼房刃物工業所株式会社が作成した「6p254x4枚組面・カッター、得意先名丸一商会」の製作図面)、甲第26号証(「面ホゾカッターカネフサ254X10.5および254x5.5x6p」なる製品の納入に際し、丸一商会が古林木工所に対し発行した昭和55年7月5日付け納品書)、甲第27号証(カネフサ面ホゾカッター105および面ホゾカッター254x5.5x6その他の製品に関し丸一商会が古林木工所へ送付した昭和55年7月20日付け請求書)から見て、東城カッターと同様の抱き縁形成刃を有した古林カッターが昭和55年7月に古林木工所に納入されたことは明らかである。
一方、証人は、購入日につき、第1回証人尋問においては、「買った時期は定かではないんです。」、「昭和55年が記憶に正しいような気がします。」、「ただ、昭和55年に買ったことだけは分かるんですが」と証言し、
第2回証人尋問においては、甲第3号証(ご質問書)の「問4 貴社は本件刃物をいつ購入されましたか?」との質問とその回答である「昭和55年12月頃(有)丸一商会(住所福島市森合町14-8)より購入」との記載につき第1回の証人尋問の証言(昭和52年か53年に購入)を訂正し、「昭和55年12月です。」と証言し、その理由を、「同業者の古林木工所が私の買った合間に買ったので、いつ頃買ったんですかと聞きにいったところ昭和55年という話を聞き、私が間違えていました。」と証言している。
同証言によれば、東城昭一は、古林カッターを古林木工所で見た後東城カッターを購入したのであるから、証人は昭和55年7月以降に東城カッターを購入したといえる。
ところで、同証人が昭和55年7月に古林カッターをみた後、発注し東城木工所に納入されるまで、数ヶ月を要することを考慮すれば、同証人が東城カッターを昭和55年12月に購入したとの証言は信用できる。
してみれば、東城カッターは、本件考案の出願の日(昭和56年6月26日)前に公然と知られまたは実施されたものである。
以上の通り、本件考案は、その出願前に日本国内において公然知られおよび公然と実施をされた考案であるから、実用新案法第3条第1項及び第2項の考案に該当し、同条柱書きの規定に違反して登録されたものである。
したがって、本件実用新案登録は実用新案法第37条第1項第1号の規定に該当する。
むすび
したがって、本件実用新案登録を無効にすることとし、本件審判費用は、実用新案法第41条において準用する特許法第169条第2項においてさらに準用する民事訴訟法第89条の規定を適用して、結論のとおり審決する。
審理終結日 1998-03-16 
結審通知日 1998-03-27 
審決日 1998-04-06 
出願番号 実願昭56-95659 
審決分類 U 1 112・ 112- Z (B27F)
U 1 112・ 111- Z (B27F)
最終処分 成立    
前審関与審査官 千葉 成就城戸 博兒  
特許庁審判長 後藤 正彦
特許庁審判官 播 博
桐本 勲
登録日 1993-06-25 
登録番号 実用登録第1972446号(U1972446) 
考案の名称 面柄カッター  
代理人 山本 喜幾  
代理人 鮎澤 多俊  
代理人 野方 重人  

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