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審決分類 審判 全部申し立て   A41B
審判 全部申し立て   A41B
管理番号 1064506
異議申立番号 異議2001-71076  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2002-10-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-09 
確定日 2002-08-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2606261号「使い捨てパンツ型着用物品」の請求項1、2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2606261号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 I.手続の経緯の概要

本件実用新案登録第2606261号の考案は、平成2年10月25日に出願した実願平2-111729号の一部を、平成10年12月7日に新たな実用新案登録出願とした出願(実願平10-10913号)に係り、平成12年8月4日に設定登録(平成12年10月10日実用新案登録公報発行)がなされ、その後、平成13年4月9日付けで山田博より、平成13年4月10日付けで土山健二より、同日付けで勝野智子より、それぞれ実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成13年9月4日に意見書の提出とともに訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否
1.訂正の内容
a.実用新案登録請求の範囲の請求項1、第4段落の「前記脚開口部の弾性部材」を、「前記一対の脚開ロ部の各々一連の弾性部材」と訂正し、かつ「延出している」を、「延出し、かつ前記対向端部の近傍が、前記接合域の縦方向に互いに隣接対向する各々二つの前記接合部の間に位置する」と訂正する。
b.実用新案登録請求の範囲の請求項2を削除する。
c.明細書の段落「0006」の「前記脚開口部の弾性部材」を、「前記一対の脚開口部の各々一連の弾性部材」と訂正する。
d.明細書の段落「0007」の記載を削除する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び実用新案登録請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項aについて
脚開口部の弾性部材の配列をより具体的であるように、「一対の脚開□部の各々一連の弾性部材」と記載するとともに請求項2の記載を組み込んだものであるので、この訂正は、請求の範囲の減縮を目的とするものにあたる。
訂正事項bについて
請求項2を削除するものであるので、この訂正は、請求の範囲の減縮を目的とするものにあたる。
訂正事項cについて
考案の詳細な説明の記載を、上記訂正事項のaの記載と整合させるためのものであるので、この訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものにあたる。
訂正事項dについて
請求項2を削除したことにあわせて、明細書の記載を削除するものであるので、この訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものにあたる。
そして、上記訂正事項a?dは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.むすび
したがって、上記訂正は、実用新案法附則第9条第2項で準用する特許法第120条の4第2項の規定、及び第120条の4第3項においてさらに準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、該訂正を認める。

III.実用新案登録異議の申立てについて
1.実用新案登録異議の申立の概要
(1)本件実用新案登録異議申立人山田博は、次の(a)の理由により、本件請求項1ないし2に係る実用新案登録は取り消されるべきものであると主張している。
(a)本件請求項1ないし2に係る考案は、本件実用新案登録出願前に頒布された甲第1?4号証刊行物に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである
甲第1号証:(特表平1-503473号公報)(刊行物1)
甲第2号証:(特開昭57-77304号公報)(刊行物2)
甲第3号証:(特開昭61-207605号公報)(刊行物3)
甲第4号証:(特開昭57-117602号公報)(刊行物4)

(2)本件実用新案登録異議申立人土山健二は、次の(b)及び(c)の理由により、本件請求項1ないし2に係る実用新案登録は取り消されるべきものであると主張している。
(b)本件請求項1に係る考案は、本件実用新案登録出願前に頒布された甲第1?5号証刊行物に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである
甲第1号証:(特表平1-503473号公報)(刊行物1)
甲第2号証:(特開昭61-207605号公報)(刊行物3)
甲第3号証:(特開昭57-77304号公報)(刊行物2)
甲第4号証:(特開昭58-115106号公報)(刊行物5)
甲第5号証:(特開昭62-243806号公報)(刊行物6)
(c)本件請求項2について、明細書の記載に不備があるので、本件出願は、実用新案法第5条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない。

(3)本件実用新案登録異議申立人勝野智子は、次の(d)の理由により、本件請求項1に係る実用新案登録は取り消されるべきものであると主張している。
(d)本件請求項1に係る考案は、本件実用新案登録出願前に頒布された甲第1?4号証刊行物に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである
甲第1号証:(特開昭57-117602号公報)(刊行物4)
甲第2号証:(特開昭61-207605号公報)(刊行物3)
甲第3号証:(特表平1-503473号公報)(刊行物1)
甲第4号証:(特許庁公報53-219[2568]周知・慣用技術集(包装産業)、第1章 包装機械 第5節 シール機、43頁、昭和53年12月20日発行)(刊行物7)

2.本件考案
訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「本件訂正考案」という)は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される下記のとおりのものである(対比の便宜上、分説して示す)。

「A.前後胴回り域と、これら間に位置する股下域とを有する積層パネルが前記股下域を介して二つに折り重ねられ、前記前後胴回り域の横方向対向側部がそれらの外側縁を残してそれぞれ外向き合掌状に接合されることで胴開口部と一対の脚開口部とが形成され、前記各開口部の回り方向へそれぞれ延在する弾性部材を有する使い捨てパンツ型着用物品において、
B.前記前後胴回り域の横方向対向側部の接合が、前記横方向対向側部の縦方向に延在する少なくとも2mmの幅寸法を有する接合域に沿ってなされ、
C.前記接合域が、前記接合域の縦方向に所定間隔で配列した多数の接合部によって構成され、前記接合部が、前記物品の縦方向における少なくとも0.5mmの高さ寸法と、前記接合域における少なくとも40%の合計占有面積とを有し、
D.前記一対の脚開□部の各々一連の弾性部材が、前記物品の前後方向へ湾曲して前記物品の股下域を横切る前後部材からなり、前記積層パネル内に配置されているとともに、
E.前記脚開口部の弾性部材の長さ方向対向端部が、前記接合域の外側縁から外側へ延出し、かつ前記対向端部の近傍が、前記接合域の縦方向に互いに隣接対向する各々二つの前記接合部の間に位置することを特徴とする前記物品。」

3.実用新案登録異議の申立ての理由についての判断
(1)実用新案登録異議申立人山田博の申立ての理由について
甲第1号証(特表平1-503473号公報:刊行物1)には、伸縮可能な使い捨て吸収性下着(使い捨てのトレーニングパンツ、失禁用衣料などのようなプルオン下着)に関して、以下の事項が記載されている。
イ)((1頁左下欄、「特許請求の範囲第1項」)
「1.以下のものを含む、解剖学的に体形に合う、一般に自己調整式3次元使い捨て吸収性下着:
-弾性不織ウェブが単数又は複数のギャザリング可能な不織ウェブに合わされ、ウエスト開口部、脚開□部、中央股セクション、この股セクションで分離された前後パネル及び前記脚開□部とウエスト開ロ部及び前記前パネルと後ろパネルの間にそれぞれ延びこれらを相互接続している1対のサイドパネルを構成している、通気性のあるエラストマー不織製外側カバー,
-液体浸透性のある体側のライナー、体液不浸透性のバリヤ及びその間に置かれた吸収性の複合材を含む、前記前後パネル及び前記股セクションの上にほぼ積重なることのできる吸収性のインサート構造;-前記吸収性構造を前記外側エラストマーカバーにとりつけ-体化させそれと同時にほぼ制約の無いその機能的伸縮可能性を与えるためのとり付手段;そして
-そのシームを開き分離し当該衣料を汚れた時点で着用者からとり外すための手でひきちぎることのできる応力解放手段を含む、前記サイドパネルの各々の前記脚部及びウエスト開口部の間に延びこれらを相互接続している再度締めつけることのできないサイドシーム」

ロ)(4頁左上欄20行?右上欄4行)
「外側カバー(12)は一般に、透気性のあるすなわち「通気性のある」エラストマー不織層状織地を含んでおり、ここにおいて、弾性不織ウェブが単数又は複数のギャザリングの可能な不織ウェブに合わせられている。できれば、積層物は、基本的に体を横切る方向(41)に約20パーセントから200パーセントまで弾力的に伸びることができる。閉じたサイドパネル(27)を形成すべく互いとかみ合うことのできる縦方向に相対する耳状部分(20,26;22,24)は、ほぼウエスト開□部から脚部開□部まで一対のサイドシーム(42)により結合されている。サイドパネル(27)の全長閉鎖は補強されて、さまざまな及び極端な体の動きや着用者の位置の場合でさえ弾力的に伸びることのできる衣料に対しさらに寸法的な無欠性が与えられるようになっている。」

ハ)(5頁右上欄14行?17行)
「付加的な弾性部材(図示されておらず)をウエストヘム(66)及びいずれかの脚部ヘム(図示されておらず)内にとりこんで、弾性ギャザーを提供することもできる。」

ニ)(5頁右下欄9行?24行)
「最後に、サイドパネル(27)は、超音波又は熱によるボンド(46)によってサイドシーム(42)に合わせて閉じられ結合させられる。使用中、衣料(10)は再利用可能な不織パンツと同じように体にすべり上げられ、トイレを使うときには着用者が腰全体にわたってすべりおろすことができる。この衣料が汚れると、サイドシーム(27)は、ボンド(46)をひきちぎることによって手で分離され、それから衣料(10)を着用者からとり外すことになる。
分離可能なサイドシーム(42)締めつけシステムに必要とされる物理的特性に関しては、自生ボンド(46)は、ユーザー(例えば親)のサイドシーム(42)ひきちぎり能力又は強さならびに外側カバー材料によって約600グラムから約2500グラムの剥離強度をシーム(42)に与えるべきである。サイドシーム(42)は1平方インチ約3750グラム以上のせん断強度を持っていなくてはならない。」

ホ)(5頁右下欄下より3行目?6頁左上欄4行)
「第1図から第3図までは、外向き(第1図)、内向き(第2図)又は重なり合い(第3図)のいずれかでもありうるサイドシームのさまざまな形態を示している。サイドシーム(42)は、第4及び5図で、内側向きのサイドシーム(第4図)及び重なり合ったシーム(第5図)の場合について、手で分離された状態で示されている。代替的には、サイドシーム(42)にはサイドパネル(27)内に送り穴(図示されておらず)が含まれている可能性もある。」

ヘ)(10頁Fig4及びFig5)
サイドシーム(42)の縦方向に所定間隔で配列された、多数のボンド(46)が開示されている。ボンド(46)はサイドシーム(42)の縦方向と交差する方向に細長く、その長さはサイドシームの巾より小さいように描かれている。

上記記載事項イ)?ヘ)より、甲第1号証には、エラストマー不織製外側カバー、液体浸透性のある体側のライナー等を積層したパネルを有し、このパネルは、股セクションで分離された前後パネルと、前後パネルを相互接続する1対のサイドパネルとからなり、サイドパネルは1図のように外向きのサイドシームで接合されることにより、ウエスト開口部、脚開口部とが形成され、開口部には、付加的な弾性部材が設けられている使い捨て吸収性下着が、記載されていることが認められ、この構成は、本件訂正考案の上記Aの構成に相当する。

そこで、本件訂正考案(以下「前者」という)は、甲第1号証記載のもの(以下「後者」という)と、構成B?Eに関して、つぎの点で相違する。
(相違点1)
前者は、「B.前記前後胴回り域の横方向対向側部の接合が、前記横方向対向側部の縦方向に延在する少なくとも2mmの幅寸法を有する接合域に沿ってなされ」ているのに対し、後者は、ボンドの幅について明かでない点。
(相違点2)
前者は、「C.前記接合域が、前記接合域の縦方向に所定間隔で配列した多数の接合部によって構成され、前記接合部が、前記物品の縦方向における少なくとも0.5mmの高さ寸法と、前記接合域における少なくとも40%の合計占有面積とを有し」ているのに対し、後者は、縦方向に所定間隔で配列した多数のボンドによって接合域を構成しているものの、ボンドの高さ寸法と占有面積について明かでない点。
(相違点3)
前者は、「D.前記一対の脚開□部の各々一連の弾性部材が、前記物品の前後方向へ湾曲して前記物品の股下域を横切る前後部材からなり、前記積層パネル内に配置されている」のに対し、後者の付加的な弾性部材は、その配置について明かでない点。
(相違点4)
前者は、「E.前記脚開口部の弾性部材の長さ方向対向端部が、前記接合域の外側縁から外側へ延出し、かつ前記対向端部の近傍が、前記接合域の縦方向に互いに隣接対向する各々二つの前記接合部の間に位置」しているのに対し、後者の付加的な弾性部材は、その配置について明かでない点。

上記相違点について検討する。
(相違点1及び2について)
甲第1号証記載のボンドは、上記記載事項ヘ)にあるように、横長のスポット状の接合部分がサイドシームの縦方向に所定間隔で配列された形式のものであるが、かかる形式のシールは、例えば、実用新案登録異議申立人勝野智子が提出した、甲第4号証(刊行物7)である、特許庁公報53-219[2568]周知・慣用技術集(包装産業)の第1章第5節43頁に、「縦目シール」として示すように、それ自体周知の形式のシールのひとつにすぎない。
一方、甲第3号証(特開昭61-207605号公報:刊行物3)には、シールの寸法に関して、使い捨てパンツの引き剥ぎシームのシールを約1/8インチ(約3.1mm)ないし3/16インチ(約4.7mm)の幅で形成することが記載されており、また、「シール線は、点線を形成するような断続的なものであってもよい」ことも記載されている(9頁右上欄13行?左下欄10行)。
さらに、甲第3号証には、シーム領域内でのシールされる谷部分が、全体の約25%?100%である旨記載されている(10頁左上欄2?13行)。
そこで、甲第1号証記載のものにおいて、縦方向に所定間隔で配列した多数のボンドによって接合域を構成するにあたり、甲第3号証の記載に倣って適当なボンドの寸法を見いだし、相違点1に係る構成B及び相違点2に係る構成Cのようにすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。

(相違点3について)
甲第2号証(特開昭57-77304号公報:刊行物2)には、使い捨ておしめブリーフについて、3?5図、22ページ右下欄9?19行、及び23ページ右上欄7?19行に示すように、一対のゴムひも18,19または21,22を、ブリーフの股下域を横切るように湾曲してパネル内に配置したものが記載されている。
そこで、甲第2号証の記載に倣って付加的な弾性部材を配置し、相違点3に係る構成Dのようにすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。

(相違点4について)
甲第2号証によれば、第3図等より、脚開口部のゴムひもの長さ方向対向端部が、前後胴回り域の横方向対向側部の接合部4から外側へ延出していることが認められるが、甲第2号証には、「前記対向端部の近傍が、前記接合域の縦方向に互いに隣接対向する各々二つの前記接合部の間に位置」している点については、記載がない。
また、この点については、他の甲号証にも記載がなく、また示唆するものもない。
そして、本件訂正考案は、相違点4に係る構成Eを有することにより、「脚開口部の弾性部材が物品の前後方向へ湾曲して物品の股下域を横切る前後部材からなるうえに、その長さ方向対向端部が接合域の外側縁から外側へ延出しているから、接合域の近傍におけるそれら弾性部材の一部が積層パネルに充分に接着していないことがあっても、それら弾性部材が伸長されたときの応力によって、接合域からその内側へ妄りに抜脱して弛緩するようなことがなく、かつ、そのために、脚開口部の伸長応力が低下して着用者の脚回りに対する密着性が低下して排泄物が漏れるようなことがない」(段落【0019】)という作用効果を有すると共に、弾性部材が接合域を越えて外側に延出しているものの、弾性部材は二つの接合部に挟まれる状態で接合域と交差し、接合部と弾性部材とが直接交わることがないから、接合が容易であり、接合のための加熱による弾性部材の劣化等の問題が生じないという作用効果を有するものと認められる。

したがって、本件請求項1に係る考案は、甲第1号証ないし甲第4号証刊行物に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえないから、上記異議申立ての理由(a)は理由がない。

(2)実用新案登録異議申立人土山健二の申立ての理由について
(i)申立理由(b)について検討すると、甲第1号証?甲第3号証刊行物は、前記異議申立人山田博の提出した甲第1号証?甲第3号証(刊行物1?3)と共通するので、これらについての判断は、上記(1)山田博の申立ての理由についてで述べたとおりである。
そこで、甲第4号証?甲第5号証刊行物について検討すると、これら刊行物のいずれにも、本件訂正考案の上記構成E、特に「前記対向端部の近傍が、前記接合域の縦方向に互いに隣接対向する各々二つの前記接合部の間に位置」している点について、記載も示唆もない。
したがって、本件請求項1に係る考案は、甲第1号証ないし甲第5号証刊行物に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえないから、上記異議申立ての理由(b)は理由がない。
(ii)申立理由(c)は、本件請求項2は、明細書の記載に不備があるので、本件出願は、実用新案法第5条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていないというものである。
請求項2については、訂正によって、その構成が請求項1に組み込まれる際、不備と主張された「前記第1及び第2弾性部材」との記載が削除されたので、不備は解消したものと認められるから、上記異議申立ての理由(c)は理由がない。

(3)実用新案登録異議申立人勝野智子の申立ての理由について
申立理由(d)について検討すると、甲第1号証?甲第3号証刊行物は、それぞれ、前記異議申立人山田博の提出した甲第4号証、甲第3号証及び甲第1号証(刊行物4,3,1)と共通するので、これらについての判断は、上記(1)山田博の申立ての理由についてで述べたとおりである。
そこで、甲第4号証刊行物について検討すると、甲第4号証にも、本件訂正考案の上記構成E、特に「前記対向端部の近傍が、前記接合域の縦方向に互いに隣接対向する各々二つの前記接合部の間に位置」している点について、記載も示唆もない。
したがって、本件請求項1に係る考案は、甲第1号証ないし甲第4号証刊行物に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえないから、上記異議申立ての理由(d)は理由がない。

IV.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論の通り決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
使い捨てパンツ型着用物品
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
前後胴回り域と、これら間に位置する股下域とを有する積層パネルが前記股下域を介して二つに折り重ねられ、前記前後胴回り域の横方向対向側部がそれらの外側縁を残してそれぞれ外向き合掌状に接合されることで胴開口部と一対の脚開口部とが形成され、前記各開口部の回り方向へそれぞれ延在する弾性部材を有する使い捨てパンツ型着用物品において、
前記前後胴回り域の横方向対向側部の接合が、前記横方向対向側部の縦方向に延在する少なくとも2mmの幅寸法を有する接合域に沿ってなされ、
前記接合域が、前記接合域の縦方向に所定間隔で配列した多数の接合部によって構成され、前記接合部が、前記物品の縦方向における少なくとも0.5mmの高さ寸法と、前記接合域における少なくとも40%の合計占有面積とを有し、
前記一対の脚開口部の各々一連の弾性部材が、前記物品の前後方向へ湾曲して前記物品の股下域を横切る前後部材からなり、前記積層パネル内に配置されているとともに、前記脚開口部の弾性部材の長さ方向対向端部が、前記接合域の外側縁から外側へ延出し、かつ前記対向端部の近傍が、前記接合域の縦方向に互いに隣接対向する各々二つの前記接合部の間に位置することを特徴とする前記物品。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案が属する技術分野】
本考案は、使い捨ておむつ等の使い捨て着用物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、使い捨て着用物品としてのトレーニングパンツやパンツ型使い捨ておむつは、透液性内面シートと不透液性外面シートからなる積層パネル、特におむつの場合には、これらの間に吸収体を介在させてなる積層パネルを基本的な構成とし、着用中の身体に対するフィット性と体液の漏洩防止機能を得るため、該積層パネルにおける胴回りおよび脚回りの各々に弾性部材が取り付けられている。また、こうした物品においては、前記積層パネルを前記内面シートが内側に位置するように二つ折りに重ね、前後胴回り域の対向側部を間欠的に接合することで、胴開口部と一対の脚開口部とを形成してある(例えば、特開昭61-207605号、特表平1-503473号)。
【0003】
【考案が解決すべき課題】
使い捨てのパンツ型着用物品では、前胴回り域と後胴回り域との前記接合は、胴開口部から脚開口部へ間欠的に配列する点状の接合部によってなされているにすぎないから、物品を脱がすとき、前記接合部の引き裂き操作が容易であるが、着用中に不用意に引き裂かれないようにするための充分な接合強度が得られない。
【0004】
本考案は、物品の対向側部の引き裂き操作が容易でありながら着用中に不用意に引き裂かれることがない、その対向側部の接合手段を課題とする。また、脚開口部を伸縮弾性化する弾性部材がその伸長応力により、前記接合部が位置する接合域から妄りに抜脱して弛緩することがないようにすることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本考案は、前後胴回り域と、これら間に位置する股下域とを有する積層パネルが前記股下域を介して二つに折り重ねられ、前記前後胴回り域の横方向対向側部がそれらの外側縁を残してそれぞれ外向き合掌状に接合されることで胴開口部と一対の脚開口部とが形成され、前記各開口部の回り方向へそれぞれ延在する第1および第2弾性部材を有する使い捨てパンツ型着用物品の改良に係わり、次の点を特徴とする。
【0006】
すなわち、本考案は、前記物品において、前記前後胴回り域の横方向対向側部の接合が、前記横方向対向側部の縦方向に延在する少なくとも2mmの幅寸法を有する接合域に沿ってなされ、前記接合域が、前記接合域の縦方向に所定間隔で配列した多数の接合部によって構成され、前記接合部が、前記物品の縦方向における少なくとも0.5mmの高さ寸法と、前記接合域における少なくとも40%の合計占有面積とを有し、前記一対の脚開口部の各々一連の弾性部材が、前記物品の前後方向へ湾曲して前記物品の股下域を横切る前後部材からなり、前記積層パネル内に配置されているとともに、前記脚開口部のこれらの弾性部材の長さ方向対向端部が前記接合域の外側縁から外側へ延出し、かつ前記対向端部の近傍が、前記接合域の縦方向に互いに隣接対向する各々二つの前記接合部の間に位置することを特徴とする。
【0007】
【0008】
【実施の形態】
図面を参照して、本考案に係る物品の実施の形態としての使い捨ておむつについて説明すると、以下のとおりである。
【0009】
図1において、おむつ1は、透液性内面シート2と、不透液性外面シート3と、吸収体4と、胴回り弾性部材5と、脚回り弾性部材6を含んでいる。胴開口部7と脚開口部8の各々の周縁には、弾性部材5,6の収縮作用によってギャザーが形成される。おむつ1の横方向対向側部9においては、前胴回り域10と後胴回り域11の各々の側部10A,11Aが接合域14で一体に接合してある。吸収体4は、本考案を実施するうえにおいて、必ずしも必要なものではない。
【0010】
図2において、おむつ1は、内面シート2と、外面シート3と、これらの間に介在させた吸収体4とによって形成した積層パネル1’から構成してある。内面シート2は、熱捲縮した熱可塑性繊維からなり、高圧水流の作用下に前記繊維が交絡した不織布であって弾性伸縮性を有している。吸収体4は、好ましくは、高吸水性ポリマーを5?15重量%混入した粉砕パルプから形成してある。外面シート3は、2層構造を有し、ポリエチレン系熱可塑性エラストマーからなる弾性伸縮性に富む不透液性シート16と、熱捲縮した熱可塑性繊維からなり、高圧水流の作用下に前記繊維が交絡した伸縮性の不織布17とをホットメルト接着剤によって間欠的に接合してある。不透液性シート16は、吸収体4を介して内面シート2と対向し、不織布17は、おむつ1の外表面となる。不透液性シート16は、もとより外面シート3に不透液性を付与するものである。不織布17は、おむつ1の外表面に布様の肌ざわりを付与する。また、不透液性シート16と不織布17とを互いに間欠的に接合することで、外面シート3は伸縮性を損うことなく強度が向上する。外面シート3の不透液性シート16上には、複数本の糸ゴムからなる胴回り弾性部材5と、複数本の糸ゴムからなり、かつ、前後部材6A,6Bからなる脚回り弾性部材6とを、伸長下に、ホットメルト接着剤で接着してある。弾性部材6を構成する前後部材6A,6Bは、おむつの前後方向へ湾曲して股下域15を横切り、ここにおいて互いに交差する交差点間では殆ど伸長されていない。弾性部材5,6は、おむつ1の連続生産ラインにおいて、流れ方向に沿って連続的に供給されるもので、おむつ1の幅方向を横断して走り、その両切断端部は横方向対向側部9(第3図参照)において、外面シート3の側縁に臨んでいる。
【0011】
内面シート2と外面シート3とは、外形が同じであって、吸収体4の外周から外側へ延出し、その延出部分において互いに接合してある。積層体1’は、縦方向に二分して、内面シート2が内側となるように折り、前胴回り域10および後胴回り域11の各々の横方向対向側部10Aと11Aとを重ね合わせ、それら外側縁を残して位置する接合域14に沿って一体に接合することで、胴開口部7と、一対の脚開口部8とを形成してある。こうして構成したおむつ1においては、前後胴回り域10,11の糸ゴム5,6は、胴開口部7および脚開口部8の各々において実質的にその回り方向へ連続しているとともに、これらの長さ方向対向端部5A,6Cが接合域14の外側縁から外側へ延出している。このように延出することで、糸ゴム5,6は、接合域14の近傍におけるそれら糸ゴムの一部が外面シート3の内面に充分に接着していないことがあっても、それら糸ゴムが伸長されたときの応力によって、接合域14からその内側へ妄りに抜脱して弛緩するようなことがない。
【0012】
図3において、接合域14は、側部9の縦方向に胴開口部7から脚開口部8にわたって延在し、超音波溶着によって前後胴回り域10,11の素材が融着した接合部14Aと、非接合部14Bとの交互の繰り返しによって構成してある。接合部14Aの各々は、接合域14の縦方向と交差する方向へ長く、おむつ1の横方向における幅寸法を約5mmとし、おむつ1の縦方向における各接合部14Aの高さ寸法を約1mmとし、非接合部14Bの高さ寸法(接合域14の縦方向に互いに隣接対向する各々二つの接合部14A間の寸法)を約1.5mmとし、こうした接合部14Aと非接合部14Bとを交互に配列させることによって間欠パターンを構成し、接合域14の大部分を形成してあり、図によって明らかなように、脚回り弾性部材6の近辺においては、接合部14Aを傾斜させてある。さらに、弾性部材5,6の長さ方向対向端部5A,6Cの近傍は、接合域14において前記超音波を作用させない非接合部14B、すなわち、接合域14の縦方向に互いに隣接対向する各々二つの接合部14Aの間に挟持状態で位置させてある。また、接合域14の上端部および/または下端部には、非接合部14Bよりも比較的大きい非接合部14E,14E’を設けておき、ここを摘持すれば、特に容易に前胴回り域と後胴回り域とを接合域14に沿って引き裂くことができるようにしておくこともできる。
【0013】
接合部14Aは、前述の寸法を好ましい一例とするが、おむつ1の横方向における長さ寸法(接合域14の幅寸法)を2?20mmとし、おむつ1の縦方向における高さ寸法を0.5?15mmとし、かつ、胴開口部7から脚開口部8にわたる接合域14において占有面積の合計を40?80%とすることができる。接合部14Aの占有面積が40%以下の場合には接合域14の強度が不足し、80%以上の場合には接合域14が剛性になりすぎる。
【0014】
パンツ型おむつ1を着用者から脱がせる場合には、側部9の外縁において、前胴回り域10と後胴回り域11とを各々摘持してそれらが対向する前後方向に引っ張ると、接合域14に沿って容易に引き裂くことができる。しかも、このときの引き裂きの抵抗感は接合域14の少なくとも幅寸法と同じ長さ寸法を有する接合部14Aが接合域14の縦方向と交差し、それらの間に非接合部14Bが位置するという断続パターンによって、あたかもジッパーを操作するような感触になり、仮に、接合域14の上端または下端において引き裂きが生じたとしても、その引き裂き力が連続的に伝達されることが極めて少ない。
【0015】
図4において、前胴回り域10と後胴回り域11の各々の摘持を容易にするため、各々の側部10A,11Aの上端部に該側部から外方に延出する摘持部20A,20Bを設けてある。摘持部20A,20Bは、内面シート2および/または外面シート3と一体をなすように設けることができるが、これを別部材として設けることもできる。
【0016】
図5において、内面シート2を前記実施例と同様に熱捲縮した熱可塑性繊維からなり、高圧水流の作用下に前記繊維が交絡した不織布である弾性伸縮性シートにより構成し、外面シート3を図示のポリエチレン系熱可塑性エラストマーからなる弾性伸縮性の不透液性シート16による単一層で構成してある。このように構成することで、前記実施例における場合のそれよりも製造コストを下げることができる。
【0017】
【考案の効果】
本考案に係る物品によれば、次の効果を奏する。
【0018】
(1)前後胴回り域の横方向対向側部の接合域の幅寸法、接合域を構成する各接合部の高さ寸法及び接合域における合計占有面積を所定値に規定してあるから、物品を脱がすとき接合部の引き裂き操作が容易であるとともに、着用中に不用意に引き裂かれないための充分な接合強度が得られる。
【0019】
(2)脚開口部の弾性部材が物品の前後方向へ湾曲して物品の股下域を横切る前後部材からなるうえに、その長さ方向対向端部が接合域の外側縁から外側へ延出しているから、接合域の近傍におけるそれら弾性部材の一部が積層パネルに充分に接着していないことがあっても、それら弾性部材が伸長されたときの応力によって、接合域からその内側へ妄りに抜脱して弛緩するようなことがなく、かつ、そのために、脚開口部の伸長応力が低下して着用者の脚回りに対する密着性が低下して排泄物が漏れるようなことがない。ちなみに、脚開口部の弾性部材が、物品の横方向へ直線状に延びていたり、脚開口部のなだらかな曲線に沿って取り付けられていたりする場合には、該弾性部材が伸長されたときの応力がその長さ方向対向端部に集中するから、前記抜脱が生じ易いところ、本考案のように、該弾性部材が物品の前後方向へ湾曲して物品の股下股を横切る前後部材からなる場合には、該応力が分散するから、前記抜脱が生じ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案に係るおむつの斜視図。
【図2】
図1のおむつの展開斜視図。
【図3】
図1のおむつの部分拡大図。
【図4】
本考案の他の実施例を示す部分拡大斜視図。
【図5】
外面シートについての他の実施例を示す外面シートの斜視図。
【符号の説明】
1 おむつ
2 内面シート
3 外面シート
5,6 弾性部材
5A,6C 長さ方向対向端部
9 横方向対向側部
10 前胴回り域
11 後胴回り域
14 接合域
14A 接合部
14B 非接合部
訂正の要旨 訂正の要旨
実用新案登録第2606261号考案の明細書中、以下の点を、本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正する。
a.請求の範囲の減縮を目的として、実用新案登録請求の範囲の請求項1、第4段落の「前記脚開口部の弾性部材」を、「前記一対の脚開口部の各々一連の弾性部材」と訂正し、かつ「延出している」を、「延出し、かつ前記対向端部の近傍が、前記接合域の縦方向に互いに隣接対向する各々二つの前記接合部の間に位置する」と訂正する。
b.請求の範囲の減縮を目的として、実用新案登録請求の範囲の請求項2を削除する。
c.明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書の段落「0006」の「前記脚開口部の弾性部材」を、「前記一対の脚開口部の各々一連の弾性部材」と訂正する。
d.明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書の段落「0007」の記載を削除する。
異議決定日 2002-07-18 
出願番号 実願平10-10913 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (A41B)
U 1 651・ 537- YA (A41B)
最終処分 維持    
前審関与審査官 大河原 裕千葉 成就  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 山崎 豊
杉原 進
登録日 2000-08-04 
登録番号 実用新案登録第2606261号(U2606261) 
権利者 ユニ・チャーム株式会社
愛媛県川之江市金生町下分182番地
考案の名称 使い捨てパンツ型着用物品  
代理人 白浜 吉治  
代理人 小林 義孝  
代理人 白浜 吉治  
代理人 小林 義孝  

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