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審決分類 審判 全部申し立て   H03H
管理番号 1064508
異議申立番号 異議2002-70094  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2002-10-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-01-07 
確定日 2002-08-28 
異議申立件数
事件の表示 登録第2607316号「圧電共振部品」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2607316号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 【1】手続きの経緯
本件実用新案登録第2607316号の考案は、平成3年8月13日に出願(実願平3ー63932号)されたものであって、その考案(請求項の数1)は平成13年3月30日に設定登録がなされ、平成13年7月9日に実用新案登録公報が発行され、その実用新案登録(全請求項)について平成14年1月7日付けで実用新案登録異議申立人株式会社村田製作所から登録異議の申立てがなされ、その後その実用新案登録(全請求項)について期間を指定して平成14年3月26日付で取消理由の通知がなされたものであるが、この期間を指定して意見を求めた取消理由の通知に対して、実用新案権者からは何らの対応もなされなかったものである。
【2】本件登録実用新案
本件実用新案登録に係る考案は、登録査定時の明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 誘電体基板上に圧電振動子を搭載した圧電共振部品において、前記誘電体基板内に複数の位相補償用コンデンサと、スプリアス抑圧用コンデンサをそれぞれ基板内容量を利用して積層形成し、前記複数の位相補償用コンデンサをそれぞれ前記圧電振動子と接地間に接続し、前記スプリアス抑圧用コンデンサを前記圧電振動子に対して直列又は並列に接続したことを特徴とする圧電共振部品。」
【3】取消理由通知
これに対して、本件実用新案登録における全請求項(請求項1)に係る考案について、実用新案法第3条第2項違反として、実用新案登録異議申立人株式会社村田製作所が提出した甲号証に係る下記刊行物を引用し、概要、以下のような取消理由を通知した。
<引用刊行物>
刊行物1 特開昭64-81404号公報(異議甲第1号証参照)
刊行物2 特開昭55-50722号公報(異議甲第2号証参照)
刊行物3 電子通信学会論文誌 '79/1 Vol.J62-A No.1「圧電反作用の制御による周波数上昇形エネルギー閉込め」(P8?15)(異議参考資料1参照)
『(1)本件考案
……(引用省略)……。
(2)引用刊行物記載の考案
(2-1)上記刊行物1の特開昭64-81404号公報(異議甲第1号証参照)には、その実施例及び図面第1図?第7図を参酌すると、以下の技術的事項が記載されている。
(i)「第1図は本発明に係る圧電複合部品の分解斜視図、…。図において、11は磁器層、12は誘電体、13は誘電体12の板厚方向の一面側に設けられた電極、14、15は誘電体12の他面側に設けられた一対の分割電極、16は圧電体振動子」(第1頁右下欄第10行目?第18行目)、
(ii)「電極13は、第4図にも示すように、磁器層11と誘電体12との積層界面に埋設された内部電極となっている。…。一対の分割電極14、15は誘電体12の表面に間隔をおいて、その幅方向に沿って並設されており、誘電体12を介して電極13と対向している。従って、電極13-電極14間及び電極13-電極15間に、電極13によって共通に接続された2つのコンデンサC1、C2が形成される(第2図参照)。」(第3頁左下欄第8行目?同右下欄第6行目)、
(iii)「2つのコンデンサ間に圧電振動子を接続した回路構成となる。この回路は第7図で示した共振回路と等価である。」(第3頁左上欄第12?15行目)、
(iv)「支持体11を焼成済みの磁器層によって構成した場合には、上記熱処理は、低温焼付工程とし、未焼成磁器グリーンシートで構成した場合には、支持体11、電極13、誘電体層12及び電極14、15を同時に焼成する工程とする。この後、圧電振動子16を取付けることにより、本発明に係る圧電複合部品を容易に製造できる。
上述のように、本発明に係る製造方法は、厚膜技術、積層技術を用いて、コンデンサ用の電極13?15及び誘電体層12を形成するので、圧電複合部品を容易に製造できる。」(第4頁左下欄第2行目?第12行目)、
(2-2)上記刊行物2の特開昭55-50722号公報(異議甲第2号証参照)には、その実施例及び図面第1図?第8図を参酌すると、圧電共振器において、圧電共振子(10’)と直列に静電容量(コンデンサCx)を接続すること、及び該コンデンサCxを形成する際、コンデンサCxをその電極(21,25)と共に圧電振動子(10’)の圧電基板(1)上に一体的に形成することが記載されている。
(2-3)上記刊行物3の電子通信学会論文誌 '79/1 Vol.J62-A No.1「圧電反作用の制御による周波数上昇形エネルギー閉込め」(P8?15)には、図6?7、図15?16及びこれに係わる記載を参酌すると、圧電共振子(PZT系磁器板、PbTiO3磁器板)において、この圧電共振子と直列又は並列に静電容量(コンデンサCa、Cp)を接続することにより、共振点付近の特性又は反共振点付近の特性を変化させて不要振動のないきれいな特性とすることが出来るとの技術的事項が開示されている。
(3)対比・判断
本件請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)と前記刊行物1に記載された考案とを対比すると、以下(i)の点で相違し、その余は一致するものと認められる。
(i)本件考案にあっては、基板内容量を利用して積層形成されたスプリアス抑圧用コンデンサを、圧電振動子に対して直列又は並列に接続したものであるのに対し、刊行物1にあっては、この構成を具備しないものである点、
そこで、上記相違点(i)について検討すると、本件考案においてスプリアス抑圧用コンデンサを圧電振動子に対して直列又は並列に接続することの技術的意義は、本件明細書の記載によれば圧電振動子の共振周波数Fr或いは反共振周波数Faを遷移することにより、小型化等すること(段落符号【0014】【0015】)にあるものと認められるが、前記刊行物2には、圧電共振子と直列にコンデンサを接続することで共振周波数Frを遷移すること、及び当該コンデンサの形成は基板内容量を利用して積層形成することが開示されており、該コンデンサにあってもスプリアス抑制用として機能することが出来るものと認められ、また、前記刊行物3には、圧電共振子と直列又は並列にコンデンサを接続することで共振周波数Fr又は反共振周波数Faを遷移することが開示されており、該コンデンサにあってもスプリアス抑制用として機能することが出来るものと認められることから、圧電共振子と直列又は並列にコンデンサを接続することは従来より周知の技術的事項であると認められる。
そして、この刊行物1、及び刊行物2乃至3のいずれにおいても圧電共振部品として共通するものであるから、刊行物1に記載された考案に刊行物2乃至3に開示された周知の技術的事項を適用して本件考案のように構成することは、当業者が適宜になし得ることと認められる。
したがって、本件考案は、刊行物1乃至3に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案に係る実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである。
(4)まとめ
以上のとおりであって、本件実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、刊行物1乃至3に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、当該請求項1に係る考案は実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであって、当該請求項1に係る考案の実用新案登録は取り消されるべきものである。』
【4】当審の判断
引用刊行物1乃至3に記載された発明、及び請求項1に係る考案と前記刊行物1に記載された考案との対比・判断は、前記取消理由に記載されたとおりのものであって何れも当を得たものであり、またその他前記取消理由を撤回すべき事由は見当たらない。
【5】まとめ
以上のとおりであるから、本件実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案の実用新案登録は、実用新案登録法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2002-07-09 
出願番号 実願平3-63932 
審決分類 U 1 651・ 121- Z (H03H)
最終処分 取消    
前審関与審査官 工藤 一光  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 今井 義男
治田 義孝
登録日 2001-03-30 
登録番号 実用新案登録第2607316号(U2607316) 
権利者 ティーディーケイ株式会社
東京都中央区日本橋1丁目13番1号
考案の名称 圧電共振部品  
代理人 三澤 正義  

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