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審決分類 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正を認める。無効としない A45C
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正を認める。無効としない A45C
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない A45C
審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない A45C
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正を認める。無効としない A45C
審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更 訂正を認める。無効としない A45C
管理番号 1066081
審判番号 無効2000-35403  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-07-24 
確定日 2001-05-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の登録第2562930号実用新案「ウエストバッグ」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
登録第2562930号(以下、「本件登録」という。)の請求項1に係る考案についての出願は、平成3年4月23日に出願され、平成9年11月7日にその考案について設定登録がなされたものであって、本件登録の無効審判事件の手続の経緯は以下のとおりである。

審判請求 平成12年 7月21日
審判請求理由補正 平成12年 8月16日
訂正請求 平成12年10月27日
答弁書 平成12年10月27日
弁駁書 平成13年 1月22日

第2 当事者の主張
1.請求人
請求人は、甲第1号証乃至甲第7号証を証拠方法として提出し、以下の主張をする。
(1)被請求人のした訂正請求に関して、「上記バッグ本体の上面を」を「上記バッグ本体の内部を」とする訂正は、次の理由により、実用新案法の規定に適合しないので、当該訂正請求は、認めるべきでない。
(a)実用新案登録請求の範囲の「上記バッグ本体の内部」という用語について検討すると、バッグ本体の上面6に近接した該本体内の上部寄りの位置のほか、バッグ本体内の上面に平行な中間位置、バッグ本体の下面に近接した該本体内の下部寄りの位置、バッグ本体の前面に平行な位置など、様々な位置を包含するものであるから、「上記バッグ本体の上面を」を、「上記バッグ本体の内部を」とする訂正は、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張するものであり、実用新案法第39第2項の規定に違反する。

(b)「上記バッグ本体の内部」という用語は、明細書の何処にも記載されておらず、明細書の記載から「上記バッグ本体の内部」という用語を、直接的かつ一義的に導き出すことはできないから、「上記バッグ本体の内部」という用語は、願書に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものではなく、実用新案法第40条第2項の規定に違反する。

(2)前記訂正の適否にかかわりなく、実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、考案の詳細な説明に記載された範囲を超えて、それに記載しない別異の技術までをも包含する広い範囲に特定されているものであり、実用新案法第5条第5項第1号の規定に違反し、本件登録を無効とすべきである。

(3)前記訂正の適否にかかわりなく、実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、明細書の考案の詳細な説明の記載及び図面の記載に鑑み、布地7と芯板9との共働関係を、考案の構成に欠くことができない事項とするものであるから、実用新案登録請求の範囲の記載は、実用新案法第5条第5項第2号の規定に違反し、本件登録を無効とすべきである。

(4)前記訂正の適否にかかわりなく、実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、甲第3号証乃至甲第6号証によって開示された公知の構成と、甲第7号証によって開示された公知の構成との単なる寄せ集めたものにすぎず、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、本件登録を無効とすべきである。

甲第1号証の1 本件実用新案登録第2562930号公報
甲第1号証の2 同上の登録原簿謄本
甲第2号証の1 東京地方裁判所平成11年(ワ)第6807号事件 における、原告提出の平成12年1月24日付「準 備書面(四)」
甲第2号証の2 同上事件における、原告提出の平成12年3月24 日付「準備書面(五)」
甲第3号証 実願昭63-72280号(実開平1-17796 1号)のマイクロフィルム
甲第4号証 特開平2-124107号公報
甲第5号証 実開平2-66149号公開実用新案公報
甲第6号証 実願昭63-56075号(実開平1-15975 1号)のマイクロフィルム
甲第7号証 実願昭59-96569号(実開昭61-1132 4号)のマイクロフィルム

2.被請求人
被請求人は、これらに対して、以下の反論をする。
(1)訂正請求による訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものであって、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(2)前記訂正により、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載とは十分に整合するから、本件登録は、実用新案法第5条第5項の規定に違反してなされたものでない。

(3)前記訂正により、実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、甲第3号証乃至甲第7号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案することができたものでない。

第3 当審の判断
1.審判請求理由補正の採否について
平成12年8月16日付審判請求理由補正書において、請求人は、芯板収容部に「『入れ』られた芯板は、その下面が布地7に当接し、それに支持されているものであることが明らかである。にもかかわらず、本件実用新案の明細書の実用新案登録請求の範囲には、芯板9が布地7で支持されていることについて記載がなく、実用新案法第5条第5項第2号に規定する要件を満たしていない」(第2頁下から6?1行)旨主張するが、この内容は、審判請求書の「ロ’.芯板9は、芯板収納部8に入れた状態で布7により下面を受け止められ、該布7で支持されるものであること を必須不可欠の構成要件とするものである」(第7頁23?25行)、「本件考案の必須不可欠の構成要件である前記イ、ロ、またはロ’の構成事項が記載されていない」(第8頁17?19行)、「本件実用新案登録請求の範囲の記載は、明らかに実用新案法第5条第1項第2号の規定に違反するものである」(第8頁21?22行)との主張と格別異なるものと認められないから、前記補正書による補正は、本件審判請求の要旨を変更するものでない。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
(a)訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1における「上記バッグ本体の上面を布地7で上部の芯板収容部8と、下部の物入れ5に仕切り、」との記載を、「上記バッグ本体の内部を布地7で上部の芯板収容部8と、下部の物入れ5に仕切り、」と訂正する。
(b)訂正事項b
実用新案登録請求の範囲の請求項1における「芯板収容部8の前面にも開閉具10で開閉可能な開閉口を設けた」との記載を、「芯板収容部8の前面にも開閉具10で開閉可能な開閉口を設け、この開閉口を通じて前記芯板を取出せるようにした」と訂正する。
(c)訂正事項c
明細書の段落【0004】の【課題を解決するための手段】の記載において、「バッグ本体の上面を布地7で上部の芯板収容部8と、下部の物入れ5に仕切り、」との記載を「バッグ本体の内部を布地7で上部の芯板収容部8と、下部の物入れ5に仕切り、」と訂正する。
(d)訂正事項d
明細書の段落【0004】の【課題を解決するための手段】の記載において、「この芯板収容部8の前面にも開閉具10で開閉可能な開閉口を設けた」との記載を、「この芯板収容部8の前面にも開閉具10で開閉可能な開閉口を設け、この開閉口を通じて前記芯板を取出せるようにした」と訂正する。

(2)訂正の目的、新規事項の有無
(a)訂正事項a、c
登録時の明細書又は図面(以下、「登録明細書等」という。)において、バッグ本体における「布地7」と関連する記載としては、(ア)「上記バッグ本体の上面を布地7で上部の芯板収容部8と、下部の物入れ5に仕切り、」(実用新案登録請求の範囲抜粋)、(イ)「バッグ本体の上面を布地7で上部の芯板収容部8と、下部の物入れ5に仕切り、」(段落【0004】抜粋)、(ウ)「バッグ本体1の上面6の裏には布地7で物入れ5と仕切って芯板収容部8を形成し、」(段落【0006】抜粋)、(エ)第1図における、バッグ本体1の開閉具10と開閉具4の間と、対向するバッグ本体の面の下端とを結ぶ斜め下方への実線、があると認められる。
前記各記載内容を検討すると、前記(ア)、(イ)の記載は、文言どおりに理解すれば、「バッグ本体の上面」を「布地7」で「上部の芯板収容部8と、下部の物入れ5に」仕切ることを表現したことになるが、これでは明らかに、前記(ウ)、(エ)の内容と整合せず、しかも、登録明細書等の「芯板収容部8を物入れとして使用することができ、物入れ5に入れる小物と、芯板収容部8に入れる小物の種類を変え、整理できる」(段落【0010】抜粋、段落【0012】にも同趣旨の記載有。)との記載とも矛盾する。
したがって、前記(ア)、(イ)は、明瞭でない記載と認められる。
そこで、前記(ウ)についてみると、前記(ウ)の記載は、「バッグ本体1の上面6の裏には」「芯板収容部8を形成」すること、及び、その形成を具体的に「布地7で物入れ5と仕切って」行うこと、を表現したものと解することができ、この解釈に立つと、前記(エ)及び登録明細書等の他の記載とも整合すると認められる。
そして、この前記(ウ)の記載内容及び前記(エ)によれば、バッグ本体での「布地7」がバッグ本体の内部のいずれの位置にあるかということは、登録明細書等に何ら示唆されておらず、単に、バッグ本体の内部に布地7がある、ということだけが、前記(ウ)、(エ)から直接的かつ一義的に導き出すことができる事項と認められる。
そうしてみると、訂正事項a、cは、明瞭でない記載の釈明を目的として、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。

(b)訂正事項b
訂正事項bの「この開閉口を通じて前記芯板を取出せるようにした」との文言は、登録明細書等の「図示の如く芯板収容部8用の、同様なスライドファスナなどの開閉具10で開閉可能な開閉口を設けてある。こうすると、幼児が成長して抱く必要が無くなったとき、或いは必要に応じ、芯板収容部8から芯板9を外に取出し、」(段落【0010】抜粋、段落【0012】にも同趣旨の記載有。)との記載及び図面から直接的かつ一義的に導き出すことができる事項で、しかも、登録時の実用新案登録請求の範囲の請求項1における「開閉具10で開閉可能な開閉口」の大きさを機能的に限定すると認められるから、訂正事項bは、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。

(c)訂正事項d
訂正事項dは、訂正事項bによって訂正される実用新案登録請求の範囲の記載と、【課題を解決する手段】の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものであって、訂正事項bと同じ理由により、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。

(3)拡張・変更の存否
登録時の請求項1に係る考案は、登録明細書等の記載からみて、(ア)従来のバッグ本体の上面は布又は革でグニャグニャしているため、その上に幼児を腰かけさせて抱こうとするとバッグ本体は型崩れし、小物の出し入れに支障が生じ、(イ)腰かけた幼児の座り心地も悪いこと、を課題(段落【0003】参照。)とし、(ウ)バッグは、単に小物入れとして使用するばかりでなく、(エ)バッグ本体の上面に幼児を腰かけて抱くこともでき、この場合、上面上に腰かけた幼児の体重を腰の回りに装着したバッグ本体で支え、(オ)必要に応じ、芯板収容部から芯板を外に取出し、芯板収容部を物入れとして使用することができる、との効果(段落【0012】参照。)を生じると認められる。
そして、この課題と効果からみて、訂正事項a乃至dによる訂正は、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項a乃至dによる訂正は、実用新案法第40条第2項及び同条第5項で準用する第39条第2項の規定に適合するから、当該訂正を認める。

3.本件登録考案に対する判断
(1)実用新案法第5条第5項第1号
請求項1の「上記バッグ本体の内部を布地7で上部の芯板収容部8と、下部の物入れ5に仕切り、」「芯板収容部8中にはバッグ本体の上面6を内側から補強する芯板9を入れる」という構成要件に関して、考案の詳細な説明には、実施例として、第1図とともに、「バッグ本体1の上面6の裏には布地7で物入れ5と仕切って芯板収容部8を形成し、この収容部8に上面6とほゞ同大の発泡ポリエチレンその他の適当な芯板9を入れ、芯板9によりバッグ本体1の上面6を内側から補強してある。」(段落【0006】)との記載があり、また、請求項1の「物入れの前面に開閉具4で開閉可能な開閉口を設け、」「芯板収容部8の前面にも開閉具10で開閉可能な開閉口を設け、この開閉口を通じて前記芯板を取出せるようにした」という構成要件に関して、考案の詳細な説明には、実施例として、第1図、第2図とともに、「バッグ本体の前面には、物入れ5用の開閉口の上に、図示の如く芯板収容部8用の、同様なスライドファスナなどの開閉具10で開閉可能な開閉口を設けてある。こうすると、幼児が成長して抱く必要が無くなったとき、或いは必要に応じ、芯板収容部8から芯板9を外に取出し、」(段落【0010】抜粋)との記載があることからみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は考案の詳細な説明に記載したものであると認められる。
したがって、本件登録は、実用新案法第5条第5項第1号の規定に違反していない。

(2)実用新案法第5条第5項第2号
請求項1に係る考案において、
(a)芯板9は、その上面がバッグ本体1の上面とほぼ同大であること(段落【0006】参照)、
(b)芯板9は、芯板収容部8の断面形状とほぼ対応する断面形状を有するものであること(段落【0007】参照)、
(c)芯板9は、芯板収容部8に入れた状態で布7により下面を受け止められ、該布7で支持されるものであること、
が構成に欠くことができない事項であるか、検討する。
(a)請求項1に係る考案は、前記2.(3)で示したように、従来のバッグ本体の上面がグニャグニャしているため、その上に幼児を腰かけさせて抱こうとするとバッグ本体は型崩れするので、小物の出し入れに支障が生じ、また、腰かけた幼児の座り心地も悪いということを課題としており、その上面の「グニャグニャ」による「型崩れ」を、「バッグ本体の上面6を内側から補強する」(実用新案登録請求の範囲抜粋)ことを本質的な解決原理として防止するもので、その解決原理の具現化の手段として、「芯板収容部8中にはバッグ本体の上面6を内側から補強する芯板9を入れる」(実用新案登録請求の範囲抜粋)ことを採用したものと認められる。
そうしてみると、芯板9の上面の大きさや断面形状、或いはその支持構造は、必ずしも、請求項1に係る考案の構成に欠くことができない事項ということができず、前記解決原理を達する程度で足り、そして、このことは、考案の詳細な説明において、前記(a)乃至(c)が実施例として記載されていることとも符合する。
したがって、本件登録は、実用新案法第5条第5項第2号の規定に違反していない。

(3)実用新案法第3条第2項
(a)本件登録考案
平成12年10月27日付け訂正請求によって訂正された実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下、「本件登録考案」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものであって、その課題、効果は、前記2.(3)に示したとおりのものと認められる。

「【請求項1】
バッグ本体の両端部に長さの調節が可能なウエストベルトを連結したウエストバッグにおいて、上記バッグ本体の内部を布地7で上部の芯板収容部8と、下部の物入れ5に仕切り、物入れの前面に開閉具4で開閉可能な開閉口を設け、芯板収容部8中にはバッグ本体の上面6を内側から補強する芯板9を入れると共に、この芯板収容部8の前面にも開閉具10で開閉可能な開閉口を設け、この開閉口を通じて前記芯板を取出せるようにしたことを特徴とするウエストバッグ。」

(b)甲号各証
本件登録の出願前の平成1年12月20日に頒布された実願昭63-72280号(実開平1-177961号)のマイクロフィルム(甲第1号証)には、「子供運搬具」(考案の名称)に関して、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「第1図、第5図に示すように本考案の一実施例に係る子供運搬具10は、子供が載る腰掛け台11と、該腰掛け台11の後部に取付けられる腰バンド12と、該腰掛け台11の前部に取付けられる手掛けバンド13とを有して構成されている。
以下、これらについて詳しく説明する。
上記腰掛け台11の表面部材14は第4図に示すように皮革、合成樹脂あるいは布等からなって、内部には軽量部材の一例である発泡スチロール15が収納され、しかもその周囲をプラスチック等によって囲まれた直方体状の空洞部からなるテッシュペーパー収納部16が設けられている。このテッシュペーパー収納部16の下部周囲にはジッパー17が設けられている下部蓋18が開口するようになっていると共に、下部蓋18の中央には第3図に示すように線状の切込19があって、第5図に示すように一枚ずつ内部に収納されたテッシュペーバー20を取り出すことができるようになっている。」(第4頁12行?第5頁10行)
(イ)「上記腰掛け台11の後部には腰当て部の幅に対応して第1図及び第5図に示すように腰バンド12が取付けられているが、この腰バンド12は中間の部分よりやや細くなって、その先端には通常のバンドに取付けられているような係止具23、24が設けられて、全体を腰回りに取付けることができるようになっている。
なお、この腰バンドにその長さを調整できる長さ調整機構を設けておくことも可能であるが、係止具23、24の部分でその長さを調整できるようなものを採用しても良い。」(第6頁4?14行)
(ウ)「特に請求の範囲第2項の子供運搬具にいては、腰掛け台の下部にテッシュペーパー収納部が設けられているので、直ぐ取り出して子供のよだれ等を拭くことができる。」(第9頁11?14行)

また、同じく、本件登録の出願前の平成2年5月11日に頒布された特開平2-124107号公報(甲第4号証)には、「幼児抱接用具」(発明の名称)に関して、図面とともに、次の記載がある。
(エ)「第1図乃至第3図において、1は幼児抱接用具であって、2はその腰掛台を示す。該腰掛台2はΓ形状に形成され且つその縦向きの装着面3は体に当接し易いように横方向に沿って稍弧状に屈曲されている。そして、縦向きの装着面3と横向きの腰掛面4は厚い布地5、6で被覆されており、更に腰掛台2内側の空間部は必要に応じ上記布地5,6を延成しファスナー7を設けて小物入れ用の袋部8を形成してある。9は 腰掛面4側の内面適所に付けたバックルを示す。
又、10は上記腰掛台29の装着面3側に取付けた腰ベルトであって、その自由端部には互い係脱し得るバックル11,12を設け、且つ長さを任意に調節し得る止め具13を付設してある。」(第2頁右上欄4?17行)

また、同じく、本件登録の出願前の平成2年5月18日に頒布された実開平2-66149号公報(甲第5号証)には、「乳幼児抱き用補助具」(考案の名称)に関して、図面とともに、次の記載がある。
(オ)「乳幼児等を抱く際の補助具において、側板とその上部から水平方向に延ばし広げた台部とからなる骨板を構造上の基として、これを布、合成皮或いは皮等で覆い袋状容器を形成する。
上記骨板の内側に沿って本体を貫通するベルトを取り付ける。
布状容器に開閉口を設ける。
以上の様に横成した乳幼児抱き用補助具。」(実用新案登録請求の範囲)

また、同じく、本件登録の出願前の平成1年11月6日に頒布された実願昭63-56075号(実開平1-159751号)のマイクロフィルム(甲第6号証)には、「ポーチ付ベスト型おんぶバンド」(考案の名称)に関して、図面とともに、次の記載がある。
(カ)「まず、前で交差していたひもに胸あて(1)を付け、中央で開閉できるベスト型に改良し、結んで調節していたひもの長さは、肩ひも調節具(3)及び腰ひも調節具(4)によって調整する。固定具(6)を差し込み口(9)に差し込んで子どもの位置がウエストより下にずれないようにする。この時腰ひもをウエストのサイズにひったりと締めるとより効果的である。」(第2頁12?19行)
(キ)「使用後のおんぶバンドの収納用と、軽い手荷物等を入れるポーチ(8)を腰ひもの下、つまり子供のおしりの下の位置に設ける。」(第3頁2?4行)
(ク)「使用後のおんぶバンド部(7)はポーチ(8)に設けたおんぶバンド部収納ポケット(10)にすべて収納される。」(第3頁10?13行)
(ケ)「紙おむつ等の軽い手荷物はポーチに収納できるので、手荷物が減り動きも楽である。また、だっこ時に問題とされていた足もとが見えにくい点も、脇で抱くことにより解決される。ウエストの差し込み口に差し込んだ固定具(6)は肩の負担を軽くする効果があり、子供がぶら下がるように下がるのを防ぐため、子供の脚が締め付けられることも従来より少なくなるので良い。不用時にはコンパクトに収納できるので、外出時には便利である。」(第4頁9?18行)

また、同じく、本件登録の出願前の昭和61年1月23日に頒布された実願昭59-96569号(実開昭61-11324号)のマイクロフィルム(甲第7号証)には、「ウエストバッグ」(考案の名称)に関して、図面とともに、次の記載がある。
(コ)「従来のウェストバッグは、第3図に示すように、本体収容部01の上方に小物を収容するための小収容部02を形成しているが、この小収容部は水平方向に奥行きのある偏平なものであると共に開閉手段としてのチャック03は腰と反対側の後方に取り付けてあることから、腰にウェストバッグを巻いたままでこの小収容部02内に小物を出し入れするには不便である。又、小収容部02は水平のため、チャック03を開いた際に小物が転げ落ちる危険もある。」(第1頁下から3行?第2頁7行)
(サ)「10は本体収容部2と小収容部6を仕切っている仕切り布である。」(第3頁7?8行)

(c)対比・判断
そこで、本件登録考案と甲第3号証記載のものとを対比すると、甲第3号証の「腰バンド」は本件登録考案の「ウエストベルト」に相当し、甲第3号証の「発泡スチロール」が本体の上面を内側から補強するという機能を有するから、甲第3号証の「発泡スチロール」及び「発泡スチロール収納部」は本件登録考案の「芯板9」及び「芯板収容部8」に相当し、甲第3号証の「テッシュペーパー」も小物ということがいえるから、甲第号3証の「テッシュペーパー収納部」は本件登録考案の「物入れ5」に相当し、甲第3号証の「ジッパー17」は本件登録考案の「開閉具4」に相当する。また、甲第3号証の「幼児運搬具」と本件登録考案の「ウエストバッグ」とは、腰に巻く運搬具本体であることで共通し、甲第3号証の「プラスチック等」と本件登録考案の「布地7」とは、本体内部を仕切る仕切部材である点で共通する。
そうしてみると、両者は、
運搬具本体の両端部に長さの調節が可能なウエストベルトを連結した運搬具本体において、上記運搬具本体の内部を仕切部材で上部の芯板収容部と、下部の物入れに仕切り、物入れの前面に開閉具で開閉可能な開閉口を設け、芯板収容部中には運搬具本体の上面を内側から補強する芯板を入れる運搬具本体、

で一致し、次の点で相違する。

【相違点】
本件登録考案は、本体が「ウエストバッグ」であって、仕切部材が「布地7」からなり、「芯板収容部の前面にも開閉具で開閉可能な開閉口を設け、この開閉口を通じて前記芯板を取出せるようにした」のに対して、甲第3号証記載のものは、本体が「幼児運搬具」であって、仕切部材が「プラスチック等」からなる点。

そこで、【相違点】について検討する。
まず、甲第4号証の前記(b)(エ)についてみると、甲第4号証に記載のものは、「幼児抱接用具」であって、「腰掛台2内側の空間部は必要に応じ上記布地5,6を延成しファスナー7を設けて小物入れ用の袋部8を形成し」、腰ベルトの「長さを任意に調節し得る」ことが記載されているが、甲第4号証の「幼児抱接用具」を「ウエストバッグ」に転用することや、本件登録考案の「芯板」に相当する甲第4号証の「腰掛台」を、開閉口を通じて取出せるようすることは記載も、示唆もされていない。

次に、甲第5号証の前記(b)(オ)についてみると、甲第5号証に記載のものは、「乳幼児抱き用補助具」であって、「本体を貫通するベルト」を有し、「布状容器に開閉口を設ける」ことが記載されているが、甲第5号証の「乳幼児抱き用補助具」を「ウエストバッグ」に転用することや、本件登録考案の「芯板」に相当する甲第5号証の「骨板」を、開閉口を通じて取出せるようすることは記載も、示唆もされていない。

次に、甲第6号証の前記(b)(カ)乃至(b)(ケ)についてみると、甲第6号証に記載のものは、「ポーチ」であって、当該「ポーチ」は、「使用後のおんぶバンド」や「軽い手荷物等」、或いは、不用時の「固定具(6)」を収納する(前記(ケ)、第4図(おんぶバンド部収納途中の図参照。)が、使用時の「固定具(6)」は、前記(カ)の記載及び第3図(固定具を取り付けておんぶをした状態の図)からみて、差し込み口(9)に差し込んで、子供を直接支えるものと認められるから、甲第6号証の「固定具(6)」は、本件登録考案の「バッグ本体の上面6を内側から補強する芯板9」に相当せず、しかも、不用時に、開閉口を通じて取出せるものでもない。

次に、甲第7号証の前記(b)(コ)乃至(b)(サ)についてみると、甲第7号証に記載のものは、「ウェストバッグ」であって、本体収容部01の上方に小物を収容するための小収容部02を仕切り布で形成し、この小収容部02に開閉手段としてのチャック03を腰と反対側の後方に取り付けてある点で、本件登録考案に相当する構成といえるが、本件登録考案の「バッグ本体の上面6を内側から補強する芯板9」が、開閉口を通じてを取出せることについての記載も、示唆もない。

以上を総合すると、甲第3号証乃至甲第5号証には、「芯板を取出せるようにした」点の記載や示唆がなく、このことは、甲第3号証乃至甲第5号証記載のものが、幼児を抱くための補助具を前提としていることからも肯首でき、また、甲第6号証の「固定具(6)」は、本件登録考案の「バッグ本体の上面6を内側から補強する芯板9」に相当せず、不用時に、開閉口を通じて取出せるものでもない。そして、甲第7号証には、本体の内部に「小収容部02」を仕切り布で形成した「ウェストバッグ」において、「小収容部02」に「チャック03」を設けることが記載されているにすぎない。
そうしてみると、甲第3号証乃至甲第7号証には、本件登録考案の「バッグ本体の上面6を内側から補強する芯板9」を開閉口を通じてを取出せるようにすることが記載も、示唆もされておらず、しかも、この構成により、本件登録考案は、前記2.(3)(ウ)乃至(オ)に示したとおり、バッグは、単に小物入れとして使用するばかりでなく、バッグ本体の上面に幼児を腰かけて抱くこともでき、必要に応じ、芯板収容部から芯板を外に取出し、芯板収容部を物入れとして使用することができる、との効果を生じるものと認められる。

したがって、本件登録考案は、甲第3号証乃至甲第7号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案することができたといえない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件登録を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、実用新案法第41条で準用し、特許法第169条で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担するものとする。
よって、結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
ウエストバッグ
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 バッグ本体の両端部に長さの調節が可能なウエストベルトを連結したウエストバッグにおいて、上記バッグ本体の内部を布地7で上部の芯板収容部8と、下部の物入れ5に仕切り、物入れの前面に開閉具4で開閉可能な開閉口を設け、芯板収容部8中にはバッグ本体の上面6を内側から補強する芯板9を入れると共に、この芯板収容部8の前面にも開閉具10で開閉可能な開閉口を設け、この開閉口を通じて前記芯板を取出せるようにしたことを特徴とするウエストバッグ。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、バッグ本体の両端部に長さの調節が可能なウエストベルトを連結したウエストバッグに関する。
【0002】
【従来の技術】
ウエストバッグは、バッグ本体の内部に財布、身回り品等の小物を入れ、バッグ本体の両端部に連結したウエストベルトで腰回りに装着するので、両手が自由に使えることからオートバイに乗ったり、行楽、旅行の際に使用することが普及してきた。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、従来のウエストバッグは身回り品等の小物入れに使用するだけで、他に用途は無い。つまり、バッグ本体の上面は布又は革でグニャグニャしているため、その上に幼児を腰かけさせて抱こうとするとバッグ本体は型崩れし、本体内部に入れた小物を取出したり、或いは本体内部に小物を入れるのに支障が生じる。又、腰かけた幼児の座り心地も悪い。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで本考案は物の出し入れに支障を生じることなく、必要に応じバッグ本体の上面上に幼児を腰かけさせて抱くことができるようにするため、バッグ本体の内部を布地7で上部の芯板収容部8と、下部の物入れ5に仕切り、物入れの前面に開閉具4で開閉可能な開閉口を設け、芯板収容部8中にはバッグ本体の上面6を内側から補強する芯板9を入れると共に、この芯板収容部8の前面にも開閉具10で開閉可能な開閉口を設け、この開閉口を通じて前記芯板を取出せるようにしたことを特徴とする。
【0005】
【実施例】
図示の実施例において、1はバッグ本体、2はその本体の両端部に連結したウエストベルトで、ウエストベルトの途中は長さ調節装置を備えたバックル3で接続し、ベルトの長さを調節できると共に、接続を途中で切り離し、腰への着脱を容易にしてある。そして、本体の前面にスライドファスナなどの開閉具4で開閉可能な開閉口を設け、財布などの小物をバッグ本体の内部の物入れ5にしまって置くことができるようになっている。
【0006】
バッグ本体1の上面6の裏には布地7で物入れ5と仕切って芯板収容部8を形成し、この収容部8に上面6とほゞ同大の発泡ポリエチレンその他の適当な芯板9を入れ、芯板9によりバッグ本体1の上面6を内側から補強してある。
【0007】
芯仮9は平らな厚板状であってもよいが、この実施例の芯板収容部8の断面形状は楔形であるため、芯板9の断面形状はそれに対応した図示の如き楔形になっている。
【0008】
このようにバッグ本体の上面6は芯板収容部8に収容した芯板9で補強してあるため、上面6上に破線で示すように幼児を腰掛けさせて抱いてもバッグ本体は形崩れせず、安定しているから、支陣なく物入れ5内から小物を取出したり、物入れに小物を入れることができると共に、幼児の座り心地もよい。
【0009】
そして、バッグ本体の両端部にウエストベルト2を連結する際、本体の両端部とウエストベルトの間に図示のような角度αを保たせて置くと、ウエストベルト2でバッグ本体を腰の回りに装着した場合、バッグ本体の前面は腰回りに接触する後面よりも持ち上がり、本体の上面6は腰回りに向かって少し下り坂に傾き、上面6上に腰掛けた幼児は背中を親に押付けてもたれるため、幼児が前に落ちるのを防止でき、より安全に抱くことができる。
【0010】
更に、バッグ本体の前面には、物入れ5用の開閉口の上に、図示の如く芯板収容部8用の、同様なスライドファスナなどの開閉具10で開閉可能な開閉口を設けてある。こうすると、幼児が成長して抱く必要が無くなったとき、或いは必要に応じ、芯板収容部8から芯板9を外に取出し、芯板収容部8を物入れとして使用することができ、物入れ5に入れる小物と、芯板収容部8に入れる小物の種類を変え、整理できる。
【0011】
又、バッグ本体の上面6は滑りにくゝし、その上に腰掛けた子供が前に滑り落ちるのを防止することが好ましい。それには上面6が布地である場合は、その布地を構成する糸の一部をゴム糸にするとか、布地に発泡剤を混合した塩化ビニールや、ゴム系塩化ビニールなどの発泡性溶液を含滲させて発泡させたり、シリコン樹脂を塗布したり、ゴムの薄板を布地の上に接着、縫着などで固定すればよい。勿論、上面6そのものをゴム等の滑りにくい材料で構成してもよい。
【0012】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案のウエストバッグは、行楽、旅行の際に装着し、単に小物入れとして使用するばかりでなく、幼児を抱く必要が生じたとき、バッグ本体の上面に幼児を腰かけて抱くこともできる。この場合、上面上に腰かけた幼児の体重は腰の回りに装着したバッグ本体で支えるため、手だけで抱くよりも力を要さず、楽に抱くことができる。更に、芯板収容部の前面にも開閉具で開閉可能な開閉口を設けてあるので、幼児が成長して抱く必要が無くなったとき、或いは必要に応じ、芯板収容部から芯板を外に取出し、芯板収容部を物入れとして使用することができ、物入れに入れる小物と、芯板収容部に入れる小物の種類を変え、整理できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案のウエストバッグの一実施例の一部を断面にした側面図である。
【図2】
本考案のウエストバッグの一実施例の全体の斜視図である。
【符号の説明】
1 バッグ本体
2 ウエストベルト
4 物入れの開閉口の開閉具
5 物入れ
6 上面
8 芯板収容部
9 芯板
10 芯板収容部の開閉口の開閉具
訂正の要旨 訂正事項
a.実用新案登録請求の範囲の請求項1における「上記バッグ本体の上面を」との記載を「上記バッグ本体の内部を」に、「芯板収容部8の前面にも開閉具10で開閉可能な開閉口を設けた」との記載を「芯板収容部8の前面にも開閉具10で開閉可能な開閉口を設け、この開閉口を通じて前記芯板を取出せるようにした」に訂正する。
b.明細書の【課題を解決するための手段】の記載を、訂正後の上記実用新案登録請求の範囲の記載に合致させる。
審理終結日 2001-02-27 
結審通知日 2001-03-09 
審決日 2001-03-23 
出願番号 実願平3-36479 
審決分類 U 1 112・ 534- YA (A45C)
U 1 112・ 855- YA (A45C)
U 1 112・ 851- YA (A45C)
U 1 112・ 841- YA (A45C)
U 1 112・ 121- YA (A45C)
U 1 112・ 853- YA (A45C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 敏長  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 大久保 好二
冨岡 和人
登録日 1997-11-07 
登録番号 実用新案登録第2562930号(U2562930) 
考案の名称 ウエストバッグ  
代理人 福田 武通  
代理人 清水 久義  
代理人 伊藤 孝江  
代理人 福田 伸一  
代理人 福田 伸一  
代理人 高田 健市  
代理人 福田 賢三  
代理人 本渡 諒一  
代理人 福田 賢三  
代理人 福田 武通  
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