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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) G05D
管理番号 1066087
審判番号 審判1999-35011  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-12-29 
確定日 2002-09-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第2134718号実用新案「ガス圧力調整器」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第2134718号の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
実用新案登録第2134718号の請求項1及び請求項2に係る考案は、平成1年12月29日(優先日平成1年3月28日、日本国)に出願され、平成8年1月29日に出願公告され、平成8年9月10日にその実用新案の設定登録がなされ、平成10年12月29日にイノテック株式会社から請求項1に係る考案について無効審判が請求され、平成11年5月10日に訂正請求がされ、訂正拒絶理由が通知されたものである。
2.訂正の可否についての判断
2-1.本件訂正
上記訂正請求に係る訂正事項(以下、本件訂正という。)は、(a)訂正前明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1の「ダイヤフラム、」(4行乃至5行)及び考案の詳細な説明の項の「ダイヤフラム、」(実用新案公報4欄19行)の記載を「ダイヤフラムと、」と訂正、(b)訂正前明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1の「配置された箱体」を「配置された鍔を有する箱体」と訂正、考案の詳細な説明の項の「配置された箱体」(実用新案公報4欄25行)を「配置された鍔を有する箱体」と訂正、(c)訂正前明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1の「カバー内に配置され」を「カバー内のスプリング受座と前記箱体の鍔との間に配置され、」と訂正、考案の詳細な説明の項の「カバー内に配置され」(実用新案公報4欄29行)を「カバー内のスプリング受座と前記箱体の鍔との間に配置され、」と訂正、(d)訂正前明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項2において「配置された箱体、」と「第2調整スプリング」との間に「請求項1に記載の鍔に代えて、」の文字を挿入、考案な詳細な説明の項の「配置された箱体、」と「第2調整スプリング」との間(実用新案公報4欄34行)に「請求項1に記載の鍔に代えて、」を挿入、(e)訂正前明細書の考案の詳細な説明の項の「結部材」(実用新案公報3欄38行)を「連結部材」と訂正、(f)訂正前明細書の考案の詳細な説明の項の「シート部」(実用新案公報5欄12行及び13行)を「連結部材」と訂正、(g)訂正前明細書の考案の詳細な説明の項の「ダイヤウラム」(実用新案公報5欄17行)を「ダイヤフラム」と訂正、(h)訂正前明細書の考案の詳細な説明の項の「弁体」(実用新案公報5欄32行)を「反弁体」と訂正、(i)訂正前明細書の考案の詳細な説明の項の「溝」(実用新案公報5欄45行)を「隙間10」と訂正、(j)訂正前明細書の考案の詳細な説明の項の「弁体7」(実用新案公報6欄29行)を「弁体9」と訂正、(k)訂正前明細書の考案の詳細な説明の項の「流出孔」(実用新案公報6欄30行)を「流出口」と訂正、(l)訂正前明細書の考案の詳細な説明の項の「流量口」(実用新案公報8欄4行)を「流入口」と訂正しようとするものである。
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項(a)は明りょうでない記載の釈明に該当する。訂正事項(b)、(c)のうちの請求項1に係る訂正事項である「配置された鍔を有する箱体」及び「カバー内のスプリング受座と前記箱体の鍔との間に配置され、」は出願当初の明細書に添付された図面に示された構成で、係る構成の付加は実用新案請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、これによって実用新案登録請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではなく、訂正事項(b)、(c)のうち考案の詳細な説明の項に係る訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。訂正事項(d)、(h)は明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、訂正事項(e)、(f)、(i)、(j)、(k)及び(l)は誤記の訂正を目的とするものに該当する。
2-3.独立登録要件
2-3-1.訂正考案
訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された考案(以下、同項記載の考案を訂正考案という。)は次のとおりのものである。
「ガス流入口及びガス流出口を備えるとともに弁室及び弁シートを備えたハウジングと、上記ハウジングに被冠されたカバーと、上記ハウジングとカバーとの間に配置されたダイヤフラムと、該ダイヤフラムと上記ハウジングとの間に形成されたダイヤフラム室と、該ダイヤフラム室を介して上記ガス流入口とガス流出口とを連通する仕切体と、上記ダイヤフラムに連結されたダイヤフラムの変形により上記弁室内を移動して上記弁シートの開閉をなす弁体と、上記ダイヤフラムの反弁体側のカバー内に配置された鍔を有する箱体と、上記カバー内に配置され上記箱体を介してダイヤフラムを弁体方向に付勢する第1調整スプリングと、上記カバーに取り付けられ上記第1調整スプリングを調整するハンドルと、上記カバー内のスプリング受座と前記箱体の鍔との間に配置され、箱体を反弁体方向に付勢する第2調整スプリングと、を具備したことを特徴とするガス圧力調整器。」
2-3ー2.引用例
当審での訂正拒絶理由で引用した米国特許第4744387号明細書(無効審判請求人の提出した甲第1号証の1、以下、引用例1という。)に、「例えば、多くの工程が最高の純度で提供される流体を必要としている。実施例の一つが半導体工業の場合、この工業では、レギュレータそれ自身から流体の流れの中に導入された迷い子の微粒子は、これらが製品機能を破壊する場所にある製品に付着した時に極めて高価な製品をスクラップ化してしまう。一つの実施例は導電性粒子であって、チップ上の二つの電子素子を架橋してまう。レギュレータ内部でこの種の微粒子の発生原は、隔膜、バルブそして特に流体経路中のバネ類である。事例としてバネの屈曲作用、部品間の擦り合いまたはぶつかり合いが、相対する部品間のバネの摩擦を含めている。」(1欄19行乃至32行)、「自由作動するあらゆる部品及び流れ経路中の摩擦接触を取り除き、空隙部容積を最小化するために流れ経路から全てのバネを取り除くことが本発明の目的である。」(1欄48行乃至51行)、「本発明のレギュレータ10は、ネジ山13で螺合接合される二つの部品11、12で構成される本体を有する。バルブは作動線14を有する。入口15は伸びて本体に入り、感知空隙部21に入る。軸線14上のポペット通路22は入口空隙部及び出口空隙部と相互に連結する。隆起したリング形弁座25がポペット通路を取り囲み、ここで弁座が入口空隙部に入る。感知空隙部は部分的に本体で拘束され、また部分的に可撓性隔膜26で覆われる。該隔膜は円形(空隙部やポペット通路と同様に)であり、しかも中心部分は軸線方向に動き、この時隔膜を横切る差動力が変化する。ポペットステム27がポペット口を通るが周囲に隙間があるので摩擦は起きない。ポペットヘッド28がステムに取り付けられか、またはステムと一体構成される。ポペットヘッド上のシール29は座に接した時にポペット通路を閉じるように面している。」(2欄36行乃至58行)、「固定物32は隔膜に取付けられて封止されるフランジ32aをもつ。底部バネ案内33は隔膜に担持され、固定物32が通っている。上方バネ案内34は底部バネ案内に対面し、距離バネ35がこれら両方の案内間に置かれ、圧縮状態にある。」(3欄1行乃至6行)、「ポペットバネ60は固定物32と56の間に引っ張られた状態でその両端で保持された引っ張り形コイルバネである。このバネ60の性向は隔膜を上方に引き寄せる傾向をもつ。距離バネの性向は隔膜を下方に押し込む傾向をもつ。距離バネが印可する圧縮力は距離バネ調節ネジを旋回して調節できる。ポペットバネに加わる張力はポペットバネ調節ネジを旋回して調節できる。」(3欄25行乃至32行)、「流体の流れ中には、自由作動部品、またはバネ、または摩擦部品が存在しないことが観察されよう。唯一の物理的接触はポペットとその座の間のみである。」(3欄39行乃至42行)と記載されていることが認められ
、これらの記載によれば引用例1は訂正考案の技術的課題、すなわち、「弁の開閉、すなわち、弁体109の摺動に伴い、スプリング111が伸縮するが、このスプリング111の伸縮により、スプリングとハウジング101とが接触して、金属粉等が発生する。スプリング111はガス流路途中に配置されているので、上記発生した金属粉が流通するがガス中に混入して、ガスの品質を低下させてしまうという問題点があった。特に、ICの製造等の半導体産業において使用するガスは、高純度であることが望ましく、そのため、従来はスプリング111として耐食性に優れた特殊な材質のものを使用する等、コスト的にも好ましくない方策を余儀なくされていた。本考案は上記実情に鑑みてなされたもので、スプリングとハウジングとの摺接により発生する金属粉等がガス中に混入されることのないガス圧力調整器を提供することを目的としている。」(訂正明細書3頁5行乃至16行)という技術的課題と同様の技術的課題を解決するものであって、そのための構成として「ガス流入口とガス流出口を備えるとともに入口空隙部及びリング形弁座を一体的に備えた部品11と、上記部品11と部品12との間に形成された感知空隙部と、上記可撓性隔膜に連結された可撓性隔膜の変形により上記入口空隙部内を移動して上記リング形弁座の開閉をなすポペットヘッドと、上記可撓性隔膜の反ポペットヘッド側の部品12内に配置された底部バネ案内と上部バネ案内との配置され上記底部バネ案内を介して可撓性隔膜をポペットヘッド方向に付勢する距離バネと、上記部品12内に取り付けられ上記距離バネを調整する摘まみと、上記部品12内の固定物32と56との間に配置され、底部バネ案内を反ポペットヘッド方向に付勢するポペットバネと、を具備したガス圧力調整器」との考案(以下、引用例1考案という。)が開示されていると認めることができる。
同じく、当審の訂正拒絶理由で引用した米国特許第4807849号明細書(同甲第3号証の1以下、引用例2という。)に、「本発明の目的は、螺合手段の存在に起因する前述のバーチャルリークの問題を回避する改良した流体流れ制御装置を提供することにある。更に詳しくは、本発明の目的は、内部螺合手段を採用せずにシールを設計した位置に保持、すなわち締付ける構造をもち改良された流体流れ制御装置を提供することにある。」(1欄24行乃至31行)、「ここで図を参照すると、直径方向に漸増する力から、装置2のシール上に、集中中心力を生み出す目的で力を伝達するために、本発明の圧縮部材1が、本発明の流体流れ制御装置2の中に使用された状態が示されている。圧縮部材1は、集中中心力をシール3に与えるために圧縮部材の一方の側の中心に位置する第一表面4と、第一表面と反対側の部材1の第二側面状の大きい直径の第二表面5とを有する。第二表面5の半径方向外側部分6はその半径方向内側部分よりも高くなっていて、直径方向に大きい力が印可される接触表面を提供している。圧縮部材1には流体通路7が形成されており、この流体通路は第一表面4から第二表面5に向け部材の中心軸線8に沿いこの圧縮部材を貫通している。」(3欄46行乃至4欄7行)、「アーム10の下方表面11はくり抜き溝13を介して圧縮部材1の中心部分12に接合される。第二表面5の外側周辺部分の上には環状リム14があり、このリムは直径方向に漸増する力が印可される接触面となっている。このリム14はまたスペーサとしても機能し、流体流れ制御装置2の隔膜15を、図示のようなアーム10の中に均一に離間された四つの流体通路16の障害とならないように保持する。アーム10のテーパのーついた形状と、圧縮部材の下方中心部分12のくり抜き溝13とがこの圧縮部材の固定応力部材を構成する。すなわち、圧縮部材のアーム10のあらゆる部分は等しく応力を受け、圧縮部材のアームが負荷中心に湾曲するようになっている。くり抜き部分13がなかったならば、中心部分12とアーム10の下方表面11との交点に過剰応力が生じる筈である。」(4欄41行乃至59行)と記載されていることが認められる。
同じく、当審の訂正拒絶理由で引用した米国特許第1859089明細書(同甲第5号証の1以下、引用例3という。)に、「バルブ・ケーシング1は、入口フランジ2と出口フランジ3とそれぞれ、また弁シート支持物5中で終わる内部下向き排出流体進入チャネル4と一体化された鋳造物である。比較的短い円筒状ケーシング20はプランジャ・ダイヤフラム80を収容し、低圧膨張室として働く。この室本体は、バルブ・ケーシングのトップ・フランジ6にねじ込まれ、レンチを用いて。プランジャ・ダイヤフラムの周辺部分がその間に締め付けられて、ケーシングの直立フランジ部分23上に設けられた平面と係合する。膨張室のケーシングはトップ・キャップ30を担持する。バルブ・ケーシングの底部は、ねじによって連結された個別のボトム・カップ40によって形成されている。ダイヤフラムの中央で支持されて、垂直に延びるバルブ・オペレータは2つの一体にねじ込まれる部材50、60から成り、その間にはプランジャ・ダイヤフラムが締め付けられており、バルブを操作するための限られた垂直移動を自由に実施できる。下部の分岐部材またはヨーク部材50は、リング部分52中のねじ式結合によって作動可能なバルブ・ディスク51を担持し、上部中空スピンドル部材60は、それぞれ61と62とで示す内部押し下げスプリングと外部押し上げスプリングのためのガイドとして働く。バルブ・オペレータの押し下げがバルブの開きに該当し、バルブ・オペレータの押し上げがバルブの閉じに相当することは明白である。」(1頁左欄49行乃至右欄81行)、「ボトム・クロージャ40はソケット41付きで形成され、ソケット41は、バルブ・ディスク51から垂れ下がる棒部分56を受け入れ案内するために内側が機械加工されているので、バルブ・オペレータは正確に案内され、その移動は下向きに制限されている。ボトム・カップ40の着脱を容易にするために、その外側部分はナット面42を備えている。」(2頁左欄3行乃至11行)と記載されていることが認められる。
同じく、当審の訂正拒絶理由で引用した実願昭59-152387号(実開昭61-70211号)のマイクロフィルム(同甲第10号証、以下、引用例4という。)に、「第1図に示されるように、この減圧弁1は、供給ポンプ側に接続される一次側通路4とをそれぞれ開設されているボデー2を備えており、ボデー2には弁通路5が一次側通路3と二次側通路4とを連通するように開設されている。弁通路5には弁体7が進退自在に挿通されており、弁体7は弁通路5に形成されている弁座6に離着座することにより弁通路5を開閉するように構成されている。ボデー2には中空部8が形成されており、中空8の内部にはダイヤフラム11が中空部8を横断して2室に仕切るように張設されている。中空部8の内部をダイヤフラム11に仕切られてなる一方の室9には連絡通路13が二次側通路4に連通するように開設されており、この連通により、この室は圧力室を構成するようになっている。この圧力室9には弁体7の先端部が突出されており、弁体7はばね14により、ダイヤフラム11の中央部に保持されている受け具12にその先端面が常時当設するように、付勢されている。・・・この大気室10の内部には弁ばね16がボデー2に反力をとって弁体7を弁座6から離反させる方向に常時付勢するように配設されている。すなわち、大気室10における弁体7の延長線上には、ばね受け18を保持している調整ねじ部材17が進退調整可能に螺合されており、ばね受け18とダイヤフラム11の受け具12との間には、圧縮コイルばねからなる弁ばね16が蓄力状態で介設されている。また、大気室10の内部には感温ばね19がボデー2に反力をとって弁体7を弁ばね16の付勢方向とは反対方向に付勢するように配設されている。すなわち、ダイヤフラム11の受け具12には略筒形状に形成されているばね受け具20が、弁ばね16の外側を包囲するように同心的に配されて保持されており、ばね受け具20におけるダイヤフラム11とは反対側の端部に突設された係合部21と、大気室10の内周面におけるダイヤフラム11に寄った位置に突設されている係合部22との間には、昇温時に伸張する特性をもつ形状記憶合金により圧縮コイルばね形状に形成されている感温ばね19が弁ばね16と同心的に配されて介設されている。そして、この感温ばね19は大気室10の温度が上昇した時に、伸張変形することにより、弁ばね16に抗する付勢力を増加するように設定されている。」(4頁11行乃至7頁1行)と記載されていることが認められる。
2-3-3.対比・判断
訂正考案の構成要件の一部として実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されている「該ダイヤフラム室を介して上記ガス流入口とガス流出口とを連通する仕切体」に関し、訂正明細書に「上記ハウジング1には、カバー11が被冠されており、カバー11とハウジング1との間には仕切体13が介在している。この仕切体13はハウジング1側に固着されており、その中央部には弁シート15が形成されている。この弁シート15と上記弁体9とにより弁を構成している。」(訂正明細書4頁21行乃至24行)と記載され、また、図面第1図にはハウジング1、弁シート15、仕切体13はそれぞれ別体のものとして図示されているといえ、これらによれば、「該ダイヤフラム室を介して上記ガス流入口とガス流出口とを連通する仕切体」の技術的意味はハウジングとは別体のものとして備えられた弁シートを保持するものであって、それ以上の意味、すなわち、ガス圧力の調整に関与する等の技術的意味を有するものでないことは訂正明細書及び技術常識に照らして明らかである。
そこで、訂正考案と前示引用例1考案とを対比するに、まず、両者で使用されている用語につきそれらの技術的意味ないし機能の観点から考えると、引用例1考案の、「入口空隙部」、「リング形弁座」、「部品11」、「部品12」、「可撓性隔膜」、「感知空隙部」、「ポペットヘッド」、「距離ばね」、「摘み」、「ポペットばね」はそれぞれ訂正考案の「弁室」、「弁シート」、「ハウジング」、「カバー」、「ダイヤフラム」、「ダイヤフラム室」、「弁体」、「第1調整スプリング」、「ハンドル」、「第2調整スプリング」に相当するものといえる。
そうすると、両者は「ガス流入口及びガス流出口を備えるとともに弁室及び弁シートを備えたハウジングと、上記ハウジングに被冠されたカバーと、上記ハウジングとカバーとの間に配置されたダイヤフラムと、該ダイヤフラムと上記ハウジングとの間に形成されたとの間に形成されたダイヤフラム室と、該ダイヤフラムに連結されたダイヤフラムの変形により上記弁室内を移動して上記弁シートの開閉をなす弁体と、上記ダイヤフラムの反弁体側のカバー内に設けられたダイヤフラムを弁体方向に付勢する第1調整スプリングと、上記カバーに取り付けられ上記第1調整スプリングを調整するハンドルと、ダイヤフラムを反弁体方向に付勢する第2調整スプリングと、を具備したガス圧力調整器。」の点で一致し、
(1)訂正考案が弁シートをハウジングに別体に形成して備え、ダイヤフラム室を介してガス流入口とガス流出口とを連通する仕切体を設けたのに対し、引用例1考案が弁シートをハウジングに一体的に形成し、仕切体を備えていない点、
(2)訂正考案が第1調整スプリングを鍔を有する箱体に、第2調整スプリングを箱体の鍔とカバー内のスプリング受座との間に配置したのに対し、引用例1発明が第1調整スプリングを底部ばね案内と上方ばね案内との間に、第2調整スプリングを第1調整ばね内方に位置する上下の固定物の間に配置した点、でそれぞれ相違する。
前記各相違点について検討する。
イ.相違点(1)について
前示引用例2の記載によれば、引用例2には訂正考案が属する技術分野であるガス圧力調整器においてシール(訂正考案の弁シートに相当する。)をハウジングとは別体のものとして備え、このシールを流体通路を有する圧縮部材(訂正考案の仕切体に相当する。)で保持する構成が示されており、このハウジングとは別体として備えられたシールを引用例1考案のハウジングに一体的に形成された弁シートに代えて採用し、このシールの保持部材として圧縮部材を用いることは当業者が容易に着想できることであり、そして、引用例1考案にはその構成上シールと圧縮部材の採用を妨げるべき事情は存在しないのであるから、訂正考案の相違点(1)に係る構成は当業者がきわめて容易に想到できたものというべきである。
この点に関し、被請求人は、引用例1の構造に仕切体を具備させるためには、引用例2におけるリング20のように仕切体を押し付ける部材が必要となるが、カバー内にリング20のような部材を装着すると、その場所に訂正考案の第2調整スプリングが配置できなくなるので、引用例1、引用例2、引用例3及び引用例4の記載を単に組み合わせても、訂正考案のように第1調整スプリングの外側に第2調整スプリングを配置した状態で仕切板を具備する構成は得られない旨主張する(意見書5頁16行乃至22行)。
確かに、引用例2はリング20を設けているが、訂正拒絶理由が引用例2を引用した趣旨はガス圧力調整器においてシール(訂正考案の弁シートに相当する。)をハウジングとは別体のものとして備え、このシールを流体通路を有する圧縮部材(訂正考案の仕切体に相当する。)で保持する構成が存在するということであって、リング20までを引用しているものではない。そして、圧縮部材を押し付ける部材は、圧縮部材がその機能を発揮できる限度で採用して足りるものといえ、引用例1においては、可撓性隔膜を挟んでいる部材11(訂正考案のハウジングに相当する。)と部材12(訂正考案のカバーに相当する。)との部分にその適用の余地があるというべきである。
なお、訂正考案が第2調整スプリングが配置されるカバー内のスプリング受座と仕切体の関連構成について何ら限定するものでないことは訂正明細書の請求項1の記載に照らして明らかである。
したがって、被請求人の上記主張は採用できない。
ロ.相違点(2)について
前示引用例4の記載によれば、引用例4にはダイヤフラムの反弁体側のボデー(訂正考案のカバーに機能上相当する。)内に配置された係合部を有するばね受け具(訂正考案の鍔を有する箱体に相当する。)を介してダイヤフラムを弁体方向に付勢する弁ばね(訂正考案の第1調整スプリングに相当する。)とボデー内の係合部(訂正考案のカバー内のスプリング受座に相当する。)とばね受け具の係合部との間に箱体を反弁体方向に付勢するスプリングを配置するとの訂正考案の第1調整スプリングと第2調整スプリングの配置構成と共通する構成が示されている。
もっとも、引用例4の圧力制御弁はインクジェットプリンタのインクを加圧するもので、また、ボデー内の係合部とばね受け具の係合部に配置するスプリングが感温ばねである点で訂正考案とは異なるといえるが、しかし、引用例4のばね受け具自体についてみれば、その係合部に配設されるばねが感温ばねでなければ使用できないとする技術的理由は見当たらず、そうすると、引用例4からは、係合部を有するばね受け具の内外にばねを配置(ばね受け具の内部と係合部21と係合部22による外部に配置)するとの構成を摘出することができ、そして、引用例3には正確に案内させるためにバルブ・スティックから垂れ下がる棒部分をソケットに案内させるものではあるが、流体圧力調整弁においてナットを有するスピンドル部材を用いて内部押し下げスプリングをスピンドル内部に配置し、ナットとばね受け座との間に外部押し上げスプリングを配置するという技術思想が開示されているのであるから、この引用例3に接した当業者であれば引用例4の2つのばねを内部押し下げスプリング、外部押し上げスプリングとし、このばね受け具の構成を引用例1の第1調整スプリングと第2調整スプリングの配置に代えて適用しようとすることは容易に着想できるものといえ、そして、その適用にあたり、引用例1の底部ばね案内とダイヤフラムとの接続関係を鍔を有する箱体とダイヤフラムとの接続関係として足りるのであるから、訂正考案の相違点(2)に係る構成は当業者がきわめて容易に想到できたものというべきである。
この点に関し、被請求人は、引用例4における感温ばね19は、温度が上昇した場合の弁ばね16に抗する付勢力の調整を目的とし、常時弁体7を押し上げるように作用するものではなく、弁体7とばね受け部材20とが分離した構成が前提となっているのであり、感温ばねは、訂正考案の第2調整スプリングとその作用を全く異にし、感温ばねの有する作用を無視してばねの配置の仕方だけを単純に比較し、訂正考案のばねの配置構成を容易に想到できるものではなく、また、引用例3は、下方位置にガイド機構を有する流体圧力調整弁であり、引用例3及び引用例4を組み合わせても訂正考案における「箱体を使用した2つのばねの配置構成」にならない旨主張する(意見書5頁25行乃至6頁10行)。
確かに引用例4のばね受け具20の係合部21とボディー2に形成された係合部22との間に配設され、使用されるばねは感温ばねではあるが、しかし、引用例4の係合部21を有するばね受け具20自体の構成が、その係合部21に配設されるばねが感温ばねでなければばね受け具として使用できないとする技術的理由はなく、そうすると、引用例4からは、係合部を有するばね受け具の内外にばねを配置(ばね受け具の内部と係合部21と係合部22による外部に配置)するとの構成を摘出することができ、そして、引用例3には正確に案内させるためにバルブ・スティックから垂れ下がる棒部分をソケットに案内させるものではあるが、流体圧力調整弁においてナットを有するスピンドル部材を用いて内部押し下げスプリングをスピンドル内部に配置し、ナットとばね受け座との間に外部押し上げスプリングを配置すという技術思想が開示されているのであるから、引用例4の前示の係合部を有するばね受け具のばねの配置と引用例3のばねの配置関係から、「箱体を使用した2つのばねの配置構成」は容易に導き出せるというべきである。
したがって、被請求人の上記主張は採用できない。
また、被請求人は、カバーで覆うことにより独立部材としてのスプリング受座が固定され、このスプリング受座によりダイヤフラムとの間をシールする構成となっていると主張する(同6頁16行乃至17行)。
しかしながら、訂正発明がスプリング受座に関して規定するのは「カバー内のスプリング受座」とするだけで、この規定からは、スプリング受座がカバーの内側に一体として形成されているもの、別体のものとしてカバーの内側に位置するものとのいずれにも解することができる。そして、被請求人が主張するようにスプリング受座が独立部材(カバーの内側に位置するもの)と解したとしても、訂正考案が、スプリング受座がダイヤフラムとの間をシールすることについて何ら規定するものでないことは訂正明細書の請求項1の記載に照らして明らかであり、また、スプリング受座がその機能を発揮するには何らかに固定されていなければならないのであるから、そうすると、スプリング受座がカバーの内側に一体として形成されているものと別体のものとしてカバーの内側に位置するもの(別体としてカバー内に固定されているもの)との間には格別の技術的意義が存在するものとは認められない。
したがって、被請求人の上記主張は採用できない。
そして、訂正考案が奏する「まず。第2調整スプリング31の摺動に伴って発生する金属粉等のガス中への混入を防止することができるので、ガスの品質を維持することができる。特に。IC等の半導体の製造におけるように、高純度のガスを使用する場合には効果的である。また、第2調整スプリング31として、耐食性に優れた特殊のものを使用する必要はなく、設計自由度の拡大を図ることができる。」(訂正明細書5頁15行乃至6頁1行)との作用効果も引用例1乃至4から当業者が予測できる範囲のものである。
2-3-5.むすび
以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る考案は、引用例1乃至4の記載に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法(平成5年法律第26号)附則4条2項の旧実用新案法40条2項の読替規定中5号で準用する旧実用新案法39条3項において規定する独立要件に違反するものであるから、本件訂正は認めることのできないものである。
3.無効理由について
3-1.請求人の主張
a.本件請求項1に係る考案は、甲第5号証又は甲第10号証に記載された考案と同一であり、実用新案法3条1項3号の規定に違反して実用新案登録されたものであり、同法37条1項2号に規定に該当し無効とされるべきものである。
b.本件請求項1に係る考案の仕切体は必須の構成要素とはいえないから、本件登録実用新案は甲第5号証から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法3条2項の規定に違反して実用新案登録されたものであるから、同法37条1項2号の規定に該当し無効とされるべきものである。
c.本件登録実用新案の明細書及び図面(第5図)における従来技術(甲第19号証、甲第20号証、甲第21号証、甲第22号証)に甲第5号証、甲第10号証、及び甲第11号証、甲第13号証乃至甲第15号証のいずれかに記載された箱体に相当する構成を組み合わせて、本件請求項1に係る考案とすることは当業者がきわめて容易に想到できることであるから、本件登録実用新案は、実用新案法3条2甲の規定に違反して登録されたものであり、同法37条1項2号の規定に該当し無効とされるべきものである。
d.本件請求項1に係る考案は、甲第1号証の1の1及び甲第2号証の1、甲第6号証の1及び甲第7号証の1、甲第12号証の1のいずれかに記載された基本となる構成に、甲第3号証の1、甲第8号証の1及び甲第9号証のいずれかに記載の仕切体に相当する構成と、甲第5号証の1、甲第10号証、甲第11号証の1、甲第13号証の1乃至甲第15号証のいずれかに記載された箱体に相当する構成とを組み合わせて当業者であればきわめて容易に考案できたものであり、本件登録実用新案は実用新案法3条2項の規定に違反してなされたものであるから、同法37条1項2号項の規定に該当し無効とされるべきものである。
e.本件請求項1に係る考案は、甲第2号証の1乃至3、及び甲第16号証1及び2に記載された本件登録実用新案の出願前に日本国において公然と実施された考案(証人井本明良、同木村幸正の証言)であり、実用新案法3条1項2号に該当し、同法37条1項2号により無効とされるべきである。
f.本件明細書(請求項1及び考案の詳細な説明の項)には記載不備があり、実用新案法5条4項及び5項に規定する要件を満たさないものであるから、実用新案法37条1項4号の規定に該当し無効である。
3-1.当審の判断
請求人の上記理由dについて検討する。
3-1-1.本件登録実用新案の請求項1に係る考案(以下、同項記載の考案を本件考案という。)は、明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「ガス流入口及びガス流出口を備えるとともに弁室及び弁シートを備えたハウジングと、上記ハウジングに被冠されたカバーと、上記ハウジングとカバーとの間に配置されたダイヤフラム、該ダイヤフラムと上記ハウジングとの間に形成されたダイヤフラム室と、該ダイヤフラム室を介して上記ガス流入口とガス流出口とを連通する仕切体と、上記ダイヤフラムに連結されたダイヤフラムの変形により上記弁室内を移動して上記弁シートの開閉をなす弁体と、上記ダイヤフラムの反弁体側のカバー内に配置された箱体と、上記カバー内に配置され上記箱体を介してダイヤフラムを弁体方向に付勢する第1調整スプリングと、上記カバーに取り付けられ上記第1調整スプリングを調整するハンドルと、上記カバー内に配置され箱体を反弁体方向に付勢する第2調整スプリングと、を具備したことを特徴とするガス圧力調整器。」
3-1-2.
甲第1号証の1(米国特許第4744387号明細書、以下、引用例1という。)に、「例えば、多くの工程が最高の純度で提供される流体を必要としている。実施例の一つが半導体工業の場合、この工業では、レギュレータそれ自身から流体の流れの中に導入された迷い子の微粒子は、これらが製品機能を破壊する場所にある製品に付着した時に極めて高価な製品をスクラップ化してしまう。一つの実施例は導電性粒子であって、チップ上の二つの電子素子を架橋してまう。レギュレータ内部でこの種の微粒子の発生原は、隔膜、バルブそして特に流体経路中のバネ類である。事例としてバネの屈曲作用、部品間の擦り合いまたはぶつかり合いが、相対する部品間のバネの摩擦を含めている。」(1欄19行乃至32行)、「自由作動するあらゆる部品及び流れ経路中の摩擦接触を取り除き、空隙部容積を最小化するために流れ経路から全てのバネを取り除くことが本発明の目的である。」(1欄48行乃至51行)、「本発明のレギュレータ10は、ネジ山13で螺合接合される二つの部品11、12で構成される本体を有する。バルブは作動線14を有する。入口15は伸びて本体に入り、感知空隙部21に入る。軸線14上のポペット通路22は入口空隙部及び出口空隙部と相互に連結する。隆起したリング形弁座25がポペット通路を取り囲み、ここで弁座が入口空隙部に入る。感知空隙部は部分的に本体で拘束され、また部分的に可撓性隔膜26で覆われる。該隔膜は円形(空隙部やポペット通路と同様に)であり、しかも中心部分は軸線方向に動き、この時隔膜を横切る差動力が変化する。ポペットステム27がポペット口を通るが周囲に隙間があるので摩擦は起きない。ポペットヘッド28がステムに取り付けられか、またはステムと一体構成される。ポペットヘッド上のシール29は座に接した時にポペット通路を閉じるように面している。」(2欄36行乃至58行)、「固定物32は隔膜に取付けられて封止されるフランジ32aをもつ。底部バネ案内33は隔膜に担持され、固定物32が通っている。上方バネ案内34は底部バネ案内に対面し、距離バネ35がこれら両方の案内間に置かれ、圧縮状態にある。」(3欄1行乃至6行)、「ポペットバネ60は固定物32と56の間に引っ張られた状態でその両端で保持された引っ張り形コイルバネである。このバネ60の性向は隔膜を上方に引き寄せる傾向をもつ。距離バネの性向は隔膜を下方に押し込む傾向をもつ。距離バネが印可する圧縮力は距離バネ調節ネジを旋回して調節できる。ポペットバネに加わる張力はポペットバネ調節ネジを旋回して調節できる。」(3欄25行乃至32行)、「流体の流れ中には、自由作動部品、またはバネ、または摩擦部品が存在しないことが観察されよう。唯一の物理的接触はポペットとその座の間のみである。」(3欄39行乃至42行)と記載されていることが認められ
、これらの記載によれば引用例1は本件考案の技術的課題、すなわち、「弁の開閉、すなわち、弁体109の摺動に伴い、スプリング111が伸縮するが、このスプリング111の伸縮により、スプリングとハウジング101とが接触して、金属粉等が発生する。スプリング111はガス流路途中に配置されているので、上記発生した金属粉が流通するがガス中に混入して、ガスの品質を低下させてしまうという問題点があった。特に、ICの製造等の半導体産業において使用するガスは、高純度であることが望ましく、そのため、従来はスプリング111として耐食性に優れた特殊な材質のものを使用する等、コスト的にも好ましくない方策を余儀なくされていた。本考案は上記実情に鑑みてなされたもので、スプリングとハウジングとの摺接により発生する金属粉等がガス中に混入されることのないガス圧力調整器を提供することを目的としている。」(明細書3頁5行乃至16行)という技術的課題と同様の技術的課題を解決するものであって、そのための構成として「ガス流入口とガス流出口を備えるとともに入口空隙部及びリング形弁座を一体的に備えた部品11と、上記部品11と部品12との間に形成された感知空隙部と、上記可撓性隔膜に連結された可撓性隔膜の変形により上記入口空隙部内を移動して上記リング形弁座の開閉をなすポペットヘッドと、上記可撓性隔膜の反ポペットヘッド側の部品12内に配置された底部バネ案内と上部バネ案内との配置され上記底部バネ案内を介して可撓性隔膜をポペットヘッド方向に付勢する距離バネと、上記部品12内に取り付けられ上記距離バネを調整する摘まみと、上記部品12内の固定物32と56との間に配置され、底部バネ案内を反ポペットヘッド方向に付勢するポペットバネと、を具備したガス圧力調整器」との考案(以下、引用例1考案という。)が開示されていると認めることができる。
甲第3号証の1(米国特許第4807849号明細書、以下、引用例2という。)に、「本発明の目的は、螺合手段の存在に起因する前述のバーチャルリークの問題を回避する改良した流体流れ制御装置を提供することにある。更に詳しくは、本発明の目的は、内部螺合手段を採用せずにシールを設計した位置に保持、すなわち締付ける構造をもち改良された流体流れ制御装置を提供することにある。」(1欄24行乃至31行)、「ここで図を参照すると、直径方向に漸増する力から、装置2のシール上に、集中中心力を生み出す目的で力を伝達するために、本発明の圧縮部材1が、本発明の流体流れ制御装置2の中に使用された状態が示されている。圧縮部材1は、集中中心力をシール3に与えるために圧縮部材の一方の側の中心に位置する第一表面4と、第一表面と反対側の部材1の第二側面状の大きい直径の第二表面5とを有する。第二表面5の半径方向外側部分6はその半径方向内側部分よりも高くなっていて、直径方向に大きい力が印可される接触表面を提供している。圧縮部材1には流体通路7が形成されており、この流体通路は第一表面4から第二表面5に向け部材の中心軸線8に沿いこの圧縮部材を貫通している。」(3欄46行乃至4欄7行)、「アーム10の下方表面11はくり抜き溝13を介して圧縮部材1の中心部分12に接合される。第二表面5の外側周辺部分の上には環状リム14があり、このリムは直径方向に漸増する力が印可される接触面となっている。このリム14はまたスペーサとしても機能し、流体流れ制御装置2の隔膜15を、図示のようなアーム10の中に均一に離間された四つの流体通路16の障害とならないように保持する。アーム10のテーパのーついた形状と、圧縮部材の下方中心部分12のくり抜き溝13とがこの圧縮部材の固定応力部材を構成する。すなわち、圧縮部材のアーム10のあらゆる部分は等しく応力を受け、圧縮部材のアームが負荷中心に湾曲するようになっている。くり抜き部分13がなかったならば、中心部分12とアーム10の下方表面11との交点に過剰応力が生じる筈である。」(4欄41行乃至59行)と記載されていることが認められる。
甲第5号証の1(米国特許第1859089明細書、以下、引用例3という。)に、「バルブ・ケーシング1は、入口フランジ2と出口フランジ3とそれぞれ、また弁シート支持物5中で終わる内部下向き排出流体進入チャネル4と一体化された鋳造物である。比較的短い円筒状ケーシング20はプランジャ・ダイヤフラム80を収容し、低圧膨張室として働く。この室本体は、バルブ・ケーシングのトップ・フランジ6にねじ込まれ、レンチを用いて。プランジャ・ダイヤフラムの周辺部分がその間に締め付けられて、ケーシングの直立フランジ部分23上に設けられた平面と係合する。膨張室のケーシングはトップ・キャップ30を担持する。バルブ・ケーシングの底部は、ねじによって連結された個別のボトム・カップ40によって形成されている。ダイヤフラムの中央で支持されて、垂直に延びるバルブ・オペレータは2つの一体にねじ込まれる部材50、60から成り、その間にはプランジャ・ダイヤフラムが締め付けられており、バルブを操作するための限られた垂直移動を自由に実施できる。下部の分岐部材またはヨーク部材50は、リング部分52中のねじ式結合によって作動可能なバルブ・ディスク51を担持し、上部中空スピンドル部材60は、それぞれ61と62とで示す内部押し下げスプリングと外部押し上げスプリングのためのガイドとして働く。バルブ・オペレータの押し下げがバルブの開きに該当し、バルブ・オペレータの押し上げがバルブの閉じに相当することは明白である。」(1頁左欄49行乃至右欄81行)、「ボトム・クロージャ40はソケット41付きで形成され、ソケット41は、バルブ・ディスク51から垂れ下がる棒部分56を受け入れ案内するために内側が機械加工されているので、バルブ・オペレータは正確に案内され、その移動は下向きに制限されている。ボトム・カップ40の着脱を容易にするために、その外側部分はナット面42を備えている。」(2頁左欄3行乃至11行)と記載されていることが認められる。
甲第10号証(実願昭59-152387号(実開昭61-70211号)のマイクロフィルム、以下、引用例4という。)に、「第1図に示されるように、この減圧弁1は、供給ポンプ側に接続される一次側通路4とをそれぞれ開設されているボデー2を備えており、ボデー2には弁通路5が一次側通路3と二次側通路4とを連通するように開設されている。弁通路5には弁体7が進退自在に挿通されており、弁体7は弁通路5に形成されている弁座6に離着座することにより弁通路5を開閉するように構成されている。ボデー2には中空部8が形成されており、中空8の内部にはダイヤフラム11が中空部8を横断して2室に仕切るように張設されている。中空部8の内部をダイヤフラム11に仕切られてなる一方の室9には連絡通路13が二次側通路4に連通するように開設されており、この連通により、この室は圧力室を構成するようになっている。この圧力室9には弁体7の先端部が突出されており、弁体7はばね14により、ダイヤフラム11の中央部に保持されている受け具12にその先端面が常時当設するように、付勢されている。・・・この大気室10の内部には弁ばね16がボデー2に反力をとって弁体7を弁座6から離反させる方向に常時付勢するように配設されている。すなわち、大気室10における弁体7の延長線上には、ばね受け18を保持している調整ねじ部材17が進退調整可能に螺合されており、ばね受け18とダイヤフラム11の受け具12との間には、圧縮コイルばねからなる弁ばね16が蓄力状態で介設されている。また、大気室10の内部には感温ばね19がボデー2に反力をとって弁体7を弁ばね16の付勢方向とは反対方向に付勢するように配設されている。すなわち、ダイヤフラム11の受け具12には略筒形状に形成されているばね受け具20が、弁ばね16の外側を包囲するように同心的に配されて保持されており、ばね受け具20におけるダイヤフラム11とは反対側の端部に突設された係合部21と、大気室10の内周面におけるダイヤフラム11に寄った位置に突設されている係合部22との間には、昇温時に伸張する特性をもつ形状記憶合金により圧縮コイルばね形状に形成されている感温ばね19が弁ばね16と同心的に配されて介設されている。そして、この感温ばね19は大気室10の温度が上昇した時に、伸張変形することにより、弁ばね16に抗する付勢力を増加するように設定されている。」(4頁11行乃至7頁1行)と記載されていることが認められる。
3-1-3.対比・判断
本件考案の構成要件の一部として実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されている「該ダイヤフラム室を介して上記ガス流入口とガス流出口とを連通する仕切体」に関し、明細書の考案の詳細な説明の項に、「上記ハウジング1には、カバー11が被冠されており、カバー11とハウジング1との間には仕切体13が介在している。この仕切体13はハウジング1側に固着されており、その中央部には弁シート15が形成されている。この弁シート15と上記弁体9とにより弁を構成している。」(実用新案公報5欄9行乃至13行)と記載され、また、図面第1図にはハウジング1、弁シート15、仕切体13はそれぞれ別体のものとして図示されているといえ、これらによれば、「該ダイヤフラム室を介して上記ガス流入口とガス流出口とを連通する仕切体」の技術的意味はハウジングとは別体のものとして備えられた弁シートを保持するものであって、それ以上の意味、すなわち、ガス圧力の調整に関与する等の技術的意味を有するものでないことは明細書及び技術常識に照らして明らかである。
そこで、本件考案と前示引用例1考案とを対比するに、まず、両者で使用されている用語の意味につきそれらの技術的意味ないし機能の観点から考えると、引用例1考案の、「入口空隙部」、「リング形弁座」、「部品11」、「部品12」、「可撓性隔膜」、「感知空隙部」、「ポペットヘッド」、「距離ばね」、「摘み」、「ポペットばね」はそれぞれ本件考案の「弁室」、「弁シート」、「ハウジング」、「カバー」、「ダイヤフラム」、「ダイヤフラム室」、「弁体」、「第1調整スプリング」、「ハンドル」、「第2調整スプリング」に相当するものといえる。
そうすると、両者は「ガス流入口及びガス流出口を備えるとともに弁室及び弁シートを備えたハウジングと、上記ハウジングに被冠されたカバーと、上記ハウジングとカバーとの間に配置されたダイヤフラム、該ダイヤフラムと上記ハウジングとの間に形成されたとの間に形成されたダイヤフラム室と、該ダイヤフラムに連結されたダイヤフラムの変形により上記弁室内を移動して上記弁シートの開閉をなす弁体と、上記ダイヤフラムの反弁体側のカバー内に設けられたダイヤフラムを弁体方向に付勢する第1調整スプリングと、上記カバーに取り付けられ上記第1調整スプリングを調整するハンドルと、ダイヤフラムを反弁体方向に付勢する第2調整スプリングと、を具備したガス圧力調整器。」の点で一致し、
(1)本件考案が弁シートをハウジングに別体に形成して備え、ダイヤフラム室を介してガス流入口とガス流出口とを連通する仕切体を設けたのに対し、引用例1考案が弁シートをハウジングに一体的に形成し、仕切体を備えていない点、
(2)本件考案の第1調整スプリング、第2調整スプリングが箱体を介してそれぞれ設けられているのに対し、引用例1発明が第1調整スプリングを底部ばね案内と上方ばね案内との間に、第2調整スプリングを第1調整ばね内方に位置する上下の固定物の間に配置した点、でそれぞれ相違する。
前記各相違点について検討する。
イ.相違点(1)について
前示引用例2の記載によれば、引用例2には本件考案が属する技術分野であるガス圧力調整器においてシール(本件考案の弁シートに相当する。)をハウジングとは別体のものとして備え、このシールを流体通路を有する圧縮部材(訂正考案の仕切体に相当する。)で保持する構成が示されており、このハウジングとは別体として備えられたシールを引用例1考案のハウジングに一体的に形成された弁シートに代えて採用し、このシールの保持部材として圧縮部材を用いることは当業者が容易に着想できることであり、そして、引用例1考案にはその構成上シールと圧縮部材の採用を妨げるべき事情は存在しないのであるから、本件考案の相違点(1)に係る構成は当業者がきわめて容易に想到できたものというべきである。
ロ.相違点(2)について
前示引用例4の記載によれば、引用例4にはダイヤフラムの反弁体側のボデー(本件考案のカバーに機能上相当する。)内に配置された係合部を有するばね受け具(本件考案の箱体に相当する。)を介してダイヤフラムを弁体方向に付勢する弁ばね(本件考案の第1調整スプリングに相当する。)と反弁体方向に付勢するスプリングを配置するとの本件考案の第1調整スプリングと第2調整スプリングの配置構成と共通する構成が示されている。
もっとも、引用例4の圧力制御弁はインクジェットプリンタのインクを加圧するもので、また、ボデー内の係合部とばね受け具の係合部に配置するスプリングが感温ばねである点で本件考案とは異なるといえるが、しかし、引用例4のばね受け具自体についてみれば、それに配設されるばねが感温ばねでなければ使用できないとする技術的理由は見当たらず、そうすると、引用例4からは、ばね受け具の内外にばねを配置するとの構成を摘出することができ、そして、引用例3には正確に案内させるためにバルブ・スティックから垂れ下がる棒部分をソケットに案内させるものではあるが、流体圧力調整弁においてナットを有するスピンドル部材を用いて内部押し下げスプリングをスピンドル内部に配置し、ナットとばね受け座との間に外部押し上げスプリングを配置すという技術思想が開示されているのであるから、この引用例3に接した当業者であれば引用例4の2つのばねを内部押し下げスプリング、外部押し上げスプリングとし、このばね受け具の構成を引用例1の第1調整スプリングと第2調整スプリングの配置に代えて適用しようとすることは容易に着想できるものといえ、そして、その適用にあたり、引用例1の底部ばね案内とダイヤフラムとの接続関係を箱体とダイヤフラムとの接続関係として足りるのであるから、本件考案の相違点(2)に係る構成は当業者がきわめて容易に想到できたものというべきである。
そして、本件考案が奏する「まず。第2調整スプリング31の摺動に伴って発生する金属粉等のガス中への混入を防止することができるので、ガスの品質を維持することができる。特に。IC等の半導体の製造におけるように、高純度のガスを使用する場合には効果的である。また、第2調整スプリング31として、耐食性に優れた特殊のものを使用する必要はなく、設計自由度の拡大を図ることができる。」(実用新案公報6欄5行乃至12行)との作用効果も引用例1乃至4から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件考案は引用例1乃至引用例4から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由a乃至c及びe、fについて検討するまでもなく、本件登録実用新案の請求項1に係る考案は、実用新案法3条2項の規定に違反してなされたものであり、同法37条1項2号に該当し、請求項1に係る実用新案登録は無効とすべきものである。
審判に関する費用については、同法41条で準用する特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-03-09 
結審通知日 2001-03-23 
審決日 2001-05-01 
出願番号 実願平1-151529 
審決分類 U 1 112・ 121- ZB (G05D)
最終処分 成立  
特許庁審判長 大森 蔵人
特許庁審判官 菅澤 洋二
川端 修
登録日 1996-09-10 
登録番号 実用新案登録第2134718号(U2134718) 
考案の名称 ガス圧力調整器  
代理人 阿部 佳基  
代理人 阪本 清孝  
代理人 大塚 康徳  
代理人 志村 正和  
代理人 佐藤 泰正  
代理人 阿部 泰典  
復代理人 中島 麻里  
代理人 鈴木 正勇  
復代理人 渡辺 広己  
代理人 飯田 丘  
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