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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03H
管理番号 1066091
審判番号 不服2000-15448  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-28 
確定日 2002-10-09 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 75886号「圧電発振器」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 8月11日出願公開、実開平 7- 43004]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 【1】本願考案
本願は、平成5年12月28日の出願であって、その請求項1、2に係る考案は、平成12年10月30日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】発振回路を構成した絶縁基板に円筒容器の一端から2本のリード端子を導出した圧電振動子を実装した圧電発振器において、上記圧電振動子を絶縁基板の側部に配設するとともに上記2本のリード端子を上記絶縁基板の板面を延長した平面内において平行かつL字型に成型して上記絶縁板の一側板面の導電パターンに接続したことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】請求項1に記載したものにおいて、圧電振動子は水晶振動子であることを特徴とする圧電発振器。」
【2】引用刊行物記載の考案
(1)当審における平成14年4月8日付け拒絶の理由で引用した実願平2ー114527号(実開平4ー71017号)のマイクロフイルム(以下「刊行物1」という。)には、従来例と図面第3?4図及びこれに係わる記載、また図面第1図(2本のリード端子)の記載を参酌すると、以下のような技術的事項が記載されている。
(1-1)「ところで近年、発振回路を小形化するため小型の円筒容器に収納した水晶振動子を印刷配線基板に実装して構成した小型の水晶発振器が大量に製造され使用されている。第3図はこのような水晶発振器のカバーを取り外した外観の一例を示す側面図である。図中1は印刷配線基板でセラミック、ガラスエポキシ等の絶縁基板の板面に銅箔等の導電箔を貼りつけてエッチングして所定の形状の導電パターンを形成したものである。そして印刷配線基板1の導電パターンに集積回路いわゆるIC、抵抗、コンデンサ等の回路素子2および水晶振動子3を実装して水晶発振回路を構成する。………(中略)………。このために、たとえば第4図に示す平面図のように印刷配線基板1に水晶振動子3の円筒形の容器を収納する切り欠き5を形成し、ここに水晶振動子3を配置して、そのリード端子を印刷配線基板の一側板面に形成した導電パターンに半田付けするものもある。このようにすれば水晶振動子3は印刷配線基板1の厚みの略中程に保持されるため該基板1の両板面に回路素子2を実装することにより空間の有効利用を図り形状の小型化、特に高さ寸法を低くすることができる。しかしながらこのようなものでは、基板1に切り欠き5を設けるために基板1の加工が面倒で、しかも機械的な強度も低下する問題がある。」(公開明細書第2頁第5行?第4頁第9行、第3、4図参照)
(1-2)「以下、本考案の一実施例を第1図に示す平面図、第2図に示す側面図を参照して詳細に説明する。なお、第1図、第2図はカバーを取り外して示すものである。図中11は印刷配線基板でセラミック、ガラスエポキシ等の絶縁基板の板面に所定の形状の導電パターンを形成したものである。そして印刷配線基板11の導電パターンに集積回路、抵抗、コンデンサ等の回路素子12および水晶振動子13を実装して水晶発振回路を構成する。しかして、上記水晶振動子13は円筒形の容器に収納して端部から2本の端子を軸対称に導出しているので、この2本の端子を所定の長さに切断してL字型に折り曲げて先端部で印刷配線基板11を挟んでその両端板面に形成した導電パターンに、たとえば半田付けして電気的な導通を図るとともに保持するようにしている。なお基板11にはカバーをかぶせることはもちろんである。このような構成であれば、基板11は矩形に切断すればよいので強度の低下もなく加工も容易である。」(同第5頁第5行?第6頁第6行、第1、2図参照)
(2)同じく、当審における拒絶の理由で引用した特開平2-79507号公報(以下「刊行物2」という。)には、従来例と図面第4図及びこれに係わる記載を参酌すると、絶縁基板(回路基板9)に円筒容器の一端から2本のリード端子(12)を導出した圧電振動子(チューブラタイプ11の圧電振動子)を実装するものにおいて、「圧電振動子を絶縁基板(9)に対して非接触状に配設するとともに、2本のリード端子(12)を並行かつ同形状に湾曲成型して上記絶縁基板(9)の一側板面に接続することにより、耐振効果(吸振効果)を生じる」ようにした技術的事項が開示されている。(第1頁右下欄第12?16行、第4図参照)
【3】対比・判断
(1)請求項1に係る考案について
(対比)
請求項1に係る考案(以下「本願考案」という。)と上記刊行物1に記載された考案(第4図に係る)とを対比すると、刊行物1(第4図に係る)における「印刷配線基板(1)」「水晶振動子(3)」及び「水晶発振器」は、それぞれ本願考案における「絶縁基板」「圧電振動子」及び「圧電発振器」に相当するので、両者は、以下のとおりの一致点及び相違点を有するものと認められる。
(一致点)
「発振回路を構成した絶縁基板に円筒容器の一端から2本のリード端子を導出した圧電振動子を実装した圧電発振器において、上記圧電振動子を絶縁基板の側部に配設するとともに上記2本のリード端子を上記絶縁基板の板面を延長した平面内において平行にして上記絶縁基板の一側板面の導電パターンに接続した圧電発振器。」
(相違点)
圧電振動子の2本のリード端子について、本願考案にあっては、L字型に成型して絶縁基板の導電パターンに接続しているのに対して、刊行物1にあっては、直線状にして一部が切り欠かれた絶縁基板の導電パターンに接続している点、
(検討)
上記相違点について検討すると、本願考案において2本のリード端子を「L字型に成型して絶縁基板の導電パターンに接続」することの技術的意義は、「リード端子の弾性を積極的に利用することによって、特に耐振、耐衝撃性の良好な水晶発振器を提供する」(段落番号【0006】)ことにあるものと認められるが、上記刊行物2には、絶縁基板(回路基板9)に円筒容器の一端から2本のリード端子(12)を導出した圧電振動子(チューブラタイプ11の圧電振動子)を実装するものにおいて、「圧電振動子を絶縁基板(9)に対して非接触状に配設するとともに、2本のリード端子(12)を並行かつ同形状に湾曲成型して上記絶縁基板(9)の一側板面に接続することにより、耐振効果(吸振効果)を生じる」ようにした技術的事項が開示されており、また、圧電振動子の2本のリード端子の具体的な成型形状は、絶縁基板の接続部との位置関係等を考慮して適宜に定め得る設計上の事項であって、これをL字型に成型することも例えば前記刊行物1の第1図に記載されているところであるから、刊行物1に記載された第4図のものにおいても、2本のリード端子をL字型に成型する構成を採用して本願考案のように構成することは当業者がきわめて容易になし得ることと認められる。
(審判請求人の主張について)
審判請求人は、当審で通知した拒絶の理由に対する、平成14年6月17日付け意見書(前記相違点に係わる点)において、「刊行物1第4図のものは圧電振動子の2本のリード端子に等分に外力が作用する。すなわち外力は2分されて、各リード端子に作用し、大きな外力によっても変形し難い反面、圧電振動子に対する外力の緩衝作用は小さくなる。これに対して、本願考案では、……外力をほとんど1本のリード端子で支えることとなり、かつ力の方向によっては絶縁基板への実装部位で、応力はねじり作用に変換されるので外力が圧電振動子に伝わることを効率よく緩衝できる。」(第2頁末5行?第3頁第5行)旨、主張している。
しかしながら、当該相違点についての検討にあたっては、前記したように刊行物2を引用して検討しているものであり、また、本願考案について審判請求人が主張する「力の方向によっては絶縁基板への実装部位で、応力はねじり作用に変換される」との作用効果は、この引用した刊行物2においても同様なものであって、本願考案がこの点で格別の作用効果を奏しているものということはできないから、審判請求人の当該主張は採用することができない。
(2)請求項2に係る考案について
請求項2に係る考案は、前記請求項1を引用するものであって、当該圧電振動子に係る構成をさらに限定して「水晶振動子」とするものであるが、このように構成することは前記刊行物1においても記載されているので、請求項2に係る考案のように構成することも、前記請求項1に係る考案と同旨の理由により当業者がきわめて容易になし得ることと認められる。
【4】むすび
以上のとおりであって、本願の請求項1、2に係る考案は、前記刊行物1、2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-07-22 
結審通知日 2002-07-30 
審決日 2002-08-19 
出願番号 実願平5-75886 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (H03H)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 工藤 一光  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 植松 伸二
治田 義孝
考案の名称 圧電発振器  

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