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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない F16L
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない F16L
管理番号 1066097
審判番号 審判1999-39038  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-11-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 1999-04-30 
確定日 2001-05-21 
事件の表示 登録第2517890号実用新案「樹脂管と金属管との変換継手」に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 (1)請求の趣旨
本件審判請求は、実用新案登録第2517890号考案(平成2年10月16日実用新案登録出願、平成8年9月3日設定登録)の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めたものである。
(2)本件訂正後の考案
上記訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載される考案は、以下の通りのものである。
「1.金属管の端部に具備されたねじ部がねじ込み接続されるねじ部を一端部に備え、かつ他端部内周に所定ピッチで並設された複数の喰込みエッジが突設された筒状の金属管接続用口金と、
合成樹脂管の嵌合される筒状の樹脂層に発熱により上記樹脂層を溶融させて上記合成樹脂管と上記樹脂層とを熱融着させるための発熱体が設けられていると共に、上記樹脂層に上記口金の他端部に挿入される筒部が延出され該筒部が上記口金の複数の喰込みエッジに喰い込み上記口金と結合される樹脂管接続用スリーブと、
上記口金の他端部に挿入された樹脂管接続用スリーブの筒部に嵌め込まれ該筒部を拡げて上記口金の複数の喰込みエッジに喰い込ませるためのスティフナーと、
上記喰込みエッジ間及び最奥側の喰込みエッジの奥側にシールリングを嵌め込むことができるように具備された凹溝に嵌め込まれ上記口金と上記接続用スリーブの筒部とに密着させるシールリングと、
を有する樹脂管と金属管との変換継手。
2.金属管の端部に具備されたねじ部がねじ込み接続されるねじ部を一端部に備え、かつ他端部内周に所定ピッチで並設された複数の喰込みエッジが突設された筒状の金属管接続用口金と、
樹脂管接続用の筒状の樹脂層に上記口金の他端部に挿入される筒部が延出され該筒部が上記口金の複数の喰込みエッジに喰い込み上記口金と結合される樹脂管接続用スリーブと、
上記口金の他端部に挿入された樹脂管接続用スリーブの筒部に嵌め込まれ該筒部を拡げて上記口金の複数の喰込みエッジに喰い込ませるためのスティフナーと、
上記喰込みエッジ間及び最奥側の喰込みエッジの奥側にシールリングを嵌め込むことができるように具備された凹溝に嵌め込まれ上記口金と上記接続用スリーブの筒部とに密着させるシールリングと、
を有する樹脂管と金属管との変換継手。」
(3)引用例
これに対して、当審において訂正拒絶の理由に引用された引用例1?5には、以下のとおりの記載が認められる。
引用例1(特開平2-253089号公報)には、「この発明は、ポリオレフィンパイプ等の被接続体、特に温水用の導管を、導管ヘッダーのノズル等の接続端末に接続するための接続部材付エレクトロフュージョン継手に関するものである。」(第1頁左下欄第18行?同頁右下欄第1行)、「また導管ヘッダーのノズル等の接続端末は通常金属製であるため、このような接続端末と架橋熱可塑性樹脂パイプを接続することは困難である。」(第2頁左上欄第3?5行)、「図において1はエレクトロフュージョン継手で、管状の架橋ポリオレフィン層2と、この架橋ポリオレフィン層2の内側の被接続体5に接する位置に、架橋ポリオレフィン層2と一体的に形成された非架橋ポリオレフィン層3と、この非架橋ポリオレフィン層3内、外表面又は内表面に設けられた電熱線4と、架橋ポリオレフィン層2の他端部側の内側に挿入して固着された接続部材6と、この接続部材6の挿入部6aと架橋ポリオレフィン層2の間に介在する接着性材料としての変性ポリオレフィン層7とを有する。
被接続体5はポリエチレン等の熱可塑性樹脂層を有する管からなり、全体が融着性の熱可塑性樹脂からなるものでも良いが、架橋ポリオレフィン等の耐熱性材料を用いる場合は、外表面を融着性の熱可塑性樹脂で被覆したものを用いる。架橋ポリオレフィン層2は被接続体5と接続部材6の挿入部6aの突合せ部8付近を全周にわたって覆う管状の構造であり、その長手方向の一端部側の被接続体5に対応する部分の内周に非架橋ポリオレフィン層3が積層され、第1図ではその中に電熱線4が埋設され、第2図ではぞの外表面に、また第3図では内表面に埋設されている。
接続部材6は金属管からなり、挿入部6aの反対側の突出部6bには接続部としてのねじ部9が形成され、中間部には六角形のスパナ掛け10が形成されている。変性ポリオレフィン層7は接続部材6の挿入部6aと架橋ポリオレフィン層2間の全周にわたって介在し両者を接着している。
・・・
こうして製造されたエレクトロフュージョン継手1は、導管ヘッダーのノズル等の接続端末に接続部材6の突出部6bのねじ部9をねじ込んで接続する。そしてポリオレフィンチューブ等の被接続体5を非架橋ポリオレフィン層3の内側に挿入して接続部材6の挿入部6aに突合せ、電熱線4に通電すると非架橋ポリオレフィン層3が溶融して被接続体5に融着して一体化する。」(第3頁左上欄第19行?同頁右下欄第5行、第1?3図)、「第5図では、架橋ポリオレフィン層2はエルボになっており、その先端部に接続部材6の挿入部6aがねじ部9aにより固着されている。接続部材6の突出部6bはソケットになっており、ノズル等の接続端末に接続するようになっている。」(第3頁右下欄第20行?第4頁左上欄第4行。第5図)と記載されている。
引用例2(実願昭63-71485号(実開平1-174690号)のマイクロフィルム)には、「1.端部から中央部に向かって順にパッキン収納部、内周溝刻設部を設けた継手本体と、該継手本体のパッキン収納部内面にパッキンを収容し、パッキン収納部から奥部に向かって軟質管を挿入し、該軟質管の継手本体挿入側内面に延性金属管を挿入し、内面から前記延性金属管を拡管して軟質管の外面を継ぎ手本体の内周溝刻設部に食い込ませると共に、パッキン収納部内面に収容したパッキンを圧縮してなることを特徴とする軟質管用継ぎ手。」(実用新案登録請求の範囲)、「本考案は軟質管と接続する継手に関するもので、詳しくは埋設配管に使用するポリエチレン管との接続用の金属製継手に関するものである。」(第1頁第18?20行)、「第1図は本考案の一実施例を示し、継手本体1の端部にはパッキン収納部11および内周溝刻設部12が設けてあり、パッキン収納部11の内面に第1パッキン3と内周溝刻設部12の奥に第3パッキン33を装着してある。内周溝刻設部12の内面は環状の溝又はねじが数条設けてあり、この内径は接続する軟質管2の外径とほぼ同じ寸法になっている。この様に形成された継手本体1内に端部内面に延性金属管4を装着した軟質管2を挿入する。延性金属管4の材質は銅又はステンレス鋼等の延性を有し且つ錆びにくく、強度のある金属が用いられる。そして軟質管2を挿入した後、軟質管2の他端部側あるいは継手本体1他端部側より延性金属管4の内面に拡管用治具を挿入して、延性金属管4を第1図の様に均一に拡径する。・・・延性金属管4を拡径すると軟質管2も拡径され、軟質管2の外周は内周溝刻設部12に食込むと同時に第1パッキン3および第3パッキン33を継手内面で圧縮する。
このため内周溝刻設部12内に食込んだ管2は延性金属管4によって内面が支持されているため確実に継手本体1と軟質管2は一体化されると共にパッキンの圧縮によってシール性が確保される。」(第3頁第7行?第4頁第11行、第1図)、「又パッキンは管の表面へ直接的に圧縮されるのでシールが確実に行われシール性が良好である。更に延性金属管4によって管の内面が支持されているため、一端接続した管は引抜阻止力が大で容易に外れない。」(第5頁第9?13行)と記載されている。
引用例3(特開昭62-4988号公報)には、「本発明は、プラスチック、特に例えばポリエチレンのようなポリオレフィンから成る捩込スリーブと、特に金属管あるいは金属製管取付具のねじ山を具えた管部分とによる継手システムに係わり、その際前記捩込スリーブは内ねじ山を具えた注入ナット(・・・)と、前記管部分のねじ山と係合する内側のプラスチックリングとを有する。」(第2頁右上欄第6?13行)、「第3図は、着脱可能な密閉リング34が管部分26の前端部33に配置されている一具体例を示す。密閉リング34はOリングとして形成され得る。密閉リング34と上述した環形溝31との間に、密閉リング34を支持する環形ショルダ52が位置する。場合によっては本発明の範囲内で密閉リング34は、捩込み以前に何かの弾みで外れるのを防ぐべく、管部分26の前端部33に設けられた環形溝42の中に配置されていてもよい。」(第7頁左上欄第10行?同頁右上欄第1行、第3図)と記載されている。
引用例4(実願昭58-170314号(実開昭60-77889号)のマイクロフィルム)には、「本考案はこうした事情に着目してなされたものであって、管継手部に温度変化が加わっても水封性が低下することがなく、長期に亘り堅固な接合状態が保持されると共に接続時にプラスチック製管に無理な力が加わることの無い様な管継手部構造を提供しようとするものである。
しかして上記目的を達成した管継手部構造は、挿口状接続部材にプラスチック製管を被冠してなる管継手部構造であって、前記挿口状接続部材を被取付部本体に対して着脱自在な嘴状接続部材で構成すると共に、前記嘴状接続部材の外周面には挿口先端側に向けて縮径するテーパ面と軸心に略直交する峻立面を交互に有する竹の子状接続部を形成すると共に、竹の子状接続部自体をプラスチック製管と同一素材で形成するか、及び/又は前記テーパ面と峻立面の間に形成される溝部にO-リングを嵌装し竹の子状接続部にプラスチック製管を被嵌して更にその外周から締付部材によってプラスチック製管を固定した点に要旨を有するものである。」(第4頁第4行?第5頁第3行)、「一方嘴状接続部材6は両挿型接続部材であって、鍔部9aを挟んで継手管2a側の挿口部外周面は端部に向けて縮径されたテーパ面であって前記継手管2aのテーパ状拡径面より傾斜角度の小さいテーパ面で形成されていると共に他端側挿口部外周面は該挿口先端側に向けて縮径するテーパ面と軸心に略直交する峻立面を交互に有する竹の子状接続部となっており、且つ前記テーパ面と峻立面の間に形成される溝部にO-リング8を夫々嵌装している。尚O-リング8は前記溝部より僅かにはみ出るものとする。又締付部材7は一般にホースクリップと称される締付部材であって、鋼体7aの上面に可撓性帯状ギア7bを一体的に付設すると共に該ギア7bとウオーム7cを噛合させてウオーム7cを回転することによって鋼帯7aの抱き締め力を発揮させるものである。」(第5頁第16行?第6頁第10行、第2、3図)、「そしてこの様に接続された嘴状接続部材6の竹の子状接続部にプラスチック製管3を被嵌すると共に該プラスチック製管3先端部外周に配置した締付部材7を締め込むことによってプラスチック製管3を前記竹の子状接続部に固定する。このとき該固定部は第3図に示される様に、締付部材7の締付け力によってプラスチック製管3がO-リング8を押圧してこれを変形させるので、プラスチック製管3の内面とO-リング8が相当の接圧をもって当接する状態となる。」(第7頁第1?11行、第3図)、「その他、本考案においては竹の子状接続部の前記溝にO-リングを嵌装する場合には全溝部に夫々O-リングを嵌装してもよいが、O-リングの嵌装数は1つでも十分目的を達することができる。」(第8頁第14?18行)、「(1)竹の子状接続部自体をプラスチック製管と同一素材で形成するか、及び/又は竹の子状接続部の前記溝部にO-リングを嵌装し、プラスチック製管を被嵌して締結したので、管継ぎ手部に高温水が断続的に流れてプラスチック製管が膨張・収縮しても、Oーリング又はプラスチック製竹の子突条部が隙間を埋める様に拡径し水封性の低下が防止される。」(第9頁第6?13行)と記載されている
引用例5(特開昭50-77923号公報)には、「1 少なくとも、内層をなすナイロン、テフロン等のインナーチューブとその上層をなすビニロン糸、ナイロン糸等の編組よりなる補強層と保護外層をなすポリウレタン、ナイロン等のアウターを構成材として一体をなすホース管体の端部で上記インナーチューブに内挿された金属管体のインサートとホース管体の端口部に当接する閉塞蓋部分および上記アウターに外嵌して、上記インサートと内外対向関係にある圧潰縮締管部分よりなるソケット金具とを有するものにおいて、架橋エラストマーのリング状成形体の一個または数個がホースの内層(インナーチューブ)面と内挿金属管体(インサート)の外面との間で、しかもソケット金具の圧潰縮締範囲内にあらしめられることを特徴とするプラスチックホースの締結構成部。
2 第1項記載の架橋エラストマーのOリング状成形体の一個または数個は内挿金属管体(インサート)の外周面に設けられた鋸歯状断面の環状段部内に掛合定置されたことを特徴とするプラスチックホースの締結構成部。」(特許請求の範囲)、「4はインサートチューブ1の端部に内挿された金属管体のインサートで、全体として楔状をなしており、その嵌合胴周部Dにはs1乃至s4なる鋸歯状の環状段部を形成する。5は締結用ソケット金具で閉塞蓋部分cおよび圧潰縮締部分sよりなる。6は対手との接続用ユニオンで、これは上記インサート4の肩部鈎部分fに縣合し回転自在におかれる。
r1、r2、r3およびr4は架橋エラストマーからなるOリング状成形体である。この成形体r1乃至r4は前記したインサート4の傾斜状嵌合胴周部Dに設けたs1乃至s4なる鋸歯状の環状段部内に掛け合いされたもので、その円形断面の下部および右側部は夫々各段部の斜降部および垂直部に線接触し、上半部はインナーチューブ1の内周面に覆われている。はじめこれらのr1乃至r4はインサート4に順次弾性的に嵌合され、その状態でインナーチューブ1端に挿入されるのであるが、このときs1乃至s4の斜降部がr1乃至r4のづれ動きを阻止する。
金具5のs部分の圧潰縮締はその後に行われる。この加締めによる圧潰縮締が行われた図の状態においては、r1乃至r4はその縮締の影響下にあって夫々内部に応力を蓄えることとなり、その外向作用はs1乃至s4の斜向面および段部の垂直面に強く及んでOリングの効果を増強し、またインナーチューブ面の覆いくるみを深め且つ互いの密美性を増進していて、危倶されている高温下圧液の洩れはその出発点において極めて有効に阻止される。そしてまたその阻止作用は長期高温に耐えて衰えることなく維持されるのであるが、その資材としては天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロブレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、フッソゴム等が上げられ、これらは使用の条件や状況に応じて選択採用されて、いづれも本発明の目的に副う資質を備えるものと認められている。
むろんOリング状成形体の断面積や介装個数、夫々の距離、段部s1乃至s4の斜降角度、垂直面の高さ等の変更や組合せ特に夫々最適関係を設定しうるもので、かくして本発明の目的である液の洩出、逸出の路を遮断する効果を発揮せしめ、しかもそれをほとんど半永久的ならしめうることは多くの実験により容易に推定し得られるところである。」(第2頁右下欄第10行?第3頁右上欄第12行および図面)と記載されている。
(4)当審の判断
(a)本件請求項1に係る考案(以下「本件第1考案」という。)に対して;
本件第1考案と、刊行物1に記載される考案(以下「引用考案」という。)とを比較すると、引用考案における「接続部材6」、「接続部材6の挿入部6a」、「管状の架橋ポリオレフィン層2」、「接続部材付エレクトロフュージョン継手」が、本件第1考案における「金属管接続用口金」、「金属管接続用口金の他端部」、「樹脂管接続用スリーブ」、「樹脂管と金属管との変換継手」に相当することは明白であるから、両者は、金属管の端部に具備されたねじ部がねじ込み接続されるねじ部を一端部に備えた筒状の金属管接続用口金と、合成樹脂管の嵌合される筒状の樹脂層に発熱により上記樹脂層を溶融させて上記合成樹脂管と上記樹脂層とを熱融着させるための発熱体が設けられていると共に、上記樹脂層に上記口金の他端部と結合する筒部が延長された樹脂管接続用スリーブとを有する樹脂管と金属管との変換継手である点で一致し、(1)金属管接続用口金と樹脂管接続用スリーブとの結合に関し、本件第1考案は、金属接続用口金の他端部内に所定ピッチで並設された複数喰込みエッジを突設し、樹脂管接続用スリーブの筒部を上記口金他端部に挿入し、上記樹脂管接続用スリーブの筒部に嵌め込まれたスティフナーにより該筒部を拡げて、上記口金の喰込エッジに喰い込ませて結合しているのに対して、引用考案は、管状の架橋ポリオレフィン層2の内側に接続部材6の挿入部6aを挿入し、接着性材料によりまたはねじ部により固着結合されている点、(2)本件第1考案は、喰込みエッジ間及び最奥側の喰込みエッジの奥側にシールリングを嵌め込むことができるように具備された凹溝に嵌め込まれ上記口金と上記接続用スリーブの筒部とに密着させるシールリングを有しているのに対して、引用考案は、この構成が何等記載されていない点で相違する。
まず上記相違点(1)について検討する。引用例2には、金属製継手本体1(本件第1考案における「金属管接続用口金」に相当する。以下同様)と、ポリエチレン管等の軟質管2(「樹脂管接続用スリーブ」)との結合手段に関し、継手本体1の端部(「金属管継ぎ手用口金の他端部」)に内周溝刻設部12を設け、該内周溝刻設部12の内面は環状の溝またはねじ(「喰込みエッジ」)が数条(「複数」)設けられており、その端部内面に延性金属管4(「スティフナー」)を装着した軟質管2を上記継手本体1の端部に挿入し、該延性金属管4を拡径して、軟質管2の外周を内周溝刻設部12に喰い込ませてなる軟質管用継手が開示されている。引用例2に開示される軟質管用継手においては、内周溝刻設部12の内面に設けられる数条の環状の溝またはねじが、所定ピッチで並設されることについての記載はないが、技術常識から見て、引用例2記載の継手においても、数条の溝またはねじが所定ピッチで並設されていることは、明白である。したがって、上記引用例2に開示される軟質管用継手の結合手段を、引用考案の管継手を構成する接続部材と管状の架橋ポリオレフィン層との結合手段に代えて採用し、本件第1考案のように構成することは当業者であればきわめて容易に想到し得るものと認められる。なお、引用考案は、接続部材6が、管状のポリオレフィン層2に挿入されているのに対して、引用例2に開示される考案は、軟質管2が継手本体1に挿入されているのであるから、引用例2に開示される考案を引用考案に採用することは困難であると主張するかも知れないが、一方の管を他方の管に挿入して管を接続する場合、どちらを挿入するように構成するかは相対的なものであって、特に理由がない限りどちらを挿入するかは適宜なしうる設計事項であって、この点に格別の困難性は認められない。
次ぎに相違点(2)について検討する。引用例2には、金属製継手本体1とポリエチレン管等の軟質管2との結合部において、内周溝刻設部12を挟んで、その手前に第1パッキン3(「シール」)を、その奥(「喰込みエッジの奥側」)に装着した第3パッキン33(「シール」)を継手内面で圧縮させることが開示されている。そして、シール部材としてOリングに代表されるようにシールリングそれ自体は本件出願前周知の技術であり(例えば引用例3?5参照)、これを採用することには格別の困難性は認められない。また、シールリングの適用場所として、内周溝刻設部12に形成される環状の溝またはねじ(凹部)を利用することは、引用例3?5に記載される周知のシール構造を勘案すれば、当業者にとって格別予測困難性あるものとは認められない。請求人は、意見書において、引用例2に記載される考案における内周溝刻設部12の内周溝は、寸法等の記載がないが、延性金属管4の拡径により軟質管2を拡径させれば、軟質管2の材料を充満させることができる程度のものであるから(第1?3図参照)、極小の内周溝であり、このような極小の内周溝では、引用例2の軟質管2の材料を充満させる以外、他に何も使えるものではなく、ほかに何んの想定もできるものではなく、したがって、このような極小の内周溝のところを、シーリングの構成場所として考えるのは、例え当業者といえどもきわめて容易に想起できるものではない旨主張する。なるほど、引用例2の図面(第1?3図)には、内周溝刻設部12の内周溝に、軟質管2が拡径されたとき、軟質管2が充満しているように見えるが、これは実施例にすぎず、溝の大きさについては、請求人も認めるとおり何等記載はないものである。したがって、引用例2には、上記の通り金属製継手本体1とポリエチレン管等の軟質管2との結合部にシールを適用することが開示されているのであるから、内周溝刻設部12の内周溝にシールを適用しようとすることは、引用例3?5に記載されるような周知技術を参酌すれば、当業者にとってきわめて容易に想到し得るものと認められるから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
そして、本件第1考案のように構成したことにより、その奏する作用効果も、引用考案および引用例2?5に記載される考案から予測し得る範囲を越えるものではない。
(ii)本件実用新案登録の請求項2に係る考案に関して;
本件実用新案登録の請求項2に係る考案は、本件第1考案において、樹脂管接続用スリーブが、合成樹脂管と樹脂層とを熱融着させるための発熱体を備えていない点でのみ相違するものである。しかしながら、当該発熱体を、捨象して、上記樹脂管接続用スリーブを構成することに格別の作用効果も認められず、この構成は当業者にとって単なる設計変更程度のものであって、格別のものとは認められない。
したがって、本件実用新案登録の請求項2に係る考案のように構成することは、本件第1考案と同様の理由により、引用例1?5に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められる。
(5)むすび
以上の通りであるから、訂正明細書の請求項1、2に係る考案は、上記刊行物1?5に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、本件訂正の審判請求は、平成5年法律第26号附則第4条第1項において、なおその効力を有するとされる旧実用新案法第39条第3項の規定に違反するので、当該訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-11-04 
結審通知日 1999-11-19 
審決日 1999-12-10 
出願番号 実願平2-108130 
審決分類 U 1 41・ 121- Z (F16L)
U 1 41・ 856- Z (F16L)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 伏見 隆夫  
特許庁審判長 佐藤 久容
特許庁審判官 森林 克郎
市野 要助
登録日 1996-09-03 
登録番号 実用登録第2517890号(U2517890) 
考案の名称 樹脂管と金属管との交換継手  
代理人 鈴江 孝一  
代理人 鈴江 正二  

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