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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない A63B
管理番号 1067652
審判番号 無効2001-35189  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-12-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-04-27 
確定日 2002-10-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第2150492号実用新案「長尺ウツドゴルフクラブ」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第一 本件考案
本件登録第2150492号実用新案は、平成1年3月13日に実用新案登録出願され、平成8年3月29日に、実公平8-10319号公報として出願公告され、平成11年3月5日に設定登録がなされたものである。
その登録実用新案の要旨は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された以下のとおりのものと認める。
「44インチ以上の長尺ウッドゴルフクラブにおいて、前記クラブの長さをlとし、クラブヘッドの幅をW1及びクラブヘッドの長さをW2とし、両者の関係を、W1/l=tanθ1及びW2/l=tanθ2とした時、それぞれθ1を4.0°?4.5°及びθ2を4.5°?5.0°に設定し、かつθ1がθ2を超えないようにしたことを特徴とする長尺ウッドゴルフクラブ。」
第二 当事者の主張
一 請求人の主張
審判請求書の記載によれば、請求人は甲第1?5号証を提出して、本件登録実用新案は、甲第1?5号証に記載された考案に基づいて当業者が、きわめて容易に考案することができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により、実用新案登録を受けることができないものであると主張している。
また、本件考案のθ1及びθ2の範囲を数値で限定したものであるが、数値で区切ったことによる効果の根拠が、考案の詳細な説明に記載されておらず実用新案法5条の規定に違反したものであると主張している。
なお、本件考案の実用新案登録請求の範囲及び効果の一部について、以下のとおりに分節して、無効の理由1、2を主張している。
【明細書の実用新案登録請求の範囲の欄】
(構成A)44インチ以上の長尺ウッドゴルフクラブにおいて、
(構成B)前記クラブの長さをlとし、クラブヘッドの幅をW1及びクラブヘッドの長さをW2とし、両者の関係を、W1/l=tanθ1及びW2/l=tanθ2とした時、それぞれθ1を4.0°?4.5°
(構成C)及びθ2を4.5°?5.0°に設定し、
(構成D)かつθ1がθ2を超えないようにしたことを特徴とする長尺ウッドゴルフクラブ
【明細書の考案の効果の欄の抜粋】
(効果A)長尺のゴルフクラブシャフトを使用しても、ゴルファーはクラブ長さを感じることなくスウィングでき、結果的にヘッドスピードが上がって打球の飛距離を向上させることが出来、
(効果B)またクラブシャフトの長さに対するヘッドの大きさによるゴルファーへ与える違和感や不安感の両面を解消させ、打球時のジャストミート率と飛距離とを著しく向上させるという効果を有する。(審判請求書3枚目10行?4枚目1行)
理由1 実用新案法3条2項の規定について、
本件考案と甲各号証とを対比すると
甲第1号証の101?102頁にわたる「大型ヘッドの長尺クラブ DPブラック540新発売 日本ダンロップ」なる記事、146頁左欄「表紙の言葉 軽量シャフトに大型ヘッド 長尺の「ダンロップブラック540」 日本ダンロップ」なる記事には、
θ1(又はクラブヘッドの幅W1)とθ2(またはクラブヘッドの長さW2)は記載されていないものの、クラブの長さlを44インチ以上とする(構成A)と同時に、クラブヘッドを大きくしたこと(構成Bと構成Cの定性的意味)が記載され、長尺のゴルフクラブシャフトを使用しても、ゴルファーはクラブ長さを感じることなくスウィングでき、結果的にヘッドスピードが上がって打球の飛距離を向上させることが出来ること(効果A)、
またクラブシャフトの長さに対するヘッドの大きさによるゴルファーへ与える違和感や不安感の両面を解消させ、打球時のジャストミート率と飛距離とを著しく向上させること(効果B)も記載されている。
従って、甲第1号証に記載された考案と本件考案との相違は、
θ1を4.0?4.5°にしたこと(構成B)
又はクラブヘッドの幅W1をクラブの長さlの6.9%?7.8%にしたこと(構成B′)及びθ2を4.5?5.0°にしたこと(構成C)又はクラブヘッドの幅W1をクラブの長さlの7.8%?8.7%にしたこと(構成C′)のみである。
なお、θ1がθ2を超えないようにしたこと(構成D)は、前述の通り、構成BとC或いは構成B′とC′を満たすことにより必然的に満たされるため、独立して検討する必要が無い。
甲第1号証の他のゴルフクラブに関する記載、甲第3号証の記載、甲第4号証の227頁の記載、甲第5号証の記載からすれば、クラブの長さを44インチ以上とすること(構成A)、同時にクラブヘッドを大きくしたこと(構成Bと構成Cの定性的意味)は周知の技術である。
ところで、ゴルフクラブは、ゴルフヘッド、シャフト、グリップを主たる部品として構成されるものであるが、ゴルフクラブの長さは主としてシャフトの長さで決まり、クラブヘッドの幅W1とクラブヘッドの長さW2は、クラブヘッドの寸法のみで決まることを考慮すれば、クラブヘッドの幅W1とクラブの長さlの比で決まるθ1、及びクラブヘッドの長さW2とクラブの長さlの比で決まるθ2は、シャフトとクラブヘッドの組み合わせを変更すれば、必然的に変わるものである。
そのところ、甲第4号証の586?597頁の記載から明らかな通り、シャフトとクラブヘッドの組み合わせは唯一無二ではなく、オリジナルクラブとして多様な組み合わせが実施されており、クラブの長さについても、甲第4号証572頁の記載から明らかなとおり、そのクラブに固有なものではなく、変更することが行われていた事情を考慮すれば、甲第1号証に記載された「ダンロップブラック540」に、従来より知られたクラブヘッドの幅W1とクラブヘッドの長さW2を適用することは、当業者であればきわめて容易に想到し得ることである。
甲第1号証のクレインゴルフENAの広告頁の右下表に従来のタイプとして記載されたゴルフクラブのクラブヘッドは、クラブヘッドの幅W1が78mm、クラブヘッドの長さW2が96mmであり、これをクラブの長さlが44インチである「ダンロップブラック540」に適用すれば、44インチ=1118mmであるから、W1/l=7.0%、θ1=tan-1(W1/l)=4.0°であり、W2/l=8.6%、θ2=tan-1(W2/l)=4.9° であって、本件考案の範囲に該当する。
なお、甲第1号証のクレインゴルフENAの広告頁の右下表に従来のタイプとして記載されたゴルフクラブのクラブの長さを、43インチから44インチに延ばすと考えることによっても、θ1=tan -1(W1/l)=4.0°であり、θ2=tan-1(W2/l)=4.9° である本件考案の範囲に属するゴルフクラブを考えることが出来る。前述の通り、クラブの長さは絶対的ではなく、必要に応じ変更されるものであるから、44インチのゴルフクラブが周知である状況下では、これを想到することもきわめて容易である。本件考案の出願に係る明細書には、従来の技術として「近年、飛距離を延ばすことが出来る等の目的から一般的に4 4インチ以上(4 4.5インチ、4 5インチ等の複数種)の長尺ウッドゴルフクラブが人気化を呼んでいる。然しながら、このような従来の長尺ウッドゴルフクラブは、クラブの長さのみを変え、ヘッド寸法は同一のものが殆どである。」と記載され、従来のゴルフクラブにおいて、ヘッドの寸法はそのままにクラブの長さのみを44インチにすることが従来技術であることは、被請求人目身の認めるところでもある。
本件考案の出願に係る明細書の考案の効果として、「θ1を4.0° ?4.5°に設定し、θ2が設定角度から外れる5.0°を超える場合には、一般的にヘッドが大きくなる(長くなる)ため、空気抵抗が大きくなり、ヘッドスピードが落ちてしまう。」(明細書3頁左19?22行)と記載されているが、明細書の表1に記載された比較例4は、θ2が5.11°であり設定角度5.0°を超えているが、ヘッドスピードは実施例2の標準品と略同等と記載されており、ヘッドスピードは落ちておらず、θ2の上限を 5.0°としたが故の新たな効果や著しい効果の増大も認められない。
比較例4は、θ1も4.5°を超えており、その点で「θ1を4.0°?4.5°に設定し、θ2が設定角度から外れる5.0°を超える場合には」との記載に合致しないが、その点について考察する。
明細書の記載によれば、θ2が5.0°を超えた場合にへッドスピードが落ちる原因は空気抵抗であるが、θ1も大きくすればするほどクラブヘッドは大きくなる為、特別にヘッドの形状等に留意しない限り、空気抵抗は増大する。従って、θ1が4.5°を超えているためにθ2が5.0°を超えてもヘッドスピ-ドが落ちなかったと考えることは、流体力学的に出来ない。明細書からも、θ1が4.5°を超えた場合には、θ2が5.0°を超えてもヘッドスピードが減少しないとの根拠は見い出せない。
明細書の考案の効果の29?33行に、「また逆にθ2を4.5°?5.0°に設定し、θ1<θ2の制約の下で、θ1が設定角度から外れる4.5°を超えた場合には、クラブヘッドにシャープ感がなくなり、思い切ったナイスショットのスゥイングイメージがもてなくなると言う問題があり」と記載されているが、θ1が4.5°を境界として、これを超えたが故にシャープ感を感じなくなるとの根拠も示されていない。
その他、明細書の考案の効果の欄には、θ1、θ2が所定の範囲を外れた場合に、シャフト軸回りの慣性モーメントが増大する、ゴルファーの不安感をもたらす、重心深度が小さくなる等の問題は記載されているが、θ1、θ2をその数値で区切った根拠も示されていない。従って、数値を限定したことによる新たな効果や効果の著しい増大を認めることが出来ず、数値限定に大きな困難性を認めることも出来ない。
以上のとおり、本件考案は、長尺で大型ヘッドを有するウッドゴルフクラブであって、クラブの長さ1を44インチ以上に特定し、更にヘッドの大きさをθ1及びθ2にて数値限定した考案であるが、長尺で大型ヘッドを有するウッドゴルフクラブ及びクラブの長さを44インチ以上とすることは、本件考案の出願前において周知の技術となっていたところ、特に新たな効果若くは著しい効果の増大も認められないθ1及びθ2の範囲を設定したに過ぎない。又は、従来より、ゴルフクラブにおいてはクラブヘッドとシャフトの組み合わせの変更、クラブ長さの任意な設定が行われていたところ、本件考案は、本件考案の出願前に日本国内で公然知られた、あるいは頒布された刊行物に記載された考案である。
(イ) クラブの長さ1が44インチ以上のゴルフクラブ
という考案と
(ロ) クラブヘッドの幅W1が78mm、クラブヘッドの長さが96mm
という考案を単に組み合わせた考案を、θ1とθ2と言う独自の変数で表現したに過ぎない。
上記2点のいずれにしても、本件考案は当業者がきわめて容易に考案することができたことは明白であり、本件実用新案登録は実用新案法第3条第2項に該当するとして、無効とされるべきである。(審判請求書10枚目10行?14枚目21行)
理由2 実用新案法第5条の規定について
本件考案はθ1及びθ2の範囲を数値で限定したものであるが、前述の通り、数値で区切ったことによる効果の根拠が、考案の詳細な説明に記載されておらず、且つ考案の効果の欄に記載された効果と表に記載された試験の結果に矛盾を生じており、当業者が本件考案を技術的に理解することが出来ない。
また、本件考案の説明に記載した通り、本件考案の構成Dは、構成Bと構成Cにより必然的に満たされるものであり、本件考案の構成に欠くことの出来ない事項ではない。
よって、本件考案に係る出願は、実用新案法第5条第第3項及び第4項第2号に違反しており、これを理由として、本件実用新案登録は、無効とされるべきである。(審判請求書13枚目23行?14枚目24行)
二 被請求人の主張
被請求人は「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、答弁書の記載によれば、以下のとおりの反論をしている。
理由1について
(1)請求人は、「甲第1号証のクラインゴルフENAの広告頁の右下表に従来のタイプとして記載されたゴルフクラブヘッドは、クラブヘッドの幅W1が78mm、クラブヘッドの長さW2 が96mmであり、これをクラブの長さlが44インチである「ダンロップブラック540」に適用すれば、44インチ=1118mmであるから、W1/l=7.0%、θ1=tan‐1(W1/l)=4.0° であり、W2 /l=8.6%、θ2=tan‐1(W2 /l)=4.9°であって、本件考案の範囲に該当する。」と主張している。
これは明らかな摩り替えである。なぜならば請求人が引用したENAの広告頁の右下表のクラブヘッドの幅W1 が78mm、クラブヘッドの長さW2が96mmの場合のクラブ長さは43.0インチと明示している。つまりW1=78mm、W2 =96mmで、クラブ長さが43.0インチの場合が示されているのである。これを請求人は勝手に、「クラブ長さlが44インチである「ダンロップブラック540」に適用すれば、」として自己に都合のよい数値を採用してW1/l=4.0°、W2/l=4.9° の数値を創り出している。
要するに、この表に記載の従来のタイプのゴルフクラブはそもそも長尺物ではない、つまり43インチのゴルフクラブである点で全く本件考案と相違するだけでなく、しかもゴルフクラブの長さを43インチとして計算した場合、θ1もθ2も本件考案の数値から明らかに外れている。勿論ENAはクラブ長さ45インチ、ヘッド長さ106mm、ヘッド幅85mmと明記しているから、これを用いて計算しても明らかに本件考案のクラブヘッドの範囲から外れた値を示す。
(2)請求人は、『本件考案の出願に係る明細書の考案の効果として「θ1を4.0°?4.5°に設定し、θ2 が設定角度から外れる5.0°を超える場合には、一般的にヘッドが大きくなる(長くなる)ため、空気抵抗が大きくなり、ヘッドスピードが落ちてしまう。」(明細書3頁左19?22行)と記載されているが、明細書の表1に記載された比較例4は、θ2 が5.11°であり設定角度5.0° を超えているが、ヘッドスピードは実施例2の標準品と略同等と記載されており、ヘッドスピードは落ちておらず、θ2の上限を5.0°としたが故の新たな効果や著しい効果の増大も認められない。』と主張しているが、請求人はこの効果の記載の前提である「θ1を4.0?4.5に設定した場合」を看過したためにこのような誤解をしているのである。比較例4におけるθ1は4.7であって、前提の4.0?4.5から外れているのであるからかかる主張は明らかな誤りである。
(3)請求人は、「比較例4は、θ1も4.5°を超えており、その点で「θ1を4.0°?4.5°に設定し、θ2 が設定角度から外れる5.0°を超える場合には」との記載に合致しないが、その点について考察する。」と述べているが、かゝる記述は請求人が実施例と比較例の違いに気付いていないためと思われる。そもそも比較例はその考案の実施例とはちがう例であるからθ1もθ2 も本件考案の範囲と相違して当然のことである。よって、請求人がいう「・・・・との記載に合致しない」ということは当り前のことである。
(4)本件考案は、本答弁書の「本件考案の説明」の項で詳述したように、「44インチ以上の長尺ウッドゴルフクラブであって、θ1とθ2が4.0°?4.5°と4.5°?5.0°を共に具備する」ことがその要件であり、それらを全部同時に具備することが本件考案であるところ、かゝる構成要件を具備した長尺ウッドゴルフクラブの証拠が全く示されていない。いかに44インチ以上のゴルフクラブだけが存在しても、その長尺ゴルフクラブと全く関係のない単なる普通のゴルフクラブのうちに部分的に近似の範囲のθ1やθ2の数値が示されたものが点在したところで本件考案を無効にする理由にならないことは明らかである。よって、本件考案は請求人が提示した甲第1号証?甲第5号証をもってしてはその登録を否定する根拠とはなり得ない。(答弁書5頁9行?7頁20行)
理由2について
請求人は、θ1,θ2 を4.0°?4.5°,4.5°?5.0°に区切った根拠が示されていないと主張するが、それは明細書中の第1表の実施例に示す評価を根拠として区切ったのであって、θ1,θ2 の根拠は明白である。(中略)
また、請求人が言う構成D、即ちθ1がθ2を超えないようにしたのは、明細書中に明記しているようにゴルフクラブのルールによる制約を明確に示したためである。
よって、本件考案については実用新案法第5条に違反する点は全くない。(答弁書6頁26行?7頁8行)
第三 当審の判断
理由1について
一 甲各号証の記載事項
本件考案に関連する事項として以下に示すような技術的事項が開示されていると認めることができる。
(1)甲第1号証:「月刊ゴルフ用品界 11月号 第11巻 第129号」ゴルフ用品界 昭和63年10月20日発行
a.「・・・長尺であれば遠心力も働き、しかもヘッド・スピードが上がり当然、飛距離は伸びる。・・・クレインゴルフの「NASA」ロング(現在はENAに名称変更)・・・これらの長尺ウッドは標準の43インチから45インチまでのものもあれば、中にははなから長尺を謳い文句に44インチ以上46インチといったものまである。・・・長尺でも軽いから長さを感じずに振り切れて、ミート率も標準の長さと変わらない・・・軽いのにヘッドが大きい。だから長尺でも当たるかな?という不安を解消してくれる・・・」(45頁2?4段)、
b.「・・・一般的にゴルフクラブは、シャフトが長ければ長いほどヘッドスピードが速くなりボールの飛距離は伸びる・・・大型ヘッド(容積で同社比20%増)を採用しているため、クラブの長さを感じさせずに、従来のクラブと異和感がなく、安心してスイングできる・・・ヘッドの大型化によって慣性モーメント・・・が大きくなって、方向性に優れた安定した弾道が得られる。・・・重量周辺配分によって、スィートスポットが広くなるためミート率も高くなる。・・・」(101頁3段?102頁1段)、
c.「・・・■250ccラージヘッド 重量は通常のヘッドと同じですが、サイズは35%も大きくなりました。・・・周辺重量設計なので、慣性モーメントが大きく、重心深度が深いヘッド構造と成り、打球の方向安定性を飛躍的に向上させました。また、スイートスポットも通常のヘッドより約40%も拡大させましたので、ミート率が高まり飛距離がアップします。■ロングサイズ&適合重量設計(長さ44?46インチ) 通常より2?3インチ長いロングサイズクラブですが、ヘッドとグリップの適合重量配分で、完全に振り切れる重量設計にしました。長くて振り切れるクラブは、ヘッドスピードが増加し飛距離が大幅にアップします。」(クレインゴルフのENAの広告頁中段)、
d.ゴルフクラブの設計項目として、ロフト、ライ角、サイズ、スイングバランス、シャフト硬度、ヘッド長さ、ヘッド幅、ヘッド厚み、ヘッド重量、クラブ重量などがあること、ENAのサイズとヘッド長さとヘッド幅の例がそれぞれ45インチと106mmと85mmであり、従来タイプのサイズとヘッド長さとヘッド幅の例がそれぞれ43インチと96mmと78mmであること(クレインゴルフのENAの広告頁右段の「比較表」)、
e.「・・・ヘッドを大型化することによって、クラブの長さを感じさせず、従来のクラブと異和感なくスイングできることになった。また、ヘッドの大型化は慣性モーメントが大きくなり方向性に優れた安定した弾道のボールが打てることに繋がってくる。・・・」(146頁「表紙の言葉」欄)、
等が記載されている。
(2)甲第2号証:「’88年版ゴルフ用品総合カタログ」ユニバーサルゴルフ社 昭和63年3月1日発行
a.「・・・■ラージ・ヘッド&ワイド・スポット 重量は通常のヘッドと同じですが、サイズは35%も大きく成りました。・・・周辺重量設計なので、慣性モーメントが大きく、重心深度が深いヘッド構造と成り、打球の方向安定性を飛躍的に向上させました。またスイートスポットも通常のヘッドより約40%も拡大させましたのでミート率が高まり飛距離がアップします。■ロングサイズ&適合重量設計(長さ44?46インチ) 通常より2?3インチ長いロングサイズクラブですが、ヘッドとグリップの適合重量配分で、完全に振り切れる重量設計にしました。長くて振り切れるクラブは、ヘッドスピードが増加し飛距離が大幅にアップします。」(452頁左中段)、
b.番手別、かつ性別により、ロフト、ライ角、サイズ、スイングバランス、シャフト硬度などの設計項目が考慮されること(452頁左下段の「サイズ表」)、
等が記載されている。
(3)甲第3号証
「maruman’87?’88GOLF CLUBS」なるカタログであり、発行日は不明であるが、裏表紙右下※印部には、「このカタログの記載内容は昭和62年10月現在のものです」と記載され、本件考案の出願日以前に、クラブの長さが44インチ以上であり、クラブヘッドを大きくしたゴルフクラブが存在したことが記載されている。同頁右表には、該フォルテックスのヘッド幅が、79.5mmであることも記載されている。
(4)甲第4号証:「85年版ゴルフ用品総合カタログ」ユニバーサルゴルフ社 昭和60年3月1日発行
a.「・・・スムーズな空気の流れとスイングを実現するヘッドデザイン・・・」(226頁右上段)、
b.「・・・スイング時の空気の流れをスムーズにして・・・フォームを安定させます。ヘッドはできるだけ大きく、そして空気抵抗は限りなく少なくし・・・より速いヘッドスピードを生みだします。・・・」(227頁左上段)、
c.「4.最適のパーツ決定 100本以上のテストクラブから、基礎データにもとづいて選んだ数本を試打していただきます。そのうえで、あなたに最適なシャフトの振動数や、ウェイトバランス、ヘッドスタイルなどを決定します。5.6.クラブ製作・完成 製作期間は、約1カ月。ベテランの職人が、あなたのスウィングにベストフィットするように、その技術のすべてをクラブ作りに注ぎこみます。・・・」(587頁中段)、
等が記載されている。
d.アイツー・イージーライト・ウッドなる名称のウッドゴルフクラブが記載されているが記載されているが、右上注釈中にクラブの長さは、421/4?45インチを表記されている(226頁右上)
(5)甲第5号証:「’89年版ゴルフ用品総合カタログ」ユニバーサルゴルフ社 平成1年3月1日発行
a.「・・・ヘッドを大きくすることによって、スウィートスポットも必然的に大きくなり、ミスショットも軽減される。しかも目の錯覚で、ヘッドが大きい分だけシャフトが長く感じられない。43インチの長さと同じような気持ちで構えられるから、不安感でスウィングがリズムを崩すこともなくなる。・・・」(51頁右欄下段?52頁左欄上段)、
b.「・・・マルマンゴルフは50インチの超長尺を追加。・・・」(52頁左欄下段)、
c.ロングドライバーとして47インチなどもあること(52頁「主なロングドライバー」の表)、
等が記載されている。

3.対比・判断
理由1について
本件考案において、tanθ1のθ1は4.0°?4.5°であって、tan4.0°?tan4.5°は0.069?0.078であるから、W1/l(=tanθ1)は0.069?0.078であり、また、tanθ2のθ2は4.5°?5.0°であって、tan4.5°?tan5.0°は0.078?0.087であるから、W2/l(=tanθ2)は0.078?0.087である。
本件考案と上記甲各号証に記載されたものとを対比すると、44インチ以上の長尺ウッドゴルフクラブについては甲第1?5号証に記載があるが、W1/lを上記0.069?0.078の範囲内のいずれかの値に設定し、同時に、W2/lを上記0.078?0.087の範囲内のいずれかの値に設定したものについては甲各号証のいずれにも記載がない。
ところで、ゴルファーがゴルフクラブを実際に使用したときのゴルフクラブの使用具合を評価するための評価項目としては、遠心力、ヘッドスピード、飛距離、ミート率、異和感(又は馴染み感)、安心感(又は不安感)、振り切れ具合、慣性モーメント、弾道方向安定性、スウィートスポット、重心深度、空気抵抗、クラブの長さの感じ具合(又はヘッドの大きさの感じ具合)などがあり(例えば、上記甲各号証に係る記載事項のうち、甲第1号証a,b,c,e、甲第2号証a、甲第4号証b、甲第5号証a等参照)、これらを総合的にみて評価しなければならないことは、言うまでもないところである。
また、ゴルフクラブの設計項目として、ロフト、ライ角、サイズ、スイングバランス、シャフト硬度、ヘッド長さ、ヘッド幅、ヘッド厚み、ヘッド重量、クラブ重量、シャフト振動数、ウェイトバランスなどがあり(例えば、上記甲各号証に係る記載事項のうち、甲第1号証d、甲第2号証b、甲第4号証c等参照)、これらを上記評価項目と共に総合的に勘案して設計しなければならないことも又当然のことである。
しかしながら、ゴルフクラブの、特にクラブの長さ(l)、クラブヘッドの幅(W1)、クラブヘッドの長さ(W2) 、に視点をおき、それら相互の関係を、W1/lを0.069?0.078、 W2/lを0.078?0.087の範囲内に設定して、クラブの性能の向上を図ることについては上述したとおり、甲第1?5号証の何れにも記載はなく、またそのことの示唆もなく、しかも当該技術分野においては自明なことでもなく、甲第1?5号証に記載された事項を相互に適用しても本件考案に到達できたとは認められない。そして、本件考案のゴルフクラブは、上記設定した条件を具備することにより、ゴルファーはクラブの長さを感じることなくスイングができ、結果的にヘッドスピードが上がって打球の飛距離を向上させることが出来、またクラブシャフトの長さに対するヘッドの大きさによるゴルファーへ与える違和感や、不安感の両面を解消させ、打球時のジャストミート率と飛距離とを著しく向上させることができるという作用効果が認められる。
よって、本件登録実新案は甲第1?5号証に記載された事項に基づいてきわめて容易になしえた考案ではないので、実用新案法3条2項の規定に該当するものではない。
理由2について 本件考案は、θ1及びθ2の範囲を数値で限定したものであるが、数値で区切ったことによる効果の根拠が、考案の詳細な説明に記載されておらず、且つ考案の効果の欄に記載された効果と表に記載された試験の結果に矛盾を生じており、当業者が本考案を技術的に理解することができない。また、本件考案の構成Dは、構成Bと構成Cにより必然的に満たされるものであり、本件考案に欠くことが出来ない事項ではないと、請求人は主張している(構成D、構成B、構成Cについては第二.一請求人の主張の項を参照)。
そこで検討すると、θ1及びθ2の範囲を数値で区切った根拠は、本件考案の明細書中の考案の実施例の欄や第1表に説明されており、効果と第1表に記載した試験結果に特段の矛盾点は窺えず、また当業者が、本件考案を技術的に理解できないほどの困難性があるものでもない。
また、本件考案の構成Dは、構成Bと構成Cにより必然的に満たされるものであるので、構成に欠くことができない事項でないと請求人は主張しているが、必然的に満たされる構成か否かということと、考案の構成に欠くことが出来ない事項になるかならないかとは、直接には関係のないことである。
よって、これらの、請求人の主張は認められない。
第四 結び
以上のとおりであるから請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件考案を無効とすることはできない。
よって結論のとおり、審決する。
審理終結日 2002-08-20 
結審通知日 2002-08-23 
審決日 2002-09-05 
出願番号 実願平1-27263 
審決分類 U 1 112・ 121- Y (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 忠悦瀬津 太朗  
特許庁審判長 佐田 洋一郎
特許庁審判官 渡辺 努
鈴木 秀幹
登録日 1999-03-05 
登録番号 実用新案登録第2150492号(U2150492) 
考案の名称 長尺ウツドゴルフクラブ  
代理人 野口 賢照  
代理人 斎下 和彦  
代理人 小川 信一  
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