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審決分類 審判 全部申し立て   A61B
管理番号 1067665
異議申立番号 異議1999-72707  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2002-12-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-12 
確定日 2002-11-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第2588468号「生体を損なわない血糖濃度測定装置」の請求項1ないし5に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2588468号の請求項1ないし5に係る実用新案登録を取り消す。
理由 1 手続の経緯・本件考案
本件実用新案登録第2588468号の出願は、平成2年10月24日に出願された特願平2-286941号を、平成9年8月18日に実用新案登録出願へ変更し、平成10年10月30日にその実用新案の設定登録がなされた。その請求項1?5に係る考案は、実用新案登録された明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1?5に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】電源スイッチを介して所定電圧を供給する電源と、この電源により所定波長の光を発生させる光源と、この光源からの光線を所定の平行光線に制御する光学系と、光学系を介して供給された光線を被測定部位に照射し反射されてきた光を集束させる集光部と、集光部が集束した光を検出する検出部と、検出部からの出力をアナログ信号からディジタル信号に変換した測定値を基準値と比較して演算処理して血糖値を算出する演算処理部と、を備えた生体を損なわない血糖濃度測定装置において、
少なくとも1つの発光素子より成り、かつ接合部を備えると共に前記電源からの電流により異なる出力波長の光を発生させる前記光源としてのレーザダイオードと、前記電源からの出力に基づいて電圧の安定した出力を前記光源としてのレーザダイオードに供給するダイオード用の電源調節器と、
温度変化の影響を受易い前記レーザダイオードの接合部に対して所定の割合で電流値を変化させるようにこのダイオードが封止されたチップの温度を制御する温度調節器と、
前記電源調節器を制御するために前記演算処理部より出力されるディジタル制御信号をアナログ制御信号に変換させるD/A変換器と、
前記レーザーダイオードから放出された光を測定目的に応じて分離・結合させて平行光線となるように光学的に調節する光学系と、
前記光学系により調節された光を被測定部位である被測定者の皮膚に照射すると共に、血管内の血液中の血糖分子の倍振動及び組み合わせ振動により散乱されて反射した光を集束する集光部と、
前記集光部により集束された光子を電気的なアナログ測定値信号に変換した後、この信号を増幅して出力する検出器と、
前記電気的なアナログ測定値をディジタル測定値に変換するA/D変換器と、前記基準値としての検定曲線を記憶するメモリと、変換された前記ディジタル測定値と前記メモリに記憶された検定曲線とを比較して血液中の血糖濃度を算出すると共に、前記D/A変換器を介して前記電源調節器に制御信号を出力してレーザダイオードの発光光線を制御する前記演算処理部としてのマイクロコンピュータと、
前記マイクロコンピュータにより演算・算出された血糖濃度を表示するディジタルディスプレイと、を具備すると共に、装置全体を携帯可能な寸法及び形状に小型化して形成したことを特徴とする生体を損なわない血糖濃度測定装置。
【請求項2】前記レーザーダイオードから放射される電子輻射線の波長が1.4μm?1.8μmであり、この波長の光が被測定者の皮膚を介して順次に血液に照射されることを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項に記載の生体を損なわない血糖濃度測定装置。
【請求項3】前記集光部は、直径が2.56cm以下のほぼ球形に形成された積分球より成り、かつ、全体の寸法が横150mm、縦75mm、及び高さ22mm以下に形成されたことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項に記載の生体を損なわない血糖濃度測定装置。
【請求項4】この血糖濃度測定装置の本体と、前記光学系,集光部及び検出部より成る測定部とを分離して構成すると共に、前記本体及び前記測定部分間を光ファイバにより接続したことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項に記載の生体を損なわない血糖濃度測定装置。
【請求項5】前記集光部により集束された前記光子を検出する検出部は、フォトダイオードを用いると共に前段増幅器を備えたゲルマニウム検出器より構成され、前記D/A変換器及びA/D変換器は、前記マイクコンピュータから分離されて同一基板上に実装され、かつ、前記電源としては4.5?9Vの充電用バッテリより構成されていることを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項に記載の生体を損なわない血糖濃度測定装置。」
2 引用刊行物記載の考案
先の取消理由通知において引用した各刊行物には以下の事項が記載されている。
・刊行物1(特開昭60-236631号公報)
(全体構成と測定波長について)
「本発明は、糖尿病に患っている、あるいはその疑いのある患者のグルコース濃度を非侵襲状態(生体組織を取出すなりにその一部分を破壊しない状態を意味する。)で経皮検査を行う分光光度測定法を提供する」(第4頁左下欄第16?20行)目的のために、「患者の症状に関する有意的なグルコース濃度が測定しうる部位の所まで浸透でき、しかも、グルコース濃度に応じて一部が吸収された後に集光しうる分光特性を有する照射光の光源と、前記部位から透過もしくは透過・反射した放射エネルギーを収集する手段と、少なくとも2つの帯域、即ち、測定および基準帯域にそれぞれ含まれる異なった波長での収集放射エネルギーを検出してこれを電気信号に変換する検出手段と、前記電気信号を、所望のグルコース測定データをあらわす有用な出力に変換する演算手段とで構成されている。」(5頁右下欄17行?6頁左上欄7行)ものであって、「糖尿病の疑いのある患者のグルコース濃度を分光光度測定法により皮下組織において非侵襲的に測定する方法であって、方向性のある光で生体を照射し、照射部位における生体組織を通過もしくは後方散乱してきた光エネルギーIであって、グルコースの吸収スペクトルに特有な測定信号波長λGを含む少なくとも1つの測定スペクトル帯域と、グルコースを含むバックグラウンド組織において、グルコースの吸収が零、もしくは、無視しうる程度である特有な基準信号波長λRを含む少なくとも1つの基準スペクトル帯域とが含まれている前記光エネルギーを集め、かつ、これを電気信号に変換し、その際、前記測定スペクトル帯域および基準スペクトル帯域に夫々対応する電気信号IGとIRとを電子コンピュータで演算処理することによりグルコース濃度測定情報を得るようにした方法において、前記測定および基準スペクトル帯域がいづれも1000?2700nmの近赤外線とし、前記測定信号波長λGを1575±15nm、1765±15nm、2100±15nm、2270±15nmのいづれかの波長に設定したことを特徴とするグルコースの測光検出方法。」(特許請求の範囲第1項)が記載されている。
(光源系:レーザー装置について)
この装置は、「光源系1と検出系2との2つの部分で構成され」(6頁左上欄15?16)行)、「光源系1は、例えばハロゲンランプよりなる光源3」(6頁左上欄16?17行)を用いているが、「もっとも、始めから単色光源を用いる。例えば調色自在なレーザー装置で単色光を用いるのであれば、このようなフィルター7は不要である」(6頁右上欄17?20行)し、また、「言うまでもないことであるが、特定波長のレーザー光を照射光として用いるのであれば、モノクロメータは不要である。」(6頁左下欄17?19行)と記載されている。
(検出系:集光部について)
検出系2は、第1図においては、「光源系1からの単色光を、検出系2の入射口13aに向かって耳朶の反対側、即ち、外側から照射する。単色光、即ち、励起ビーム9は耳朶を透過した後積分球体13に入り、出射口13bを経て受光素子15に入射する。かくて、受光素子15は、入射光の強度に応じた出力信号を出す。」(第8頁左下欄第19行?右上欄第4行)、また、「第2図に示した実施例では、検出系が患者の体表面にあてがわれるようになっている。即ち、皮下組織からの反射光または後方散乱光を直接測定するのに適するように工夫してある。」(第9頁左上欄第2?5行)と記載されている。
(マイクロプロセッサ、モニターについて)
「受光素子15、26は、前置増幅器30(略)を介して、ゲイン調節自在増幅器31(例えば、1?200の範囲でゲインが調節できるもの)に接続されており、また、増幅器31は、ノイズをホールドし平滑化する積分器32とアナログ・デジタル変換器33(例えば、16ビット有するもの)とを介してマイクロプロセッサー35に接続されている。」(第9頁右下欄第20行?第10頁左上欄第10行)、そして、「変換器33からのデジタル出力信号は、前記刻時出力信号に応じて順次出力され、バックグラウンドノイズに関する情報と、グルコース測定信号と、基準信号とが出力される。この三者からなる変換器33の出力は、・・・マイクロプロセッサー35に供給される。マイクロプロセッサー35は、前記刻時出力信号によりタイミングが制御されているので、前述の計算方法のいづれかを用いたプログラムに従って演算を行い、その結果を、モニター36、プリンター37、フロッピーディスクレコーダ38のいづれか1つ、または同時に、グルコース濃度測定データとして表示、もしくは記録する。このマイクロプロセッサー35からはモノクロメータ8の入力線12aを介して、波長を走査して取り出すのに必要なタイミングをとったり、制御する制御信号が出力される。」(第10頁左上欄第15行?右上欄第11行)と記載されている。
・刊行物2(特開昭60-35245号公報)
(小型・軽量化されたグルコース濃度測定装置及びメモリーに記憶された検量線について)
「検査用体液を塗布或いは含浸した固相試薬を小型・軽量化された分析装置の分析部にセットして光束を照射し、その反射光或いは蛍光に基づく電気信号を増幅器、A-D変換器を介してマイクロコンピュータに入力し、マイクロコンピュータ及び/又は電気回路に設定した検量線データに基づき測定値を算出する」(特許請求の範囲第1項)もので、「この測定管理装置(1)は、分析部(2)に反射光測定用の光学系を用いた、血液中のグルコース濃度を測定する糖尿病患者用のものである。そして、分析部(2)の他、操作部(3)、表示部(4)、制御演算部(5)、時計回路(6)、記憶回路(7)、データ出力回路(8)等で構成されている。・・・分析部(2)は積分球(11)、光源(12)、光検出器(13)、増幅器(14)及びA/D変換器(15)よりなる。制御演算部(5)は発振回路(16)やCPU、ROM、RAM、I/O等を含むワンチップマイクロコンピュータから構成されている。」(3頁左下欄20行?右下欄11行)と記載されている。
また、「尚第1図中、符号(24)は駆動用電源としての乾電池、(25)は定電圧回路、(26)は点灯回路、・・・である。駆動源として乾電池(充電式のものを含む)を用いることにより装置全体が小型軽量化した携帯可能なものとなる」(3頁右下欄16行?4頁左上欄1行)と記載されている。
血糖濃度の測定に際しては、「光源(12)が点灯し、反応した固相試薬面で反射した光が光検出器(13)で電気信号に変換され、A-D変換器(15)でデジタル化されて制御演算部に入力される。尚この固相試薬(A)面の反射率は、・・・相対反射率として測定される。次にこの相対反射率と制御演算部に設定してある検量線から濃度値を算出して測定値とし、その値を測定結果として表示部(14)に表示する。」(4頁左上欄14行?右上欄4行)「尚この検量線は較正操作によって設定され」(右上欄4?5行)、「較正値は制御演算部(5)のメモリーに記憶され」(右上欄10?11行)ると記載され、また、図面第1図には、光源(12)からの照射光は積分球11を通り照射されていることが記載されている。
・刊行物3(欧州特許公開第74428号公報)
「血液中のグルコース濃度の測定」(申立人訳文1頁3行参照)のための装置であって、「耳たぶから経皮法により血液中のグルコースを生体内測定する」(第9図参照)ものが記載され、「光源」として「レーザダイオード」(申立人訳文1頁16行参照)を用い、「光源用電源」は、「場合により制御または調整可能なもの」(申立人訳文1頁24行参照)を用いることが記載され、
「光源の光の強さを制御するための部分には、必要なら特殊な制御特性曲線を有するレギュレータを使用することができる。例えばレーザダイオードは公知のとおり、きわめて非線形的な電流-強さ特性を有しているからである。」(申立人訳文4頁5?8行参照)
「第5図は、信号処理をデジタル方式で行う本発明の装置の電気・電子部の回路図を原理的に示したものである。この回路には、電源装置8;光源用制御増幅器9;光源10;およびプローブ11を通過した散乱光を受け取り、それに応じた測定信号を送り出す各種光センサ12;が含まれている。・・・
光センサ12からの測定信号は、後置された信号増幅器13?15によって増幅され、A/D変換器を経由して、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはその他コンピュータからなる測定処理部17へ送られる。・・・測定値処理部は、あらかじめ与えられたファンクションまたはプログラムに基づき測定信号から、信号出力を制御する信号を生成するとともに、・・・必要な制御量を生成する。こうして生成された制御量は、たとえばD/A変換器21を経由して制御増幅器9へ送られる。」(申立人訳文4頁12行?5頁1行参照)
と記載されている。
したがって、生体を損なわない血糖濃度測定装置において、光源としてレーザーダイオードを用いること、そのレーザーダイオードの強さは電源の電流を調整することによって制御されるものであることが開示され、また、電流制御手段として、マイクロコンピュータである演算処理部からの制御信号を、D/A変換器によりアナログ信号に変換し、そのアナログ信号によって制御される光源用制御増幅器が開示されている。
・刊行物4(Technisches Messen tm,52.Jahrgang,Heft 9/1985 p.321-326)
「半導体レーザの波長に影響を及ぼす主たる要因として、注入電流と動作温度が挙げられる。そのため従来使用されていた安定法は、これら要因をレーザー動作中、一定に維持することを目指したものである。これら両要因は、互いに無依存でないと考えられる。電流は半導体の温度の影響を受けるからである。」(申立人訳文2頁7?11行参照)
・刊行物5(「O plus E」1988年5月号(昭和63年5月5日 株式会社新技術コミュニケーションズ発行)P.88-93)
「波長可変半導体レーザー」に関し、「半導体レーザーは材料やその組成を変えることによって発振波長を大きく変えることができ、また、温度や電流により波長を同調できる。」(88頁左欄10?12行)「半導体レーザーでは、活性領域の屈折率が温度、およびキャリア密度に依存し、両者は注入温度により変化するため、電流による波長同調が可能である。」(90頁左欄12?15行「2.3 注入電流による同調」)
「一方、近赤外領域における高分解能分光、大気汚染物質のリモートセンシングなどにおいて、従来色素レーザやFセンターレーザーが用いられていた。表1に示すように、半導体レーザーはこれらのレーザーに比べて、素子1個当たりの同調範囲は狭いが、小型、低消費電力、長寿命、低価格など数多くの特徴を有しているため、これらの新しい分野への応用も期待されている。」(88頁左欄23行?右欄3行)
と記載されている。
また、表1には、「半導体レーザー」の「励起法」は「電流注入」と記載されている。
・刊行物6(米国特許第4570638号公報)
光を用いた生体情報の測定装置において、測定部(「test instrument10」)と測定装置の本体(「control unit16」)とを分離して構成するとともに、両者を光ファイバ(「optical fiber cable44」)により接続することが記載されている。
・刊行物7(「センサ技術」1988年4月号(昭和63年3月11日 情報調査会発行 第16頁と第17頁の間の広告頁))
レーザー光の検出素子として、ゲルマニウムフォトダイオードを使うことが記載されている。
・刊行物8(特開昭60-75032号公報)
生体の生化学成分の光学的測定装置において、光源から放出されたレーザ光線を、「コリメータ24」によって平行光線になるように調節し、同光線をATRファイバ部16を通して生体に照射すること(第3頁左下欄第13?19行)が記載されている。
3 本件考案と引用刊行物考案との対比・判断
3ー1 本件請求項1に係る考案について
本件請求項1に係る考案と刊行物1に記載の考案とを対比すると、刊行物1に記載の考案も、光を生体に照射してその反射光をマイクロコンピュータで分析し、測定値と基準値とを比較してグルコース濃度を測定する、生体を損なわない血糖濃度測定装置であって、光源としてレーザーを用いることが開示され、電源スイッチを介して所定電圧を供給する電源を備えることは当然のことであるから、両者は、
「電源スイッチを介して所定電圧を供給する電源と、この電源により所定波長の光を発生させる光源と、この光源からの光線を制御する光学系と、反射されてきた光を集束させる集光部と、集光部が集束した光を検出する検出部と、検出部からの出力をアナログ信号からディジタル信号に変換した測定値を基準値と比較して演算処理して血糖値を算出する演算処理部と、を備えた生体を損なわない血糖濃度測定装置において、少なくとも1つの発光素子より成るレーザと、前記レーザーから放出された光を調節する光学系と、前記集光部により集束された光子を電気的なアナログ測定値信号に変換した後、この信号を増幅して出力する検出器と、前記電気的なアナログ測定値をディジタル測定値に変換するA/D変換器と、変換された前記ディジタル測定値を検定曲線と比較して血液中の血糖濃度を算出する前記演算処理部としてのマイクロコンピュータと、前記マイクロコンピュータにより演算・算出された血糖濃度を表示するディジタルディスプレイと、を具備することを特徴とする生体を損なわない血糖濃度測定装置」
において一致し、次の点で相違する。
(1)本件考案の光源が、接合部を備えると共に前記電源からの電流により異なる出力波長の光を発生させるレーザダイオードであるのに対して、刊行物1記載の考案は、光源としてレーザー採用することを開示するのみである点。
(2)本件考案は、光源としてのレーザダイオードを制御するために、前記電源からの出力に基づいて電圧の安定した出力を前記光源としてのレーザダイオードに供給するダイオード用の電源調節器、及び前記電源調節器を制御するために前記演算処理部より出力されるディジタル制御信号をアナログ制御信号に変換させるD/A変換器とを備え、演算処理部としてのマイクロコンピュータにより、前記D/A変換器を介して前記電源調節器に制御信号を出力してレーザダイオードの発光光線を制御するのに対して、刊行物1記載の考案においては光源にレーザを採用することを開示するのみであり、レーザダイオード制御のための該構成を開示するものではない点、
(3)本件考案は、温度変化の影響を受易い前記レーザダイオードの接合部に対して所定の割合で電流値を変化させるようにこのダイオードが封止されたチップの温度を制御する温度調節器を備えるのに対して、刊行物1記載の考案においては光源にレーザを採用することを開示するのみであり、レーザダイオードチップの温度制御のための該構成を開示するものではない点
(4) 本件考案の光学系が、光源からの光線を所定の平行光線に制御する光学系であり、レーザーダイオードから放出された光を測定目的に応じて分離・結合させて平行光線となるように光学的に調節する光学系であるのに対して、刊行物1記載の考案における光学系は平行光線となるように調節するものかどうか不明である点、
(5) 本件考案の集光部が、光学系を介して供給された光線を被測定部位に照射し反射されてきた光を集束させる集光部であり、前記光学系により調節された光を被測定部位である被測定者の皮膚に照射すると共に、血管内の血液中の血糖分子の倍振動及び組み合わせ振動により散乱されて反射した光を集束するものであるのに対して、刊行物1記載の考案における集光部は、反射光を集光するものの照射光を照射するものではなく、また、血管内の血液中の血糖分子の倍振動及び組み合わせ振動により散乱されて反射した光を集束するかどうか不明である点、
(6) 本件考案は、ディジタル測定値と比較すべき、基準値としての検定曲線を記憶するメモリを備えているのに対して、刊行物1記載の考案では、該メモリを備えているかどうか不明である点、
(7)本件考案は、装置全体を携帯可能な寸法及び形状に小型化して形成したものであるのに対して、刊行物1記載の考案はこの点を開示するものでない点、
そこで、前記相違点について検討する。
相違点(1)について、
刊行物3には、生体を損なわない血糖濃度測定装置の光源としてレーザーダイオードを用いること、また、そのレーザーダイオードの強さは電源の電流によって制御されることが記載されているから、刊行物1記載の考案のレーザーを、接合部を備えると共に前記電源からの電流により異なる出力波長の光を発生させるレーザダイオードとすることは、当業者がきわめて容易になし得ることにすぎない。
相違点(2)について、
レーザーとしてレーザーダイオードを採用するに際しては、レーザーダイオードに所定の電圧を印加して電流を制御する必要があることは明らかで、レーザーダイオードの制御電圧変動がダイオード電流制御に多大の影響を与えるものであるから、何らかの電圧安定手段を用いることは当業者の常套手段である。ちなみに、刊行物2の光源12の点灯回路26にも定電圧回路25を介して電源24が供給されていて、一般に、電源電圧の安定化のための手段を採用することは必要に応じて適宜採用されるものである。したがって、電源からの出力に基づいて電圧の安定した出力を前記光源としてのレーザダイオードに供給するダイオード用の電源調節器を採用することは、当業者が適宜なし得るものである。
また、刊行物3には、演算処理部としてのマイクロコンピュータにより、前記D/A変換器を介して前記電源調節器に制御信号を出力してレーザダイオードの発光光線を制御することが記載されているから、電源調節器を制御するために前記演算処理部より出力されるディジタル制御信号をアナログ制御信号に変換させるD/A変換器とを備え、演算処理部としてのマイクロコンピュータにより、前記D/A変換器を介して前記電源調節器に制御信号を出力してレーザダイオードの発光光線を制御するようにすることも、当業者がきわめて容易になし得ることと認められる。
相違点(3)について
刊行物4に、半導体レーザの出力光の波長は動作温度に影響されやすく、従来から動作温度をレーザー動作中一定に維持するようにしていたことが記載されているから、半導体レーザであるレーザダイオードを光源として使用する際に所定の温度に維持する温度調節器を採用すること、すなわち、刊行物1に記載の考案においてレーザーダイオードを採用するに際して、温度変化の影響を受易いレーザダイオードの接合部に対して所定の割合で電流値を変化させるようにこのダイオードが封止されたチップの温度を制御する温度調節器を備えることは、当業者であれば普通に採用し得るものである。
相違点(4)について
刊行物8には、生体の生化学成分の光学的測定装置において、光源から放出された光が平行光線となるように光学系で調節して、生体に光を照射することが記載されており、刊行物1記載の血糖濃度測定装置の考案においてこのような手段を採用することも、当業者が適宜採用し得ることと認められる。
相違点(5)について
刊行物2に記載された測定装置の小型化を意図した血糖濃度測定装置の集光部(「積分球(11)」)は、反射光を集光するだけではなく、照射光もその内部を通過させるものであるから、同様に装置を小型化しようとする際に刊行物1記載の考案における集光部(積分球体)を照射光を通すように設計変更することは、当業者にとってきわめて容易になし得ることである。
また、刊行物1には、測定に用いる光の波長のスペクトル帯域を1575±15nm又は1765±15nmとすることが記載されており、これらは、本件登録明細書に記載された測定光の波長(1.4μm?1.8μm)に含まれており、赤外光を用いる分光分析においては、分子の倍振動及び組み合わせ振動により散乱反射した光を測定光とすることは常套手段であるから、血管内の血液中の血糖分子の倍振動及び組み合わせ振動により散乱されて反射した光を集束するようにすることも、当業者にとって普通のことである。
相違点(6)について、刊行物2には、測定量から血糖濃度値を算出する際に、メモリーに記憶された較正値からなる検量線を用いることが記載されているから、刊行物1記載の考案の検定曲線をメモリに記憶することに技術的困難性は認められない。
相違点(7)について、一般に、装置を小型軽量化し、携帯可能とすることは種々の技術分野で望まれている事項であり、また刊行物2にも記載されているように血糖濃度測定装置の分野においても試みられている周知の課題であることから、刊行物1に記載の考案を小型軽量化しようとすることは当業者が適宜なし得るものと認められる。

3-2 本件請求項2に係る考案について
請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案の使用波長に関し、「レーザーダイオードから放射される電子輻射線の波長が1.4μm?1.8μmであり、この波長の光が被測定者の皮膚を介して順次に血液に照射される」ことを限定するものであるが、刊行物1には、測定に用いる光の波長のスペクトル帯域を1575±15nm又は1765±15nmとすることが記載されており、これは、請求項2の1.4μm?1.8μmに含まれることは明らかである。そして、刊行物1の第5図に記載されたグルコースの吸収スペクトル曲線によれば、刊行物1に記載された上記波長の近傍においても、グルコースによる照射光の吸収が大きな差なく生じているものと認められるから、上記ピーク波長含む1.4μm?1.8μmの光を順次に血液に照射して血糖濃度を測定することは、当業者が適宜なし得ることと認められる。また、1.4μm?1.8μmの波長の光を順次照射した場合とその帯域のピーク波長である上記波長の光を照射する場合とを比較しても、血糖濃度測定において、技術的に意義のある効果の相違があるとは認められない。

3-3 本件請求項3に係る考案について
請求項3に係る考案は、請求項1に係る考案の集光部を、「集光部は、直径が2.56cm以下のほぼ球形に形成された積分球より成り、かつ、全体の寸法が横150mm、縦75mm、及び高さ22mm以下に形成され」ると限定するものであるが、血糖濃度測定装置の集光部としてほぼ球形の積分球を用いることは、刊行物2にも記載されているように、周知の技術である。そして、このような周知の積分球の大きさや装置全体の寸法を特定することは、当業者が適宜決定しうる設計上の選択的事項にすぎない。
3-4 本件請求項4に係る考案について
請求項4に係る考案は、請求項1に係る考案の構成を、「この血糖濃度測定装置の本体と、前記光学系,集光部及び検出部より成る測定部とを分離して構成すると共に、前記本体及び前記測定部分間を光ファイバにより接続した」と限定するものであるが、測定部と測定装置の本体とを分離して構成するとともに、両者を光ファイバにより接続する光を用いた生体情報の測定装置が記載されており、該装置構成を刊行物1に記載の考案に適用することに格別の困難性は認められない。
3-5 本件請求項5に係る考案について
請求項5に係る考案は、請求項1に係る考案の構成を、「前記集光部により集束された前記光子を検出する検出部は、フォトダイオードを用いると共に前段増幅器を備えたゲルマニウム検出器より構成され、前記D/A変換器及びA/D変換器は、前記マイクコンピュータから分離されて同一基板上に実装され、かつ、前記電源としては4.5?9Vの充電用バッテリより構成されている」と限定するものであるが、刊行物1には、血糖濃度測定装置における光検出部に前段増幅器を備えることが記載されており、また、刊行物7に記載のように、レーザー光の検出器としてゲルマニウムを用いたフォトダイオードも周知である。そしてこれらの手段を刊行物1に記載の考案に用いることに何ら格別の技術的困難は見いだせない。さらに、D/A、A/D変換器を別の基板に実装したり、電源として4.5?9Vの充電用バッテリを用いることは、いずれも個々の実施態様に応じて適宜選択すべき単なる設計的事項にすぎない。
また、各請求項に係る考案の作用効果についても、各刊行物に記載された事項から当業者がきわめて容易に予測しうる範囲をでない。
権利者は、各相違点の構成について、その構成が公知または周知であるからといって、特定の用途に適用することは必ずしもきわめて容易であるとは限らず、特定の用途において、ある機能の必要性、それを達成するための構成の必要性を認識することは、考案を完成させる上で大きな要素となりうると主張するが、刊行物に記載された公知ないし周知の各構成を組合わせることを妨げる特段の事情も認められないから、本件考案は、当業者であれば各刊行物に記載された考案に基づいてきわめて容易になし得たものといわざるを得ない。
また、権利者は、刊行物2に記載された積分球の技術を刊行物1記載の血糖濃度測定装置に適用することの難易は、適用した結果得られる技術的効果を勘案して判断すべきで、本件発明は、これにより高精度の携帯型測定装置を完成したものであると主張するが、刊行物2に記載された装置も小型・軽量化を目的とし、また刊行物2に記載された積分球は周知でもあり、さらに刊行物1記載の血糖濃度測定装置においても積分球を使用している点では共通するから、刊行物2に記載の積分球を刊行物1記載の装置に適用しようとすることは、当業者がきわめて容易になし得るものといわざるを得ず、適用された結果の作用効果について検討しても、各刊行物に記載のものから当業者がきわめて容易に予測しうるものにすぎない。
さらに、権利者は、刊行物1記載の考案における散乱反射が血糖分子の倍振動及び組合わせ振動により散乱反射した光を用いるとの明示的記載はないと主張するが、近赤外線の照射により化合物分子の基準振動の倍振動ないし組合わせ振動による吸収があることは明らかであり、これを分析の対象とすることも周知である。
したがって、権利者の主張は採用できない。
4 むすび
以上の通り、本件請求項1?5に係る考案は、上記刊行物1?8に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件請求項1?5に係る実用新案は、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
異議決定日 2000-11-24 
出願番号 実願平9-7317 
審決分類 U 1 651・ 121- Z (A61B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 森 正幸江成 克己國島 明弘  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 橋場 健治
後藤 千恵子
登録日 1998-10-30 
登録番号 実用新案登録第2588468号(U2588468) 
権利者 梁 元錫
大韓民国ソウル特別市道峰区倉4洞26番地 東亜アパートメント6棟405号 金 允玉
大韓民国ソウル特別市永登浦区大林洞865-2
考案の名称 生体を損なわない血糖濃度測定装置  
代理人 青山 葆  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 橘谷 英俊  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 河宮 治  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 吉元 弘  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 橘谷 英俊  
代理人 吉元 弘  
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