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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01J
管理番号 1070556
審判番号 不服2002-12939  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-11 
確定日 2002-12-24 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 53707号「フーリエ分光器」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 4月25日出願公開、実開平 7- 23243]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案

本願は、平成5年10月4日の出願であって、その請求項1に係る考案は、平成12年12月14日付け、平成14年1月21日付けの各手続補正書により補正された明細書又は図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、本願考案という。)

「光ファイバを用いたフーリエ分光器において、
白色光源と、
この白色光源出力光を平行光にする第1の光学手段と、
この第1の光学手段の出力光が入射されるマイケルソン干渉計と、
このマイケルソン干渉計の出力光を集光する第2の光学手段と、
この第2の光学手段の焦点面に結像される前記白色光源の像の範囲内であって
、前記焦点面の近傍にその入力端が配置され、それぞれ同一経路を通過する測定用及び参照用光ファイバと、
この測定用及び参照用光ファイバの出力光を同時に検出する測定用及び参照用光検出器と
を備えたことを特徴とするフーリエ分光器。」

2.引用刊行物記載の発明

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に米国において頒布された刊行物である米国特許第5212748号明細書(以下、「引用例」という。)には次の記載がある。
「この発明は、一般的に、光を受ける複数のファイバに等しい放射を分配することに関する。(第1欄左欄第5-7行)」、「典型的なファイバ光学回線は、分析器の光源と波長選択部分とからの光をリモートセンサーに導き、他のファイバを介して分析器の検出器部に導く。(第1欄左欄第23-25行)」、「一つのファイバ回線から他のファイバ回線へ、簡単に確実に切り替えること、そして、サンプル用回線と参照用回線との間を切り替えることについて必要があり。これは、ほとんどの分析器において、定量的な測定にとって必要な正確さを維持するために必要とされる。(第1欄左欄第36-41行)」。
また、FIG.4には、「光源1」、「要素14」、「フィールドストップ16」、「光学要素2」、「マイケルソン干渉計3」、「光学要素4」、「短焦点距離要素19」、「複数の光ファイバ回線91?93」、「複数のリモートセンサ101?103」、「複数の光ファイバ回線111?113」、「スイッチ13」、「1つの光検出器8」を備えたフーリエ分光器が記載されており、このFIG.4についての説明として、「光源1からの光は要素14によりフィールドスポット16上にフォーカスされる」、「フィールドスポット16内の個々のポイントからの光が光学要素2によってコリメートされる」、「短焦点距離要素19が、光学要素4によってフィールドスポットの像が形成される場所から焦点距離だけ手前の位置に配置され、複数のファイバ端部が短焦点距離要素19によって形成されるフィールドストップの小さな像の位置に配置される」(以上については、第2欄右欄第23-53行)、「光は、スイッチ13によって、光検出器8にフォーカスされるように指向される(第2欄右欄第8-10行)」が記載されている。

ここで、引用例に記載されたようなマイケルソン干渉計を備えたフーリエ分光器において、「光源」としては広帯域の「白色光源」が用いられていることは当業者にとって自明のことである。
また、FIG.4及び引用例に記載された上記の記載事項に基けば、引用例に記載されたフーリエ分光器において、「光源からの光がフォーカスされているフィールドスポットからの光をコリメートする」こと、「光学要素4及び短焦点距離要素19により形成された、光源からの光がフォーカスされているフィールドスポットの像の位置に複数のファイバ端部が位置する」ことは、それぞれ、「光源出力光を平行光にする」ということ、「マイケルソン干渉計の出力光を集光する光学手段の焦点面に結像される光源の像の範囲内であって、焦点面の近傍に、複数の光ファイバの入力端が配置される」ということを技術的に意味するものである。
さらに、上記のとおり引用例には、「サンプル用回線」すなわち「測定用回線」以外に「参照用回線」を設けることについても記載されていることから、結局、引用例には、「光ファイバを用いたフーリエ分光器において、白色光源と、この白色光源出力光を平行光にする第1の光学手段と、この第1の光学手段の出力光が入射されるマイケルソン干渉計と、このマイケルソン干渉計の出力光を集光する第2の光学手段と、この第2の光学手段の焦点面に結像される白色光源の像の範囲内であって、前記焦点面の近傍にその入力端が配置された測定用及び参照用光ファイバと、スイッチと、スイッチにより切り替えられる測定用及び参照用光ファイバの出力光を検出する1つの光検出器とを備えたことを特徴とするフーリエ分光器。」が記載されているものと認められる。(以下、引用例に記載された考案という。)

3.対比

本願考案と引用例に記載された考案とを比較すると、両者は、光ファイバを用いたフーリエ分光器において、白色光源と、この白色光源出力光を平行光にする第1の光学手段と、この第1の光学手段の出力光が入射されるマイケルソン干渉計と、このマイケルソン干渉計の出力光を集光する第2の光学手段と、この第2の光学手段の焦点面に結像される前記白色光源の像の範囲内であって、前記焦点面の近傍にその入力端が配置された測定用及び参照用光ファイバと、この測定用及び参照用光ファイバの出力光を検出する光検出器とを備えている点で一致し、
(1)測定用及び参照用光ファイバの配置に関して、本願考案においては、測定用及び参照用光ファイバとがそれぞれ同一経路を通過しているのに対して、引用例1に記載された考案においては、それぞれ同一経路を通過していることについて明示されていない点、
(2)測定用及び参照用光ファイバの出力光を検出する光検出部に関して、本願考案においては、測定用及び参照用光ファイバの出力光を同時に検出する測定用及び参照用光検出器を備えているのに対して、引用例1に記載された考案においては、スイッチによって切り替えられる測定用及び参照用光ファイバの出力光を検出する1つの光検出器を備えている点、
で相違する。

4.当審の判断

上記の相違点(1)、(2)について以下検討する。

相違点(1)については、分光測定の技術分野において、測定用光ファイバ及び参照用光ファイバを配置するにあたり、光ファイバの光伝送に関して同じ条件・環境となるように、測定用光ファイバと参照用光ファイバとが同一経路を通過するように配置することは本願出願前に周知の技術にすぎず(例えば、特開平5-93688号公報(特に、第3頁第4欄第1-8行目の記載、第2頁第2欄第14-15行目の記載、第1図)や特開昭63-304137号公報(特に、第6図)を参照。)、引用例1に記載された光ファイバを用いたフーリエ分光器において、測定用及び参照用光ファイバの配置構成として、前記の周知の技術を採用することは、当業者がきわめて容易になし得ることである。

相違点(2)については、光を用いた測定・計測の技術分野において、複数の光経路からの出力光を光検出器によって検出するに際して、「1つの光検出器を設け、スイッチやシャッタなどにより複数の光経路からの出力光を選択的に切り替えて1つの光検出器に入力し、1つの光検出器により時間をずらして検出する」技術や、「複数の光経路に対応して複数の光検出を設け、複数の検出器により同時に検出する」技術は、いずれも本願出願前に周知の技術であって、かつ、相互に置換可能な技術である。(後者の周知の技術に関して、例えば、特開平4-36640号公報(特に、第2図)や特開昭63-165735号公報(特に、Fig.2)を参照。)
そして、このような2つの周知の技術が置換可能であることを知る当業者にとっては、引用例1に記載されたスイッチと1つの光検出器とからなる構成に代えて、測定用及び参照用光ファイバの出力光を同時に検出する測定用及び参照用光検出器を備えた構成とすることは、光検出器やスイッチのコスト、光検出部の回路構成などを考慮して、適宜になし得る設計的事項である。

5.むすび

したがって、本願考案は、引用例に記載された考案、本願出願前に周知の技術及び当業者が適宜になし得る設計的事項に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
審理終結日 2002-10-23 
結審通知日 2002-10-24 
審決日 2002-11-13 
出願番号 実願平5-53707 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (G01J)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 樋口 宗彦  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 橋場 健治
河原 正
考案の名称 フーリエ分光器  

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