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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) G01J
管理番号 1070562
審判番号 無効2000-35609  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-02-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-11-06 
確定日 2001-12-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第2149473号実用新案「赤外線感知装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2149473号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2149473号の考案(以下、「本件考案」という。)は、昭和63年2月1日に出願(実願昭63-12296号)され、平成6年5月18日に出願公告(実公平6-19063号)され、その後平成9年4月24日に手続補正がされ、平成10年2月27日に設定登録された。

2.請求人の主張の概要
(1)本件実用新案出願公告後の平成9年4月24日の手続補正は、実用新案登録請求の範囲を実質上変更するものであり、実用新案法9条において準用する特許法42条の規定により、上記補正がされなかった実用新案出願について登録されたものとみなされるから、本件考案は、出願公告時の明細書の実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりのものであって、甲第2?4号刊行物に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案は実用新案法3条2項の規定に違反してされたものであり、無効とすべきものである。
(2)仮に平成9年4月24日の手続補正が適法であり、本件考案が実用新案登録時の明細書の実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりのものであったとしても、甲第2?4号証刊行物に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案は、実用新案法3条2項の規定に違反してされたものであり、無効とすべきものである。

3.被請求人の主張の概要
(1)平成9年4月24日の手続補正は、実用新案登録請求の範囲を実質上変更するものではなく適法なものであり、本件考案は、実用新案登録時の明細書の実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりのものであって、甲第2?4号刊行物に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。
(2)仮に該手続補正が適法ではなく、本件考案が公告時の明細書の実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりのものであったとしても、甲第2?4号証刊行物に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。

4.公告後補正についての判断
(1)公告後補正の内容
出願公告後の平成9年4月24日付けの手続補正書によって補正された内容は、次のとおりである。
(a)実用新案登録請求の範囲
公告時明細書の実用新案登録請求の範囲の「窓部が形成されている箱体と、赤外線センサが設けられている基板と、赤外線集光レンズとを備え、前記基板は箱体に内蔵され、前記赤外線集光レンズは基板に取り付けられると共に、前記箱体の窓部から外部に露出して設けられ、前記赤外線集光レンズと基板には、赤外線集光レンズの焦点が赤外線センサの位置になるように、互いの相対位置を位置決めする位置決め用係合部が設けられていることを特徴とする赤外線感知装置。」を、「窓部が形成されている箱体と、赤外線センサが設けられている基板と、赤外線集光レンズとを備え、前記基板は箱体に内蔵され、前記赤外線集光レンズは前記赤外線センサを全周から覆うごとく基板に取り付けられると共に、前記箱体の窓部から外部に露出して設けられ、前記赤外細集光レンズと基板には、赤外線集光レンズの焦点が赤外線センサの位置になるように、互いの相対位置を位置決めする位置決め用係合部が設けられている事を特徴とする赤外線感知装置。」と補正する。
(b)考案の詳細な説明
公告時明細書における考案の詳細な説明の(課題を解決するための手段)の項の「前記赤外線集光レンズは基板に取り付けられる」(公告公報3欄11?12行)を「前記赤外線集光レンズは前記赤外線センサを全周から覆うごとく基板に取り付けられる」と補正する。
(作用)の項の「簡単な作業となる。」(同3欄24行)を、「簡単な作業となる。また、赤外線集光レンズは前記赤外線センサを全周から覆うごとく基板に取り付けられるので、赤外線センサはカバーの窓部と赤外線集光レンズとの隙間から侵入した風の影響を受けずに正確な作動を継続することができる。」と補正する。
(考案の効果)の項の「即ち、」(同4欄50行)を、「また、赤外線集光レンズは前記赤外線センサを全周から覆うので、赤外線センサはカバーの窓部と赤外線集光レンズとの隙間から侵入した風の影響を受けずに正確な作動を継続することができるという効果が得られる。即ち、」と補正する。
(2)請求人の主張
補正後の実用新案登録請求の範囲に記載された「前記赤外線センサを全周から覆うごとく」は、補正前の出願公告時の実用新案登録請求の範囲に記載された考案の「簡単な作業で赤外線集光レンズの焦点を赤外線センサの位置に正確に設置する」という考案の具体的な目的の範囲を逸脱し、「前記赤外線集光レンズは前記赤外線センサを全周から覆うので、赤外線センサはカバーの窓部と赤外線集光レンズとの隙間から進入した風の影響を受けずに正確な作動を継続することができるという効果が得られる。」という目的が加わったものであり、出願公告時の実用新案登録請求の範囲に記載されている事項を実費的に拡張し、又は変更したものである。
(3)公告時明細書の記載内容
補正前の公告時明細書によれば、本件考案は、「従来の赤外線感知装置にあっては、箱体2に対し、基板4と赤外線集光レンズ5とはそれぞれ別個に取付けられていたために、赤外線集光レンズ5の焦点が基板4の赤外線センサ3の位置になるように設定するのは、高度な技術を有する作業であった。」(公告公報2欄9行?3欄2行)という課題を解決することを目的として公告時の実用新案登録請求の範囲に記載された構成を採用したものであり、その作用は、「本考案の赤外線感知装置では、赤外線集光レンズを基板に取り付けるにあたり、赤外線集光レンズと基板の位置決め用係合部を互いに係合させるだけの簡単な作業で、赤外線集光レンズの焦点が赤外線センサの位置になるように正確に設定することができる。即ち、箱体に対する赤外線集光レンズ及び基板の取り付けも、高度な技術を必要としない簡単な作業となる。」(同3欄18?24行)というもので、その効果は、「基板及び赤外線集光レンズを箱体に設置する作業は、高度な技術を必要としない簡単なものでありながら、赤外線集光レンズの焦点の設定は、正確なものにすることができるという効果が得られる。即ち、誤作動のない正確な赤外線感知装置を提供することができる。」(同4欄47行?5欄1行)というものである。
そして、実施例の説明においては、「本実施例の赤外線検知装置Aは、壁面等の垂直面Cに取り付けて使用されるもので、第1図に示すように、箱体10と基板20と赤外線レンズ30とで主に構成されている。」(同3欄32?35行)、
「赤外線集光レンズ30は、所定範囲内の赤外線を集光して前記赤外線センサに照射するもので、第1図及び第3図に示すように、赤外線センサ21を全周から覆った状態で前記基板20に取り付けられ」(同3欄46?49行)ること、
「また、使用時において、カバー12の窓部13と赤外線集光レンズ30との間に隙間があって、その隙間から風が侵入したとしても、赤外線センサ21は赤外線集光レンズ30によって全周から覆われているので、その風の影響を受けずに正確な作動を継続することができる。」(同4欄28?32行)と記載されている。
(4)当審の判断
実用新案登録請求の範囲に「前記赤外線センサを全周から覆うごとく」を加入する補正は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであり、補正前の明細書に記載されている事項を実用新案登録請求の範囲に付加したものである。
請求人は、該補正は、減縮を目的とするものであっても、実用新案登録請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものであると主張する。
しかしながら、該補正は、補正前の実用新案登録請求の範囲に記載された「前記赤外線集光レンズは基板に取り付けられる」を、「前記赤外線集光レンズは前記赤外線センサを全周から覆うごとく基板に取り付けられる」と補正するものであるから、赤外線集光レンズの形状と基板への取り付け態様を限定するものであって、「赤外線集光レンズと基板の位置決め用係合部を互いに係合させるだけの簡単な作業で、赤外線集光レンズの焦点が赤外線センサの位置になるように正確に設定する」という本来の作用に変更はない。
また、赤外紙集光レンズ及びその基板への取り付けを上記のように限定することによる、風の影響を受けずに正確な作動を継続するという作用効果についての補正は、実施例について記載されていた作用効果を補正後の考案の作用効果として付加するものであり、補正前の本件考案の「誤動作のない正確な赤外線感知装置を提供する」という記載を考慮すると、本件考案の作用効果を変更するとはいえない。
したがって、当該補正によって補正前の考案の目的の範囲を逸脱したとはいうことはできず、当該補正によって、補正前の特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。
よって、請求人の主張は採用できず、当該補正は、適法にされたものであり、本件考案は補正後の明細書の実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりのものである。

5.3条2項違反についての判断
(1)本件考案
本件考案は、平成9年4月24日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認められる。
「窓部が形成されている箱体と、赤外線センサが設けられている基板と、赤外線集光レンズとを備え、前記基板は箱体に内蔵され、前記赤外線集光レンズは前記赤外線センサを全周から覆うごとく基板に取り付けられると共に、前記箱体の窓部から外部に露出して設けられ、前記赤外紙集光レンズと基板には、赤外線集光レンズの焦点が赤外線センサの位置になるように、互いの相対位置を位置決めする位置決め用係合部が設けられている事を特徴とする赤外線感知装置。」
(2)引用例
ア.特開昭62-147325号公報(甲第2号証)(以下、「引用例1」 という。)
[熱線感知器]
「造営面に取り付けられる第1のベース32及び全面開□の箱型の第2のベース31で構成され両ベースの一側辺が枢着されたベース3と、熱線素子1及び熱線素子出力より人体等を検知する検知回路が実装されベース内に収納されたプリント基板ブロック9と、該プリント基板ブロック9が第2のベース31内に収納された状態で第2のベース31の開口部の内側面に嵌合されプリント基板ブロック9の固定を行うボディ10と、該ボディ10の全面に取着されプリント基板ブロック9の熱線素子に熱線を集光するフレネルレンズ2と、該フレネルレンズ2を挿通する開口部51が穿設され第2のベース31の開ロ部に被着されるカバー5とを備えて成る熱線感知器。」(特許請求の範囲及び第1図)
[ボディ10]
「第1図乃至第10図は本発明の一実施例を示す図であり、光学系としてフレネルレンズ2を用いることにより小型化を図るものであり、器具本体としてベース3、ボディ10、カバー5にて構成したものである。
以下、各部毎に説明していく。まずフレネルレンズ2が取着されるボディ10に関して説明する。本実施例では第3図に示すように背面が開口された箱型のボディ10である。そして、ボディ10の前面に熱線素子1に熱線を集光するフレネルレンズ2が取着される部分を開口し、この前面の開口上下縁を半円形状に突出させた突部11を設け、この突部11の曲面形状はフレネルレンズ2の曲面と合わせてある。」(2頁右上欄2?16行)
「さらにボディ10の上下側面には外方に係止片14が突設された爪13を形成してある。」(2頁左下欄6?8行)
[ボディ10とプリント基板ブロック9とベース3との組立て]
「ここで、ボディ10とプリント基板ブロック9とベース3との組み立て状態を説明しておく。プリント基板4は第2のベース31内に収納され、このときプリント基板4とベース3とは何等のねじ止めなどの取付手段を昂じない。そして、第2のベース31にプリント基板ブロック9が収納された状態で第2のベース31の側面の内面側にボディ10の側面が摺接するようにして第2のベース31にボディ10を被着する。このときボディ10の側面に形成された爪13の係止片14は第2のベース31の内側面にて押圧されて内方にたわむ。ここで、第7図に示すように第2のベース31の内側面と背面の裏側とが交わるコーナー部分に開口方向に凹所35が穿設してあり、さらに内側面から開□方向に直交する方向に突起36が突設してある。したがって、ボディ10の爪13が第2のベース31の突起36を乗り越えるようにボディ10を押し込むことにより爪13が凹所35内に嵌合されるとともに、係止片14が外方に復帰して突起36に当接してボディ10が第2のベース31に固着される。このように本実施例ではねじ止め無しでプリント基板ブロック9、ボディ1 0、及びベース3の組み立てを行うことができるものである。」(3頁左上欄9行?右上欄12行)
また、第9図には、フレネルレンズ2を装着したボディ10が、プリント基板ブロックの一部に配置される熱線素子その他の回路部品を覆って、プリント基板の一部と当接していることが認められる。
[カバー5とベース3との組立て]
「上記カバー5とベース3との被着は次のように行う。ここで第2のベース31の開口縁にはリブ(図示せず)が突設してあり、このリブの外形がカバー5の開□部の内径と等しく形成してあり、カバー5の開□部をベース3の開口部に圧入することにより第1のベース3とカバー5とを被着することができるものである。」(3頁左下欄6?12行)
イ.特開昭59-82780号公報(甲第3号証)(以下、「引用例2」という。)
「本発明は、・・・放出された放射線あるいは検出されるべき放射線(例えば赤外線)をコリメートあるいは収束させるためのレンズを備えたレンズ・キャップ内にそのような放射器及びセンサをコンパクトに装着することに関する。」(2頁右下欄7?13行)
「レンズ・キャップは回路板上に横にあるいはパネルに配置あるいは装置できる。更に、レンズ・キャップは回路板にあらかじめ装着されたあるいは半田付けされた放出器あるいは検出器を横から受けるように構成される。」(3頁石上欄2?5行)
「第1図乃至第5図において、レンズ・キャップ10は前方レンズ11と、レンズ接合部13から後方に突き出た2つの同じばね状指状部12と、レンズとの接合部15から後方に突き出たおおい状指状部14と、を含む。指状部12及び14は、ゾーン16を定めるスカートを形成すると考えることができ、このゾーン16は赤外線の検出器又は放出器(即ちデバイス)を受ける。」(3頁左下欄7?14行)
「デバイス20がゾーン16内に完全に収まるとき、それら指状部は互いの方向へ戻り、従ってデバイスは溝22に保持されるが取り外しは可能である。第6図を参照されたい。注目すべきことは、指状部の平らな下方縁部12aが回路板25の表面に25aに着座するように適合されていること、並びにレンズ11の1体となった下方突起物26が回路板の穴27内に位置してレンズ・キャップを回路板上に位置決めする。さらに、端子28は、デバイ20から下方へ延びて回路板25の1以上の開ロ29を通し突き出て、回路板の「半田付け側」の半田層30と接触してこれに位置決めされる。」(3頁右下欄10行?4頁左上欄2行)
ウ.欧州特許出願公開第0098521号明細書(甲第4号証)(以下、「引用例3」という。)
「室内照明を自動点灯するための方法と装置」に関し、「この発明に基づく装置は、壁7の凹部8内に取り付けられたエバリュエーシヨンスイッチ6を備える。該スイッチ6の上に赤外線感知器1と光抵抗2とが固着されている。これらの感知器1と抵抗2の上に、赤外線と可視光線とを透過するアーチ状に曲げられたフィルム3が装着され、該フィルムに6個のフレネル・レンズ9が形成されている。赤外線感知器1は、円筒の軸線上ないし球の中心点に配置される。各フレネル・レンズ9が、周囲の室内のそれぞれの視野5を分担し、それぞれの視野内を移動する人を捕捉する。・・・エバリュエーションスイッチ6の上、赤外線感知器1の高さに一致した面上にプレート4が設けられているので、該プレート4に隣接したフレネル・レンズ9は、その状態とサイズが通常のフレネル・レンズと同様な条件になる。」(4頁1?20行(翻訳文2頁24行?3頁6行))と記載されている。
また、図面を参照すると、プレート4にフィルム3及びエバリユエーションスイッチ6が取付け固定されていることが認められる。
(3)対比・判断
本件考案と引用例1に記載された考案(以下、「引用考案1」という。)とを対比すると、引用考案1の「開口部51」、「カバー5とベース3」、「熱線素子1」、「プリント基板4」、「フレネルレンズ2」は、それぞれ本件考案の「窓部」、「箱体」、「赤外線センサ」、「基板」、「赤外線集光レンズ」に相当するから、本件考案と引用考案1とは、
「窓部が形成されている箱体と、赤外接センサが設けられている基板と、赤外線集光レンズとを備え、前記基板は箱体に内蔵され、前記赤外線集光レンズは前記箱体の窓部から外部に露出して設けられている赤外線感知装置。」で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本件考案では、赤外線集光レンズが赤外線センサを全周から覆うごとく基板に取り付けられるのに対して、引用考案1では、赤外線集光レンズはボディに取り付けられ、該ボディは赤外線センサを全局から覆っているものの、ベースに取り付けられている点。
[相違点2]
赤外線集光レンズの焦点が赤外線センサの位置になるように、互いの相対位置を位置決めする位置決め用係合部が、本件考案では、赤外線集光レンズと基板に設けられているのに対して、引用考案1では、赤外線集光レンズを取り付けたボディと基板を収納したベースに設けられている点。
(4)相違点1についての判断
本件考案は、赤外線集光レンズが赤外線センサを設けた基板に取り付けられ、一体として箱体に内蔵されるものであるが、赤外線集光レンズと一体となった基板を箱体にどのように配置し固定するかについて格別の構成を備えるものではない。
これに対して、引用考案1は、カバー5とベース3からなる箱体に、赤外線集光レンズ2を装着したボディ10と赤外線センサ1を設けたプリント基板4を内蔵する赤外線感知装置であって、赤外線レンズを装着したボディと箱体の一方のベースとの間に赤外線センサを設けたプリント基板を挟持し、該ボディが赤外線センサを全周から覆って、一体として組み立てられるものであり、これにより、赤外線集光レンズと基板に設けられた赤外線センサとの位置合わせが行なわれるものである。
このように、引用考案1では、赤外線集光レンズを装着したボディと赤外線センサを設けた基板とを一体的に固定するだけではなく、箱体への内蔵の一環として箱体の一方であるベースとの固定も併せ考え、ボディ、基板、ベース三者を一体的に組立て固定するものであるが、赤外線集光レンズと赤外線センサとの位置合わせのために赤外線集光レンズを装着したボディと赤外線センサを設けた基板とを一体的に固定するという技術的思想は、ベース(箱体)への固定手段とは独立して把握できるものであるから、引用考案1は、ボディ、基板、ベース三者を一体的に組立て固定するもののみならず、赤外線集光レンズを装着したボディと赤外線センサを設けた基板とを一体的に取り付けたものを箱体に内蔵するという技術的思想を開示していると認められる。
そして、引用例3には、赤外線感知装置において、赤外線センサ(赤外線感知器1)を支持するコントロールスイッチ10、11を備えたエバリュエーションスイツチ6がプレート4に固定され、赤外線集光レンズ(フィルム3)は赤外線センサを全周から覆うようにプレートに設けられことが記載され、エバリュエーションスイッチを介するもののプレートに対して固定された赤外線センサに対して赤外線集光レンズをプレートに固定することが開示され、赤外線集光レンズが赤外線センサの全周を覆うように、赤外線センサを支持する部材に対して固定されることが開示されている。
したがって、引用考案1の赤外線集光レンズを装着したボディを赤外線センサを全周から覆うごとくベース(箱体)に取付けることに代えて、赤外線集光レンズを赤外線センサを全周から覆うごとく赤外線センサを支持する部材である基板に取り付け、箱体に内蔵できるものとして構成して相違点1に係る本件考案とすることは当業者がきわめて容易になし得ることと認められる。
(5)相違点2についての判断
引用考案1において、引用例3に記載のものを適用して、赤外線集光レンズを赤外線センサを全周から覆うごとく基板に取り付けるように構成することが、きわめて容易になし得ることについては、相違点1について判断したとおりであり、引用例3に記載のものも、赤外線集光レンズの焦点が赤外線センサの位置になるように、互いの相対位置を位置決めして取り付けられるものであることは明らかである。
また、引用例2には、赤外線集光用レンズの位置決め用係合部である「下方突起部26」が基板の位置決め用係合部である「回路板の穴27」内に位置して位置決めすることが記載されていること、引用考案1のボディとべースとは位置決め用係合部により係合して取り付け固定されているように、一般にある部材を他の部材に取り付けるに際して、係合部を設けて係合固定することは周知であることを考慮すると、赤外線集光レンズと基板との取り付けに際して、本件考案のように、双方に位置決め用係合部を設けて係合により取り付けることは、当業者が適宜採用し得ることといわざるを得ない。
そして、本件考案の効果である、本件考案の基板及び赤外線集光レンズを箱体に設置する作業は、高度な技術を必要としない簡単なものであること、赤外線集光レンズの焦点の設定は正確なものにすることができること、及び赤外線センサはカバーの窓部と赤外線集光レンズとの隙間から侵入した風の影響を受けずに正確な作動を継続することができるという効果については、いずれも引用例ないし周知の技術から当業者がきわめて容易に予測し得る範囲を越えない。
(6)被請求人の主張について
被請求人は、本件考案は、箱体を有する赤外線感知装置において、赤外線集光レンズの焦点を基板の赤外線センサの位置になるように設定するには高度の技術を有する作業であり、正確に設定されないと誤動作を起こす原因となっていた、という課題を契機として考案されたものであり、このような課題もない各引用例記載の考案から本件考案を当業者が想到することは到底あり得ないと主張する。
しかしながら、赤外線集光レンズの焦点を基板の赤外線センサの位置になるように設定することは赤外線検知装置に当然求められることであり、引用考案1においても、赤外線センサを設けた基板をレンズを装着したボディで固定することによって、赤外線集光レンズの焦点を基板の赤外線センサの位置になるように設定するようにしていると認められる。
したがって、上記課題は赤外線検知器においてよく知られていたものということができ、格別のものではない。
そして、本件考案は、上記課題を解決するために、赤外線集光レンズと基板に位置決め用係合部を設け、その結果、赤外線集光レンズと基板に位置決め用係合部を互いに係合させるだけの簡単な作業で、赤外線集光レンズの焦点を基板の赤外線センサの位置になるように正確に設定するという作用効果を奏するものと認められるところ、引用例3に、赤外線集光レンズの焦点をプレートに固定される赤外線センサの位置になるように設定するために、赤外線集光レンズを赤外線センサを支持するプレートに対して固定することが記載され、取り付け手段として位置決め係合部は周知であるから、赤外線集光レンズと基板に位置決め用係合部を設けることは、当業者であれば、きわめて容易に想到し得るといわざるを得ない。
また、被請求人は、引用考案1の赤外線集光レンズは赤外線センサを覆うようには構成されておらず、基板に取り付けられるものではない、引用考案1はレンズを装着したボディが基板を覆うように構成して用いられるものであり、あえてレンズを直接基板に取り付けなければならない必要性や動機はない、引用例3に記載のものには、箱体を備える赤外線検知器における赤外線集光レンズと赤外線センサの位置合わせに関する技術的課題は生じようがない、したがって、引用考案1のレンズを装着したボディとべースにより基板を組み立てる構造に代えて、赤外線センサをレンズで覆い基板に取り付ける構造にしようとする等は発想のしようがないと主張する。
しかしながら、引用考案1の赤外線集光レンズを取り付けたボディは、ベースに収納された基板上の赤外線センサに対して赤外線集光レンズの位置決めが行なえるようにするものである。赤外線集光レンズを取り付けたボディは、赤外線センサに対して位置決めされる本件考案の赤外線集光レンズと、所定範囲の赤外線を集光するレンズ作用をするものとして同一の機能を有するものと認められる。
また、箱体に内蔵される赤外線集光レンズを装着したボディと赤外線センサを設けた基板とは一体として組み立てるべきものであるという技術思想は 引用考案1が開示している
したがって、引用例3に、赤外線集光レンズを赤外線センサを支持するプレートに対して固定することが開示されている以上、赤外線集光レンズを基板に取り付けようとすることは、当業者がきわめて容易に想到し得るものである。
さらに、引用例3に記載の赤外線検知器は、実施例においては、壁の凹部に収容され、プレート4を介して壁に取り付けられているが、壁の凹部にのみ取り付けられるものとは認められず、設置個所によっては、当然箱体に内蔵されることもありうるもので、引用例1に記載の赤外線検出器を窓部が形成されている箱体と組合わせることについても、格別の阻害要因は見あたらない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件考案は、出願前頒布された刊行物に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案の実用新案登録は実用新案法3条2項の規定に違反してされたものであり、平成11年法律41号附則3条によりなお従前の例によるとされ、平成5年法律26号附則4条1項によりなおその効力を有する平成5年改正前の実用新案法37条1項の規定に該当し、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審判に関する費用については、実用新案法41条の規定により準用する特許法169条2項によりさらに準用する民事訴訟法61条の規定により被請求人が負担すべきものとする。
審理終結日 2001-10-23 
結審通知日 2001-10-29 
審決日 2001-11-13 
出願番号 実願昭63-12296 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (G01J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 矢沢 清純関根 洋之波多江 進  
特許庁審判長 後藤 千恵子
特許庁審判官 志村 博
関根 洋之
登録日 1998-02-27 
登録番号 実用新案登録第2149473号(U2149473) 
考案の名称 赤外線感知装置  
代理人 大塚 博一  
代理人 尾仲 一宗  
代理人 七篠 耕司  
代理人 河備 健二  
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