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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23G
管理番号 1070564
審判番号 不服2000-13500  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-08-25 
確定日 2003-01-06 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 31316号「焼却炉の燃焼用空気供給装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 1月17日出願公開、実開平 7- 2719]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.本願は、平成5年5月19日に出願されたものであって、本願の請求項1及び請求項2に係る考案(以下、それぞれ「本願考案1」、「本願考案2」という。)は、平成11年8月23日付け手続補正書によって補正された実用新案登録請求の範囲請求項1及び請求項2に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
焼却炉の煙道の上流側端部近傍に位置する燃焼室内に、外周に多数の噴射口が形成されたノズルを配設し、このノズルに炉外より空気を高圧で送り込み、上記噴出口から空気を燃焼室内の火炎流に乱流による火炎伝播が生じる程度の圧力で噴出させる、ことを特徴とする焼却炉の燃焼用空気供給装置。
【請求項2】
前記ノズルの噴出口から前記燃焼室内に、0.3?7.0kg/cm2の範囲内の圧力で空気が噴出されることを特徴とする焼却炉の燃焼用空気供給装置。」
なお、請求項2の単位表示は、kg/cm3ではなく、kg/cm2の誤記であると認められるので、その旨認定した。

2.これに対して、原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭57-122213号公報(以下「刊行物1」という。)には、廃棄物燃焼装置について、図面とともに下記の記載がある。
「この密閉ケーシング12の内部に円筒形状の廃棄物焼却炉14とこの焼却炉14と上部において煙道16を介して連通するサイクロン除塵室18とを並列的に配設することにより基本的に構成されている。・・・・・
ケーシング12内に配設される焼却炉14は通路20を介してケーシング12正面に開設した廃棄物投入口22と連通しており、また、焼却炉14内にはドーナツ状に中心部を開口したフランジ板24を炉頂近傍に水平に配置する。ケーシング12の上部適所には送風機26を配置してこの送風機26から導出した送風機28をケーシング12および焼却炉14の頂部に貫通させて炉中に垂下させ前記フランジ板24の開口部下方まで延在させる。この場合、焼却炉14中に延在している送風機28の前記煙道16に臨む外周部およびフランジ板24の下方に延在する部分の外周部には夫々多数の空気吹出口30および32を穿設する。」(第2頁右上欄第20行?同右下欄第3行)
「まず、使用に際しては、ケーシング12正面に開設した投入口22を開放して、例えば、布片、木片、プラスチック、ゴム類等の可燃性廃棄物を焼却炉14中に投入する。・・・廃棄物への点火と同時に送風機36からの炉内への送風を開始する。これにより廃棄物の燃焼が開始され、充分な空気(酸素)の補給の下に良好な燃焼が達成される。」(第3頁左上欄第10行?同右上欄第1行)
また、第1図からみて、送風管28が煙道16及びフランジ板24の開口部を貫通して焼却炉14中まで導入され、送風管の端部は、フランジ板の開口部近傍の焼却炉14中に開口していると認められる。

そうすると、刊行物1には、上記の記載からみて下記の考案が記載されていると認められる。
「廃棄物燃焼装置のフランジ板24の開口部近傍に位置する焼却炉14中に、外周に多数の空気吹出口32が形成された送風管28を配設し、この送風管より空気を送り込んだことを特徴とする焼却炉の燃焼用空気供給装置。」

3.本願考案1について検討する。
本願考案1と上記刊行物1に記載された考案を対比すると、刊行物1の「廃棄物燃焼装置」、「煙道16」、「焼却炉14中」、「空気吹出口32」、「送風管28」は、本願考案1の「焼却炉」、「煙道」、「燃焼室内」、「噴射口」、「ノズル」にそれぞれ機能上相当する。
また、刊行物1の送風管の端部は、フランジ板の開口部近傍の焼却炉中に配設されており、このフランジ板の開口部近傍は、燃焼ガスの流れにおいて、煙道の上流側端部近傍に相当するから、両者は、「焼却炉の煙道の上流側端部近傍に位置する燃焼室内に、外周に多数の噴射口が形成されたノズルを配設し、このノズルから空気を送り込んだことを特徴とする焼却炉の燃焼用空気供給装置。」で一致し、下記の点で相違する。

相違点:本願考案1は、ノズルに炉外より空気を高圧で送り込み、噴出口から空気を燃焼室内の火炎流に乱流による火炎伝播が生じる程度の圧力で噴出させるのに対し、刊行物1に記載された考案は、送風管より空気を焼却炉内に送り込む際の圧力について記載がない点。

そこで、上記相違点について検討する。
未燃ガスの燃焼を促進させるために、炉外より空気を送り込み、高速で噴出させることは周知の技術(例えば特開昭62-202925号公報参照。)であり、また、空気を高速で噴出させることにより、燃焼中のガスに乱流が発生し、燃焼が促進されることも周知の事項(例えば特開平4-359705号公報参照。)である。さらに、空気を高速で噴出させるためには、空気を高圧で送り込むことが必要であることは技術常識である。
よって、刊行物1の空気供給装置において、周知技術のように高圧で燃焼室に空気を送り込み、燃焼室内の火炎流に乱流による火炎伝搬が生じるようにすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たものである。

さらに、本願考案1が奏する作用、効果は、刊行物1の記載及び上記周知技術からきわめて容易に予測できたものである。
したがって、本願考案1は、刊行物1に記載された考案及び上記周知技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案できたものである。

なお、出願人は、平成14年1月16日(受付)の審判請求書の手続補正書において「本願考案装置にあって、ノズルから噴出される空気は、「燃焼室内の水平方向全方位にくまなく飛散され、熱分解ガスの擾乱をひき起こす」(【0008】参照)ものである。また、「燃焼室内で発生したガスや煤煙が煙道にすばやく逃げるのを防止し、燃焼室中におけるこれらの滞留時間を増加させると共に火炎伝播を均等に促進させることによって被燃焼物と煤炎の完全燃焼を行う」(【0009】参照)作用のみを果たすものである。従来の一次空気や二次空気のようにそれ自体燃焼に寄与することを意図して供給されるものではない。本願考案においてノズルから噴出される空気は、高圧であり、熱分解ガスの擾乱を惹きおこし、燃焼用の空気を擾乱するに必要な量だけ供給される。それであってはじめて燃焼室内での完全燃焼の促進を図ることができるのである。」と記載し、ノズルから供給される空気が一次空気や二次空気として供給されるのではなく、炉内の燃焼用空気を撹拌することのみのためであると主張しているが、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書」という。)には、
「焼却炉の燃焼用空気供給装置。」(【考案の名称】)、
「【産業上の利用分野】 本考案は、炉内の被燃焼物の完全燃焼に寄与する燃焼用空気の供給装置に関するものである。」(段落【0001】)
「本考案の目的は、こうした従来の燃焼用空気供給装置の問題点に鑑み、容積の比較的大きな燃焼室であっても、その内部に供給された必要十分な空気によって炉温の異常な上昇をきたさせることなく乱流火炎を生じさせて被燃焼物の完全燃焼を図ることができ、しかも低コストで既存の燃焼炉にも組み付けることができ、かつメンテナンスの容易な燃焼空気の供給装置を提供することにある。」(段落【0005】)
「【考案の効果】 以上述べたように、本考案によれば、燃焼室内に配設された噴射ノズルから空気を燃焼室の水平方向全方位に高圧で噴出させるので、燃焼に必要十分な空気を広い燃焼室内にくまなく均等に供給させると共に燃焼室内のガスに著しい擾乱作用を生じさせ、煤煙の発生を押さえるなどして被燃焼物の完全燃焼を行うことができる。」(段落【0020】)
と記載されており、当初明細書に、ノズルから供給される空気が一次空気や二次空気として供給されるのではなく、炉内の燃焼用空気を撹拌することのみのために供給されるものとして記載されているとは認められない。
しかも、現在の明細書中にも記載されているとは認められない。

4.次に、本願考案2について検討する。
本願考案2に係る請求項2は、請求項1について、さらに「ノズルの噴出口から前記燃焼室内に、0.3?7.0kg/cm2の範囲内の圧力で空気が噴出される」旨限定するものであるが、この0.3?7.0kg/cm2と明示された範囲の圧力は、通常の送風機で用いられる圧力範囲と差違がなく、また、この範囲とすることに臨界的な意義が認められない。
したがって、本願考案2は、刊行物1に記載された考案及び上記周知技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案できたものである。

5.以上の通り、本願考案1及び本願考案2は、上記刊行物1に記載された考案及び周知技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-09-17 
結審通知日 2002-10-08 
審決日 2002-10-23 
出願番号 実願平5-31316 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (F23G)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 豊原 邦雄倉橋 紀夫  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 井上 茂夫
原 慧
考案の名称 焼却炉の燃焼用空気供給装置  
代理人 植田 茂樹  

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