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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) A45C
管理番号 1070573
判定請求番号 判定2002-60057  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2003-02-28 
種別 判定 
判定請求日 2002-05-25 
確定日 2003-01-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第3056194号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「ストラップのサンプル」は、登録第3056194号の請求項1ないし5に係る登録実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 1. 本件請求の趣旨
イ号図面及びその説明書に示す「ストラップのサンプル」(以下、「イ号物件」という。)は、実用新案登録第3056194号の請求項1ないし5に係る登録実用新案の技術的範囲に属さない、との判定を求める。

2. 本件考案
本件請求項1ないし5に係る登録実用新案は、登録明細書の実用新案登録請求の範囲(平成10年9月30日付手続補正書により補正)の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件考案1ないし5」という。なお、符号は当審で付与。)。
【本件考案1】
(A)手あるいは首などに引っ掛ける吊紐と、当該吊紐を携帯機器に取り付けるための吊元紐とで成る携帯機器用ストラップにおいて、
(B)前記吊紐(1)と吊元紐(2)とが互いに分断されて、その分断された吊紐(1)と吊元紐(2)の端部に夫々雄型又は雌型のジョイント部材(3,4)が設けられ、
(C)当該各ジョイント部材(3,4)に連結可能な他の二つのジョイント部材(5,6)を設けたアクセサリー(7X,7Y,13X,13Y)が、
(D)前記他の二つのジョイント部材(5,6)によって前記吊紐(1)と吊元紐(2)との間に着脱自在に装着されることを特徴とする携帯機器用ストラップ。
【本件考案2】
(E)前記アクセサリー(7X,7Y,13X,13Y)に設ける前記他の二つのジョイント部材(5,6)が、二つとも同じ雄型又は雌型のジョイント部材である請求項1記載の携帯機器用ストラップ。
【本件考案3】
(F)アクセサリー本体(8,10,14,16)に二つの雄型又は雌型のジョイント部材(5,6)が設けられた携帯機器用ストラップのアクセサリー。
【本件考案4】
(G)前記二つのジョイント部材(5,6)が、前記アクセサリー本体(8,10,14,16)の上下両端又は左右両端に設けられると共に、二つとも同じ雄型又は雌型のジョイント部材である請求項3記載のアクセサリー。
【本件考案5】
(H)カバンや袋物、あるいはズボンのベルト通しなどに引っ掛ける吊金具(18)と、当該吊金具(18)を携帯機器に取り付けるための吊元紐(2)とが互いに分断されて、その分断された吊金具(18)と吊元紐(2)の端部に夫々雄型又は雌型のジョイント部材(3,4)が設けられ、
(I)当該各ジョイント部材(3,4)に連結可能な他の二つのジョイント部材(5,6)を設けたアクセサリー(7X,7Y,13X,13Y)が、前記他の二つのジョイント部材(5,6)によって前記吊金具(18)と吊元紐(2)との間に着脱自在に装着されることを特徴とする携帯機器用ストラップ。

3. イ号物件
イ号物件は、請求人である有限会社西原製作所が製造、販売しているものである。
イ号図面及びその説明書を参照すると、イ号物件は、以下の事項を含むものと認められる。
(a)携帯機器等に取り付けるための吊元紐2を有するストラップのサンプルにおいて、
(b)吊元紐2の端部に雌型のジョイント部材3を有し、
(c)雄形のジョイント部材14と凹部23との二つのジョイント部材を設けたアクセサリーを有し、
(d)雄形のジョイント部材14によって雌型のジョイント部材3に着脱自在に装着され、凹部23により他のアクセサリーの雄形のジョイント部材14に着脱自在に装着されるストラップのサンプル。

4. 当事者の主張
(1)請求人の主張
(イ)本件考案1に関して
イ号物件の構成(a)にあっては、ジョイント部材を備えた吊紐が存在せず、本件考案1の構成要件(A)(B)及び(D)を充足しない。また、イ号物件の構成(b)にあっては、アクセサリーに設けた凹部23をアクセサリーのマスコット12と一体に形成しており、この凹部23は、部品としてのジョイント部材といえないものであるし、また、凹部23は他のアクセサリーのジョイント部材14を接続するためのものであるから、本件考案の構成要件(C)を充足しない。よって、イ号物件は、本件考案1の技術的範囲に属しない。
(ロ)本件考案2に関して
イ号物件において、アクセサリーには二つのジョイント部材が設けられているが、二つのジョイント部材は同じ形状のものではなく、イ号物件の構成(c)は、本件考案2の構成要件(E)を充足しない。よって、イ号物件は、本件考案2の技術的範囲に属さない。
(ハ)本件考案3に関して
イ号物件の構成(c)にあっては、アクセサリーに雄形のジョイント部材14が設けられているが、他に部品としてのジョイント部材は存在しない。凹部23は、部品としてのジョイント部材ではなくアクセサリーのマスコット12と一体に形成されているものであるし、他のアクセサリーのジョイント部材の接続を可能とするためのものであって、吊紐に結合されるジョイント部材を接続するためのものではない。したがって、イ号物件の構成(c)は、本件考案3の構成要件(F)を充足しない。よって、イ号物件は、本件考案2の技術的範囲に属さない。
(ニ)本件考案4に関して
イ号物件の構成(c)にあっては、アクセサリーに二つのジョイント部材が設けられているが、二つのジョイント部材は同じ形状のものではない。したがって、イ号物件の構成(c)は本件考案4の構成要件(G)を充足しない。よって、イ号物件は、本件考案4の技術的範囲に属さない。
(ホ)本件考案5に関して
イ号物件の構成(a)は、吊金具も吊金具に設けられるジョイントも備えていない。したがって、本件考案5の構成要件(H)を充足しない。また、アクセサリーにはジョイント部材14が存在するが、このジョイント部材14は、被接続体4または他のアクセサリーの凹部23に接続するためのものであり、吊金具に接続するためのものではないから、イ号物件の構成(d)は、本件考案5の構成要件(I)を充足しない。したがって、イ号物件は、本件考案5の技術的範囲に属さない。
(ヘ)均等論について
イ号物件は、吊紐を取り付けるためのものではなく、しかも、マスコット12の下部に備えられる凹部23は部品としてのジョイント部材ではないから、本件考案1ないし5の本質的部分を備えていないものであり、均等論適用の余地はない。また、様々なキャラクターからなるマスコットを、雌雄金具を用いて着脱可能にしたものは、従来より広く用いられており、イ号物件は、公知技術から当業者が容易に推考できるものである。

(2)被請求人の主張
(イ) 本件考案1に関して
イ号物件は、本件考案1における「アクセサリー部分」と同一の形状、構造のものであって、吊紐を容易に取り付けることができるものである。
(ロ) 本件考案2に関して
本件登録明細書の考案の実施の形態に示されているアクセサリー13X、13Yには、雄形及び雌型のジョイント部材5、6が設けられており、イ号物件と形状、構造において異なるところがない。
(ハ) 本件考案3に関して
イ号物件においても、吊元紐2とアクセサリーとを、また、アクセサリーと吊紐とを同種の雌雄ジョイントでつなげれば、本件考案3に係るアクセサリーを有するストラップと形状、構造において異なるところはない。
(ニ) 本件考案4に関して
本件登録明細書の考案の実施の形態に示されているアクセサリー13Yのジョイント部材5、6は、各々雄と雌の型をしており、イ号物件と形状、構造において異なるところがない。
(ホ) 本件考案5に関して
イ号物件において、携帯機器に取り付ける吊元紐に連結可能な雌型ジョイント部材パーツは、同種の雌型ジョイントを用いた本件考案5に係るストラップと容易に交換でき、カバン等に引っ掛けることができるものである。
(ヘ) 均等論について
被請求人には、均等論の適用について、期間を指定して審尋したが、回答書は提出されなかった。

5. 当審の判断
(1)イ号物件と本件考案1との対比
イ号物件の構成(a)は、ジョイント部材を備えた吊紐を有しておらず、本件考案1の構成要件(A)、(B)及び(D)を充足しない。
してみると、イ号物件の他の構成(b)ないし(d)と、本件考案1の構成要件(A)ないし(D)とを対比、判断するまでもなく、イ号物件は本件考案1の技術的範囲に属さない。
(2)イ号物件と本件考案2との対比
本件考案2は、その構成要件として、本件考案1の構成要件をすべて含むものであるから、上記(1)において示したとおりの理由により、イ号物件は本件考案2の技術的範囲に属さない。
(3)イ号物件と本件考案3との対比
イ号物件の構成(c)は、アクセサリーに雄型と雌型の二つのジョイント部材を設けるというものであり、本件考案3の構成要件(F)のうち、アクセサリー本体に二つの雄型又は雌型のジョイント部材を設けるという点は充足している。(なお、請求人は、一方のジョイント部材である凹部23は、マスコット12と一体に形成されており、部品としてのジョイント部材ではないから、上記構成要件(F)における、アクセサリー本体に二つの雄型又は雌型のジョイント部材を設けるという構成を充足しないと主張するが、本件考案3において、文言上、部品としてのジョイント部材(アクセサリー本体外に設けられたジョイント部材)が除外されているとはいえないので、上記請求人の主張は採用しがたい。)
しかしながら、イ号物件においては、アクセサリーの凹部23に、他のアクセサリーの雄形ジョイント部材14を接続することがあるだけで、吊紐は接続されないのに対し、本件考案3に係るアクセサリーは、「携帯機器用ストラップのアクセサリー」、すなわち、吊紐と吊元紐とからなるストラップ用のアクセサリーであって、吊紐と共に用いることを専らとするものであるから、イ号物件の構成(c)は、本件考案3の構成要件(F)のうち「携帯機器用ストラップの」なる構成を充足しない。
被請求人は、イ号物件においても、吊元紐2とアクセサリーとを、また、アクセサリーと吊紐とを同種の雌雄ジョイントでつなげれば、本件考案3に係るアクセサリーを有するストラップと形状、構造において異なるところはない、と主張するが、そうするためには、アクセサリーの凹部23と寸法的に合致する雄形ジョイントを有する吊紐の存在が前提となるところ、イ号物件はかかる吊紐を有していないのであるから、被請求人の主張は、イ号物件とは異なる物件についての主張ということができ、イ号物件が本件考案3の技術的範囲に属するか否かとは関係のないものである。
したがって、イ号物件の構成(c)は、本件考案3の構成要件(F)を充足しない。また、イ号物件の他の構成(a)、(b)及び(d)も本件考案3の構成要件(F)を充足しない。
よって、イ号物件は本件考案4の技術的範囲に属さない。

(4)イ号物件と本件考案4との対比
本件考案4は、その構成要件として、本件考案3の構成要件をすべて含むものであるから、上記(3)において示したとおりの理由により、イ号物件は本件考案4の技術的範囲に属さない。

(5)イ号物件と本件考案5との対比
イ号物件の構成(a)には、カバンや袋物、あるいはズボンのベルト通しなどに引っ掛ける吊金具が存在せず、本件考案5の構成要件(H)及び(I)を充足しない。
また、イ号物件の他の構成(b)ないし(d)も、本件考案5の構成要件(H)及び(I)は充足しない。
よって、イ号物件は本件考案5の技術的範囲に属さない。

(6)均等論について
被請求人の上記主張(イ)、(ハ)及び(ホ)からすると、請求人は、均等論の適用を主張しているとも解されるので、以下、均等論が適用されるか否かについて検討する。
均等論が適用されるには、以下の要件がすべて満たされていることが必要である(平成6年行(オ)第1083号(平成10年2月24日判決言渡)最高裁判決)。
(イ) 実用新案登録請求の範囲に記載された構成中のイ号と異なる部分が登録考案の本質的な部分でない。
(ロ) 前記異なる部分をイ号のものと置き換えても登録考案の目的を達することができ、同一の作用効果を奏する。
(ハ) 前記異なる部分をイ号のものと置き換えることが、イ号の実施の時点において当業者が容易に想到することができたものである。
(ニ) イ号が登録考案の出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に推考することができたものではない。
(ホ) イ号が登録考案の実用新案登録出願手続において実用新案登録請求の範囲から意識的に除外される等の特段の事情がない。
本件登録明細書には、従来技術に関して、(イ)「この種のストラップは、図6(a)のように、手に引っ掛ける吊紐50と、その吊紐50を携帯電話やPHS等の携帯機器に取り付けるための吊元紐51とで構成されている。」(段落【0002】【従来技術】)、(ロ)「図6(b)のように、プラスチックで成形されたキャラクター人形等のマスコットで成るアクセサリー52が装着されている。アクセサリー52は、その本体を成すマスコットの中心部に貫通する紐通し孔53の下端側から差し込んだ吊元紐51を紐通し孔53の上端側から引き出して、吊元紐51と吊紐50の結着部54に接着剤等で固定されている。」(段落【0004】)と記載されており、本件考案1ないし5は、かかる従来技術を前提にして、「携帯電話などに取り付けたストラップを付け替えることなく、そのストラップに装着されたアクセサリーだけを別のものに簡単に交換できるようにすると共に、ストラップの種類や使用状態に合わせてアクセサリーの向きも簡単に変えられるようにすることを技術的課題としている。」(段落【0007】)ものと認められる。してみると、本件考案1ないし5は、いずれも、吊元紐と吊紐ないし吊金具を有するストラップを前提にしたものということができ、請求項1ないし2における「吊紐」なる事項、請求項3ないし4における「携帯機器用ストラップの」なる事項、請求項5における「吊金具」は、いずれも、考案の本質的部分であるといえる。
イ号物件は、この本質的部分を有していないのであるから、上記均等要件(イ)を満たしておらず、他の均等要件を判断するまでもなく、本件考案1ないし5と均等ではない。

6. むすび
したがって、イ号物件は、本件考案1ないし5の技術的範囲に属さない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2002-12-19 
出願番号 実願平10-4747 
審決分類 U 1 2・ 1- ZA (A45C)
最終処分 成立    
特許庁審判長 梅田 幸秀
特許庁審判官 和泉 等
千壽 哲郎
登録日 1998-11-18 
登録番号 実用新案登録第3056194号(U3056194) 
考案の名称 携帯機器用ストラップとそのアクセサリー  

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