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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) A01K
管理番号 1073410
審判番号 無効2001-35311  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-07-12 
確定日 2003-03-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第2552677号実用新案「両軸受リール」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第2552677号の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件登録第2552677号実用新案(以下、「本件実用新案登録」という。)は、平成2年8月7日に実用新案登録出願された実願平2-83879号(以下、「本件出願」という。)に係り、その考案について平成9年7月11日に設定登録され、その後、異議申立人〔件外リョービ株式会社〕より実用新案登録異議の申立〔平成10年異議第72201号〕がなされ、取消理由が通知され、指定期間内の平成11年2月2日付けの訂正請求書により訂正請求がなされた後、前記異議の申立について、訂正の認容及び本件実用新案登録を維持する決定がなされ、その後、無効審判請求人〔件外リョービ株式会社〕より請求された本件実用新案登録についての無効審判〔無効2000-35407号〕とは別に、本件無効審判請求人〔ダイワ精工株式会社〕より本件実用新案登録についての平成13年7月12日に本件無効審判〔無効2001-35311号〕が請求されたものであり、無効審判被請求人〔株式会社シマノ〕より指定期間内の平成13年10月12日付けの審判事件答弁書が提出されると共に、同日付けの訂正請求書が提出され、審判請求人より平成14年1月21日付けの審判事件弁駁書が提出され、当審より平成14年5月20日付け訂正拒絶理由が通知され、審判被請求人より平成14年7月22日付けの意見書が提出され、また審判被請求人より平成14年8月8日付けの上申書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
訂正請求人〔無効審判被請求人株式会社シマノ〕が平成13年10月12日付け訂正請求書において求める訂正の内容は、次の訂正を含むものである。
すなわち、本件登録第2552677号実用新案に対する平成10年異議第72201号の異議の申立てに対して平成11年2月2日付け訂正請求書により訂正請求し、前記異議の申立てについての決定(維持決定)において当該訂正が認められ、明細書についての訂正がすでに確定しているところの、前記訂正請求書に添付した訂正明細書(以下、「訂正明細書(甲第14号証)」という。)の実用新案登録請求の範囲の
「リール本体を構成する左右のケース部(1),(1)に亘ってサムレスト(12)とリール脚取付用のロアーフレーム(13)とを配置するとともに、ハンドル軸(16)、レベルワインド機構(R)、スプール(6)、クラッチ操作具(7)夫々を配置して成る両軸受リールであって、前記リール本体の外形を、前記スプール(6)の軸芯(Q)に沿う方向視で円形、若しくは、略円形に成形するとともに、前記サムレスト(12)と前記ロアーフレーム(13)とを、前記リール本体の外形中心(P)を基準にして上下に振り分け、かつ、前記リール本体の外形より内側に位置するように配置するとともに、前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下であるように配置し、前記スプール(6)の軸芯(Q)を前記外形中心(P)を基準として前記サムレスト側に設け、前記中心(P)を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍において前記スプール(6)の前方に前記レベルワインド機構(R)、及び、前記スプール(6)の後方に前記クラッチ操作具(7)を配置し、前記サムレスト(12)を前記リール本体における前記仮想水平面上に沿った前後方向において前記スプール(6)の軸芯(Q)より前方側でかつ前記レベルワインド機構(R)より後方側に位置させ、前記ハンドル軸(16)を、前記レベルワインド機構(R)より後方、かつ下方に位置させ、前記左右のケース部(1),(1)、前記サムレスト(12)、前記ロアーフレーム(13)とを一体成型してある両軸受リール。」(甲第14号証の1頁5行?24行)の記載を、
「リール本体を構成する左右のケース部(1),(2)に亘ってサムレスト(12)とリール脚取付用の一対のロアーフレーム(13),(13)とを配置するとともに、ハンドル軸(16)、レベルワインド機構(R)、スプール(6)、クラッチ操作具(7)夫々を配置して成る両軸受リールであって、前記リール本体の外形を、前記スプール(6)の軸芯(Q)に沿う方向視で円形、若しくは、略円形に成形するとともに、前記サムレスト(12)と前記一対のロアーフレーム(13),(13)とを、前記リール本体の外形中心(P)を基準にして上下に振り分け、かつ、前記リール本体の外形より内側に位置するように配置するとともに、前記一対のロアーフレーム(13),(13)は、前記スプール軸芯(Q)を基準に前後に配置されるとともに、その底面に形成された取付面に釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)より短くなるように配置し、前記スプール(6)の軸芯(Q)を前記外形中心(P)を基準として前記サムレスト側に設け、前記中心(P)を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍において前記スプール(6)の前方に前記レベルワインド機構(R)、及び、前記スプール(6)の後方でかつ前記左右のケース部の壁状部(1S),(2S)間に前記クラッチ操作具(7)を配置し、前記サムレスト(12)を前記リール本体における前記仮想水平面上に沿った前後方向において前記スプール(6)の軸芯(Q)より前方側でかつ前記レベルワインド機構(R)より後方側に位置させ、前記ハンドル軸(16)を、前記レベルワインド機構(R)より後方、かつ下方に位置させ、前記左右のケース部(1),(2)、前記サムレスト(12)、前記一対のロアーフレーム(13),(13)を一体成型してある両軸受リール。」と訂正する。

そして、上記実用新案登録請求の範囲の訂正事項について、文節単位で摘記すると、つぎのとおりである。

・訂正事項a:訂正明細書(甲第14号証)の実用新案登録請求の範囲の
「リール本体を構成する左右のケース部(1),(1)に亘ってサムレスト(12)とリール脚取付用のロアーフレーム(13)とを配置するとともに、」の記載を、
「リール本体を構成する左右のケース部(1),(2)に亘ってサムレスト(12)とリール脚取付用の一対のロアーフレーム(13),(13)とを配置するとともに、」と訂正する。

・訂正事項b:訂正明細書(甲第14号証)の実用新案登録請求の範囲の
「前記サムレスト(12)と前記ロアーフレーム(13)とを、前記リール本体の外形中心(P)を基準にして上下に振り分け、かつ、前記リール本体の外形より内側に位置するように配置するとともに、」の記載を、
「前記サムレスト(12)と前記一対のロアーフレーム(13),(13)とを、前記リール本体の外形中心(P)を基準にして上下に振り分け、かつ、前記リール本体の外形より内側に位置するように配置するとともに、」と訂正する。

・訂正事項c:訂正明細書(甲第14号証)の実用新案登録請求の範囲の
「前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下であるように配置し、」の記載を、
「前記一対のロアーフレーム(13),(13)は、前記スプール軸芯(Q)を基準に前後に配置されるとともに、その底面に形成された取付面に釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)より短くなるように配置し、」と訂正する。

・訂正事項d:訂正明細書(甲第14号証)の実用新案登録請求の範囲の
「前記中心(P)を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍において前記スプール(6)の前方に前記レベルワインド機構(R)、及び、前記スプール(6)の後方に前記クラッチ操作具(7)を配置し、」の記載を、
「前記中心(P)を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍において前記スプール(6)の前方に前記レベルワインド機構(R)、及び、前記スプール(6)の後方でかつ前記左右のケース部の壁状部(IS),(2S)間に前記クラッチ操作具(7)を配置し、」と訂正する。

・訂正事項e:訂正明細書(甲第14号証)の実用新案登録請求の範囲の
「前記左右のケース部(1),(1)、前記サムレスト(12)、前記ロアーフレーム(13)とを一体成型してある両軸受リール。」の記載を、
「前記左右のケース部(1),(2)、前記サムレスト(12)、前記一対のロアーフレーム(13),(13)を一体成型してある両軸受リール。」と訂正する。

2.新規事項の有無についての検討
上記訂正事項cにおける「脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)より短くなるように配置し、」という事項は、次の理由により、願書に添付した明細書又は図面(つまり、訂正明細書(甲第14号証))に記載されていないので、訂正事項cの訂正は、訂正明細書(甲第14号証)に記載した事項の範囲内においてした訂正ではない。
すなわち、訂正請求人(無効審判被請求人)は、訂正請求前の「脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下であるように配置し、」の記載を、「脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)より短くなるように配置し、」と訂正することを求め、平成13年10月12日付けの審判事件答弁書の3頁下から10行?9行において、訂正請求後の本件考案が本件訂正明細書に記載の効果を奏する旨を主張している。
しかしながら、訂正事項cの「脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)より短くなる」という文言の形式上の意味が、前記距離(H)を、「0<H≦T/2の範囲からその範囲の上限位置の距離である本体外形の半径(T/2)となるものだけを排除した0<H<T/2の範囲であるような距離(H)」と定義しているだけのようにもみえるところ、前記文言は、距離(H)の取りうる範囲が、その範囲の上限位置である本体外形の半径(T/2)の距離に限りなく近接する距離をも包含することを実質上意味しているから、訂正事項cの前記訂正は、単に「脚部(14)の底面位置から本体の外形中心(P)までの距離(H)が、丁度本体外形の半径(T/2)の距離であるような位置であるところのリール本体の外形下端縁の位置に、底面がピッタリと位置するような脚部(14)」を含まないことを明示したにすぎず、依然として実質的に「脚部(14)の底面位置をリール本体の外形下端縁の位置からリール外形中心(P)までの間に配置する」趣旨を指す概念であり、訂正事項cの訂正における脚部(14)の底面の配置位置に関わる距離(H)の範囲である0<H<T/2の範囲が、訂正請求前の訂正明細書(甲第14号証)の「脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下であるように配置し、」という0<H≦T/2の範囲に限りなく近似する範囲のものであることに変わりがない。すなわち、0<H≦T/2の範囲の距離(H)との対比において、0<H<T/2の範囲の距離(H)は、前記距離(H)を前記範囲の上限位置であるところの丁度本体外形の半径(T/2)よりも心持ちほんの僅かに短い距離であるような位置のリール本体の下部位置に一対のロアーフレーム(13),(13)を設ける場合を含むものであるから、訂正事項cの前記訂正は、本件考案の作用効果の一つである「リールを釣り竿に取り付けた状態での釣り竿から上方への突出量を小さくする」なる作用効果を奏し得るか否かを判別できない程度の範囲のものまでをも含んでいることは明らかである。
ちなみに、前記訂正明細書(甲第14号証)の実用新案登録請求の範囲に記載されている「脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下である」の事項が、脚部(14)の底面から前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)を上限位置としてそれ以下の範囲内にあることを意味するところ、本件考案の願書に添付した実用新案登録査定時の明細書又は図面(実用新案登録第2552677号公報参照)には、上記範囲の上限位置及び範囲の根拠となる記載はなく、また、本件考案の願書に添付した図面の第3図(実用新案登録第2552677号公報参照)に示されているロアーフレーム(13)が配置されている位置も、訂正明細書(甲第14号証)中の上記「前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下であるように配置し、」という範囲の上限位置である「本体外形の半径(T/2)」を示唆するものでもないから、訂正明細書(甲第14号証)中の「脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下である」の事項も、もとより、本件考案の願書に添付した実用新案登録査定時の明細書又は図面(実用新案登録第2552677号公報参照)に記載した事項の範囲内のものと認めることができなかったものであることを、ここに付言しておく。
しかして、訂正請求人(無効審判被請求人)が、今回訂正請求した「脚部(14)の底面と本体外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)である場合を排除する」旨の訂正事項cにより奏される本件考案の効果は、「リール本体の外形の中心に脚部を近づけることが可能になって、釣竿に取り付けた際の釣竿からの突出量を少なくできて握りやすくなる。」というものである。
そうすると、前記訂正事項cに基づく本件考案の前記「握りやすさ」の効果を主張する立場にあっては、当然に、脚部(14)の底面から本体外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)である場合の握りやすさの効果に比して、前記訂正事項cによる「握りやすさ」の前記効果は、釣り人が明確に識別できる程度に、格段の「握りやすさ」の効果を奏するものであることが期待されるから、そのためには、脚部(14)の底面から本体外形中心(P)までの距離(H)の範囲の選択設定を、脚部(14)の底面位置が外形中心(P)に相当程度まで接近するような位置になるようにすることが求められるところ、訂正事項cは、前述のとおり、本体外形の半径(T/2)の距離と実質的に等しい距離(H)をも含むものとなっている。したがって、前記訂正事項cは、距離(H)が本体外形の半径(T/2)である位置の場合のものと同様に「リールを釣り竿に取り付けた状態での釣り竿から上方への突出量を小さくする」という本件考案の作用効果を実質的に奏し得ないものをも含んでいるということができる。
そうしてみると、訂正請求された訂正事項cの「距離(H)が本体外形の半径(T/2)より短くなる」の事項を、訂正請求前の「距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下である」の事項と比べると、脚部(14)の底面から前記本体の外形中心(P)までの距離(H)について、両者の範囲が明確に異なる範囲であることを識別することができないものとなっているから、訂正請求された訂正事項cの「距離(H)が本体外形の半径(T/2)より短くなる」の訂正では、脚部(14)の底面から前記本体の外形中心(P)までの距離(H)として、前記距離(H)の範囲から、その上限位置である丁度本体外形の半径(T/2)となる上限位置を明確に排除しているとはいえない。
そして、さらにいえば、訂正事項cの「脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)より短くなるように」という訂正が、「脚部(14)の底面から前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が、本体外形の半径(T/2)を上限位置としたときの、その上限位置よりも未満の範囲内にあることを意味するところ、このような訂正事項cの前記距離(H)の範囲は、本件考案の願書に添付した明細書又は図面の第3図(実用新案登録公報(甲第6号証参照))に図示された脚部(14)の底面位置と比較すると、その範囲外のリール外形の下端縁位置に近いより低い位置の脚部(14)の底面の位置をも含むものとなっているから、本件訂正事項cの訂正の根拠を、本件考案の願書に添付した明細書又は図面の第3図(実用新案登録公報(甲第6号証参照))の記載であるとすることはできない。すなわち、本件考案の願書に添付した明細書又は図面(つまり、訂正明細書(甲第14号証))には、距離(H)が上記上限位置である本体外形の半径(T/2)よりも未満の範囲にあるとするところの根拠となる記載がなく、また示唆する記載も認められない。
以上のとおりであり、訂正事項cの「釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)より短くなるように配置し、」の訂正は、訂正明細書(甲第14号証)に記載した事項の範囲内においてした訂正ではないから、訂正事項cの訂正は、新規事項の追加に該当する。

3.むすび
以上のとおりであり、上記訂正事項cの訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号。以下「平成11年法」という。)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされるところの、特許法第134条第5項においてさらに準用される特許法第126条第2項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

第3 本件実用新案登録に係る考案
以上のとおり、本件訂正が認められないから、本件実用新案登録に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、前記異議の決定に際して、平成11年2月2日付けの訂正請求書による訂正が認容された前記訂正請求書に添付された訂正明細書(甲第14号証)の実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「リール本体を構成する左右のケース部(1),(1)に亘ってサムレスト(12)とリール脚取付用のロアーフレーム(13)とを配置するとともに、ハンドル軸(16)、レベルワインド機構(R)、スプール(6)、クラッチ操作具(7)夫々を配置して成る両軸受リールであって、前記リール本体の外形を、前記スプール(6)の軸芯(Q)に沿う方向視で円形、若しくは、略円形に成形するとともに、前記サムレスト(12)と前記ロアーフレーム(13)とを、前記リール本体の外形中心(P)を基準にして上下に振り分け、かつ、前記リール本体の外形より内側に位置するように配置するとともに、前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下であるように配置し、前記スプール(6)の軸芯(Q)を前記外形中心(P)を基準として前記サムレスト側に設け、前記中心(P)を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍において前記スプール(6)の前方に前記レベルワインド機構(R)、及び、前記スプール(6)の後方に前記クラッチ操作具(7)を配置し、前記サムレスト(12)を前記リール本体における前記仮想水平面上に沿った前後方向において前記スプール(6)の軸芯(Q)より前方側でかつ前記レベルワインド機構(R)より後方側に位置させ、前記ハンドル軸(16)を、前記レベルワインド機構(R)より後方、かつ下方に位置させ、前記左右のケース部(1),(1)、前記サムレスト(12)、前記ロアーフレーム(13)とを一体成型してある両軸受リール。」

第4 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、本件実用新案登録の明細書の実用新案登録請求の範囲〔甲第14号証の訂正明細書1頁、及び甲第16号証の異議決定公報11頁?12頁参照〕に記載された考案は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、下記の証拠方法を提示し、以下の〔無効理由1〕、〔無効理由2〕及び〔無効理由3〕を主張する。その無効理由の要点は、次のとおりである。
〔無効理由1〕:本件の考案は、出願前に頒布された刊行物である甲第1号証ないし甲第4号証の2に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり、実用新案法第37条第1項第1号の規定に基づき無効とされるべきものである。
〔無効理由2〕:本件の考案は、出願前に頒布された刊行物である甲第1号証及び甲第5号証の1並びに甲第8号証の1ないし甲第11号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり、実用新案法第37条第1項第1号の規定に基づき無効とされるべきものである。
〔無効理由3〕:本件実用新案登録の明細書の実用新案登録請求の範囲に記載の考案と考案の詳細な説明欄に記載の考案とが整合せず、しかも、実施例の考案と考案の詳細な説明の作用効果欄に記載の考案とも整合せず矛盾するから、本件実用新案登録の明細書の実用新案登録請求の範囲に記載の考案が考案の詳細な説明欄に記載の考案であるということができず、また、本件実用新案登録の明細書の実用新案登録請求の範囲に記載の考案がきわめて容易に実施できる程度に明細書に記載されているということもできないから、本件実用新案登録の明細書の記載が、実用新案法第5条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていないことにより、本件実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第3号の規定に基づき無効とされるべきものである。

甲第1号証:特開昭59-192031号公報
甲第2号証:検甲第1号証〔ABU社製両軸受けリール「アンバサダー5600C」の検証物〕のカタログの「ABU Fishing Tackles from Sweden ’78年」
甲第3号証の1:実開昭56-160478号公報
甲第3号証の2:実願昭55-59719号(実開昭56-160478号)のマイクロフイルム
甲第4号証の1:実開昭54-44795号公報
甲第4号証の2:実願昭52-118326号(実開昭54-44795号)のマイクロフイルム
甲第5号証の1:米国特許第2163914号明細書
甲第5号証の2:甲第5号証の1の翻訳文
甲第6号証:実用新案登録第2552677号公報(本件登録公報)
甲第7号証:平成10年異議第72201号の平成10年11月10日付け取消理由通知書
甲第8号証の1:米国特許第1565402号明細書
甲第8号証の2:甲第8号証の1の抄訳文
甲第9号証:実願昭58-107892号(実開昭60-15167号公報)のマイクロフイルム
甲第10号証:実願昭58-128236号(実開昭60-36077号)のマイクロフイルム
甲第11号証:実公昭60-8693号公報
甲第12号証:平成10年異議第72201号の平成11年2月2日付け登録異議意見書
甲第13号証:平成10年異議第72201号の平成11年2月2日付け訂正請求書
甲第14号証:平成10年異議第72201号の平成11年2月2日付け訂正請求書に添付された訂正明細書
甲第15号証:平成10年異議第72201号の平成11年5月21日付け異議決定書
甲第16号証:平成10年異議第72201号の平成11年12月20日付け異議決定公報
検甲第1号証:ABU社製両軸受けリール「アンバサダー5600C」の検証物
参考図1:甲第1号証の図面に符号を付した説明図
参考図2:検甲第1号証の写真に符号を付した説明図
参考図3:本件考案の第3図上の図解説明図
参考図4:本件考案の第3図上の図解説明図
参考図5:本件考案の第3図上の図解説明図

2.被請求人の主張
被請求人は、本件無効審判請求はなりたたない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の前記主張に対し、本件審判請求人の主張はいずれも失当であり、本件実用新案登録は無効にされるものではないと主張する。

第5 当審の判断
請求人が主張する〔無効理由1〕、〔無効理由2〕及び〔無効理由3〕の無効理由のうち、〔無効理由2〕について検討する。

1.甲号各証の記載事項
1-1.甲第5号証の1〔米国特許第2163914号明細書〕の記載事項
甲第5号証の1には、その翻訳文〔甲第5号証の2〕を参照すると、次の技術事項が記載されている。
「このリールの多くの可動部品を保持する主枠体は、水平方向に離間しながら垂直に配置された2個の、好ましくは円形の端末ヘッドすなわち板11,12と、両端末で枠体板に連結されている複数個の水平支柱すなわち棒13,14,15,16を備えている。棒13は枠体支柱の唯一の機能を果たしており、その一方で、棒14は、魚釣り用リールを釣り竿すなわち棒(竿)に取付ける手段の一部を形成している鞍型部品17を担持するという付加的な目的を果たしており、棒15も、スプールと均等巻き上げ機構間の釣り糸の部分が均等巻き上げ機構の操作と干渉するのを防止する保護物の役割を果たし、棒16は釣り糸を垂れるための、または釣り糸の均等巻き上げ機構用部品の1つの案内となっている。
主枠体の両端末板と縦方向棒との間の空間には、釣り糸18がその上に巻かれるスプールが設けてあり、このスプールには直径の小さいハブ19と、釣り糸をスプールの上に閉じ込め保持するための直径の大きい端末ヘッド20,21がある。このスプールのハブは軸22に装着され、この軸22はその両端末で軸受けに軸支されており、軸受けの1つは枠体の端末板12の中に形成され、もう一方の軸受けは、枠体板11の外側に固設されるキャップすなわちケーシング23の上に形成される。リールの手動による回転にはいろんな方法があるが、例えば図1,5及び6に示す手段による方法があり、この手段は、キャップすなわちケーシング23に形成された軸受けに軸支された駆動軸24と、駆動軸の外側端末に固設されたクランク25と、駆動軸の内側端末に固設されてスプール軸の隣接する端末に設けてある小型のギヤピニオン27と噛合う、直径が比較的大きい駆動ギヤホイール26とで成っている。
釣り糸を垂れる(投げ出す)手段または平均に巻き上げる手段は、釣り糸がスプールのハブに巻き取られる際に、釣り糸の全長に平均して巻き取られるようにするために設けられ、この手段の構造には各種あり、図示の構造では、縦方向の二重ねじ式水準ねじ28を有し、このねじ28はスプールの一方の側面に設けられ、そしてその両端末において枠体板12及びケーシングすなわちキャップ23の中に軸支され、そしてギヤピニオン28(「ギヤピニオン29」の誤記と認める。)により後者、すなわちキャップ23の中に提供されるのであり、このギヤピニオン28(「ギヤピニオン29」の誤記と認める。)は駆動ギヤホイール26と噛合い、その結果クランク25の回転により、この水準ねじは釣り糸を垂らすスプールと一緒に、同時回転をする。参照番号30は走行台すなわち往復台を示しており、この往復台は水準ねじ28に取付けられ、しかもこの水準ねじ28の長さ方向に往復運動するようになっており、また若干の反転走行が可能となっている。水準ねじ上のこの走行台の縦方向の運動は走行台にピボット連結され、そして歯32を備えているトレーサー(追跡子)すなわち歯止め31によって引き起こされるのであって、この歯32は水準ねじのねじと噛合い、このねじが回転されるときにそして走行台を反対方向に交番的に作動させる。走行台の外側に弾性案内ループ(環)33の一端が固定されており、このループを経て釣り糸の隣接する部分が通過しており、その結果この釣り糸が、スブ-ルの回転中にこのスプールに巻かれる時に、スプールの軸線に平行な方向に、公知の方法で、一緒に作動する走行台とその案内ループの往復運動によって、このスプールの全長に及んで平均的に力が分配される。走行台は水準ねじ上で僅かに反転走行が可能であるが、釣り糸案内ループ33の外側端末に滑らかに噛合って水準ねじの長さ方向に滑らされ、この釣り糸案内ループ33の外側端末は、好ましくは弾性ワイヤー製がよく、またこの外側端末には、この目的のために案内棒として作用する主枠体の隣り合う支柱16の中に形成された縦方向の案内溝すなわちチャンネル34が設けてある。」(甲第5号証の1の1頁左欄52行?2頁左欄21行(翻訳文の1頁28行?3頁9行参照))
そして、甲第5号証の1の魚釣り用リールの実施態様の正面図である図1及び該図1の6-6線に沿い下側から見たリールの水平断面図である図6に、リール本体の左右側に枠体板(端末ヘッド)11、12が配置され、リール本体の右側(図1及び図6の左側)の枠体板11面に駆動軸24が突出してその先端部にクランク25が設けられ、リール本体の前側(図1の手前側、図6の上側)に水準ねじ28、往復台30及び弾性案内ループ33からなる釣り糸均等巻き上げ手段がリール本体の左右両側の枠体板11、12にまたがるように配置され、棒14及び鞍型部品17が一体となって、棒14の左右両端がリール本体の左右両側の枠体板11、12内面間に横架する姿勢でリベット等の手段により固着されて配置された魚釣り用リール、が図示されている。また、甲第5号証の1の図1の3-3線に沿い、この線に付した矢印の方向に見た垂直断面図である図3に、外形が円形である枠体板12の中心からやや斜め後上方に偏倚した位置にあるスプールの軸22の軸方向の水平視において、小径のハブ19と大径の端部ヘッド21とからなるスプールが枠体板12の外形からはみ出していないように配置され、枠体板12の外形内の右側(図3の右部、即ち、リール本体前部)の中程に水準ねじ28、往復台30及び弾性案内ループ33からなる釣り糸均等巻き上げ手段が配置され、枠体板12の外形内の上側(図3の上部、即ち、リール本体上部)の中央位置からやや前側に、弾性案内ループ33の先端部の自由端を移動可能に支持する状態で棒16が配置され、枠体板12の下側端縁からやや中心方向の上方に偏倚した位置に棒14及び鞍型部品17が一体となって横断するように、かつ、鞍型部品17の底面が枠体板12の外形からはみ出していないように配置された魚釣り用リール、が図示されている。

1-2.甲第8号証の1〔米国特許第1565402号明細書〕の記載事項
甲第8号証の1には、その抄訳文〔甲第8号証の2〕を参照すると、その明細書の1頁右欄90行?2頁左欄18行に「1と2はフィッシングリールの端板であり、それらの間にスプール3が配置され、そのスプール3の上に釣糸が巻かれる。そして、釣糸をスプールへ又はそこからガイドするためにラインガイド4が設けられており、このラインガイド4は、キャリッジ5によって支持され、このキャリッジ5は、キャリッジスクリュー6によって往復運動し、キャリッジスクリュー6は端板1,2間に回転可能に取付けられ、何か適切な手段でリールのハンドル7によって回転されるようになっている。その目的のための機構はフィッシングリールに一般的に用いられている目的であるので添付図面には図示されていない。前記リールはトランスバース部材9,10によってベースプレート8上に支持され、前記トランスバース部材9,10は端板間を伸びてそれらに連結され、11はタイロッドであってそれらを相対位置に固定するのを助ける目的のために端板間に伸びている。通常多数のそのようなタイロッドが設けられ端板を一緒に堅く固定するために端板の周緑部に沿って配設され、しかしながら、かかるタイロッドはその特別な目的に限定されている。この場合において、端板の主たる保持は特別な2つの2部分結合部材12によって行われ、この部材12はほぼ逆向きでその断面において分離U字形をなし、キャリッジスクリュー6上に位置し、これにより前記結合部材12の前後部13,14がエプロンを形成し、このエプロンがほぼ前記キャリッジスクリューの下に伸びて防護的にそれを被っている。そして、前記前部13の端部には内側に伸びる耳片15が設けられ、この耳片15はリング1,2の内面に対して支持されて係合し、リベット16のようなものによってそれらに適宜固定される。」が記載されている。
そして、図1?図4の記載も参照すれば、甲第8号証の1には、円形の端板1、2間にスプール3がリールの後方で斜め上方に偏倚して設けられ、これら端板1、2の前方にラインガイド4及びキャリッジ5が設けられ、また端板1、2間の上部前方には連結部材18が設けられ、端板1、2の下方にはベースプレート8の取り付け用のトランスバース部材9、10が設けられた両軸受リール、が記載され、この両軸受リールにおけるスプール3の軸芯が、端板1、2の外形中心より上方に偏倚した位置にあることが認められる。

1-3.甲第9号証〔実願昭58-107892号(実開昭60-15167号公報)のマイクロフイルム〕の記載事項
甲第9号証には「左右一対のフレーム基板(1)(1)とその下部に架設したリール固定脚(2)を有する前後一対の支持柱(3)(3)と上部に架設した連結杆(4)とからなる枠体(5)は炭素ガラス繊維等の補強材を混合した合成樹脂で一体に形成される」(3頁16行?4頁4行)が記載され、そして、その第2図に、フレーム基板(1)の下部にはリール固定脚(2)を有する前後一対の支持柱(3)(3)が配置され、またフレーム基板(1)の上部には連結杆(4)が配置され、かつ、スプール(19)の前方には釣糸のレベルワインド装置(24)が配置され、また前記レベルワインド装置(24)と反対側のスプール(19)の後方にはクラッチ操作レバー(26)が配置された魚釣用両軸受型リール、が記載されている。

1-4.甲第10号証〔実願昭58-128236号(実開昭60-36077号)のマイクロフイルム〕の記載事項
甲第10号証には、その明細書及び図面の記載からみて、外形が側面視円形の左右両側枠2、2’間にスプール4の軸5が該両側枠2、2’の外形中心からやや偏倚して配置され、左右両側枠2、2’間に複数本の支持杆3が設けられると共に、左右両側枠2、2’間の下方に竿受8が設けられ、前記スプール4の後方にクラッチ機構をON、OFF操作可能なスライド型式のプッシュレバー9が配置された両軸リール、が記載されている。

1-5.甲第11号証〔実公昭60-8693号公報〕の記載事項
甲第11号証には、両軸受けリールの枠体に関して、「左右の両側枠板1,1’の内側に夫々固定する左右の内面枠板2,2’と、リール取付脚3および中空主柱4等とを一体に成形し、」(2欄2行?5行)及び「上記内面枠板2,2’、リール取付脚3、中空主柱4は、それらを形成するのに適した任意所望の材料でダイカストにより一体に成形される。」(2欄20行?23行)が記載されている。

2.対比、判断
2-1.本件考案と甲第5号証の1に記載の考案との対比、判断
(1)甲第5号証の1に記載の考案
前記「1.甲号各証の記載事項」の欄における甲第5号証の1の記載事項を総合すると、甲第5号証の1には、リール本体を構成しスプールの軸芯に沿う方向視で外形が円形に成形された左右の2つの枠体板11,12間に、小径のハブ19と大径の端部ヘッド20,21とからなるスプールの軸芯がリール本体の外形中心を基準として前記外形中心よりやや上方に偏倚して設けられるとともに、前記スプールは枠体板11,12の外形からはみ出していないように配置され、前記枠体板11,12間の前記外形中心の近傍の高さ位置のスプールの前方に釣り糸均等巻き上げ手段が設けられ、また前記スプールの軸芯より前方側でかつ前記釣り糸均等巻き上げ手段の後方であって、枠体板11,12の上部内面間に亘って棒16が横架されるとともに、前記枠体板11,12の下部内面間に亘って釣り竿取付け用の鞍型部品17が一体に取り付けられた棒14が架橋されて、前記棒16と前記棒14とは前記リール本体の外形中心を基準にして上下に振り分けられて前記リール本体の外形より内側に位置するように配置されるとともに、前記棒14は、鞍型部品17の底面から前記本体の外形中心までの距離が本体外形の半径より短くなるように配置されてあり、駆動軸24が前記釣り糸均等巻き上げ手段より後方かつ下方に配置された魚釣り用リール、が記載されているということができる。

(2)対比及び一致点・相違点
ここで、本件考案と甲第5号証の1に記載の考案(以下、これを「引用考案」という。)とを対比すると、引用考案の「外形が円形の2つの枠体板11,12」「棒14」「駆動軸24」「釣り糸均等巻き上げ手段」「スプール」「魚釣り用リール」「鞍型部品17」が、それぞれ本件考案の「リール本体を構成する左右のケース部(1),(1)」「ロアーフレーム(13)」「ハンドル軸(16)」「レベルワインド機構(R)」「スプール(6)」「両軸受リール」「釣り竿取付け用の脚部(14)」に相当する。
また、本件考案の「サムレスト(12)」と、引用考案における「棒16」とは、いずれも、それぞれリール本体を構成する左右のケース部(1),(1)及び2つのフレーム・プレート11,12の上部を連結する部分であるから、引用考案の「棒16」は、本件考案の「サムレスト(12)」とともに、等しく「上部連結部」であるということができる。
そこで、本件考案と引用考案とを比較すると、両者は「リール本体を構成する左右のケース部に亘って上部連結部とリール脚取付用のロアーフレームとを配置するとともに、ハンドル軸、レベルワインド機構、スプール夫々を配置して成る両軸受リールであって、前記リール本体の外形を、前記スプールの軸芯に沿う方向視で円形、若しくは、略円形に成形するとともに、前記上部連結部と前記ロアーフレームとを、前記リール本体の外形中心を基準にして上下に振り分け、かつ、前記リール本体の外形より内側に位置するように配置するとともに、前記ロアーフレームは、釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部の底面と前記本体の外形中心までの距離が本体外形の半径以下であるように配置し、前記スプールの軸芯を前記外形中心を基準として前記上部連結部側に設け、前記中心を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍において前記スプールの前方に前記レベルワインド機構を配置し、前記上部連結部を前記リール本体における前記仮想水平面上に沿った前後方向において前記スプールの軸芯より前方側でかつ前記レベルワインド機構より後方側に位置させ、前記ハンドル軸を、前記レベルワインド機構より後方、かつ下方に位置させ、前記左右のケース部、前記上部連結部、前記ロアーフレームとを一体としてある両軸受リール」である点で一致し、次の点で構成が相違している。
相違点1:リール本体を構成する左右のケース部に亘って配置される上部連結部が、本件考案では「サムレスト」とされているのに対して、引用考案では、引用考案の上部連結部である「棒16」が「サムレスト」であるか否か不明である点。
相違点2:本件考案が「前記中心(P)の近傍において前記スプール(6)の前方に前記レベルワインド機構(R)、及び、前記スプール(6)の後方に前記クラッチ操作具(7)を配置」するのに対して、引用考案は、外形中心の近傍においてスプールの前方にレベルワインド機構が配置されてはいるが、スプールの後方にクラッチ操作具が配置されていない点。
相違点3:本件考案が「前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付け用の脚部(14)を取付け」るものであるのに対し、引用考案では、棒14が釣り竿取付け用の鞍型部品17と一体となっている点。
相違点4:本件考案が「前記左右のケース部(1),(1)、前記サムレスト(12)、前記ロアーフレーム(13)とを一体成型してある」のに対して、引用考案は、左右のケース部、前記上部連結部、前記ロアーフレームが単に一体にされている点。

2-2.相違点についての検討
(1)相違点1について
本件考案の上部連結部である「サムレスト(12)」について検討する。
前記「サムレスト」の文言の意義が、その字義のとおり、親指(thumb)を置いて休ませる(rest)部分であることは容易に把握できるところ、本件考案の出願前に頒布された刊行物である実願昭56-142437号(実開昭58-52965号)のマイクロフイルム〔以下、「周知例1」という。〕には「大勢の釣人はキャスティングハンドルとリールを掌中に保持し、スプールの上側でかつスプール軸芯より前側に配置された円柱状支柱に親指を掛けてキャスティングハンドルとリールを仰角方向に操作容易に使用している。」(明細書2頁4行?8行)及び「しかし、円柱状支柱に親指があてられて力が掛けられていると、指の当たり位置が痛み、長時間指をあてておられない欠点がある。」(明細書2頁13行?15行)が記載されている。
また、同じく本件考案の出願前に頒布された刊行物である実願昭59-97728号(実開昭61-12373号)のマイクロフイルム〔以下、「周知例2」という。〕にも「従来魚釣用両軸受型リールの両側枠板間のスプールより前側には支柱とレベルワインダーが配置され、手の平で釣竿に取り付けられたリールが握られると上側の支柱に親指が掛けられてリールが保持され、支柱が円柱の場合は長時間親指が掛けられると親指が疲れて痛み、」(明細書1頁15行?20行)が記載されている。
しかして、上記周知例1及び周知例2の刊行物にそれぞれ記載された「円柱状支柱」及び「円柱の支柱」は、いずれも親指を置いて休ませる「サムレスト」ということができるから、両軸受けリールにおいて「サムレスト」としての「円柱状支柱」及び「円柱の支柱」は、本件出願時の周知技術であるということができるから、したがって、上記周知例1及び周知例2の刊行物にそれぞれ記載された「円柱状支柱」及び「円柱の支柱」と同様形状の柱状部材からなる引用考案における「棒16」は、本件考案の「サムレスト(12)」と等しく、親指を置いて休ませる「サムレスト」の機能を果たすものであるということができる。
以上のことから、引用考案の上部連結部である「棒16」は、本件考案の上部連結部である「サムレスト(12)」と同じく「サムレスト」と呼ばれるべきものであることが明らかである。
そうしてみると、甲第5号証の1には「サムレスト」としての「棒16」が実質上記載されているということができるから、本件考案と引用考案との間に、前記相違点1に係る構成上の差異はない。

(2)相違点2について
本件考案の出願前に頒布された刊行物である甲第9号証〔実願昭58-107892号(実開昭60-15167号)のマイクロフイルム〕には、その明細書及び図面の記載からみて、フレーム基板1の下部にリール固定脚2を有する前後一対の支持柱3,3が配置され、またフレーム基板1の上部に連結杆4が配置され、かつ、スプール19の前方に釣糸のレベルワインド装置24が配置され、また前記レベルワインド装置24と反対側のスプール19の後方でかつ左右のフレーム基板1,1間にクラッチ操作レバー26が配置された魚釣用両軸受型リールが記載されている。
また、同じく本件考案の出願前に頒布された刊行物である甲第10号証〔実願昭58-128236号(実開昭60-36077号)のマイクロフイルム〕には、その明細書及び図面の記載からみて、外形が側面視円形の左右両側枠2、2’間にスプール4の軸5が該両側枠2、2’の外形中心からやや偏倚して配置され、左右両側枠2、2’間に複数本の支持杆3が設けられると共に、左右両側枠2、2’間の下方に竿受8が設けられ、前記スプール4の後方にクラッチ機構をON、OFF操作可能なスライド型式のプッシュレバー9が配置された両軸リールが記載されている。
そうしてみると、上記甲第9号証には「リール本体の中心近傍において、スプール19(本件考案の「スプール(6)」に相当する。)の前方に釣糸のレベルワインド装置24(本件考案の「レベルワインド機構(R)」に相当する。)を配置し、前記スプール19の後方にクラッチ操作レバー26(本件考案の「クラッチ操作具(7)」に相当する。)が配置された魚釣用両軸受型リール」が、また、上記甲第10号証には「外形が側面視円形の左右両側枠2、2’間にスプール4の軸5が該両側枠2、2’の外形中心からやや偏倚して配置され、左右両側枠2、2’間に複数本の支持杆3が設けられると共に、左右両側枠2、2’間の下方に竿受8が設けられ、前記スプール4(本件考案の「スプール(6)」に相当する。)の後方にクラッチ機構をON、OFF操作可能なスライド型式のプッシュレバー9(本件考案の「クラッチ操作具(7)」に相当する。)が配置された両軸リール」がそれぞれ記載されているということができるから、上記甲第9号証及び甲第10号証の記載から、「スプールの後方にクラッチ操作具を配置すること」は、本件出願前の周知技術であるということができる。
そして、引用考案に前記周知技術を適用することに、当業者が格別の困難性を要するものとは認められない。
そうしてみると、引用考案の「外形中心の近傍においてスプールの前方にレベルワインド機構が配置されている魚釣り用リール」に、前記周知技術を適用することにより、本件考案の相違点2に係る「前記中心(P)の近傍において前記スプール(6)の前方に前記レベルワインド機構(R)、及び、前記スプール(6)の後方に前記クラッチ操作具(7)を配置」する構成を得ることは、当業者がきわめて容易になし得ることである。
なお、上記甲第9号証及び甲第10号証の中で、甲第9号証に記載の「魚釣用両軸受型リール」は、そのリール本体の外形が円形ではない、いわゆるロープロフィール型の形状をしているが、他方の甲第5号証の1に記載の引用考案の魚釣り用リールは、リール本体の外形が、本件考案の両軸受リールと同じく円形に成形されていて、スプールの軸芯がリール本体の外形中心を基準として前記外形中心よりやや上方に偏倚して設けられている一方で、前記外形中心の近傍の高さ位置のスプールの前方には釣り糸均等巻き上げ手段が設けられており、また、甲第5号証の1の図3及び図6の記載からみて、甲第5号証の1に記載の引用考案の魚釣り用リールのリール本体の外形中心の近傍の高さ位置のスプールの後方には、クラッチ操作具を配置することが可能な余剰空間の存在を認めることができる。そして、当該クラッチ操作具をリール本体の外形中心の近傍の高さ位置のスプールの後方に配置することを妨げる阻害要件を、甲第5号証の1に記載の引用考案の魚釣り用リールに認めることができない。
したがって、上記甲第9号証に記載の魚釣用両軸受型リールが、いわゆるロープロフィール型であるという理由で、引用考案の魚釣り用リールに甲第9号証に記載の前記周知技術を適用する際に当業者に格別の困難性が伴うということは、いえない。

(3)相違点3について
前述の甲第8号証の1〔米国特許第1565402号明細書〕には「前記リールはトランスバース部材9,10によってベースプレート8上に支持され、」が記載されていて、上記甲第8号証の1に記載の「トランスバース部材9,10」「ベースプレート8」が、それぞれ本件考案の「ロアーフレーム(13)」「釣り竿取付け用の脚部(14)」に相当することは明らかである。
そうしてみると、上記甲第8号証の1には、本件考案の相違点3に係る「前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付け用の脚部(14)を取付け」の構成が記載されていて、本件実用新案登録出願前の公知技術であるということができる。
したがって、引用考案の棒14(本件考案の「ロアーフレーム(13)」に相当する。)に鞍型部品17(本件考案の「釣り竿取付け用の脚部(14)」に相当する。)を一体に取付けておくことに代えて、甲第8号証の1に記載の公知技術を適用することにより、本件考案の相違点3に係る上記構成を得ることは、当業者がきわめて容易に想到できることである。

(4)相違点4について
本件考案の出願前に頒布された刊行物である甲第9号証〔実願昭58-107892号(実開昭60-15167号公報)のマイクロフイルム〕に、フレーム基板(1)の下部にはリール固定脚(2)を有する前後一対の支持柱(3)(3)が配置され、またフレーム基板(1)の上部には連結杆(4)が配置され、かつ、スプール(19)の前方には釣糸のレベルワインド装置(24)が配置され、また前記レベルワインド装置(24)と反対側のスプール(19)の後方にはクラッチ操作レバー(26)が配置された魚釣用両軸受型リールにおいて、左右一対のフレーム基板(1)(1)とその下部に架設したリール固定脚(2)を有する前後一対の支持柱(3)(3)と上部に架設した連結杆(4)とからなる枠体(5)は炭素ガラス繊維等の補強材を混合した合成樹脂で一体に形成されることが記載されている。
また、同じく本件考案の出願前に頒布された刊行物である甲第11号証〔実公昭60-8693号公報〕に、左右の内面枠板2、2’とリール取付脚3および中空主柱4とを任意所望の材料でダイカストにより一体に成形した両軸受けリールの枠体、が記載されている。
そうすると、上記甲第9号証及び甲第11号証の記載から、「両軸受けリールの左右の枠とリール取付脚及び支持柱とを一体に成形すること」は、本件考案の出願時の周知技術であるということができる。
さすれば、引用考案に上記周知技術を適用することにより、本件考案の相違点4に係る「前記左右のケース部(1),(1)、前記サムレスト(12)、前記ロアーフレーム(13)とを一体成型してある」という構成を得ることは、当業者がきわめて容易になし得ることである。

3.まとめ
以上のとおりであるから、本件考案は、引用考案に甲第8号証の1に記載の考案及び周知技術を適用することにより当業者がきわめて容易に想到することができたものであり、その作用効果も引用考案、甲第8号証の1に記載の考案及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。

第6 むすび
以上のとおり、本件考案は、甲第5号証の1に記載の考案、甲第8号証の1に記載の考案及び周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、したがって、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであるから、他の無効理由を判断するまでもなく、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされた実用新案法第37条第1項第1号の規定に基づき無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条において準用する特許法第169条第2項の規定においてさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-11-14 
結審通知日 2002-11-19 
審決日 2003-01-20 
出願番号 実願平2-83879 
審決分類 U 1 112・ 121- ZB (A01K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石井 哲  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 佐藤 昭喜
二宮 千久
登録日 1997-07-11 
登録番号 実用新案登録第2552677号(U2552677) 
考案の名称 両軸受リール  
代理人 鎌田 邦彦  
代理人 平井 真以子  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 小野 由己男  
代理人 小林 茂雄  
代理人 中村 誠  
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