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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1074996 |
審判番号 | 審判1999-3260 |
総通号数 | 41 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2003-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-03-01 |
確定日 | 2003-03-13 |
事件の表示 | 平成7年実用新案登録願第5760号「メモリモジュール用のアドレスをイネーブルする装置」拒絶査定に対する審判事件[平成8年4月30日出願公開、実開平8-756]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本件考案 本願は、出願日が平成3年6月19日(パリ条約による優先権主張1990年6月19日、米国)である特願平3-147600号を、平成7年6月12日に実願平7-5760号に変更したものであって、その請求項1に係る考案は、平成11年3月1日、平成13年10月9日、平成14年2月12日、平成14年9月9日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本件考案」という。) 「データ処理システムにおいて使用され,アドレス信号によりアクセスされるメモリ回路において, メモリモジュールを装着するのに適合した複数の相互接続手段と, 前記複数の相互接続手段内の少なくとも一つの相互接続手段にメモリモジュールが存在する時,前記複数の相互接続手段内の少なくとも一つの相互接続手段にメモリモジュールが存在しない時であっても,その存在を電気的に検出する検出手段と, 前記検出手段に結合されたアドレスバッファを含む送信手段であって,該アドレスバッファは前記アドレス信号をバッファリングし前記検出手段からの信号に応じてイネーブル/ディスエーブルされ,前記検出手段からの信号が前記相互接続手段内のメモリモジュールの存在を示す場合のみ該アドレスバッファ内のアドレス信号を前記複数の相互接続手段のすべてに送信する送信手段, を含むことを特徴とする,コンピュータシステム。」 2.引用例 これに対して、当審における、平成14年2月26日付けで通知した拒絶理由に引用した特開平1-159717号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「本発明は、プロセッサからのアドレスバスに接続されたコネクタから有害電波が放出されるのを防止するための電子装置の電波放出防止方式に関する。 プロセッサを用いた電子装置は、パーソナルコンピュータ、ディスプレイ、プリンタ等広く利用されている。 このような電子装置では、増設メモリ(RAM、ROM)等外部装置接続用のコネクタを有しているが、コネクタは装置外部に露出しているため、不要電波の発生源となるおそれがあり、その対策が望まれている。」(第2頁左上欄第6行目乃至第16行目) (2)「このような電子装置では、近年プロセッサの処理能力の向上に伴い、アドレスバス12上のアドレスの切換えも高速化されており、アドレスバス12では高周波のアドレス信号が存在している。 一方、増設ユニット2は、必ず接続されるものではなく、接続されない場合もある。 アドレスバス12はコネクタ11に接続されているので、増設ユニット2の接続/未接続にかかわらず、コネクタ11端にアドレス信号が出力される。 このため、増設ユニット2が接続されている時は、増設ユニット2自体がシールドとなり、有害電波の放出は生じないが、増設ユニット2が接続されていない場合は、第10図(B)に示す如く、コネクタ端が剥き出しとなり、アドレス信号のスイッチングがそのまま電波となり外部に出力されてしまうという問題が生じていた。」(第2頁右上欄第14行目乃至左下欄第11行目) (3)「第5図は本発明の更に他の実施例構成図である。図中、第1図、第2図、第4図及び第10図で示したものと同一のものは同一の記号で示してあり、20は接地ラインであり、増設ROM2側に設けられるもの、15はプルアップ抵抗であり、アドレスバスバッファ13aのイネーブル端子に接続されたものである。 この例は、CPU10が増設ROM2の接続をチェックすることなしにアドレスバス12の切り離しを行うものである。 増設ROM2がコネクタ11に接続されていない時は、プルアップ抵抗15によって、イネーブル信号が“ハイ”レベルとなり、アドレスバスバッファ13aの出力がイネーブルとなり、アドレスバス12とコネクタ11とが電気的に切離される。 一方、増設ROM2がコネクタ11に接続されると、アドレスバスバッファ13aのイネーブル信号が、ROM2側の接地ライン20でグランドレベルとなり、アドレスバスバッファ13aを介しアドレスバス12とコネクタ11とが接続され、アドレス信号が正常に出力される。」(第3頁左下欄第15行目乃至右下欄第15行目) 上記記載事項によると、引用刊行物1には、 プロセッサを用いた電子装置において、 増設ROMを装着するのに適合したコネクタと、 前記コネクタに増設ROMが存在する時、増設ROMの存在を電気的に検出する検出手段と、 前記検出手段に結合されたアドレスバッファを含むアドレスバスであって、該アドレスバッファはアドレス信号をバッファリングし前記検出手段からの信号に応じてイネーブル/ディスエーブルされ、該アドレスバッファがイネーブルされると、該アドレスバスバッファ内のアドレス信号を前記コネクタへ送信するアドレスバス、 を含む電子装置の考案(以下、「引用考案」という。)が記載されているものと認める。 また、同じく拒絶理由に引用した特開昭62-221764号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。 (4)「発明が解決しようとする問題点 しかしながら従来の構成では拡張メモリーボードを増設してしていく場合、複数の空きコネクタを順序よく埋めていく必要があるが、ユーザーは必ずしもその順序通りに埋めていってくれるとは限らない。このため、例えば2つの空きコネクタがあり、拡張メモリーボードを1個増設する時にはまず第1のコネクタに接続しなくてはならないのに、第2のコネクタに接続した状態で電子機器を動作させると、本体の指定するアドレスからは応答がないため、電子機器が正常に動作しないという問題点を有していた。これはユーザーが主に若年齢層であるゲームマシン等ではとく深刻な問題である。 問題点を解決するための手段 本発明は、2つのコネクタのいずれかにのみ周辺機器が接続された時は2つのコネクタの両方に周辺機器を入出力可能にする信号を出力し、2つのコネクタの両方に周辺機器が接続された時は2つのコネクタのうちのいずれかに周辺機器を入出力可能にする信号を出力する制御回路を備えたものである。」(第1頁右下欄第16行目乃至第2頁左上欄第17行目) (5)「まず2つのコネクタの一方にのみ拡張メモリーが接続されている場合について説明する。 コネクタ7にのみ拡張メモリー9が接続されている場合、コネクタ7に拡張メモリー9が接続されると、ポート29はHレベルからLレベルになる。またコネクタ8には何も接続されていないため、ポート28はHレベルとなっている。これらの状態は反転回路及び6を介して反転され、排他的論理和回路4に入り、排他的論理和回路の出力はHレベルとなる。 これはコネクタ8にのみ拡張メモリーが接続されている場合も同様である。 排他的論理和回路の出力は信号線30を介してマルチプレクサ3に入る。第3図において信号線30はHレベルであるため、論理積回路15は信号線22の信号を出力し、論理積回路16には信号線30の状態が反転回路18により反転されて入力されているため論理和回路16の出力は常にLレベルとなる。このため信号線24は信号線22と同じ状態になり、本体のアドレスと拡張メモリのアドレスが連続する。 つまり、一方のコネクタにのみ拡張メモリーが接続されている場合、中央処理装置が拡張メモリを使用するときは信号線22はHレベルになるが、このとき信号線27も信号線24もHレベルとなり、ポート25及びポート26の両方に拡張メモリーを入出力可能の状態にする信号が送られることになる。」(第2頁左下欄第14行目乃至第3頁右上欄第1行目) 3.対比 引用刊行物1には、プロセッサを用いた電子装置の具体例としてパーソナルコンピュータが挙げられ、パーソナルコンピュータが、データ処理のために使用され、アドレス信号によりアクセスされるメモリ回路を内部に備えているのは自明であるから、引用考案は、データ処理システムにおいて使用され、アドレス信号によりアクセスされるメモリ回路の考案として捉えることができる。 また、本件考案と引用考案とを対比すると、引用考案の (ア)増設ROMを装着するのに適合したコネクタ (イ)増設ROMの存在を電気的に検出する検出手段 (ウ)前記検出手段に結合されたアドレスバッファを含むアドレスバス (エ)該アドレスバッファはアドレス信号をバッファリングし前記検出手段からの信号に応じてイネーブル/ディスエーブルされ は、それぞれ、本件考案の (ア')メモリモジュールを装着するのに適合した相互接続手段 (イ')メモリモジュールの存在を電気的に検出する検出手段 (ウ')前記検出手段に結合されたアドレスバッファを含む送信手段 (エ')該アドレスバッファは前記アドレス信号をバッファリングし前記検出手段からの信号に応じてイネーブル/ディスエーブルされ に相当する。 よって、本件考案と引用考案は、どちらも、 データ処理システムにおいて使用され、アドレス信号によりアクセスされるメモリ回路において、 メモリモジュールを装着するのに適合した相互接続手段と、 メモリモジュールの存在を電気的に検出する検出手段と、 前記検出手段に結合されたアドレスバッファを含む送信手段であって、該アドレスバッファは前記アドレス信号をバッファリングし前記検出手段からの信号に応じてイネーブル/ディスエーブルされ、該アドレスバッファ内のアドレス信号を前記相互接続手段に送信する送信手段、 を含むメモリ回路である点で一致し、次の点(A)、(B)で相違する。 相違点: (A)本件考案は、相互接続手段が複数で、前記複数の相互接続手段内の少なくとも一つの相互接続手段にメモリモジュールが存在する時、前記複数の相互接続手段内の少なくとも一つの相互接続手段にメモリモジュールが存在しない時であっても、メモリモジュールの存在を電気的に検出するのに対して、引用考案は、相互接続手段が1つで、その相互接続手段にメモリモジュールが存在する時、メモリモジュールの存在を電気的に検出する点。 (B)本件考案は、相互接続手段が複数で、検出手段からの信号が前記相互接続手段内のメモリモジュールの存在を示す場合のみ、アドレスバッファ内のアドレス信号を複数の相互接続手段のすべてに送信するのに対して、引用考案は、相互接続手段が1つで、アドレスバッファがイネーブルされると、アドレスバッファ内のアドレス信号をその相互接続手段に送信する点。 4.当審の判断 相違点(A)について: 電子機器において、電子機器本体の相互接続手段に拡張ユニットを接続して、相互接続手段を複数に増やす技術は周知(必要ならば、例えば、特開昭59-223828号公報、特開昭62-130416号公報、特開平1-191250号公報を参照されたい。)であるから、引用考案の相互接続手段を複数に増やす点に何ら困難はない。 また、引用刊行物2には、CPUからのバス上に2つのコネクタを設けた電子機器において、2つのコネクタの一方にのみ拡張メモリが接続されている場合を電気的に検出する技術が示され、前記「2つのコネクタの一方にのみ拡張メモリが接続されている場合」は、「2つのコネクタ内の少なくとも1つのコネクタに拡張メモリが存在し、かつ、2つのコネクタ内の少なくとも1つのコネクタに拡張メモリが存在しない場合」を意味する。 そうすると、引用考案の相互接続手段を複数に増やすに際して、引用刊行物2に示されている前記公知技術を、引用考案のメモリモジュールの存在を電気的に検出する手段に付加して、相互接続手段を複数とし、複数の相互接続手段内の少なくとも一つの相互接続手段にメモリモジュールが存在する時、前記複数の相互接続手段内の少なくとも一つの相互接続手段にメモリモジュールが存在しない時であっても、メモリモジュールの存在を電気的に検出するようにすることは、当業者ならばきわめて容易に想到し得るものである。 相違点(B)について: 上記相違点(A)で述べたように、相互接続手段を複数に増やす点に何ら困難はなく、拡張ユニット内の複数の相互接続手段はバスで電気的に接続され、1つのアドレスバッファにより駆動されるから、アドレスバッファを活性化すると、アドレスバッファ内のアドレス信号が複数の相互接続手段のすべてに送信されるのは技術常識である。 また、引用考案は、相互接続手段にメモリモジュールが存在しなければ、アドレスバッファを非活性化し、相互接続手段にメモリモジュールが存在すれば、アドレスバッファを活性化するものであるから、引用考案の相互接続手段を複数に増やすに際して、 (a)複数の相互接続手段のいずれにもメモリモジュールが存在しない場合に、アドレスバッファを非活性化し、 (b)複数の相互接続手段のすべてにメモリモジュールが存在する場合に、アドレスバッファを活性化する ことは、当業者ならばきわめて容易に為し得るものである。 また、1つのアドレスバッファで複数の相互接続手段を駆動する場合に、アドレスバッファを非活性化したのでは、アドレス信号が一切送信されなくなるから、複数の相互接続手段の1つのみにメモリモジュールが存在する場合にも、アドレスバッファを活性化するのは当然であるし、引用刊行物2には、2つの相互接続手段の一方のみにメモリモジュールが存在すれば、メモリモジュールを入出力可能状態とする信号を2つの相互接続手段の両方に出力して、CPUからのアドレス信号を2つの相互接続手段のすべてに送信することが示唆されているのであるから、引用考案の相互接続手段を複数に増やすに際して、 (c)複数の相互接続手段の1つのみにメモリモジュールが存在する場合、アドレスバッファ内のアドレス信号を複数の相互接続手段のすべてに送信すること は、当業者ならばきわめて容易に為し得るものである。 以上を総合的に勘案すると、相互接続手段を複数とし、検出手段からの信号が前記相互接続手段内のメモリモジュールの存在を示す場合のみ、アドレスバッファ内のアドレス信号を複数の相互接続手段のすべてに送信することは、当業者ならばきわめて容易に想到し得るものである。 なお、請求人は、意見書において、本件考案のメモリモジュールの存在を検出する検出手段は、一つの相互接続手段にメモリモジュールが存在する場合から、すべての相互接続手段にメモリモジュールが存在する場合まで等しく検出する点で、引用刊行物2に記載されたEXOR論理の検出手段と相違する旨主張しているが、実用新案登録請求の範囲には、「前記複数の相互接続手段内の少なくとも一つの相互接続手段にメモリモジュールが存在する時,前記複数の相互接続手段内の少なくとも一つの相互接続手段にメモリモジュールが存在しない時であっても,その存在を電気的に検出する検出手段」と記載され、本件考案の検出手段は、メモリモジュールの存在を検出する時として、 (A)複数の相互接続手段内の少なくとも一つの相互接続手段にメモリモジュールが存在する時,複数の相互接続手段内の少なくとも一つの相互接続手段にメモリモジュールが存在しない時であっても, を構成要件としているが、 (B)複数の相互接続手段内のすべての相互接続手段にメモリモジュールが存在する時, を構成要件としていないのであるから、請求人の上記主張は、実用新案登録請求の範囲の記載に基づかない主張である。 また、引用刊行物2に記載されたEXOR論理の検出回路は、一例であって、ワイヤードOR論理の検出回路(必要ならば、例えば、特開昭59-223828号公報の第2図、特開昭62-274449号公報の第2図を参照されたい。)など周知の検出回路を代わりに用いることは、当業者により必要に応じて適宜行われる程度のことにすぎない。 5.むすび したがって、本件考案は、引用刊行物1、2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-09-27 |
結審通知日 | 2002-10-08 |
審決日 | 2002-10-25 |
出願番号 | 実願平7-5760 |
審決分類 |
U
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉岡 浩、漆原 孝治 |
特許庁審判長 |
川名 幹夫 |
特許庁審判官 |
堀田 和義 吉見 信明 |
考案の名称 | メモリモジュール用のアドレスをイネーブルする装置 |
代理人 | 浅村 肇 |
代理人 | 林 鉐三 |
代理人 | 清水 邦明 |
代理人 | 浅村 皓 |