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審決分類 審判    A01K
審判    A01K
審判    A01K
管理番号 1075002
審判番号 無効2001-35198  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-05-10 
確定日 2003-04-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第2570549号実用新案「中通し釣竿」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第2570549号の請求項1乃至3に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯・本件考案
本件実用新案登録第2570549号は、平成5年6月19日に出願された実願平5-38208号の実用新案登録出願に係り、平成10年2月13日に請求項の数:3として設定登録されたものであり、その後、本件無効審判の請求人である株式会社 シマノにより平成10年10月14日に異議申立て(H10-75105)があり、平成11年3月2日に登録の維持決定がなされ、その後、リョウビ株式会社より平成10年11月19日に無効審判(H10-35574)が請求され、平成11年12月14日に請求不成立の審決がなされ、その後、本件無効審判の請求人である株式会社 シマノにより平成12年5月25日に無効審判(H12-35279)が請求され、平成13年8月7日に登録無効の審決がなされ、現在東京高等裁判所に係属中であり、さらに平成13年5月25日に株式会社 シマノにより本件無効審判請求がなされたというものです。
本件実用新案登録第2570549号の請求項1乃至3に係る考案は、実用新案登録明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至3に記載された次のとおりのものである。以下、それぞれ、「本件考案1」、「本件考案2」、「本件考案3」といい、まとめて「本件考案」という。

「【請求項1】 穂先竿を保持する保持竿に振出継合した前記穂先竿の先端部外周に固定され、前記保持竿先端部内径より小径の外径を有した固定管と、釣糸案内用の内径を有し、前記保持竿の先端部内径より大径の外径を有するトップガイドと、該トップガイドと前記固定管とに形成されて、互いに螺合するねじ部とを具備することを特徴とする中通し釣竿。
【請求項2】 前記トップガイドの外郭形状がその最大外径を有する位置まで前方に向って殆ど縮小することの無い略ラッパの形状に形成されてなる請求項1記載の中通し釣竿。
【請求項3】 穂先竿を保持する保持竿に振出継合した前記穂先竿の先端部外周に固定され、前記保持竿先端部内径より小径の外径を有する固定管と、前記保持竿の先端部内径よりも大径の外径を有するトップガイドと、該トップガイドの内周に設けられた雌ねじ部と、前記固定管の外周に設けられ、該雌ねじ部の螺合する雄ねじ部とを具備し、前記穂先竿はその先端が前記雄ねじ部の領域内にまで至るように前記固定管内に挿入されたことを特徴とする中通し釣竿。」

2.審判請求人の主張
本件の平成8年4月30日付け手続補正書による補正は、明細書の要旨を変更するものであり、旧実用新案法第9条第1項により準用される旧特許法第40条の規定により本件実用新案登録の出願日は、前記手続補正書の提出日である平成8年4月30日となる。
そうすれば、本件登録実用新案の明細書の請求項1ないし請求項3に係る考案は、甲第1号証(本件出願の公開公報)に記載された考案と同一あるいはその考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第1項あるいは第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるし、また、本件実用新案登録出願は、明細書の記載に不備があり、旧実用新案法第5条第4項および第5項に規定する要件を満たしておらず、実用新案登録を受けることができないから無効にすべきものである。
証拠方法として実開平7-1760号公報(本件の願書に最初に添付された明細書又は図面)を提出している。
なお、甲第1号証の証拠の表記は上記のとおりであるが、証拠の内容からみて甲第1号証刊行物は実願平5-38208号(実開平7-1760号公報)のCD-ROMであり、以下「実開平7-1760号公報」と略称する。

3.被請求人の主張
平成8年4月30日付け手続補正書による補正は、明細書の要旨を変更するものではなく、甲第1号証(本件出願の公開公報)は本件考案の公知資料とはなり得ないし、また、本件実用新案登録出願は、その明細書が旧実用新案法第5条第4項および第5項に規定する要件を満たしているから、本件特許は、無効とされるべきものではない

4.出願日の認定
(1)補正の内容
平成8年4月30日付け手続補正書により、実用新案登録請求の範囲の特に請求項1が、
「穂先竿を保持する保持竿に振出継合した前記穂先竿の先端部外周に固定され、前記保持竿先端部内径より小径の外径を有した固定管と、釣糸案内用の内径を有し、前記保持竿の先端部内径より大径の外径を有するトップガイドと、該トップガイドと前記固定管とに形成されて、互いに螺合するねじ部とを具備することを特徴とする中通し釣竿。」に補正された。(以下、平成8年4月30日付け手続補正を「本件補正」といい、この補正の内容を「補正事項」という。)

(2)補正事項に関連する願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)の記載事項
以下の技術的事項が図面と共に記載されている。
a.穂先竿を保持する保持竿に振出継合した前記穂先竿の先端外周に固定され、前記保持竿先端内径より小径の外径を有した固定管と、前記保持竿の先端内径よりも小径の外径と前記穂先竿の先端内径よりも大径の内径とを有する小径部と、前記保持竿の先端内径より大径の外径を有し、ラッパ状に形成された大径部とを有したトップガイドと、該トップガイドの小径部と前記固定管とに形成されて、互いに螺合するねじ部を具備することを特徴とする中通し釣竿。(実用新案登録請求の範囲)
b.【従来の技術】
釣竿の先端部に大径のトップガイドを固定した中通し釣竿が本出願人による特開平4-117232号公報に開示されている。この公報においては釣糸の摺動抵抗を低減すべく案内環の内径を大きくする等のトップガイド部の構造が開示されている。
【考案が解決しようとする課題】
然しながら振出式継合釣竿の場合には、上記のような径の大きなトップガイドを有する穂先竿はそのトップガイドが穂先竿を保持する保持竿の先端内側に当って挿通不可能となり、該穂先竿が抜き取れず、該穂先竿等の手入れや修理が困難になる。
依って本考案は、釣糸がスムーズに挿通できると共に保持竿から穂先竿が抜き取り、分解されて手入れや修理を容易にした中通し釣竿の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑みて本考案は、穂先竿を保持する保持竿に振出継合した前記穂先竿の先端外周に固定され、前記保持竿先端の内径より小径の外径を有した固定管と、前記保持竿の先端内径よりも小径の外径と前記穂先竿の先端内径よりも大径の内径とを有する小径部と、前記保持竿の先端内径より大径の外径を有し、ラッパ状に形成された大径部とを有したトップガイドと、該トップガイドの小径部と前記固定管とに形成されて、互いに螺合するねじ部とを具備することを特徴とする中通し釣竿を提供する。
【作用】
穂先竿の先端外周に固定された固定管は保持竿先端の内径よりも小径のため、該固定管は保持竿の中に収納でき、またトップガイドの小径部との間に互いに螺合するねじ部を形成しており、この小径部は保持竿先端の内径よりも小さな外径を有するため、トップガイドの小径部は固定管に螺着されたまま保持竿の中に収納できる。更にトップガイドはその小径部を介して穂先竿に固定された固定管に対して着脱可能であるため、トップガイドを取り外した後に穂先竿を保持竿から抜き取り、分解することができる。またトップガイド小径部の内径が穂先竿先端内径よりも大きいので、釣糸がこの小径部の内周面に接触しないと共に、トップガイドの大径部は径が大きいため、釣糸の摺動抵抗が小さくなる。(段落番号【0002】?【0006】)
c.【実施例】
・・・図2は図1の穂先部の縦断面図であり、穂先竿10の先端外周にはその外径D1が保持竿12の先端内径よりも小径である固定管22が接着固定されている。また、この固定管22の前部内周には雌ねじ22aが形成されており、この雌ねじ22aと螺合する雄ねじ20Aaを外周に形成した小径部20Aを有するトップガイド20が螺着されている。前記小径部20Aの内径d3は穂先竿10の先端内径d1よりも大きく形成されている。従って、釣糸28がこの小径部20Aの内周面に接触しない。
また、この小径部20Aの前部は外径が保持竿12の先端内径よりも大きな外径を有するラッパ状の大径部20Bが形成されている。従って釣糸の摺動抵抗が小さくなると共に、穂先竿10の収納時にトップガイド20の大径部20Bは引っ掛るが、残りの他部は保持竿12に収納できる。また、保持竿12から穂先竿10を抜き取り、分解したい場合には、トップガイド20を穂先竿10に固定された固定管22から取り外した状態で抜き取ることができる。従って、穂先竿10等の手入れや修理が容易になる。(段落番号【0008】?【0009】)
d.また、固定管22の先端面22bにはトップガイド20の当接面20bが当接して隙間を作らず、釣糸28が隙間に引っ掛ることを防止している。このトップガイド20の外形はなだらかなラッパ状に形成されているため、釣糸が引っ掛ることがない。(段落番号)【0011】)
e.図3は本考案に係る第2実施例を示し、穂先竿10の先端外周に固定された固定管22’の外周には雄ねじ22a’が形成され、トップガイド20’の小径部20A’の内周に形成された雌ねじ20Aa’が螺合している。この場合、トップガイド20’の後端面20b’が固定管22’の当接面22b’に当接し、釣糸28が引っ掛るような隙間を作っていない。また、固定管22’の外径D1’とトップガイド20’の小径部20A’の外径D2’とは保持竿12の先端内径よりも小さく形成されている。従って穂先竿10の収納時にトップガイド20’の大径部20B’を残した他部は保持竿12に収納できる。また、トップガイド20’を取り外せば、穂先竿10を保持竿12から抜き取ることができる。(段落番号)【0012】)
f.【考案の効果】
以上の説明から明らかなように本考案によれば、トップガイドの小径部の内径が穂先竿の先端内径よりも大きいため、この小径部内周面に釣糸が接触せず釣糸がスムーズに挿通できると共に、大径部は径が大きいため釣糸の摺動抵抗が小さくなる。また、螺合ねじ部が形成されており、固定管の外径は保持竿先端内径よりも小径なので、穂先竿は固定管が固定されたまま保持竿から抜き取り、分解がなされて、穂先竿等の手入れや修理を容易にさせた中通し釣竿の提供が可能となる。(段落番号【0013】)

(3)補正事項と当初明細書記載の技術的事項との対比
補正事項によると、トップガイドに関して「釣糸案内用の内径を有し、前記保持竿の先端部内径より大径の外径を有するトップガイド」と規定しているが、本件補正によって実用新案登録請求の範囲において、トップガイドは、補正後の明細書の考案の詳細な説明の【実施例】の項に記載されている「保持竿の先端内径よりも小径の外径と穂先竿の先端内径よりも大径の内径とを有する小径部と、保持竿の先端内径より大径の外径を有し、ラッパ状に形成された大径部とを有したもの」はもちろんのこと、文言上「長さ方向全長にわたって均一の外径をなすもの」、すなわち小径部がなくラッパ状にもなっていないものも含まれるものとなった。
このことは平成13年11月15日に特許庁で行われた口頭審理において特許権者である審判被請求人も主張している(調書参照)
これに対して、当初明細書において中通し竿のトップガイドについては、上記摘記事項のa?fにあるように「実用新案登録請求の範囲」、「課題を解決するための手段」、「作用」、「実施例」、「効果」の項に「保持竿の先端内径よりも小径の外径と前記穂先竿の先端内径よりも大径の内径とを有する小径部と、前記保持竿の先端内径より大径の外径を有し、ラッパ状に形成された大径部とを有したトップガイド」としか記載されておらず、長さ方向全長にわたって均一の外径をなすトップガイドについては一切記載がないし、示唆もされていない。
このように、本件補正により、実用新案登録請求の範囲の特に請求項1に係る考案は、トップガイドについて出願当初明細書に記載もされていないし示唆もされていない「長さ方向全長にわたって均一の外径をなすもの」も含まれるようになり、考案の構成に係る技術的事項が当初明細書に記載した事項の範囲内でないものとなった。

(4)被請求人の反論に対する見解
これに対し被請求人は、参考資料として昭和57年5月25日言渡しの東京高裁裁判所判決(昭和56年行ケ第211号)を挙げて、「当初明細書記載の考案の本質的内容は、その[従来の技術]や[考案が解決しようとする課題]の記載からみて、「振出式継合釣竿において大径のトップガイドを用いた場合でも、トップガイドを装着した穂先竿が保持竿から抜き取り、分解できるようにし、釣竿の手入れや修理を容易にした中通し釣竿とすることにある。次の[課題を解決するための手段]の欄には、上記振出式継合釣竿において大径のトップガイドを用いた場合でも、トップガイドを装着した穂先竿が保持竿から抜き取り、分解できるようにし、釣竿の手入れや修理を容易にした中通し釣竿を得るための本件考案の本質的構成とともに、小径部、大径部の構成を重畳的に付加限定した考案が次のように記載されている。」(答弁書第3頁第13行?24行)とした上で、「出願当初明細書に、考案の構成に基づく本来の機能に加えて、さらに付加された構成に基づく機能が単に重畳的に加わる場合は、付加された構成は単純な付加限定に過ぎず、このような関係の構成を有する考案が出願当初明細書に記載されている場合には、付加限定のない考案の構成に基づく本来のもの(本質的内容)と、特定の構成が付加されこれにより限定されたものとが併存して記載されていると解される。そしてそのような場合には、出願当初明細書の実用新案登録請求の範囲に記載した事項を削除して付加限定のない考案としても、要旨の変更には当たらない。」(答弁書第2頁第15行?23行)と主張している。
たしかに当初明細書記載の考案は、その解決すべき課題の記載からみて、振出式継合釣竿において径の大きなトップガイドを用いた場合でも、保持竿から穂先竿を抜き取り分解できるように、トップガイドを穂先竿の先端部に着脱自在に結合することによって、釣竿の手入れや修理を容易にすることを目的とし、特徴とするものである。
しかし、出願当初明細書においては、[実用新案登録請求の範囲]、[課題を解決するための手段]、[作用]、[実施例]、[考案の効果]の記載において一貫してトップガイドを小径部と大径部からなり大径部はラッパ状に形成されたものとして記載しており、「長さ方向全長にわたって均一の外径をなすもの」を含みうるものであることを示唆する記載はないから、上記特徴はこのような基本構成を有するトップガイドにおいてさらに加えられた特徴であるとみるのが妥当である。
仮に、被請求人が主張するように出願当初明細書にトップガイドに「小径部」、「大径部」を付加限定していない本来の考案「釣糸案内用の内径を有し、前記保持竿の先端部内径より大径の外径を有するトップガイド」が記載されていたとする。
そうするとまずもって、[実用新案登録請求の範囲]、[課題を解決するための手段]、[作用]にはあえて付加限定した考案ではなく、本来の考案に直接対応する構成を記載するのが自然である。
また、出願当初明細書と補正後の明細書において共通な実施例1はトップガイドに小径部がなければ、固定管の内周に設けられた雌ねじに対してトップガイドを螺着する構成は考え難いし、実施例2においても「トップガイド20’の後端面20b’が固定管22’の当接面22b’に当接し、釣糸28が引っ掛るような隙間を作っていない」とあるように、トップガイドに小径部がなければトップガイドの後端面を、保持竿先端部内径より小径の外径を有した固定管の端面に当接させる構成は考え難いことから、いずれもトップガイドについては小径部を有することを前提としたものしか実施例として挙げていない。
もし上記仮定が正しいとするならば、出願当初の明細書には本来の考案である「釣糸案内用の内径を有し、前記保持竿の先端部内径より大径の外径を有するトップガイド」の実施例としては、むしろごく単純に長さ方向全長にわたって均一の外径をなすものを挙げればよいところ、あえて小径部がなければ実現できないようなものを実施例1、実施例2として記載していることになり、極めて不自然である。
このことから、当初明細書に、「釣糸案内用の内径を有し、前記保持竿の先端部内径より大径の外径を有するトップガイド」と「保持竿の先端内径よりも小径の外径と前記穂先竿の先端内径よりも大径の内径とを有する小径部と、前記保持竿の先端内径より大径の外径を有し、ラッパ状に形成された大径部とを有したトップガイド」が併存して記載されていたとすることはできず、被請求人の上記主張は採用できない。

(6)出願日についてのまとめ
以上のことから、本件補正は明細書又は図面の要旨を変更するものであり、平成5年改正法による改正前の実用新案法第9条第1項により準用される特許法第40条の規定により本件実用新案登録の出願日は、前記手続補正書の提出日である平成8年4月30日とみなされる。

5.甲第1号証(実開平7-1760号公報)の公知性について
4.(6)の記載によれば、本件考案の出願は手続補正書が提出された平成8年4月30日にしたものとみなされ、この結果甲第1号証が本件考案の出願前に頒布された刊行物となる。

6.対比・判断
[本件考案1]
本件考案1を甲第1号証の記載の考案である上記出願当初明細書の記載事項の摘記事項a.と対比すると、本件考案1の特に「釣糸案内用の内径を有し、前記保持竿の先端部内径より大径の外径を有するトップガイド」は、摘記事項a.記載の考案の「前記保持竿の先端内径よりも小径の外径と前記穂先竿の先端内径よりも大径の内径とを有する小径部と、前記保持竿の先端内径より大径の外径を有し、ラッパ状に形成された大径部とを有したトップガイド」を包含する考案であるから、両者間に格別の相違点はなく同一である。
なお、本件実用新案登録請求の範囲の請求項1から請求項3に記載された事項から特定される考案が、甲第1号証に記載された考案と同一であることは被請求人も認めている。(調書参照)
[本件考案2]
本件考案2を同じく上記摘記事項a.記載の考案と対比すると、本件考案2の「前記トップガイドの外郭形状がその最大外径を有する位置まで前方に向って殆ど縮小することの無い略ラッパの形状に形成されてなる」についても摘記事項a.に記載されているから、両者間には格別の相違点がなく同一である。
[本件考案3]
本件考案3を同じく上記摘記事項e.記載の考案と対比すると、本件考案3の特に「該トップガイドの内周に設けられた雌ねじ部と、前記固定管の外周に設けられ、該雌ねじ部の螺合する雄ねじ部とを具備し」の点は甲第1号証の摘記事項e.に記載されているから、両者間に格別の相違点はなく同一である。

7.明細書の記載要件については、
(1)本件補正後の明細書の考案の詳細な説明における実施例1や実施例2は本件考案に含まれるものであるから、その他に本件考案に含まれ得る実施例について記載がないからといって、当業者が容易に実施できる程度にその考案の構成が記載されていないとすることはできない。
(2)実用新案登録請求の範囲に記載の考案について、明細書の「課題を解決するための手段」の項や「作用」の項に対応する記載があるから、実用新案登録を受けようとする考案が考案の詳細な説明に記載したものでないとすることができない。
(3)実用新案登録請求の範囲の「釣糸案内用の内径を有し、前記保持竿の先端部内径より大径の外径を有するトップガイドと、該トップガイドと前記固定管とに形成されて、互いに螺合するねじ部とを具備する」における「釣糸案内用の内径」は、最適の表現方法ではないとしても、釣糸を案内する内径寸法を有するトップガイドの内周部を規定する表現として、充分構成が特定できるし、「ねじ部」についてもトップガイドと固定管との結合部にねじ部が設けられていることが特定できる。
(4)作用の記載の「また、トップガイドは外径が大きいため、厚肉ガイドが使用でき、これに小さな曲率の曲面を大きな角度範囲に亘って形成できるため、釣り糸の摺動抵抗が小さくなる。」は、トップガイドの外径が大きければ、厚肉で、かつ大きな角度範囲に亘って小さな曲率の曲面をなすガイド(例えばガイド面が円の一部からなる場合を想定するとわかりやすい。)の使用が可能になり、この点が不明瞭であるとすることができない。
したがって、本願がその明細書の記載が平成5年改正法による改正前の実用新案第5条第4項および5項に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

8.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1乃至3に係る考案は本件考案の出願前に頒布された甲第1号証記載の考案であるから、本件実用新案登録は平成5年改正法附則第4条第1項の規定によりなお効力を有する旧実用新案法第3条第1項の規定に違反してなされたものであり、同実用新案法第37条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-11-30 
結審通知日 2001-12-05 
審決日 2001-12-18 
出願番号 実願平5-38208 
審決分類 U 1 11・ 03- Z (A01K)
U 1 11・ 113- Z (A01K)
U 1 11・ 121- Z (A01K)
最終処分 成立    
前審関与審査官 星野 浩一  
特許庁審判長 石川 昇治
特許庁審判官 藤井 俊二
高橋 泰史
登録日 1998-02-13 
登録番号 実用新案登録第2570549号(U2570549) 
考案の名称 中通し釣竿  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 小林 茂雄  
代理人 中村 誠  

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