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審決分類 審判 全部無効 1項1号公知 無効とする。(申立て全部成立) B65D
審判 全部無効 1項2号公然実施 無効とする。(申立て全部成立) B65D
管理番号 1075003
審判番号 審判1995-20948  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1995-09-29 
確定日 1999-09-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第2054325号実用新案「ディスクケース」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2054325号実用新案の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.本審判請求に係る実用新案登録は、昭和62年9月10日の実用新案登録出願について、平成4年3月9日の出願公告を経て、平成7年3月6日に登録されたものである。
これに対して、平成7年9月29日に本件審判請求人は次の3つの理由をもって本件実用新案録は無効にされるべきものである旨主張している。
〔理由1〕
ソニーサウンドテック株式会社の「CDキャリングバッグCK-CD1」なるディスクケースは、本件に係る実用新案登録出願の出願前に日本国内において公知公用であった。
そして、本件登録実用新案は前記「CDキャリングバッグCK-CD1」の構造に基づき、当業者が本件の実用新案登録出願の出願前に極めて容易に考案することができたものである。
よって、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項1号の規定により無効にされるべきものである。
〔理由2〕
本誌求人のディスクケースは、本件に係る実用新案登録出願の出願前に公知であった。
そして、本件登録実用新案は、上記ディスクケースの構造をそのまま技術思想として表現したものに過ぎない。
よって、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第1項1号の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項1号の規定により無効にすべきものである。
〔理由3〕
請求人のディスクケースに係る構造は、少なくとも、株式会社ハゴロモ(本件請求人)の社員竹澤善孝が考案したものと言えるが、本件登録実用新案に係る出願は、竹澤善孝から実用新案登録を受ける権利を承継しないままに登録されたものである。
よって、当該登録は同法第37条第1項4号の規定により無効にされるべきものである。
上記理由2の詳細は次のとおりである。
株式会社ハゴロモは昭和62年からCD保護ケースを開発し、少なくとも同年7月までに株式会社日新(代表者 光山 益弘)に下請加工をさせてその製造を開始し、少なくとも昭和62年9月10日よりも前にそのサンプル品を首都圏及び近畿圏の顧客に提示しつつ公然と販売を行った。そして、このCD保護ケースの構造は本件登録実用新案のディスクケースと特に相違する点はなく、したがって、これと同一である。この主張事実を人証、田口 雅裕、氏家 栄紀、篠田 聖年、他3名の証言によって立証する。
平成9年1月16日、特許庁審判延において、証人、田口 雅裕、氏家 栄紀、篠田 聖年について証拠調べを行い、また、平成9年1月17日、同審判延において、証人、竹澤 喜孝、赤井 健司、春田 幸裕について証拠調べを行った。
2.証言によって立証された事実
〔証人 田口 雅裕の証言〕
田口 雅裕に対する請求人及び被請求人尋問の結果から、次のように認定することができる。
証人田口 雅裕は昭和62年7月から株式会社ハゴロモの営業を担当し、同年7月下旬に商品CDホルダを携帯して東京アビックの総括担当者、斉藤と面談し、オータムセールの販促品として上記CDホルダを売り込み、同斉藤からの東京アビックの営業本部の氏家 栄紀の紹介を得て、同年7月30日の十数人が出席した店長会議において同見本を持ち込んでその使い方等を説明し、持参したCDホルダを同会場において帰った。その後、東京アビックが同CDホルダをオータムセールの販促品とするために、氏家 栄紀から購入の注文を受け、これを9月初旬に納入した。
セールスのために携帯し、店長会議で披露した見本と、販促品として納入したCDホルダとは東京アビックのロゴマークの有無の違いはあるが、CDホルダの構造それ自体において違いはない。
また、セールスのために携帯したCDホルダ及び販促品として納入したCDホルダは、塩化ビニール製の袋(外袋)に内袋として不織布製の袋が内装され、内袋と外袋とは左右両側部で溶着され、内袋の開口端と外袋の開口端とはその一方においてのみ溶着されていた。さらに田口 雅裕が図示したCDホルダの構造は上記証言と符号している。
〔証人 氏家 栄紀の証言〕
氏家 栄紀に対する請求人及び被請求人尋問の結果ら、次のように認定することができる。
証人氏家 栄紀は昭和62年当時東京アビックに勤務していて、昭和61年2月1日から常業部次長の地位にあり、催事の推進企画をしていた。
株式会社ハゴロモ製のCDホルダを昭和62年のオータムセールの販促品として採用することとし、これを購入した。このCDホルダを購入するに至った経緯は次のとおりである。
オータムセールはソニーの秋の新商品の発表に合わせて原則として例年9月1日から、実際には年9月1日以降の直近の土曜日まは金曜日から始まるものである。
株式会社ハゴロモのCDホルダを東京アビック、二子玉川店の斉藤から紹介され、昭和62年のオータムセールの販促品として採用するように勧められ、斉藤に同年7月末の店長会議に見本を持参して説明してもらうよう依頼した。
その後の同年7月末の店長会議において、既に面識があったハゴロモの田口から、見本を持参して、その使い方等の説明を受けた。見本として持参したCDホルダは透明のビニール袋の外袋と、白い不織布製の内袋とからなるものであり、内袋と外袋とはその両サイドで止められており、また開口部はその表側においてのみ止められていた。
7月末の店長会議においてハゴロモのCDホルダを採用する方向が出されたので、稟議書作成のために、持参した見本を預かった。その後ハゴロモのCDホルダを採用することが正式に決まり、商品との区別をつける都合上、販促品用の指定のロゴマークをつけるよう指示して、8月末に納品するように注文した。しかし、実際には8月末には間に合わずに9月の頭に納品されたが、同年62年の9月5日の土曜日には間に合ったように記憶している。
納品されたCDホルダはロゴマークが入っている点を除き、その構造等において上記の見本と違いはなかった。これを各販売店の売上に応じて案分し、社内便を使って各販売店に配布した。
さらに証人 氏家 栄紀が図示したCDケースの構造は上記証言と符号する。
〔証人 篠田 聖年の証言〕
篠田 聖年に対する請求人及び被請求人尋問の結果ら、次のように認定することができる。
証人 篠田 聖年は昭和62年6月に東京アビックの二子玉川店に配属され、現在に至っている。CDホルダを昭和62年の9月から始まるオータムセールの販促品として所定額以上の買上客に配布した。二子玉川店に配属された昭和62年はマケル・ジャクソンの『バッド』が発売された(8月31日)年であり、この時期がオータムセールの販促品として配布した時期と同じであったことを記憶している。このとき配布されたCDホルダはキャリングケースに組み込まれたもので、ビニール製の外袋に白い布状の袋が入っているものであり、横の部分と前側の上の部分がCDホルダが入れられるようにくっついていて、後側は歌詞カードが入るように開いていた。
なお、CDホルダはCDを3枚以上、金額で1万円以上買った客に差し上げた。
上記のオータムセールに備えて手製のポスターを作って貼り、CDキャリングケースを写真撮影してこれを手製ポスターに貼った。
昭和62年のオータムセールは9月1日から始まったが、CDキャリングケースはその1日あるいは2日前に届いていた。上記の写真撮影に使ったCDケースにロゴ・マークが入っていたかどうかは記憶に無いが、客に配布したCDケースにはロゴマークが入っていた。9月の頭に販促品としてCDキャリングケースが二子玉川店に届けられ、客に配布した。証人、篠田 聖年は販促品として使われたCDキャリングケースの一つを今日も所有している。
さらに証人 篠田 聖年が図示したCDホルダの構造は上記証言と符合している。
3.証人 篠田 聖年所有のCDシャトル(キャリングケース)「検甲第1号証の1乃至5」の構造と状況について検証結果。
検甲第1号証の1は蛇腹型のビニールケースで、表紙、裏表紙の間に挟まれて3つの蛇腹式の収納袋があり、表紙の下、中央にロゴマークがあり、表面にAVICの表示があり、四隅が汚れ(手垢のような汚れ)ており、裏蓋の上端に裂けた損傷部分がある。
検甲第1号証の2は偏平な袋であって、ビニール製の半透明の樹脂シートで作られた袋の中に不織布らしいもので作られた内袋が入っていて、その両側部は内のり約1センチのところで接着されている。内袋は上端裏側においては外袋に接着されていない。外袋の表面の部分には、上方に突出した舌片と、切り込みによって下方に向かって突出された舌片とが備えられている。上方に突出した舌片の両サイドには、下に切り込んだ切欠が左右にある。裏側にはPAT、それからNのマークが刻印されている。
4.上記の証人の証言から、証人田口がロゴマークがついていないCDホルダを昭和62年7月下旬に東京アビックの二子玉川店の斉藤に販売を目的として持参して説明し、さらに、同目的をもって、同年7月末の店長会議に持参してこれを説明し、さらに、販促品としてロゴマークが付されたCDキャリングケース(CDホルダを備えたもの)が、同年9月初旬にオータムセール期間中に客に対して配布したことが認められる。また、上記のCDホルダは透明プラスチック製外袋に不織布製の内袋を内装した二重袋であり、その開口上端において外袋と内袋が表側のみで接着されたものである。
以上のことは、証人田口、氏家、篠田の証言において一貫していて、特に矛盾するところはなく、疑うに足る証言もない。また殊に、CDホルダの構造については、検甲第1号証のCDホルダの構造とも符号する。
さらに、上記の証言を疑うに足る証拠は他にない。
以上のとおりであるから、少なくとも昭和62年9月9日以前に株式会社ハゴロモの営業用見本であるCDホルダ、また東京アビック社のロゴマークが付された販促用のCDホルダが公然知られたこと、および当該CDホルダは透明で軟質な樹脂シート製の外袋と白い不織布製の内袋とから二重袋であり、外袋と内袋はその左右両側部において溶着されており、さらにその上端開口部の表側が溶着され、裏側は溶着されていないものであることが認められる。
4.本件登録実用新案の要旨
本件登録実用新案の要旨は、本件実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりと認められる。
「不織布を用いて形成した偏平な内袋3と、この内袋3を被う軟質な合成樹脂シート製の偏平な外袋2とからなるディスクケースにおいて、前記内袋3の一方の片面上部を外袋2内面に接着するとともに、内袋3の他方の片面と外袋2内面は接着せず、その間を紙片収納部としたことを特徴とするディスクケース。」
そして、以上の要件を整理して分節すると次のとおりである。
(イ)偏平な二重袋のディスクケースであること。
(ロ)不織布を用いて形成した内袋3と、この内袋3を被う軟質な合成樹脂シート製の偏平な外袋2とからなること。
(ハ)前記内袋3の一方の片面上部を外袋2内面に接着するとともに、内袋3の他方の片面と外袋2内面は接着せず、その間を紙片収納部としたこと。
5.比較、判断
株式会社ハゴロモ製の見本CDホルダ、または販促用CDホルダは共にコンパクトディスクを入れる偏平な二重袋であり、本件登録実用新案のディスクケースもコンパクトディスクを入れる二重袋であるから、この点においては上記CDホルダは本件登録実用新案のディスクケースに相当する(以下株式会社ハゴロモ製のCDホルダを「ハゴロモのディスクケース」という)。
したがって、ハゴロモのディスクケースは上記要件(イ)を備えている。
また、ハゴロモのディスクケースの内袋は白い不織布製であり、外袋は透明な軟質樹脂シート製であることは上記のとおりである。
したがって、ハゴロモのディスクケースは上記要件(ロ)を備えている。
さらに、ハゴロモのディスクケースの内袋と外袋とはその上端の表側において接着されていて、裏側においては接着されていないのであるから、この点においては本件登録実用新案と差異はない。
また、内袋と外袋とは上端の裏側においては接着されていないのであるから、当該ディスクケースの裏側において内袋と外袋との間に紙片を挿入することが可能であることはその構造上自明のことである。
したがって、ハゴロモのディスクケースは上記要件(ハ)を備えている。
以上のとおりであるから、本件登録実用新案はハゴロモのCDホルダと特に相違する点はなく、これと同一考案であって、実用新案法第3条第1項1号または同条同項2号に規定する考案に該当するものと認められる。
それゆえ、本件実用新案登録は同法第37条第1項4号に規定する実用新案登録に該当し、無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1997-05-12 
結審通知日 1997-05-27 
審決日 1997-06-04 
出願番号 実願昭62-139485 
審決分類 U 1 112・ 112- Z (B65D)
U 1 112・ 111- Z (B65D)
最終処分 成立    
前審関与審査官 石川 正幸吉村 博之原 慧  
特許庁審判長 園田 敏雄
特許庁審判官 伊藤 元人
藤 文夫
登録日 1995-03-06 
登録番号 実用登録第2054325号(U2054325) 
考案の名称 ディスクケース  
代理人 中澤 直樹  
代理人 藤本 徹  
代理人 東尾 正博  
代理人 小松 勉  
代理人 鳥居 和久  
代理人 吉原 省三  
代理人 近藤 幸夫  
代理人 鎌田 文二  

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