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審決分類 審判 判定 その他 属する(申立て不成立) G07F
管理番号 1075009
判定請求番号 判定2002-60094  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2003-05-30 
種別 判定 
判定請求日 2002-11-01 
確定日 2003-04-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第2110093号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 イ号図面及びその説明書に示す「ダミー容器」は、実用新案登録第2110093号登録実用新案の技術的範囲に属する。
理由 1.本件請求の趣旨
イ号図面及びその説明書に示す「ダミー容器」(以下、「イ号物件」という。)は、実用新案登録第2110093号登録実用新案の技術的範囲に属しない、との判定を求める。

2.本件考案
実用新案登録第2110093号の請求項1に係る考案は、登録明細書の実用新案登録請求の範囲第1項に記載されたとおりの次のものと認める(符号は、便宜上当審で付与。)。
「(A)缶見本の上下端部を構成する互いに対向配置の上端板部及び下端板部と、該両端板部の背縁間を互いに連結する支柱部からなる支持体を有し、
(B)前記両端板部間に、販売品表示を施した見本表示板を円筒状に湾曲させて介在させてなる自動販売機展示用缶見本において、
(C)前記上下両端板部と支柱部とを一体とし、
(D)かつ、前記上下両端板部いずれか一方には上下に貫通した透孔を備えるとともに、
(E)前記両端板部の対向面の各周縁部にそれぞれリング状の立上り部を一体に備え、
(F)前記支柱部の前面に前記見本表示板の縦向きの両縁部が係合される見本表示板係合突起を一体に備え、
(G)かつ、前記見本表示板は弾性板材を展開方向の弾性をもたせた円筒状に湾曲させ、
(H)その上下両端縁部外面を前記両端板部の立上り部の内面に当接させるとともに、
(I)該見本表示板の両側縁部を前記支柱部前面の見本表示係合突起に対し、前記円筒形を縮径不能に係止させて装着したことを特徴としてなる自動販売機展示用缶見本。」

3.イ号物件
イ号図面及びイ号説明書の記載からすると、イ号物件は次のとおりの缶見本と認められる。
「(a)缶見本の上下端部を構成する互いに対向配置の平面半円形状の上端板部及び下端板部と、該両端板部の背縁間を互いに連結する支柱部からなる支持体を有すること(但し、支柱部は一対設けられている。)
(b)前記両端板部間に、販売品表示を施した見本表示板を半円筒状に湾曲させて介在させてなること
(c)前記上下両端板部と対の支柱部を一体とすること
(d)かつ、前記下端板部には上下に貫通した透孔を備えるとともに、前記上下端板部及び対の支柱部に囲まれた支持体の後側空間が見本表示板を差込可能な後開口部1bとなっていること
(e)前記両端板部の対向面の各周縁部に沿って鉛直方向に延びる平面半円形状の被覆部3a,4aと、被覆部3a,4aから内側に所定距離wだけ離して上記内面に形成した上位置保持溝3b及び下位置保持溝4bを一体に備えること
(f)前記上下位置保持溝3b,4bの後開口部側終端に、前記上下位置保持溝3b,4bの外側鉛直面側に規制片部6a,7aを有し、かつ、前記上下端板部内面から突出する、前記見本表示板の縦向きの両縁部の上下端が係合される見本表示板係合突起を備えること
(g)かつ、前記見本表示板は弾性板材を展開方向の弾性をもたせた半円筒状に湾曲させること
(h)前記見本表示板の上下両端縁部外面を前記上下位置保持溝3b,4bの外側鉛直面に当接させるとともに、
(i)該見本表示板の両側縁部の上下端を前記上下端板部内面の見本表示板係合突起に対し、前記半円筒形を縮径不能に係止させて装着したこと。 」
(なお、イ号図面及びイ号説明書中の「ダミー容器」は、本件考案の構成要件中の「缶見本」に、「上保持部3及び下保持部4」は、「上端板部及び下端板部」に、「側枠」は、「支柱部」に、「本体フレーム1」は、「支持体」に、「商品名」は、「販売品表示」に、「商品表示板2」は、「見本表示板」に、「光取り入れ孔8b」は、「透孔」に、「ストッパ」は、「見本表示板係合突起」に、また、「プラスチック製薄板」は、「弾性板材」に、それぞれその機能、構造からみて対応していることは明らかであるので上記のとおり認定した。)

4.当事者の主張
(1)考案の構成について
<請求人の主張>
i)支持体に関して
(イ)イ号物件における支柱部は、上端板部及び下端板部の後部側部間を連結しているのに対し、本件考案における支柱部は、上端板部及び下端板部の背縁間を連結している。イ号物件においては、支柱部は支持体の後部両側部に対向配置されており、両者は支持体の基本構造において相違している。
(ロ)イ号物件における支柱部間には見本表示板を差込み可能な後開口部1bがあるが、本件考案においては後開口部1bに相当する手段はない。イ号物件においては、見本表示板は、後方(背部)から前方に向けて差し込まれるのに対し、本件考案においては、透孔を利用して挿入することになる。そのため、イ号物件においては、取付け作業がしやすく、作業性が良く、量産する場合、作業者の負担を軽減できる。
(ハ)イ号物件における上端板部及び下端板部の被覆部3a、4aは「半円形状」であるのに対し、本件考案における立ち上がり部は「リング状」である。また、イ号物件においては、上端板部及び下端板部の対向する内面に、被覆部3a、4aから所定距離wだけ離して上位置保持溝3b及び下位置保持溝4bを設けているが、本件考案においては、これらに相当するものが設けられていない。
(ニ)イ号物件における上下の見本表示板係合突起は、上下の端板部の内面に突出して形成され、支柱部には形成されていないのに対し、本件考案における見本表示板係合突起は、支柱部の前面に形成されている。

ii)見本表示板に関して
(イ)イ号物件における見本表示板は、半円形に湾曲するものであり上端板部及び下端板部の最大径が半減され、陳列部の奥行き寸法も半減されるから、使用材料が半減され、省資源化や製造コストのダウンに寄与する。本件考案における見本表示板は円筒状であるから、かかる利点を有しない。
(ロ)イ号物件における見本表示板は、上端板部及び下端板部間に半円筒状に湾曲された状態で保持されるのに対し、本件考案における見本表示板は、上下の両端板部間に円筒状に湾曲させて保持される。イ号物件においては、半円筒状に弾性変形させるだけでよいから、見本表示板の材質及び肉厚の選択の範囲が本件考案よりも広がる。

<被請求人の主張>
i)判定2000-60011号に係るイ号物件と本件イ号物件との違いは次のとおりであり、その他の構成については相違がない。
(イ)被覆部3a,4aから内側に所定距離wだけ離して上位置保持溝3b及び下位置保持溝4bが形成されていること
(ロ)各位置保持溝3b,4bのそれぞれの両終端に、平面L形の突起部からなる見本表示板係合突起を設けていること

(参考;判定2000-60011号に係るイ号物件)
「(a’)ダミー容器の上下端部を構成する互いに対向配置の上保持部3及び下保持部4と、該両保持部の両側の後方外側部間を互いに連結する対の側枠5、5からなる取付けフレーム2を有すること
(b’)前記両保持部間に、商品名を施した見本表示板1を半円筒状に湾曲させて介在させてなること
(c’)前記上下両保持部3、4と側枠5、5を一体とすること
(d’)かつ、前記下保持部には上下に貫通した光透過用の穴8aを備えるとともに、前記側枠5、5の間は前記見本表示板を差込可能な取付け穴6となっていること
(e’)前記両保持部の対向面の各周縁部にそれぞれ半円形状の立ち上がり部3a、4aを一体に備えること
(f’)前記取付け穴に面して前記側枠の内側面に前記見本表示板の縦向きの両縁部が係合されるリブ状の受け部7、7を対向的に一体に備えること
(g’)かつ、前記見本表示板は弾性板材を展開方向の弾性をもたせた半円筒状に湾曲させること
(h’)その上下両端縁部外面を前記両保持部の立ち上がり部の内面に当接させるとともに、
(i’)該見本表示板の両側縁部を前記側枠前面の受け部に対し、前記半円筒形を受止め保持したこと」

ii)上記(イ)に関して、本件考案における立ち上がり部は、請求項1に、「見本表示板の上下両側縁部外面を前記両端板部の立ち上がり部内面に当接させる」と記載されているように、「見本表示板の上下両縁部外面が当接される立ち上がり部」である。イ号物件において「立ち上がり部」に相当するのは、位置保持溝3b,4bを構成している内周壁面部分であり、溝3b,4bの底面から見れば明らかに立ち上がっている。

iii)上記(ロ)に関して、イ号物件における上下の見本表示板係合突起は本件考案における「見本表示板係合突起」と同様に「見本表示板の縦向きの両縁部が係合される」ものである。その突設位置が、本件考案では「支柱部」であるのに対し、イ号物件では「端板部」である点で相違しているが、イ号物件における見本表示板係合突起は、端板部の一部を介して、支柱部に支持された状態にあるから、両者に実質的な相違はない。

(2)均等論について
<請求人の主張>
イ号物件は、甲第1ないし第5号証に開示されている公知技術から当業者が容易に推考することができるものである。したがって、最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成10年2月24日判決言渡)で判示された、いわゆる均等5要件のうち、「イ号が特許発明の出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から容易に推考できたものではない。」という要件を満たさない場合に該当し、イ号物件は本件考案の技術的範囲に属さないというべきである。

<被請求人の主張>
イ号物件は、本件考案の構成要素をすべて具備しているものであり、均等論を論じるまでもなく、イ号物件は、本件考案の技術的範囲に属する。

(3)公知技術の参酌について
<請求人の主張>
i)本件考案は、甲第1ないし第5号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものであり、また、本件考案は、先願である甲第6号証に係る考案と同一である。よって、本件登録実用新案には、無効理由が存在していることは明らかであるから、その技術的範囲の判断には、公知技術を参酌し、実施例に一致する対象に限られるべきである。

<被請求人の主張>
i)実用新案登録の無効は登録無効審判を請求して主張すべきである。
ii)イ号物件は、請求人が提示した甲第1ないし第5号証とは異なるから、技術的範囲の解釈に当って公知技術を参酌し、出願前に公知であった事実を技術的範囲から除外しようとする説に従ったとしても、甲第1ないし第5号証に示される公知技術が、本件考案の技術的範囲に属さないとされるに止まり、これらの公知技術と異なるイ号物件が本件考案の技術的範囲に属しないということにはならない。

5.対比・判断
(1)充足性についての判断
(イ)構成要件C及びGについて
イ号物件と本件考案のいずれにおいても、対向配置された上下端板部と支柱部とが連結されて支持体を構成しており、イ号物件においては、支柱部が一対設けられている点を除いて、イ号物件の構成(c)が、本件考案の構成要件(C)を充足すること、イ号物件と本件考案のいずれにおいても、上下端板部間に見本表示板を湾曲させて介在させており、イ号物件においては、見本表示板が半円筒状である点を除き、イ号物件の構成(g)が、本件考案の構成要件(G)を充足すること、については両当事者間に争いはない。
また、上記の点については、いずれも、イ号物件の構成が、本件考案の構成要件を充足することは、以下に示すとおりである(下記(ロ)及び(ヘ)を参照)。
したがって、イ号物件の構成(c)及び(g)は、本件考案の構成要件(C)、(G)を充足する。

(ロ)構成要件Aについて
本件考案の構成要件Aとイ号物件の構成aとを対比すると、両者は、いずれも、「缶見本の上下端部を構成する互いに対向配置の上端板部及び下端板部」を備え、「両端板部の背縁間を互いに連結する支柱部からなる支持体」を有する点で一致するから、イ号物件の構成aは、本件考案の構成要件Aを充足する。
この点に関し、請求人は、「イ号物件における支柱部は、上端板部及び下端板部の後部側部間を連結しているのに対し、本件考案における支柱部は、上端板部及び下端板部の背縁間を連結している。」と主張するが、本件考案もイ号物件も、支持体が、対向配置されている上端板部及び下端板部の背部の縁を連結している点で異なるところはない。
また、請求人は、「イ号物件においては、支柱部は支持体の後部両側部に対向配置されており、両者は支持体の基本構造において相違している。」とし、支柱部が一対設けられている点において、イ号物件は、本件考案と異なる旨を主張するが、本件考案において、支柱部の本数は1本に限定されないことは、実用新案登録請求の範囲の記載において、文言上明白であるから、イ号物件が、支柱部を一対備えるとしても、これにより、イ号物件の構成(a)が本件考案の構成要件(A)を充足しないということはできない。

(ハ)構成要件Dについて
イ号物件も本件考案も、下端板部に上下に貫通した透孔を有していることに争いはない。そして、イ号物件においては、この透孔を利用すれば、本件考案と同様にして、見本表示板を前方から着脱することが可能であると認められるから、イ号物件の構成(d)は、本件考案の構成要件(D)を充足するものである。なお、イ号物件においては、上下端板部及び対の支柱部に囲まれた支持体の後側空間が見本表示板を差込可能な後開口部1bとされているが、上記したとおり、透孔も見本表示板を着脱するために用いることができるのであるから、イ号物件には後開口部1bが形成されているからといって、イ号物件の構成(d)が、本件考案の構成要件(D)を備えていないことにならない。

(ニ)構成要件E及びHについて
イ号物件においては、見本表示板の上下両端縁部外面を上下端板部の上下位置保持溝3b,4bの外側鉛直面に当接させて、見本表示板の前方への抜け止めを図っていると認められ、また、被覆部3a,4aは見本表示板の前方への抜け止めについて何ら関与していないものと認められる。
一方、本件考案において、両端板部の対向面の周縁部に形成した立上り部は、見本表示板上下両端縁部外面を当接させて、見本表示板の前方への抜け止めを図るものであることが明らかである。
そうであれば、上記上下位置保持溝3b,4bの外側鉛直面は、上下端板部の外周縁に位置する被覆部3a,4aから距離wだけ離れているとはいえ、上記距離wがイ号図面からするとごくわずかであるため、上下端板部の対向面の周縁部に位置しているといえるし、その機能からすると、見本表示板の前方への抜け止めを図る立ち上がり部の内面ということができる。
さらに、イ号物件において、見本表示板を装着したとき、その上下両端縁部外面が上下位置保持溝3b,4bの外側鉛直面に当接するのであるから、上下位置保持溝3b,4bの外側鉛直面の平面形状は、湾曲された見本表示板2の平面形状に合わせたものであると認められる。
本件考案においても、立上り部の内面に、見本表示板の上下両端縁部外面が当接するのであるから、立上り部内面の平面形状は、見本表示板の平面形状に合わせたものということができ、後述するように、本件考案においては、「円筒状」の見本表示板は「半円筒状」のものも含んでいるのであるから、本件考案における「リング状」の立上り部内面の平面形状は、「半円形状」を含んだものといえる。
そうすると、上下位置保持溝3b,4bの外側鉛直面の平面形状は、本件考案における立上り部内面の平面形状と、何ら変わりはないということができる。
したがって、イ号物件の構成(e)及び(h)は本件考案の構成要件(E)及び(H)を充足するものである。

(ホ)構成要件F及びIについて
イ号物件における上下見本表示板係合突起は、上下の端板部の内面に突出して形成されるものである。
本件考案においては、見本表示板係合突起は、支柱部の前面(内面側に他ならない。)に一体に形成されるのであるから、本件考案における係合突起とイ号物件における上下見本表示板係合突起とでは、その配設箇所が異なり、イ号物件の構成(f)及び(i)は、本件考案の構成要件(F)及び(I)を充足しない。

(ヘ)構成要件Bについて
本件考案における缶見本は、登録明細書に「従来、古くは内容物を詰めない実物と同じ缶に、空の缶を退色防止用の特殊な印刷により実物と同じ表示を施し、これを展示見本として使用し、」(実公平7-26787号公報第2頁第3欄第1?3行参照)と記載されているように、実物の缶に代わるものとして使用されるのであるから、一見すると缶であるかのような外観、形状を呈することが必要と認められる。本件考案は、見本表示板を「円筒状」としているが、上述したように、缶様を呈するものであれば、缶見本として機能するのであるから、必ずしも、実物の缶に近いものとする必要はなく、湾曲させた状態で、缶の周方向の一部をなす形状であれば十分であると言える。よって、本件考案でいう「円筒状」は、「半円筒状」をも含んでいると解釈すべきである。
してみると、イ号物件における見本表示板に係る構成(b)は、本件考案における見本表示板に係る構成要件(B)を充足するものである。

(ト) イ号物件における充足性のまとめ
イ号物件の構成(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(g)及び(h)は、本件考案の構成要件(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(G)及び(H)を充足するものの、イ号物件の構成(f)及び(i)は、本件考案の構成要件(F)及び(I)を充足しない(なお、イ号物件においては、見本表示板係合突起を上下端板部内面に設けているのに対し、本件考案においては、支柱部内面に設けている点で異なり、この点でのみ、イ号物件の構成は、本件考案の構成要件を充足しない。)。

(2)均等論について
i)最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成10年2月24日判決言渡)は、実用新案登録請求の範囲に記載された構成要件中に、イ号物件と異なる部分が存する場合であっても、以下の5要件を満たしているときは、実用新案登録請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、イ号物件は本件考案の技術的範囲に属すると判断すべきことを判示しているので、以下、本件考案の構成要件(F)及び(I)と、イ号物件の構成(f)及び(i)とが、均等の関係にあるかどうかについて判断する。

<均等と判断される要件>
(い) 実用新案登録請求の範囲に記載された構成中のイ号と異なる部分が登録考案の本質的な部分でない。
(ろ) 前記異なる部分をイ号のものと置き換えても登録考案の目的を達することができ、同一の作用効果を奏する。
(は) 前記異なる部分をイ号のものと置き換えることが、イ号の実施の時点において当業者が容易に想到することができたものである。
(に) イ号が登録考案の出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に推考することができたものではない。
(ほ) イ号が登録考案の実用新案登録出願手続において実用新案登録請求の範囲から意識的に除外される等の特段の事情がない。

(イ)上記要件(い)について
本件考案における見本表示板係合突起は、支柱部の前面(内面)に一体に形成されるものであるが、この係合突起は、前記見本表示板の縦向きの両縁部を係合させて、前記見本表示板の円筒形を縮径不能に係止させるものであるから、見本表示板の縦向きの両縁部が位置する箇所にあって、湾曲された見本表示板の円周方向の移動を阻止する機能を有しているものであることは明白であり、本件考案においては、上記縦向きの両縁部が、支柱部の前面(内面)に位置するがゆえに、上記見本表示板係合突起も支柱部の前面(内面)に設けられているものと解される。
一方、イ号物件における上下見本表示板係合突起は、上下の端板部の内面に突出して形成されるものであるが、この上下の見本表示板係合突起は、上下位置保持溝3b,4bの後開口部側終端に位置して、見本表示板の両側縁部の上下端を受止め保持し、また、見本表示板2の両側縁部の上下端が位置する箇所にあって、湾曲された見本表示板の円周方向の移動を阻止する機能を有しているものであり、これ以外の機能は有していないことが明らかである。イ号物件においては、上下位置保持溝3b,4bが、支柱部(被覆部3a,4a)から内側に所定距離wだけ離して形成されているために、見本表示板の両側縁部の上下端は、上下位置保持溝3b,4b内に在り、結果として、支柱部(被覆部3a,4a)内面からは、所定距離wだけ離れることになるので、上下見本表示板係合突起を、上下の端板部の内面に突出して形成したものと解釈できる。
したがって、本件考案における見本表示板係合突起とイ号物件における上下見本表示板係合突起とは、見本表示板の縦向きの両縁部が位置する箇所にあって、湾曲された見本表示板の円周方向の移動を阻止する機能を有している点で機能を同じくするものであり、縦向きの両縁部が位置する箇所が本件考案とイ号物件とでは異なっていることから、見本表示板係合突起の配設箇所も異なっているにすぎないといえるから、上記配設箇所の相違は、本件考案の本質部分でないということができる。

(ロ)上記要件(ろ)について
本件考案において、見本表示板係合突起を、上下端板部に設けたとしても、この係合突起に見本表示板の縦向きの両縁部が当接しさえすれば、湾曲された見本表示板の円周方向の移動を阻止することができるのであるから、本件考案において、見本表示板係合突起の配設箇所を、支柱部から上下端板部に置き換えたとしても、本件考案の目的を達成でき、同一の作用効果を奏するというべきである。

(ハ)上記要件(は)について
本件考案において、見本表示板係合突起は、見本表示板の縦向きの両縁部を当接させて湾曲された見本表示板の円周方向の移動を阻止するためのものであるから、該両縁部が位置する支持体の部分であれば、どこに設けてもよいことは当業者に明らかであるし、見本表示板の上下両端縁部外面がリング状の立上がり部の内面に当接しているのであれば、見本表示板の上下両端部は、上下両端板部に当接ないしは近接していることが明らかであるので、見本表示板係合突起の配設箇所を、支柱部から上下端板部に置き換えることは、イ号物件の実施時において、当業者が容易に想到できたものである。

(ニ)上記要件(に)について
イ号物件が請求人の提出した甲第1ないし第5号証に記載された公知技術から出願時に容易に推考できたものであるかどうかについて検討する。
甲第1号証には、「見本缶形成用板材1を丸めて、その両側部を結合部材8等で結合することにより形成された筒状胴部7の上下開口部を、上下キャップで塞ぐことにより、見本缶とする」ものが記載されている(第4頁右上欄第18行?左下欄第2行、第8図等を参照)。
しかしながら、この見本缶は、筒状胴部7と上下キャップを互いに一体に連結するするものではなく、また、見本缶形成用板材1の上下両端縁部を、上下キャップに形成した溝13に、両側部を結合部材8に形成した溝9に嵌合するようにしたものであるから、甲第1号証に記載のものは、イ号物件における構成(a)、(g)、(h)及び(i)を開示していない。
甲第2号証には、「下端に張出し部を有する金属製の筒状胴部と、前記張出し部に嵌め込まれた底板と、蓋部に前記底板に達する脚部を連設してなる脚付きキャップからなり、前記筒状胴部に前記脚付きキャップを差し込んで成るたばこの包装模型」が記載されている(明細書第1頁第5?10行、及び、第1?4図参照)。
しかしながら、この包装模型は、筒状胴部1に本物と同様の図柄を設けた点においてイ号物件と共通点を有するに過ぎず、イ号物件における構成(a)ないし(i)のいずれの構成をも開示していない。
甲第3号証には、「商品見本60の上下2箇所をリング17で支持している断面コ字形のチャンネル材で作られた掛け止め具10」が記載されている(明細書第9頁第5?12行、及び、第2図参照)。
しかしながら、この掛け留め具10は、上下のリング17と断面コ字状のチャンネル材からなるものであり、イ号物件とは、その構造及び用途において全く異なっており、イ号物件における構成(a)ないし(i)のいずれの構成をも開示するものではない。
甲第4号証には、「収納ケース(1)内部に見本表示板(2)を曲面形状にして収納した販売機における商品表示装置」が記載されており(明細書第1頁第5?6行、及び、第2?5図参照)、また、この装置においては、突片(5)、L状金具(6)及び突出溝(7)等により、曲面形状の見本表示板(2)を縮径不能に係止させることが記載されている(明細書第2頁第18行?第3頁第15行)。
しかしながら、この装置は、見本表示板(2)を湾曲形状とするものではあるが、前面開口の収納ケース内において見本表示板を保持するものであり、イ号物件における、構成(a)ないし(f)、及び、(h)ないし(i)を開示するものではない。
甲第5号証には、「係止部材(3)の側面に係止部(4)を形成し、係止部材(3)間に設けた表示板収納部(6)に、係止部材(3)間の寸法と略同等の幅の表示板(5)を前面から着脱自在とし、係止部材(3)間の寸法より大なる寸法を有する透明板(7)を、表示板(5)の前面から、透明板(7)の両側端が係止部(4)に係止されるように装着して、透明板(7)の両側端により、表示板(5)両側端を押圧係止するとともに、透明板(7)を所定の彎曲状態として成る自動販売機の表示装置」が記載されている(明細書第3頁第5行?第3頁第8行、及び、第1?2図参照)。
しかしながら、この装置は、透明板(7)を湾曲形状とするものではあり、表示板(5)を彎曲状態とするものではないから、イ号物件における構成(a)ないし(i)のいずれの構成をも開示するものではない。
したがって、甲第1?第5号証に記載されたものは、少なくとも、イ号物件の構成(a)及び(c)を開示していないから、イ号物件が、甲第1ないし第5号証に記載された公知技術から当業者が出願時に容易に推考することができたものであるということはできない。
なお、請求人が提出した甲第6号証は、本件考案の出願後に頒布されたものである。

(ホ)上記要件(ほ)について
本件考案に係る実用新案登録出願手続においては、審査官の通知した拒絶理由に対して、平成6年10月31日付けで意見書及び手続補正書が提出され、実用新案登録請求の範囲が補正されているが、この補正は、「自動販売機用展示見本」を「自動販売機展示用缶見本」として、見本の種類を特定するとともに、上記本件考案の構成要件(C)及び(D)を追加し、併せて、両端板部間における見本表示板の装着態様を、「取り外し自在に装着」から「介在させてなる」と変更する内容のものであり、また、上記意見書による意見の内容も上記補正を前提とするものであるから、本件考案に係る実用新案登録出願手続において、イ号物件が、実用新案登録請求の範囲から意識的に除外されている等の特段の事情が存在するということはできない。

ii)以上のとおりであるから、本件実用新案登録請求の範囲に記載された構成要件中には、イ号物件と異なる部分が存在するが(上記5.(1)(ト)参照)、上述したように、上記均等5要件の全てを満たしているので、イ号物件の構成は、本件考案の構成要件と均等であり、イ号物件は、本件考案の技術的範囲に属するというべきである。

(3)公知技術の参酌について
(イ)請求人の、本件考案は、甲第1ないし第5号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものであり、また、本件考案は、先願である甲第6号証に係る考案と同一であるとの主張は、本件登録実用新案の無効を主張するものであって、判定の趣旨にそぐわない。したがって、本件登録実用新案には、無効理由が存在しており、その技術的範囲は、公知技術を参酌し、実施例に一致する対象に限られるべきであるとの請求人の主張は到底採用できない。そもそも、本件登録実用新案については無効理由を有しているとの主張は、無効審判を請求して主張すべきである。
(なお、甲第7?9号証によれば、甲第6号証に係る考案の出願については、進歩性欠如の理由で拒絶査定が確定していることが認められるが、甲第6号証に係る考案の出願について拒絶査定が確定しているからといって、ただちに、本件考案に無効理由が存在することにはならないので、無効審判を請求するにあたっては、十分留意されたい。)
(ロ)上記したとおり、本件登録実用新案には、無効理由が存在しており、その技術的範囲の判断は、無効理由が存在することを前提にすべきとする請求人の主張は採用できないが、技術的範囲を定めるに当たっては、実用新案登録請求の範囲に記載された用語を文字どおりに解釈すると公知技術にまで技術的範囲が及ぶようなときであって、この用語を限定的に解釈できれば公知技術を含まない場合には、この用語の意味を公知技術を含まないように限定的に解釈して技術的範囲を確定することが許されると解されるので、本件がこのような場合に該当するかどうかについても以下に検討する。
本件考案は、「見本表示板は弾性板材を展開方向の弾性をもたせた円筒状に湾曲させ、その上下両端縁部外面を前記両端板部の立上がり部の内面に当接させるとともに、該見本表示板の両側縁部を前記支柱部前面の見本表示係合突起に対し、前記円筒形を縮径不能に係止させて装着した」という構成要件(G)ないし(I)を有するものであり、これらの構成要件をいかに文字どおりに解釈したとしても、かかる装着構造を有しない、請求人の提示した甲第1?第5号証に記載された公知技術にまで、その技術的範囲が及ぶわけではない。
また、請求人の提示した甲第1?第5号証は、少なくとも、イ号物件の構成(a)及び(c)を開示していないことは上述したとおりであるから(上記5.(2)i)(ニ)参照)、イ号物件が、甲第1?第5号証に記載された公知技術であると認めることはできないし、他に、イ号物件が本件考案の出願時における公知技術であると認めるに足る証拠もない。
したがって、上記技術的範囲の確定手法に従ったとしても、本件考案の技術的範囲を限定解釈する余地はなく、本件考案の技術的範囲が、実施例に一致する対象に限られるべきであるとの請求人の主張は採用できない。

6.むすび
したがって、イ号物件は、本件考案の技術的範囲に属するものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2003-03-26 
出願番号 実願平2-82246 
審決分類 U 1 2・ 9- YB (G07F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 生越 由美  
特許庁審判長 梅田 幸秀
特許庁審判官 千壽 哲郎
平上 悦司
登録日 1996-03-22 
登録番号 実用新案登録第2110093号(U2110093) 
考案の名称 自動販売機展示用缶見本  
代理人 田中 雅雄  
代理人 小平 進  
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