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審決分類 審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 無効とする。(申立て全部成立) A62C
審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A62C
管理番号 1076562
審判番号 審判1999-35705  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-11-30 
確定日 2003-04-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第2149865号実用新案「消火設備の側壁型泡ヘッド」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2149865号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
実用新案登録第2149865号(平成4年11月9日出願、平成7年12月13日出願公告、平成10年7月10日設定登録。以下、「本件登録」という。)の請求項1に係る考案に対する無効審判事件の手続の経緯は、以下のとおりである。
審判請求 平成11年11月30日
答弁書 平成12年 3月28日
弁駁書 平成12年 6月16日
審尋(請求人宛) 平成12年 8月 1日
回答書(請求人) 平成12年 9月29日
上申書(被請求人)平成12年12月18日

2.本件考案
本件登録の請求項1に係る考案は、登録時の明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認められる。
「【請求項1】
消火液を噴射するノズル部を備えたヘッド本体に背壁面が垂設され、上記ノズル部より噴射された消火液が上記背壁面の下端部に設けられた板状のデフレクターの上面に衝突して上記背壁面の前方半周域に放射されるように構成された消火設備の側壁型泡ヘッドにおいて、
上記デフレクターに上記ノズル部より噴射された消火液を下方に向けて通過させる複数のスリットがそれらの先端を上記デフレクターの外周縁部に開放させる状態に形成されていると共に、このデフレクターの上面を上記ノズル部の直下位置から外端部に向けて上記ノズル部の軸線から遠ざかる位置ほど上位となるように、水平面に対して5?15°の傾斜角度をもつ上り傾斜面に形成していることを特徴とする消火設備の側壁型泡ヘッド。」

3.当事者の主張
(1)請求人の主張
請求人は、甲第1号証乃至甲第16号証を提出して、次の点を主張する。
(a)本件登録は、請求項1に係る考案が実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであるから、実用新案法第37条第1項第1号の規定により無効とされるべきものである。
(b)本件登録は、実用新案法第5条第5項第2号に規定する要件を満たしていない実用新案登録出願に対してされたものであるから、実用新案法第37条第1項第3号の規定により無効とされるべきものである。

(2)被請求人の主張
これに対して、被請求人は、乙第1号証及び乙第5号証を提出して、次のとおり反論する。
(a)請求項1に係る考案は、実用新案法第3条第2項に違反するものでない。
(b)実用新案登録請求の範囲の記載は、実用新案法第5条第5項第2号に規定する要件を満たしている。

4.当審の判断
まず第1に、請求人の前記3.(1)(b)の主張について検討する。
請求人は、実用新案登録請求の範囲に、「スクリーン」が構成要件として記載されていないから、実用新案登録請求の範囲には、実用新案登録を受けようとする考案の構成に欠くことができない事項が記載されていない旨主張する。
しかしながら、本件登録の登録時の明細書には、従来の技術として実開平4-83264号公報(甲第8号証参照)を挙げ、請求項1に係る考案が同公報に記載の技術を前提として創作されたものであることが示され、同公報には、スクリーンに相当する「発泡用網」を備えた側壁型泡ヘッドに係る考案が記載されていること、並びに、実施例としてスクリーンを備えた側壁型泡ヘッドが記載されていること、からみて、本件登録の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案の「側壁型泡ヘッド」がスクリーンを備えるものであることが明らかである。
したがって、実用新案登録を受けようとする考案が、実用新案登録請求の範囲に記載された事項に基づいて明確に把握できるから、実用新案登録請求の範囲の記載は、実用新案登録を受けようとする考案の構成に欠くことができない事項が記載されていると認められる。
よって、請求人の主張は採用できない。

次に、請求人の前記3.(1)(a)の主張について検討する。
(1)消火設備認定業務委員会の承認印の印影及び同委員会長の委員長印の印影のある甲第5号証によれば、請求人は、昭和50年10月に、型式HFH-75とするフォームヘッドについて、型式認定試験の結果、消火設備認定業務委員会より、認定番号「221T018」を取得しており、その承認にあたって提出された「フォームヘッドの明細書」、「フォームヘッド(界面)試験成績記録表」及び「フォームヘッド型式認定試験成績記録表」には、フォームヘッドの全高が94±5mm、最大径70±1.5mmであること、標準放射圧力2.5kg/cm^(2)、上限放射圧力5.5kg/cm^(2)、下限放射圧力2.5kg/cm^(2)での仕様であることが記載され、さらに、「名称フォームヘッド、型式HFH-75、図番F-051」には、「デフレクター断面詳細」に、デフレクター厚み2.8、直径39とするデフレクターがその周囲に所定の間隙によって形成された切起片を有すること、請求人が型式HFH-75とするフォームヘッドの製造者であることを示す銘板が「銘板詳細」に記載されていると認められる。
また、消火設備認定業務委員会の承認印の印影及び同委員会長の委員長印の印影のある甲第10号証によれば、請求人は、昭和51年7月に、昭和50年10月に認定番号を取得したHFH-75について、型式変更試験の結果、新たに、認定番号「221T018-1」を取得したこと、新たに認定番号を取得したHFH-75は、フォームヘッドの全高、最大径、デフレクターの厚み、直径、標準放射圧力、上限放射圧力、下限放射圧力、及びデフレクターが周囲に所定の間隙によって形成された切起片を有することに関して、昭和50年10月に認定番号を取得したHFH-75と一致し、銘板については、その変更承認にあたって提出された「名称フォームヘッド、型式HFH-75、図番F-051-1」の「銘板詳細」に、請求人が型式HFH-75とするフォームヘッドの製造者であり、製造年月として「1976」が記載されていると認められる。

(2)一方、熊本市西部環境工場の工場長が作成した甲第6号証によれば、同場において、型式HFH-75とする請求人製のフォームヘッドが昭和60年11月11日から設置、使用されていたこと、その構造明細として、請求人が作成し、同工場長印の印影がある「名称フォームヘッド、型式HFH-75、図番F-051-2」、及び同「名称フォームヘッド、型式HFH-75、図番F-05106-1」には、同工場に設置、使用されたフォームヘッドが全高92±3mm、最大径70±0.5mmであること、フォームヘッドが、厚みが2.8±0.2、直径38±0.1とするデフレクターの周囲に15°±30′毎に、間隙1.2±0.05の切起片を有することが記載されており、また、「名称フォームヘッド、型式HFH-75、図番F-051-2」には、「ヘッド全長94±5→92±3に変更」との記載があり、「名称フォームヘッド、型式HFH-75、図番F-05106-1」には、「2.8ヲ除ク寸法ハスベテ加工前ノ寸法ヲ示ス」との記載があると認められる。

(3)前記(1)、(2)からみて、請求人が昭和50年10月に認定番号を取得したHFH-75と、熊本県西部環境工場に設置、使用されていたフォームヘッドとは、フォームヘッドの型式、その全高及び最大径の寸法、デフレクターの厚み、直径の寸法がほぼ等しく、また、デフレクターの周囲に所定の間隙によって形成された切起片を有することで一致しているから、請求人が昭和50年10月に認定番号を取得したHFH-75は、遅くとも、昭和60年11月11日までに製造され、熊本県西部環境工場に販売されていたと認められる。
そして、このことは、甲第4号証及び甲第7号証において写真で示されたフォームヘッドに、請求人を型式HFH-75・認定番号221T018-1・製造年月1976.7とするフォームヘッドの製造者とする銘板が貼布され、同工場内に設置されていた状況と符合するから、甲第4号証及び甲第7号証の写真で示されたフォームヘッドは、請求人が昭和50年10月に認定番号を取得したHFH-75のフォームヘッドであると認められる。

(4)また、昭和50年10月に認定番号を取得したHFH-75に関して、甲第5号証、甲第6号証、及び甲第10号証、並びに、同HFH-75の切起片の形状について、請求人の「水平面に対して約10°の傾斜角度をもつ上り傾斜面に形成」(審判請求書第4頁25?26行)するとの主張と、同主張に対して被請求人が特に反論していないことからみて、同HFH-75に係る考案は、次のとおりのものと認められる。

消火液を噴射する胴体下端部及びコーンで構成される間隙を備えた胴体にコーンが垂設され、上記胴体下端部及びコーンで構成される間隙より噴射された消火液が上記コーンの下端部に設けられた板状のデフレクターの上面に衝突して上記コーンの全周域に放射されるように構成された消火設備のフォームヘッドにおいて、
上記デフレクターに上記胴体下端部及びコーンで構成される間隙より噴射された消火液を下方に向けて通過させる複数のスリットがそれらの先端を上記デフレクターの外周縁部に開放させる状態に形成されていると共に、このデフレクターの上面を上記胴体下端部及びコーンで構成される間隙の直下位置から外端部に向けて上記胴体下端部及びコーンで構成される間隙の軸線から遠ざかる位置ほど上位となるように、水平面に対して約10°の傾斜角度をもつ上り傾斜面に形成している消火設備のフォームヘッド。

(5)そして、前記(1)乃至(4)を総合してみると、昭和50年10月に認定番号を取得したHFH-75に係る前記(4)の考案は、本件登録の出願前の昭和60年11月11日までに日本国内において公然実施をされた考案であると認められる。

(6)また、本件登録の出願前の平成4年7月20日に頒布された実願平2-128261号(実開平4-83264号)のマイクロフィルム(甲第8号証)には、「消火用泡ヘッド」(考案の名称)に関して、図面とともに、次の記載がある。
(a)「この考案はかかる問題点を解消するためになされたもので、取り付け位置よりも片側の半円形状の放射を可能にすることにより消火対象物に対して十分な消火効果が得られて合理的な消火が行える消火用泡ヘッドを得ることを目的とする」(第3頁10?14行)
(b)「上記目的を達成するために、この考案に係る消火用泡ヘッドは、ヘッド本体のほぼ中心付近で縦割りした片側の半円形状にのみ泡放射するようにしたものである」(第3頁16?19行)
(c)「この考案においては、ヘッド本体のノズル孔から放出された消火液は隔板によって片側にのみ分散されるので、発泡用網によって液泡となって半円形状に放射される」(第4頁1?4行)
(d)実施例として、「(13)はヘッド本体(1)の下部にビス(14)により取り付けたL字状の隔板で、ヘッド本体(1)のほぼ中心付近に垂下する垂下板部(13a)を有している。(15)は隔板(13)の垂下板部(13a)に一体的に形成したデフレクタ取付板、(16)は半円形状のデフレクタで、半円錐状のナット(17)とビス(18)とによってデフレクタ取付板(15)に取り付けられている。
消火液は液通路(2A)を通過中、ガイド(12)により攪拌されると共に緩い回転流となってノズル孔(3a)から放出される。放出された消火液はナット(17)の半円錐形状の作用と、隔板(13)の垂下板部(13a)の作用とによって片側の半円形状範囲内においてデフレクタ(16)に衝突し、空気吸込口(5)からの空気と混合してデフレクタ(16)によって片側に分散され、発泡用網(6)によって第3図に示すように半円形状の液泡となって放射される。」(第4頁14行?第5頁12行)

そして、前記(a)乃至(d)の記載からみて、甲第8号証には、次の考案が記載されていると認められる。

消火液を噴射するノズル孔を備えたヘッド本体に隔板の垂下板部が垂設され、上記ノズル孔より噴射された消火液が上記隔板の垂下板部の下端部に設けられた板状のデフレクターの上面に衝突して上記隔板の垂下板部の前方半周域に放射されるように構成された消火設備の側壁型泡ヘッド。

(6)対比・判断
そこで、請求項1に係る考案(前者)と昭和50年10月に認定番号を取得したHFH-75に係る前記(4)の考案(後者)とを対比すると、後者の「フォームヘッド」と前者の「側壁型泡ヘッド」とは、泡ヘッドであることで共通し、後者の「胴体」は前者の「ヘッド本体」に相当し、後者の「胴体下端部及びコーンで構成される間隙」は、ノズル部といえるから、両者は、

消火液を噴射するノズル部を備えたヘッド本体と、上記ノズル部より噴射された消火液が板状のデフレクターの上面に衝突して放射されるように構成された消火設備の泡ヘッドにおいて、
上記デフレクターに上記ノズル部より噴射された消火液を下方に向けて通過させる複数のスリットがそれらの先端を上記デフレクターの外周縁部に開放させる状態に形成されていると共に、このデフレクターの上面を上記ノズル部の直下位置から外端部に向けて上記ノズル部の軸線から遠ざかる位置ほど上位となるように、水平面に対して所定の傾斜角度をもつ上り傾斜面に形成している消火設備の泡ヘッド、

で一致し、次の点で相違する。

【相違点1】
前者は、側壁型泡ヘッドであって、ヘッド本体に垂設された背壁面の下端部に設けられた板状のデフレクターによって、背壁面の前方半周域に泡が放射されるのに対して、後者の泡ヘッドが、ヘッド本体に垂設されたコーンの下端部に設けられた板状のデフレクターによって、コーンの全周域に泡が放射される点。

【相違点2】
前者のデフレクターの上面は、水平面に対して5?15°の傾斜角度をもつ上り傾斜面として形成されているのに対して、後者が、水平面に対して約10°の傾斜角度をもつ上り傾斜面として形成されている点。

そこで、相違点について検討する。

【相違点1】
甲第8号証に記載のものの「ノズル孔」は前者の「ノズル部」に相当し、甲第8号証に記載のものの「隔板の垂下板部」は前者の「背壁面」に相当するから、甲第8号証には、側壁型泡ヘッドであって、ヘッド本体に垂設された背壁面の下端部に設けられた板状のデフレクターによって、背壁面の前方半周域に放射されることが記載されていると認められる。
そして、後者と甲第8号証に記載のものとは、消火液を噴射するノズル部より噴射された消火液が板状のデフレクターの上面に衝突して放射されるように構成された消火設備の泡ヘッドであることで技術的に共通するものである。また、後者と甲第8号証に記載のものとを組み合わし得ないとする格別の事情は認められない。
そうしてみると、後者に甲第8号証に記載のものを適用し、後者において、「側壁型泡ヘッドであって、ヘッド本体に垂設された背壁面の下端部に設けられた板状のデフレクターによって、背壁面の前方半周域に泡が放射される」とすることは、当業者がきわめて容易に想到できたものと認められる。

【相違点2】
後者の「水平面に対して約10°の傾斜角度をもつ上り傾斜面として形成されている」という構成は、ノズル部より垂直下に噴射した後者の消化液が、板状のデフレクターに衝突し方向を変えて放射されることに照らせば、その構成自体、当然に、消火泡がデフレクターの位置よりも上方に向かって飛び出し、その後、放物線を描いて落下するという作用を有するものと認められる。
また、前者の「5?15°」について、格別の臨界的効果が存在することを示す証拠は認められない。
そうしてみると、前者の「水平面に対して5?15°の傾斜角度をもつ」ことと、後者の「水平面に対して約10°の傾斜角度をもつ」こととに格別の差異があるとは認められない。

被請求人は、請求人が昭和50年10月に認定番号を取得したHFH-75のデフレクターは、コーンと胴体の間に設けられたコーンピンによる消化液の分流による放射むらを解消し、均一に散布できるためのものである旨(答弁書第8頁13?28行)主張するが、甲第5号証、甲第10号証、乙第2号証によれば、3本の直径1.2mmのコーンピンが120°間隔に配置されることに対し、その仕様の「標準放射圧力及び放射量」が「2.5kg/cm^(2) 75l/min」であることからして、コーンピンが放射むらを生じるほど影響するとは認められない。

したがって、前者は、後者及び甲第8号証に記載のものに基づいて、当業者がきわめて容易に想到することができたものと認められる。

(7)むすび
以上のとおりであるから、本件登録の請求項1に係る考案は、その出願前に日本国内において公然実施をされた考案、及びその出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、本件登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第37条第1項第1号の規定に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、同法第41条で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-12-20 
結審通知日 2001-01-05 
審決日 2001-01-18 
出願番号 実願平4-77074 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (A62C)
U 1 112・ 534- Z (A62C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山田 忠夫住田 秀弘  
特許庁審判長 滝本 静雄
特許庁審判官 冨岡 和人
大久保 好二
登録日 1998-07-10 
登録番号 実用新案登録第2149865号(U2149865) 
考案の名称 消火設備の側壁型泡ヘッド  
代理人 和田 徹  
代理人 鈴江 孝一  
代理人 上原 理子  
代理人 鈴江 正二  
代理人 清原 義博  
代理人 上原 健嗣  
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