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審決分類 審判 全部申し立て   B42D
管理番号 1076566
異議申立番号 異議2000-70169  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2003-06-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-01-05 
確定日 2003-03-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2597262号「重ね合わせ用シート」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2597262号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 1.手続きの経緯
登録第2597262号実用新案の請求項1に係る考案についての出願は、平成2年12月31日に実用新案登録出願され、平成11年4月30日にその実用新案権の設定登録がなされ、その後、内山 章子 及び 芝 町子 より実用新案登録異議の申立がなされ、取り消しの理由が通知され、その指定期間内である平成12年12月28日に訂正請求がなされ、さらに取り消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年2月5日に訂正請求がなされ、さらに取り消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年8月16日に先の2つの訂正請求が取り下げられるとともに新たな訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
実用新案登録明細書の【実用新案登録請求の範囲】の欄の
「印刷あるいは印字が可能で、かつ、通常では接着せず、一定条件が付与されると接着可能となる、非剥離性接着基剤とこの接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤とからなる接着剤を設ける一方、この接着剤を設けた状態における剥離強度を」を、
「非剥離性接着基剤中にこの接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤を添加することで印刷あるいは印字が可能で、かつ、通常では接着せず、圧力が付与されると接着可能となる感圧性の接着剤が塗布されてなり、塗布状態における感圧性の接着剤表面の平滑度が20?120秒(JISP-8119準拠)、感圧性の接着剤塗布部分の透気度が100秒以下(JISP-8117準拠)であり、当該微粒状充てん剤の配合割合を、感圧性の接着剤を設けた状態における重ね合わせ面の剥離強度を」と訂正する。
イ.訂正事項b
実用新案登録明細書の【0004】の
「印刷あるいは印字が可能であり、かつ、通常では接着せず、一定条件が付与されると接着可能となる、非剥離性接着基剤とこの接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤とからなる接着剤を設ける一方、この接着剤を設けた状態における剥離強度を、」を、
「非剥離性接着基剤とこの接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤を添加することで印刷あるいは印字が可能であり、かつ、通常では接着せず、圧力が付与されると接着可能となる感圧性の接着剤が塗布されてなり、塗布状態における感圧性の接着剤表面の平滑度が20?120秒(JISP-8119準拠)、感圧性の接着剤塗布部分の透気度が100秒以下(JISP-8117準拠)であり、当該微粒状充てん剤の配合割合を、感圧性の接着剤を設けた状態における重ね合わせ面の剥離強度を、」と訂正する。
ウ.訂正事項c
実用新案登録明細書の【0009】の
「なお、接着剤基剤としては、感圧性のほか、従来用いられている通常の感熱性あるいは再湿性の接着剤を用いることもでき、感熱性の接着基剤としては、特に酢酸ビニル系重合体が好適であり、また、再湿性の接著基剤としては、ポリビニルアルコールやポリエチレンオキシドなどが好適である。」を、削除する。
エ.訂正事項d
実用新案登録明細書の【0011】の
「感圧性、感熱性、再湿性のいずれの接着剤基剤に対しても使用可能であるが、感圧性及び再湿性の接着剤基剤に対しては、」を、
「感圧性の接着剤基剤に対して、」と訂正する。
オ.訂正事項e
実用新案登録明細書の【0011】の「感熱性の接着剤基剤に対しては、接着剤基剤100重量部に対して微粒状充てん剤を45?100重量部、好ましくは55?90重量部、最も好ましくは60?80重量部の割合で配合することが望ましい。」を、削除する。
カ.訂正事項f
実用新案登録明細書の【0019】の
「通常の感圧性、感熱性、再湿性の非剥離性接着剤」を、
「通常の感圧性の非剥離性接着剤」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び実用新案登録請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、請求項1において、重ね合わせ用シートに塗布する「接着剤」を、「感圧性接着剤」に限定するとともに、接着力の発現を「一定条件が付与される」ことから「圧力が付与される」ことに限定し、接着剤を塗布した重ね合わせ用シートの、表面の平滑度及び透気度を特定するとともに、接着剤を塗布した重ね合わせ用シートの「感圧接着性」及び「軽圧後の剥離強度試験の条件」と感圧性の接着剤の「成分とその配合割合」の関係付けを付加したものであって、これらは、本件実用新案登録明細書に記載されていた事項であり、また、剥離強度の試験対象について、接着剤を塗布した重ね合わせ用シートの「重ね合わせ面」に特定することについては、本件実用新案登録明細書に直接の記載はないが、そもそも、もとの実用新案登録請求の範囲の記載において、重ね合わせ用シートの接着剤の塗布対象面が重ね合わせ用シートの「重ね合わせ面」であり、剥離試験の対象面が重ね合わせ用シートの接着剤の塗布面に相違ないことからすれば、剥離試験の対象面は自ずと重ね合わせ用シートの接着剤の塗布面である、重ね合わせ用シートの「重ね合わせ面」となるのであって、その点の意味の明確化を図ったものであるから、上記訂正事項aは、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするとともに、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当し、上記訂正事項b?訂正事項fは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)むすび
上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、この訂正を認める。
3.実用新案登録異議の申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
A.実用新案登録異議申立人 内山 章子 は、
甲第1号証:実願平2-405691号(実開平4-94685号)のマイクロフイルム
甲第2号証:JIS K 6854
甲第3号証:特開昭64-85794号公報
甲第4号証:特開昭64-85795号公報
甲第5号証:実願昭63-42147号(実開平1-145472号)のマイクロフイルム
甲第6号証:実願昭63-42149号(実開平1-145474号)のマイクロフイルム
甲第7号証:実願昭63-42150号(実開平1-145475号)のマイクロフイルム
甲第8号証:特開平2-151493号公報
甲第9号証:特開平3-132397号公報
を提出して、
ア.登録第2597262号実用新案に係る実用新案登録出願は、平成10年12月22日にした明細書の補正がその要旨を変更するものであるから、実用新案法第9条の規定により準用する特許法第40条の規定により、その実用新案登録出願は、その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなされるものである。そうすると、登録第2597262号実用新案に係る実用新案登録出願の請求項1に係る考案は、甲第1号証に記載された考案であり、実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録をすることができないものであって、
イ.登録第2597262号実用新案に係る実用新案登録出願の請求項1に係る考案は、甲第3号証又は甲第4号証に記載された考案であり、実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録をすることができないものであって、
ウ.登録第2597262号実用新案に係る実用新案登録出願の請求項1に係る考案は、甲第3号証?甲第8号証に記載された考案に基いてその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録をすることができないものであって、
エ.登録第2597262号実用新案に係る実用新案登録出願の請求項1に係る考案は、甲第9号証に係る特許出願の明細書又は図面に記載された発明と同一であり、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録をすることができないものであって、
オ.登録第2597262号実用新案に係る実用新案登録出願は、明細書の記載が不備であり、実用新案法第5条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていないので、
その実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものであるから、実用新案登録を取り消すべき旨主張している。
B.実用新案登録異議申立人 芝 町子 は、
甲第1号証:特開平3-266697号公報
を提出して、
ア.登録第2597262号実用新案に係る実用新案登録出願の請求項1に係る考案は、甲第1号証に係る特許出願の明細書又は図面に記載された発明と同一であり、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録をすることができないものであって、
イ.登録第2597262号実用新案に係る実用新案登録出願は、明細書の記載が不備であり、実用新案法第5条第4項に規定する要件を満たしていないので、
その実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものであるから、実用新案登録を取り消すべき旨主張している。
(2)請求項1に係る考案
本件登録第2597262号実用新案の請求項1に係る考案(以下、本件考案という。)は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】重ね合わせ面を剥離可能に接着することにより重ね合わせシートとする重ね合わせ用シートであって、重ね合わせ面の所定部分に、非剥離性接着基剤中にこの接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤を添加することで印刷あるいは印字が可能で、かつ、通常では接着せず、圧力が付与されると接着可能となる感圧性の接着剤が塗布されてなり、塗布状態における感圧性の接着剤表面の平滑度が20?120秒(JISP-8119準拠)、感圧性の接着剤塗布部分の透気度が100秒以下(JISP-8117準拠)であり、当該微粒状充てん剤の配合割合を、感圧性の接着剤を設けた状態における重ね合わせ面の剥離強度をlkg/cm^(2)の荷重をかけ、常温で30分放置後に25mm幅でl0g以下に設定した重ね合わせ用シート。」
(3)刊行物1?刊行物5に記載の事項
A.当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物1(特開平2-289393号公報)には、以下の事項が記載されている。
A-ア.「(1)シートを重ねて加圧することにより接合出来、且つ接合面を剥離するとこによって再び接合面上の情報を読むことが出来るように設計された再剥離性の感圧接着性葉書において、接合部のエッジ部分の全域或いは一部分が非エッジ部分より大きな剥離力を有することを特徴とする再剥離性の感圧接着性葉書。」(請求項1。)
A-イ.「(2)接合部のエッジ部分の全域或いは一部分が非剥離性である請求項(1)記載の再剥離性の感圧接着性葉書。」(請求項2。)
A-ウ.「〔課題を解決する為の手段〕
本発明は、シートを重ねて加圧することにより接合出来、且つ接合面を剥離することによって再び接合面上の情報を読むことが出来るように設計された再剥離性の感圧接着性葉書において、接合部のエッジ部分の全域或いは一部分が非エッジ部分より大きな剥離力を有することを特徴とする再剥離性の感圧接着性葉書である。
〔作用〕
本発明は、再剥離性の感圧接着性葉書を設計するにあたって、接合部のエッジ部分の全域或いは-部分を非エッジ部分より強く接着させることによって意図せぬ時の剥離の危険性を抑え、しかも必要とする時に安定した剥離が得られるようにしたものである。中でも意図せぬ時の剥離の危険性が全く無い点で接合部のエッジ部分の全域或いは一部分を非剥離性に設定するのが最も好ましい。」(第2頁左上欄第20?右上欄第16行。)
A-エ.「本発明のシートとしては、例えば第1図に示すものが挙げられる。これは、接着剤含有層に情報の印刷(必要に応じてその裏面にも)を施した後、その上から接着抑制インキをエッジ部を除いた部分に印刷し、更にミシン目を図の如く入れたもので、中央のミシン目を線対称の軸として左右を対向させた後、加圧口-ル等により接合して葉書となる。(尚、情報の印刷は接着抑制インキの印刷後も必要に応じて行うことが出来る。)第2図に示すものは、第1図に示すシートの矢印側から見た側面図である。第3図に示すものは、第1図に示すシートを接合させて得られる葉書を示したものである。この形態では接合されていて見ることが出来ない内部の情報は、ミシン目部分を切り取り、接合している互いのシートを剥離することによって見ることが出来る。」(第2頁左下欄第4?19行。)
A-オ.「本発明の感圧接着性シートの接着剤含有層の形成に用いられる接着剤としては、例えばエチレン-酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、合成ゴム系樹脂、天然ゴム系樹脂等が挙げらる。」(第3頁左上欄第3?7行。)
A-カ.「接着剤含有層には、通常顔料が添加され、具体的にはシリカ、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、澱粉粒子等が例示出来る。これらの顔料は、通常、接着剤に対し10?500重量%範囲で使用され、好ましくは30?300重量部である。」(第3頁左上欄第11?17行。)
A-キ.「本発明における感圧接着性シートの支持体としては、例えば上質紙、合成紙、コート紙、ラミネート紙、金属蒸着紙等が使用出来る。
接着剤組成物の塗布量は、通常4?20g/m^(2)であり、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、スクリーン印刷、フレキソ印刷等従来公知の塗布、印刷方法により設けることができる。」(第3頁右上欄第8?15行。)
A-ク.「情報の印刷は、シート表及び/又は裏、又接着抑制物質の塗布前及び/又は後に行われるが、印刷方式としては凸版、オフセット、グラビア、フレキソ、スクリーン、電子写真法、熱転写法等が用いられる。
塗工、印刷の完了したシートには、更にミシン目加工が施され後、必要によっては更に情報を印刷した後、塗布面同士を対向させて40?500kg/cm^(2)の強圧で加圧され、葉書が形成される。
尚、本発明に使用されるシートは、最も一般的には接着抑制物質を塗布する前は巻取りとして、又、塗布した後Z折り加工紙として取扱われ、加圧シーラー処理後にミシン目から切り離され葉書として使用される。」(第4頁左上欄第10?右上欄第3行。)
B.当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物2(特開昭59-35979号公報)には、以下の事項が記載されている。
B-ア.「本発明は、インクジェット記録法に用いられる被記録材(記録用紙)に関し、特にインクの吸収性が高く、かつインクの発色性の優れた被記録材に関する。」(第1頁左下欄第11?14行。)
B-イ.「すなわち本発明は、支持体の表面上に、インク吸収層を設けた被記録材において、前記インク吸収層のベック平滑度が、20秒以上 120秒以下の範囲内であることを特徴とするインクジェット記録用被記録材である。」(第2頁右上欄第8?12行。)
B-ウ.「本発明の被記録材の支持体としては、紙を使用するのが適当であるが、布、樹脂フィルムあるいは合成紙等も使用することができる。」(第2頁右下欄第9?11行。)
B-エ.「一方、本発明の被記録材のインク吸収層は、基本的には充填材粒子と結着材とから構成される。該充填材粒子としては、例えばシリカ、クレー、タルク、ケイソウ土、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、リトポン、アルミナ、ゼオライト等の白色系不定形機顔料;イオン交換樹脂粉末、プラスチックピグメント等の有機質粉末が挙げられ、これらの1種以上が用いられる。」(第2頁右下欄第12?第3頁左上欄第1行。)
B-オ.「インク吸収層の表面に充填剤粒子の不定形形状が瓦礫を散在させたように現にわれ、インク吸収層が特定のベック平滑度を有するには、使用される充填材粒子の粒径が1乃至30μm、より好ましくは3乃至20μm程度のものであることが望ましい。」(第3頁左上欄第1?6行。)
B-カ.「他方、該結着剤としては、デンプン、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ、カルボキシメチルセル口ース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子;合成ゴムラテックス等の合成樹脂ラテックス、ポリビニルブチラール、ポリビニルクロライド、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルホルマール、メラミン樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂、ポリウレタン、アルキッド樹脂等の有機溶剤可溶性樹脂が挙げられる。また、インク吸収層には、分散剤、蛍光染料、PH調整剤、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、界面活性剤等の各種添加剤を混在させることもできる。」(第3頁左上欄第14?右上欄第8行。)
B-キ.「塗工液中の充填材粒子と結着剤の混合比としては、一般に充填材粒子100重量部に対して結着剤が10乃至100重量部が適当であり、充填材粒子の平均粒径が大きいときには、できるだけ結着剤の量を少なく用いることが好結果をもたらす。」(第3頁右上欄第14?19行。)
B-ク.「このようにして支持体上に特定のベック平滑度を有するインク吸収層を設けてなる本発明の被記録材は、インク吸収性が極めて高く、異色の記録液が短時間内に同一箇所に重複した場合にも記録液の流れ出しや滲み出し現象がなく、高解像度の鮮明な画像を与えるものである。しかも発色性においても優れた特性を発揮し、フルカラーの記録を行う場合のインクジェット記録用の被記録材として好適なものである。」(第3頁左下欄第4?12行。)
B-ケ.「ベック平滑度は、王研式透気度平滑度試験機(旭精工(株)製)を用いて測定した。」(第4頁左上欄第14、15行。)
C.当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物3(特開平1-292354号公報)には以下の事項が記載されている。
C-ア.「本発明は、電子写真用転写紙に関するものであり、特に印刷並の高画質を再現する電子写真方式のモノクロおよびカラー複写機で使用したり、事前に美麗印刷やフォーム印刷を行った後、電子写真方式のプリンターで使用される転写紙に関するものである。」(第1頁左下欄第12?17行。)
C-イ.「電子写真方式のプリンターにおいても、赤黒の2色プリンターの開発や事前に多色カラー印刷やカラーフォーム印刷等の美麗印刷を行った用紙にコンピューターからのデータをプリントアウトし、ダイレクトメール用の葉書やパンフレットを作成する等の高付加価値化の取り組みが行われている。」(第1頁右下欄第10?15行。)
C-ウ.「本発明の目的は、高画質の複写品質を再現し、事前印刷適性が良好であり、」(第2頁左上欄第8、9行。)
C-エ.「本発明は、ヤンキーマシンで抄紙した原紙を使用し、その少くとも片面に塗工層を設け、その表面のJIS P8119により測定したべツク平滑度が20?2000秒であるようにしたことを特徴とする電子写真用転写紙に関するものである。」(第2頁右上欄第13?18行。)
C-オ.「本発明においては、ヤンキーマシンで抄紙した原紙の少くとも片面に塗工層を設けた後、カレンダー処理などにより、JIS P8119により測定した塗工層表面のベック平滑度が20?2000秒となるよう処理をする。カレンダー処理などを行うことにより、複写機やプリンターでの転写紙の走行性を良好とし、かつ高画質記録を可能とし、事前印刷効果を向上させることができる。この場合、塗工層のベック平滑度が20秒未満では塗工面のザラツキ感が強く、塗工後の乾燥シワがあるため、記録画質を低下させたり、事前印刷効果を十分に発揮されない。また、紙の表面と裏面間の静摩擦係数が大きいためプリンター内での紙の走行性が不良となる。一方、塗工層のベック平滑度が2000秒を越すと、紙間の密着性が強くなりすぎ、紙間の静摩擦係数が高くなり、やはり走行性が不良となる。」(第3頁左上欄第11?右上欄第7行。)
D.当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物4(特開昭57-105374号公報)には、以下の事項が記載されている。
D-ア.「従来、高速プリンタにて情報を印字する際、連続プリントフォームを安定した状態で移送する必要から、移送途中において連続プリントフォームを一定の空気の吸引と共に引き付け暴れを防ぎながら移送したり、ゼログラフィ方式などのノンインパクトプリンタの如くトナーを付着させた後、このトナーを定着させる際に、連続プリントフォームを予熱盤に接触させる必要から連続プリントフォームを一定の空気の吸引と共に引き付け、予熱盤への接触を行ないながら移送していた。」(第1頁左下欄第14?右下欄第3行。)
D-イ.「しかしながら、上記移送方法を採用している高速プリンタにおいて、通常の上質紙を用いた連続プリントフォームの使用においては何ら問題が生じないものの、近年の事務システムの改善により用いられるようになった各種の材質のシートからなる連続プリントフォームを用いる際には、スムーズにプリントアウトが行なえず、連続プリントフォームの材質に限定を受けていた。」(第1頁右下欄第4?11行。)
D-ウ.「特に、第1図(イ)の如く用紙10の裏面に再湿性接着剤1が塗布されている接着紙11や、第1図(口)の如く用紙10の表裏面にコート剤2が塗布されているアート紙12や、第1図(ハ)の如く用紙10の裏面に粘着剤3が塗布され、さらにその裏面に剥離紙4が重ね合わされてなるタック紙13などの材質のシートによる連続プリントフォームは、前記プリンタのフィード途中の吸引装置に過度に吸引され、移送方向に対する抵抗が増し、スムーズに移送されないという問題を生ずるだけでなく、余分な接触により塗布剤などが、擦れ落ち、プリンタ内を汚しプリントに支障を来すなどの不都合があった。」(第1頁右下欄第12?第2頁左上欄第4行。)
D-エ.「そこでこの発明においては、上記接着紙、アート紙、タック紙などの紙質の透気性が一般の上質紙に比べて極めて悪く、これによりフィード途中の吸引装置に過度に吸引されることに着目し、それら用紙の本来の特徴を損うことなく、それら用紙の透気性を良くし、上記プリンタにおけるフィード適性およびプリント適性に合致したところの連続プリントフォームを提供するもので、次にこの発明の実施例に基づいて説明を行なう。」(第2頁左上欄第5?13行。)
D-オ.「この発明の連続プリントフォームFは、上記接着紙、アート紙、タック紙などの透気性の悪いシートSを、第2図に示す如く、シートSの製造の最終段階において、またはシートSを製造、加工した後の所望の段階において、シートSに微小孔を施すコロナ放電Cの処理を行ない、第3図に示す如く面的に多数の微小孔5を設けたシートS′からなるものである。」(第2頁左上欄第14?右上欄第1行。)
D-カ.「また、シートSの材質により1平方センチメートル当り、50?1,500個およびそれ以上の微小孔5を設けるよう種々コロナ放電処理を行なった結果、目視可能な孔はわずかながら JIS P-8117 に準ずる透気度測定器において、100cc の空気の透気が5,000秒以上要した接着紙、タック紙および500秒以上要したアート紙、用紙密度の高い厚紙、カード紙などを300秒以下、200秒以下、100秒以下、50秒以下とすることができた。」(第2頁右上欄第13?左下欄第2行。)
D-キ.「上記の如く、面的に多数の微小孔を有するシートSからなる連続プリントフォ-ムを、前記プリンタにてテストを行なった結果、透気が300秒前後のものについては、従来のシートによる連続プリントフォームのフィードより非常に改善されたものの、プリンタにより多少の不安定さがあり、透気度が200秒以下のものについては、大方のプリンタにおいてフィードが良好となり、透気度が100秒以下のものについては、従来の透気度が100秒以下の通常の上質紙と同様極めてフィードが良好となりプリント状態も良好となった。」(第2頁左下欄第3?13行。)
E.当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物5(特開昭64-85794号公報)(実用新案登録異議申立人 内山 章子 提出の甲第3号証)には、以下の事項が記載されている。
E-ア.「(産業上の利用分野)
この発明は情報がプリントされる連続または単片のプリント用シートの所定部、所定面にあらかじめ感圧接着剤を塗布しておき、そのプリント用シートの使用時、例えは封筒用のプリント用シートにおいては封緘用、プリント後の綴じ合わせ用のプリント用シートにおいては綴じ合わせ用等各種の重ね合わせ接着の使用に有効な感圧接着用プリント用シートに関するものである。
(従来技術およびその問題点)
従来、通常の状態では接着することがなく、接着剤の接着条件を付与することにより接着するところのプリント用シートに用いられている接着剤として、感圧型接着剤(接着条件120?150kg/cm^(2))、感熱型接着剤(接着条件120℃前後)、再湿型接着剤等の接着剤が広く知られており、特にプリント用シートには感熱型の接着剤がブロッキングを起こしにくいということから最も多く使用されているとは言え、感熱型の接着剤においても帳票保管時あるいは運搬時の温度条件、荷重等によりブロッキングが発生しているもので、このため接着剤塗布パターンに工夫を凝らすことも試みられているが完全にブロッキング現象を防止するにはいたっていない。」(第1頁左下欄第12?右下欄第15行。)
E-イ.「(発明の解決課題)
この発明は上記欠点を除去した非ブロッキング性、耐熱性、耐摩耗性に優れ電子式プリンタの種々の条件にも適合した良好な感圧接着用プリント用シートを提供するものである。」(第2頁左上欄第4?8行。)
E-ウ.「(作用)
感圧接着剤に、耐摩耗性が高く1?20μの微細粒子を添加することにより接着剤層の表面を粒子の突出により凹凸状に形成するので加熱定着ドラムに接着剤が密接することがないのでプリント用シートの保管時あるいは運搬時における接着剤の表面と対接するシートの表面あるいは接着剤と接着剤の表面同志が互いに密接することがないので非ブロッキング性が良好となり接着剤の接着性も良好に保つことができるものである。」(第2頁左上欄第17?右上欄第6行。)
E-エ.「上記の如く調整した各感圧接着剤をプリント用シートに3?15μ程度に均-に塗布し次の試験を行った。
30℃?70℃の各温度の恒温槽中で荷重300g/cm^(2)l時間放置後、引っ張り試験機で90°剥離を行った結果、全て剥離強度2g以下であり、接着剤によるブロッキング現象は全くみられなかった。」(第2頁右下欄第4?11行。)
E-オ.「プリント用シートの保管時、運搬時におけるブロッキング現象が全く発生することなく、プリント時におけるプリンタへのプリント用シートの移送がスムースに確実に行え、」(第3頁左上欄第13?17行。)
(4)対比・判断
「A-ア.」?「A-ク.」の記載から判断して、刊行物1には「シートを重ねて加圧することにより接合出来、且つ接合面を剥離することによって再び接合面上の情報を読むことが出来るように設計された再剥離性の感圧接着シートであって、接着剤に顔料を添加した接着剤組成物を支持体に塗布して接着剤含有層を形成してなり、接着剤含有層に情報の印刷を施した後、塗布面同士を対向させて強圧で加圧接合して葉書となるシート。」が記載されている。
そして、
刊行物1の第1図?第3図に記載されるシートは、接合させて得た葉書のエッジ部分のミシン目から切り取り、接合している互いのシートを剥離するものであるから、そのエッジ部分は非剥離性のものとして設計されていると考えられる。(摘記A-エ.及び第1?第3図参照。)しかし、請求項1の「大きな剥離力を有する」が、請求項2の「非剥離性」と対照され、摘記のA-ウ.で「大きな剥離力を有する」及び「強く接着させる」が、「中でも」以下の「非剥離性」と対照されていることから考えて、「大きな剥離力を有する」及び「強く接着させる」は、「非剥離性」でない、すなわち剥離可能な、ものを含むものである。したがって、刊行物1に記載されるシートは文字通り再剥離性の感圧接着シートである。
刊行物1に記載されるシートは、その接着剤含有層に情報の印刷を施すものであるから、接着剤含有層は印刷可能なものである。(摘記A-エ.参照。)
刊行物1に記載される接着剤含有層を備えたシートは、巻取りで取扱われ、塗布面同士を対向させて40?500kg/cm^(2)の強圧で加圧して葉書を作るものであるから、通常では接着せず、圧力が付与されると接着可能となるものである。(摘記A-ク.参照。)
刊行物1に記載されるシートの接着剤含有層は、接着剤と顔料とからなり、支持体上に塗布されたものである。この場合、接着剤は非剥離性であり、顔料は接着剤に対して非親和性を示し微粒状といえる。(摘記A-オ.、A-カ.、及びA-キ.参照。)
以上のことから、
本件考案と、刊行物1に記載のものを対比すると、刊行物1に記載のものの「シート(=感圧接着性シート)」、「接着剤」、「顔料」、及び「接着剤含有層(=接着剤組成物)」はそれぞれ本件考案の「重ね合わせ用シート」、「非剥離性接着基剤」、「微粒状充てん剤」及び「接着剤」に相当するから、本件考案と、刊行物1に記載のものとは、
「重ね合わせ面を剥離可能に接着することにより重ね合わせシートとする重ね合わせ用シートであって、重ね合わせ面の所定部分に、印刷あるいは印字が可能で、かつ、通常では接着せず、圧力が付与されると接着可能となる、非剥離性接着基剤とこの接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤とからなる感圧性の接着剤を塗布して設けた、重ね合わせ用シート。」の点で一致し、下記1?4の点で相違する。
相違点1
本件考案が、重ね合わせ用シートに感圧性接着剤を塗布した状態における感圧性の接着剤表面の平滑度を、「平滑度が20?120秒(JISP-8119準拠)」と規定しているのに対し、刊行物1に記載のものにはこのような規定がない点。
相違点2
本件考案が、重ね合わせ用シートの感圧性の接着剤塗布部分の透気度を、「透気度100秒以下(JISP-8117準拠)」と規定しているのに対し、刊行物1に記載のものにはこのような規定がない点。
相違点3
本件考案が、感圧性の接着剤の「感圧接着性」の発現を「非剥離性接着基剤中に微粒状充てん剤を添加することで」行っているのに対し、刊行物1に記載のものの接着剤含有層は感圧性であり、接着剤と顔料とから構成されているものの、「感圧接着性」について、その発現の手段の規定がない点。
相違点4
本件考案が、重ね合わせ用シートの「軽圧後の剥離強度試験の条件」を、「接着剤を設けた状態における重ね合わせ面の剥離強度をlkg/cm^(2)の荷重をかけ、常温で30分放置後に25mm幅で10g以下に設定」と規定するとともに、該「軽圧後の剥離強度試験の条件」への適合性の発現を感圧性の接着剤を構成する「非剥離性接着基剤と微粒状充てん剤との配合割合」の調整で行っているのに対し、刊行物1に記載のものにはこのような規定がない点。
以下、上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
本件考案が、重ね合わせ用シートに感圧性接着剤を塗布した状態における感圧性の接着剤表面の平滑度を、「平滑度20?120秒(JISP-8119準拠)」と規定しているのは、「印刷適性及び印字適性の双方に優れたものとなる。」(【0013】参照。)からである。
ところで、刊行物2(特開昭59-35979号公報)には、結着剤と充填材粒子とからなるインク吸収層を有する記録用紙について記載されており、その「インク吸収層のベック平滑度が、20秒以上 120秒以下の範囲内である」(摘記B-イ.参照。)ものが記載されている。そしてこのものは、「インクジェット記録用の被記録材として好適なものである。」(摘記B-ク.参照。)とされている。
本件考案で用いられる測定方法「JISP-8119」には、紙及び板紙の平滑度をベック試験器で試験する方法が規定されており、結果は秒数をもって「ベック平滑度」として示すようになっている(JISP-8119参照。)。一方、刊行物2で用いられている「ベック平滑度」は、王研式透気度平滑度試験機(旭精工(株)製)を用いて測定したものであるが(摘記B-ケ.参照。)、同じ「ベック平滑度」として表示されるものである以上、「JISP-8119」に於けるベック試験器で測定した「ベック平滑度」と、実用上相違ないものと考えられる。
そうすると、刊行物2に記載のものの「インク吸収層」は、その組成から、刊行物1に記載のものの「接着剤」に相当し、刊行物2に記載のものの目的とするところが、インクの記録特性であるところからすれば、本件考案が、「平滑度20?120秒(JISP-8119準拠)」と、重ね合わせ用シートに感圧性接着剤を塗布した状態における感圧性の接着剤表面の平滑度を規定した点は、刊行物2に記載のものの「インク吸収層のベック平滑度が、20秒以上 120秒以下の範囲内である」ところの構成を、インクの記録特性を考慮して、「(JISP-8119準拠)」のものとして、刊行物1に記載のものに付加採用することにより、当業者がきわめて容易になし得たものである。(王研式透気度平滑度試験機(旭精工製)で測定したベック平滑度を、JIS-P-8119によるベック平滑度として採用する点は、特開昭61-148090号公報参照。)
そして、刊行物3(特開平1-292354号公報)には、「事前に美麗印刷やフォーム印刷を行った後、電子写真方式のプリンターで使用される転写紙」(摘記C-ア.参照。)について、「塗工層を設け、その表面のJIS P8119により測定したべツク平滑度が20?2000秒であるようにし」(摘記C-エ.参照。)て、「高画質記録を可能とし、事前印刷効果を向上させることができる」(摘記C-オ参照。)ことが記載されており、採用された重ね合わせ用シートに感圧性接着剤を塗布した状態における感圧性の接着剤表面の平滑度、「平滑度20?120秒(JISP-8119準拠)」は、この刊行物3記載の平滑度の範囲「JIS P8119により測定したべツク平滑度が20?2000秒」を満足しているから、印刷適性及び印字適性の双方に優れたものとなることは当然期待できるものである。
(2)相違点2について
本件考案が、重ね合わせ用シートの感圧性の接着剤塗布部分の透気度を、「透気度100秒以下(JISP-8117準拠)」と規定しているのは、「吸気作用のあるドラム等を利用した葉書シート1の移送が円滑になされ、また、水分の蒸発も十分になされるから葉書シート1がカールすることがない。」(【0013】)からである。
ところで、刊行物4(特開昭57-105374号公報)には、連続プリントフォームを一定の空気の吸引と共に引き付け暴れを防ぎながら移送したり、連続プリントフォームを一定の空気の吸引と共に引き付け、予熱盤への接触を行いながら移送する場合、一般の上質紙に比べて紙質の透気性が悪い連続プリントフォームでは、フィード途中の吸引装置に過度に吸引されてスムーズに移送されないという問題があったこと(摘記D-ア.、D-イ.、D-ウ.、及びD-エ.参照。)、透気性の悪いシートに微小孔を施すと透気度の秒数を下げることができ(摘記D-オ.、及びD-カ.参照。)、透気度とフィード特性の関係を調べた結果、「JIS P-8117 に準ずる透気度測定器において、100cc の空気の透気が」(摘記D-カ.参照。)、「100秒以下のものについては、従来の透気度が100秒以下の通常の上質紙と同様極めてフィードが良好となりプリント状態も良好となった。」(摘記D-キ.参照。)ことが記載されている。したがって、シートを空気吸引を伴い移送する場合、通常の上質紙は(JISP-8117準拠)で透気度が100秒以下であり、フィードが良好で、プリント状態も良好であることが知られていた。
そうすると、本件考案が、「透気度100秒以下(JISP-8117準拠)」と、重ね合わせ用シートの感圧性の接着剤塗布部分の透気度を規定した点は、フィードが良好で、プリント状態も良好であるとされる刊行物4記載の通常の上質紙の透気度、「(JISP-8117準拠)で透気度が100秒以下」の構成を、そのフィード特性を考慮して、刊行物1に記載のものに付加採用することにより、当業者がきわめて容易になし得たものである。
(3)相違点3について
接着剤に対する、顔料の配合割合を調整して、「感圧接着性」或いは「耐ブロッキング性」を発現させることは周知の技術手段である。(例えば、特開平2-151493号公報〔実用新案登録異議申立人 内山 章子 提出の甲第8号証〕参照。)
そうすると、本件考案のように、感圧性の接着剤の「感圧接着性」の発現を、感圧性の接着剤を構成する「非剥離性接着基剤中に微粒状充てん剤を添加することで」行う点は、周知技術である、接着剤に対する顔料の配合割合を調整して感圧接着シートの「感圧接着性」を発現させる構成を、刊行物1に記載のものに付加採用することにより当業者がきわめて容易になし得たものである。
(4)相違点4について
本件考案が、重ね合わせ用シートの「軽圧後の剥離強度試験の条件」を、「接着剤を設けた状態における重ね合わせ面の剥離強度をlkg/cm^(2)の荷重をかけ、常温で30分放置後に25mm幅で10g以下に設定」と、規定しているのは、
a.「接着する重ね合わせ面に塗布される接着剤の上記剥離強度が10g以上であるとシートの積重ね保管時等においてブロッキング現象が生じ、」(【0005】参照。)、「シートの積重ね保管時等においてブロッキング現象が生じることなく、」(【0023】参照。)と記載されるシートの積重ね保管時の耐ブロッキング性の問題、
b.「剥離強度を前記数値範囲に設定することで、確実な接着力(と、剥離の際に隠蔽情報9,10(図1参照)が損なわれないこと)が保証される。」(【0012】参照。)、「接着時には確実な接着力有する」(【0023】参照。)と記載される葉書等の取り扱い中の耐剥離性の問題、
c-1.「本接着後のシートの剥離がスムーズに行いにくく、(印刷、印字を損傷するものであり、)」(【0005】参照。)、「接着後の剥離時には(施された印刷あるいは印字を損なうことなく)容易に剥離可能」(【0023】参照。)と記載される剥離時の剥離容易性の問題、
c-2.「本接着後のシートの剥離が(スムーズに行いにくく、)印刷、印字を損傷するものであり、」、「本接着後における隠蔽情報が接着面の剥離時に損なわれることがない。」(【0005】参照。)、「剥離強度を前記数値範囲に設定することで、(確実な接着力と、)剥離の際に隠蔽情報9,10(図1参照)が損なわれないことが保証される。」(【0012】参照。)、「接着後の剥離時には施された印刷あるいは印字を損なうことなく(容易に)剥離可能」(【0023】参照。)、と記載される剥離時の印刷、印字の不損傷性の問題、
に対処しようとするものである。
a.耐ブロッキング性について
本件考案の重ね合わせ用シートが発揮する「シートの積重ね保管時の耐ブロッキング性」について、本件考案では、「接着剤を設けた状態における重ね合わせ面の剥離強度をlkg/cm^(2)の荷重をかけ、常温で30分放置後に25mm幅で10g以下に設定」する試験条件を挙げているが、およそ、ブロッキング現象が生じない重ね合わせ用シートが得られ、「シートの積重ね保管時の耐ブロッキング性」が満足されるならば、ブロッキング現象回避の期待試験は、本件考案の試験条件のものに限定されず、いずれの試験条件のものであってもよいものである。すなわち、本件考案で特定された、各条件の数値及びその組合せは、ブロッキング現象回避の一つの期待試験に採用された値にすぎず、この値に直接格別の技術的意義があるわけではない。本件考案で特定された、各条件の数値及びその組合せは、発揮する性能が等しい他の数値の組合せで置換でき、それらは他の数値の組み合わせで規定されていても、重ね合わせ用シートとして見た場合、等価同効であり、差違がないものである。
b.取り扱い中の耐剥離性について
これは、本件考案に係る重ね合わせ用シートを接着条件である圧力を与えて接着し、重ね合わせシート(例えば葉書。)とした後の、耐剥離性であるが、本件考案における、軽圧後の剥離強度試験の条件規定で、「非剥離性接着基剤」及び「接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤」のみで規定された「接着剤」を、なんらかの「圧力」を与えて接着したときの、耐剥離性を常に保証することはできない。
c-1.剥離時の剥離容易性について
これは、本件考案に係る重ね合わせ用シートを接着条件である圧力を与えて接着し、重ね合わせシート(例えば葉書。)とした後、剥離する場合の剥離容易性であるが、本件考案における、軽圧後の剥離強度試験の条件規定で、「非剥離性接着基剤」及び「接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤」のみで規定された「接着剤」を、なんらかの「圧力」を与えて接着したときの、剥離容易性を常に保証することはできない。
c-2.剥離時の印刷、印字の不損傷性について
これは、本件考案に係る重ね合わせ用シートを接着条件である圧力を与えて接着し、重ね合わせシート(例えば葉書。)とした後、剥離する場合の接着面の印刷、印字の不損傷性であるが、重ね合わせ用シートの透気度や、接着剤塗布面の平滑度を併せ規定していても、本件考案における、軽圧後の剥離強度試験の条件規定で、「非剥離性接着基剤」及び「接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤」のみで規定された「接着剤」を、なんらかの「圧力」を与えて接着したときの、接着面の印刷、印字の不損傷性を常に保証することはできない。
軽圧後の剥離強度試験の条件規定と、掲げられた重ね合わせ用シートの性能との関係は、以上のとおりであるが、軽圧後の剥離強度試験の条件規定との因果関係が認められない性能については、重ね合わせ用シートがその性能を保有することについて、その試験条件では確認できないから、上記、b.、c-1.、及びc-2.の性能は除外され、a.の性能のみが「軽圧後の剥離強度試験の条件」と関係付けられる。
したがって、相違点4に係る本件考案の構成は、重ね合わせ用シートの「耐ブロッキング性」を満足する「軽圧後の剥離強度試験の条件」を、「感圧性の接着剤を設けた状態における重ね合わせ面の剥離強度をlkg/cm^(2)の荷重をかけ、常温で30分放置後に25mm幅で10g以下に設定」と規定するとともに、重ね合わせ用シートの「耐ブロッキング性」の発現を、感圧性の接着剤を構成する「非剥離性接着基剤と微粒状充てん剤との配合割合」の調整で行うことと解釈される。
そこでまず、重ね合わせ用シートの「耐ブロッキング性」を満足する「軽圧後の剥離強度試験の条件」を、「感圧性の接着剤を設けた状態における重ね合わせ面の剥離強度をlkg/cm^(2)の荷重をかけ、常温で30分放置後に25mm幅で10g以下に設定」と規定した点について検討する。
刊行物5(特開昭64-85794号公報)には、感圧接着剤に、微細粒子を添加した接着剤層を設けたプリント用シートについて記載されており、このものの非ブロッキング性を調べるために、「30℃?70℃の各温度の恒温槽中で荷重300g/cm^(2)l時間放置後、引っ張り試験機で90°剥離を行った」(摘記E-エ.参照。)結果、全て剥離強度2g以下であり、「接着剤によるブロッキング現象は全くみられなかった。」(摘記E-エ.参照。)としている。そして、このプリント用シートの「保管時、運搬時におけるブロッキング現象が全く発生することなく、プリント時におけるプリンタへのプリント用シートの移送がスムースに確実に行え、」(摘記E-オ.参照。)ることを期待している。
刊行物1に記載のものも接着剤含有層を備えたシートであり、巻取り、Z折り加工紙として取扱われるものであるから、接着剤含有層によるブロッキング現象は当然考慮することである。したがって、耐ブロッキング性を考慮して、本件考案のように、ブロッキング現象を回避するための試験条件を規定する点は、刊行物5に記載された試験条件を、刊行物1に記載のものに付加採用することにより当業者がきわめて容易に規定することができたものである。そして、この重ね合わせ用シートでは、ブロッキング現象が生じない。
もちろん、本件考案のブロッキング現象回避の期待試験と、刊行物5に記載されたブロッキング現象回避の期待試験とは、温度条件、圧力条件、加圧時間、剥離強度の上限値において相違するが、先に見たように、いずれの試験を採用しても、ブロッキング現象が生じない重ね合わせ用シートが得られ、「シートの積重ね保管時の耐ブロッキング性」が満足される点で両者に相違がなく、得られた重ね合わせシートは等価同効であり、差違がない。
つぎに、「耐ブロッキング性」の発現を、感圧性の接着剤を構成する「非剥離性接着基剤と微粒状充てん剤との配合割合」の調整で行うことについて検討する。
接着剤に対する、顔料の配合割合を調整して、「感圧接着性」或いは「耐ブロッキング性」を発現させることは、「(3)相違点3について」で一例(特開平2-151493号公報〔実用新案登録異議申立人 内山 章子 提出の甲第8号証〕)を示したように周知の技術手段である。
そうすると、本件考案のように、感圧性の接着剤の「耐ブロッキング性」の発現を、感圧性の接着剤を構成する「非剥離性接着基剤と微粒状充てん剤との配合割合」の調整で行う点は、周知技術である、接着剤に対する顔料の配合割合を調整して感圧接着シートの「耐ブロッキング性」を発現させる構成を、刊行物1に記載ものに付加採用することにより当業者がきわめて容易になし得たものである。
相違点1?相違点4についての判断は、上記のとおりである。また、請求項1に係る考案は、上記相違点1?相違点4によって、予期しない格別の効果を奏するものでもない。
(5)むすび
以上のとおりであって、請求項1に係る考案は、刊行物1?刊行物5に記載された考案並びに周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって、請求項1に係る考案の実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
重ね合わせ用シート
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】重ね合わせ面を剥離可能に接着することにより重ね合わせシートとする重ね合わせ用シートであって、重ね合わせ面の所定部分に、非剥離性接着基剤中にこの接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤を添加することで印刷あるいは印字が可能で、かつ、通常では接着せず、圧力が付与されると接着可能となる感圧性の接着剤が塗布されてなり、塗布状態における感圧性の接着剤表面の平滑度が20?120秒(JISP-8119準拠)、感圧性の接着剤塗布部分の透気度が100秒以下(JISP-8117準拠)であり、当該微粒状充てん剤の配合割合を、感圧性の接着剤を設けた状態における重ね合わせ面の剥離強度を1kg/cm^(2)の荷重をかけ、常温で30分放置後に25mm幅で10g以下に設定した重ね合わせ用シート。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、三つ折り、二つ折り、切り重ね等の各種の態様で重ね合わせ、重ね合わせ面を剥離可能に接着することにより、重ね合わせシートとなす重ね合わせ用シートに関し、特に、印刷あるいは印字した隠蔽情報を損なうことなく、接着した重ね合わせ面を剥離できる重ね合わせシートを作成するのに適した重ね合わせ用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、この種の重ね合わせ用シートは種々知られているが、一般的には、剥離可能に接着される重ね合わせ面を、シート面に接着力を調整した接着剤を設けて形成している。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、従来のシート面に接着力を調整した接着剤を設けて接着する重ね合わせ面を形成したものは、接着力の調整が困難であり、接着力が強すぎるとシートの積重ね保管時において、ブロッキング現像が生じ、また、剥離の際に隠蔽情報も接着した重ね合わせ面から剥離してしまうという不都合がある。
本考案は、このような事情に鑑みてなされたもので、上述のような不都合を解消し、隠蔽情報を印刷あるいは印字した重ね合わせシートを作成するのに適した重ね合わせ用シートを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本考案は、重ね合わせ用シートの重ね合わせ面の所定部分に、非剥離性接着基剤とこの接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤を添加することで印刷あるいは印字が可能であり、かつ、通常では接着せず、圧力が付与されると接着可能となる感圧性の接着剤が塗布されてなり、塗布状態における感圧性の接着剤表面の平滑度が20?120秒(JISP-8119準拠)、感圧性の接着剤塗布部分の透気度が100秒以下(JISP-8117準拠)であり、当該微粒状充てん剤の配合割合を、感圧性の接着剤を設けた状態における重ね合わせ面の剥離強度を、前記微粒状充てん剤の配合割合を調整し、あるいはこの調整とともに前記接着剤を網点状に塗布したり、塗布厚を調整する等により、1kg/cm^(2)の荷重をかけ、常温で30分放置後に25mm幅で剥離試験機(島津製作所製オートグラフAGS-50)の剥離強度を10g以下に設定したものである。
【0005】
【作用】
接着する重ね合わせ面に塗布される接着剤の上記剥離強度が10g以上であるとシートの積重ね保管時等においてブロッキング現像が生じ、さらに所定の接着条件が付与された本接着後のシートの剥離がスムーズに行いにくく、印刷、印字を損傷するものであり、剥離強度を、1kg/cm^(2)の荷重をかけ、常温で30分放置後に25mm幅で10g以下に設定することにより、本接着後における隠蔽情報が接着面の剥離時に損なわれることがない。
【0006】
【実施例】
以下、本考案を葉書を作成するための重ね合わせ用シートに適用した場合の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。
ここにおいて、図1は葉書の一実施例を示す概略的断面図、図2は同葉書を作成するための重ね合わせ用シートたる葉書用シートの表面側を示す平面図、図3はその裏面側を示す平面図、図4は葉書の第2実施例を示す概略的断面図、図5は同葉書を作成するための葉書用シートの表面側を示す平面図、図6は葉書用シートから葉書を作成する工程を示すフロー図である。
【0007】
はじめに、図1?図3に基づき本考案の第1実施例を説明する。
図2及び図3に示すように、葉書用シート1は、葉書作成時に宛名が記入される宛名記入部2を表面側に有し、裏面側は接着剤3が塗布されて接着される重ね合わせ面となり、この重ね合わせ面上に隠蔽情報記入部4が印刷で形成された葉書上紙片5と、この葉書上紙片5に折り用ミシン目6から折り重ねて接着される前記葉書上紙片5よりは横幅の狭い葉書下紙片7とからなる。前記葉書下紙片7は、図3で明らかなように、裏面側に前記葉書上紙片5と同一の接着剤3が塗布されて接着される重ね合わせ面となり、この重ね合わせ面上に隠蔽情報記入部8が印刷で形成されている。そして、各隠蔽情報記入部4,8の内側都分には、網点状の印刷14(図では斜線で表示)が淡色のインキでなされている。接着剤3の確実な接着力を維持するためには、点、線、ベタの印刷の集合面積が接着面の75%以下がよく、好ましくは50%以下がよく、ベタ印刷の前記印刷面積に占める割合は25%以下が好ましい。この印刷14を施すことによって、葉書上紙片5と葉書下紙片7の接着面における各隠蔽情報記入部4,8の外側部分の接着力が、内側部分の接着力よりも高くなる。
【0008】
前記接着剤3は、印刷あるいは印字が可能で、かつ、通常では接着せず、一定条件を付与されると接着可能となるもので、例えば、感圧性で一旦接着すると再剥離不能な非剥離性接着剤基剤に、この接着剤基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤を配含してなるものが好適である。感圧性接着剤は、1cm^(2)あたり50kg以上、好ましくは80kg以上の圧力で接着するものがよい。
【0009】
前記接着剤基剤としては、従来用いられている通常の感圧性接着剤でよいが、特に挙げれば、天然ゴムにスチレンとメタクリル酸メチルとをグラフト共重合させて得られた天然ゴムラテックスが、耐ブロッキング性、耐熱性、耐摩耗性等の点で好適である。
【0010】
一方、前記微粒状充てん剤としては、前記接着剤基剤との親和力が小さいもの、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、活性白土、球状アルミナ、小麦デンプン、シリカ、ガラス粉末、シラスバルーン等が用いられる。これらの材料は、単独でも、複数組み合わせてもよいが、特に、シリカと他の適宜な充てん剤との組み合わせが好適である。また、粒径の異なる2種類以上を組み合わせると、接着剤塗布面を凹凸状に形成しやすいので、剥離性能が向上する。シリカを添加すると、接着剤の塗膜を強化しうるとともに、その多孔質性により、接着剤が表面に付着しやすいので、接着力や剥離力を調整しやすいという利点がある。また、シリコーンオイルを用いているプリンタにより、ノンインパクトプリンタ方式で印字した場合でも、シリカがシリコーンオイルを吸収するので、接着剤がシリコーンオイルにより接着しなくなることもない。なお、微粒状充てん剤の平均粒子径は、10mμm?30μm、好ましくは1μm?20μm、さらに好ましくは2μm?15μmの範囲が好適である。
【0011】
上述した微粒状充てん剤は、感圧性の接着剤基剤に対して、接着剤基剤100重量部に対して微粒状充てん剤を100?400重量部、好ましくは130?300重量部、最も好ましくは150?250重量部の割合で配合することが望ましい。この微粒状充てん剤の配合割合が前記範囲よりも少ないと、耐ブロッキング性に劣り、かつ接着力が強すぎる一方、前記範囲よりも多い場合には、接着力が低下し過ぎて容易に剥離してしまう。
【0012】
すなわち、上述した微粒状充てん剤の配合割合は、接着剤3を塗布した状態において、葉書用シート1の剥離強度が、1kg/cm^(2)の荷重をかけ、常温で30分放置後に25mm幅で10g以下になるよう設定される。なお、この剥離強度の測定は、島津製作所製の剥離試験機オートグラフAGS-50型を用いて行った。また、微粒状充てん剤の配合割合に加えて、接着剤3を網点状に塗布したり、塗布厚を調整すると、より調整が容易である。剥離強度を前記数値範囲に設定することで、確実な接着力と、剥離の際に隠蔽情報9,10(図1参照)が損なわれないことが保証される。
【0013】
さらに、葉書用シート1は同じく接着剤3を塗布した状態において、平滑度がJISP-8119に準拠して20?120秒、好ましくは30?70秒、さらに好ましくは40?60秒の範囲であり、透気度がJISP-8117に準拠して100秒以下であることが望ましい。一般にシート上に接着剤を塗布すると、表面に凹凸が生じ、印刷工程や印字工程あるいは保存時等に、接着剤表面の前記凹凸がこすれ等により脱落したり、紙粉の発生源となったりする。また、印刷や印字におけるインキの定着不均一、ムラを生じる。そこで、平滑度をキャレンダーがけ等の処理により上記範囲にすると、前記不都合が解消され、印刷適性及び印字適性の双方に優れたものとなる。さらに、透気度が上記範囲にあると吸気作用のあるドラム等を利用した葉書シート1の移送が円滑になされ、また、水分の蒸発も十分になされるから葉書シート1がカールすることがない。
【0014】
葉書用シート1は、宛名記入欄2に、図示していないプリンタによって宛名11が印字される一方、隠蔽情報記入欄4,8に、同じく図示していないプリンタによって隠蔽情報9,10が印字され、この隠蔽情報印字面が折り用ミシン目6で折り重ねられ、接着剤3の接着条件である所定の圧力が付与されることにより、剥離可能に接着されて、図1に示すような葉書上紙片5の反綴じ合わせ縁が葉書下紙片7よりも突出して指掛け部13となった葉書12となる。そして、この葉書12は四周縁が他の部分よりも強く接着された状態となり、その取り扱い中に四周縁が剥離することはない。
【0015】
このように、前記葉書12は、図6に示すように、葉書用シート1に対して、その重ね合わせ面に接着剤3を塗布する接着剤塗布工程、接着剤上に印刷14及び隠蔽情報記入欄4,8を印刷する印刷工程、隠蔽情報記入欄4,8に隠蔽情報9,10を印字する情報印字工程、葉書用シート1の接着する重ね合わせ面どうしを折り重ねる重ね合わせ工程、接着剤3の接着条件を付与して重ね合わせ面どうしを剥離可能に接着する接着工程を順次施すことにより作成されるものである。
【0016】
作成された葉書12は、隠蔽情報9,10が外部から見えない状態となる一方、通常の葉書と同様に投函することが可能となる。また、上述した作成過程では説明しておらず、また図示してもいないが、葉書下紙片7の表面には、隠蔽情報9,10を見るための説明文があらかじめ表示されている。したがって、葉書12を受領した宛名人は、指掛け部13を摘んで葉書上紙片5と葉書下紙片7とを一定以上の力を与えて剥離し見開き状態とすれば、隠蔽情報9,10を見ることができるものである。この剥離に際しては、接着剤3の接着力が、施された印刷あるいは印字が損なわれないように剥離可能に設定されているから、前記隠蔽情報9,10が剥がれて、視認できない事態を生じる恐れはなく、また、指掛け部13によって剥離動作も容易である。
【0017】
次に、第4図及び第5図に基づき本考案の第2実施例を説明する。
図5に示すように、葉書用シート21は、葉書作成時に宛名が記入される宛名記入部22を表面側に有し、裏面側には接着剤23(第4図参照)が塗布された葉書上紙片24と、この葉書上紙片24と同一大で前記葉書上紙片24に折り用ミシン目25を介して連接され、表裏両面に接着剤26,23(第4図参照)が塗布された葉書中紙片27と、この葉書中紙片27及び前記葉書上紙片24よりは幅広で前記葉書中紙片27に折り用ミシン目28を介して連接され、表面に接着剤26(第4図参照)が塗布された葉書下紙片29とからなる。前記葉書中紙片27と前記葉書下紙片29の前記接着剤26が塗布された表面側が第1の接着される重ね合わせ面となり、また、前記葉書上紙片24と前記葉書中紙片27の前記接着剤23が塗布された裏面側が第2の接着される重ね合わせ面となる。そして、これら重ね合わせ面が、各折り用ミシン目25,28で折り重ねられる。前記第1の接着される重ね合わせ面には、周縁部に単位面積あたり50%程度の密度で接着剤26上に適宜な模様が淡色のインキで印刷された粗印刷部30と、この粗印刷部30の内側に適宜な模様が同じく淡色のインキでいわゆるベタ印刷された密印刷部31が設けられている。前記粗印刷部30は、スクリーン印刷を施したり、縞状にベタ印刷することにより形成すればよい。これによって、葉書中紙片27と葉書下紙片29の接着面における前記粗印刷部30部分の接着力が、前記密印刷部31部分の接着力よりも高くなる。
【0018】
本実施例における接着剤23,26を塗布した状態での剥離強度も第1実施例と同様の範囲内にあり、確実な接着と、剥離時に隠蔽情報32,33(図4参照)を損なわないことが保証される。
【0019】
接着剤26は、印刷あるいは印字が可能で、かつ、通常では接着せず、一定条件を付与されると接着可能となり、剥離強度が所定範囲にあるので、接着後には印字等の手段で設けられた隠蔽情報を損なわないように剥離可能なものであり、第1実施例の接着剤3と同一のものである。一方、接着剤23は、隠蔽情報が印字されず、また、接着後に剥離されない重ね合わせ面に設けられているので、通常では接着せず、一定条件を付与されると接着可能となる接着剤であればよく、通常の感圧性の非剥離性接着剤を用いればよいが、接着条件は前記接着剤26と同一なものがよい。したがって、本実施例では感圧性接着剤が採用される。
【0020】
次に、図5に示す葉書シート21から図4に示す葉書35を作成する手順について説明する。
葉書用シート21は、宛名記入欄22に、図示していないプリンタによって宛名36が印字される一方、葉書中紙片27と葉書下紙片29の接着する重ね合わせ面に同じく図示していないプリンタによって隠蔽情報32,33が印字される。続いて、この葉書中紙片27と葉書下紙片29の隠蔽情報印字面が折り用ミシン目28で折り重ねられ、また、葉書上紙片24と葉書中紙片27の重ね合わせ面である裏面どうしが折り用ミシン目25で折り重ねられて、Z字状に三つ折りされる。さらに、接着剤26,23の接着条件である圧力が付与されることにより、剥離可能に接着されて、図4に示すような葉書下紙片29の反折り曲げ縁が他の各葉書紙片24,27よりも突出して指掛け部34となった葉書35となる。そして、この葉書35の周縁部に設けた粗印刷部30は、密印刷部31よりも強い接着力で接着され、この粗印刷部30が前記葉書35の取り扱い中に剥離することはない。
【0021】
本実施例においても、第1実施例同様、指掛け部34に指を掛けて葉書中紙片27と葉書下紙片29とを剥離し、見開き状態とすれば隠蔽されていた各隠蔽情報32,33を視認することができる。なお、本実施例における他の構成及び作用は第1実施例と同一であるからその説明は省略する。
【0022】
なお、本考案は、上述した実施例に限定されるものではなく、例えば、接着剤3,26をシート面に設ける方法としては、シートを抄く工程で含浸させ、シート面に表出させるものでもよい。また、指掛け部は、上述した構成のほか、ミシン目から破断して除去することにより対応する他の葉書片の一部を露出させたり、切欠部を設けて対応する他の葉書片の一部を当初から露出させたり、あるいは摘み片を設けることにより構成してもよい。またさらに、接着剤3,26上に施す印刷14,30,31は、前記指掛け部に対応する部分を特に密とすることにより、除去動作を伴う前記指掛け部の機能をさらに向上しうる。さらに、接着剤3,26を設ける部分は、重ね合わせ面全体に限らず、その一部でもよい。木考案の接着剤は、一定条件を付与しないと接着しないので、シートの表裏全面に塗布されていても、取り扱いに支障をきたさず、便利である。また、本考案は折り重ねのほか、切り重ねする重ね合わせ用シートにも適用でき、また、折り重ね状態も図7に示すように、一部分のみ重ね合わされる二つ折りでもよく、さらには別体で同一大あるいはサイズの異なる複数のシートを重ね合わせるものでもよい。さらに作成すべき重ね合わせシートとしては、葉書のほか、各種カード類や各種帳票類にも適用できることはもちろんである。またさらに、葉書用シート1,21の材質は、通常の紙のほか、合成紙、樹脂フィルム等適宜選択可能である。加えて、本考案の隠蔽情報9,10,32,33は特に秘匿性が要求されるものでなくても、例えば印刷面積を多く必要とする見開きの宣伝広告情報でもよく、この場合には葉書12,35等の隠蔽情報所持体を開いてその見開き両面に情報内容を見るので受領人の興味を引き、ダイレクトメール等として用いれば、宣伝効果の一層の向上を図ることができる。
【0023】
【考案の効果】
以上説明したところで明らかなように、本考案によれば、非剥離性接着剤基剤とこれに対して非親和性の微粒状充てん剤からなる接着剤を用いるので、接着力の調整が容易であり、その剥離強度を所定範囲に設定することにより、シートの積重ね保管時等においてブロッキング現像が生じることなく、接着時には確実な接着力を有する一方、接着後の剥離時には施された印刷あるいは印字を損なうことなく容易に剥離可能となるから、隠蔽情報を有する重ね合わせシートの作成に好適であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案に係る重ね合わせ用シートで作成される葉書の一実施例を示す概略的断面図。
【図2】
同葉書を作成するための重ね合わせ用シートたる葉書用シートの表面側を示す平面図。
【図3】
同葉書用シートの裏面側を示す平面図。
【図4】
葉書の第2実施例を示す概略的断面図。
【図5】
同葉書を作成するための葉書用シートの表面側を示す平面図。
【図6】
葉書用シートから葉書を作成する工程を示すフロー図。
【図7】
葉書用シートの重ね合わせ状態に関する他の実施例を示す概略的な断面図。
【符号の説明】
1,21 葉書用シート
3,26 接着剤
5,24 葉書上紙片
6,25,28 折り用ミシン目
7,29 葉書下紙片
9,10,32,33 隠蔽情報
12,35 葉書
14 印刷
27 葉書中紙片
30 粗印刷部
31 密印刷部
訂正の要旨 ▲1▼ 訂正事項
登録第2597262号実用新案の明細書中実用新案登録請求の範囲において、「印刷あるいは印字が可能で、かつ、通常では接着せず、一定条件が付与されると接着可能となる、非剥離性接着基剤とこの接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤とからなる接着剤を設ける一方、この接着剤を設けた状態における剥離強度を」とあるのを、実用新案登録請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的として、「非剥離性接着基剤中にこの接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤を添加することで印刷あるいは印字が可能で、かつ、通常では接着せず、圧力が付与されると接着可能となる感圧性の接着剤が塗布されてなり、塗布状態における感圧性の接着剤表面の平滑度が20?120秒(JISP-8119準拠)、感圧性の接着剤塗布部分の透気度が100秒以下(JISP-8117準拠)であり、当該微粒状充てん剤の配合割合を、感圧性の接着剤を設けた状態における重ね合わせ面の剥離強度を」と訂正する。
これに伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との整合性を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的として、登録2597262号実用新案の明細書を請求書に添付された訂正明細書のとおりに、すなわち実用新案登録第2597262号公報の段落【0004】における「印刷あるいは印字が可能であり、かつ、通常では接着せず、一定条件が付与されると接着可能となる、非剥離性接着基剤とこの接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤とからなる接着剤を設ける一方、この接着剤を設けた状態における剥離強度を、」とあるのを、「非剥離性接着基剤とこの接着基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤を添加することで印刷あるいは印字が可能であり、かつ、通常では接着せず、圧力が付与されると接着可能となる感圧性の接着剤が塗布されてなり、塗布状態における感圧性の接着剤表面の平滑度が20?120秒(JISP-8119準拠)、感圧性の接着剤塗布部分の透気度が100秒以下(JISP-8117準拠)であり、当該微粒状充てん剤の配合割合を、感圧性の接着剤を設けた状態における重ね合わせ面の剥離強度を、」と訂正する。
また、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との整合性を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的として、登録2597262号実用新案の明細書を請求書に添付された訂正明細書のとおりに、すなわち実用新案登録第2597262号公報の段落【0009】における「なお、接着剤基剤としては、感圧性のほか、従来用いられている通常の感熱性あるいは再湿性の接着剤を用いることもでき、感熱性の接着基剤としては、特に酢酸ビニル系重合体が好適であり、また、再湿性の接著基剤としては、ポリビニルアルコールやポリエチレンオキシドなどが好適である。」を削除し、同段落【0011】における「感圧性、感熱性、再湿性のいずれの接着剤基剤に対しても使用可能であるが、感圧性及び再湿性の接着剤基剤に対しては、」とあるのを、「感圧性の接着剤基剤に対して、」と訂正すると共に、「感熱性の接着剤基剤に対しては、接着剤基剤100重量部に対して微粒状充てん剤を45?100重量部、好ましくは55?90重量部、最も好ましくは60?80重量部の割合で配合することが望ましい。」を削除し、同段落【0019】における「通常の感圧性、感熱性、再湿性の非剥離性接着剤」とあるのを、「通常の感圧性の非剥離性接着剤」と訂正する。
異議決定日 2003-01-10 
出願番号 実願平2-405691 
審決分類 U 1 651・ 121- ZA (B42D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 藤井 靖子  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 前田 建男
白樫 泰子

登録日 1999-04-30 
登録番号 実用新案登録第2597262号(U2597262) 
権利者 トッパン・フォームズ株式会社
東京都千代田区神田駿河台1丁目6番地
考案の名称 重ね合わせ用シート  
代理人 高橋 寛  
代理人 高橋 寛  
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