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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) F16C
管理番号 1076568
判定請求番号 判定2002-60101  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2003-06-27 
種別 判定 
判定請求日 2002-11-08 
確定日 2003-04-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第2587638号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「排水栓装置」は、登録第2587638号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 1.請求の趣旨
本件判定請求は、イ号図面及びその説明書に示す物件(「新低床用BP弁ユニット」。以下、「イ号物件」という。)は、請求人所有の登録第2587638号実用新案の技術的範囲に属する、との判定を求めたものである。

2.本件登録実用新案
本件登録第2587638号実用新案の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、その明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、その構成要件を分説し記号を付して示すと、次のようになる。
【請求項1】
A:排水口を開閉する栓蓋と、
B:栓蓋を支持する支持軸と、
C:支持軸を上下動自在に支持するボックスと、
D:支持軸をその上下動経路の一端側でロックし次にこのロックを解除する 交互的な連続上下動を可能とするスラストロック機構と、
E:排水口から離間した所望箇所に上下動自在に配設される押ボタンと、
F:押ボタンと支持軸を連係するべく配設され押ボタンの押動操作により筒 状アウター内の線条コアが支持軸方向へ摺動して支持軸に上下動力を付 与するレリースワイヤとを備えた
G:排水栓装置において、
H:前記レリースワイヤを、金属材からなるコイル状の線条コアと該線条コ アを摺動自在に案内するフッ素樹脂からなる筒状アウターチューブとで 構成してなることを特徴とする
I:排水栓装置。

3.イ号物件
これに対して、イ号物件は、イ号図面及びその説明書の記載からみて、以下のとおりのものと認められる。
【イ号物件】
A’:排水口を開閉する栓蓋と、
B’:栓蓋を支持する支持軸と、
C’:支持軸を上下動自在に支持するボックスと、
D’:押しボタンの支持軸をその上下動経路の一端側でロックし次にこのロ ックを解除する交互的な連続上下動を可能とするスラストロック機構 と、
E’:排水口から離間した所望箇所に上下動自在に配設される押ボタンと、
F’:押ボタンと支持軸を連係するべく配設され押ボタンの押動操作により 筒状アウター内の線条コアが支持軸方向へ摺動して支持軸に上下動力 を付与するレリースワイヤとを備えた
G’:排水栓装置において、
H’:前記レリースワイヤを、金属材からなるコイル状の線条コアと該線条 コアを摺動自在に案内するフッ素樹脂からなる筒状アウターチューブ とで構成してなる
I’:排水栓装置。

なお、上記構成D’について、請求人は、平成15年3月26日付回答書において、「D’:において、「ロックし、次にロックを解除する交互的な連続上下動を可能とするスラストロック機構が「押しボタン軸」をロック、及びロック解除するのでは」、との審尋であるが、スラストロック機構を設けることは、これによる機能が本来から栓蓋の支持軸をロックし、続いてロック解除の交互的な連続上下動を可能とするものであって、「押しボタン」のロック、及びロック解除をすることを目的とするものではない。なぜならば、単に「押しボタン」のロック及びその解除のみの構成では、この装置の本来の栓蓋の開閉のための上下動をロック、及びそれを解除するという機能を逸脱することになり、栓蓋の開閉に何の作用効果を及ぼすものではないことになる。したがって、被請求人が「押しボタン軸」をロックし、次にロック解除する、と主張する点は、誤りであって、「栓蓋の支持軸」をロックし、次にロック解除する、ことを目的とするものに他ならないものである。」(上記回答書第2頁第13?25行)と主張している。
しかしながら、イ号物件におけるスラストロック機構は、たとえその目的が、栓蓋を支持する支持軸をロック及びロック解除することであったとしても、イ号図面及びその説明書によれば、スラストロック機構は、栓蓋3を支持する支持軸13でなく、押しボタンを支持する支持軸に配設されており、押しボタンの支持軸をロックし次にロック解除することを可能にするものであることは明らかである。そして、押しボタンの支持軸と栓蓋の支持軸とは、構成F’に特定されるように、「押ボタンと支持軸を連係するべく配設され押ボタンの押動操作により筒状アウター内の線条コアが支持軸方向へ摺動して支持軸に上下動力を付与するレリースワイヤ」により連係されているものであるから、請求人が主張するように、「「押しボタン」のロック及びその解除のみの構成では、この装置の本来の栓蓋の開閉のための上下動をロック、及びそれを解除するという機能を逸脱することになり、栓蓋の開閉に何の作用効果を及ぼすものではないことになる。」とすることはできない。

4.対比・判断
(1)対比
本件考案とイ号物件とを対比すると、両者は、本件考案が、構成要件Dの「支持軸をその上下動経路の一端側でロックし次にこのロックを解除する交互的な連続上下動を可能とするスラストロック機構と」を備えるものであるのに対し、イ号物件は、構成D’の「押しボタンの支持軸をその上下動経路の一端側でロックし次にこのロックを解除する交互的な連続上下動を可能とするスラストロック機構と」を備えるものである点で、少なくとも相違する。
そして、本件考案の構成要件Dにおいて、スラストロック機構によりその上下動経路の一端側でロックし次にこのロックを解除する交互的な連続上下動を可能とされる支持軸は、栓蓋を支持する支持軸であることは、本件明細書及び図面の記載から明らかである。
一方、イ号物件において、スラストロック機構によりその上下動経路の一端側でロックし次にこのロックを解除する交互的な連続上下動を可能とされる支持軸は、上述のとおり、押しボタンの支持軸であるから、イ号物件は、栓蓋を支持する支持軸をロックし次にこのロックを解除する交互的な連続上下動を可能とするスラストロック機構という構成を備えていない。
よって、イ号物件は、本件考案の構成要件Dを充足しない。

(2)均等について
次に、本件考案及びイ号物件について、平成6年(オ)第1083号(平成10年2月24日判決言渡)最高裁判決で判示された要件をすべて満たしているかどうか検討する。

まず、構成要件Dが本件考案の本質部分か否かについて検討する。
甲第1号証(本件登録実用新案の実用新案登録公報)によれば、従来の技術として、
「すなわち、コイル状に形成された線条コア10は、撚線状若しくは単芯状(直線状)の線条コアに比してその線径を小さいものとしながら、押ボタンb1の操作による押力に対して十分な耐久性を持つ。しかも、前記の如く線径が小さく、且つ所定の弾性を有することから、複数箇所での曲がりにも対応可能な可撓性(例えば最小曲げ半径が10mm程度の可撓性)を有し、配設に伴い曲がりが生じても押力(押ボタンb1による操作力)が大きくなることなくスムーズに摺動する。
この線条コア10が撚線状若しくは単芯状(直線状)のものであると、押ボタンb1の操作による押力によって座屈が生じて長さが縮むので摺動ストロークにばらつきが生じやすく、スラストロック機構a3の安定した作動、換言すれば栓蓋a1のスムーズ且つ確実な開閉作動に支障が生じるため好ましくない。このような欠点を解消するためには線条コアの線径を太くする必要があるが、この場合、曲がり箇所において反力が生じ、押ボタンb1による操作に大きな力が必要となって使い勝手が悪くなり、場合によっては使用不能になるため好ましくない。」(甲第1号証第2頁第3欄第26?44行)と記載されている。
そして、本件考案が解決しようとする課題として、
「【考案が解決しようとする課題】
ところで、近年においては給水配管が湯側と水側の双方になされることに加えて、昨今の多機能化、すなわち、浴槽においてはジェットバス(気泡浴槽)機能、また洗面器においては洗髪用シャワー吐水具や口喉洗浄用のジェット吐水具、洗面台内蔵型の給湯機(電気式給湯機)や浄水器等が装備され、これらのための新たな給水用,排水用,エアー用等の配管や電気配線、その他の各種機器を配設するためのスペースが要求され、結果としてレリースワイヤの配設スペース内において障害物が多くなり、図4,図7等に示すように、レリースワイヤがより多くの箇所で複雑に曲がって配設されるようになる。このような環境下においては、レリースワイヤにさらなる可撓性、例えば最小曲げ半径が10mm程度の可撓性が要求され、これに伴い、インナー(線条コア)との接触摩擦力がより小さなアウターが要求される。
上記したような従来よりも厳しい環境に対し、本出願人による先提案のレリースワイアW’についてさらに詳細に検討すると、より多くの箇所で複雑に曲がりが生じた場合、筒状アウター30に対する線条コア10の接触部分が増え、これに伴い線条コア10の摺動時における摩擦抵抗が大きくなって使い勝手が劣る虞れがある。また、前記接触部分にて樹脂被覆21が剥がれ、その剥がれた樹脂クズが線条コア10の円滑な摺動を阻害したり、ガイドコイル20が露出し線条コア10がガイドコイル20に直接接触して使用不能になるような虞れもあった。
また、本出願人による先提案のレリースワイアW’は、ガイドコイル20を樹脂被覆21した筒状アウター30を採用し、且つコイル状部材をインナー(線条コア10)とアウター(ガイドコイル20)の双方に用いることから作製に手間が掛かり、製品コストが高くつくという問題もあった。製品コストを低減させるためには筒状アウターを合成樹脂チューブによって形成することも考えられるが、この場合、前述したように筒状アウターに伸びが生じ、結果としてインナー(線条コア)の摺動ストロークにばらつきが生じるため好ましくない。
本考案はこのような従来事情に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、上述した如く、従来よりも厳しい環境下において、栓蓋の開閉作動をスムーズに且つ長期にわたって安定して行うことが可能で、しかも比較的製造が容易なレリースワイヤを備えた排水栓装置を提供することにある。」(甲第1号証第2頁第4欄第10行?第3頁第5欄第1行)と記載されている。

すなわち、本件考案は、従来のように線状コアが撚線状若しくは単芯状のものであると摺動ストロークにばらつきが生じやすく、スラストロック機構a3の安定した作動、換言すれば栓蓋a1のスムーズ且つ確実な開閉作動に支障が生じるため好ましくなく、ガイドコイルを合成樹脂被覆した筒状アウターを有するレリースワイヤ(本出願人が先に提案)を用いても、最小曲げ半径が10mm程度の可撓性が要求される場合には、なお線条コアの摺動時における摩擦抵抗が大きく円滑な摺動が行われないという課題を解決するために、上記A?Iなる構成要件を具備したものである。

そして、本件考案は、上記構成要件A?Iを具備することにより、
「複数箇所での曲がりにも対応可能な可撓性、例えば最小曲げ半径が10mm程度の可撓性を有し、配設に伴い複数箇所で曲がりが生じても押力(押ボタンによる操作力)が大きくなることなくスムーズに摺動する。また、フッ素樹脂で筒状に形成されたアウターチューブは、前記の如く小径状に形成される線条コアを摺動自在に挿通可能な内径、言い換えれば従来の筒状アウターに比して小径状に形成されることから前記線条コアと同程度の可撓性を有し、且つ、配設に伴い複数の曲がり箇所においてつぶれが生じることなく滑らかに湾曲する。しかも、引張力に対する耐久度が高く、インナー(線条コア)の摺動に伴う伸びがほとんど生じないので、結果として線条コアの摺動ストロークにばらつきが生じる虞れがない。さらに、摩擦係数が低いことから、配設に伴い複数の曲がり箇所において線条コアと接触しても線条コアの摺動を阻害せず、しかも、前記接触箇所において内周面が削られた場合、該削られたフッ素樹脂粒子が潤滑剤の役目を果たし、線条コアの円滑な摺動を長期にわたって維持できる。加えて、耐熱性が高いため、排水口から排水される浴槽や洗面器等内の湯がスラストロック機構を介して浸入することがあっても、高温湯の熱による収縮を生ずることがなく、また、夏期と冬期との間の外気温差の影響による寸法誤差を生ずることもなく、常に寸法安定性が良く、上述の線条コアの摺動良好性を一層確実に発揮させることができる。」(甲第1号証第3頁第5欄第22?47行)という作用効果を奏するものである。

ところで、本件考案では、図4?6に、栓蓋a1を支持する支持軸a2のスラストロック機構a3の直下部分のレリースワイヤが最小の曲げ半径を有することが記載されていると認められるから、本件考案の課題において挙げられている「最小曲げ半径が10mm程度の可撓性」が要求されるのは、栓蓋a1を支持する支持軸a2のスラストロック機構a3の直下部分であると解される。
また、本件考案における「スラストロック機構a3の安定した作動、換言すれば栓蓋a1のスムーズ且つ確実な開閉作動に支障が生じるため好ましくない。このような欠点を解消するため」(甲第4号証第2頁第3欄第37?40行参照)という課題は、スラストロック機構が栓蓋を支持する支持軸をロック及びロック解除することを前提とするものである。
さらに、「加えて、耐熱性が高いため、排水口から排水される浴槽や洗面器等内の湯がスラストロック機構を介して浸入することがあっても、高温湯の熱による収縮を生ずることがなく、」(甲第1号証第3頁第5欄第41?44行)という作用効果も、スラストロック機構が栓蓋を支持する支持軸をロック及びロック解除することに基づくものである。
してみると、本件考案は、栓蓋を支持する支持軸のスラストロック機構の直下部分という「最小曲げ半径が10mm程度の可撓性」が要求されるような従来よりも厳しい環境下で、栓蓋のスムーズ且つ確実な開閉作動を行わせるという技術的課題を解決するためになされたものと認められ、本件考案において、スラストロック機構が栓蓋を支持する支持軸をロック及びロック解除することは、本件考案の技術的課題の前提となる要素であるとともに、上記の作用効果を奏する上で不可欠の要素であると認められる。
すなわち、本件考案は、構成要件Dを備えることによってはじめて上記の如き技術的課題を解決し、作用効果を奏するものであるから、構成要件Dは、本件考案に本質的な部分である。
したがって、本件考案とイ号物件とは、本質的な部分において相違しており、上記最高裁判決で判示された要件を満たしておらず、同判決で判示された他の要件を検討するまでもなく、イ号物件が本件考案と均等なものであるということはできない。

(3)まとめ
したがって、その余の点について検討するまでもなく、イ号物件が本件考案の技術的範囲に属するとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件登録実用新案の請求項1に係る考案の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2003-04-17 
出願番号 実願平4-21587 
審決分類 U 1 2・ 1- ZB (F16C)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 船越 巧子
秋月 均
登録日 1998-10-16 
登録番号 実用新案登録第2587638号(U2587638) 
考案の名称 排水栓装置  
代理人 長南 満輝男  
代理人 石渡 英房  
代理人 松本 好史  
代理人 細井 貞行  
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