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審決分類 |
審判 全部申し立て H01F |
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管理番号 | 1079808 |
異議申立番号 | 異議2002-71217 |
総通号数 | 44 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2003-08-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-05-10 |
確定日 | 2003-06-23 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第2607595号「ロータリートランス用コア」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第2607595号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。 |
理由 |
(1)手続きの経緯 本件実用新案登録第2607595号の請求項1に係る考案についての実用新案登録は、平成4年10月9日に実用新案登録出願がなされ、平成13年9月7日にその実用新案登録権の設定登録がなされ、その後、実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされたものである。 (2)本件考案 請求項1に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「円板状に形成され、外周から順次環状突出部、コイル溝がこの順序で同心状に設けられ、各突出部及びコイル溝に交差するように複数のコイル引出し用のスリットが外周から中心に向けて放射状に設けられ、最外周の前記環状突出部の外周を切り欠いて形成されたクラック防止用段差部を有するロータリートランス用コアにおいて、 前記最外周の環状突出部の前記スリット側の端部が切り欠かれて、前記環状突出部のスリットの形成方向に迄回り込むようなクラック防止用段差延長部が延長形成されると共に、前記段差部と段差延長部との交差点に位置する最外周環状突出部の角部がR状に形成されていることを特徴とするロータリートランス用コア。(以下「本件考案」という)」 (3)実用新案登録異議申立ての理由及び取消理由通知の概要 実用新案登録異議申立人松田耕治は、証拠として甲第1号証(刊行物1.実公昭61-20723号公報)乃至甲第2号証(刊行物2.実願昭58-107405号(実開昭60-16514号)のマイクロフィルム)と参考資料1(平賀貞太郎他著「電子材料シリーズ フェライト」丸善株式会社 昭和61年11月30日発行、56頁)、参考資料2(向山芳世監修「テクニカブックス・37 形彫・ワイヤ放電加工マニュアル」大河出版 1989年8月10日発行、123頁)を提出し、本件考案は、甲第1号証乃至甲第2号証に記載された考案に基いてきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、実用新案登録を取り消すべきであると主張している。 取消理由通知も実用新案登録異議申立ての理由と同趣旨のものである。 (4)刊行物に記載された考案 ア.刊行物1(実公昭61-20723号公報) 刊行物1はロータリートランスの取付け構造に関するものであり、以下の点が、第1?6図と共に記載されている。 「回転部と固定部との間で信号の伝送をするためのロータリートランスの取付け構造において、上記ロータリートランスを構成する環状トランスコアの表面に中心を通って外周まで放射状に延びるリ一ド線引き出し溝を形成し、この引き出し溝のコア外周に連なる凹部に係合する押え爪を有する環状固定金具でもつて上記トランスコアを上記回転部若しくは固定部に固定するようにしたロータリートランスの取付け構造。」(実用新案登録請求の範囲) 「第1図のロータリートランスコア1は、例えばフエライト材でもつて環状に成型され、その表面には、コイル装着用の同心円状の2つの溝2,3が形成されている。・・・コア1の外周囲には、コア1を回転ドラムまたは固定ドラムの表面に固定するためのリング状つば部4が設けられている。このつば部をリング状の固定金具にて押え、その金具にビスをドラム表面に螺入して、コア1がドラムに固定される。」(第1頁左欄第24行?右欄第9行) 「第2図は本考案によるロータリートランスコア1の平面図、第3図は側面図である。このコア1は、ほぼ完全な環状に成型され、第1図のようなつば部4を備えていない。コア1の表面にはコイル装着溝2,3が同心円状に形成され、・・・更にコア1の表面には、半径方向に一対のリード線引き出し溝6a,6bが形成され、・・・第2図及び第3図に示すコア1は、回転ドラムまたは固定ドラムの中心位置に位置決めされた後、第4図に示す固定金具8でもつて固定される。このリング状の固定金具8は、120°間隔の取付脚9a,9b,9cを備え、また内周縁に180°間隔の押え爪10a,10bが設けられている。一方、第2図のコア1の各リ一ド線引き出し溝6a,6bの外周縁部には上記押え爪10a,l0bと係合する係合溝11a,11bが形成されている。」(第2頁左欄第2?22行) 即ち、刊行物1には、「円板状に形成され、外周から順次、環状突出部(トランスコア1の溝2、3が形成されていない上表面の環状突出部分)、コイル溝が同心状に設けられ、各環状突出部及びコイル溝2、3に交差するように複数のリード線引き出し溝6a,6bが外周から中心に向けて放射状に設けられたロータリートランス用コアにおいて、リード線引き出し溝6a,6bの外周縁部に押え爪10a、l0bと係合する係合溝11a,11bが形成されているロータリートランス用コア」という考案が記載されていると認められる。 イ.刊行物2(実願昭58-107405号(実開昭60-16514号)のマイクロフィルム) 刊行物2はロータリートランスに関するものであり、以下の点が、第2図と共に記載されている。 「主平面に同心円状の巻線の施された円板状フェライトコアを相対向させて成るロータリートランスにおいて、前記フェライトコアの主平面と外周面との稜部に段差を付けた事を特徴とするロータリートランス。」(実用新案登録請求の範囲) 「このロータリートランス用フェライトコア4は、巻線付設溝2の設けられている面5と外周面6との稜部に段差7を設けたものである。この段差7を設けることにより、従来巻線付設溝の施された面と外周面との稜部3において、カケ、ヒビ等が発生していたものを防止することが可能となり、特に巻線付設溝の施された面におけるカケ、ヒビ等を防止できるものである。」(第2頁第12?20行) 即ち、刊行物2には、「フェライトコアの主平面と外周面との稜部(最外周の環状突出部の外周)にクラックを防止するための段差を付けたロータリートランス」という考案が記載されていると認められる。 (5)本件考案と刊行物記載の考案との対比・判断 刊行物1に記載のロータリートランス用コアの最外周の環状突出部の外周に刊行物2に記載のクラックを防止するための段差を適用して、最外周の環状突出部に段差部を形成することはきわめて容易に想到できることではある。しかし、その場合、クラックを防止するために最外周の環状突出部に形成した段差と、リード線引き出し溝6a,6bの外周縁部に形成した係合溝11a,11bの段差とを同じ高さにする必然性は見い出せない。(本件考案のロータリートランス用コアにおいては、実用新案登録請求の範囲、図3等の記載から、クラック防止用段差部とクラック防止用段差延長部とには段差がないものと認められる。)しかも、その部分に段差が生ずると欠け発生防止のために新たな対策を講じる必要性が出てくる。 したがって、本件考案が上記刊行物1及び2に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認めることができない。 なお、実用新案登録異議申立人は、実用新案登録異議申立書の「C.本件考案と証拠の対比」の(i)「相違点1について」において参考資料1(平賀貞太郎他著「電子材料シリーズ フェライト」丸善株式会社 昭和61年11月30日発行、56頁)と参考資料2(向山芳世監修「テクニカブック・37 形彫・ワイヤ放電加工マニュアル」大河出版 1989年8月10日発行、123頁)とからの記載から、放電加工による加工方法によって金型を加工すれば金型の隅部がR化される旨を主張している。 しかし、金型の隅部がR化されることをもって、ロータリートランス用コアの特定部位である「段差部と段差延長部との交差点に位置する最外周環状突出部の角部」を有意なR状に形成することはきわめて容易になしえたものであるとすることはできない。 したがって、参考資料1、2を参酌しても、上記結論は変わらない。 (6)実用新案登録異議申立についての判断のむすび 以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件考案についての実用新案登録を取り消すことができない。 また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2003-06-03 |
出願番号 | 実願平4-70614 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
Y
(H01F)
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最終処分 | 維持 |
特許庁審判長 |
松本 邦夫 |
特許庁審判官 |
浅野 清 橋本 武 |
登録日 | 2001-09-07 |
登録番号 | 実用新案登録第2607595号(U2607595) |
権利者 |
ティーディーケイ株式会社 東京都中央区日本橋1丁目13番1号 |
考案の名称 | ロータリートランス用コア |
代理人 | 三澤 正義 |