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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A61G
管理番号 1083246
審判番号 無効2002-35457  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-10-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-10-23 
確定日 2003-09-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第1908777号実用新案「マツトレスの滑り落ち防止機構を備えたベツド」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第1908777号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件登録第1908777号実用新案の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)についての出願は、昭和60年7月19日に実用新案登録出願がされ、平成4年5月26日に登録がされた後、平成14年10月23日にこれを無効とすべき旨の審判(審判2002-35457号)が請求されたところ、これに対して、被請求人は、平成15年1月10日付け訂正請求書及び平成15年1月17日付け答弁書を提出して訂正請求したが、当該訂正請求に対して平成15年3月14日付けで当審より訂正拒絶理由通知がなされ、平成15年4月16日付け意見書及び同日付け手続補正書が被請求人から提出された。

2.訂正の可否について
(1)手続補正書による補正の適否について
(イ)訂正請求の要旨
被請求人による願書に添付した明細書又は図面の訂正の請求(以下、「本件訂正」という。)は、平成15年1月10日付け訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)によると、次の事項をその訂正の要旨とするものである。
(訂正事項1)
明細書の実用新案登録請求の範囲につき、「鋼板、合成樹脂板等の表面平滑な床板の端縁あるいはその他の任意の個所に、表面がぎざぎざな面で形成された滑り防止片を複数個付着してなり、これにより床板上に配置されるマットレスの滑り落ちを防止するようにしたことを特徴とするマットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッド。」を、
「鋼板、合成樹脂板等の表面平滑な床板の端縁あるいはその他の任意の個所に、添付図面の第1図乃至第3図に示されるような大きさを有し、表面が添付図面の第2図および第3図に示されるようなぎざぎざな面で形成された滑り防止片を複数個付着してなり、これにより床板上に配置されるマットレスの滑り落ちを防止するようにしたことを特徴とするマットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッド。」と、訂正するものである。
(訂正事項2)
明細書の考案の詳細な説明の[考案の目的]欄における「使用するのもかかわらず」を、「使用するにもかかわらず」と、訂正するものである。
(訂正事項3)
明細書の考案の詳細な説明の[考案の要点]欄における「表面がぎざぎざな面で形成された滑り防止片」を、「添付図面の第1図乃至第3図に示されるような大きさを有し、表面が添付図面の第2図および第3図に示されるようなぎざぎざな面で形成された滑り防止片」と、訂正するものである。
(訂正事項4)
明細書の考案の詳細な説明の[考案の効果]欄における「表面がぎざぎざな面で形成された滑り防止片」を、「添付図面の第1図乃至第3図に示されるような大きさを有し、表面が添付図面の第2図および第3図に示されるようなぎざぎざな面で形成された滑り防止片」と、訂正するものである。

(ロ)補正の内容
平成15年4月16日付け手続補正書(以下、「補正書」という。)による補正(以下、「本件補正」という。)は、願書に添付した明細書又は図面につき、次のとおりに補正するものである。
(補正事項1)
上記訂正事項1に代えて、明細書の実用新案登録請求の範囲につき、「鋼板、合成樹脂板等の表面平滑な床板の端縁あるいはその他の任意の個所に、表面がぎざぎざな面で形成された滑り防止片を複数個付着してなり、これにより床板上に配置されるマットレスの滑り落ちを防止するようにしたことを特徴とするマットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッド。」を、
「鋼板、合成樹脂板等の表面平滑な床板の両端縁に、表面がぎざぎざな面で形成された滑り防止片を複数個付着してなり、これにより床板上に配置されるマットレスの滑り落ちを防止するようにしたことを特徴とするマットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッド。」と、訂正するように変更するものである。
(補正事項2)
上記訂正事項2と同じく、明細書の考案の詳細な説明の[考案の目的]欄における「使用するのもかかわらず」を、「使用するにもかかわらず」と、訂正するものである。
(補正事項3)
上記訂正事項3に代えて、明細書の考案の詳細な説明の[考案の要点]欄における「端縁あるいはその他の任意の個所に、」を、「両端縁に、」と、訂正するように変更するものである。
(補正事項4)
明細書の考案の詳細な説明の[考案の要点]欄における「このような滑り防止片3は第3図示のように床板1の端縁2に長手方向に沿って付着してもよく、あるいは、図示しないが床板1面上の任意の箇所に付着しても構わない。」を、「このような滑り防止片3は第3図示のように床板1の端縁2に長手方向に沿って付着する。」と、訂正するように、新たに加えたものである。
(補正事項5)
上記訂正事項4に代えて、明細書の考案の詳細な説明の[考案の効果]欄における「床板面に、」を、「両端縁に、」と、訂正するように変更するものである。
(ハ)当審の判断
上記訂正事項1、訂正事項3及び訂正事項4が、「滑り防止片」の大きさ及びその表面の態様につき「添付図面の第1図乃至第3図に示されるような大きさを有し、表面が添付図面の第2図および第3図に示されるようなぎざぎざな面で形成された滑り防止片」であるという態様に限定・訂正するものであるのに対して、上記補正事項1及び補正事項3ないし補正事項5は、新たに上記訂正事項に代えて、上記「滑り防止片」の配置個所につき、「鋼板、合成樹脂板等の表面平滑な床板の両端縁に」配置するという具体的態様に限定・訂正するように変更するものであるといえる。
してみると、本件補正は、本件訂正の要旨を明らかに変更する補正事項を含むものであって、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、同条第2項の規定により読み替えられた平成5年法改正前の実用新案法第41条の規定により準用する特許法第131条第2項の規定に違反するものであるから、これを適法な補正として採用することができない。

(2)訂正請求の適否について
(イ)訂正請求の要旨
上記したように、本件補正を認めることができないから、本件訂正は、平成15年1月10日付け訂正請求書に記載された、上記2.(1)の(イ)に記載した訂正事項1ないし4をその要旨とするものと認められる。
(ロ)訂正拒絶理由の概要
平成15年3月14日付け訂正拒絶理由通知書で示した理由の概要は、本件訂正は、訂正事項2が誤記の訂正に該当することを除いて、訂正事項1、訂正事項3及び訂正事項4につき、実用新案登録請求の範囲を減縮、誤記の訂正または明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当するということができないから、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、同条第2項の規定により読み替えられた平成5年法改正前の実用新案法第40条第2項ただし書の規定に適合しないというものである。
(ハ)当審の判断
これに対する被請求人の意見は、上記2.(1)の(ロ)で示した本件補正を前提として、訂正拒絶理由を解消したと主張するものである(平成15年4月16日付意見書の「6.理由」の「1.」参照)が、上記したとおり、本件補正を認めることができない。
そして、平成15年3月14日付け訂正拒絶理由通知書で示した理由は妥当なものであるといえる。
したがって、本件訂正は、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、同条第2項の規定により読み替えられた平成5年法改正前の実用新案法第40条第2項ただし書の規定に適合しないから、これを認めることができない。

3.本件考案
上記2.で示したように本件訂正を認めることができないから、本件考案は、願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「鋼板、合成樹脂板等の表面平滑な床板の端縁あるいはその他の任意の個所に、表面がぎざぎざな面で形成された滑り防止片を複数個付着してなり、これにより床板上に配置されるマットレスの滑り落ちを防止するようにしたことを特徴とするマットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッド。」

4.当事者の主張の要点
(1)請求人の主張
請求人は、平成14年10月23日付け審判請求書において、「登録第1908777号実用新案の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、「本件実用新案登録に係る考案は、甲第1号証に記載された考案に基づいて、当業者が極めて容易に考案できたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができないものであり、同法第37条第1項第2号により無効とすべきである。」と主張し、次の証拠方法を提出している。
(証拠)
甲第1号証:「HOSPITALS」JOURNAL OF THE AMERICAN HOSPITAL ASSOCIATION, Volume. 39, Number 17 (September 1, 1965)(米)
甲第2号証:甲第1号証の原文と翻訳文
甲第3号証:特開昭54-98829号公報
甲第4号証:特開昭60-53447号公報
甲第5号証:特開昭57-77518号公報
甲第6号証:特開昭60-87151号公報
甲第7号証:特開昭58-188595号公報
甲第8号証:「デッサンの用具と使い方」、美術出版社、1983年7月25日第1刷発行
そして、請求人は、「甲第1号証には、床板としての、表面が平滑な鋼製板の両側の端縁の近傍に、マットレスを所定位置に保持するための、表面に畝のあるゴム製帯を、一つの鋼製板毎に2つ設けたベッドが記載されている。」(平成14年10月23日付け審判請求書の第4頁6?8行参照)と主張し、甲第1号証と本件考案との構成上の相違点は、単なる選択的事項にすぎないと主張する。
なお、甲第1号証として提出された写しが、雑誌「HOSPITALS」の原本と相違ないことは、平成年月日の口頭審尋において合議体が確認した。

(2)被請求人の主張
被請求人は、平成15年1月17日付け答弁書において、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、上記訂正請求書に基づく本件訂正により特定された「滑り防止片」の具体的構成を本件考案が備えることを前提として、当該構成が甲第1号証ないし甲第8号証のいずれにも記載されていないから、上記請求人の主張は理由がないと主張する。
そして、被請求人は、証拠方法として、乙第1号証(同上訂正請求書)及び乙第2号証(実用新案登録第1908777号訂正審判事件の審判請求書)を提出している。
なお、上記訂正審判事件(審判2003-39004号事件)の審判請求書につき、平成15年3月20日付けで却下決定がなされ、同年4月2日に被請求人へ送達された。

5.甲第1号証に記載された考案について
(1)甲第1号証に記載された考案
請求人が提出した証拠であって、本件考案の出願日前に頒布された刊行物と認めることができる甲第1号証には、その第90?91頁に、次の事項が示されている。
(記載事項1)
「Simmons Multi-Mate beds」と称されるベッドの写真とともに、ベッドの各部分の説明文が引出線を介して表示されており、当該ベッドの最も右側に位置して起伏状態とされた鋼製板(steel panels)につき、病院に好適な複数の鋼製板は、マットレスを所定の位置に保持するための、リブのある複数のゴム製帯を備えている(「HOSPITAL-PREFERRED STEEL PANELS Have ribbed rubber straps to keep mattress in potion. 」)という説明が記載されている。
(記載事項2)
上記ベッドの写真を見ると、ベッドの最も右側に位置して起伏状態とされた鋼製板の左右の両端縁に沿ってゴム製帯をそれぞれ配置した構成とともに、当該ベッドの最も左側に位置する鋼製板にも同様に一対のゴム製帯を配置した構成が示されており、また、当該ゴム製帯が複数条のリブを備えている構成が示されている。
上記記載事項1ないし2並びに写真に示された事項を総合すると、甲第1号証には、次の考案(以下、「引用考案」という。)が記載されていると認められる。
(引用考案)
「ベッドのマットレスを載せる複数の鋼製板上の両端縁近くに、マットレスを所定の位置に保持するための、複数条のリブのあるゴム製帯をそれぞれ配置するように構成したベッド。」

6.対比・判断
(1)一致点・相違点
本件考案と引用考案とを対比すると、後者における「マットレスを載せる」「鋼製板」は前者における「鋼板」等の「床板」に、後者における「マットレスを所定の位置に保持するための」「ゴム製帯」は前者における「マットレスの滑り落ちを防止する」「滑り防止片」に、それぞれ、その機能からみて相当すると解されるから、両者は、
「鋼板等の床板に、滑り防止片を複数個配置し、これにより床板上に配置されるマットレスの滑り落ちを防止するようにしたことを特徴とするマットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッド。」である点で一致し、
(A)鋼板等の床板に関して、本件考案においては「表面平滑な床板」として構成されているのに対して、引用考案では、鋼製板の表面が平滑であるのか否かにつき、明記されていない点(以下、「相違点A」という。)、
(B)滑り防止片の表面の形態に関して、本件考案においては「表面がぎざぎざな面で形成された」ものであるのに対して、引用考案においては「複数条のリブのある」ものとして構成されている点(以下、「相違点B」という。)、
(C)滑り防止片の取付態様に関して、本件考案においては床板に対して「付着」するものであるのに対して、引用考案では、如何なる取付態様であるのかが明らかでない点(以下、「相違点C」という。)、で相違している。
なお、滑り防止片の配置箇所につき、本件考案は「床板の端縁あるいはその他の任意の個所に」と規定されているに止まることから、引用考案における「鋼製板上の両端縁近くに」配置したものと、その配置個所において両者が相違するということができない。

(2)相違点の検討
そこで、上記相違点AないしCについて以下に検討する。
(相違点Aについて)
上記記載事項1によると、「病院に好適な複数の鋼製板は、マットレスを所定の位置に保持するための、リブのある複数のゴム製帯を備えている」のであるから、当該鋼製板そのものの表面は、ゴム製帯が無いとマットレスを所定の位置に保持するのが困難なものであることが、言いかえれば、マットレスが滑りやすい表面として形成されていることが想定できる。
そして、従来よりベッドや家具等に普通に使用されている鋼製板は、特段の事情の無い限り、平滑な表面を備えたものが通常使用されているといえる。
さらに、甲第1号証の写真を見ても、その鋼製板が、従来より慣用されている平滑な表面を備えていることを否定し得る事実を見出すことができず、却って、その鋼製板の表面が平滑であることが窺える。
してみると、上記相違点Aは、引用考案が既に備えているといえる構成であって、実質的な相違点であるということができない。
(相違点Bについて)
本件考案における「滑り防止片」の「表面がぎざぎざな面で形成された」の技術的意義につき検討すると、「ぎざぎざ」という用語が「のこぎりの歯のような刻み目があるさま」(岩波国語辞典・第三版)を意味するものであるから、その表面形状がのこぎりの歯のような刻み目があるさまを呈する面として形成されたものと解することができ、その形状の大きさまでを特定したものと解することはできない。
そして、ベッドに使用されるマットレスの滑り止め手段として、上記したような「ぎざぎざ」な形状を表面に備えさせたものは、本件考案の出願日前に周知であるといえる(例えば、実願昭55-40131号(実開昭56-140358号)のマイクロフィルムに示された第3図参照)。
してみると、上記相違点Bは、引用考案における「複数条のリブ」の形状として、上記周知の形状を採用することにより、当業者がきわめて容易に想到し得る設計上の変更であるといえる。
(相違点Cについて)
引用考案における取付態様につき検討すると、鋼製板の端縁にゴム製帯を配置しているところ、鋼製板とゴム製帯とはそれぞれの材質が異なることを考慮すると、別体であるゴム製帯が何らかの取付態様を用いて鋼製板に(マットレスを保持するに十分な程度の固定力をもって)離れないように取付けられているものと解することができる。
ところで、本件考案における「付着」という取付態様は、「付着」という語が「他の物について離れないこと。ひっつくこと。」(広辞苑第4版参照)を意味することから、滑り防止片が、これと別体である床板に離れないようにされた取付態様を意味するものといえる。
してみると、上記相違点Cは、引用考案が既に備えているといえる構成であって、実質的な相違点であるということができない。
(まとめ)
したがって、以上の相違点につき検討したことから、本件考案は、甲第1号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案することができたものといえる。

7.むすび
以上のとおりであるから、その余の証拠について検討するまでもなく、本件考案は、甲第1号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、本件考案は、実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができないものであり、同法第37条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法41条で準用する特許法第169条第2項でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-07-03 
結審通知日 2003-07-08 
審決日 2003-07-22 
出願番号 実願昭60-110734 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (A61G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西川 正俊  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 和泉 等
藤原 直欣
登録日 1992-05-26 
登録番号 実用新案登録第1908777号(U1908777) 
考案の名称 マツトレスの滑り落ち防止機構を備えたベツド  
代理人 染谷 仁  
代理人 三觜 晃司  
代理人 松田 浩明  
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