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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B42D
管理番号 1084964
審判番号 審判1998-35625  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-12-10 
確定日 2003-10-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第2528204号「葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメント」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成12年 1月 5日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成12(行ケ)年第89号平成13年 8月27日判決言渡)、この判決に対し最高裁判所において上告棄却の判決(平成13年(行ツ)第346号、平成13年(行ヒ)第333号、平成14年1月22日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 登録第2528204号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件は、名称を「葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメント」とする実用新案登録第2528204号考案であり、本件実用新案登録は、昭和60年1月17日にされた先の実用新案登録出願に基づく優先権を主張して(平成5年法律第26号による改正前の実用新案法7条の2第1項)、昭和60年11月25日にされた実用新案登録出願(実願昭60-180888号、以下「原出願」という。)の一部を分割して平成3年1月9日にされた新たな実用新案登録出願(実願平3-271号)に係り、平成8年12月2日に設定登録されたものであるところ、本件実用新案登録につき申し立てられた実用新案登録異議事件(平成9年異議第74180号)の係属中である平成10年3月13日に、明細書の実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正請求がなされ、同年6月19日、同異議事件につき「訂正を認める。実用新案登録第2528204号の実用新案登録を維持する。」との決定がなされた。この決定は同年7月23日に確定した。平成10年12月10日、本件実用新案登録につき本件無効審判(平成10年審判第35625号事件)が請求され、審理された上、平成12年1月5日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年2月16日原告に送達された。 この審決に対して、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成12年(行ケ)89号、平成13年8月27日判決言渡)、この判決に対し最高裁判所において上告棄却の判決(平成13年(行ツ)第346号、平成13年(行ヒ)第333号、平成14年1月22日判決言渡)があったものである。
2.本件考案
本件実用新案登録第2528204号の実用新案登録請求の範囲第1項の考案の要旨は、付与後異議における訂正請求により訂正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認められる。
「透明フィルムと、該透明フィルムの上面に剥離可能に貼着し、葉書の文面文字が読取り不能な不透明な表葉紙と、前記透明フィルムの下面に塗布する葉書表面への接着用の透明粘着剤とからなり、
前記透明フィルムに対する前記表葉紙の剥離強度は、葉書に対する前記透明フィルムの剥離強度より小さく、
前記表葉紙の表面には、剥離用の案内表示を記入するとともに任意の通信文面が記載可能であり、前記表葉紙、透明フィルムは、縁を揃えて同形同大に形成し、葉書より小さくして全周に余裕を生じさせるとともに葉書の文面文字を隠蔽可能な大きさにすることを特徴とする、
葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメント。」(以下、「本件考案」という。)
3.請求人の主張
これに対して請求人は、
(無効理由1)本件考案は、原出願の考案と実質的に同一であるから、分割要件を満たしていない。そのため、本件出願は出願日の遡及効果が得られず、本件出願日は現実の出願日(平成3年1月9日)となる。その結果、甲第3号証は本件出願前に頒布された刊行物となり、本件考案は甲第3号証に記載された考案に該当し、旧実用新案法第3条第1項第3号により登録を受けることができないから、無効とされるべきである。
(無効理由2)また、本件出願が分割要件を満たしており、出願日が遡及したとしても、原出願の明細書に記載された実施例を参酌して実用新案登録請求の範囲を考察すると、そこには、本件考案の構成をすべて有する考案が記載されている。したがって、本件考案は原出願の考案と実質的に同一であり、実用新案法第7条第2項に該当し登録を受けることができないものであるから、無効とされるべきである。
(無効理由3)仮に、本件実用新案登録が分割要件を満たしており、本件出願日が原出願の出願日に遡及するとしても、本件考案は、原出願の出願日以前に頒布された刊行物である甲第6?13号証に記載された各考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、旧実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができず、無効とされるものである。
と主張し、証拠方法として、
1)甲第1号証:実用新案登録第2528204号公報(本件実用新案登録公報)
2)甲第2号証:実用新案登録第2528204号の訂正請求書
3)甲第3号証:実願昭60-180888号(実開昭62-9571号)のマイクロフィルム(原出願)
4)甲第4号証:実公平4-27664号公報(原出願)
5)甲第5号証:原出願の平成5年3月24日付け手続補正書
6)甲第6号証:特開昭50-33019号公報
7)甲第7号証:特開昭56-127446号公報
8)甲第8号証:実願昭56-32505号(実開昭57-147069号)のマイクロフィルム
9)甲第9号証:実願昭50-131289号(実開昭52-44829号)のマイクロフィルム
10)甲第10号証:実開昭52-21530号公報
11)甲第11号証:特開昭54-56526号公報
12)甲第12号証:実開昭53-140533号公報
13)甲第13号証:実開昭51-88329号公報
14)甲第14号証:平成2年審判第22649号審決
15)甲第15号証:平成5年(行ケ)第192号判決
16)甲第16号証:平成8年(行ツ)第191号判決
17)参考資料:別表「甲第7号証考案の図面と本件考案図面の対比」
を提出している。
4.上記無効理由3について
(甲第8号証記載の考案)
甲第8号証:実願昭56-32505号(実開昭57-147069号)のマイクロフィルムには、以下の記載がある。
「このはがき(1)の受取人は、……紙をはがせば中にラッキー番号がある旨を記載した文字、矢印(12)等が印刷される。……尚、ラッキー番号を設けず、単にはがすことが可能なことを目立つように表示するのみでもよいのは勿論である。」(第3頁第16行?第4頁第5行、第2図)、
「本考案は・・・同じ郵便料金で情報・通信の利用面を従来の2倍以上にしたはがきを提供するものである」(2頁14行目?16行目)、
「本考案によるはがき(1)は、本体紙(2)と剥離可能紙(3)とから成り、剥離可能紙(3)は本体紙(2)と同一面積を有していて、本体紙(2)に剥離可能な状態で接着(又は粘着)されている。・・・このはがき(1)は、本体紙(2)の裏面を第1の通信面(4)とし・・・剥離可能紙(3)の裏面を第3の通信面(6)として使用される」(2頁末行?3頁8行目)、
「この通信面(6)の一部に、紙をはがせば中にラッキー番号がある旨を記載した文字、矢印(12)等が印刷される。・・・ラッキー番号を設けず、単にはがすことが可能なことを目立つように表示するのみでもよい」(3頁19行目?4頁5行目)、
「剥離可能紙(3)は、郵便はがき(ここでは本体紙(2))に添付することのできる規格に合ったものでなければならず」(5頁15行目?18行目)との記載があり、これに第2図及び第5図の図示を総合すれば、甲第8号証には、
「剥離可能紙(3)と該剥離可能紙(3)の下面に本体紙(2)との接着用の接着剤とからなり、剥離可能紙(3)の表面には、剥がすことを目立つように表示する文字、矢印等が印刷されるとともに、各種の宣伝文などが印刷されており、本体紙(2)の剥離紙側の通信面(4)には商品のイラスト又は写真、商品の紹介文などが記載されている郵便はがき」が記載されている。
(対比・判断)
本件考案と甲第8号証記載の考案とを対比すると、
甲第8号証記載の考案においては、本体紙(2)に剥離可能紙(3)を接着又は粘着したものを「はがき(1)」と称しているが、剥離可能紙(3)は不透明で、第1の通信面(4)である本体紙(2)の裏面の文面文字を隠蔽するものであるから、葉書の文面隠蔽という機能面において、甲第8号証記載の考案の「本体紙(2)」、「剥離可能紙(3)及び接着剤」が本件考案の「葉書」、「文面隠蔽用複層化アタッチメント」にそれぞれ相当することは明らかである。 そうすると、甲第8号証記載の考案は、本件考案の表葉紙に相当する剥離可能紙(3)に剥離用の案内表示が記入されているとともに任意の通信文面が記載可能とされているというべきであるので、両者は、
「葉書の文面文字が読取り不能な不透明な表葉紙と、該表葉紙を葉書表面への接着するための透明粘着剤とからなり、前記表葉紙の表面には、剥離用の案内表示を記入するとともに任意の通信文面が記載可能であり、前記表葉紙は葉書の文面文字を隠蔽可能な大きさにすることを特徴とする、葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメント。」である点で一致し、
・相違点1
本件考案の表葉紙が、透明フィルムと、該透明フィルムの上面に剥離可能に貼着したものであり、前記透明フィルムの下面に塗布する葉書表面への接着用の透明粘着剤とからなり、前記透明フィルムに対する前記表葉紙の剥離強度は、葉書に対する前記透明フィルムの剥離強度より小さくするのに対し、甲第8号証記載の考案はそのような構成を備えていない点、
・相違点2
本件考案の、表葉紙、透明フィルムは、縁を揃えて同形同大に形成するのに対し、甲第8号証記載の考案はそのような構成を備えていない点、
・相違点3
本件考案の、表葉紙、透明フィルムは、葉書より小さくして全周に余裕を生じさせているのに対し、甲第8号証記載の考案は、表葉紙が葉書と同じ大きさである点、
で相違していると認められる。
まず、相違点1及び2から検討すると、
甲第7号証には、
「面材料シート(10)、該面材料の片側を被覆し該材料に付着性の重合物材料層(14)、及び該重合物材料層(14)に貼り合わされ基体(20)に粘着するようにされた接着剤層(16)を含む積層構成物」(特許請求の範囲の第1項)に関し、「本発明の一つは、面材料シート、該面材料シートの片側を被覆しそれに付着する重合物層及び該重合物に積層され基体に付着するようにした接着剤層を包含する自己非粘着化積層構成物を提供することであり、該面材料シートは、該重合物層と該接着剤層の分離或いは該接着剤層と該基体の分離に要する力より小さな力で該面材料シートを該重合物層から剥離する手段を含むものであり、そのため該面材料シートを該積層構成物から取除く際接着剤層により重合物層が基体に付着し非粘着性接着剤表面が提供されるのである。・・・重合物は面材料と接着剤とでは異なる剥離能を有するものである必要がある。・・・すなわち面材料を剥ぎ取る際重合物フィルムは面材料からはがれ、接着剤被覆に永久的に付着残存する。・・・予め印刷した積層構成物・・・が露出接着剤により基体に貼り付け、レッテル、荷札、ステッカー、業務カード、会員カード、クレジットカード或いはそれらの類似物として使用される。面材料を構成物の残りの部分から取除きたいとき、例えば予め印刷したカードを大型の基体から取除きたいときは、重合物が面材料からはがれて接着剤被覆上に永久的に留まる」(2頁右下欄1行目?3頁左上欄17行目)、
「本発明の利点は、面材料の片側又は両側を積層前に予かじめ印刷できること、或いは基体に積層後もその外面に印刷できることである。更に、基体も積層構成物で被覆される部分を含めて予じめ印刷可能であり、その部分は透明な重合物及び接着剤を使用する限り面材料を取除くと見えるようになり読取り可能である」(4頁右下欄3行目?9行目)、
「実施例・・・ロールの端を揃え切りし、小ロールに分割した。所望ならば別法として積層物をシート状に切出すこともできる」(5頁左上欄2行目?右上欄12行目)との記載がある。
以上の記載によれば、甲第7号証記載の考案の積層構成物が貼付される「基体」としては葉書も用い得ること、その場合、甲第7号証記載の考案の「面材料シート」及び「重合物材料層」が、本件考案の「表葉紙」及び「透明フイルム」に相当すること、「面材料シート」に印刷可能であること、「面材料シート」を取り除くまでは基体は隠蔽状態にあること、及び「面材料シート」と「重合物材料層」は、縁をそろえて同形同大に形成されていることが認められる。また、「面材料シート」は、「重合物材料層」と「接着剤層」の分離、或いは「接着剤層」と「基体」の分離に要する力より小さな力で「面材料シート」を「重合物材料層」から剥離するものである。
そうすると、甲第7号証記載の考案は、葉書の文面隠蔽用としても採用の可能な積層構成物であって、かつ、「表葉紙」に相当する「面材料シート」と「透明フィルム」に相当する「重合物材料層」を縁をそろえて同形同大に形成する構成を備え、しかも、「面材料シート」は、「重合物材料層」と「接着剤層」の分離、或いは「接着剤層」と「基体」の分離に要する力より小さな力で「面材料シート」を「重合物材料層」から剥離する構成を備えているものであるから、当該構成を、同じく葉書の文面隠蔽用として用いられている甲第8号証記載の考案に適用し、本件考案の上記相違点1及び2に関する構成に至ることには、何ら困難性はないというべきである。
次に、上記相違点3について検討すると、
本件考案の、「表葉紙、透明フィルムは、葉書より小さくして全周に余裕を生じさせている」点の技術的意義について、本件考案が「葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメント」に係る考案である以上、「表葉紙、透明フィルムは、葉書より小さくして全周に余裕を生じさせるとともに葉書の文面文字を隠蔽可能な大きさにする」との構成も、葉書への貼着形態いかんにかかわらず当該アタッチメント自体として備える構成として理解すべきであり、そうすると、上記構成は、アタッチメントの葉書との相対的な大きさ及び形状を規定した要件であるというべきである。
このような観点から、該構成の具体的な意義について、進んで検討する。 本件実用新案登録明細書には、「葉書としての取扱いを受けるためには、葉書の表面を剥離可能に全面的に貼着した複層化葉書を使用すればよい」(段落【0002】)、「私信を含むあらゆる用途に好適に適用でき」(同【0005】)、「葉書Nを用意し(図3ないし図5)、その表面と、複層化アタッチメントMの上面に、それぞれ所要の文字や図案を印刷し、あるいは手書きで記載する」(同【0013】)、「文面文字を隠蔽するには、図3および図4に示すように、まず、複層化アタッチメントMから剥離紙Pを剥離し、葉書Nの表面に複層化アタッチメントMを押し当て、下面の透明粘着剤11を介して貼着する」(同【0014】)、「複層化葉書MNは、葉書N表面の広告が表葉紙Lによって隠蔽されているので、その文面文字は読取り不能であり、したがって、その内容が未開ないし秘密のままの状態で配達される」(同【0015】)との各記載があり、図6には、葉書よりわずかに小さく、全周に余裕を残すように葉書に貼付されたアタッチメントが図示されている。
これらの記載及び図示によれば、本件考案のアタッチメントは、葉書の文面文字を全面的に隠蔽可能なように貼着されるものであり、私信を含むあらゆる用途に好適なものである以上、その場合の葉書の文面文字は、上下左右にある程度の余白(マージン)を残しつつ、その全面にわたって記載されることも当然想定されるのであるから、本件考案のアタッチメントの長辺及び短辺は、葉書の長辺及び短辺より短いものの、その差は、葉書の全面に記載される文面文字の上下左右の余白(マージン)として通常想定される範囲に収まる程度のものと解される。このことは、「余裕」という用語が観念させるところにも符合するとともに、図6に図示される実施例にも合致するものである。
次に、上記解釈を前提に、甲第8号証記載の考案に「表葉紙、透明フィルムは、葉書より小さくして全周に余裕を生じさせるとともに葉書の文面文字を隠蔽可能な大きさにする」との構成を適用することが当業者にきわめて容易に想到し得るかどうかについて検討する。
甲第8号証記載の考案においては、「剥離可能紙(3)は本体紙(2)と同一面積」とされていることは上記のとおりであるから、剥離可能紙(3)を本体紙(2)に接着する際、剥離可能紙(3)と本体紙(2)の四隅及び四辺が完全に重なるようにしない限り、剥離可能紙(3)の一部が本体紙(2)からはみ出すこととなり、接着時の困難性があることは自明である。そして、剥離可能紙(3)を本体紙(2)よりもわずかに小さくすること、すなわち、剥離可能紙(3)の長辺及び短辺を本体紙(2)の長辺及び短辺よりもわずかに小さくすることにより、この困難性を回避し得ることも明らかである。
そうすると、甲第8号証記載の考案に自明な上記の課題を踏まえて、剥離可能紙(3)を葉書の全周に余裕を生じさせる程度の大きさとすることは、当業者の適宜行い得る設計的事項であるというべきであり、このことは、実願昭57-41070号(実開昭58-145769号)のマイクロフィルムにおいて、葉書の文面文字を剥離可能な隠紙の貼着により隠蔽(封状)するものを図示するとともに、「上記実施例では葉書1の裏面略全域を隠紙2で封状する状態を図示しているが、封状する文面の量等に応じて隠紙2の大きさを自由に決定し・・・該大きさの隠紙2で葉書1裏面の所望範囲を適宜封状できることは言うまでもない」(4頁15行目?20行目)との記載からも裏付けられるものである。
もっとも、甲第8号証記載の考案は、前示のとおり、同じ郵便料金での通信利用面の拡大を目的とするものであって、この観点からは、表面及び裏面をそれぞれ第2及び第3の通信面として用いる剥離可能紙(3)は大きい方が望ましいということはいえるが、そうであるからといって、剥離可能紙(3)と本体紙(2)との四隅及び四辺を完全に重ねるようにすべきことまで必然的に要求されるものとは解されない。
また、剥離可能紙(3)の本体紙への接着時の困難性を解決するためには、剥離可能紙(3)をわずかに小さくすれば足り、その記載可能な情報量をさほど制限する必要もないことからすれば、甲第8号証記載の考案が通信利用面の拡大を目的とするものであるからといって、上記の判断を左右するものとはいえない。
結局、本件考案の上記構成は、甲第8号証記載の考案の設計的事項として当業者がきわめて容易に想到し得るものというべきである。
次に本件考案の作用効果を検討する。
(1)「名宛人に対し、隠蔽されている葉書の文面文字を確実に読ませることができる」、
(2)「葉書に対する貼着位置が変動しても、表葉紙と案内表示との相対位置関係が一定に保たれ」、
(3)「アタッチメントとしての汎用性を一層大きくすることができる」、
との各点について、本件考案の進歩性を基礎付けるに足りるものかどうか、以下順次検討する。
まず、「名宛人に対し、隠蔽されている葉書の文面文字を確実に読ませることができる」との作用効果は、剥離用の案内表示によって隠蔽されている文面文字の存在を表示することによって奏される効果であると解されるところ、甲第8号証記載の考案にも剥離案内指示がある以上、当業者の予測が困難な本件考案の独自の効果ということはできない。
「葉書に対する貼着位置が変動しても、表葉紙と案内表示との相対位置関係が一定に保たれ」るとの作用効果については、本件考案のアタッチメントが葉書に対して大きく貼着位置が変動するものと解されないことは前示判断から明らかであるから、そもそも本件考案の効果と認められない。仮に、そのような効果が奏されるとしても、当該効果は、剥離用の案内表示を表葉紙に記入するとの構成に由来するものと解されるところ、当該構成が甲第8号証記載の考案の備えるものである以上、当業者の予測が困難な本件考案の独自の効果ということもできない。
「アタッチメントとしての汎用性を一層大きくする」との作用効果は、本件実用新案登録明細書の「私信を含むあらゆる用途に好適に適用でき・・・ラミネート加工に劣らぬ美粧性を有する」(段落【0005】)との記載に対応するものと解されるところ、「私信を含むあらゆる用途に好適に適用でき」る点は甲第8号証記載の考案と異なるものではないし、「ラミネート加工に劣らぬ美粧性を有する」点は甲第7号証記載の考案と異なるものではないから、甲第7、8号証記載の各考案を組み合わせることにより、きわめて容易に予測することのできる効果にすぎない。
結局、実用新案登録明細書記載の本件考案の作用効果は、本件考案の効果であるとは認められないか、甲第7、8号証記載の各考案から予測し得る程度のものであって、格別の作用効果ということはできない。
したがって、本件考案は、甲第7、8号証記載の各考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
以上のとおり、その余の無効理由について判断するまでもなく、本件考案は無効とすべきものである。
5.むすび
以上のとおり、本件考案は、本件出願前に頒布された甲第7、8号証記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定において準用する特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。

なお、被請求人は平成14年8月6日付で上申書を提出して、平成14年7月29日付の審理終結通知に対し、訂正の機会を求めて審理の再開の必要性を述べているが、本件は上記手続の経緯にみられる如く平成12年1月5日付の審決に対する出訴事件において、東京高等裁判所において審理され、その判決は最高裁判所において確定しているものである。したがって、ここで審理対象を変化させることまで含めて審理の再開をすることは、いままでになされた審理を無駄にし、特許の有効性に対する判断を著しく遅らせることにもなるので審理の再開は行わない。
審理終結日 1999-12-03 
結審通知日 1999-12-24 
審決日 2000-01-05 
出願番号 実願平3-271 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (B42D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 外山 邦昭藤井 靖子  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 白樫 泰子
久保 竜一
渡部 葉子
瀬津 太朗
登録日 1996-12-02 
登録番号 実用新案登録第2528204号(U2528204) 
考案の名称 葉書の文面隠蔽用複層化アタッチメント  
代理人 船山 武  
代理人 大野 幹憲  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 松田 忠秋  
代理人 青山 正和  
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