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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない A41B
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない A41B
審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 無効としない A41B
管理番号 1084968
審判番号 無効2002-35172  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-05-07 
確定日 2003-01-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第2563353号実用新案「紙おむつ」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 理由
1.手続の経緯
本件実用新案登録第2563353号に係る考案についての出願は、平成3年8月13日に出願されたものであって、平成9年11月14日に、その考案について実用新案登録の設定登録がなされた。
これに対し、平成14年5月7日に、請求人白十字株式会社より無効審判の請求がなされ、平成14年7月22日に、被請求人大王製紙株式会社より答弁書が提出され、その後に請求人より平成14年10月3日に弁駁書が提出され、平成14年11月1日に請求人及び被請求人より口頭審理陳述要領書がそれぞれ提出され、同日に口頭審理が行われ、さらにその後請求人より平成14年11月19日に弁駁書(第2)が提出されたものである。

2.本件考案
本件実用新案登録第2563353号の請求項1ないし3に係る考案は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
不透液性シートと透液性シートとで吸収体を包被し、かつ両側部に使用面側に突出し、かつその突出用弾性伸縮部材が設けられたバリヤーカフスを有し、吸収体の側縁の外方にフラップが形成された紙おむつにおいて、
前記各バリヤーカフスは、撥水性または不透水性のバリヤーシートにより形成され、このバリヤーシートは内折りされて2重シートとされ、このバリヤーシートの内側部分は少なくとも脚回り部分において内起立線をもって透液性シートに対して固定され、前記バリヤーシートの外側部分は少なくとも脚周り部分のフラップ部分において不透液性シートまたは延在する透液性シートに対して外起立線をもって固定され、
さらに内起立線と外起立線との幅方向中間において、バリヤーシートの内側部分と外側部分とが少なくとも脚周り部分において長手方向に延びる1本以上の整形用固定線をもって相互に固定されていることを特徴とする紙おむつ。
【請求項2】
前記弾性伸縮部材は、バリヤーシートの2重部分内に配設され、長手方向両端部分のみにおいてバリヤーシートに固定され、このバリヤーシートは紙おむつ本体に対して内側に伏倒状態で固定されている請求項1記載の紙おむつ。
【請求項3】
前記弾性伸縮部材は、バリヤーシートは長手方向両端部分のみにおいてバリヤーシートの2重部分内の幅方向中間部分において固定され、このバリヤーシートは紙おむつ本体に対して内側に伏倒状態で固定されている請求項1記載の紙おむつ。」

3.請求人及び被請求人の主張の概略
A.請求人の主張
請求人は、証拠を提出するとともに、本件実用新案登録には、概略、以下の無効理由1ないし3がある旨主張している。
【無効理由1】(旧実用新案法第3条第1項第3号違反)
1-a.請求項1に係る考案は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証にそれぞれ記載された考案である。
1-b.請求項2、請求項3に係る考案は、甲第1号証記載の考案である。

【無効理由2】(旧実用新案法第3条第2項違反)
2-a.請求項1に係る考案は、甲第1号証、または甲第2号証、または甲第3号証の記載に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
2-b.請求項1に係る考案は、甲第1号証及び甲第2号証、または甲第1号証及び甲第3号証の記載に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
2-c.請求項2及び請求項3に係る考案は、少なくとも甲第1号証、または甲第1号証及び甲第2号証、または甲第1号証及び甲第3号証の記載に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

【無効理由3】(旧実用新案法第5条第5項第2号及び第6項違反)
実用新案登録請求の範囲の請求項1には、実用新案登録を受けようとする考案の構成に欠くことのできない事項が記載されていない。

証拠方法:
甲第1号証:特開昭62-250201号公報
甲第2号証:特開昭63-112702号公報
甲第3号証:特開昭63-159501号公報

B.被請求人の主張
被請求人の主張は、概略、つぎのとおりである。
【無効理由1,2】(旧実用新案法第3条第1項第3号または第3条第2項違反)の主張について
本件請求項1に係る考案は、甲第1ないし3号証のいずれに記載されたものでもないし、当業者が甲第1ないし3号証より、きわめて容易に考案をすることができたものでもない。また、請求項1の従属形式で表現された本件請求項2,3に係る考案についても同様であるので、本件実用新案登録は無効とされるものではない。

【無効理由3】(旧実用新案法第5条第5項第2号及び第6項違反の主張について)
本件請求項1に係る考案は、作用効果との関係で明確であり、請求人主張の構成を必須のものとする理由はない。よって、本件実用新案登録は無効とされるものではない。

4.当審の判断
A.無効理由1及び2について
i)甲各号証の記載事項
a.甲第1号証には、図面とともに、次のア)?シ)の事項が記載されている。
ア)(公報第2頁右上欄第3行?第6行)
「本発明は使い捨てオシメなどの吸収性製品に関するものであり、特に製品の収容能力を改良するガスケットカフスおよびバリヤカフスを有する吸収性製品に関するものである。」
イ)(公報第3頁右下欄第20行?第4頁左上欄第7行)
「第1図はオシメ20の好ましい実施態様を示し、この場合にトップシート38とバックシート42は同延長を有し、吸収性コア44より全体として大なる長さ寸法と幅寸法とを有する。トップシート38がバックシート42の上に重ね合わされて、オシメ20の外周28を成す。外周28はオシメ20の外周すなわち縁部を成す。この外周28は、末端縁32と縦縁30とを含む。」
ウ)(公報第4頁右上欄第14行?第18行)
「バリヤカフス62はトップシート38に固着された別個の要素として示されている。その近位縁64はトップシート38に対して接着剤92によって接着する事によって形成される。」
エ)(公報第4頁左下欄第14行?第18行)
「吸収性コア44はトップシート38とバックシート42との間に配置され、これらのトップシート38とバックシート42はいずれも吸収性コア44の縦縁46から突出して、両側フラップ58を成す。」
オ)(公報第5頁左上欄第8行?第10行)
「トップシート38は、液体をその厚さを通して容易に透過させる透過性である。」
カ)(公報第6頁右上欄第7行?第10行)
「バックシート42は液体不透過性であって、好ましくは薄いプラスチックフィルムによって製造されるが、他の可撓性液体不透過材料を使用する事もできる。」
キ)(公報第8頁左下欄第19行?右下欄第2行)
「特に好ましくは、バリヤカフス62は、オシメ20の股部分26において、フラップ弾性部材60と、吸収性コア44の縁46との間に配置される。」
ク)(公報第8頁右下欄第15行?第9頁左上欄第5行)
「第1図に図示のオシメ20の好ましい実施態様はトップシート38に接合されたバリヤカフス62を備えている。ここに用語“接合”とは、バリヤカフス62をオシメ20に固着する任意の手段を意味し、バリヤカフス62がトップシート38に直接または間接に取り付けられた近位縁64を有する別個の要素である場合(すなわち複合型)、あるいはバリヤカフス662がトップシート38と同一の要素または素材から成り、その近位縁64がトップシート38の連続不可分要素である場合(すなわち一体型)とを含む。」
ケ)(公報第9頁右下欄第1行?第5行)
「さらに、バリヤカフス62は、分泌物の突破を防止するように不透過性とする事ができる。液体不透過性バリヤカフス62はこれを通過しようとする液体の運動を遅らせる事により、それだけ漏れ抵抗性となる。」
コ)(公報第10頁左上欄第12行?18行)
「第3図に図示のように、スペーサ弾性部材77は、これを弾性取り付け手段94をもってバリヤカフス62の内部に固着する事によって取り付けられる。スペーサ弾性部材77はその末端部付近のみをバリヤカフス62に対して固着する事もできるが、好ましくはスペーサ弾性部材77の全長をバリヤカフス62に対して固着する。」
サ)(公報第11頁右上欄第11行?左下欄第7行)
「第4図は、着用者に着用される前の弾性的に収縮された状態のオシメ20の斜視図である。トップシート38はオシメ20の身体接触面として示され、バックシート42は着用者の身体と反対側に配置されている。ガスケットカフス56はフラップ弾性部材(第4図において図示されず)によってギャザよせされ、または収縮されている。オシメ20は、ガスケットカフス56の内側に隣接して延在する2本のバリヤカフス62を有する事が見られる。遠位縁66は股区域26においてスペーサ弾性部材(図示されず)によってギャザよせされ収縮されてオシメ20に沿って縦方向のチャンネル96を成している。さらにバリヤカフス62の両端72と74はそれぞれ前後の閉鎖区域80と82において閉鎖されて、着用者の着心地を良くし、バリヤカフス62の反転を防止し、またオシメ20の着用を容易にしている。」
シ)(公報第12頁左下欄第3行?11行)
「一体型バリヤカフス762は、本発明のオシメ20のバリヤカフス662と同様にトップシート38をU形に折り曲げ、すなわちひだ寄せする事によって形成される。トップシート38をそれ自体の上に折り畳んで遠位縁66を形成し、この遠位縁66の中に形成されたトンネルの中にスペーサ弾性部材77を固着する。近位縁64は、加熱融解性接着剤から成るグルービーズの接着手段100によって相互に接着される。」

b.甲第2号証には、図面とともに、次のス)?ソ)の事項が記載されている。
ス)(公報第1頁右下欄第17行?第18行)
「本発明は、身体の排泄物を吸収し受止するために用いられる使い捨ておむつに関し、」
セ)(公報第2頁右下欄第18行?第3頁左上欄第16行)
「第1図ないし第4図に示すように、おむつは、透水性トップシート11と、不透水性バックシート12と、半剛性吸収コア13と、サイドフラップ14とを有する。サイドフラップ14は第1フラップ16と第2フラップ17とからなる。第1フラップ16はコア13の横方向外側縁から外側へ延出し互いに接合するトップシート11およびバックシート12の各部分11a,12aからなる。第2フラップ17は、第1フラップ16の上面に通気性および/または防水性を有する帯状シート片18が逆U字状に折り曲げられた状態でその両側部18a,18bが接合されることにより形成され、その折り返し外側縁が外側へ向けられるとともに、その縦方向両端部分17aが前側領域19aと背側領域19bとにおいて接合固定されている。前背側領域19a,19bの間の股下領域19cに位置する第2フラップ17の自由端の袋状内部にはエラスチックバンド21がその長さ方向に伸長下に弾性を有するホットメルト型接着剤(図示せず)で取り付けられている。」
ソ)(公報第3頁左下欄第9行?第14行)
「帯状シート片18は、不織布に好ましくは撥水処理したものなどが用いられる。…おむつにおいては、第2図ないし第5図に示すように、エラスチックバンド21が収縮している場合には、第2フラップ17が起立する。」

c.甲第3号証には、図面とともに、次のタ)?テ)の事項が記載されている。
タ)(公報第2頁左上欄第14行?第17行)
「本発明は、身体の排泄物を吸収し受止するために用いられる使い捨ておむつに関し、特にエラスチックバンドが取り付けられサイドフラップの特定部が上方向へ起立する使い捨ておむつに関する。」
チ)(公報第3頁左上欄第2行?第14行)
「第1図ないし第3図に示すように、おむつは、透水性トップシート1と、不透水性バックシート2と、吸収性コア3と、サイドフラップ4とを有する。サイドフラップ4は、コア3の外側縁から外側方向へ延出するトップシート1とバックシート2の部分1a,2aで形成した平面部5と、比較的に幅細いシート6で形成しコア3の外側縁から外側方向へ適宜離れた部分1aの上面に接合した側壁部7とからなる。側壁部7は、シート6の外側部を部分1aの上面に接合し、その内側縁で被着してエラスチックバンド8を取り付け、該内側部を外側方向へ折り返してその縦対向端6aを該外側部の上面に接合してある。」
ツ)(公報第3頁右上欄第10行?第18行)
「第6図では、部分1aの外側部を上方向へΩ状に折曲し、その内面にシート10を介在し、それらの上端内面にエラスチックバンド8を取り付けるとともに、それらの内面を接合することにより、側壁部7を形成してある。第7図では、部分1aの外側部の上面にΩ状に折曲したシート11の下端部を接合するとともに、その上端内面にエラスチックバンド8を取り付けることにより、側壁部7を形成してある。」
テ)(公報第3頁右下欄第12行?13行)
「シート6,9,10,11,12は、好ましくは通気防水性を有するものが用いられる。」

ii)対比・判断
a)請求項1に係る考案について
甲第1号証には、オシメが記載されていることが記載ア)より認められる。
そして、該オシメは、トップシート3とバックシート4と、その間に配置された吸収性コア44とを有するとともに(記載イ、エ)、吸収性コア44の縦縁46から突出する両側フラップ58を有するものであり(記載エ)、そのトップシート3は、液体透過性であり(記載オ)、そのバックシート4は液体不透過性である(記載カ)ことが認められる。
甲第1号証(以下「後者」という)の「バックシート4」は液体不透過性であるから、本件請求項1に係る考案(以下「前者」という)の「不透液性シートに、」、「トップシート3」は液体透過性であるから「透液性シート」に、「吸収性コア」は「吸収体」に、「両側フラップ58」は吸収性コア44の縦縁46から突出して設けられているので「フラップ」にそれぞれ相当する。
また、後者のオシメには、オシメ20の股間部26において、トップシート38に接合されたバリヤカフス62が設けられている(記載キ、ク)。
そして、該バリヤカフス62は、不透液性とすることができ(記載ケ)、内部にスペーサ弾性部材77が設けられており(記載コ)、さらに、バリヤカフス62の両端72と74はそれぞれ前後の閉鎖区域80と82において閉鎖されている(記載サ)。
後者の「バリヤカフス」は、前者の「バリヤーカフス」に対応する。
さらに、後者の「バリヤカフス」について検討すると、甲第1号証には、該バリヤカフス62の構造について、2つの態様が記載されている。
すなわち、第1の態様は、別個の要素としてのバリヤカフス62を、近位縁でトップシート38に固着したもの(複合型)であり、第2の態様は、バリヤカフス62がトップシート38と同一の要素または素材から成り、その近位縁64がトップシート38の連続不可分要素であるもの(すなわち一体型)である(記載ク)。
第1の態様では、第3図に示すように、複合型のバリヤカフス62は一枚のシートとなっており、近位縁64でトップシートに固着されている。
また、第2の態様では、一体型のバリヤカフス62は、トップシート38をU形に折り曲げて、ひだ寄せする事によって形成されており、近位縁64は、加熱融解性接着剤から成るグルービーズの接着手段100によって相互に接着されている(記載シ)。
一方、請求項1に係る考案のバリヤーカフスは、「撥水性または不透水性のバリヤーシートにより形成され、このバリヤーシートは内折りされて2重シートとされ、このバリヤーシートの内側部分は少なくとも脚回り部分において内起立線をもって透液性シートに対して固定され、前記バリヤーシートの外側部分は少なくとも脚周り部分のフラップ部分において不透液性シートまたは延在する透液性シートに対して外起立線をもって固定され、さらに内起立線と外起立線との幅方向中間において、バリヤーシートの内側部分と外側部分とが少なくとも脚周り部分において長手方向に延びる1本以上の整形用固定線をもって相互に固定されている」ものである。
そこで検討すると、後者の第1の態様の場合には、後者のバリヤカフス62は不透液性とすることができるものではあるが(記載ケ)、少なくとも「内折りされて2重シートとされ」ていない点で、前者の「バリヤーカフス」と相違する。
次に、後者の第2の態様の場合には、後者のバリヤカフス62は、トップシート38をU形に折り曲げて、ひだ寄せして形成されているので、前者のバリヤーカフス同様2重シートとなっているものであるが、トップシートの一部であるためそのままでは透液性であり、また、バリヤカフス62の一対の近位縁64は、接着手段100によって相互に接着されている(記載シ)。
記載ケによれば、バリヤカフス62は不透液性とすることができるとあるので、第2の態様の場合も、なんらかの不透液化処理によって、透液性のトップシートのバリヤカフスの部分を不透液性にすることが、甲第1号証に示唆されているということはできるが、第2の態様のバリヤカフスは、もともとトップシートと一体のもの、言い換えればトップシートの一部であるため、トップシートに固定されたものとは必ずしも言えないものである。
一方、前者のバリヤーシートは、「内起立線をもって透液性シートに固定され、前記バリヤーシートの外側部分は少なくとも脚周り部分のフラップ部分において不透液性シートまたは延在する透液性シートに対して外起立線をもって固定され」ている。
上記記載より、前者のバリヤーシートが、内起立線で透液性シートに固定され、フラップ部分で不透液性シートに外起立線で固定される場合、内起立線と外起立線とは、異なるシートに固定されるのであるから、両起立線は一体ではなく、当然離れているものと認められる。
また、内起立線で透液性シートに固定され、フラップ部分で、延在する透液性シートに外起立線で固定される場合、内起立線固定部よりもフラップ側に延在、すなわち延びて存在している透液性シートの部分に外起立線が固定されると解せるから、この場合も内外起立線は一体ではなく、離れているものと認められる。
これに対して後者は、上記第2の態様の場合、、バリヤカフス62の一対の近位縁64は、接着手段100によって相互に接着されている(記載シ)のであるから、第2の態様のものをバリヤカフスがトップシートに固定されたものであると見なしたとしても、内外起立線に対応する一対の近位縁は一体であり、少なくともこの点で、後者は、前者と相違している。

したがって、請求項1に係る考案は、甲第1号証に記載された考案であるとは言えない。

次に、甲第2号証の記載について検討すると、記載ス)?ソ)より、甲第2号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「不透水性バックシート12と透水性トップシート11とで吸収コア13を包被し、かつ両側部に使用面側に突出し、かつその突出用エラスチックバンド21が設けられた第2フラップ17を有し、吸収コア13の側縁の外方に第1フラップ16が形成された使い捨ておむつにおいて、
前記第2フラップ17は、防水性の帯状シート片18により形成され、
この第2フラップ17は帯状シート片18が逆U字状に折り曲げられた状態で2重シートとされ、その両側部18a,18bが接合されることにより形成され、
この第2フラップ17は少なくとも脚回り部分において透水性トップシート11に対して固定されている使い捨ておむつ」
そこで、検討すると、甲第2号証記載の第2フラップ17の、両端部18a,18bの起立部分は、請求項1に係る考案の「バリヤーカフス」の「内外起立線」に対応するものであるが、該起立部分は接合されて一体であって(記載シ)、甲第2号証記載のものは、少なくとも内起立線と外起立線とに対応する起立部分18a,18bが離れていない点において、請求項1に係る考案と相違する。

したがって、請求項1に係る考案は、甲第2号証に記載された考案であるとは言えない。

次に、甲第3号証の記載について検討すると、記載タ)?テ)及び第7図より、甲第3号証には、次の事項が記載されていると認められる。
「不透水性バックシート2と透水性トップシート1とで吸収性コア3を包被し、かつ両側部に使用面側に突出し、かつその突出用エラスチックバンド8が設けられた側壁部7を有し、吸収性コア3の側緑の外方にサイドフラップ4が形成された使い捨ておむつにおいて、
前記側壁部7は、内折りされて2重シートとされて内面で接合した通気防水性のシート11により形成され、
この側壁部7の通気防水性のシート11は少なくとも脚回り部分の前記吸収性コア3の側縁の外側の箇所において起立線をもって前記サイドフラップ4を形成する透水性トップシート1の延在した部分に対して固定されている使い捨ておむつ」
そこで、検討すると、甲第3号証記載の側壁部7の透水性トップシート1からの起立部分は、請求項1に係る考案の「バリヤーカフス」の「内外起立線」に対応するものであるが、該起立部分は、接合されたシート11により構成されていることから一体であって(記載シ、図7)、甲第3号証記載のものは、少なくとも内起立線と外起立線とに対応する起立部分が離れていない点において、請求項1に係る考案と相違する。

したがって、請求項1に係る考案は、甲第3号証に記載された考案であるとは言えない。

また、甲第1号証ないし甲第3号証のいずれにも、「バリヤーカフス」の起立部分を、「内起立線」と「外起立線」との2つの異なる位置とすることについて記載がなく、これを示唆する記載もなく、さらに、各甲号証に記載されたものにおいて、一体となった起立部分を、ことさら分離しなくてはならない格別な事情も認められないことから、当業者が、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された考案に基づいて、きわめて容易に請求項1に係る考案をすることができたと言うこともできない。

b)請求項2,請求項3に係る考案について
請求項2、請求項3は、いずれも請求項1の従属請求項であって、請求項1に係る考案の構成をすべて含むものであるので、請求項2、請求項3の本件考案も、甲第1号証ないし甲第3号証記載の考案のいずれとも同一ではなく、また、これらより、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものでもない。

B.無効理由3について
請求人の無効理由3は、概略、本件明細書記載の、尿の幅方向の拡散の促進という効果を得るには、吸収体の幅を大きくする必要があるので、「バリヤーシートの内側部分は少なくとも脚回り部分の吸収体の側縁より内側の箇所において内起立線をもって透液性シートに対して固定され」た構成が必須の構成要件であるところ、実用新案登録請求の範囲の請求項1には、この、実用新案登録を受けようとする考案の構成に欠くことのできない事項が記載されていないので、本件実用新案登録は、旧実用新案法第5条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない実用新案登録出願に対してなされたものであるから、無効であるというものである。

そこで、検討すると、本件明細書には、【考案が解決しようとする課題】の欄に、次のように記載されている。
「【0006】そこで、本考案者は、先に横断面山形のバリヤ-カフスを有する構造の紙おむつを、特願平3-154748号として提案した。しかし、使用状態において、脚周りに当接したとき、逆に脚により圧迫されてバリヤーカフスの横断面が所期の比較的シャープな山形がなだらかな山形に変形してしまい、軟便や尿が横漏れしがちであることが知見された。
【0007】したがって、本考案の課題は、軟便および尿の横漏れをより確実に防止するとともに、見栄の点からも内側に傾斜したシャープな壁状として安心感を与えるようにすることにある。」
また、同じく【作用】の欄には、次のように記載されている。
「【0009】【作用】本件考案のおむつのバリヤーカフスは、2重のバリヤーシートにより形成されているので、尿の横漏れ防止効果が高い。また、バリヤーシートの内側部分と外側部分とが少なくとも脚周り部分において長手方向に延びる1本以上の整形用固定線をもって相互に固定されているので、バリヤーカフスBの形状保持性が良好となり、また透液性シートからの尿の伝播を阻止できる。」

そこで、上記課題または作用との関係で、請求項1に係る考案の構成を検討すると、その、「各バリヤーカフスは、撥水性または不透水性のバリヤーシートにより形成され、このバリヤーシートは内折りされて2重シートとされ」との構成は、【作用】における「本件考案のおむつのバリヤーカフスは、2重のバリヤーシートにより形成されているので、尿の横漏れ防止効果が高い。」との記載と対応する。
また、「このバリヤーシートの内側部分は少なくとも脚回り部分において内起立線をもって透液性シートに対して固定され、前記バリヤーシートの外側部分は少なくとも脚周り部分のフラップ部分において不透液性シートまたは延在する透液性シートに対して外起立線をもって固定され」との構成は、上記【考案が解決しようとする課題】の欄における、本件考案が前提とする「横断面山形のバリヤ-カフスを有する構造の紙おむつ」の構造と対応し、「さらに内起立線と外起立線との幅方向中間において、バリヤーシートの内側部分と外側部分とが少なくとも脚周り部分において長手方向に延びる1本以上の整形用固定線をもって相互に固定されていること」との構成は、上記【考案が解決しようとする課題】の欄における、「本考案の課題は、軟便および尿の横漏れをより確実に防止するとともに、見栄の点からも内側に傾斜したシャープな壁状として安心感を与えるようにすることにある」との記載及び、上記【作用】欄における「また、バリヤーシートの内側部分と外側部分とが少なくとも脚周り部分において長手方向に延びる1本以上の整形用固定線をもって相互に固定されているので、バリヤーカフスBの形状保持性が良好となり、また透液性シートからの尿の伝播を阻止できる」との記載と対応する。
したがって、請求項1に係る考案の構成は、本件明細書における、考案の課題及び作用の記載と対応しており、この構成によって、上記課題の解決を行なうことができ、上記作用を得ることができると認められるので、作用効果との関係で、請求項1に係る考案の構成は明確であり、請求項1には、実用新案登録を受けようとする考案の構成に欠くことのできない事項が記載されているものと認められる。

なお、請求人が、本件考案の課題として主張する、「尿の幅方向の拡散の促進」は、明細書の【考案の効果】の欄に記載されているが、このことについては、実施例について記載した本件明細書の【0019】段落に「第2に透液性シート2に吸収した尿が幅方向に拡散したとき、透液性シート2が幅が広いので拡散能力が高まる」と説明されていることから、この限りにおける効果を記載したものと解することができ、「尿の幅方向の拡散の促進」を、ことさら本件考案の課題とすべき理由はない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1ないし請求項3に係る考案の実用新案登録は、審判請求人の主張する理由によって無効にすることができない。
また、本件審判費用は、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-11-14 
結審通知日 2002-11-19 
審決日 2002-12-18 
出願番号 実願平3-63974 
審決分類 U 1 112・ 534- Y (A41B)
U 1 112・ 121- Y (A41B)
U 1 112・ 113- Y (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菊地 則義  
特許庁審判長 船越 巧子
特許庁審判官 鈴木 公子
山崎 豊
登録日 1997-11-14 
登録番号 実用新案登録第2563353号(U2563353) 
考案の名称 紙おむつ  
代理人 永井 義久  
代理人 樺沢 襄  
代理人 樺沢 聡  
代理人 山田 哲也  
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