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審決分類 審判 全部申し立て   B29C
審判 全部申し立て   B29C
審判 全部申し立て   B29C
管理番号 1084971
異議申立番号 異議2001-70940  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2003-11-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-03-23 
確定日 2003-08-27 
異議申立件数
事件の表示 登録第2606143号「射出成形金型のゲート構造」の請求項1ないし4に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2606143号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。 同請求項2ないし4に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件の手続の経緯は以下のとおりである。
実用新案登録出願 平成 5年11月12日
実用新案権設定登録 平成12年 7月21日
実用新案登録異議の申立て 平成13年 3月23日
取消理由通知 平成14年 3月22日
訂正請求・意見書 平成14年 5月 9日
訂正拒絶理由通知 平成14年11月 8日
手続補正書・意見書 平成14年12月27日

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正請求に対する補正の適否について
実用新案権者は、手続補正書を提出して平成14年5月9日付け訂正請求書中の(3)訂正の要旨の訂正事項丸1ないし訂正事項丸4に記載の「非円形」との記載を「長方形」、訂正事項丸3、丸4に記載の「ゲートに」との記載を「ゲートの角部に」と補正した上、さらに、訂正事項丸5ないし訂正事項丸10を追加補正するものであり、当該訂正請求に対する補正は、訂正事項の内容に変更を加えるものであることから、訂正請求書の要旨を変更するものと認められ、平成6年法律第116号附則第9条の規定により準用する特許法第120条の4第3項においてさらに準用する同法第131条第2項の規定に違反するものであり、採用できない。
なお、手続補正書6.補正の内容の訂正事項の丸付き数字は、丸n(nは数字)と標記する。以下の記載についても同様に標記する。

2-2.訂正の内容
実用新案権者が求めている訂正の内容は、以下の訂正事項丸1ないし丸4のとおりのものである。
(イ)訂正事項丸1
明細書の請求項1における「上記型開きの際のゲートカットの応力をゲートに作用させる非円形」の記載を、
「上記型開きの際のゲートカットの応力をゲートに作用させるとともにゲート周壁から中心までの間隔を短くさせる非円形」と訂正する。
(ロ)訂正事項丸2
明細書の段落【0008】における「上記型開きの際のゲートカットの応力をゲートに作用させる非円形」の記載を、
「上記型開きの際のゲートカットの応力をゲートに作用させるとともにゲート周壁から中心までの間隔を短くさせる非円形」と訂正する。
(ハ)訂正事項丸3
明細書の段落【0010】における「型開きの際のカットの応力が非円形であるゲートから逃げずにゲートに有効に作用して、型開きの際のカットが精密に行われる。」の記載を、
「型開きの際のカットの応力が非円形であるゲートから逃げずにゲートに有効に作用するとともに、ゲート周壁から中心までの間隔を短くしてゲート周壁からの冷却による溶融樹脂の冷却が中心まで充分に行われて、型開きの際のカットが精密に行われる。」と訂正する。
(ニ)訂正事項丸4
明細書の段落【0027】における「ストリッパプレートと可動型との型開きの際のゲートカットの応力が非円形であるピンポイントゲートから逃げずにピンポイントゲートに有効に作用するため、型開きの際のカットが精密に行われる効果がある。」の記載を、
「ストリッパプレートと可動型との型開きの際のゲートカットの応力が非円形であるピンポイントゲートから逃げずにピンポイントゲートに有効に作用するとともに、ゲート周壁から中心までの間隔を短くさせる非円形としてゲート周壁からの冷却による溶融樹脂の冷却が中心まで充分に行われて冷却ムラが起こらなくなるため、型開きの際のカットが精密に行われる効果がある。」と訂正する。

2-3.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び実用新案登録請求の範囲の拡張・変更の存否
(イ)訂正事項丸1について
「ゲート周壁から中心までの間隔を短くさせる非円形」との記載は、何に比して間隔を短くさせるのか明確ではなく、「非円形」なる構成が限定されているのか不明であり、一方、非円形の断面形状であれば、中心から外周までの間隔に長短が生じることは当然のことであって、「ゲート周壁から中心までの間隔を短くさせる」と限定しても、非円形の断面形状を何も特定したことにはならないことから、いずれにしても、訂正事項丸1は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
また、願書に添付した明細書の記載に誤記も明瞭でないところもなく、訂正後の記載では、何に比して間隔を短くさせるのか不明であることから、構成が明瞭となるところもなく、訂正事項丸1は、明瞭でない記載の釈明あるいは誤記の訂正を目的とするものにも該当しない。
(ロ)訂正事項丸2ないし丸4について
訂正事項丸2ないし丸4は、訂正事項丸1に対応させて、明細書の実用新案登録請求の範囲以外の箇所を訂正するものであるが、訂正事項丸1における訂正の意味するところが明瞭でなく、願書に添付した明細書の記載に誤記も明瞭でないところもないことから、明瞭でない記載の釈明あるいは誤記の訂正を目的とするものには該当しない。

2-4.むすび
以上のとおりであるから、本件の訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書の規定に適合しないから、当該訂正は認められない。

3.登録異議申立についての判断
3-1.登録異議申立の理由の概要
登録異議申立人セイコープレシジョン株式会社は、甲第1ないし第3号証を提出し、本件請求項1ないし4に係る考案(以下、「本件考案1ないし4」という。)は、甲第1及び第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるか、または甲第3号証に記載された発明と同一であるから、実用新案法第3条第2項又は同法第3条の2の規定により登録を受けることができないものである旨主張している。

3-2.本件考案
上記2-3.に記載した理由により訂正請求は認められないから、本件実用新案登録第2606143号の請求項1ないし4に係る考案は、実用新案権設定登録時の明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 ストリッパプレートと可動型とを有し、ストリッパプレートと可動型との型開きに伴ってピンポイントゲートがカットされる射出成形金型において、ピンポイントゲートの軸線と直交する面の断面形状を、上記型開きの際のゲートカットの応力をゲートに作用させる非円形としたことを特徴とする射出成形金型のゲート構造。
【請求項2】 請求項1の射出成形金型のゲート構造において、ピンポイントゲートの非円形の形状を二次スプルに連続的に延長したことを特徴とする射出成形金型のゲート構造。
【請求項3】 請求項1の射出成形金型のゲート構造において、ピンポイントゲートの非円形の形状を長方形としたことを特徴とする射出成形金型のゲート構造。
【請求項4】 請求項1の射出成形金型のゲート構造において、ピンポイントゲートの非円形の形状を星形としたことを特徴とする射出成形金型のゲート構造。」

3-3.各甲号証の記載事項
(a)甲第1号証(特開平5-124067号公報)
(a-1)「【従来の技術】この種ピンポイントゲートを有する成形金型においては、従来、・・・成形時に溶融樹脂は前記スプルー孔15から注入され、ランナー6、ピンポイントゲート7を介してキャビティ8内に充填されていた。次に、部分的な型開きに際し、図3(b)のように、固定側型板2とランナーストリッパプレート3とを分離することで、ピンポイントゲート7におけるゲートカットを行い、更に、全ての型開きに際しては、図3(c)のように、固定側型板2に対し、可動側型板1を分離することで、製品9を取り出し、かつスプルー・ランナー10を型内で取り出すようにしていた。」(公報第1欄第16?34行)
(b)甲第2号証(特開昭61-162310号公報)
(b-1)「本発明は射出成形製品のゲート部肉厚よりも大きなピンゲート(以下はみ出しピンゲートと記す)を設けることにより、前記射出成形時の欠点や、二次加工での問題要素を除去したものである。またゲートの場所については肉厚側、面側どちらからでも可能である。ゲート穴径は種々実験した結果により、通常製品に必要であると設計されるピン穴面積と同じ有効穴面積が取れれば他のはみ出し穴部分は、パーテング面に付き当てして無効穴にすることで最適に使用できることを見い出した。尚、ピンゲートの穴構造は、丸穴以外に角穴や異形穴でも可能である。」(公報第2頁右上欄第3?14行)
(b-2)「第1図は本発明の一実施例を示す射出成形終了時の金型断面図である。・・・金型は3つに離れる3プレート方式でゲートカットプレート9が開くことでランナー8が離れ、はみ出しピンゲート5、5´が製品6より切断される。コア1とキヤビテイー2が後で開いてから、エジエクターロツド3を突出して製品6が取り出される。ゲート部5、5´のはみ出し部分はキヤビテイーのパーテング面2aに突当てされてスプール7からの樹脂流れが出ないためヨコバリの出ない構造内容である。」(公報第2頁左下欄第9行?同頁右下欄第7行)
(c)甲第3号証(特願平4-206696号(特開平6-55579号))
(c-1)「【請求項1】 パーティングラインを境とする固定側金型と可動側金型に形成されるキャビティにゲートから樹脂が流し込まれ充填される工程と、前記樹脂かつ冷却固化後に前記ゲートが引き抜かれ、前記ゲートのピンポイントゲート部で前記キャビティ内の製品と、前記ゲート内のランナーに分離される工程と、前記パーティングラインが開かれて、前記キャビティから製品が取り出される工程とからなるプラスチック射出成形方法において、前記ピンポイントゲート部の切断形状が、基準円及び、該基準円の外周にあって該基準円と交叉する複数の円弧により連結して形成されることを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】 ゲート穴形状が、基準円及び該基準円の外周にあって該基準円と交叉する複数の円弧により連結して形成されるゲート穴を有することを特徴とする請求項1記載の射出成形金型。」(特許請求の範囲請求項1、2)
(c-2)「本発明は、射出成形金型において、前記した複数円弧連結ゲート穴部で、ピンポイントゲートの切断時に、成形品そのものを引っ張り剪断することにより、ピンポイントゲートの切断部に複数の切欠効果を生じさせ、ゲート残りの高さを少なくし、ゲート残り逃げの深さ内に収めるものである。」(段落【0006】)
(c-3)「図1は、また固定側金型1と可動側金型2とがパーティングライン5を境として合い、密閉空間であるキャビティ4が形成されている状態を示す断面図である。キャビティ4には、固定側金型1に設けたゲート3から樹脂が流れ込まれ充填される。樹脂が冷却固化した後に、ゲート3が引き抜かれ、樹脂はキャビティ4に形成された製品とゲート3に形成されたランナーに分離される。」(段落【0009】)
(c-4)「次に、可動側金型2が固定側金型1に対して下方に移動して、パーティングライン5の面が開かれ製品が取り出される。図2に、図1の複数円弧連結ゲート穴6のB-B矢視拡大を示す。多孔ゲート穴6の平面形状は、中心に基準円6aを設け、その外周に前記基準円6aと交叉する3個の円6bから形成される。なお、実施例では3個の例を示したが、3個に限定されることなく2以上の複数個としてもよい。」(段落【0010】)
(c-5)「本発明では、前記したような複数円弧連結ゲート穴により、ゲート切断を行うので、ゲート切断部分に複数箇所の切欠き形状を作ることにより、複数箇所に応力を集中させ、ゲート3の引き抜きにより、従来では達成し得なかった低さのゲート残り7の高さ寸法Kが実施可能となり、ゲート残り逃げ12内に収まるようになった。」(段落【0012】)

4.当審の判断
4-1.取消理由の概要
当審における平成14年3月8日付けの取消理由の概要は以下のとおりである。
「本件請求項1に係る考案は、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された上記特願平4-206696号の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であると認められ、しかも、請求項1に係る考案の考案者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、この出願の時において、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、請求項1に係る考案は、実用新案法第3条の2第1項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。」

4-2.実用新案法第3条の2違反について
4-2-1.本件考案1について
当審において通知した取消理由で引用した先願明細書(甲第3号証)に記載の上記記載事項(c-1)ないし(c-5)からみて、先願明細書には以下の発明が記載されているものと認められる。
「固定側金型と可動側金型とを有し、ゲートが引き抜かれてゲートのピンポイントゲート部でキャビティ内の製品とゲート内のランナーに分離される射出成形金型のゲート構造において、ピンポイントゲート部を複数円弧連結ゲート穴とした射出成形金型のゲート構造。」
そこで、本件請求項1に係る考案と先願明細書記載の発明とを対比すると、両者は、「可動型を有し、ピンポイントゲートがカットされる射出成形金型」である点で一致し、以下の点で一応相違する。
相違点(イ)請求項1に係る考案は、「ストリッパプレートと可動型との型開きに伴ってピンポイントゲートがカットされる」のに対し、先願明細書記載の発明は、「ゲートが引き抜かれてゲートのピンポイントゲート部でキャビティ内の製品とゲート内のランナーに分離される」ものである点。
相違点(ロ)「ピンポイントゲートの軸線と直交する面の断面形状」について、請求項1に係る考案は、「型開きの際のゲートカットの応力をゲートに作用させる非円形の形状」であるのに対し、先願明細書記載の発明は、「複数円弧連結ゲート穴」である点。
しかしながら、上記相違点(イ)の点について、射出成形金型において、固定型を挟んで移動型の反対側にストリッパプレートを設け、ストリッパプレートの型開きによってゲートを引き抜き、ピンポイントゲートにおけるゲートカットを行うことは周知の技術的事項(例えば、甲第1号証、岡田清監修「射出成形用金型 第4版」株式会社プラスチックス・エージ(昭61-2-10)p.76-77、特公昭52-18227号公報、実願昭47-102816号(実開昭49-58863号)のマイクロフィルムも参照のこと)であることからみて、相違点(イ)は、周知技術の転換であって、それによる新たな効果を奏するものとも認められないから、課題解決のための具体的手段における微差にすぎないものである。
また、上記相違点(ロ)の点について、先願明細書の上記記載事項(c-4)には、「多孔ゲート穴6の平面形状は、中心に基準円6aを設け、その外周に前記基準円6aと交叉する3個の円6bから形成される。なお、実施例では3個の例を示したが、3個に限定されることなく2以上の複数個としてもよい。」と記載があるように、非円形の形状をしており、しかも、記載事項(c-2)及び(c-5)に記載の如く、複数円弧連結ゲート穴は、本件考案1と同様に型開きの際、切り欠きに応力集中を起こすようにして、ゲートの引き抜きによる切断が行えるようにしたものであることからみて、相違点(ロ)は、実質的に先願明細書記載されているものと認められる。
したがって、本件考案1は、先願明細書に記載された発明と構成上相違するところがなく、先願明細書に記載された発明と実質的に同一であると認められ、しかも、本件考案1の考案者が先願明細書に記載された発明の発明者と同一ではなく、また、この出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件考案1は実用新案法第3条の2第1項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

4-2-2.本件考案2ないし4について
本件考案2ないし4は、それぞれ「ピンポイントゲートの非円形の形状を二次スプルに連続的に延長した」、「ピンポイントゲートの非円形の形状を長方形とした」及び「ピンポイントゲートの非円形の形状を星形とした」とする構成を付加して、本件考案1を更に限定したものである。
先願明細書に記載のものは「複数円弧連結ゲート穴」であって、ピンポイントゲートを上記各構成とすることについて先願明細書には記載されておらず、さらに、周知技術または慣用技術ともいえないことから、上記各構成は課題解決のための具体化手段における微差とは認められず、本件考案2ないし4と先願明細書記載の発明とは同一ではない。

4-3.実用新案法第3条違反について
4-3-1.本件考案2ないし4について
当審において通知した取消理由で引用した刊行物1(甲第2号証)には、上記記載事項(b-1)、(b-2)からみて、
「ゲートカットプレートがコア(固定型)とキャビティーとから離れることでランナーが離れ、はみ出しピンゲートが切断される射出成形金型のゲート構造において、ピンゲートの穴構造を丸穴以外に角穴や異形穴とした射出成形金型のゲート構造。」が記載されており、刊行物1記載の考案における「ゲートカットプレート9」及び「キャビティ2」は、それぞれ、本件考案2における「ストリッパプレート」及び「可動型」に対応するから、刊行物1には、以下の考案が記載されているものと認められる。
「ストリッパプレートと可動型とを有し、ストリッパプレートと可動型との型開きに伴ってピンゲートがカットされる射出成形金型のゲート構造において、ピンゲートの穴構造を丸穴以外に角穴や異形穴とした射出成形金型のゲート構造。」
請求項1を引用する本件考案2と刊行物1記載の考案とを対比すると、
両者は、「ストリッパプレートと可動型とを有し、ストリッパプレートと可動型との型開きに伴ってピンゲートがカットされる射出成形金型のゲート構造」である点で一致し、
ピンポイントゲート及びスプルの形状について、本件考案2では、ピンポイントゲートの軸線と直交する面の断面形状が、ゲートカットの応力をゲートに作用させる非円形であって、その非円形の形状を二次スプルに連続的に延長したものであるのに対し、刊行物1記載の考案では、ピンゲートの穴構造を丸穴以外に角穴や異形穴としたものである点で相違する。
そこで、上記相違点について検討すると、刊行物1記載の考案では、上記記載事項(b-1)からみて、ピンゲート穴は、ゲート部肉厚よりも大きな「はみ出しピンゲート」であって、はみ出し穴部分はパーテング面に付き当てして無効穴になるものであり、刊行物1記載の考案におけるピンゲート穴のうちの製品薄肉部6eに連通する部分(樹脂がキャビティー内に直接流入する部分)が本件考案2におけるピンポイントゲートに対応するものであって、スプールにつながるピンゲート穴が角穴等の非円形であるにすぎないことから、刊行物1は、ピンポイントゲートの軸線と直交する面の断面形状をゲートカットの応力をゲートに作用させる非円形とすること及びその非円形の形状を二次スプルに連続的に延長することについて記載も示唆もするものではない。しかも、刊行物1記載の考案は、薄肉部分にはみ出しピンゲートを付けることにより、従来、射出成形時においてピンゲートを設定すると、樹脂の流れも悪く、ウエルにマーク、エアー溜りやショートモールド等が生じ易い欠点を無くすために考案されたものであり、刊行物1記載の考案からは、ゲートカットの応力をゲートに作用させる非円形の断面形状をとし、その非円形の形状を二次スプルに連続的に延長するピンポイントゲートを形成するような技術思想を導き出すことはできない。
また、甲第1号証には、スプール先端にピンポイントゲートを形成した従来例が記載されているのみで、上記相違点について何ら記載も示唆もされていない。
そして、本件考案2は、上記相違点により、「型開きの際のカットが精密に行われる」、「製品部にピンポイントゲート跡が形成されたり、ピンポイントゲートに樹脂詰まりを引き起こしたりすることがなくなる」及び「スプル、ピンポイントゲートを連続して工作可能であるため、金型製作が容易となる」という優れた効果を奏するものである。
したがって、本件考案2は、刊行物1に記載された考案ではなく、さらに、刊行物1及び甲第1号証の記載に基づいて、当業者がきわめて容易に想到し得たものでもない。
また、本件考案3及び4も請求項1を引用するものであって、本件考案2と同じく「ピンポイントゲートの軸線と直交する面の断面形状をゲートカットの応力をゲートに作用させる非円形とする」という技術的事項を有するものであり、この技術的事項について、刊行物1及び甲第1号証には記載も示唆もされていない以上、本件考案3及び4も、刊行物1に記載された考案ではなく、さらに、刊行物1及び甲第1号証の記載に基づいて、当業者がきわめて容易に想到し得たものでもない。

5.むすび
以上のとおり、本件請求項1に係る実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により取り消されるべきものである。
また、本件請求項2ないし4に係る実用新案登録は、実用新案登録異議の申立ての理由によって取り消すことができないばかりでなく、他にそれを取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2003-07-07 
出願番号 実願平5-60871 
審決分類 U 1 651・ 832- ZE (B29C)
U 1 651・ 121- ZE (B29C)
U 1 651・ 16- ZE (B29C)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 加藤 友也  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 鴨野 研一
石井 克彦
登録日 2000-07-21 
登録番号 実用新案登録第2606143号(U2606143) 
権利者 株式会社新興セルビック
東京都大田区東馬込1丁目41番4号
考案の名称 射出成形金型のゲート構造  
代理人 吉田 芳春  
代理人 松田 和子  
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