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審決分類 審判 訂正  訂正する B32B
管理番号 1086554
審判番号 訂正2003-39147  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-12-26 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-07-18 
確定日 2003-09-19 
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2560834号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第2560834号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2560834号は、平成4年2月6日に出願されたもので、平成9年10月3日にその実用新案権の設定登録がされ、その後、平成15年7月18日に本件訂正審判請求が為されたものである。

2.訂正の内容
本件訂正に係る訂正事項は、以下のとおりのものと認める。

訂正事項ア
【実用新案登録請求の範囲】の記載について、
「【請求項1】基材と、この基材の少なくとも片面に形成され、針状単結晶を有する白色導電性充填材を1?30重量部充填した弗素樹脂層とを具備することを特徴とする弗素樹脂被覆複合体。
【請求項2】前記基材が、ガラス繊維又は全芳香族ポリアミド繊維からなる織布あるいは不織布、もしくは全芳香族ポリアミドフィルム、もしくはポリイミドフィルムである請求項1記載の弗素樹脂被覆複合体。
【請求項3】前記弗素樹脂層を構成する樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体のいずれかである請求項1記載の弗素樹脂被覆複合体。」とあるのを、
「【請求項1】ガラス繊維または全芳香族ポリアミド繊維からなる織布あるいは不織布からなる基材と、この基材の少なくとも片面に形成され、針状単結晶を有する白色導電性充填材を弗素樹脂の固形分量に対して1?30重量%充填してこの針状単結晶が三次元的に網目構造となった弗素樹脂層を具備することを特徴とする弗素樹脂被覆複合体。
【請求項2】前記弗素樹脂層を構成する樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体のいずれかである請求項1記載の弗素樹脂被覆複合体。」とする。

訂正事項イ
明細書の段落番号【0003】の記載について、
「・・・、従来より弗素樹脂にブラックカーボンやホワイトカーボンを充填することにより電気抵抗率を下げ、帯電防止する方法が一般的に広く用いられている。・・・」とあるのを、
「・・・、従来より弗素樹脂にブラックカーボンを充填することにより電気抵抗率を下げ、帯電防止する方法が一般的に広く用いられている。・・・」とする。

訂正事項ウ
明細書の段落番号【0005】の記載について、
「・・・本考案は、基材と、この基材の少なくとも片面に形成され、針状単結晶を有する白色導電性充填材を1?30重量部充填した弗素樹脂層とを具備することを特徴とする弗素樹脂被覆複合体である。」とあるのを、
「・・・本考案は、ガラス繊維または全芳香族ポリアミド繊維からなる織布あるいは不織布からなる基材と、この基材の少なくとも片面に形成され、針状単結晶を有する白色導電性充填材を弗素樹脂の固形分量に対して1?30重量%充填してこの針状単結晶が三次元的に網目構造となった弗素樹脂層を具備することを特徴とする弗素樹脂被覆複合体である。」とする。

訂正事項エ
明細書の段落番号【0006】の記載について、
「本考案において、前記基材としては、ガラス繊維又は全芳香族ポリオアミド繊維等からなる織布あるいは不織布・・・が挙げられる。」とあるのを、
「本考案において、前記基材としては、ガラス繊維又は全芳香族ポリアミド繊維等からなる織布あるいは不織布・・・が挙げられる。」とする。

訂正事項オ
明細書の段落番号【0008】の記載について、
「本考案において、白色導電性充填材は弗素樹脂の固形分量に対して1?30重量部、好ましくは5?10重量部添加する。こうした配分にする理由は、前記白色導電性充填材は1重量部未満では十分な帯電防止性を有せず、また30重量部以上でも帯電防止性を有するが、それ以上の効果が確認されないからである。」とあるのを、
「本考案において、白色導電性充填材は弗素樹脂の固形分量に対して1?30重量%、好ましくは5?10重量%添加する。こうした配分にする理由は、前記白色導電性充填材は1重量%未満では十分な帯電防止性を有せず、また30重量%以上でも帯電防止性を有するが、それ以上の効果が確認されないからである。」とする。

訂正事項カ
明細書の段落番号【0009】の記載について、
「【作用】本発明において、針状単結晶を有する白色導電性充填材は微細な繊維形状を有し、この充填材を充填した弗素樹脂層を備えた複合体は、三次元的に網目構造になると共に、・・・」とあるのを、
「【作用】本考案において、針状単結晶を有する白色導電性充填材は微細な繊維形状を有し、この充填材を充填した弗素樹脂層を備えた複合体は、針状単結晶が三次元的に網目構造になると共に、・・・」とする。

3.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否並びに独立登録要件

3-1.訂正の目的及び新規事項の有無について

3-1-1.訂正事項アについて
ここでは、訂正前の請求項1については旧【請求項1】と、また、訂正後の請求項1については新【請求項1】といい、他の請求項についても同様とする。
そして、本訂正は、旧【請求項2】を削除し、【実用新案登録請求の範囲】の記載を新【請求項1】及び新【請求項2】からなるものとするものであって、ここにおける請求項の削除は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、しかも、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。新【請求項1】及び新【請求項2】とする、それぞれ新【請求項】の訂正については、以下に、見ていくことにする。

(一)新【請求項1】とする訂正について

(1)旧【請求項1】には、「基材と、この基材の少なくとも片面に形成され、針状単結晶を有する白色導電性充填材を1?30重量部充填した弗素樹脂層とを具備することを特徴とする弗素樹脂被覆複合体。」(以下、「訂正前考案」という。)の記載があったことが認められる。

(2)一方、訂正前の【考案の詳細な説明】には、以下の記載が認められる。
a.「本考案において、白色導電性充填材は弗素樹脂の固形分量に対して1?30重量部、好ましくは5?10重量部添加する。こうした配分にする理由は、前記白色導電性充填材は1重量部未満では十分な帯電防止性を有せず、また30重量部以上でも帯電防止性を有するが、それ以上の効果が確認されないからである。」(段落番号【0008】)
b.「【実施例】・・・。これらの弗素樹脂層は、PTFEディスパ-ジョンに白色導電性針状単結晶体例えば導電性ウィスカー(商品名:デントールWK-200B、大塚化学製造)をPTFE固形分に対して10重量%添加し、分散した後、前記ガラス繊維織布1に含浸させ、・・・。」(段落番号【0011】)

訂正前の【考案の詳細な説明】からは、記載a及びbによると、特定の量に対して、即ち、弗素樹脂の固形分量に対して、白色導電性充填材を1?30重量部添加した弗素樹脂層とすることに、1重量部未満では十分な帯電防止性を有せず、30重量部以上でも帯電防止性を有するが、それ以上の効果が確認されないという技術的意義のあることがうかがえる。なお、ここにおける1?30重量部は、1?30重量%とも表現できることは明らかであり、このことは、記載bにおいて、PTFE固形分に対して10重量%と表記していることとも符合している。
してみると、旧【請求項1】の記載における1?30重量部とは、【考案の詳細な説明】の記載を根拠にすれば、弗素樹脂の固形分量に対してのものであって、更には、1?30重量%と表現されるものであるが、このことが旧【請求項1】には明りょうに記載されていなかったといえる。

(3)そこで、本訂正について見ると、訂正前考案を特定する事項であった「基材」につき、これを「ガラス繊維または全芳香族ポリアミド繊維からなる織布あるいは不織布からなる」と技術的に限定、特定し、これは、訂正前の明細書における「前記基材が、ガラス繊維又は全芳香族ポリアミド繊維からなる織布あるいは不織布、もしくは全芳香族ポリアミドフィルム、もしくはポリイミドフィルムである請求項1記載の弗素樹脂被覆複合体。」(旧【請求項2】)の記載を根拠にするものといえる。
また、同じく特定する事項であった「弗素樹脂層」につき、これを「針状単結晶が三次元的に網目構造となった」と技術的に限定、特定し、これは、訂正前の明細書に「【作用】本発明において、針状単結晶を有する白色導電性充填材は微細な繊維形状を有し、この充填材を充填した弗素樹脂層を備えた複合体は、三次元的に網目構造になると共に、補強効果が向上し、耐摩耗性を向上し、更には電気的にも安定なものが得られる。・・・」(段落番号【0009】)の記載が認められ、ここにおいて、三次元的に網目構造となっているのは針状単結晶であることは、明細書の記載全体からみて明らかで、この記載を根拠にするものといえる。
更に、先に「(2)」で述べたことから明らかなように、旧【請求項1】に記載された、明りょうでない記載である「白色導電性充填材を1?30重量部充填した」につき、これを、先に「(二)」で摘示した記載a及びbを根拠に、重量部を重量%へと表記を変更した上で、「白色導電性充填材を弗素樹脂の固形分量に対して1?30重量%充填して」との明りょうな記載としている。
以上のことから、本訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、しかも、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

(二)新【請求項2】とする訂正について
新【請求項2】は、旧【請求項1】を引用する形式で記載されていた旧【請求項3】と文言を同じくし、先に「(一)」で述べたことから明らかなように、上記旧【請求項1】を由来とする新【請求項1】とする訂正が、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当することからして、本訂正も、同じことを目的とした明細書の訂正に該当し、しかも、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

3-1-2.訂正事項イについて
訂正前の明細書には、「【従来の技術】・・・従来より弗素樹脂にブラックカーボンやホワイトカーボンを充填することにより電気抵抗率を下げ、帯電防止する方法が一般的に広く用いられている。具体的には、弗素樹脂のディスパ-ジョンにカーボン粉末を添加し、分散した後、耐熱基材をこのディスパージョン中に浸漬し、100?400℃の温度により乾燥し焼成するか、導電性のある耐熱基材を用いて弗素樹脂をコーティングし、乾燥し焼成したものを利用していた。【考案が解決しようとする課題】以上のようにして作られた耐熱複合体は、・・・。更に、樹脂層の磨耗が多く、かつカーボンであるため、黒い磨耗粉を発生し、それが相手製品に転移するという問題があった。・・・」(段落番号【0002】?【0004】)の記載が認められる。そして、この記載では、考案が解決しようとする課題として、従来技術において、耐熱複合体に用いられるものがブラックカ-ボンであるが故に、黒い磨耗粉を発生しそれが相手製品に転移するという問題があったことが挙げられているが、同じく従来技術として記載された、ホワイトカ-ボンを用いた耐熱複合体では、上記問題が生じないのは明らかであって、上記記載は明りょうでないものであった。
これに対し、本訂正は、【従来の技術】からホワイトカーボンを用いたものを削除し、【考案が解決しようとする課題】に記載の事項と整合を図るものである。
以上のことから、本訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、しかも、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。

3-1-3.訂正事項ウについて
本訂正は、訂正事項アと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、しかも、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。

3-1-4.訂正事項エについて
本訂正は、「全芳香族ポリアミド繊維」の明らかな誤記である「全芳香族ポリオアミド繊維」を正すもので、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当し、しかも、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。

3-1-5.訂正事項オについて
本訂正は、重量部を重量%とするもので、先に「3-1-1」、「(二)」の「(2)」で述べたように、重量部は重量%とも表現できるものであり、同じく「(2)」で摘示した記載bとの整合を図るもので、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、しかも、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。

3-1-6.訂正事項カについて
本訂正は、「本考案」の明らかな誤記である「本発明」を正すものである。
また、訂正前の明細書には、「【作用】本発明において、針状単結晶を有する白色導電性充填材は微細な繊維形状を有し、この充填材を充填した弗素樹脂層を備えた複合体は、三次元的に網目構造になると共に、補強効果が向上し、耐摩耗性を向上し、更には電気的にも安定なものが得られる。・・・」(段落番号【0009】)の記載が認められ、ここにおいて、三次元的に網目構造となっているのは、先に「3-1-1」、「(一)」の「(3)」で述べたように、針状単結晶であることは明らかで、このことが明りょうでないとはいえないが、本訂正は、段落番号【0009】の記載において、訂正事項アと整合を図るものである。
以上のことから、本訂正は、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、しかも、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。

3-2.拡張・変更の存否及び独立登録要件について
訂正事項ア乃至カは、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。また、以下に詳述するように、実用新案登録請求の範囲に記載されている事項により構成される考案が実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものでもない。

3-2-1.独立登録要件について

(一)訂正後の明細書における「請求項1及び2に係る考案」(以下、「本件考案1及び2」という。)は、以下のとおりに、特定されるものと認める。
「【請求項1】ガラス繊維または全芳香族ポリアミド繊維からなる織布あるいは不織布からなる基材と、この基材の少なくとも片面に形成され、針状単結晶を有する白色導電性充填材を弗素樹脂の固形分量に対して1?30重量%充填してこの針状単結晶が三次元的に網目構造となった弗素樹脂層を具備することを特徴とする弗素樹脂被覆複合体。
【請求項2】前記弗素樹脂層を構成する樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体のいずれかである請求項1記載の弗素樹脂被覆複合体。」

(二)一方、この出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である「特公平1-38827号公報」(以下、「引用例」という。)には、以下の記載が認められる。
c.「(a)フッ素樹脂、(b)導電性酸化物で被覆された繊維状物質、(c)アクリル酸樹脂及び(d)液体媒体からなり、(a)と(b)との重量比が95:5?50:50であり、(a)と(c)との重量比が100:0?85:15である帯電防止用塗料組成物。」(特許請求の範囲第1項)
d.「本発明の塗料用組成物の特徴は、導電材に二酸化スズ及び三酸化アンチモン等の導電性酸化物で被覆された繊維状物質を用いる点にある。・・・。また該導電材は白色なので組成物も白色のものが得られ、したがって通常の着色料によって任意に着色することができる。」(1頁2欄末行?2頁3欄9行)
e.「繊維状物質を具体的に例示すると、繊維状チタン酸カリウム、繊維状炭化ケイ素、繊維状窒化ケイ素、繊維状α-アルミナ、繊維状炭化ホウ素等を挙げることができ、特に繊維状チタン酸カリウムは白色度が高く耐熱性が優れており好ましい。」(2頁3欄13?18行)
f.「本発明の組成物の主成分となるフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体等を例示することができ、またこれらを混合して用いてもよい。」(2頁3欄38?43行)
g.「本塗料の用途としては、複写機の加熱定着ロール、支持ロール、製紙及び繊維用のサイジングロール、食品加工用ロール、粉体移送用コンベア、ホツパー、シユーター等の塗装に使用することができる。」(2頁4欄17?21行)

引用例には、記載cによると、「(a)フッ素樹脂、(b)導電性酸化物で被覆された繊維状物質、(c)アクリル酸樹脂及び(d)液体媒体からなり、(a)と(b)との重量比が95:5?50:50であり、(a)と(c)との重量比が100:0?85:15である帯電防止用塗料組成物」が記載されていることが認められ、ここにおける「(a)と(b)との重量比が95:5?50:50」は、(b)の(a)に対する重量比では、約5?100重量%と換算されるものである。
そして、該帯電防止用塗料組成物における繊維状物質は、記載dによれば、白色であって、また、該繊維状物質には、記載eによれば、繊維状チタン酸カリウム、繊維状炭化ケイ素、繊維状窒化ケイ素、繊維状α-アルミナ又は繊維状炭化ホウ素等を採用できることがうかがえる。
更に、記載gによれば、上記帯電防止用塗料組成物の被塗装物として、複写機の加熱定着ロール、支持ロール、製紙及び繊維用のサイジングロール、食品加工用ロール、粉体移送用コンベア、ホツパー、シユーター等が採用できることもうかがえる。
してみると、引用例には、「複写機の加熱定着ロール、支持ロール、製紙及び繊維用のサイジングロール、食品加工用ロール、粉体移送用コンベア、ホツパー、シユーター等の被塗装物に塗装される帯電防止用塗料組成物であって、同組成物は、(a)フッ素樹脂、(b)白色の、導電性酸化物で被覆された繊維状物質、(c)アクリル酸樹脂及び(d)液体媒体からなり、(b)の(a)に対する重量比が約5?100重量%であり、(a)と(c)との重量比が100:0?85:15であって、更に、前記繊維状物質として、繊維状チタン酸カリウム、繊維状炭化ケイ素、繊維状窒化ケイ素、繊維状α-アルミナ又は繊維状炭化ホウ素等を採用したもの」(以下、「引用考案」という。)が記載されているということができる。
また、引用考案におけるフッ素樹脂には、記載fによれば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロビレン共重合体が採用できることもうかがえる。

(三)そこで、本件考案1と引用考案とを比較すると、引用考案の被塗装物は本件考案1の基材に対応するもの、少なくとも、本件考案1の基材は、ガラス繊維または全芳香族ポリアミド繊維からなる織布あるいは不織布からなる点において相違しているから、本件考案1は、引用考案であるとはいえず、また、引用考案において上記点がきわめて容易に為し得るとする理由も見当たらないから、引用考案に基づいて当業者がこの出願前にきわめて容易に考案できたともいえない。
また、本件考案2は、本件考案1を技術的に限定して特定するものであるから、やはり、引用考案であるとはいえず、また、引用考案に基づいて当業者がこの出願前にきわめて容易に考案できたともいえない。
他に、本件考案1及び2が、引用例に記載された考案とも、また、該考案に基づいて当業者がこの出願前にきわめて容易に考案できたとする理由も見当たらない。

(四)他にも、本件考案1及び2が、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないとする理由は見当たらない。

4.むすび
本件訂正審判請求は、実用新案法第39条第1項ただし書第1?3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2?3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
弗素樹脂被覆複合体
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ガラス繊維または全芳香族ポリアミド繊維からなる織布あるいは不織布からなる基材と、この基材の少なくとも片面に形成され、針状単結晶を有する白色導電性充填材を弗素樹脂の固形分量に対して1?30重量%充填してこの針状単結晶が三次元的に網目構造となった弗素樹脂層を具備することを特徴とする弗素樹脂被覆複合体。
【請求項2】前記弗素樹脂層を構成する樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体のいずれかである請求項1記載の弗素樹脂被覆複合体。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、繊維加工工業におけるプレス加工用ベルトや、半導体製造ラインにおける搬送用ベルト等に用いられる弗素樹脂複合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐熱基材と弗素樹脂の複合体は、弗素樹脂のもつ耐熱性、非粘着性、耐薬品製等の優れた特性により、種々の乾燥用、食品焼成等のベルト等に加工され、幅広い分野で利用されている。しかし、弗素樹脂及び耐熱基材の高電気絶縁性から静電気の発生があり、埃の付着や搬送物の特性的な異変や周辺機器への電気的影響がある。
【0003】
これらの対策として、従来より弗素樹脂にブラックカーボンを充填することにより電気抵抗率を下げ、帯電防止する方法が一般的に広く用いられている。具体的には、弗素樹脂のディスパージョンにカーボン粉末を添加し、分散した後、耐熱基材をこのディスパージョン中に浸漬し、100?400℃の温度により乾燥し焼成するか、導電性のある耐熱基材を用いて弗素樹脂をコーティングし、乾燥し焼成したものを利用していた。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
以上のようにして作られた耐熱性複合体は、カーボン粒子が球状であるため、カーボン粒子同士の接触が低く、電気抵抗率が大きくなる。また、カーボン粒子の分散の不均一により電気抵抗率のバラツキが発生する。更に、樹脂層の磨耗が多く、かつカーボンであるため、黒い磨耗粉を発生し、それが相手製品に転移するという問題があった。本考案は上記事情に鑑みてなされたもので、電気抵抗率が低く、かつ耐摩耗性に優れた弗素樹脂被覆複合体を提供することを目的ととする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案は、ガラス繊維または全芳香族ポリアミド繊維からなる織布あるいは不織布からなる基材と、この基材の少なくとも片面に形成され、針状単結晶を有する白色導電性充填材を弗素樹脂の固形分量に対して1?30重量%充填してこの針状単結晶が三次元的に網目構造となった弗素樹脂層を具備することを特徴とする弗素樹脂被覆複合体である。
【0006】 本考案において、前記基材としては、ガラス繊維又は全芳香族ポリアミド繊維等からなる織布あるいは不織布、もしくは全芳香族ポリアミドフィルム、もしくはポリイミドフィルムが挙げられる。
【0007】 本考案において、前記弗素樹脂層を構成する樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体が挙げられる。
【0008】 本考案において、白色導電性充填材は弗素樹脂の固形分量に対して1?30重量%、好ましくは5?10重量%添加する。こうした配分にする理由は、前記白色導電性充填材は1重量%未満では十分な帯電防止性を有せず、また30重量%以上でも帯電防止性を有するが、それ以上の効果が確認されないからである。
【0009】
【作用】本考案において、針状単結晶を有する白色導電性充填材は微細な繊維形状を有し、この充填材を充填した弗素樹脂層を備えた複合体は、針状単結晶が三次元的に網目構造になると共に、補強効果が向上し、耐摩耗性を向上し、更には電気的にも安定なものが得られる。但し、前記白色導電性充填材は弗素樹脂と同等以上の耐熱性を有し、また弗素樹脂ディスパージョンに対する分散性を良好にするために、針状単結晶体の分散効果を有する液状分散剤を選定し、浸漬、乾燥、焼成することが望ましい。これにより、耐摩耗性も向上する。
【0010】
【実施例】
以下、本考案の一実施例を図1を参照して説明する。
【0011】 図中の1は、基材としてのガラス繊維織布である。このガラス繊維布1の両面には、弗素樹脂層2a,2bが形成されている。これらの弗素樹脂層は、PTFEディスパージョンに白色導電性針状単結晶体例えば導電性ウィスカー(商品名:デントールWK-200B、大塚化学製造)をPTFE固形分に対して10重量%
添加し、分散した後、前記ガラス繊維織布1に含浸させ、更に、100℃で乾燥を行い、400℃で焼成することにより得る。下記「表1」は、従来品と本考案品の表面抵抗率(Ω)と体積抵抗率(Ωcm)を測定した結果を示す。まお、表1中のXは平均値を示す。
【0012】
【表1】

【0013】 表1より、カーボンブラック粒子等を分散して得られる従来品に比較し、表面抵抗と体積抵抗率がかなり低い値を示し、かつバラツキが小さく安定したものが得られ、白色導電性針状単結晶体の効果があることが確認された。
【0014】 また、テーバ型磨耗試験(JIS-L-1096)を用いて摩耗量の確認を行ったところ、本考案品の場合4.0mgであったが、従来品の場合7.6mgであった。この結果により、本考案品の場合従来品と比較して約半分の摩耗量であり、複合体の寿命を延ばすことができることが確認できた。
【0015】 更に、下記「表2」は、従来品と本考案品の柔軟性の程度、つまり複合体の腰の強さを表す剛性(mgf)を示す。ここで剛性ガーレ式試験機(JIS-L-1096)を用いた。
【0016】
【表2】

この表2より、本考案品が従来品に比べて腰の強いことが明らかである。
【0017】
【考案の効果】
以上詳述した如く本考案によれば、電気抵抗率が低く、かつ耐摩耗性に優れた弗素樹脂被覆複合体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本考案の一実施例に係る弗素樹脂被覆複合体の断面図。
【符号の説明】
1……ガラス繊維織布(基材)、2……弗素樹脂層。
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-08-22 
結審通知日 2003-08-27 
審決日 2003-09-09 
出願番号 実願平4-4258 
審決分類 U 1 41・ 83- Y (B32B)
最終処分 成立  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 高梨 操
須藤 康洋
登録日 1997-10-03 
登録番号 実用新案登録第2560834号(U2560834) 
考案の名称 弗素樹脂被覆複合体  
代理人 寒河江 孝允  
代理人 河野 哲  
代理人 河野 哲  
代理人 河井 将次  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 河井 将次  
代理人 寒河江 孝充  
代理人 鈴江 武彦  
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