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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) A62C
管理番号 1086555
審判番号 審判1999-35693  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-11-25 
確定日 2003-09-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の登録第2513156号「保形ホ?ス」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成12年10月13日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成12年(行ケ)第463号、平成15年4月22日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2513156号の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯

本件実用新案登録第2513156号は、平成3年2月22日に出願され、平成8年7月9日に実用新案登録の設定登録がされ、平成11年11月25日に請求人より本件無効審判の請求がなされ、答弁書提出期間内である平成12年4月10日に答弁書とともに訂正請求書が提出され、平成12年8月1日に弁駁書が提出され、平成12年10月13日付けで、訂正を認め、本件審判の請求は成り立たない旨の審決がなされ、この審決に対する訴えが東京高等裁判所になされ、同裁判所において平成12年(行ケ)第463号事件として審理され、平成15年4月22日に、特許庁が平成12年10月13日にした審決を取り消す旨の判決が言い渡され、当該判決は確定したので、本件事件についてさらに審理する。

2.請求人の主張

請求人は、請求書及び平成12年8月1日付け弁駁書において、本件の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件の請求項1に係る考案は、本件実用新案登録の出願前に頒布された甲第1号証の1の比較例2に記載された考案であるか、または、甲第1号証の1ないし甲第3号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、その実用新案登録は実用新案法第3条第1項第3号または同条第2項の規定に違反してされたものであり、旧実用新案法第37条第1項の規定により無効とされるべきである旨主張し、証拠方法として甲第1号証の1ないし甲第3号証を提出した。
◎甲第1号証の1:実願昭63-9066号(実開平1-113685号)のマイクロフィルム
◎甲第1号証の2:平成10年審判第10056号の平成11年5月28日付け審決書
◎甲第2号証:「織物組織 改訂版」8?17頁(実教出版株式会社、昭和44年2月25日発行)
◎甲第3号証:「改訂新版 消防機器便覧」4051?4053ノ2、4061?4062頁(東京消防機器研究会、昭和51年5月14日発行)

3.被請求人の主張

これに対し、被請求人は、次のように主張する。
(1)本件審判請求は却下すべきでものであるとし、その理由として、審判請求書第2頁5?6行に記載された「平成6年法律第116号附則第9条第2項によって準用する特許法第123条第1項第2号」は、新々特許法第5章(特許異議の申立)が準用されるのであって、特許法第129条第2項第2号は準用されていないから、申立人の主張は法的根拠が不明確であり、不適法な審判請求である。
(2)下記の乙第1号証及び乙第2号証を提出し、甲各号証のいずれにも、本件の訂正後の請求項1に係る考案のように、綾織物において複数本のモノフィラメント製緯糸の間を経糸が橋架けした綾目がジャケット面の内面になるように構成した点が記載されていないから、本件の訂正後の請求項1に係る考案は、甲第1号証の1に記載された考案であるとも、また、甲第1号証の1ないし甲第3号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるともすることができない。
◎乙第1号証:平成9年異議第71543号異議決定書(平成9年7月23日付け)
◎乙第2号証:実用新案登録第3065779号公報(平成12年2月8日発行))

4.訂正の適否について

(1)訂正請求書による訂正の内容
被請求人が平成12年4月10日付けでした訂正請求の内容は、願書に添付した明細書について下記のとおり訂正しようとするものである。
(ア)実用新案登録請求の範囲の請求項1の「該綾織物の綾目」を明りょうでない記載の釈明を目的として、「該綾織物において複数本のモノフィラメント製緯糸の間を経糸が橋架けした綾目」と訂正する。
(イ)上記訂正に伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との整合のため、考案の詳細な説明の段落【0010】に記載された「該綾織物の綾目」を「該綾織物において複数本のモノフィラメント製緯糸の間を経糸が橋架けした綾目」と訂正する。
(2)判断
上記訂正について検討すると、「該綾織物において複数本のモノフィラメント製緯糸の間を経糸が橋架けした綾目」については、明細書において「これに対して、本考案の保形ホースは、綾織物の綾目がジャケットの内面になるよう構成し、ジャケットの内面に内張層をライニングするものである。」(段落【0013】)と記載され、「このように構成することにより、・・・モノフィラメント製緯糸の複数本の間を、経糸により橋架けし、この上に、内張面をライニングすることにより、ホースの内面に蛇腹形状が発生しないようにするものである。」(段落【0014】)と記載されており、上記訂正事項は、いずれもジャケットの内面となる「綾織物の綾目」を明りょうにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、平成12年4月10日付けの訂正は、平成5年法律第26号附則第4条第2項で読み替える平成5年法改正前の実用新案法第40条第2項ただし書き及び同条第5項で準用する実用新案法第39条第2項、同条第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

5.無効理由について

審判請求書第2頁5?6行に記載された「平成6年法律第116号附則第9条第2項によって準用する特許法第123条第1項第2号」は、弁駁書において釈明するように、「旧実用新案法第37条第1項」の錯誤と認められる。
以下、請求人主張の無効理由について検討する。

5-1 本件考案
本件の訂正後の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1の末尾に記載された「保形ケース」は、「保形ホース」の明らかな誤記と認められるから、次のとおりのものと認める。
「剛性を有するモノフィラメント製緯糸を用いて製織されたジャケットの内面に内張層をライニングすることにより構成される保形ホースにおいて、上記ジャケットとして綾織物を用い、該綾織物において複数本のモノフィラメント製緯糸の間を経糸が橋架けした綾目がジャケットの内面になるように構成した保形ホース。」

5-2 甲第1号証の1(引用例)に記載された考案
本件実用新案登録出願前に頒布された甲第1号証の1(実願昭63-9066号(実開平1-113685号)のマイクロフィルム)には、比較例2に関して、次の記載がある。(以下、比較例に記載の考案を「引用考案1」という。)
(1)「実施例
本考案の実施例として、次の構成により内径28mmのホースを製作した。
実施例1
たて糸として、20番手のポリエステル紡績糸を6本寄り合わせた糸条を2本引揃え、これを152本使用した。
また表よこ糸として、直径約1.4mmのナイロンブリッスルを使用し、裏よこ糸として1500dのポリエステル長繊維糸を3本撚合せた糸条を使用した。この表よこ糸及び裏よこ糸を交互にそれぞれ10cm間に38本打込んだ。
前記たて糸と、表よこ糸及び裏よこ糸とを、図面に示す横二重織組織(表組織1/2斜文織組織、裏組織2/1斜文織組織)により、筒状に織成してジャケットとし、そのジャケットの内面に厚さ0.4mmの合成樹脂のライニングを形成して、ホースを得た。
実施例2
たて糸及び表よこ糸としては、前記実施例1におけると同様の糸を使用し、裏よこ糸として直径約0.8mmのナイロンブリッスルを使用した。そしてたて糸に対して表よこ糸及び裏よこ糸を交互にそれぞれ10cm間に38本打込み、図面に示す横二重織組織(表組織1/2斜文織組織、裏組織2/1斜文織組織)により、筒状に織成してジャケットとし、そのジャケットの内面に厚さ0.4mmの合成樹脂のライニングを形成して、ホースを得た。
比較例1
たて糸として20番手のポリエステル紡績糸を6本撚合わせた糸条を2本引揃えて152本使用した。またよこ糸として、直径約1.4mmのナイロンブリッスルと、1500dのポリエステル長繊維糸を3本撚合せた糸条とを使用し、ナイロンブリッスルとポリエステル長繊維糸とを同時に10cm間に38本打込んだ。
前記たて糸とよこ糸とを平織組織により筒状に織成してジャケットとし、その内面に0.4mmの合成樹脂のライニングを形成した。
比較例2
たて糸として、20番手のポリエステル紡績糸を6本撚合せた糸条を2本引揃えて151本使用した。またよこ糸として、比較例1と同様の糸条を使用し、このたて糸とよこ糸とを1/2斜文織組織により筒状に織成してジャケットとし、その内面に0.4mmの合成樹脂のライニングを形成した。
性能試験
以上の実施例及び比較例のホースについて、次の性能試験を行った。
圧力損失試験
長さ10mのホースの一端に内径10mmの放水ノズルを取付け、他端から200l/minの水を送水したときの、送水側と吐水側との圧力差を測定した。
最小曲げ半径
長さ約1mのホースを、手で折曲げてループを作り、キンクを起こす限界の曲げ半径を測定した。
試験結果
以上の試験の結果は、次頁の表に示す通りであった。
表(略)」
(9頁9行目?12頁17行目)
上記のとおり、引用例においては、実施例1及び実施例2は横二重織組織(表組織1/2斜文織組織、裏組織2/1斜文織組織)であり、これに対して、比較例はいずれも一重組織であって、比較例1が平織組織、比較例2が1/2斜文織組織であるとされており、実施例及び比較例のホースについて、性能試験を行ったところ、圧力損失は、実施例1及び実施例2が小さく、次に比較例2が小さく、最も大きいのが比較例1であったことが示されている。

(2)よこ糸の打込み方法について
上記引用考案1(比較例2に記載されたもの)のよこ糸の打込み方法について検討してみると、以下のとおりである。
(ア)上記のとおり、比較例1には、よこ糸について「直径約1.4mmのナイロンブリッスルと、1500dのポリエステル長繊維を3本撚合せた糸条とを使用し、」と記載され、打ち込み方法について「ナイロンブリッスルとポリエステル長繊維糸とを同時に10cm間に38本打ち込んだ」と記載されている。これに対し、比較例2に関しては、よこ糸について、「比較例1と同様の糸条を使用し」とのみ記載され、それ以上の説明はないから、文言上、比較例2に関しては、打ち込み方法についての記載はないと解する余地もある。しかし、実施例1、実施例2及び比較例1に関しては打ち込み方法の記載があって、これらが特定されていることからは、比較例2のみ打ち込み方法の特定がないのは不自然である。のみならず、そもそも、実際に製品を製作して性能試験をする以上、比較例2のみ打込み方法が特定されていないなどということは本来あり得ないことというべきである。比較例2において、打ち込み方法が特定されていないと解すべきではない。
そこで、どのような打ち込み方法が記載されていると解すべきであるか検討する。
引用例では、そこで出願対象とされている考案(引用例の実施例1、2に記載の考案。)の作用として、「ジャケット1の表よこ糸3と裏よこ糸4とが交互に配置され、且つこれらとたて糸5とがよこ二重織組織で織成されているため、裏よこ糸4が表よこ糸3よりも比較的裏寄りに位置することとなり、しかもこの裏よこ糸4は柔軟な合成繊維糸又は細い針金若しくは合成樹脂の線状体よりなるので、当該裏よこ糸4が表よこ糸3の裏面よりの隙間を埋めるような状態となる。・・・したがって、ジャケットの裏面は極めて平坦となり・・・」(7頁13行目?8頁13行目)と述べ、その作用効果を生み出す要素の一部として、二種類のよこ糸を採用し、これを交互に配置すること、かつよこ二重織組織を採用することを挙げている。そして、これと対比する比較例1として、2種類のよこ糸を用いる点は共通しつつ、「異なるよこ糸を同時に打ち込む」、「平織組織」のものを挙げている。そうすると、比較例2としても、2種類のよこ糸を用いることを共通点としつつ、よこ糸の打込み方法と織組織を引用考案2と異にするもの、すなわち、「異なるよこ糸を同時に打ち込む」、「1/2斜文織」のものを採用していると解すべきである。
(イ)被請求人は、引用例の第2頁?第3頁の「従来技術」の説明では、従来のこの種のホースについて、従来剛直な線状体(例えばナイロンブリッスル)と合成繊維(例えばポリエステル長繊維糸)とをよこ糸として使用する場合は交互に織り込むと明記し、交互織込みのためにホースの内面の凹凸が激しく、圧力損失が大きくなると明言しているところから、引用考案1も同じ従来技術であり、しかも同じよこ糸を使用しているから、引用考案1は2種のよこ糸を交互に織込んだものと解釈するのが当然であり、同時打込みと解する余地は全くない、旨主張する。
しかし、引用例の中に、従来技術の一つとして、交互打込みのものが開示されていることは、引用考案1が交互打込みのものであることを当然に基礎付けるものではない。引用例の実施例以下の記載で、上記「従来技術」により製造された保形ホースを、同号証の考案との比較対象とするべきことは、何ら記載されていないのである。
引用例で従来技術として挙げられているのは、特公昭51-38087号公報であり、この特許公報で実施例として挙げられているのは、2種のよこ糸を交互に打ち込んだ平織組織と、同時に打ち込んだ(厳密には、合成繊維等のよこ糸を打ち込み、再度同一箇所に針金を打ち込む)2/1斜文織組織である。これによると、「交互打込み」という語は、「別々の」場所に2種のよこ糸を打ち込むことのみを意味するものとはされていないことになる。2種のよこ糸を「別々の」場所に打つ交互打込みのみが、引用例の成立当時、保形ホースの従来技術であったとは、必ずしも認められないのである。

(3)ジャケットのいずれの面がホースの内面になるかについて
比較例2(引用考案1)についての引用例の「たて糸とよこ糸とを1/2斜文織組織により筒状に織成してジャケットとし、その内面に0.4mmの合成樹脂のライニングを形成した」との記載は、引用例の、実施例1についての「前記たて糸と、表よこ糸及び裏よこ糸とを、図面に示す横二重織組織(表組織1/2斜文織組織、裏組織2/1斜文織組織)により、筒状に織成してジャケットとし、そのジャケットの内面に厚さ0.4mmの合成樹脂のライニングを形成して、ホースを得た」との記載と第1図とを参酌すれば、同考案は、1/2斜文織組織の裏面にライニングを形成したものであることを示すことが、明らかである。
すなわち、横二重織組織である実施例においては、1/2斜文織組織を「表組織」としてこれを基準としつつ、その裏側(すなわち、たて糸が2本のよこ糸の上に浮かび、1本のよこ糸の下に沈むことを繰り返す面)をホースの内面として、それにライニングを施す、としているものであるから、比較例2についての記載も、1/2斜文織を基準として、その裏側をホースの内面とし、それにライニングを施したもの、と解するのが合理的な読み方というべきである。

(4)以上のとおりであるから、引用考案1は、
「たて糸として、20番手のポリエステル紡績糸を6本撚合せた糸条を2本引揃えて151本使用し、よこ糸として直径約1.4mmのナイロンブリッスルと、1500dのポリエステル長繊維糸を3本撚合わせた糸条とを使用し、ナイロンブリッスルとポリエステル長繊維糸とを同時に10cm間に38本打ち込んで、たて糸とよこ糸とを1/2斜文織組織により筒状に織成してジャケットとし、その裏面を内面とし、これに0.4mmの合成樹脂のライニングを形成した保形ホース」
であるものと認められる。

5-3 対比、判断
(1)本件考案と引用考案1とを対比すると両者の一致点及び相違点を次のとおりと認められる。
(一致点)
「緯糸を用いて製織されたジャケットの内面に内張層をライニングすることにより構成される保形ホースにおいて、上記ジャケットとして綾織物を用い、該綾織物において複数本の緯糸の間を経糸が橋架けした綾目がジャケットの内面になるように構成した保形ホース。」
(相違点)
本件考案の緯糸は、剛性を有するモノフィラメント製緯糸を用いているのに対し、引用考案1の緯糸は、直径約1.4mmのナイロンブリッスルと、1500dのポリエステル長繊維糸を3本撚合わせた糸条とを使用している点。
(2)判断
(ア)保形ホースにおいて、よこ糸を剛性を有するモノフィラメント糸のみで構成することは、引用例に先行技術として挙げられている特開昭59-106787号公報に開示されているように、本件出願前に周知であったと認められるから、引用考案1のよこ糸を、剛性を有するモノフィラメント糸のみで構成することは、当業者にとってきわめて容易に想到できる事項であったということができる。
(イ)被請求人は、引用考案1は、本件考案と目的、構成、効果が相違する、引用考案1は、引用考案2の実施例に対する比較例(従来例)として示されているだけであって、その目的、効果に関する積極的な記載はどこにもなく、むしろ、実施例1及び実施例2のホースに比べて圧力損失が約2倍も多く、圧力損失が大きいという効果を奏することが記載されているなどとして、引用例には引用考案1から、本件考案を創出する動機付けとなる記載は全くないから、引用考案1から、当業者が本件考案をきわめて容易に考案をすることできるとはいえない旨主張する。
本件考案は、「内張層を厚くしたり多層構造にすることなしに、保形ホース内面の蛇腹形状の発生を抑制することにより、放水時の水圧の損失を防止し、消防用ホースとしての消火能力の向上を図ろうとする」(本件公報【0009】欄)ものであり、これに関して、引用例には、「考案が解決しようとする問題点 しかしながらこの種のホースにおいては、ジャケットのよこ糸として針金又は合成樹脂の剛直な線状体と合成繊維系とを交互に織込んでいるため、内面の凹凸が激しく、圧力損失が大きいという問題があった。またこの問題の解決のためのものとして、特開昭59-106787号公報に記載されたものがある。」(甲第1号証の1、3頁3行目?11行目)、「本考案はかかる事情に鑑みなされたものであって、ホースの内面の凹凸が小さく、しかもジャケットの肉厚が薄く、且つ柔軟で小さな曲率半径で巻回することのできるホースを提供することを目的とするものである。」(同4頁7行目?11行目)と記載されている。上記引用された特開昭59-106787号公報にも、「本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、前記公知のホースのジャケット1をそのまゝ利用して、内面の凹凸の少ないライニングを施し、圧力損失が小さく消防用リールホースとして好適なホースを提供せんとするものである。」(2頁右上欄9行目?13行目)と記載されている。このように、本件考案の課題は、引用例に十分に開示されているのである。
(ウ)引用考案1(比較例2)は、実施例1及び同2よりは、織物構造がより単純であり、さらに、そのよこ糸をモノフィラメントのみにすれば、もっと単純になるから、その他の構造・寸法等が同じであれば、製造コスト上有利になることは疑いようがない。そうすると、引用例で課題として追求されている消防用保形ホースとしての性能を意識しつつも実用上耐えられる範囲でできるだけ単純なものを得ようとして、そこに比較例として挙げられている引用考案1を採用することにした上、これを更によこ糸としてモノフィラメントのみを用いる構成(すなわち、本件考案の構成)のものとすることは、当業者にとってきわめて容易であるというべきである。消防用保形ホースとしての性能(とりわけ圧力損失)が相対的に劣ることになるからといって、そのことのみをもって、当然に容易想到性の阻害要因があることになると解することはできない。
(エ)よって、本件考案は引用考案1及び出願前周知の技術的事項から当業者がきわめて容易に考案できたものであって、実用新案法第3条第2項に該当する。

6.まとめ

以上のように、本件考案に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、平成5年改正前の実用新案法第37条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用の負担については、実用新案法第41条の規定により準用され、特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
保形ホース
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 剛性を有するモノフィラメント製緯糸を用いて製織されたジャケットの内面に内張層をライニングすることにより構成される保形ホースにおいて、上記ジャケットとして綾織物を用い、該綾織物において複数本のモノフィラメント製緯糸の間を経糸が橋架けした綾目がジャケットの内面になるように構成したことを特徴とする保形ケース。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は消防用ホースとして好適な保形ホースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の消防用ホースは、例えば紡績糸を用いて製織された円筒状のジャケットに内張ゴム層をライニングしたものであった。
【0003】
しかし、このような消防用ホースは、消火栓箱などに収納した場合に、ホースの円筒形状が保持されず、ホースを全て延長しなければ放水することができなかった。
【0004】
このため、ジャケットを構成する緯糸としてモノフィラメント糸を用いる保形ホースが開発された。
【0005】
この保形ホースによれば、消火栓箱などに収納する場合にその円筒形状を保持することができるため、全て延長しなくても放水することができる。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、上記保形ホースに用いるモノフィラメント製緯糸は、断面が円形で、その径が比較的大きく、しかも剛性を有している。このため、ジャケットの内外面に、打込まれたモノフィラメント製緯糸の列に沿って、ジャケットの長さ方向に蛇腹形状が発生する。
【0007】
したがって、ジャケット内面に内張層をライニングしても、ホースの内面に蛇腹形状が残存し、放水時の水圧の損失が大きい。
【0008】
保形ホース内面の蛇腹形状を解消するために、内張層を厚くしたり、内張層を多層構造にするという方法がある。しかし、このような方法では、ホースの重量が増し、柔軟性がなくなり、製造コストが上昇するなどの問題を生じる。
【0009】
そこで、本考案は、内張層を厚くしたり多層構造にすることなしに、保形ホース内面の蛇腹形状の発生を抑制することにより、放水時の水圧の損失を防止し、消防用ホースとしての消火能力の向上を図ろうとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本考案は、剛性を有するモノフィラメント製緯糸を用いて製織されたジャケットの内面に内張層をライニングすることにより構成される保形ホースにおいて、上記ジャケットとして綾織物を用い、該綾織物において複数本のモノフィラメント製緯糸の間を経糸が橋架けした綾目がジャケットの内面になるように構成したことを特徴とする保形ホースを提供するものである。
【0011】
上記本考案の保形ホースは、ジャケットの組織を、従来広く用いられている、経糸と緯糸が1本ずつ交互に上下に交差している平織組織に代えて、経糸と緯糸がおのおの3本以上からなり、経糸の浮きが1本ないし複数本ずつ斜めにずれており、織物の表面に斜めのうねり状の線(綾目)がある綾織組織とするものである。
【0012】
従来の消防用ホースのなかには、ジャケットとして、綾織物を用いたものがある。しかし、これはあくまでホースの柔軟性を発現するために用いられ、綾織物の綾目がホース外面になるようにしたものである。
【0013】
これに対して、本考案の保形ホースは、綾織物の綾目がジャケットの内面になるように構成し、ジャケットの内面に内張層をライニングするものである。
【0014】
このように構成することにより、断面が円形で、その径が比較的大きく、しかも剛性を有するモノフィラメント製緯糸の複数本の間を、経糸により橋架けし、この上に、内張層をライニングすることにより、ホースの内面に蛇腹形状が発生しないようにするものである。
【0015】
【実施例】
次に、本考案を図面を参照しつつ実施例によりさらに詳しく説明する。
【0016】
図1に示すように、経糸として径が約0.8mmの紡績糸1を用い、緯糸として直径が1.0mmのナイロンモノフィラメント2を用いて、1/2綾織組織(1,2の綾織り)のジャケット3を綾目がジャケットの内側になるように作製した。
【0017】
図2に示すように、綾織物であるジャケット3の表面3aに厚さ0.4mmのゴム層を内張りして、内径が約25mmの消防用保形ホースを作製した。
【0018】
比較例
上記実施例の保形ホースの性能を評価するために、以下の如き保形ホースを作製した。
【0019】
比較例1:
図3に示すように、実施例と同様の経糸および緯糸を用いて、平織組織のジャケット5を作製した。このジャケット5に実施例と同様に厚さ0.4mmのゴム層を内張りして、内径が約25mmの消防用保形ホースを作製した。
【0020】
比較例2:
ジャケット3の裏面3bにゴム層4を内張りする以外は実施例と同様の消防用保形ホースを作製した。
【0021】
上記実施例および比較例1,2の消防用保形ホースを、それぞれ20m用い、延長時にノズル圧2.5kg/cm^(2)(流量60リットル/分)を得るための水圧の損失を求めた。
結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
表1に示す結果から明らかなように、実施例の消防用保形ホースは、比較例1,2の消防用保形ホースよりもノズル圧2.5kg/cm^(2)を得るための水圧の損失が少ない。したがって、消火活動に用いる際に、例えば加圧送水装置などの負荷が小さい。
【0024】
上記実施例の消防用保形ホースにおいて水圧の損失が少ない理由は、次のように説明できる。
すなわち、上記実施例の消防用保形ホースは、綾織物の綾目の出る側を、ホースの内面にしているため、ホースの内面は複数のモノフィラメント製緯糸(モノフィラメント2)に経糸の橋を架けたような状態になる。このため、ホース内面の蛇腹形状が大巾に解消される。
【0025】
これに対して、比較例1の消防用保形ホースでは、ジャケットが平織物によって作製されているため、ジャケットの内側と外側のいずれにも、モノフィラメント製緯糸による蛇腹が発生してしまう。
【0026】
また、比較例2の消防用保形ホースでは、ジャケットは綾織物によって作製されているが、その綾目をホースの外面としているため、モノフィラメント製緯糸に対する経糸による橋架けは、ホースの外面に現われる。したがって、ホース内面が平織物と同様な組織となり、蛇腹形状を解消することはできない。
【0027】
以上、本考案の一実施例について述べたが、本考案はこれに限定されるものではなく、本考案の技術的思想の範囲内において、各種の変更および変形が可能である。
【0028】
例えば、本考案の保形ホースのジャケットの織組織は、綾織でさえあれば特に限定されるものではないが、ホースの外面の耐摩耗性などを考慮すると1/2綾織および1/3綾織が好ましく、いずれも綾目の出る側をホース内面に用いればよい。
【0029】
モノフィラメント製緯糸の材質も限定されず、例えばポリエステルモノフィラメントなどの合成繊維のほか、鋼線などを用いることもできる。
【0030】
また、モノフィラメント製緯糸の径も限定されないが保形ホースの各種の口径に応じて0.5?2.5mmが好適である。
【0031】
また、内張層はゴム層である必要はなく、熱可塑性エラストマーなどの合成樹脂によって作製されたものでもよい。
【0032】
上記実施例の消防用保形ホースは、その外面に合成樹脂加工を施こすことにより、引き出しの際の抵抗力を小さくし、かつ耐摩耗性を向上させることができる。
【0033】
上記実施例では、本考案の保形ホースを消防用ホースとして用いる場合について述べたが、本考案の保形ホースは消防用ホースに限定されるものではなく、工業用ホースとして用いることもできる。
【0034】
【考案の効果】
本考案の保形ホースは、ホースの内面に蛇腹形状が現れないため、放水時の水圧の損失が小さく、例えば消火の際の加圧送水装置などの負荷が小さい。
【図面の簡単な説明】
【図1】
実施例の消防用保形ホースに用いるジャケットの概念図である。
【図2】
実施例の消防用保形ホースの縦断面図である。
【図3】
比較例1の消防用ホースに用いるジャケットの概念図である。
【符号の説明】
1 紡績糸
2 モノフィラメント
3 ジャケット
3a ジャケットの表面
3b ジャケットの裏面
4 ゴム層
5 平織組織のジャケット
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2000-09-12 
結審通知日 2000-09-26 
審決日 2000-10-13 
出願番号 実願平3-15277 
審決分類 U 1 112・ 121- ZA (A62C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 本郷 徹  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 木原 裕
鈴木 憲子
登録日 1996-07-09 
登録番号 実用新案登録第2513156号(U2513156) 
考案の名称 保形ホ?ス  
代理人 野口 賢照  
代理人 小川 信一  
代理人 野口 賢照  
代理人 斎下 和彦  
代理人 小川 信一  
代理人 斎下 和彦  
代理人 鈴江 武彦  
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