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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A01K
管理番号 1086557
審判番号 無効2002-35362  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-08-28 
確定日 2003-11-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第2576924号実用新案「生餌入れ容器」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2576924号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 【1】手続の経緯
本件実用新案登録第2576924号「生餌入れ容器」は、平成4年6月24日に実願平4ー50462号として実用新案登録出願され、平成10年5月1日にその考案について実用新案の設定登録(請求項の数1)がなされたものである。
これに対して、平成14年8月28日に請求人タカ産業株式会社より、本件実用新案登録第2576924号の登録を無効とする、との審決を求める本件審判の請求がなされ、平成14年12月2日付けで被請求人(実用新案権者)株式会社よし勝より、本件審判請求は成り立たない、との審決を求める答弁書が提出され、また平成15年1月14日付けで本件審判請求人より弁駁書が提出され、さらに平成15年2月12日付で被請求人(実用新案権者)より第2の答弁書が提出されたものである。

【2】本件登録実用新案
本件実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下「本件考案」という。)は、設定登録時の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「上方が開口した筒状の容器本体1と、その口部6を開閉可能に覆う蓋体2とを有するものであって、上記容器本体1の側面3の上部には、複数個の孔4が設けられており、上記蓋体2が網状体からなり、該蓋体2の外周が、上記容器本体1の上端部にチャック7により固定可能であることを特徴とする生餌入れ容器。」

【3】審判請求人の主張
(4-1)無効とすべき理由の概要
本件審判請求人は、以下の証拠方法を提出するとともに、本件登録実用新案についての考案を無効とすべき理由について、要点、次のとおり主張している。
「本件実用新案登録に係る考案は、実用新案登録出願前に頒布された刊行物(甲第1号証乃至甲第10号証)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたのもであり、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができない考案であり、その実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。」
[証拠方法]
(1)甲第1号証 昭和56年実用新案公開第89370号公報
(2)甲第2号証 昭和55年実用新案公告第5026号公報
(3)甲第3号証 昭和51年実用新案公開第155892号公報
(4)甲第4号証 昭和48年実用新案公開第19592号公報
(5)甲第5号証 登録第230695号意匠公報
(6)甲第6号証 昭和57年実用新案公開第80262号公報
(7)甲第7号証 平成4年実用新案公開第33369号公報
(8)甲第8号証 昭和58年実用新案公開第132971号公報
(9)甲第9号証 登録第770349号意匠公報
(10)甲第10号証 昭和54年実用新案公開第70891号公報
(11)甲第11号証 平成9年7月15日提出の手続補正書の写
(12)甲第12号証 平成9年10月21日発送の拒絶理由通知書の写
(13)甲第13号証 平成9年12月16日提出の意見書、並びに手続補正書の写

(4-2)具体的理由の要点
本件審判請求人は、審判請求書等において、具体的理由を、概要、以下のとおり主張している。
(4-2-1)審判請求書において
(A)本件考案と各証拠との対比・判断(審判請求書第4頁第26行?第6頁末行)
「三 本件考案と各証拠との対比
I 甲第1号証の第1図、第2図に、上方が開口する容器と、その口部を開閉可能に覆う蓋体とからなり、容器の上部に複数個の水流通孔を形成した鮎おとり箱が記載されており、また、甲第2号証の第1頁右欄の19行目以下に、「2は開閉自在な蓋をもつ囮缶本体で、周壁上部に複数個の貫通孔21…が形成されており、…」との記載があり、第2図に、容器の上部に複数の貫通孔が形成された囮缶が記載されている。また、甲第3号証の明細書の第3頁の2行目以下に、「…本体4の各周面板3に横長の孔11を穿ち、…」との記載がなされており、第1図、第2図、第3図には、本体4の上部に密閉蓋5を有する鮎おとり容器が記載されており、また、甲第4号証の実用新案登録請求の範囲に、「上部外周側面に通気孔を具えた開放上面の容器本体と、この容器本体の開放上面に着脱自在に蓋着される蓋体とからなり、…」の記載がなされており、第1図、第3図には、上方が開口した筒状の容器と、その開口部を開閉可能に覆う蓋体とを有するものであって、容器の側面上部には、複数個の通気孔を具えた釣り用餌容器が記載されており、本件考案における「上方が開口した筒状の容器本体と、その口部を開閉可能に覆う蓋体とを有するものであって、上記容器本体の側面の上部には、複数個の孔が設けられ、」という構成が記載されている。
II 甲第5号証には、筒状容器の蓋体が網状体である鰻篭が記載されており、また、甲第6号証の実用新案登録請求の範囲に、「…容器本体Cと、…ネット20を配設した蓋体D、…とからなる鮎入れ容器」が記載されており、さらに、明細書の第4頁9行目以下に、蓋体の支持方法についての記載がなされており、蓋体が開閉可能であることが示されている。また、甲第7号証の実用新案登録請求の範囲には、「…開口部の略略半面を覆うネットを着脱自在に取り付けてなる魚釣り用ネット付きバケツ」との記載があり、本件考案における「上記蓋体2が網状体からなり、」という構成が記載されている。
III 甲第7号証には、「…開口部の略略半面を覆うネットを着脱自在に取り付けてなる魚釣り用ネット付きバケツ」との記載があり(実用新案登録請求の範囲の記載)、また、明細書の第3頁19行目以下に、「7はネット5の三辺縁部5a、5b、5cとバケツ本体1の開口部2内壁間に、連続して設けられたチャックで、該チャック7の開閉によりネット5を自由に着脱できるようにしてある。」との記載があり、甲第8号証の実用新案登録請求の範囲の記載には、「…容器1の上面にはファスナー7で開閉する上蓋8を設けてなる…携帯用水槽」との記載がある。また、甲第9号証には、蓋体の外周が、容器本体の上端部にチャック7により固定可能な釣用魚入れの図面が記載されており、甲第10号証には、「…筒状網と、該筒状網の下端部に設けられた魚収容部とよりなるびくにおいて、該筒状網の下端部近傍に開口部を設け、該開口部にスライドファスナーを取り付けて開閉自在としたことを特徴とするびく。」との記載があり、本件考案における「該蓋体2の外周が、上記容器本体1の上端部にチャック7により固定可能であることを特徴とする生餌入れ容器」という構成が記載されている。
四 本件考案の進歩性
本件考案における各構成要件は、甲第1号証乃至甲第10号証に記載されており、生餌入れ容器の設計に際して、それらの技術を採用するというようなことは、当業者が極めて容易になし得るところであり、実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができない考案である。ちなみに、「上方が開口した筒状の容器本体1と、その口部6を開閉可能に覆う蓋体2とを有するものであって、上記容器本体1の側面3の上部には、複数個の孔4が設けられており、上記蓋体2が網状体からなることを特徴とする生餌入れ容器。」について拒絶理由が存在することについては、出願人自身認めており(甲第13号証の意見書)、本件考案は、「蓋体2の外周が、容器本体1の上端部にチャック7により固定可能である。」という構成を加えることによって始めて登録が認められたものであるが(甲第11号証、甲第12号証、甲第13号証の手続補正書)、魚釣り用容器にあって、蓋体の外周にチャックを配置させて固定可能にするというようなことは、甲第7号証乃至甲第10号証に明確に記載されているところであり、生餌入れ容器の設計に際して、そのような技術を採用するというようなことは、当業者が極めて容易になし得る事項に過ぎないものである。」
(4-2-2)弁駁書において
(A)弁駁の内容(弁駁書第1頁第19行?第3頁第22行)
「(1)請求人が提出した証拠について
請求人が提出した甲第1号証乃至甲第10号証に関し、被請求人は、そこに記載された考案はいずれも、海釣り用の生餌(あじ、海えび等)を安定して保管し、効率よく取り扱うことができる生餌入れ容器とは関係のないものであると主張している。
しかし、本件登録実用新案に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の記載からして、海水魚、淡水魚の区別なく生き餌を保管するための容器に関するものであることは明らかである(海水魚を要件とする記載は存在していない。)。鮎のおとり容器は、生き餌となるおとり鮎を元気な状態で保管するための容器であって、本件考案と、技術分野を全く共通とするものである。
従って、鮎のおとり容器に関する公知技術が、本件考案とは関係のないものであるとの被請求人の主張は失当である。
(2)本件考案の進歩性と作用・効果について
被請求人は、甲第1号証乃至甲第10号証に示され考案・意匠と本件考案とを比較し、各証拠のどこにも本件考案に関する記載はないと主張している。
甲第6号証には、上方が開口した筒状の容器の口部に網蓋を配置させた構成のおとり鮎入れ容器が示されており、本件考案と比較した場合、容器の上方部に孔があるか否かという点と、網蓋の外周部をチャックで固定可能か否かの点で相違している。
しかし、この種の生き餌容器にあって、容器の上部に多数の水流通孔を形成するということは、甲第1号証乃至甲第3号証に明確に記載されているところであり、水に漬けた場合における通水性をよくするため、そのような技術を採用するというようなことは、当業者が極めて容易に転用できることである。
すなわち、甲第1号証は、上部に形成される孔を「水流通孔」として水が流れ入ることを前提としており、また、甲第2号証には、「鮎の友釣りを行なう場合囮鮎を弱らせることなく生かしておく必要があり、通常は上部に多数の貫通孔を持つ…」との記載があり、生き餌容器にあって上部に水流通孔を形成するというようなことは、当業者が極めて容易に行なえることであり、それによって、もたらされる効果も本件に特有のものではない。
また、生き魚を入れる容器にあって、蓋を、容器本体の上端部にチャックで固定可能にするということは、甲第9号証の各図面、特に「開蓋状態を示す斜視図」に明確に記載されており、蓋の開閉を行なう必要のある容器に、そのような公知技術を採用するというようなことは、当業者が極めて容易になし得るところであり、それによってもたらされる効果も本件考案に特有のものではない。
被請求人が掲げている効果Aに付いてであるが、容器の側方と蓋体に孔を形成すれば、上方と側方から容器内に効率よく水が流れ込むのは自明のことであり、甲第1号証は「通水孔」とし、内部に水を流れ入ることを前提としているのである。また、蓋からの水の流入に付いてであるが、甲第3号証の蓋は「有孔蓋7」であり、有孔蓋であれば、その孔(蓋側)から水が流入するのは自明のことであり、本件考案によってもたらされた特有のものではない。
効果Bに付いてであるが、容器の側方に孔が形成されておれば、容器を引き上げた際に、孔から水が流れ出て量が少なくなって軽くなるのは当然のことであり、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証のものにも見られる自明のものであり、本件考案に特有のものではない。
効果Cであるが、容器の上部に孔を形成すれば、水から引き上げた際、孔の形成位置から下の部分には水が残り、そこに生き餌を生かせて持ち運び可能であるという効果は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証のものにも見られる自明のものであり、本件考案に特有のものではない。甲第1号証の第2図には、生き餌を泳がせて保管し得る状態が記載されている。
効果Dであるが、蓋にチャックを付ければ、蓋が不当に開いたり、変形、移動したりすることがないというようなことは、むしろチャックそのものがもつ機能であり、チャックを付ければ、そのような効果を発揮することは、自明のことである。もちろん、本件登録実用新案の明細書中にそのような効果の記載はなく、そのような効果を主張すること自体、不条理であるという他ない。」

【5】被請求人(実用新案権者)の主張
(5-1)答弁の概要
被請求人(実用新案権者)は、答弁書において「本件登録実用新案は進歩性あるものであり、無効とされるべきものではない」とし、「本件の審判請求は成り立たない。」旨、答弁している。

(5-2)具体的理由の要点
被請求人(実用新案権者)は、具体的理由を、概要、以下のとおり主張している。
(5-2-1)答弁書において
(A)被請求人の主張の要点(答弁書第2頁第2?4行)
「本件登録実用新案は、請求人が提出した技術文献(甲第1号証?甲第10号証)のいずれにも全く示唆されない進歩性あるものであり、無効とされるべきものではない。」
(B)被請求人の主張(答弁書第2頁第5行?第9頁第11行)
「(1)本件登録実用新案について
本件登録実用新案は、海釣り用の生餌(あじ、海えび等)を安定して保管し、効率よく取り扱うことができる生餌入れ容器の提供を目的として開発されたものである。
本件明細書の従来の技術の欄にも記載したように、従来、この種の容器は存在せず、問題とされていたのである。このことは、請求人が提出した証拠に、海釣り用の生餌の容器が全く存在しないことからも立証されることである。
本件登録実用新案は、明細書の実用新案登録請求の範囲に記載する通り、
a)上方が開口した筒状の容器本体1と、その口部6を開閉可能に覆う蓋体2とを有するものにおいて、
b)容器本体1の側面3の上部に、複数個の孔4を設け、
c)蓋体2を網状体からなるものとし、かつ
d)蓋体2の外周を、容器本体1の上端部にチャック7で固定可能とする
ことにより、所望の目的を達成したのである。
かかる本件登録実用新案では、次のような効果を有する。
A)内部に生餌を入れて海水に浸潰した際、側方に設けられた孔と、蓋体に設けられた孔を通じて、上方と側方から海水が容器内部に効率よく流れ込む構造であるので、釣を行うまでの生餌の保存性に優れる。
B)容器を海水から引き上げた際には、容器本体の側面に設けられた孔から海水が流出し、容器本体内の海水の量が少なくなるので、重量が軽くなり、取り扱い易い。
C)容器を海水から取り出した状態でも、容器内に海水は適当量、保持されるため、生餌は生きのよい状態で持ち運び可能である。
D)蓋体はチャックで容器本体上端部に固定されているため、内部に生餌を入れて、容器全体を海水に浸潰しても、蓋体が不当に開いたり、変形、移動したりすることなく、安定して、生餌を容器本体内で泳がせておくことができる。
(2)甲第1号証?甲第10号証記載の考案について
請求人が提出した公知文献、甲第1号証?甲第10号証に記載された考案はいずれも、海釣り用の生餌(あじ、海えび等)を安定して保管し、効率よく取り扱うことができる生餌入れ容器とは関係のないものである。
〔甲第1号証〕
甲第1号証記載の考案は、川で鮎の友釣をする際に使用する「鮎おとり箱」に関するもので、折り畳みできる箱体の使用に特徴を有するものである。
この箱体は、側面板に水流通孔が設けられているが、蓋は、蓋板(7)に内蓋02を設け、この内蓋(12)におとり用の鮎を箱体内に入れるための孔(13)を開設し、この孔03に復元蓋側を取り付けているものであり、蓋が網状体からなるものではなく、またチャックで箱体に取り付けられているものでもない。
「鮎おとり箱」は川岸の浅瀬に浸けて使用するものであり、蓋まで水に漬けることはないが、仮に、「鮎おとり箱」を蓋まで水に漬けて使用したとしても、水は蓋から流入するものではなく、海水に浸潰して使用する「海釣り用の生餌(あじ、海えび等)の容器」として使用できるものではない。
従って、当然のことながら、かかる甲第1号証に、本件登録実用新案の目的や構成、効果を示唆する記載は全く存在しない。
〔甲第2号証〕
甲第2号証の考案も、甲第1号証同様、川で鮎の友釣をする際に使用する「釣用囮活罐」に関するものであり、釣場の移動を自動車でする鮎釣りにおいて、囮活罐を川内に沈めることなく移動する際に、囮鮎の弱りが甚だしいので、それを避けるため、段熱構造の外筐体を設け、その中に係合性よく囮活罐を収納できるようにすることを課題として開発されたものである。
かかる甲第2号証に、鮎の友釣と全く関係のない、海釣り用の生餌の容器に関する記載が存在するものではなく、また、甲第2号証に記載される「釣用囮活罐」が、海水中に浸潰して「海釣り用の生餌(あじ、海えび等)の容器」として効率よく使用できるものでもない。
甲第2号証にも、本件登録実用新案の目的や構成、効果を示唆する記載は全く存在しない。
〔甲第3号証〕
甲第3号証も、甲第1号証及び甲第2号証と同様、「鮎おとり容器」に関するもので、折り畳みできる箱体の使用に特徴を有するものである。箱体の周面板3に横長の孔11が設けられているが、蓋は、密閉蓋5に、有孔蓋7と開閉蓋9が蝶着されているものであり、有孔蓋7は上方に開き、開閉蓋9は下方に開くようになっており、前者は鮎の取出口8として機能し、後者は鮎の挿入口10として機能するようになっている。
かかる「鮎おとり容器」が、「海釣り用の生餌(あじ、海えび等)の容器」として使用されるものではなく、当然のことながら、甲第3号証のどこにも、網状体からなる蓋の使用や蓋の外周を箱体上端部にチャックで固定可能とすることを示唆する記載は存在しない。
甲第3号証にも、本件登録実用新案の目的や構成、効果を示唆する記載は全く存在しない。
〔甲第4号証〕
甲第4号証記載の考案は、みみずなどの生餌を収容できるようにした「釣り用餌容器」に関するもので、中のみみずなどが外に這いださないように、細かい多数の通気孔を設けた隔板を、容器本体内の上部に内在させることを特徴とするものである。
この容器は、中に土と共にみみずなどを入れて使用するものであって、水に浸潰して使用するものではなく、また、容器本体の側面や上記隔板に孔が存在するとはいえ、この孔はみみずなどが呼吸できるようにするためのものであって、海水の流入や流出とは関係のないものである。なお、チャックで固定可能な網状体の蓋体が存在するものでもない。
かかる甲第4号証に、本件登録実用新案の目的や構成、効果を示唆する記載が存在しうるものではない。
〔甲第5号証〕
甲第5号証記載の考案(意匠)は「鰻篭」に関するものであり、海釣り用の生餌容器と全く関係ないものである。また、ここに開示される篭は、底面が網目からなり上面が開口した容器であり、水をいれても筒抜けであって、水から上げた際に、生餌を生きた状態で保持できるものではない。また、上面に蓋が存在するものでもない。
甲第5号証は本件登録実用新案と全く関係のないものである。
なお、本件請求人は、甲第5号証には「蓋体が網状体である鰻篭が記載されている」と述べるが、鰻篭に蓋体が存在するものではなく、甲第5号証の平面図では、底面の網目が見えるだけである。
〔甲第6号証]
甲第6号証は、甲第1号証?甲第3号証と同様、鮎釣りに使用する「鮎入れ用容器」に関するもので、「内部に仕切壁を設けて元気のいい鮎と比較的そうでない鮎とを区分けて収容すると共にそれぞれ独立した鮎取出し用の便利な開口を設けて鮎を逃がす心配なく取出すことができるようになし、且つ使用がすめば全体を折り畳んで小型化し持ち運びに便利な容器としたものである」(明細書の第2頁参照)。
容器本体Cの壁面には、水の出入りが可能な孔が存在するものではなく、また、蓋がチャックで開閉自在に取り付けられているものでもなく、フラップ板に筒状ネットを取り付け、このフラップ板を有する開口から、鮎を入れることができるようになっており、筒状ネットの存在で、鮎が互いにつつき合ったりすることなく、分離して収容できるようにしているのである。
かかるフラップ板や筒状ネットの存在する「鮎入れ用容器」が、「海釣りの生餌用の容器」に使用できるものではない。
甲第6号証にも、本件登録実用新案の目的や構成、効果を示唆する記載は全く存在しない。
〔甲第7号証〕
甲第7号証は、「魚釣り用の冷凍餌を解凍する際」に使用するのに適したバケツに関するものであり、あじや海えび等の海釣りの生餌の容器として使用できるものではない。
甲第7号証の明細書の目的の欄には、「容器中の海水、及び冷凍餌に触れることなく解凍することができ・・」と記載されているものであり、ここに開示されるバケツは、バケツ側壁から海水が流入、流出するものではなく、また、開口部は半面だけがネットで覆われるものであり、ネット付バケツには、非ネット部の開口部(2)から海水及び冷凍餌(8)を入れ、海水が冷えて暖かい海水と取り替える必要があれば、バケツ主体を傾けてネット(5)を介して海水を放出するとされるのである。
かかる甲第7号証記載の考案は、本件登録実用新案とは、考案の目的も構成も効果も全く異なるものであり、甲第7号証のどこにも、本件登録実用新案の開発を示唆する記載は存在しない。
〔甲第8号証〕
甲第8号証は「釣った魚を生きたまま持ちかえるための携帯用水槽」に関するものである。エアポンプが存在する携帯用水槽を海水に浸潰して使用できるものではなく、また、この水槽の側壁から水の流入、流出が可能なものでもない。
甲第8号証にも、本件登録実用新案の目的や構成、効果を示唆する記載は存在しない。
〔甲第9号証〕
甲第9号証記載の「釣用魚入れ」は、その説明の欄に記載される通り「内部に水を張って釣った魚を入れる容器」に関するものであり、容器の壁面にも蓋にも通気孔が存在するものではない。
当然、海水に浸潰して使用するものではなく、仮に海水に浸潰しても、容器内への海水の流入、流出が可能なものでもない。また、蓋をしたら空気も流入しないので、生餌入れ容器として使用できるものではない。
当然のことながら、かかる甲第9号証に本件登録実用新案の目的や構成、効果を示唆する記載が存在しうるものではない。
〔甲第10号証〕
甲第10号証は「びく」に関するものである。「びく(魚籠)」は、本件明細書の従来の技術の欄に、問題があるとして記載した通り、海水から引き上げた際に、容器の上端まで海水が満たされ、非常に重くなって取り扱い難いものである。また、甲第10号証の「びく」の筒状綱が蓋として機能するものでもない。
甲第10号証にも、本件登録実用新案の目的や構成、効果を示唆する記載は全く存在しない。
(3)本件登録実用新案と甲第1号証?甲第10号証記載の発明の関係について
前記(1)において述べた如く、本件登録実用新案は、海釣り用の生餌(あじ、海えび等)を安定して保管し、効率よく取り扱うことができる生餌入れ容器の提供を目的として開発されたものであり、
a)上方が開口した筒状の容器本体1と、その口部6を開閉可能に覆う蓋体2とを有するものにおいて、
b)容器本体1の側面3の上部に、複数個の孔4を設け、
c)蓋体2を網状体からなるものとし、かつ
d)蓋体2の外周を、容器本体1の上端部にチャック7で固定可能とする
という構成要件を必須とし、その結果、下記A)?D)の効果を発揮しうるものである。
A)内部に生餌を入れて海水に浸潰した際、側方に設けられた孔と、蓋体に設けられた孔を通じて、上方と側方から海水が容器内部に効率よく流れ込む構造であるので、釣を行うまでの生餌の保存性に優れる。
B)容器を海水から引き上げた際には、容器本体の側面に設けられた孔から海水が流出し、容器本体内の海水の量が少なくなるので、重量が軽くなり、取り扱い易い。
C)容器を海水から取り出した状態でも、容器内に海水は適当量、保持されるため、生餌は生きのよい状態で持ち運び可能である。
D)蓋体はチャックで容器本体上端部に固定されているため、内部に生餌を入れて、容器全体を海水に浸潰しても、蓋体が不当に開いたり、変形、移動したりすることなく、安定して、生餌を容器本体内で泳がせておくことができる。
これに対して、甲第1号証?甲第3号証及び甲第6号証に記載の考案はいずれも、川で鮎の友釣をする際に使用する「鮎おとり箱」(「囮活罐」又は「鮎入れ容器」)に関するもので、海釣りの生餌用容器として海水中に浸潰して使用するものではなく、いずれの証拠にも、本件登録実用新案の目的や上記a)?d)の構成要件、及びA)?D)の効果を示唆する記載は全く存在しない。
また、甲第4号証は、みみずなどを土と共に入れておく容器に関するもので、この容器は、水に浸漬して使用できるものではなく、みみずが逃げないように隔板が設けられているが、網状体からなる蓋体が存在するものでもない。従って、甲第4号証にも、本件登録実用新案の目的や構成、効果が示唆されるものではない。
次に、甲第5号証は、「鰻篭」に関するものであり、蓋が存在するものではなく、また底面が網目からなるもので、水を入れて使用できるものではなく、本件登録実用新案と全く関係のないものである。
更に、甲第7号証は「魚釣り用の冷凍餌を解凍するのに適したバケツ」に関するもので、海釣り用の生餌とは関係ないものであり、ここにも、本件登録実用新案の目的や、上記構成要件a)?d)及び特異な効果A)?D)を示唆する記載は全く存在しない。
また、甲第8号証はエアポンプが存在する「携帯用水槽」に関するものであり、海水に浸潰して使用できるものではなく、甲第9号証は「内部に水を張って釣った魚を入れる容器」に関するものであるが、容器の壁面にも蓋にも通気孔が存在するものではなく、海水に浸潰して、海水に流入や流出を期待できるものではない。更に、甲第10号証は「びく」に関するものであるが、「びく」において容器の側壁に海水の流入が可能な孔が存在するものではなく、また蓋が存在するものでもない。
よって、先にも述べた通り、甲第8号証?甲第10号証のいずれにも、本件登録実用新案の目的や構成、効果を示唆する記載は全く存在しない。
(4)本件実用新案登録の出願当時の技術水準
本件の明細書の従来の技術の欄にも記載した通り、本件実用新案登録の出願当時には、海釣り、特に船釣り用の生餌(あじ、海えび等)を、安定して保管し取り扱うことのできる容器は存在しなかったため、仕方なくプラスチック製のバケツを使用していたが、これでは、海水の流れが悪く、生餌が弱るなどの問題があったのである。
従って、請求人が技術文献を慎重に調査し、その結果、提出した甲第1号証?甲第10号証も全て、海釣り(船釣り)用の生餌の容器とは関係のないものである。請求人が主張するように、昭和40年台や昭和50年台に頒布されたこれらの証拠が、船釣り用の生餌の容器の問題点やその解決法を示唆していたとすれば、本件実用新案登録出願前に、既に、実用性ある製品が開発されていたはずである。
海釣り用の生餌の容器として実用性あるものは、本件登録実用新案により始めて開発されたものであり、そのため、本件登録実用新案が公になった後に、これを模倣するものが生じたのである。」
(5-2-2)第2答弁書(平成15年2月12日付)において
「(1)本件請求人は、弁駁書において、鮎のおとり容器は、生き餌となるおとり鮎を元気な状態で保管するための容器であって、本件登録実用新案(以下、本件考案と述べる)と、技術分野を共通とするものであるとして、種々述べているが、いずれの主張も本件考案を知った後に、はじめて言える後知恵的なことに過ぎない。
(2)本件考案が知られる前に、従来技術から、当業者が極めて容易に想到しうる技術はどのようなものかを論ずるべきである。
(3)本件実用新案登録の出願時には、潮の満ち引きがあり、また波の立つ海中に入れて、海釣り(特に船釣り)用の生餌を安定して取り扱うことができる容器は存在しておらず、甲第1号証?甲第10号証に開示される容器も、この種の容器として使用できるものではなかった。
(4)本件請求人は、『甲第6号証には、上方が開口した筒状の容器の口部に網蓋を配置させた構成のおとり鮎入れ容器が示されており、本件考案と比較した場合、容器の上方部に孔があるか否かという点と、網蓋の外周部をチャックで固定可能か否かという点で相違している』が、甲第1号証?甲第3号証の「鮎おとり容器」では、「水流通孔」が形成されていること、及び甲第9号証の容器でえはチャックで開閉可能な蓋が存在することから、これらに基づいて本件考案が容易に考案できるかのように主張する。
(5)しかし、海釣りの生き餌と関係なく、また、容器上方部に孔を設けることも、網蓋の外周部をチャックを設けることも全く必要のない甲第6号証に、これらを設けて特殊な効果を得ようなどと動機つける記載が存在しうるものではない。また、元来、弱った鮎と元気な鮎を区分けして収容することができるようにしたフラップ板や筒状ネットの存在する甲第6号証の容器が、「海釣りの生館用の容器」に使用できるものでもない。
(6)次に、甲第1号証?甲第3号証も川の浅瀬に漬けて使用する「鮎おとり容器」に関するもので、これらの文献にも、潮の満ち引きや波の高さ等に関係なく、海中に入れて安定して使用できる「海釣りの生餌用の容器」の開発をしようと動機つける記載は何も存在しない。
(7)更に、甲第9号証は、密閉性のよい「釣用魚入れ」に関するもので、海水に浸潰しても容器内に海水の流入、流出が可能なものではなく、また蓋をしたら空気も流入しないため、生餌入れに使用することは不可能である。当然のことながら、ここにも、本件考案を開発することを動機つける記載は何も存在しなし。
(8)以上の如く、請求人が弁駁書に掲げる甲6号証、甲第1号証?甲第3号証及び甲第9号証のいずれにも、当業者に、本件考案を開発しようなどと動機付ける記載は全く存在しないのである。」

【6】当審の判断
(6-1)本件考案
本件考案は、登録査定時の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された前記【2】記載のとおりである。

(6-2)各甲号証記載の事項
請求人が提出した各甲号証に記載された技術的事項は、以下のとおりである。
(6-2-1)甲第1号証:昭和56年実用新案公開第89370号公報
甲第1号証には、その実施例及び図面とこれに係わる記載を参酌すると、川で鮎の友釣をする際に使用する「鮎おとり箱」に関するもので、概要、以下のような技術的事項が記載されている。
(i)「底面板(1)の四周に正背面板(2)(3)並びに左右側面板(4)(5)を倒立可能に連設した折畳みできる箱体(6)と、前記背面板(3)に開閉自在に取付けた蓋板(7)と、組立てた箱体(6)内に収容する合成樹脂袋(8)とからなり、前記正背面板(2)(3)及び左右側面板(4)(5)に水流通孔(9)を数箇所穿ち、……鮎おとり箱。」(第1頁、実用新案登録請求の範囲)
(6-2-2)甲第2号証:昭和55年実用新案公告第5026号公報
甲第2号証には、その実施例及び図面第2図とこれに係わる記載を参酌すると、以下のような技術的事項の記載が認められる。
(i)「本考案は主として鮎の友釣りを行なう場合に用いられる釣用囮活罐に関する。
鮎の友釣りを行なう場合囮鮎を弱らせることなく活しておく必要があり、通常は上部に多数の貫通孔を持つ蓋付きの囮活罐を用い、該罐内に囮鮎を入れて適宜川内に沈めて置くのである。所でこの囮活罐はその容量が比較的小さいため時期的に水温が高い場合には、囮鮎の弱り方が甚しく、特に釣場を移動する場合にはより顕著となるのである。従って釣場移動時にはこの囮活罐を時々川内に沈めながら的場の移動を行なつているのである。」(第1頁左欄24?34行)、
(ii)「図において1は上面が関口する外罐体で、内罐11と外罐12並びに両罐11,12間に充填された断熱材13とによって構成され、且つこの外筐体1にはその閉口部を開閉する蓋体14が枢着されている。尚この蓋体14は前記と同様断熱構造としても良い。
2は開閉自在な蓋をもつ囮罐本体で、周壁上部に複数個の貫通孔21……が形成されており、且つ吊紐22により吊下げ可能に構成されている。
しかして本考案は前記外筐体1の上部内周壁に段部15を形成する一方、前記囮罐本体2の上様部に鍔部23を形成し、この罐本体2を外筐体1内に入れ鍔部23の段部15への引掛けをして該罐本体2を外筐体1内に宙吊状に保持させて、この罐本体の上下部に空間を設けたものである。
本考案囮罐箱は以上の如く構成されるもので、囮罐本体2内に水と共に囮鮎を収容した状態で、該罐本体2を鍔28の段部15への係合により外筐体1内に宙吊状に保持させ、且つこの罐本体2の上部及び下部に形成された両空間のいずれか一方、若しくは両方に氷を入れた状態で前記外筐体1の蓋体14を閉じ、前記罐本体2内の囮鮎を低温状態で活すのである。
尚釣場の移動を行なわない場合にあっては罐本体2を通常の囮活罐と同様水中に浸漬して用いることができ、又釣終了後にあつては外筐体1から罐本体2を取外し、該外常体1をクーラーとして用いることができるのである。」(第1頁右欄13行?第2頁左欄3行)、
(iii)「釣場においては前記囮罐本体を外筐体内から簡単に取出して、通常の囮活躍と同様川内に沈めるごとく用いることができ、これによつて活動の押えられていた囮鮎は再び元気を取戻し、かっこの釣場での水に馴染み、良好な囮鮎とし用い得るのである。」(第2頁左欄19行?同頁右欄2行)、
(iv)したがって、これら明細書及び図面の記載によれば、当該甲第2号証には、
「上方が開口した筒状の罐本体(2)と、その口部を開閉可能に覆う蓋とを有するものであって、上記罐本体(2)の側面の上部には、複数個の貫通孔(21)が設けられており、上記蓋には孔がある釣用囮活罐」が記載されていると認められる。
(6-2-3)甲第3号証:実願昭50-75347号(昭和51年実用新案公開第155892号)のマイクロフィルム
甲第3号証には、その実施例及び図面とこれに係わる記載を参酌すると、「鮎おとり容器」に関するもので、概要、以下のような技術的事項が記載されている。
(i)底板(1)と横長の孔(11)が設けられた周面板(3)とからなる本体(4)と、有孔蓋(7)と開閉蓋9を蝶着された密閉蓋(5)と、合成樹脂製の水槽構成シート(6)とからなる、鮎おとり容器(公開明細書)
(6-2-4)甲第4号証:昭和48年実用新案公開第19592号公報
甲第4号証には、その実施例及び図面とこれに係わる記載を参酌すると、みみずなどの生餌を収容できるようにした「釣り用餌容器」に関するもので、概要、以下のような技術的事項が記載されている。
(i)「上部外周側面に通気孔を具えた開放上面の容器本体と、この容器本体の開放上面に着脱自在に蓋着される蓋体とからなり、…釣り用餌容器。」(第1頁、実用新案登録請求の範囲)
(6-2-5)甲第5号証:登録第230695号意匠公報
甲第5号証には、その意匠に係る物品の説明と図面の記載を参酌すると、具体的構成は明確でないものの「鰻篭」が記載されている。
(6-2-6)甲第6号証:実願昭55-157591号(昭和57年実用新案公開第80262号)のマイクロフィルム
甲第6号証には、その実施例及び図面とこれに係わる記載を参酌すると、「鮎入れ用容器」に関するもので、概要、以下のような技術的事項が記載されている。
(i)「…容器本体Cと、…ネット20を配設した蓋体D、…とからなる鮎入れ用容器。」(第1頁、実用新案登録請求の範囲)、
(6-2-7)甲第7号証:実願平2-75697号(平成4年実用新案公開第33369号)のマイクロフィルム
甲第7号証には、その実施例及び図面とこれに係わる記載を参酌すると、「魚釣り用ネット付バケツ」に関するもので、概要、以下のような技術的事項が記載されている。
(i)「魚釣り用の冷凍餌(沖アミ等)を解凍する際、又はサシエ用ネット、水切りネットとして、さらにはバケツとしても使用できる」(公開明細書第1頁)
(ii)「バケツ主体(1)の上面開口部(2)に、該開口部(2)の略略半面を覆うネット(6)を着脱自在に取り付けてなる魚釣り用ネット付きバケツ。」(同第1頁、実用新案登録請求の範囲)
(iii)「(7)はネット(5)の三辺縁部(5a)(5b)(5c)とバケツ本体(1)の開口部(2)内壁間に、連続して設けられたチャックで、該チャック(7)の開閉によりネット(5)を自由に着脱できるようにしてある。」(同第7?8頁)
(6-2-8)甲第8号証:実願昭57-30024号(昭和58年実用新案公開第132971号)のマイクロフィルム
甲第8号証には、その実施例及び図面とこれに係わる記載を参酌すると、「携帯用水槽」に関するもので、概要、以下のような技術的事項が記載されている。
(i)「…容器1の上面にはファスナー7で開閉する上蓋8を設け…た携帯用水槽。」(公開明細書第1頁、実用新案登録請求の範囲)
(6-2-9)甲第9号証:登録第770349号意匠公報
甲第5号証には、その意匠の説明と図面に係わる記載を参酌すると、「上部のチャックを操作して蓋を開け、内部に水を張って釣った魚を入れるもの」である「釣用魚入れ」が記載されている。
(6-2-10)甲第10号証:昭和54年実用新案公開第70891号公報
甲第10号証には、その実施例及び図面とこれに係わる記載を参酌すると、「びく」に関するもので、概要、以下のような技術的事項が記載されている。
(i)「上端方向に先細状とした筒状網と、該筒状網の上端部に形成された魚収容口と、該筒状網の下端部に設けられた魚収容部とよりなるびくにおいて、該筒状網の下端部近傍に開口部を設け、該開口部にスライドファスナーを取り付けて開閉自在としたことを特徴とするびく。」(第1頁、実用新案登録請求の範囲)

(6-3)対比・判断
本件考案と前記甲第2号証(昭和55年実用新案公告第5026号公報)に記載された考案とを対比すると、甲第2号証(昭和55年実用新案公告第5026号公報)における「罐本体(2)」「蓋」及び「複数個の貫通孔(21)」は、それぞれ本件考案における「容器本体1」「蓋体2」及び「複数個の孔4」に相当し、また、甲第2号証(昭和55年実用新案公告第5026号公報)における「釣用囮活罐」は、鮎の友釣りを行う鮎を活きた状態のまま収容し移動するとともに、釣場では水中に浸漬して用いるものであるから、本件考案における「生餌入れ容器」に対応させることができ、いずれも「活きた釣餌様の入れ容器」である点で共通するものと認められる。
したがって、両者は、以下のとおりの一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「上方が開口した筒状の容器本体1と、その口部6を開閉可能に覆う蓋体2とを有するものであって、上記容器本体1の側面3の上部には、複数個の孔4が設けられており、上記蓋体2が上記容器本体1の上端部に固定可能である活きた釣餌様の入れ容器。」
(相違点)
本件考案にあっては、活きた釣餌様の入れ容器が「生餌入れ容器」であり、「上記蓋体2が網状体からなり、該蓋体2の外周が、上記容器本体1の上端部にチャック7により固定可能である」のに対して、甲第2号証にあっては、活きた釣餌様の入れ容器が「釣用囮活罐」であり、上記蓋がチャックにより固定するものではない点、
(検討)
前記相違点について、以下に検討する。
(i) 活きた釣餌様の入れ容器について、甲第2号証における「釣用囮活罐」は、鮎の友釣りを行うための鮎(以下、単に「友釣り用鮎」という。)を入れておくものであり、この友釣り用鮎も、鮎を釣るために用いるものであって、例えば鯛やヒラメなどを対象とする通常の生餌釣りにおける一種の餌に相当するものであり、さらに鯛やヒラメ、鮎などの釣りでは、餌が生きた状態、すなわち「活きが良い」状態で用いることが釣果の重要な要因となるものであるが、甲第2号証における「釣用囮活罐」も本件考案と同様に「活きが良い」状態に友釣り用鮎を維持し、この状態で釣りに用いることが釣果の重要な要因となることを前提として構成されているのであるから、甲第2号証における「釣用囮活罐」を参酌することにより本件考案における「生餌入れ容器」を構成することは、当業者が適宜になし得ることと認められる。
この点について、被請求人(実用新案権者)は、本件考案は鮎の友釣と全く関係のない「海釣り用の生餌(あじ、海えび等)の容器」であり、「提出した甲第1号証?甲第10号証も全て、海釣り(船釣り)用の生餌の容器とは関係のない」、また「「鮎おとり箱」は川岸の浅瀬に浸けて使用するものであり、蓋まで水に漬けることはないが、仮に、「鮎おとり箱」を蓋まで水に漬けて使用したとしても、水は蓋から流入するものではなく、海水に浸潰して使用する「海釣り用の生餌(あじ、海えび等)の容器」として使用できるものではない。」とし、本件登録実用新案の目的や構成、効果を示唆する記載は全く存在しない旨、さらには「甲6号証、甲第1号証?甲第3号証及び甲第9号証のいずれにも、当業者に、本件考案を開発しようなどと動機付ける記載は全く存在しない」(第2答弁書)旨主張している。しかしながら、本件考案に係る構成は、前記のとおりのものであって、特定の釣りの対象となる「魚種」やこれに使用する「生餌」の具体的内容を規定するものではなく、また本件実用新案登録請求の範囲に記載された構成全般からも「海釣り用」に限定して解すべき構成も見当たらない。したがって、「生餌入れ容器」を被請求人(実用新案権者)の主張するように限定した「海釣り用」と解釈することはできず、本件考案の容器を「海釣り用の生餌(あじ、海えび等)の容器」とすることは本件考案の要旨外の構成をいうものであって、被請求人(実用新案権者)の当該主張は採用することができない。
なお、仮にこの容器の使用形態を「海釣り用」に限定されたものとしても、両者は釣りに係わる同一の技術分野に関するものであって、動機付けとなり得ないなど特段の理由も見当たらないから、当業者が適宜になし得るものと認められる。
(ii) また蓋の構成について、本件考案における「蓋体2が網状体からなり、該蓋体2の外周が、上記容器本体1の上端部にチャック7により固定可能である」ことの技術的意義は、本件登録明細書の記載を参酌すると、「蓋体2が網状体からなるものでは、海水が容器本体1の上方から効率良く流入、流出するので特に好ましいが、本考案における蓋体2は、シートに孔を設けたものや、孔が形成された成型体等であっても良い。この際、蓋体2における、孔5の占める面積比率が大きいほど、海水の流れは良くなる。図1に示されるような網状体としては、特にプラスチック製のメッシュが好ましく、市販の塩化ビニル製メッシュ等が利用できる。」(段落番号【0008】)、「本考案では、容器本体1と蓋体2との固定方法が特に限定されるものではなく、例えば両者が固定金具等により固定されても良いが、図1に示されるように、容器本体1の上端部と、蓋体2の外周とが、チャック7(ジッパー)により固定されるものが特に好ましく、この場合には簡単に容器本体1と蓋体2とが開閉・固定できるので便利である。この図1に例示される生餌入れ容器では、蓋体2の外周の一部と、容器本体1の口部6の一部とが接合されて一体化しており、容器本体1と蓋体2とが分離しないようになっている。この図1の容器では、チャック7をあけて蓋体2を開き、口部6を開口させた状態で生餌を出し入れする。しかしながら、本考案では、容器本体1と蓋体2とが分離するタイプのものであっても良い。」(段落番号【0009】)、「本考案の生餌入れ容器は、内部に生餌を入れて海水に浸漬した際、側方に設けられた孔と、蓋体の設けられた孔を通じて、上方と側方から海水が容器内部に効率良く流れ込む構造であるので、釣を行うまでの生餌の保存性に優れる。」(段落番号【0013】)というものである。
これらの記載によれば、容器を水中に浸漬した時に、「蓋体2」の孔(網状体)、さらには「側面3の上部」の複数個の孔4から水が良好に流入・流出すること、また「口部6を開口させた状態で生餌を出し入れする」必要があるので「簡単に容器本体1と蓋体2とが開閉・固定できる」ことにあるものと認められる。
しかしながら、甲第2号証に記載の容器(釣用囮活罐)においても、その図面第2図を参酌すると、蓋には孔が設けられており、また「罐内に囮鮎を入れて適宜川内に沈めて置く」(第1頁左欄28?29行)、「釣場の移動を行なわない場合にあっては罐本体2を通常の囮活罐と同様水中に浸漬して用いる」(第1頁右欄36?37行)と記載されているように、容器(釣用囮活罐)を水中に浸漬した時に、「蓋の孔」及び「貫通孔(21)」から水が流入・流出することも示唆されているといえる。また、容器の口部を覆う網状体に関し、簡単に開閉・固定できることを目的等としてその口部或いは開口部への固定・取付を「チャック」により行うこと自体は当業者に自明の技術的事項であって前記甲第7乃至10号証に開示されており、例えば、前記甲第10号証には、釣り用容器である「びく」に関するものであって、「魚収容部(2)」の開口部に「筒状網(5)」を固定可能に設けるものであり、この「筒状網(5)」を魚収容部(2)の開口部(10)にスライドファスナー(F)で開閉自在に取り付けるものが開示されている。そして、この「筒状網(5)」は魚収容部(2)(容器)の蓋となり、また筒状網(5)から水が流入・流出することは技術常識であるから、甲第2号証における蓋(2)を網状体とし、その固定・取付を「容器本体の上端部にチャックにより固定可能」となすことにより本件考案のように構成することは当業者が極めて容易になし得ることと認められる。
この点について、被請求人(実用新案権者)は、「甲第9号証は、密閉性のよい「釣用魚入れ」に関するもので、海水に浸潰しても容器内に海水の流入、流出が可能なものではなく、また蓋をしたら空気も流入しないため、生餌入れに使用することは不可能である。」(第2答弁書)、また本件考案について、「D) 蓋体はチャックで容器本体上端部に固定されているため、内部に生餌を入れて、容器全体を海水に浸潰しても、蓋体が不当に開いたり、変形、移動したりすることなく、安定して、生餌を容器本体内で泳がせておくことができる。」(答弁書)との作用効果等を主張している。しかしながら、甲第7乃至10号証において引用する自明の技術的事項は、口部或いは開口部への固定・取付をチャックにより行う事項であって、該甲第10号証には筒状網(網状体)に対する固定・取付をスライドファスナー(チャック)により行うことも開示されていることは前記したとおりであるから、甲第2号証に記載された考案において、このような網状体のチャックによる固定・取付が適用できないとする特段の理由もなく、またこれにより奏する作用効果も、当業者が予測しうる程度のものであって、格別のものとは認められない。

(6-4)まとめ
以上のとおりであって、本件実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、甲第2号証及び甲第7乃至10号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、本件実用新案登録は実用新案法第3条第2項に違反してなされたものである。

【7】むすび
以上のとおりであるから、本件実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案についての実用新案登録は、改正前の実用新案法第37条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項によってさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-02-19 
結審通知日 2003-02-24 
審決日 2003-03-10 
出願番号 実願平4-50462 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (A01K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 星野 浩一  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 千葉 輝久
治田 義孝
登録日 1998-05-01 
登録番号 実用新案登録第2576924号(U2576924) 
考案の名称 生餌入れ容器  
代理人 吉崎 修司  
代理人 武石 靖彦  
代理人 大西 健  
代理人 村田 紀子  
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