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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない E05C
審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 無効としない E05C
管理番号 1088174
審判番号 無効2000-35617  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-01-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-11-10 
確定日 2003-11-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第1928926号「扉錠」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成14年 1月15日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成14年(行ケ)第0089号平成15年 4月24日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯,本件考案
(1)本件審判に係る実用新案登録第1928926号についての手続の概要は,次のとおりである。
ア.出願:昭和58年11月9日
イ.出願公告:平成3年8月20日
ウ.設定登録:平成4年9月9日
エ.権利期間満了:平成10年11月9日
オ.無効審判請求(本件審判事件):平成12年11月10日
カ.無効審判請求(無効2000-35660号):平成12年12月8日
キ.審決(2000-35660号,審判請求不成立):平成13年12月7日付け
ク.審決取消の出訴(平成14年行ケ37号):平成14年1月17日
ケ.審決(本件審判請求事件,無効):平成14年1月15日付け
コ.審決取消の出訴:平成14年2月21日(平成14年行ケ89号)
サ.訂正審判請求:平成14年12月1日
シ.審決(訂正審判,訂正認容):平成15年3月18日に審決確定
ス.判決(平成14年行ケ89号,本件審判事件の審決を取り消す):平成15年4月24日

(2)本件考案の要旨は,願書に添付した明細書及び図面(上記訂正審判により訂正された明細書及び登録査定時の図面)の記載からみて,その実用新案登録請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認められる。
「本施錠用の受孔(32)を形成した受部材(30)と、用心錠用の係合孔(41)を形成した規制部材(35)と、2段階に突出できる錠杆(3)を出没自在に嵌装した錠ケース(1)とを備え、前記錠杆(3)の最小突出時にはその係止部(3a)を規制部材(35)の用心錠用の係合孔(41)に係合して扉の一定角度の開放を可能とし、錠杆(3)の最大突出時には受部材(30)の本施錠用の受孔(32)に係合して本施錠されるようにした扉錠において、
前記受部材(30)は、扉枠(ロ)の正面側の前部から後部に向けて埋設するとともに、前面には閉扉時に規制部材(35)の全部を収納する収納凹部(31)を、下部には錠杆(3)の係止部(3a)係合用の前記受孔(32)を形成し、
規制部材(35)は、上端部を受部材(30)に枢支するとともに下端部に前記係合孔(41)を形成し、更に、規制部材(35)は、枢軸(36)で受部材(30)に枢着した第1部材(35a)と、該第1部材(35a)に摺動自在とした第2部材(35b)と、第2部材(35b)と前記枢軸(36)間に取付けて第2部材(35b)を常時第1部材(35a)と第2部材(35b)とが互に一体化される方向に付勢するようにしたばね(40)とからなり、又は、規制部材(35)の上端を取着した枢軸(49)を受部材(30)の上端部に穿った摺動長孔(48)に摺動自在に挿通するとともに、規制部材(35)を閉鎖位置に復帰させるように付勢したバネ(51)を備えてなり、
錠ケース(1)は扉(イ)の正面側の前部から後部に向けて埋設してなることを特徴とする扉錠。」

2.請求人の主張
請求人は,次のとおりの主張をしている。
(1)本件考案は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案及び甲第3号証ないし甲第8号証により周知の技術に基づいて,極めて容易に考案をすることができたものであり,実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり,本件実用新案登録は無効とされるべきである。

(2)本件実用新案登録に係る実用新案登録請求の範囲の記載は,昭和56年法律第45号に係る実用新案法第5条第4項に違反しており,本件実用新案登録は無効とされるべきである。

3.甲各号証
(1)甲第1号証:特開昭57-180769号公報
(2)甲第2号証:特公昭45-33584号公報
(3)甲第3号証:実願昭56-159121号(実開昭58-64755号)のマイクロフィルム
(4)甲第4号証:実開昭55-103361号公報
(5)甲第5号証:実願昭56-32287号(実開昭57-146669号)のマイクロフィルム
(6)甲第6号証:実願昭56-97613号(実開昭58-5561号)のマイクロフィルム
(7)甲第7号証:実願昭56-97614号(実開昭58-5562号)のマイクロフィルム
(8)甲第8号証:実願昭56-112905号(実開昭58-19065号)のマイクロフィルム

4.甲各号証の記載内容
(1)甲第1号証には,次の事項が記載されている。
「この発明は、必要に応じて扉の開放角度を制限して不正侵入者の侵入を防止し、防犯効果を達成する用心錠に関する。」(1頁左下欄13?15行)、「(1)は枠、(2)は扉であって、該扉(2)には係止部材(3)を出没自在に設けた錠ケース(4)を埋設している。」(2頁左上欄3、4行)、「一方、扉(2)に錠ケース(4)を介して取付けた係止部材(3)が対向する枠(1)側の受部(8)の上端には、ビスや軸等の枢軸(9)で揺動部材(10)を枢着しており、この揺動部材(10)の側面部(10a)が枠(1)の側面に当接し、正面部(10b)が枠(1)正面の受部(8)に当接するようにしてある。」(2頁右上欄2?7行)、「第6図は更に他の実施例を示すものであって、このものは、係止部材(3)が、用心錠の機能のほかにデッドボルトの機能をも達成する構成としたものである。すなわち、係止部材(3)の軸部(3a)に突設した操作摘み(21)を、軸ケース(4)の室内側の表面に形成した案内溝(22)に臨ませてあり、扉が完全に閉じられた状態で、前記操作摘み(21)を摺動操作すると、係止部材(3)は揺動部材(10)の長孔(11)に係嵌され(図の(イ)の位置)、揺動部材(10)が揺動されて扉が一定開放角度まで開放されて用心錠として働く。また、閉扉状態で係止部材(3)を更に(ロ)の位置まで突出させて、枠側の受(23)の受孔(24)に係合すると、デッドボルトとして施錠される。さらに、係止部材(3)を(ハ)の解錠位置まで後退摺動すると、前記用心錠及びデッドボルトとしての機能がなくなり解錠されて扉が自由に開放される。」(3頁右下欄9行?4頁左上欄6行)

(2)以上の記載及び第6図から,甲第1号証には、次の考案が記載されていると認められる。
「デッドボルト用の受孔24を形成した受23と、用心錠用の長孔11を形成した揺動部材10と、2段階に突出できる軸部3aを出没自在に嵌装した錠ケース4とを備え、前記軸部3aの最小突出時にはその係止部材3を揺動部材10の長孔11に係合して扉の一定角度の開放を可能とし、軸部3aの最大突出時には受23のデッドボルト用の受孔24に係合してデッドボルトされるようにした扉錠において、前記受23は、枠に埋設して下部に前記受孔24を形成し、揺動部材10は、枠に面付けされ上端部を枢支するとともに長孔11を形成し、錠ケース4は扉の正面側の前部から後部に向けて埋設してなる扉錠。」

(3)甲第2号証には,次の事項が記載されている。
「本発明の他の目的はドアーチェックを扉または柱等の取付側の双方に埋設して外部に殆ど突出させないことにより衣服等がひっかかったりその他人身に危険がないようなドアーチェックを提供しようとするにある。」(2欄1?5行)、「10は鍵板でプレート11上に中心線C上の上部の一点で枢軸12により半径Rで揺動自在に枢着されてしかも該軸12の両端をかしめるなどして一体状となっている。この鍵板10には中心線に沿って長孔状の鍵穴13を明けてあり、この鍵穴13は上部では前記ボルト1の頭部1aを通過させるように大径孔14になっており、他の部分はボルト1の頸溝2により形成された縮径部1bのみ通し得る幅を有している。而してこの鍵穴13はその背面にボルト頭1aの移動を許すための逃げ15a及び15bを設ける。このプレート11は鍵板10の前記大径孔14が扉4の閉位置でボルト1の進出通路上にあるように柱等の取付側16に穿った凹所17に入れ込まれ、取付ネジその他18によりこのプレートに穿った取付孔19を通して取付側16に固着する。」(2欄20?35行)

(4)以上の記載及び第1?3図から,甲第2号証には,「ドアーチェックを扉又は柱等の取付側の双方に埋設して外部にほとんど突出させないことを課題の1つとして、取付側16に凹所17を形成し、その奥側にプレート11を設置し、その前面に、凹所17に埋設され、かつ上部に設けた枢軸12によってプレートに揺動可能に枢支され、下方に長孔状の鍵穴13が形成された鍵板10が設置され、鍵穴13には、扉に出没可能に設けられたボルト1の頭部1aが挿入可能とされたドアーチェック」が記載されていると認められる。

(5)甲第3号証ないし甲第8号証には,「受部材が扉枠の正面側の前部から後部に向けて埋没していること」が記載されている。

5.対比・判断
(1)本件考案と甲第1号証に記載の考案とを対比すると,後者の「デッドボルト用の受孔」,「受」,「揺動部材」,「軸部」,「枠」,「長孔」,「デッドボルトとして施錠」は,それぞれ前者の「本施錠用の受孔」,「受部材」,「規制部材」,「錠杆」,「扉枠」,「係合孔」,「本施錠」に相当し,両者は,「本施錠用の受孔を形成した受部材と,用心錠用の係合孔を形成した規制部材と,2段階に突出できる錠杆を出没自在に嵌装した錠ケースとを備え,前記錠杆の最小突出時にはその係止部を規制部材の孔に係合して扉の一定角度の開放を可能とし,錠杆の最大突出時には受部材の本施錠用の受孔に係合して本施錠されるようにした扉錠において,前記受部材は,扉枠の正面側の前部から後部に向けて埋設するとともに,下部に錠杆の係止部係合用の前記受孔を形成し,規制部材は,上端部を枢支するとともに,下端部に係合孔を形成し,錠ケースは扉の正面側の前部から後部に向けて埋設してなる扉錠。」である点で一致し,次の点で相違する。
(相違点)
本件考案においては,受部材の前面には閉扉時に規制部材の全部を収納する収納凹部を形成し,規制部材は,枢支されるのが受部材に対してであり,また,枢軸で受部材に枢着した第1部材と,該第1部材に摺動自在とした第2部材と,第2部材と前記枢軸間に取付けて第2部材を常時第1部材と第2部材とが互に一体化される方向に付勢するようにしたばねとからなり,又は,規制部材の上端を取着した枢軸を受部材の上端部に穿った摺動長孔に摺動自在に挿通するとともに,規制部材を閉鎖位置に復帰させるように付勢したバネを備えたものであるのに対し,甲第1号証に記載の考案においては,受部材の前面に閉扉時に規制部材の全部を収納する収納凹部を形成する構成を備えず,また,規制部材の枢支は扉枠に対してであり,さらに,規制部材の係合孔は長孔とされていて本件考案のような構成を備えない点

(2)ところで,甲第2号証に記載のものにおける「プレート11」,「鍵板10」,「ボルト1」,「柱等の取付側16」,「鍵穴13」は,それぞれ本件考案の「受部材」,「規制部材」,「錠杆」,「扉枠」,「係合孔」に相当することから,甲第2号証2には,「ドアーチェックを扉又は扉枠の双方に埋設して外部にほとんど突出させないことを課題の1つとして,扉枠に凹所17を形成し,その奥側に受部材を設置し,その前面に,凹所17に埋設され,かつ上部を受部材に揺動可能に枢支され,下方に長孔状の係合孔が形成された規制部材が設置され,係合孔には,扉に出没可能に設けられた錠杆が挿入可能とされたドアーチェック」が記載されているものである。

(3)そこで,甲第2号証に記載の技術を甲第1号証に記載の考案に適用すると,上記相違点に関する本件考案の構成である「規制部材が枢支されるのが受部材であること」となり,また,規制部材は受部材に収納されるものではないにしても受部材前面に一体的に沿った状態で扉枠に埋設されることで本件考案と共通する構成となる。
しかしながら,本件考案における構成である,
(ア)規制部材が,枢軸で受部材に枢着した第1部材と,該第1部材に摺動自在とした第2部材から構成されるか,又は,上端を取着した枢軸を受部材の上端部に穿った摺動長孔に摺動自在に挿通した構成であること,
(イ)規制部材には,ばね(なお,「バネ」も「ばね」と表記した。)が備えられており,常時第1部材と第2部材とが互に一体化される方向に付勢するか,又は,枢軸が受部材の上端部に穿った摺動長孔に摺動自在に挿通された規制部材を閉鎖位置に復帰させるように付勢していること,
(ウ)受部材の前面には閉扉時に規制部材の全部を収納する収納凹部を形成していること,
については,甲第2号証の技術を甲第1号証に記載の考案に適用し,さらに,甲第3号証ないし甲第8号証に記載された「受部材が扉枠の正面側の前部から後部に向けて埋没していること」が周知であることを考慮しても,このような構成とはなり得ない。

(4)ところで,甲第1号証や甲第2号証に記載された規制部材は,長さが変化することもなく,上端の枢支部が位置を固定されて揺動するために,規制部材の下端部はその固定点を中心に揺動するのみであるから,規制部材と受部材が上下方向に揃った位置において,規制部材の下端は受部材に対して常に位置が一定である。
しかし,甲第1号証に記載された(甲第2号証も同様)ような上端を枢支された規制部材に上記(ア)の設計変更を加えた場合,係合孔に錠杆が挿入されていない状態では,規制部材の下端は,受部材に対して位置が一定になるとは限らない。
ところが,本件考案においては,上記(イ)の構成によって,ばねが常に規制部材を上方に付勢していることから,当然のことながら,規制部材と受部材が上下方向に揃った位置において,規制部材の下端は,最も上に上がった位置で一定となる。
そして,その際に,受部材は,上記(ウ)の構成を備えていることによって,受部材の収納凹部に規制部材の全部が収納された状態とされることは明らかである。
それによって,本件考案は,明細書の考案の効果の欄に記載されたような「受部材の前面には収納凹部を形成しているから、閉扉時にはこの収納凹部に規制部材の全部をコンパクトに収納できるとともに、外観上も見苦しくなくなる。」という効果を達成することができるものである。

(5)以上から,本件考案は,甲第1号証及び甲第2号証,さらには,甲第3号証ないし甲第8号証に記載の周知事項を考慮しても,これらに基づいて極めて容易に考案をすることができたものとは認められない。

6.実用新案法5条4項違反について
請求人が主張する本件の実用新案登録請求の範囲の記載不備は,本件考案においては,規制部材の回動に応じて枢軸と係合孔との距離は変化するものであるが,これに対応する手段が,実用新案登録請求の範囲に記載されておらず,必須の構成要件を欠いているというものである。
しかしながら,上記訂正審判において訂正された実用新案登録請求の範囲の記載においては,規制部材の回動に応じて変化する枢軸と係合孔との距離に対応する手段として,規制部材(35)は,枢軸(36)で受部材(30)に枢着した第1部材(35a)と,該第1部材(35a)に摺動自在とした第2部材(35b)と,第2部材(35b)と前記枢軸(36)間に取付けて第2部材(35b)を常時第1部材(35a)と第2部材(35b)とが互に一体化される方向に付勢するようにしたばね(40)とからなり,又は,規制部材(35)の上端を取着した枢軸(49)を受部材(30)の上端部に穿った摺動長孔(48)に摺動自在に挿通するとともに,規制部材(35)を閉鎖位置に復帰させるように付勢したバネ(51)を備えることが特定された。
したがって,請求人の主張は理由がないものとなった。

7.むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件実用新案登録を無効とすることができない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-12-07 
結審通知日 2001-12-12 
審決日 2002-01-15 
出願番号 実願昭58-173884 
審決分類 U 1 112・ 532- Y (E05C)
U 1 112・ 121- Y (E05C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋吉 達夫高橋 三成  
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 大野 覚美
牧 初
登録日 1992-09-09 
登録番号 実用新案登録第1928926号(U1928926) 
考案の名称 扉錠  
代理人 宮口 聡  
代理人 玉利 冨二郎  
代理人 小杉 丈夫  
代理人 鮫島 正洋  
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