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審決分類 審判 全部無効 特39条先願 無効とする。(申立て全部成立) B65G
管理番号 1088179
審判番号 無効2000-35270  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-01-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-05-18 
確定日 2003-12-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第2053947号実用新案「蛇行防止コンベアベルトのガイド体」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2053947号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2053947号は、昭和63年11月16日の出願に係り、平成4年6月19日付け手続補正書により明細書が補正され、平成6年5月11日における出願公告(実公平6-17771号)を経て、平成7年3月6日に実用新案権の設定の登録がされ、平成7年4月18日に訂正審判が請求され、平成7年6月29日付け審決により訂正が認められたところ、平成12年5月18日に本件の実用新案登録無効審判が請求された。
その後、請求人より、上申書(平成12年10月13日付け)、審判請求理由補充書(平成12年12月8日付け)、口頭審理陳述要領書(平成13年3月26日付け)及び口頭審理陳述要領書補充書(平成13年4月11日付け)が提出され、被請求人より審判請求答弁書(平成12年8月8日付け)、口頭審理陳述要領書(平成13年4月10日付け)及び上申書(平成13年4月16日付け)が提出されている。
そして、平成13年4月10日に第1回口頭審理を行った後、審理を終結した。

2.本件考案
本件登録第2053947号実用新案の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、平成7年4月18日に訂正請求された、実用新案登録訂正明細書(甲第4号証)及び図面の記載からみて、訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】コンベアベルトを構成する枠体の一端部および他端部にそれぞれ配設されている主動プーリおよび従動プーリ間に巻回され、上記主動プーリの駆動によって走行されるベルト本体の裏面の長手方向に沿って直線的に取り付られていて、上記ベルト本体が走行するときに、上記主動プーリおよび従動プーリの周面に形成されているガイド溝中に嵌合することにより、上記ベルト本体が所定の位置を走行できるように案内するためのガイド体において;上記ガイド体は複数の細い紐を編組することにより構成されるとともに、その断面形状が上記主動プーリおよび従動プーリの周面に形成されているガイド溝に過不足なく嵌合するような形状に形成されていることを特徴とする蛇行防止コンベアベルトのガイド体。」

3.当事者の主張
(1)請求人の主張
請求人は、「登録第2053947号実用新案は無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、本件考案の実用新案登録は、
[第1の理由(明細書の要旨変更)]平成4年6月19日付け手続補正書による補正は明細書の要旨を変更するものであって、本件考案の出願は当該手続補正書を提出したときにしたものとみなされるので、本件考案の出願前の平成2年5月28日に頒布された刊行物である実願昭63年149437号(実開平2-69612号)のマイクロフィルム(甲第2号証)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項に違反し、
[第2の理由(明細書の記載不備)]本件明細書中に記載不備があるから、実用新案法第5条第3項及び第4項に違反し、
[第3の理由(先後願)]本件考案の出願の日前の昭和63年3月24日に出願された実願昭63年38719号(甲第10号証)の考案と同一であるから、実用新案法第7条第1項の規定に違反し、または、
[第4の理由(進歩性)]本件考案の出願前の昭和58年1月7日に頒布された刊行物である特開昭58-2104号公報(甲第8号証)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項に違反してなされたものである旨主張している。

(2)被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、本件考案は、
[第1の理由(明細書の要旨変更)に対し]平成4年6月19日付け手続補正書による補正は明細書の要旨を変更するものではないから、実用新案法第9条で準用する特許法第40条の規定に該当しない、
[第2の理由(明細書の記載不備)に対し]明細書中に記載不備はないから、実用新案法第5条第3項及び第4項の規定に違反しない、
[第3の理由(先後願)に対し]実願昭63年38719号(甲第10号証)の考案と同一ではないから、実用新案法第7条第1項の規定に違反しない、
[第4の理由(進歩性)に対し]特開昭58-2104号公報(甲第8号証)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではないから、実用新案法第3条第2項の規定に違反しない旨主張している。

4.当事者の提出した証拠
(1)請求人の提出した証拠
甲第1号証 実公平6-17771号公報(本件考案の公告公報)
甲第2号証 実願昭63-149437号(実開平2-69612号)のマイクロフィルム
甲第3号証 実願昭63年38719号明細書及び図面
甲第4号証 実用新案登録訂正明細書(本件考案の実用新案登録訂正明細書)
甲第5号証 実願昭63年149437号明細書及び図面(本件考案の出願明細書及び図面)
甲第6号証 判決(横浜地方裁判所、平成8年(ワ)第2242号)
甲第7号証 原告準備書面(第6回、平成8年(ワ)第2242号の平成10年3月18日)
甲第8号証 特開昭58-2104号公報
甲第9号証 判決(東京高等裁判所、平成12年(ネ)第2490号)
甲第10号証 実願昭63年38719号の平成4年6月5日付け手続補正書

これら請求人の提出した証拠のうち、
(A)甲第8号証には、第2頁右上欄第20行乃至左下欄第14行に、
「本発明は之等の欠点を解消し、円滑なベルトの運行を可能にするものである。その主眼とするところを要約すれば次の1,2,3となる。
1.柔軟な繊維質基材になじみにくい硬い金属の使用をやめて、基材と同等の又は基材に近似した柔軟性を持つ樹脂やクロスで作られた、複数の「棒状桟」を接着法あるいは融着法によりベルトに固着して一体化することで、ベルト、桟の相方に無理のかゝらない構成のものとする。
2.桟をベルトの下面(裏面)に取付けるものでは、それと共に、プーリーにもこれら桟に嵌合する間隔、大きさの凹凸を設け、この嵌合を駆動力のかかりに利用することによって、ベルトの誘導や駆動を円滑にする。」
と記載され、第2頁右下欄第9行乃至第16行に、
「棒状桟の断面は角形(イ)図、台形(ロ)図、半円形(ハ)図等が用途に応じて選択使用される。
(二)図の様に桟を横切って多数の切込み(ノッチ)を設けるときは矢印12の方向の屈曲性が良くなる。
棒状桟の取付方法には、棒の長手方向(矢印12)を、コンベアベルトの進行方向(縦方向)と一致させるもの(以下縦桟と呼ぶ)と、」
と記載され、第3頁左上欄第2行乃至第5行に、
「プーリー21にはこの縦桟22,23の夫々に嵌合する溝24,25を設けてある。溝の断面形状(深さ,巾等)は、桟の断面形状よりも僅かに大きくしている。」
と記載され、第3頁右上欄第5行乃至第10行に、
「本発明の耐熱性コンベアベルト、及びそれを駆動用プーリーと嵌合させて使用する搬送装置は、上述のように構成されるため、伸縮性、弾力性のないことを常とする耐熱性ベルトにおいても、蛇行を完全に防止しベルトのスリップを皆無とすることが出来る。」
と記載されている。
これらの記載及び第1図乃至第3図の記載をあわせてみると、甲第8号証には、
「駆動用プーリーに巻回され、上記駆動用プーリーの駆動によって走行されるベルト本体の裏面の長手方向に沿って直線的に取り付られていて、上記ベルト本体が走行するときに、上記駆動用プーリーの周面に形成されている溝中に嵌合することにより、上記ベルト本体が所定の位置を走行できるように案内するための棒状桟において;上記棒状桟はクロスより構成されるとともに、その断面形状が上記駆動用プーリーの周面に形成されている溝に嵌合するような形状に形成されている蛇行防止コンベアベルトの棒状桟。」
が記載されている。
(B)また、甲第10号証は、本件考案の出願の日前の出願に係る実願昭63年38719号(甲第3号証参照)に係るものであって、甲第3号証に係る出願は昭和63年3月24日に出願され、平成4年5月8日に審判請求され、平成4年6月5日付け手続補正書(甲第10号証)により明細書全文及び第2図が補正され、その後何らの補正を経ることなく、平成6年9月22日付け審決により拒絶が確定したものである。
そして、甲第10号証に係る実用新案登録出願の請求項1に係る考案(以下、「甲第10号証考案」という。)は、平成4年6月5日付け手続補正書(甲第10号証)により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「耐熱性に富む基材シート3にフッ素樹脂4を含浸して焼成したベルト本体2の裏面2Bに、上記ベルト本体2の長手方向に沿ってガイド体5が取り付けられている蛇行防止コンベアベルトにおいて、上記ガイド体5は、耐熱性に富む複数の基材繊維6にフッ素樹脂4を含浸して焼成されるとともに、これらの基材繊維6が編組されることによってその断面形状が丸型、または多角形の帯状に構成されているものであることを特徴とする蛇行防止コンベアベルト。」
なお、請求項1には「フッ素樹脂4を含侵して」と記載されているが、「含侵」は「含浸」の誤記と認め、上記のように認定した。

(2)被請求人の提出した証拠
乙第1号証 実願昭63年149437号明細書及び図面(本件考案の出願明細書及び図面)
乙第2号証 実公平6-17771号公報(本件考案の公告公報)
乙第3号証 判決(横浜地方裁判所、平成8年(ワ)第2242号)
乙第4号証 実願昭63年38719号明細書及び図面
乙第5号証 特開昭58-2104号公報
乙第6号証 実願昭63年38719号の平成4年6月5日付け手続補正書
乙第7号証 実願昭63年38719号の拒絶査定不服審判(平成4年審判第8293号)の平成6年9月22日付け審決
乙第8号証 特許庁編、特許・実用新案 審査基準、社団法人発明協会発行、第4章特許法第39条、p.1-2

5.請求人の主張する第1の理由(明細書の要旨変更)について
(1)請求人の主張の概要
請求人の第1の理由に関する主張の概要は、以下のとおりである。
本件考案は、平成4年6月19日付け手続補正書により、実用新案登録請求の範囲に「その断面形状が上記主動プーリおよび従動プーリの周面に形成されているガイド溝に過不足なく嵌合するような形状」との記載を付加する(以下、「補正事項」という。)補正がなされたものである。そして、「ガイド溝に過不足なく嵌合するような形状」の意味は、「ガイド体4の内でガイド溝12からはみ出る部分はなく、かつ、ガイド溝12中に空隙部分が残ることもなく、ガイド体4がガイド溝12をすっぽり埋め尽くすように嵌合できるような形状」をいうものと解し、ガイド体はガイド溝の底にも接触することになるので、そのガイド体は底面でもガイド溝の底部と一致した形状に形成されることになる。しかし、実施例の第5図をみると、ガイド溝の底面とガイド体とは接しておらず、両者の間には明らかに間隔(クリアランス)があり、ガイド溝12の底部は上開きコ字型で、これに嵌合されたガイド体4の底部は、丸みを帯びて角ばったガイド溝の底部と一致した形状に形成されていない。そして、上記補正事項は出願当初の明細書または図面に記載も示唆もされておらず、出願当初の明細書又は図面の記載からみて自明の事項でもない。したがって、当該手続補正により本件明細書に記載された技術的事項が本件当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものとなったので、当該手続補正は明細書の要旨を変更するものである。
(2)当審の判断
上記補正事項は、ガイド体の断面形状をガイド溝に過不足なく嵌合するような形状に限定し、ガイド体とガイド溝との嵌合態様を過不足ない状態に限定するものと認められる。
そして、出願当初の明細書及び図面から、ガイド体の断面形状に係る記載、及びガイド体とガイド溝との嵌合態様に係る記載を摘記すると、
(イ)「ガイド溝中に案内せしめられることによってベルト本体の蛇行を防止するようにした帯状ガイド体に於いて」(明細書第1頁第9行乃至第12行及び明細書第5頁第12行乃至第14行)、
(ロ)「ガイド体は・・・・全体の断面形状を略丸形、角形とした」(明細書第1頁第13行乃至第14行及び明細書第5頁第15行乃至第16行)、
(ハ)「ガイド体4の側面がガイド溝12のテーパ状側面に当接支持され」(明細書第9頁第12行乃至第13行)、
(ニ)「ガイド体4の下面は底面13に当らない」(明細書第9頁第14行乃至第15行)、
(ホ)第1図、第2図(A)、第3図、第5図及び第13図、
等である。
とすると、出願当初の明細書又は図面には、「ガイド溝に過不足なく嵌合するような形状」との文言の記載がなかったことは明らかであるから、「ガイド溝に過不足なく嵌合するような形状」の「ガイド体の断面形状」は、出願当初の明細書又は図面の記載事項から自明であるか否かにつき、以下検討する。
まず、一般的な技術常識からすると、「溝に嵌合する」は「溝にはいってはまり合う」ことである。したがって、「溝に過不足なく嵌合する」について解釈すると、「過不足なく」は「溝に嵌合する」態様を「過不足なく」に限定しており、かつ、「過不足なく」は「過ぎることも不足することもない」ということであるから、「溝にはいってはまり合う」態様が「過ぎることも不足することもない」状態であることを意味するものと解される。
ところで、本件考案は、その実用新案登録請求の範囲の前段の「おいて」までに記載されているように、「コンベアベルト」の「ベルト本体の裏面の長手方向に沿って直線的に取り付られていて、」「プーリの周面に形成されているガイド溝中に嵌合することにより、上記ベルト本体が所定の位置を走行できるように案内するためのガイド体」であることを前提とした「蛇行防止コンベアベルトのガイド体」である。したがって、本件考案は、蛇行防止コンベアベルトが所定の位置を走行するとともに、コンベアベルトの動きに支障とならない構成が必要なことは、技術上明らかである。そして、ガイド体とガイド溝とが嵌合により蛇行を防止できず、コンベアベルトが所定の位置を走行すると言えないもの、及び、ガイド体とガイド溝とがすべての面において完全に密着し何らの隙間もなく、コンベアベルトの動きに支障をきたすものは、上記構成に該当しないことも、本件考案の出願時において当業者にとって自明のことである。すなわち、本件考案の前提とする構成要件は、コンベアベルトの蛇行を防止しないもの、及び、ガイド体とガイド溝とがすべての面において完全に密着し、コンベアベルトの動きに支障をきたすものを除外するものと認められる。
そうすると、本件考案においては、ガイド体が蛇行防止コンベアベルトのガイド体としての機能を有するようにガイド体がプーリのガイド溝にはめこまれることが必要なことは既に見たとおりであるから、その場合、「過ぎること」はガイド溝のすべての面がガイド体と密着し過ぎることで、「コンベアベルトの動きに支障となる程度の嵌合状態となること」と解され、「不足すること」はコンベアベルトが蛇行し始めたときに、ガイド体がガイド溝の側面にぶつかることにより、ガイド体と一体となっているコンベアベルトの蛇行を直すことに不足することで、「ベルトコンベアが動くときにコンベアベルトの蛇行を放置する程度の嵌合状態となること」と解される。
以上のことからすれば、ガイド体の断面形状をガイド溝に過不足なく嵌合するような形状に限定することは、ガイド溝との関係において、「ガイド体の断面形状はコンベアベルトの動きの支障となることなく、またコンベアベルトの蛇行を放置することなく機能するような嵌合状態となること」(以下、「当審の解釈」という。)と解される。そして、「溝に過不足なく嵌合する」は、請求人が主張するように、ガイド溝の側面及び底面方向すべてにおいてガイド溝をすっぽり埋め尽くすように嵌合する状態のみに限るものと認めることはできない。
したがって、上記当審の解釈どおりのガイド体の断面形状は、特に上記に摘記した(イ)乃至(ホ)からすれば、出願当初の明細書又は図面の記載事項から自明のことと認められる。そして、上記補正後の本件考案が奏する効果は当初明細書又は図面の記載事項の範囲内乃至自明の範囲内のものであり、上記補正事項により格別新たな効果を奏するものとは認められない。よって、上記補正事項は出願当初の明細書又は図面の記載事項から自明のことと認められるので、上記補正後の実用新案登録請求の範囲に記載した技術的事項が出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものになったとは認められず、当該補正は明細書の要旨を変更するものとは認められない。
なお、請求人は平成12年12月8日付け審判請求理由補充書において、次のように主張している。すなわち、本件明細書の第5図の場合の、ガイド体がガイド溝の上方の一部にしか嵌合しておらず、ガイド体の側面がガイド溝の側面に当接支持している場合は、ガイド体がガイド溝から外れやすく、それに対し、ガイド体が断面視においてガイド溝の底面を含めた周囲全体で、ガイド溝に過不足なく嵌合するような形状に形成されている場合は、ガイド体がガイド溝から外れる恐れが前者に比較してかなり少なくなって、ガイド体がガイド溝から外れることが回避されるようになる。したがって、両者の作用効果は明らかに相違する。よって、本件明細書の第5図から、ガイド体が断面視においてガイド溝の底面を含めた周囲全体で、ガイド溝に過不足なく嵌合するような形状に形成されていることが開示ないし示唆されているということはできない、とするものである。しかし、ガイド体がガイド溝から外れ易いか難いかに関する作用効果は、ガイド体の高さ、換言するとガイド体とガイド溝との嵌合の深さやガイド体がガイド溝に当接支持される際の摩擦など、ガイド体のガイド溝に関する断面形状により異なるとはいえ、ガイド体がガイド溝の底面を含めた周囲全体で完全に接触するか否かとは直接的には関係しないものと認められる。さらに、本件考案のガイド体の断面形状は、先に説示したとおり、ガイド体とガイド溝とがすべての面において完全に密着し、コンベアベルトの動きに支障をきたすものを除外するものであって、上記請求人の主張が前提とする「ガイド体が断面視においてガイド溝の底面を含めた周囲全体で、ガイド溝に過不足なく嵌合するような形状」であるガイド体の断面形状を除外するものである。以上のことからすると、上記請求人の主張は採用できない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本件考案は実用新案法第9条で準用する特許法第40条の規定に該当しないので、甲第2号証は本件考案の出願前に頒布されたものとすることはできないから、甲第2号証を根拠として本件考案の実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものとすることはできない。

6.請求人の主張する第2の理由(明細書の記載不備)について
(1)請求人の主張の概要
請求人の第2の理由に関する主張の概要は、以下のとおりである。
本件明細書には、ガイド体が嵌合するガイド溝の形状、構造が何ら特定されていないから、これに過不足なく嵌合するという本件考案のガイド体断面の形状、構造が特定されていない、あるいは、どんな形状の断面形状のガイド溝にも過不足なく嵌合するような形状といっていることと同じである。
したがって、本件考案は、
i)ガイド体の断面形状が、「ガイド溝に過不足なく嵌合するような形状」とは、一体如何なる形状をいうのか、当業者には理解できず、
ii)ガイド体の断面形状の特定の意味が曖昧で、明細書にはガイド体の断面形状を特定した本件考案を当業者が容易に実施することができるように、その考案の目的、構成及び効果を記載していないから、実用新案法第5条第3項に違反し、
iii)本件明細書の考案の詳細な説明には、「ガイド溝に過不足なく嵌合するような形状」についての説明が何もないので、本件の実用新案登録請求の範囲には、考案の詳細な説明に記載した考案の構成に欠くことのできない事項のみを記載していないから、実用新案法第5条第4項に違反している。
(2)当審の判断
本件考案においては、上記5.(2)において説示したように、ガイド体の断面形状は、コンベアベルトの動きの支障となることなく、またコンベアベルトの蛇行を放置することなく機能するような嵌合状態となる形状と解されるが、ガイド溝の断面形状については特段の限定を付していない。したがって、本件考案のガイド体の断面形状は、いろいろな断面形状のガイド溝が存在する中で、如何なる断面形状のガイド溝にも過不足なく嵌合するような形状を意味するものではなく、ある断面形状のガイド溝を選択した際に、そのガイド溝にあわせて、コンベアベルトの動きの支障となることなく、コンベアベルトの蛇行を放置することなく機能するような嵌合状態となる断面形状であれば、如何なるものであってもよいものと解される。換言すると、ガイド体の断面形状は、ガイド溝に対する嵌合態様が過不足ない状態であることが必須の形状であり、おおよその断面形状は丸形、多角形、等いろいろな形状を想定でき、ガイド体それ自体あるいはガイド溝それ自体の断面形状については、両者が過不足なく嵌合するとの条件を満たす範囲内で、様々な形状が考えられるものと解される。
こうしてみると、ガイド体の断面形状が、「ガイド溝に過不足なく嵌合するような形状」とは、一体如何なる形状をいうのか、当業者には理解できないとすることはできない。
そして、本件明細書の考案の詳細な説明には、当業者が実施できる程度に、産業上の利用分野、従来の技術、考案が解決しようとする課題、課題を解決するための手段、作用、実施例、効果が、項分けされて記載されており、「コンベアベルトの蛇行を防止するためのガイド体の耐久性を向上させるとともに、優れたガイド性が得られるようにする」目的に矛盾なく、構成、効果が記載されているものと認められる。
したがって、本件明細書の考案の詳細な説明には、本件考案の構成に欠くことのできない事項から把握される考案に対応した目的、構成及び効果が、本件考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、記載されていないとすることはできず、実用新案法第5条第3項に違反するとすることはできない。
さらに、考案の詳細な説明中の[課題を解決するための手段]及び[効果]の項には、実用新案登録請求の範囲に記載された事項のうち、特に「ガイド溝に過不足なく嵌合するような形状」に係る事項と対応する事項が記載されており、また、「ガイド溝に過不足なく嵌合するような形状」は上記当審の解釈のとおり明確に把握することができるので、請求項に記載された事項に基づいて実用新案登録を受けようとする考案が明確に把握できない、すなわち、まとまりのある一の技術的思想がとらえられないとすることはできないから、本件明細書は実用新案法第5条第4項に違反しているとすることはできない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本件考案の実用新案登録は、実用新案法第5条第3項乃至第4項の規定に違反してなされたものとすることはできない。

7.請求人の主張する第3の理由(先後願)について
(1)被請求人の主張の概要
被請求人の第3の理由に関する主張の概要は、以下のとおりである。
i)甲第10号証考案は、ベルト本体が耐熱性に富む基材シートにフッ素樹脂を含浸して焼成したものであり、ガイド体も、耐熱性に富む複数の基材繊維にフッ素樹脂を含浸して焼成し、これらの基材繊維が編組されることによってその断面形状が丸型、または多角形の帯状に構成されているものを構成要件としているが、本件考案は、ガイド体は複数の細い紐を編組し構成し、その断面形状がガイド溝に過不足なく嵌合するような形状に形成されていることを構成要件としており、両者はその構成を異にしている。特に、甲第10号証考案は必ずベルト本体とガイド体が耐熱性に富むフッ素樹脂を含浸したものを用いるものであるのに対し、本件考案は必ずしもそのことを必要としない。
ii)甲第10号証考案は、そのコンベアベルトの態様として、主動プーリと従動プーリ間にベルト本体を巻回し、ガイド体が主動プーリと従動プーリのガイド溝に嵌合している態様、プーリ以外の板に形成したガイド溝にガイド体が嵌合している態様、及びプーリ以外の左右一対のローラ間にガイド体を通す態様、の3態様が想定できるのに対し、本件考案はそのうちの1つを特定しているから、この点で本件考案は甲第10号証考案に対し下位概念のものである。
iii)ガイド体とガイド溝との関係について、ガイド体を複数の細い紐で編組することによりその変形をスムースにすることのみならず、ガイド体が蛇行防止コンベアベルトのガイド体としての機能を有するようにガイド体がプーリのガイド溝にはめこまれること、即ちガイド体がガイド溝に過不足なく嵌合するような形状として、ベルトコンベアが動くときにコンベアベルトの蛇行を防ぎ、かつ、コンベアベルトの動きに支障とならない程度の嵌合状態となることが必要であり、そのためには、ガイド溝の側面及び底面はガイド体と接着し過ぎるとコンベアベルトのスムースな動きを阻害することになるので、むしろいくらか隙間があっても良く、そしてコンベアベルトが蛇行し始めたときには、ガイド体がガイド溝の側面にぶつかることにより、ガイド体と一体となっているコンベアベルトの蛇行を直すことになるという本件考案の技術的思想が、甲第10号証考案には開示されていない。
iv)甲第10号証考案はガイド体の破損防止を意図しており、本件考案の、コンベアベルトの動きに支障を与えないと同時にコンベアベルトが動いた時にコンベアベルトの蛇行を防止し、複数の細い紐を編組したガイド体のガイド性能の増進を図った点を、開示していない。
(2)本件考案と甲第10号証考案との対比
本件考案と甲第10号証考案とを対比すると、甲第10号証考案の「これらの基材繊維6」は本件考案の「複数の細い紐」に相当するから、両者は、
「ベルト本体の裏面の長手方向に沿って取り付られていて、複数の細い紐を編組することにより構成される蛇行防止コンベアベルトのガイド体。」
の点で一致し、
(a)ベルト本体の素材に関し、本件考案は、不明であるのに対し、甲第10号証考案は、耐熱性に富む基材シートにフッ素樹脂を含浸して焼成した点、
(b)細い紐の素材に関し、本件考案は、不明であるのに対し、甲第10号証考案は、耐熱性に富む基材繊維にフッ素樹脂を含浸して焼成した点、
(c)ベルト本体に関し、本件考案は、コンベアベルトを構成する枠体の一端部および他端部にそれぞれ配設されている主動プーリおよび従動プーリ間に巻回され、上記主動プーリの駆動によって走行されるのに対し、甲第10号証考案は、不明である点、
(d)ガイド体の取り付け態様に関し、本件考案は、直線的に取り付られているのに対し、甲第10号証考案は、不明である点、
(e)ガイド体の機能に関し、本件考案は、ベルト本体が走行するときに、ベルト本体が所定の位置を走行できるように案内するのに対し、甲第10号証考案は、不明である点、
(f)ガイド体のベルト本体を案内する態様に関し、本件考案は、主動プーリおよび従動プーリの周面に形成されているガイド溝中に嵌合するのに対し、甲第10号証考案は、不明である点、
(g)ガイド体の断面形状に関し、本件考案は、ガイド溝に過不足なく嵌合するような形状に形成されているのに対し、甲第10号証考案は、丸形、または多角形の帯状に構成される点、
(h)請求している物品が、本件考案は「蛇行防止コンベアベルトのガイド体」であり、甲第10号証考案は「蛇行防止コンベアベルト」である点、
で一応相違する。
(3)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
まず、上記(a)の相違点について検討すると、ベルト本体の素材に関し、本件考案は、甲第10号証考案のように限定を加えることなく任意のものとしたにすぎないものであって、本件考案の技術的事項は、甲第10号証考案の技術的事項を包含するものである。このことは、本件考案の実施例のベルト本体の素材に関する、「この図において、1はベルト本体を示している。すなわち、例えば耐熱性に富む基材シート2にふっ素樹脂3を含浸して焼成したものである。」との本件考案の明細書中の記載からも明らかである。したがって、この点により両者が別考案であると認めることはできない。
上記(b)の相違点について検討すると、細い紐の素材に関し、本件考案は、甲第10号証考案のように限定を加えることなく任意のものとしたにすぎないものであって、本件考案の技術的事項は、甲第10号証考案の技術的事項を包含するものである。このことは、本件考案の実施例のガイド体の紐の素材に関する、「他方、符号4は帯状のガイド体を示し、この例では上記のベルト本体1と同様の材質より成る。すなわち、耐熱性に富む繊維にふっ素樹脂を含浸し焼成して紐を得る。」との本件考案の明細書中の記載からも明らかである。したがって、この点により両者が別考案であると認めることはできない。
上記(c)の相違点に関する本件考案の構成は、ベルト本体に関し、コンベアベルトを構成する枠体の一端部および他端部にそれぞれ配設されている主動プーリおよび従動プーリ間に巻回され、上記主動プーリの駆動によって走行されると限定したものである。ところが、上記のように限定されたベルト本体は、蛇行防止コンベアベルトにおいては、本件考案の出願時において周知慣用の技術的事項であるものと認められる。一方、上記(c)の相違点に関する甲第10号証考案の構成は、ベルト本体に関して本件考案のように限定を加えることなく任意のものとしている。すなわち、本件考案は、甲第10号証考案にない構成を有しているものと認められる。しかし、本件考案の相違点(c)に関する構成は、ベルト本体に関し、従来から周知慣用であるものに限定したにすぎず、すなわち、甲第10号証考案の構成に対して周知の慣用技術の付加を施したものに相当し、かつ、当該周知の慣用技術の付加により、格別新たな効果を奏するものとも認められない。よって、この点により両者が別考案であると認めることはできない。
上記(d)の相違点に関する本件考案の構成は、ガイド体の取り付け態様に関し、直線的に取り付られていると限定したものである。ところが、「ベルト本体の裏面の長手方向に沿って取り付られている蛇行防止コンベアベルトのガイド体」においては、ガイド体の取り付け態様を、直線的にすることは、本件考案の出願時において周知慣用の技術的事項であるものと認められる。一方、上記(d)の相違点に関する甲第10号証考案の構成は、ガイド体の取り付け態様に関して、本件考案のように限定を加えることなく任意のものとしている。すなわち、本件考案は、甲第10号証考案にない構成を有しているものと認められる。しかし、本件考案の相違点(d)に関する構成は、ガイド体の取り付け態様を従来から周知慣用であるものに限定したにすぎず、すなわち、甲第10号証考案の構成に対して周知の慣用技術の付加を施したものに相当し、かつ、当該周知の慣用技術の付加により、格別新たな効果を奏するものとも認められない。よって、この点により両者が別考案であると認めることはできない。
上記(e)の相違点に関する本件考案の構成は、ガイド体の機能に関し、ベルト本体が走行するときに、ベルト本体が所定の位置を走行できるように案内すると限定したものである。ところが、上記のように限定されたガイド体の機能は、「ベルト本体の裏面の長手方向に沿って取り付られている蛇行防止コンベアベルトのガイド体」においては、本件考案の出願時において周知慣用の技術的事項であるものと認められる。一方、上記(e)の相違点に関する甲第10号証考案の構成は、ガイド体の機能に関して、本件考案のように限定を加えることなく任意のものとしている。すなわち、本件考案は、甲第10号証考案にない構成を有しているものと認められる。しかし、本件考案の相違点(e)に関する構成は、ガイド体の機能を従来から周知慣用であるものに限定したにすぎず、すなわち、甲第10号証考案の構成に対して周知の慣用技術の付加を施したものに相当し、かつ、当該周知の慣用技術の付加により、格別新たな効果を奏するものとも認められない。よって、この点により両者が別考案であると認めることはできない。
上記(f)の相違点に関する本件考案の構成は、ガイド体のベルト本体を案内する態様に関し、主動プーリおよび従動プーリの周面に形成されているガイド溝中に嵌合すると限定したものである。ところが、「ベルト本体の裏面の長手方向に沿って取り付られている蛇行防止コンベアベルトのガイド体」においては、ガイド体のベルト本体を案内する態様には、プーリ周面に形成したガイド溝に嵌合する本件考案の態様の他に、プーリ周面には形成せずに別体に形成したガイド溝に嵌合する態様や、左右一対のローラ間にガイド体を通す態様も可能であることは、本件考案の出願時において周知の技術常識であるものと認められる。一方、上記(f)の相違点に関する甲第10号証考案の構成は、ガイド体のベルト本体を案内する態様に関して、本件考案のように限定を加えることなく任意のものとしている。すなわち、本件考案は、甲第10号証考案にない構成を有しているものと認められる。しかし、本件考案の相違点(f)に関する構成は、ガイド体のベルト本体を案内する態様を従来から周知である態様のうちから特定のものに限定したにすぎず、すなわち、甲第10号証考案の構成に対して周知技術の付加を施したものに相当し、かつ、当該周知技術の付加により、格別新たな効果を奏するものとも認められない。よって、この点により両者が別考案であると認めることはできない。
上記(g)の相違点に関する本件考案の構成は、5.(2)に説示したように、ガイド溝との関係において、ガイド体の断面形状をガイド溝に過不足なく嵌合するものに限定したものである。ところが、「ベルト本体の裏面の長手方向に沿って取り付られている蛇行防止コンベアベルトのガイド体」においては、ガイド体とガイド溝との嵌合態様が過不足なく嵌合するもの、すなわち、当審の解釈である「ガイド体の断面形状はコンベアベルトの動きの支障となることなく、またコンベアベルトの蛇行を放置することなく機能するような嵌合状態となること」は、本件考案の出願時において周知の技術常識であるものと認められる。一方、上記(g)の相違点に関する甲第10号証考案の構成は、ガイド体とガイド溝との嵌合態様に関して本件考案のように限定を加えていないので、本件考案は、甲第10号証考案にない構成を有しているものとも認められる。しかし、本件考案の相違点(g)に関する構成は、ガイド体とガイド溝との嵌合態様を、従来から周知である態様に限定したにすぎず、すなわち、甲第10号証考案の構成に対して周知技術の付加を施したものに相当し、かつ、当該周知技術の付加により、格別新たな効果を奏するものとも認められない。よって、この点により両者が別考案であると認めることはできない。
また、上記(g)の相違点に関する甲第10号証考案の構成は、ガイド溝との関係に関わりなくガイド体の断面形状を限定するものである。一方、本件考案の上記(g)の相違点に関する構成は、ガイド溝との関係に関わりない形式においては、ガイド体の断面形状について限定を加えることなく任意のものとしたにすぎないものであって、本件考案の技術的事項は、甲第10号証考案の技術的事項を包含するものである。このことは、本件考案の実施例のガイド体の断面形状に関する図面の記載からも明らかである。よって、この点により両者が別考案であると認めることもできない。
したがって、上記(g)の相違点において、本件考案及び甲第10号証考案は実質同一であるといわざるを得ない。
上記(h)の相違点に関し、本件考案が請求している物品は、「蛇行防止コンベアベルトのガイド体」であるが、本件考案の蛇行防止コンベアベルトのガイド体は、蛇行防止ベルトコンベアと一体になってその作用効果を奏するものであるから、本件考案は、本件考案の蛇行防止コンベアベルトのガイド体と一体になった「蛇行防止コンベアベルト」を実質上請求しているに等しいものと認められる。よって、この点により両者が別考案であると認めることはできない。
なお、甲第10号証考案は、ガイド体がガイド溝に嵌合して蛇行防止を目的とする蛇行防止コンベアベルトに関するものであるから、コンベアベルトの蛇行を防止し、かつ、コンベアベルトの駆動に支障とならない構成が必要であることは、当業者にとって自明のことであって、ローラー(本件考案の「主動プーリ」及び「従動プーリ」に相当する)のガイド溝に嵌合させて走行させる際に、ガイド体が繰り返し湾曲させられることによる破損を、ガイド体の変形性能を高めることにより防ぐものであるから、ガイド体の変形性能を高めることにより、ガイド体の各部に偏ったストレスが可及的にかからず、スムースなガイド性が確保されることも、当業者にとって自明のことと認められる。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件考案は、甲第10号証考案と実質同一であるので、本件考案の実用新案登録は、実用新案法第7条第1項の規定に違反してなされたものである。

8.請求人の主張する第4の理由(進歩性)について
(1)請求人の主張の概要
請求人の第4の理由に関する主張の概要は以下のとおりである。
i)甲第8号証に記載された考案を本件考案と対比すると、以下のii)、iii)に関する点を除き、両者はきわめて類似している。
ii)甲第8号証に記載された考案のコンベアベルトのガイド体である棒状桟は、「繊維クロス」であり、「繊維クロス」は本件考案でいう「複数の細い紐を編組することにより構成されたもの」と実質的に相違はないものであって、「繊維クロス」で構成されたガイド体もプーリやローラなどの湾曲部で、個々の繊維がベルトの回転に伴って離合・集散を繰り返して、結果的に、ガイド体にストレスがかからないから、その作用効果のうえでも実質的相違はない。
iii)本件考案のガイド体の断面形状が、ガイド溝に過不足なく嵌合するような形状に形成されていることは、「過不足なく嵌合」との限定による特段の作用効果が存在しないので、かかる態様での嵌合は特殊なものと解されないから、当業者がきわめて容易に考案をすることができた事項である。
(2)本件考案と甲第8号証に記載された考案との対比
本件考案と甲第8号証に記載された考案とを対比すると、甲第8号証に記載された考案の「駆動用プーリー」、「溝」及び「棒状桟」は、それぞれ本件考案の「主動プーリ」、「ガイド溝」及び「ガイド体」に相当するから、両者は、
「主動プーリに巻回され、上記主動プーリの駆動によって走行されるベルト本体の裏面の長手方向に沿って直線的に取り付られていて、上記ベルト本体が走行するときに、上記主動プーリの周面に形成されているガイド溝中に嵌合することにより、上記ベルト本体が所定の位置を走行できるように案内するためのガイド体において;上記ガイド体は、その断面形状が上記主動プーリの周面に形成されているガイド溝に嵌合するような形状に形成されている蛇行防止コンベアベルトのガイド体。」
の点で一致し、
(a)ベルト本体に関し、本件考案は「コンベアベルトを構成する枠体の一端部および他端部にそれぞれ配設されている主動プーリおよび従動プーリ間に巻回され」るのに対し、甲第8号証に記載された考案は「主動プーリに巻回され」るが、従動プーリ等については不明である点、
(b)ガイド体の機能に関し、本件考案は「上記主動プーリおよび従動プーリの周面に形成されているガイド溝中に嵌合する」のに対し、甲第8号証に記載された考案は、「上記主動プーリの周面に形成されているガイド溝中に嵌合する」が、従動プーリについては不明である点、
(c)ガイド体の構成に関し、本件考案は「複数の細い紐を編組することにより構成される」のに対し、甲第8号証に記載された考案は「クロスにより構成される」点、
(d)ガイド溝とガイド体の嵌合態様に関し、本件考案は「過不足なく嵌合する」のに対し、甲第8号証に記載された考案は、「嵌合する」点、
で両者は相違する。
(3)当審の判断
上記相違点について検討すると、
まず、上記(a)の相違点に関する本件考案の構成は、「主動プーリに巻回され、上記主動プーリの駆動によって走行されるベルト本体の裏面の長手方向に沿って直線的に取り付られていて、上記ベルト本体が走行するときに、上記主動プーリの周面に形成されているガイド溝中に嵌合することにより、上記ベルト本体が所定の位置を走行できるように案内するためのガイド体において;上記ガイド体は、その断面形状が上記主動プーリの周面に形成されているガイド溝に嵌合するような形状に形成されている」ような構成(以下、「構成I」という。)を有する蛇行防止コンベアベルトにおいて、本件考案の出願当時の技術常識からすれば周知慣用の構成と認められるから、当業者が、甲第8号証に記載された考案に該周知慣用の構成を付加することに、格別な困難性があるものとは認められない。
また、上記(b)の相違点に関する本件考案の構成は、上記相違点(a)についての判断でみたように、構成Iを有する蛇行防止コンベアベルトにおいて、ベルト本体が従動プーリに巻回されることは周知慣用の構成であるから、その際、ガイド体が従動プーリの周面に形成されているガイド溝中に嵌合することも周知慣用の構成と認められるので、本件考案の出願当時の技術常識からすれば周知慣用の構成と認められる。したがって、当業者が、甲第8号証に記載された考案に該周知慣用の構成を付加することに、格別な困難性があるものとは認められない。
次に、上記(c)の相違点について検討すると、本件考案は、ガイド体を複数の細い紐を編組することにより構成することにより、明細書中の[作用]の項に記載された「ガイド体が主動プーリおよび従動プーリに形成されているガイド溝内を案内される時に伸縮力が加えられると、その形状がスムースに変形する。したがって、上記伸縮力がガイド体にとっては大きなストレスにはならないので、駆動中に伸縮力が繰り返し加えられても優れた耐久性が得られる。」及び「主動プーリおよび従動プーリに形成されているガイド溝に案内された時、ある1本の紐に着目した場合、ガイド溝の底辺に近いガイド体の部分をガイドするある紐のある部分の曲率は大きく、遠いガイド体の部分をガイドする上記と同じある紐のある部分の曲率は小さい。したがって、伸縮の差が部分的に生ずるようにみえるけれども、その特定のある紐は内,外に回って編組されているので、その紐の一定の長さあたりでは上記の伸縮が相殺されることになり、1本1本の紐を比較した場合には皆同じとなり、どれか特定の紐のみに局部的なストレスがかからない。故にガイド性も良いし、耐久性もある。」との、本件考案に特有の作用効果を奏するものと認められる。一方、甲第8号証に記載された考案は、ガイド体をクロスにより構成しており、クロスとは一般に複数の縦紐及び横紐から成る織物を指すものと認められ、複数の紐を編組し、特定のある紐は内,外に回って編組されている編物とは認められない。よって、甲第8号証に記載された考案は、本件考案に特有の上記作用効果を奏するものとは認められない。そして、「蛇行防止コンベアベルトのガイド体」において、「ガイド体を複数の細い紐を編組することにより構成すること」が、本件考案の出願前に公知であるとする証拠は他に認められず、本件考案の出願当時に周知慣用の技術であったと認めることもできない。したがって、上記(c)の相違点に関する本件考案の構成は、当業者がきわめて容易に想到し得るものとは認められない。
上記(d)の相違点に関する本件考案の構成は、ガイド体とガイド溝との嵌合態様として、本件考案の出願当時の技術常識からすれば、従来から周知の慣用技術を付加したにすぎないものと認められ、かつ、当該周知の慣用技術の付加により、格別新たな効果を奏するものとも認められないから、この点に考案の進歩性を認めることは出来ない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件考案は、甲第8号証に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案することができたものとすることができないので、本件考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものとすることはできない。

9.まとめ
以上のとおりであるから、請求人の主張する第3の理由及び証拠方法によって、本件考案の実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第1号に該当するから、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-06-07 
結審通知日 2001-06-19 
審決日 2001-07-02 
出願番号 実願昭63-149437 
審決分類 U 1 112・ 4- Z (B65G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅野 あつ子  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 飯塚 直樹
田村 嘉章
登録日 1995-03-06 
登録番号 実用新案登録第2053947号(U2053947) 
考案の名称 蛇行防止コンベアベルトのガイド体  
代理人 河井 将次  
代理人 飯島 康博  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 坪井 淳  
代理人 川上 英一  
代理人 池田 宏  
代理人 寒河江 孝允  
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