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審決分類 審判 判定  属する(申立て成立) C02F
管理番号 1088181
判定請求番号 判定2002-60060  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2004-01-30 
種別 判定 
判定請求日 2002-06-14 
確定日 2003-12-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第2605114号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「スカム除去装置」は、登録第2605114号実用新案の技術的範囲に属する。
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面(図1乃至2、参考図1及び2)に示すスカム除去装置(以下「イ号装置」という)は、実用新案登録第2605114号の技術範囲に属する、との判定を求めるものである。
2.本件実用新案登録
本件実用新案登録第2605114号の請求項1に係る考案(以下「本件考案」という)は、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その構成を符合を付して分節して記載すると以下のとおりとなる。
(イ)処理池の水面よりも低くなる誘引口を備え同池内に両端支持状態で固定して設置されるトラフと、
(ロ)前記トラフと同様の長尺状部材で同トラフの前側において上部が水面を境に浮き沈み可能とされた堰と、
(ハ)池底より少し上側に位置し池幅方向に軸心が向く水平軸状の可動固定支点回りに上下に揺動するように支持され循環運動するフライトに備えたローラー式のアタッカーが池底を進行してくる際に蹴り上げられるカム付のカム取付アーム部と逆に下げ動作をする引下アーム部とを備えた揺動アームと、
(ニ)前記引下アーム部の動きを前記堰に伝達する伝達機構とを備え、
(ホ)前記伝達機構は、前記揺動アームとは別の部材でフライトの軌道一側方を縦向きに通り上下に運動可能に支持された昇降ロッドをその機構一部として有し、
(ヘ)同昇降ロッドの下端は前記軸心と平行な軸を介して前記揺動アームに連結される一方、同昇降ロッドの上端は、昇降ロッドと堰との間に設けられ堰を応動させる別の伝達手段に連結されていることを特徴とする
(ト)スカム除去装置。

3.イ号物件
請求人が提出した、判定請求書に添付されたイ号図面(図1ないし図4)及び平成15年8月12日付回答書の図面(参考図1及び2)の記載からみて、イ号装置は次のとおり特定されるものと認める。
なお、平成15年6月18日付の審尋において、被請求人に対し、請求人が提出したイ号図面についての意見を求めたが、被請求人からは何の応答もなかった。
【イ号装置の構成】
(i)図3及び4によれば、イ号装置はチェーンに配列されたフライトの運動により、処理池の水面上のスカムを除去する装置であり、図3によれば、トラフは、誘引口を有し同誘引口が処理池の水面よりも低くなるように位置し、参考図1及び2によれば、その両端は、両側壁を挿通し固定された一対の連通トラフにフランジを介して固定されている。
(ii)図3によれば、トラフの誘引口に設けられた堰は、トラフと同様の長尺状の部材でトラフの前側にあってその上部が処理池の水面を境に浮き沈み可能に配置され、参考図1及び2によれば、堰とトラフのフランジ間には、前方からの水の浸入を阻止するための側部シールが設けられている。
(iii)図2及び図3によれば、池底より少し上側に位置し池幅方向に水平に横架固定された前後一対の固定軸の各一端側外周に揺動可能に回転パイプが装着され、循環運動するフライトの進行方向上流側に向け、回転パイプの一方の一端から押下アーム部が突設され、この押下アーム部と堰側の間に、下端が押下アーム部に連結され上部は堰を応動させるための上方に伸びた昇降ロッドを備え、一対の回転パイプの他端からはそれぞれ下向きに補助リンクが突設され、該各補助リンクの突端を板状部材で回動可能に連結している。
(iv)図2によれば、引下アーム部の動きは、昇降ロッド及び別の伝達手段によって構成される伝達機構によって堰に伝達されるようになっている。
(v)図3,参考図1及び2によれば、前記伝達機構の一部である昇降ロッドは、引下アーム部とは別の部材でフライトの軌道の一側方を縦向きに通り、その下端部を引下アーム部の先端と、その上端部を上部駆動アームの先端と、それぞれ回動自在に連結されている。
(vi)図3,参考図1乃至2によれば、昇降ロッドの下端は前記固定軸と平行な軸を介して引下アームと連結され、昇降ロッドの上端は上部駆動アームと連結されている。
(vii)図2によれば、昇降ロッドは、フライトが上回りから下がってくる軌道より横側方に外れた位置を通るようにされている。
【イ号装置の動作】
(viii)図4によれば、フライト上部に取り付けられたローラー式のアタッカーが図3の矢印方向に移動してきて対向する板状部材を蹴り上げると、補助リングが図1の矢印の方向に回動して回転パイプを回転させ、該回転パイプに突設された押下アームを下方に回動させ、昇降ロッドを引き下げる。
(ix)参考図1及び2によれば、昇降ロッドがA1の方向に引き下げられると、上部駆動アームがA2のように下がり、上部駆動アームの基部に固着された上部シャフトがA3の方向に回転し、この回転により上部シャフトの他の個所に固定した作動アームがA4の方向に下がり、それとともに押さえロッドがA5のように押し下がり、これによって、押さえロッドの下端のブラケットを介してA6の方向に堰が下がる。
(x)板状部材からアタッカーが通り過ぎると、重量バランスの関係で、昇降ロッドは参考図2の矢印とは逆の方向に作用し、堰は浮上する。

4.対比・判断
4-1.イ号物件の構成が本件特許発明の各構成要件を充足するか否かについての検討
(1)構成(イ)について
イ号装置の構成(i)によれば、イ号装置におけるトラフは、処理池の水面よりも低くなる誘引口を備えており、同池内に両端支持状態で固定して設置されているといえ、本件考案の構成(イ)を充足する。
(2)構成(ロ)について
イ号装置の構成(ii)によれば、イ号装置は、本件考案の構成(ロ)を充足する。
(3)構成(ハ)について
イ号装置の動作(viii)によれば、イ号装置における、補助リンクに連結された板状部材は、ローラー式アタッカーが進行してくると蹴り上げられ、回転パイプを固定軸回りに回転させ、該回転パイプに突設された押下アームを逆に下げ動作させるのであるから、補助リンク、回転パイプ及び押下アームから構成される部材が、本件考案における「フライトに備えたローラー式のアタッカーが池底を進行してくる際に蹴り上げられるアーム部と逆に下げ動作をするアーム部とを備えた揺動アーム」に相当し、構成(iii)によれば、該固定軸は、池底より少し上側に位置し池幅方向に水平に横架固定されており、回転パイプを回動させる支点として機能しているのであるから、本件考案における「池底より少し上側に位置し池幅方向に軸心が向く水平軸状の可動固定支点」に相当する。
したがって、イ号装置は、「カム」の構成を除いて、本件考案の構成(ハ)を充足する。

以下、イ号装置が、本件考案の「カム」の構成を有するか否かについて検討する。
本件考案における「カム」について、本件明細書には「カム取付アーム部15aには、ボルト付の長孔18…を介してカム19が上下調節可能に取付けられている。」(実用新案登録公報第3頁5欄29?31行)、「カム19は、その下面に第1カム19aと第2カム19cとを下向きに突出して備え、これらの間に水平な凹み19bを備えている。アタッカー7が第1カム19aに当たると、揺動アーム15の一端15aは持ち上がり、他端15bは下がるようになり、昇降ロッド20が下げられる。これにより、ケーブル21を通して堰13が大きく下がり、大きいスカムまでもトラフ9内に誘引するようになる。凹み19bにアタッカー7が対応すると、堰13がやや浮くがまだ若干沈んだ状態を保つようになる。」(実用新案登録公報第3頁5欄33?42行)と説明されている。
これらの記載によれば、本件考案における「カム」とは、直進運動するアタッカーと接触する部材であって、アタッカーと共にカム機構を構成するものであり、カム取付アームに取り付けられる部材であって、アタッカーの移動に伴い、アタッカーと当接する面の形状に応じてカム取付アームを揺動させ、昇降ロッドなどの伝達部材を介して堰の一を上下させる部材ということになり、と云うことができる。
一方、イ号装置における「板状部材」は、一方の補助リンクと協動し、アタッカーが所定の区間を移動するときアタッカーと接触し、その動きに合わせて堰を上下動させるようなカム機構を、アタッカーと共に構成する部材と云えるから、本件考案における「カム」と同一の機能を有することは明らかであり、本件考案における「カム」に相当する。
したがって、イ号装置は本件考案の構成(ハ)をすべて充足する。
(4)構成(ニ)について
イ号装置の構成(iv)によれば、イ号装置は、本件考案の構成(ニ)を充足する。
(5)構成(ホ)について
イ号装置の構成(v)によれば、イ号装置における昇降ロッドはその上下端をそれぞれ押し下げアーム部及び上部駆動アームと揺動可能に連結されているのであるから、上下動可能に支持されていると云えるから、イ号装置は、本件考案の構成(ホ)を充足する。
(6)構成(ヘ)について
イ号装置の構成(vi)によれば、イ号装置における上部駆動アーム、上部シャフト、作動アームは、積と昇降ロッドとの間に設けられた別の伝達手段と云えるから、イ号装置は、本件考案の構成(ヘ)を充足する。
(7)構成(ト)について
イ号装置の構成(i)によれば、イ号装置は、本件考案の構成(ト)を充足する。
5.本件考案の作用効果
本件明細書によれば、本件考案は、池幅間に両端支持状態で固定して設けられたトラフと、同トラフの一側の誘引口前側に上下運動可能に設けられた堰とを有し、同堰を、循環運動するフライトにより上下に揺動するカム付揺動アームに連動させて水面を境に浮沈させるように構成しているスカム除去装置において、従来、池水面上や池水面より少し低い高さに位置し、上回りのフライトにより連動するようにしていた揺動アームを、池底を進行してくるフライトに連動させる方式とした場合の問題点、すなわち水面から池底まではかなり深くなっているのが通例であるため、長い揺動アームを池内に設置施工しなければならず、しかも、長い後部アーム部と堰側の取り合い関係も合いにくくなるという問題点を解決しようとするものであり(実用新案登録公報第2頁3欄7?40行)、本件考案による効果は、揺動アームは池底側に位置するものに特定し揺動アームと堰との間を別部材である昇降ロッドで連動させるように構成することで、部材数は増えるものの施工が簡単確実になるとともに伝達機構側と堰側との取り合い関係も簡単確実に行えるようになるスカム除去装置を提供することができる(実用新案登録公報第3頁6欄31?38行)というものである。
そして、イ号装置も、池幅間に両端支持状態で固定して設けられたトラフと、同トラフの一側の誘引口前側に上下運動可能に設けられた堰とを有し、同堰を、循環運動するフライトにより上下に揺動し、池底側に位置するカム付揺動アームに連動させて水面を境に浮沈させるように構成しているスカム除去装置である点で、本件考案と軌を一にするものであり、揺動アームと堰との間を別部材である昇降ロッドで連動させるという本件考案と同一の構成を採用している以上、本件考案と同一の作用効果を奏することは明らかである。

6.むすび
以上のとおりであるから、判定請求書及び回答書に添付の図面に記載されたイ号装置は、本件考案の構成をすべて充足するから、本件登録実用新案の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
判定日 2003-12-05 
出願番号 実願平9-9466 
審決分類 U 1 2・ - YA (C02F)
最終処分 成立    
前審関与審査官 斉藤 信人川上 美秀増田 亮子繁田 えい子  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 金 公彦
岡田 和加子
登録日 2000-04-21 
登録番号 実用新案登録第2605114号(U2605114) 
考案の名称 スカム除去装置  

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