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審決分類 審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許 無効とする。(申立て全部成立) E04G
管理番号 1093256
審判番号 審判1996-15217  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-04-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1996-09-04 
確定日 2004-02-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第1981339号「内装用仮設足場」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成11年 8月20日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成11年(行ケ)第0332号平成15年 3月25日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 登録第1981339号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯

本件実用新案登録第1981339号は、昭和62年9月3日に出願され、平成4年11月27日に出願公告(実公平4-50354号公報)され、平成5年8月27日に実用新案登録がなされ、平成8年9月4日に本件無効審判が請求され、平成9年2月10日に答弁書が提出され、平成9年4月16日付けで請求人に対して審尋がなされ、平成9年6月24日に審尋に対する回答書が提出され、平成9年6月24日、平成9年9月3日、平成10年4月28日に弁駁書が提出され、平成11年8月20日に、本件審判の請求は成り立たない旨の審決がなされ、平成11年10月6日に上記審決に対する訴えが東京高等裁判所になされ、同裁判所において平成11年(行ケ)第332号事件として審理され、平成15年3月25日に、特許庁が平成11年8月20日にした審決を取り消す旨の判決が言い渡され、当該判決は確定した。
そこで、本件無効審判事件についてさらに審理する。

2.請求人の主張

請求人は、請求書及び弁駁書において、本件の実用新案登録請求の範囲に記載された考案(以下、本件考案という。)についての実用新案登録を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件考案の真正の考案者は、本件審判請求人の1人である上木原純一郎であって、本件登録は、本件考案について登録を受ける権利を承継しないものの出願に対してなされたものであり、平成5年改正前の実用新案法第37条第1項第4号の規定に該当し、その登録は無効とされるべきものであると主張し、以下の証拠を提出した。
甲第1号証:広島地裁福山支部平成6年(モ)第333号訴状
甲第2号証:中山弘道の陳述書
甲第3号証:本谷憲朗から大興物産株式会社宛の手紙
甲第4号証:特開昭64-80664号公報
甲第5号証:実公平4-50354号公報
甲第6号証:実公平7-621号公報
甲第7号証:大喜商事株式会社の出願リスト及びその公報
甲第8号証:奈良ロイヤルホテルの舞台用テーブルの写真
甲第9号証:広島地裁福山支部平成6年(ワ)第452号、同平成9年(ワ)第166号事件の平成9年9月25日及び平成9年11月27日の土肥潤一の証人調書
甲第10号証の1、2:広島地裁福山支部平成6年(ワ)第452号事件の平成7年10月26日及び平成8年2月8日の本谷憲朗の証人調書
また、証人として、本谷憲朗、中山弘道、土肥潤一及び上木原純一郎を申請した。

3.被請求人の主張
被請求人は、請求人提出の甲第1号証ないし甲第3号証によっては、本件考案の真の考案者が請求人の一人である上木原であるとはいえない旨主張し、以下の証拠を提出した。
乙第1号証:広島地裁福山支部平成6年(ワ)第452号事件の平成8年4月4日の中山弘道の本人調書
乙第2号証:同事件の平成8年5月30日の中山弘道の本人調書
乙第3号証:同事件の平成8年9月5日の上木原純一郎の証人調書
乙第4号証:同事件の平成8年12月13日付けの本谷憲朗の陳述書(二)
乙第5号証:同事件の平成8年12月13日付けの本谷憲朗の陳述書(四)
乙第6号証:特公平6-56053号公報

4.本件考案
本件考案は、実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「二重管によるストツパーピン付きの伸縮柱を四つ角に配置し、これらの二重管である伸縮柱の外管同志を梁材と桁材とで接合する軸組本体と、軸組本体の梁間の中間付近を境として背中合わせに起立できる二枚の作業床と、キヤンテイーレバーを外管の上部に形設させた二重管によるストツパーピン付き伸縮柱とを設け、展開した作業床の上面にヒンジの一部を突出させず、かつ、二枚の作業床が背中合わせに起立できるように、L字状の平板を二枚一組に組み合わせた特殊ヒンジ二組で、前記軸組本体の梁材と二枚の作業床の一端とをそれぞれ枢支連結し、該二枚の作業床の各々の他端裏面に対して、前記キヤンテイーレバーを外管の上部に形設させた二重管によるストツパーピン付き伸縮柱のキヤンテイーレバーの末端付近を枢着させ、該キヤンテイーレバーを外管の上部に形設させた二重管によるストツパーピン付き伸縮柱の内管の下端付近に梁ブラケツトを突設させ、該梁ブラケツトと前述の軸組本体の桁材とをコンネクテイングロツドで枢支連結し、前述の各々の伸縮柱の下端にキヤスターを設置したことを特徴とする内装用仮設足場」

5.本件考案の考案者について

(1)東京高等裁判所の平成11年(行ケ)第330号、平成11年(行ケ)第331号、平成11年(行ケ)第332号を併合した判決において、本件考案の考案者について次のように判示された。(当審注:上記判決において、原告は、中山弘道こと中山弘通と上木原純一郎であり、被告は、大喜商事株式会社であり、本件考案は「本件考案1」と記載されている。)

「(2)原告らは,原告上木原は,本件発明及び本件考案1,2の共同発明者ないし共同考案者の一人とみるべきである,と主張する。
発明とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいい(特許法2条1項),考案とは,自然法則を利用した技術的思想の創作をいう(実用新案法2条1項)。発明者・考案者とは,これら技術的思想の創作に実質的に関与した自然人をいう,と解すべきである。
ある者を,ある技術的思想の創作に実質的に関与したものとして発明者・考案者と評価することができるかどうかは,必ずしも容易に決定できることではなく,その決定には多大の困難を伴うことも少なくない。結局のところ,具体的事案において,その技術的思想の内容や,その者がその技術的思想の創作過程において果たした役割の内容,程度などを総合的に勘案して決する以外にないというべきである。
ア 本件発明及び本件考案1について
本件発明及び本件考案1は,いずれも,従来,建築物の内装工事のうち天井等の高所作業を行う場合に用いる仮設足場について,脚立,足場板,ゴムバンドなどを用いて設営していたことによる問題点(運搬,設置上の不便や作業中の安全管理上の問題点など)を解決することを目的としてなされたものである(甲第4,第5号証)。
1で認定したところによれば,原告上木原は,上記課題を認識し,この課題を解決するため,被告の商品であるポータブルステージを建設現場の足場に転用することを思い付き,被告に対し,試作品の製作を依頼し,被告の代表者である本谷らは,ポータブルステージを製作した技術を基礎として,本件商品(これは,本件発明及び本件考案1,2の実施例に相当する。)を製作したものということができる。
本件商品とポータブルステージとは,少なくとも,四隅に脚を取り付けた2枚の天板を組み合わせることによって1枚の脚付きの床とするものであり,2枚の天板を,合わせ目部分を境として,背中合わせに垂直に立てて折り畳むことができ,折り畳んだ状態でキャスターにより移動することができる,という基本的な態様において一致する。
被告は,主としてホテルの備品を製造,販売する会社であり,建築物の内装工事の実情には疎く,原告上木原の指摘があるまで,ポータブルステージを建築現場に転用するという発想を持ったことはなく,ポータブルステージを転用した仮設足場の試作品を製造するようにとの依頼を受けて,初めて,工事現場を視察するなどして内装工事の実情を把握し,試作品の製造にとりかかったものであることは前記のとおりである。原告上木原が着想するより前に,ポータブルステージのような基本的な態様を有する建築用足場を製造する発想が公知ないしは自明であったことを認めるに足りる証拠はない。
上に述べたところによれば,本件発明及び本件考案1においては,ポータブルステージの上記の基本的な態様を建築工事現場に転用するという着想を持つこと自体が,発明ないし考案の実現において,大きな地位を占めるものであることが明らかである。原告上木原は,このような重要な地位を占める着想をした者として,着想のみであっても,本件発明及び本件考案1の,少なくとも共同発明者の一人には当たると評価すべきである。
しかも,原告上木原は,上記着想を提供するにとどまらず,前記1(4)で認定したとおり,ポータブルステージを建設現場の足場とするための製品の仕様について,本件発明及び本件考案1の構成要件の細部にまで及んではいないものの,軽量化等の具体的な要望を被告に告げている。このように,ポータブルステージの基本的な態様を建築足場に使用するとの着想及びそのための製品の仕様についての大まかであるが一定の方向性が与えられれば,既にポータブルステージが存在する状態の下でこれを具体化することに,さほど困難があったとは考えにくく,現実に著しい困難があったことを認めるに足りる証拠もない。
被告は,原告らは,基本的な課題,アイデアを提示し,製品の規格,仕様,性能についての発注者としての要望,指示,要求をしたにすぎない,と主張する。
しかしながら,被告のこの主張は,原告上木原が試作品の製作を依頼したのは,ポータブルステージの存在を前提にしてのことである,という事実を忘れたものというべきである。
確かに,前提にするものが何もない状態で,すなわち,ポータブルステージ(あるいはこれに代わる何か)のない状態で,なされたものであったのであれば,原告上木原によってなされた依頼に対して被告の主張するような評価を下すことも,十分可能であろう。しかし,現実には,同原告が依頼したときには,既にポータブルステージは商品として売り出され使用されていたのであり,同原告は,これを見て,これを仮設足場に転用することに着想し,この着想に基づき,これを現実化すべく,試作品の製作を依頼したのである。そして,この依頼を受けて被告が製作した試作品がポータブルステージの基本的な構造をそのまま流用したものにすぎなかったこと,同原告が発注者としてなした要望,指示,要求は,いずれも,ポータブルステージの規格,性能を大幅に変更するようなものでなかったことは,むしろ,被告自身の強調するところである。そうだとすると,本件商品を発明するに当たり,原告上木原の上記着想が果たした役割を,被告のように低く評価することができないことは明らかというべきである。被告の主張は,本件商品の発明者の認定に当たっては,ポータブルステージを既存のものとしてその存在を出発点に考えなければならないのに,そうしないで,ポータブルステージそのものの発明者であることをもって本件商品の発明者としようとするものであり,前提において誤っているという以外にない。」(判決書17頁14行ないし20頁1行)
「(3)以上のとおり,原告上木原は,少なくとも本件商品の共同発明者ないし共同考案者の一人であり,本件各無効審判事件における結論は,これを前提に導かれなければならないのに,審決は,これを認定しないままに論を進めたものであり,審決のこの誤りが,いずれの審判事件についても,その結論に影響を及ぼすことは明らかである。」(判決書20頁23行ないし21頁1行)
以上によれば、請求人の一人である上木原純一郎は、本件考案の共同考案者の一人であるというべきである。

(2)一方、出願手続きにおける書類によれば、本件考案の考案者として本谷憲朗が記載され、出願人として大喜商事株式会社が記載されているにすぎず、上木原純一郎がいわゆる冒認として本件無効審判を請求していることから、上木原純一郎が大喜商事株式会社に本件考案について実用新案登録を受ける権利を譲渡したとも考えらない(請求人からは、これに反する主張や証拠は出されていない)ことから、本件考案の実用新案登録は、考案者でない者であってその考案について実用新案登録を受ける権利を承継しないものの実用新案登録出願に対してされたものであって、平成5年改正前の実用新案法第37条第1項第4項に該当する。

6.まとめ

以上のように、本件考案に係る実用新案登録は、平成5年改正前の実用新案法第37条第1項第4項に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用の負担については、実用新案法第41条の規定により準用され、特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-07-23 
結審通知日 1999-08-13 
審決日 1999-08-20 
出願番号 実願昭62-135450 
審決分類 U 1 112・ 152- Z (E04G)
最終処分 成立    
前審関与審査官 安田 啓之伊波 猛  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 長島 和子
山田 忠夫
登録日 1993-08-27 
登録番号 実用新案登録第1981339号(U1981339) 
考案の名称 内装用仮設足場  
代理人 戸島 省四郎  
代理人 三原 靖雄  
代理人 戸島 省四郎  

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