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審決分類 審判    B65B
管理番号 1094773
審判番号 無効2003-40011  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-05-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-06-04 
確定日 2004-03-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第3067396号実用新案「配送物仕分用の仕切り板」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3067396号の請求項1?4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 〔1〕手続の経緯
本件実用新案登録第3067396号考案についての出願は、平成11年9月14日に実用新案登録出願(以下、「本件実用新案登録出願」という。)がなされ、平成12年1月5日に設定登録がなされ、その請求項1?4に係る考案の実用新案登録について、平成15年6月4日に本件無効審判が請求され、平成15年7月25日に被請求人より答弁書が提出され、平成15年8月20日に請求人より上申書が提出された。

〔2〕本件考案
本件実用新案登録の請求項1?4に係る発明(以下、「本件考案1?4」という。)は、明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 配達地区ブロック表示と、
前記配達地区ブロック区分を表示したバーコード表示と、
配送物の配達時間帯を表わす配達時間帯表示と、を有し、
帯電防止処理が施されたプラスチック素材から成る配送物仕分用の仕切り 板。
【請求項2】 前記仕切り板はポリプロピレンであり、前記配達時間帯毎 に別個の色分けが施されている、ことを特徴とする請求項1に記載の配送 物仕分用の仕切り板。
【請求項3】 前記仕切り板の寸法は、縦135±2mm、横235±2mm、 厚さ0.75±0.01mmであり、四隅がアール状に面取りされている、ことを特徴とする請求項1乃至2に記載の配送物仕分用の仕切り板。
【請求項4】 前記帯電防止処理は、前記素材に導電性を付与するためカーボン粉末若しくはアルミ粉末が混入されている、ことを特徴とする請求項1に記載の配送物仕分用の仕切り板。」

〔3〕当事者の主張
1 審判請求人の主張
審判請求人は、「実用新案登録第3067396号の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、概ね次のとおり主張する。
(1)無効理由1
本件考案1は、甲第1号証(又は甲第2号証)に記載された考案と、甲第3号証?甲第13号証、甲第28号証に記載された考案又は周知技術に基づいて、本件考案2は、さらに甲第20号証?甲第22号証、甲第26号証に記載された考案に基づいて、本件考案3は、さらに甲第23号証、甲第24号証、甲第30号証の1に記載された考案に基づいて、本件考案4は、甲第1号証に記載された考案と、甲第3号証?甲第13号証、甲第28号証に記載された考案又は周知技術に基づいて、いずれも当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案1?4についての実用新案登録は、実用新案法37条1項2号に該当し、無効とすべきである。
(2)無効理由2
本件考案1?4は、本件実用新案登録出願前に公然実施をされた考案(甲第31号証、甲第32号証)及び他の甲号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案1?4についての実用新案登録は、実用新案法37条1項2号に該当し、無効とすべきである。
(3)無効理由3
本件考案1及び2は、本件実用新案登録出願前に公然実施をされた又は公然知られた考案(甲第35号証の1、2、3、4)であるから、実用新案法3条1項1号又は2号に規定する考案に該当し、本件考案3及び4は、本件実用新案登録出願前に公然実施をされた又は公然知られた考案(甲第35号証の1、2、3、4)及び他の甲号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案1?4についての実用新案登録は、実用新案法37条1項2号に該当し、無効とすべきである。

そして、審判請求人は下記の甲第1号証?甲第35号証を提出している。
甲第1号証:特開平10ー34087号公報
甲第2号証:特開平10ー94760号公報
甲第3号証:特開平6ー44272号公報
甲第4号証:特開平8ー161404号公報
甲第5号証:実願昭63ー88502号(実開平2ー10972号)のマ イクロフィルム
甲第6号証:特開平4ー195382号公報
甲第7号証:実公平3ー32560号公報
甲第8号証:特開昭59ー123988号公報
甲第9号証:特開平4ー241900号公報
甲第10号証:特開平6ー36085号公報
甲第11号証:特開平4ー83692号公報
甲第12号証:特開昭58ー11197号公報
甲第13号証:特許第2642620号公報
甲第14号証:特開平2ー69888号公報
甲第15号証:特開平1ー214489号公報
甲第16号証:特開平8ー216576号公報
甲第17号証:特開平7ー311937号公報
甲第18号証:特開平5ー218236号公報
甲第19号証:特開平5ー338384号公報
甲第20号証:実用新案登録第2562406号公報
甲第21号証:特開平7ー266747号公報
甲第22号証:特開昭59ー206995号公報
甲第23号証:特開平11ー170748号公報
甲第24号証:特開平8ー216572号公報
甲第25号証:実願昭61ー93018号(実開昭62ー203071 号)のマイクロフィルム
甲第26号証:平成11年8月6日付け東海郵政局郵務部長、財務部長の シグナルカード調整に伴う経費の措置(通達)
甲第27号証の1及び2:NECポスタルテクノレクス製メールセパレー タの電子複写による写真及び帯電防止剤のリーフレット
甲第28号証:積水成型工業株式会社シート事業部「総合カタログ」、表 紙、13?17頁、裏表紙
甲第29号証:オカモト株式会社ポリプロピレンシート見本帳の写真
甲第30号証の1:株式会社日搬、「新郵便処理システム サポート用品 総合カタログ POSTAL FURNITURE AND GOODS'98」、表紙、30頁 、31頁、裏表紙
甲第30号証の2:請求書
甲第31号証の1?9:立巳物産株式会社により販売されているシグナル カード9種類の電子複写による写真
甲第32号証の1、2、3:シグナルカード
甲第33号証:請求書
甲第34号証の1、2、3、4:売上伝票
甲第35号証の1、2、3、4:シグナルカードの写真

2 被請求人の主張
被請求人は、答弁書において、概略、以下のように反論する。
(1)本件考案1について
従来の紙製の仕切り板の製造に携わっていた通常の技術者が、紙製の仕切り板を、プラスチック製の仕切り板に変更することは、容易に想到し得るものではない。
静電気によって、仕切り板が、郵便物の他の仕切り板に付着する問題は、プラスチック製に変更したからこそ、初めて遭遇する問題である。
甲第10号証?甲第13号証、甲第28号証、甲第29号証は、本件の技術的意義とは関連性がなく、甲第7号証は、複写機の重走事故の防止に関するもので、本件考案の目的と関連するが、本件考案とは技術分野が異なり、仕切り板に、帯電防止処理を施すことは、従来の紙製の仕切り板の製造に携わる通常の技術者が、容易に想到し得るものではない。
(2)本件考案2について
縦135mm、横235mm、厚さ0.75mmの寸法で、種々の素材のプラスチック片をテストした結果、ポリプロピレン製のものが、柔軟性、復元性、付着性に関し最適の数値を示したので、本件考案に至ったのであり、請求人が主張するような、他のポリプロピレン製品一般にヒントを得て採用したという単純なものではなく、本件考案の技術的意義にまで想到することは容易なことではない。
被請求人は、NECポスタルテクノレクス製メールセパレータ(甲第27号証の1)が、郵便局の自動仕分機で一般的に使用されていた事実を知らない。
(3)本件考案3について
「縦135±2mm、横235±2mm、 厚さ0.75±0.01mm」という寸法は、仕切り板をプラスチック素材に変更した場合に、最適な柔軟性と復元性をもたらすもので、特別な技術的意義を有する。
甲第31号証の1の紙製のシグナルカードは、厚みが無いため、四隅からの破損を防ぐように、四隅がアール状に面取りされているが、本件考案に係る仕切り板は、厚みがあるため、自動仕分機にセットして流したとき、つかえることなくスムーズに流れるように、四隅をアール状に面取りしている。
(4)本件考案4について
甲第11号証、甲第12号証は、本件考案の技術的意義と関連性がない。 従前の紙製の仕切り板の製造に携わっていた通常の技術者が、仕切り板にカーボン粉もしくはアルミ粉末を混入することは、簡単に想到し得るものではない。
(5)本件実用新案登録出願前のプラスチック製仕切り板の存在について
甲第31号証や甲第32号証と同じものかどうか不明であるが、平成10年7月頃に、王子郵便局が、立巳物産より、配達地区ブロック表示と配達時間帯表示とを有する色分けされたプラスチック素材から成る仕切り板(立巳物産の仕切り板)を購入した事実は認める。立巳物産の仕切り板は、厚みが0.75mmもあるようなものではない。
本件考案は、これに改良を加えた結果、ア.静電気によって、郵便物や他の仕切板と付着することを防ぐために、仕切り板に帯電防止措置を施すこと、イ.帯電防止措置の方法として、仕切り板の素材の中にカーボン粉もしくはアルミ粉末を混入すること、ウ.ポリプロピレン素材を用いることが、他の素材に比べて付着の弊害が少ないこと、エ.仕切り板を「縦135±2mm、横235±2mm、厚さ0.75±0.01mm」の規格のポリプロピレン素材とすることで、最適な柔軟性と復元性を得られること、オ.自動仕分機にセットし流す場合に、この寸法のものが、つかえる虞が少なく、四隅をアール状に面取りすることでつかえる虞を低減することができる、との新たな技術的意義を有するものである。
本件考案が、既に公然実施され、公然知られたとの主張は当たらない。

そして、被請求人は、下記の乙第1号証?乙第3号証を提出している。
乙第1号証:実用新案技術評価書
乙第2号証:明細書
乙第3号証:判例

〔4〕当審の判断
【無効理由1について】
1 被請求人が提出した甲第1号証及び甲第30号証の1の記載事項
(1)本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物である、甲第1号証には、以下の記載がある。
a「【従来の技術】近年、郵便物の宛名あるいは郵便番号を読取り、この読取った宛名あるいは郵便番号に基づき郵便物を区分処理する区分装置が実用化されている。」(10欄11?13行)
b「図1は、この発明の区分装置としての郵便物区分装置1を示し、……郵便物区分装置1は、第1面に郵便番号や宛名住所などの宛先情報(区分情報)が書き込まれ、或いは印刷された紙葉類としての複数の郵便物をこの第1面が同一方向を向くように後端を揃えて立位で収容するとともに……郵便物を主搬送路3に沿って一通づつ取出す」(17欄22?33行)
c「上記郵便物の他に、図5に示すような、仕切板Pa、…が供給されるようになっている。……すなわち、図5は、配達順番に郵便物を区分する際の2回目(2パス目)の区単位の最初と最後に挿入される仕切板Pa、…を示すものであり、通常の郵便物より厚く、しかも少し大きめな形状となっており、端部(縁)が赤くなっており、区分ポケット内に他の郵便物とともに集積されている際に区別がつくようになっている。この仕切板Paの表面には、仕切板、区の先頭あるいは区の終了、区先頭コードあるいは区終了コード、そのコードに対応するバーコードが記載されている。たとえば、1区の先頭用の仕切板Paには、図5に示すように、仕切板、1区先頭、9999901S(区先頭コード)、9999901Sを示すバーコードが記載されている。……仕切板Pa、…は、あらかじめ印刷されて作成されているものであり、区数分用意されている。」(18欄2?24行)
d「配達順路データベース34には、図7に示すように、郵便物ごとの配達順番、郵便物の宛先情報(住所)、機械内部コード、1回目の区分ポケット番号、2回目の区分ポケット番号、および配達区が対応して記録される」(20欄26?30行)
e「仕切板Paが取出部4にて主搬送路3上に一葉づつ取出され……主搬送路3を介してそのまま搬送され、……図6に示すように、ポケットNo12、24、…の区分ポケット15の最下部に配達区が1区乃至3区の終端を示す仕切板Paが区分集積される。」(25欄44行?26欄13行)
f「仕切板Paが取出部4にて主搬送路3上に一葉づつ取出され……搬送され、……図6に示すように、ポケットNo1、13、25、…の区分ポケット15の最上部の郵便物の上に配達区が1区乃至3区の開始を示す仕切板Paが夫々区分集積される。」(26欄41行?27欄11行)
g「上記したように、郵便物を配達順路に対応して2回に分けて区分するものにおいて、2回目の区分を行う前に、区終了コードが付与されている仕切板Paを終了の区切りのポケットに集積し、この後、郵便物の2回目の区分を行い、この終了後、区開始コードが付与されている仕切板Paを開始の区切りのポケットに集積することにより、各配達区ごとの郵便物を区別するようにしたものである。」(27欄12?19行)
そして、図5には、「仕切板」、「1区先頭」、「9999901 S」の表示及びバーコードが表示された仕切板が示されている。

以上の記載及び図面によれば、甲第1号証には、次の考案が記載されているものと認められる。
「表面に、区の先頭あるいは区の終了の表示、区先頭コードあるいは区終了コードの表示、そのコードに対応するバーコードの表示を有する、郵便物の区分に用いられる仕切板。」

(2)甲第30号証の1の表紙の「’98」の表示、及び甲第30号証の2から本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物であると認められる甲第30号証の1には、30頁に、四隅がアール状に面取りされたシグナルカードが掲載され、
31頁に、「『シグナルカード』は、2パス区分時に郵便物を区分機に供給する前に、先ず、各配達区の最後尾を表すエンドカードを供給し、すべての郵便物が区分終了後に各配達区の先頭を表すスタートカードを供給します。郵便物を区分機から抜取る時は、シグナルカードにより一目で各配達区がわかります」と記載され、同頁の「仕様」の欄に、「寸法 タテ235mm×ヨコ128mm(±1mm)」、「厚さ 0.3mm」、「紙質 ……」と記載されている。

2.対比・判断
(1)本件考案1について
本件考案1と甲第1号証記載の考案とを対比する。
甲第1号証記載の考案における「区」は、配達区を意味する(上記記載g参照。)から、「区の先頭あるいは区の終了の表示」は、本件考案1の「配達地区ブロック表示」に相当する。
また、甲第1号証記載の考案の「区先頭コードあるいは区終了コードに対応するバーコードの表示」は、本件考案1の「配達地区ブロック区分を表示したバーコード表示」に相当する。
さらに、甲第1号証記載の考案の「郵便物の区分に用いられる仕切板」は、本件考案1の「配送物仕分用の仕切り板」に相当することは明らかである。
そうすると、両者は、
「配達地区ブロック表示と、
前記配達地区ブロック区分を表示したバーコード表示と、を有する、配送物仕分用の仕切り板。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
本件考案1は、配送物の配達時間帯を表わす配達時間帯表示を有するのに対し、甲第1号証記載の考案は、配送物の配達時間帯を表わす配達時間帯表示についての言及がない。
相違点2
本件考案1は、帯電防止処理が施されたプラスチック素材から成るのに対し、甲第1号証記載の考案は、具体的な素材が不明である。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点1について
郵便物のような配送物が多量に集積する配送センターにおいて、同一の配達区域につき、一日に複数回、配達が行われていることは、良く知られていることであり、甲第1号証記載の考案において、配送物が多量にある場合に、配送物を配達時間毎に区分するために、仕切り板に配送物の配達時間帯を表わす配達時間帯表示をすることは、当業者であればきわめて容易になし得たことである。

相違点2について
甲第1号証記載の考案に係る仕切り板は、郵便物区分装置の主搬送路3上を搬送されて、区分ポケットまで運ばれる(上記記載e、f参照。)ものであり、主搬送路3を始めとして郵便物区分装置内をスムーズに移動できるような材質のもので作製されることが望ましいこと、そのためには、耐摩耗性、耐久性、柔軟性、静電気を帯び難い性質などが求められることは、当業者にとって自明な事項である。
そして、板状体を、耐摩耗性、耐久性、柔軟性を有するものとするために、プラスチック素材で形成することは、文房具や、事務用品を始めとして、様々な分野において行われている周知の技術である。また、プラスチック素材が静電気を帯びやすいことも良く知られていることであり、プラスチック素材に帯電防止処理を施すことも、広く行われている周知の技術である(例えば、甲第7、11、12、13号証参照。)。
そうすると、甲第1号証記載の考案において、郵便物区分装置内をスムーズに移動できるように、耐摩耗性、耐久性、柔軟性を有し、静電気を帯び難い性質を有する、帯電防止処理が施されたプラスチック素材を用いることは、当業者がきわめて容易になし得たことである。

したがって、本件考案2は、甲第1号証記載の考案及び周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができない。

(2)本件考案2について
本件考案2は、本件考案1において考案を特定する事項をさらに限定したものであるので、本件考案2と甲第1号証記載の考案とを対比すると、両者は、上記「(1)本件考案1について」で挙げた一致点で一致し、以下の点で相違する。
相違点3
本件考案2は、配送物の配達時間帯を表わす配達時間帯表示を有し、配達時間帯毎に別個の色分けが施されているのに対し、甲第1号証記載の考案は、配送物の配達時間帯を表わす配達時間帯表示について或いは色分けについての言及がない。
相違点4
本件考案2は、帯電防止処理が施されたポリプロピレンから成るのに対し、甲第1号証記載の考案は、具体的な素材が不明である。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点3について
郵便物のような配送物が多量に集積する配送センターにおいて、同一の配達区域につき、一日に複数回、配達が行われていることは、良く知られていることであり、甲第1号証記載の考案において、配送物が多量にある場合に、配送物を配達時間毎に区分するために、配送物の配達時間帯を表わす配達時間帯表示をすることは、当業者であればきわめて容易になし得たことである。
本件考案2は、上記配達時間帯表示に加えて、配達時間帯毎に別個の色分けが施されているが、区別をするための表示手段として、色分けを施すことは、様々な分野で一般的に用いられている手段であり、配送物を配達時間毎に区分するために、配達時間帯毎に別個の色分けを施すことも、当業者がきわめて容易になし得たことである。
そして、配達時間帯表示に加え、別個の色分けを施すことにより、格別の効果が奏されるものとも認められない。

相違点4について
甲第1号証記載の考案に係る仕切り板は、郵便物区分装置の主搬送路3上を搬送されて、区分ポケットまで運ばれる(上記記載e、f参照。)ものであり、主搬送路3を始めとして郵便物区分装置内をスムーズに移動できるような材質のもので作製されることが望ましいこと、そのためには、耐摩耗性、耐久性、柔軟性、静電気を帯び難い性質などが求められることは、当業者にとって自明な事項である。
そして、板状体を、耐摩耗性、耐久性、柔軟性を有するものとするために、プラスチック素材で形成することは、文房具や、事務用品を始めとして、様々な分野において行われている周知の技術である。また、ポリプロピレンは、代表的なプラスチックであり、板状体の素材としてポリプロピレンを用いることも、良く知られている(例えば、甲第15、17、19号証参照。)。さらに、プラスチック素材が静電気を帯びやすいことも良く知られていることであり、プラスチック素材に帯電防止処理を施すことも、広く行われている周知の技術である(例えば、甲第7、11、12、13号証参照。)。
そうすると、甲第1号証記載の考案において、郵便物区分装置内をスムーズに移動できるように、耐摩耗性、耐久性、柔軟性を有し、静電気を帯び難い性質を有する点を考慮して、素材として、帯電防止処理が施されたポリプロピレンを採用することは、当業者がきわめて容易になし得たことといえる。

したがって、本件考案2は、甲第1号証記載の考案及び周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができない。

(3)本件考案3について
本件考案3は、本件考案1又は2において考案を特定する事項をさらに限定したものであるので、本件考案3と甲第1号証記載の考案とを対比すると、両者は、上記「(1)本件考案1について」で挙げた一致点で一致し、上記相違点1及び2、又は上記相違点3及び4に加え、次の点でさらに相違する。
相違点5
本件考案2では、仕切り板の寸法は、縦135±2mm、横235±2mm、厚さ0.75±0.01mmであり、四隅がアール状に面取りされているのに対し、甲第1号証記載の考案では、具体的な大きさが不明である。

相違点1及び2、又は相違点3及び4についての検討は、既述したとおりである。

そこで、上記相違点5について検討する。
甲第1号証には、仕切り板の大きさに関して、通常の郵便物より厚く、しかも少し大きめの形状となっている、と記載されている(上記記載c参照。)ものの、具体的な大きさが不明である。
しかし、甲第1号証記載の考案に係る仕切り板は、主搬送路3上に一葉づつ取出され、搬送される(上記記載e参照。)ものであることから、仕切り板が供給される区分機の各部仕様や仕切り板の素材などを考慮して、搬送路上をスムーズに移動できるような寸法、形状に設計されることは、当業者にとって明らかである。
そして、甲第30号証の1には、紙製のものではあるが、本件考案3と同様に、郵便物の区分機に供給されて郵便物の区分に用いられる、四隅がアール状に面取りされたシグナルカードの寸法として、タテ235mm×ヨコ128mm(±1mm)、厚さが0.3mmという、本件考案3と一辺の長さが同一の近似した寸法が示されている。
また、板状体の四隅をアール状に面取りすることは、紙製のみならずプラスチック製カードを始め、様々な技術分野で慣用されている手段である(例えば、甲第23、24、25号証参照。)。
そうすると、甲第1号証記載の考案において、仕切り板の寸法を、縦135±2mm、横235±2mm、厚さ0.75±0.01mmとし、四隅をアール状に面取りすることは、甲第30号証の1に記載されたシグナルカード(仕切り板)の寸法、形状に基づいて、仕切り板が供給される区分機の各部仕様、仕切り板の素材などを考慮することにより、当業者がきわめて容易に想到し得たことといわざるをえない。

したがって、本件考案3は、甲第1号証記載の考案、甲第30号証の1に記載された事項及び周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができない。

(4)本件考案4について
本件考案4は、本件考案1において考案を特定する事項をさらに限定したものであるので、本件考案4と甲第1号証記載の考案とを対比すると、両者は、上記「(1)本件考案1について」で挙げた一致点で一致し、上記相違点1及び2に加え、さらに次の点で相違する。
相違点6
本件考案4は、帯電防止処理が施されたプラスチック素材から成り、帯電防止処理は、前記素材に導電性を付与するためカーボン粉末若しくはアルミ粉末が混入されているのに対し、甲第1号証記載の考案は、具体的な素材が不明である。

相違点1及び2についての検討は、既述したとおりである。
そこで、上記相違点6について検討する。
甲第1号証記載の考案に係る仕切り板は、郵便物区分装置の主搬送路3上を搬送されて、区分ポケットまで運ばれる(上記記載e、f参照。)ものであり、主搬送路3を始めとして郵便物区分装置内をスムーズに移動できるような材質のもので作製されることが望ましいこと、そのためには、耐摩耗性、耐久性、柔軟性、静電気を帯び難い性質などが求められることは、当業者にとって自明な事項である。
そして、板状体を、耐摩耗性、耐久性、柔軟性を有するものとするために、プラスチック素材で形成することは、文房具や、事務用品を始めとして、様々な分野において行われている周知の技術である。また、プラスチック素材が静電気を帯びやすいことも良く知られていることであり、プラスチック素材にカーボン粉末を混入して帯電防止処理を施すことも、広く知られている周知の技術である(例えば、甲第11、12号証参照。)。
そうすると、甲第1号証記載の考案において、仕切り板の素材として、郵便物区分装置内をスムーズに移動できるように、耐摩耗性、耐久性、柔軟性を有し、静電気を帯び難い性質を有する、プラスチック素材にカーボン粉末を混入して帯電防止処理が施されたプラスチック素材を用いることは、当業者がきわめて容易になし得たことである。

したがって、本件考案4は、甲第1号証記載の考案及び周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができない。

〔5〕むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する他の無効理由を検討するまでもなく、本件考案1?4についての実用新案登録は、実用新案法3条2項の規定に違反してなされたものであり、同法37条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
審判費用は、実用新案法41条の規定により準用する特許法169条2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-01-21 
結審通知日 2004-01-26 
審決日 2004-02-10 
出願番号 実願平11-7044 
審決分類 U 1 111・ 121- Z (B65B)
最終処分 成立    
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 山崎 豊
山崎 勝司
登録日 2000-01-05 
登録番号 実用新案登録第3067396号(U3067396) 
考案の名称 配送物仕分用の仕切り板  
代理人 大西 育子  
代理人 加藤 義樹  
代理人 矢野 京介  
代理人 清水 徹男  
代理人 土赤 弘子  
代理人 醍醐 邦弘  

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